説明

静電霧化装置

【課題】使用者に付着物除去のメンテナンスを強いることなく、継続的に使用することの可能な静電霧化装置を提供する。
【解決手段】本発明を、水を収容する水タンク6と、上記水に電圧を印加する印加電極2と、上記水と接触するとともにその一端に尖った霧化部13を有している吸水体4と、吸水体4が毛細管現象により水タンク6から吸上げた水を該吸水体4の霧化部13において霧化させさせてナノメータサイズの粒子径のミストを発生させるための電圧を印加電極2に印加する高電圧発生源とを具備する静電霧化装置とする。水タンク6から吸水体4の霧化部13に至るまでの水搬送経路中に、ミネラル成分を除去するためのイオン交換部18を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電霧化現象によりミストを発生させる静電霧化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
静電霧化装置とは、水を収容する水タンクと、上記水に電圧を印加する印加電極と、上記水と接触するとともにその一端に霧化部を有している吸水体と、吸水体の霧化部と対向している対向電極とを備えて、吸水体が水タンクから吸上げた水を該吸水体の霧化部において静電霧化現象により霧化させることでミストを発生させるものである(特許文献1参照)。しかしながら、上記した従来の静電霧化装置においては、水タンクに補給する水が、水道水のようなCa、Mg等のミネラル成分を含む水であった場合には、このミネラル成分が空気中のCOと反応して吸水体の霧化部にCaCOやMgO等を析出付着させ、ミストの発生を妨げることがあった。このため、使用者にはCaCOやMgO等の付着物を取り除く定期的なメンテナンスが要求されるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3260150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題点に鑑みて発明したものであって、使用者に付着物除去のメンテナンスを強いることなく、継続的に使用することの可能な静電霧化装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明を、霧化させるための水を収容する水タンク6と、上記水に電圧を印加する印加電極2と、上記水と接触するとともにその一端に尖った霧化部13を有している吸水体4と、吸水体4が毛細管現象により水タンク6から吸上げた水を該吸水体4の霧化部13において霧化させさせてナノメータサイズの粒子径のミストを発生させるための電圧を印加電極2に印加する高電圧発生源とを具備する静電霧化装置であって、水タンク6から吸水体4の霧化部13に至るまでの水搬送経路中に、ミネラル成分を除去するためのイオン交換部18を設けることを特徴としたものとする。このようにすることで、水タンク6内に収容してある水をイオン交換部18にてCa、Mg等のミネラル成分が除去された水としてから霧化部13に供給することができるので、尖った霧化部13において空気中のCO2との反応によりCaCO3やMgO等が析出付着することが防止される。したがって、使用者がCaCO3やMgO等の付着物を取り除く定期的なメンテナンスを行わずとも、静電霧化装置を継続的に使用することが可能となる。上記静電霧化装置においては、接地電極を更に備えることが好ましい。
【0006】
また、上記静電霧化装置においては、吸水体4を、毛細管現象を生じ且つ陽イオン交換機能を有するイオン交換繊維を用いて形成することで、吸水体4にイオン交換部18を兼ねさせることが好ましい。このようにすることで、水タンク6から吸水体4の霧化部13に至るまでの水搬送経路中にイオン交換部18が配されることとなる。
【0007】
また、上記静電霧化装置において、イオン交換部が、ナトリウムイオン交換型のものであることや、水素イオン交換型のものであることや、水素イオン交換型のものと陰イオン交換機能を有する他のイオン交換体とを併用したものであることが好ましい。ナトリウムイオン交換型であればCa2+やMg2+とNaとを交換吸着することができ、水素イオン交換型であればCa2+やMg2+とHとを交換吸着することができる。また、水素イオン交換型のものに陰イオン交換機能を有する他のイオン交換体を併用することで、pHのバランスを保つことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、使用者に付着物除去のメンテナンスを強いることなく継続的に使用することの可能な静電霧化装置を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態における一例の静電霧化装置の断面図である。
【図2】同上の静電霧化装置の平面図である。
【図3】同上の静電霧化装置に高電圧を印加させる状態の断面図である。
【図4】同上の静電霧化装置の、一部をイオン交換部とした場合の吸水体を示す正面図である。
【図5】本発明の実施の形態における他例の静電霧化装置の断面図である。
【図6】同上の静電霧化装置の、イオン交換部として粒子材をイオン交換部タンク内に収納した場合を示す模式的断面図である。
【図7】同上の静電霧化装置の、イオン交換部としてシート材を積層させてイオン交換部タンク内に収納した場合を示す模式的断面図である。
【図8】同上の静電霧化装置の、イオン交換部としてシート材をロールさせてイオン交換部タンク内に収納した場合を示しており、(a)は模式的断面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。図1〜図3には、本発明の実施の形態における一例の静電霧化装置を示している。一例の静電霧化装置は、円筒状であってその周面に通風孔1を開口させてあるホルダー10と、ホルダー10の上部に配された対向電極3と、ホルダー10の下部に嵌め込まれて水に対する電圧印加を行う印加電極2と、この印加電極2により保持されていて毛細管現象を生じ得る吸水体4と、同じく印加電極2により保持されるイオン化針5と、ホルダー10の下部に装着された水タンク6とで主体を構成している。上記水タンク6は、上端の開口したカップ状を成しており、その上端開口縁部分の外面に設けてある突起7が、ホルダー10の下部に装着されている印加電極2の外周フランジ部21に設けられている係合凹所12にバネヨット係合することで取り付けられている。
【0011】
対向電極3と印加電極2は共に、カーボンのような導電材を混入した合成樹脂や、SUSのような金属で形成されることで導電性を有しているもので、図3に示すようにホルダー10の上部に被嵌される対向電極3は、その外周面に形成された接続用突部14の外面に接触する接地用接触板8を通じて接地される。また、ホルダー10の下部内に嵌め込み固定されてホルダー10内面のリブ11で押え固定されている印加電極2は、その外周面に形成された接続用突部20の外面に接触する接触板9を介して高電圧発生源に接続される。
【0012】
棒状を成す吸水体4は、その上端が針状に尖った霧化部13となっており、複数本(図示例では6本)の吸水体4が印加電極2に取り付けられている。これら吸水体4は、印加電極2の中央に配されたイオン化針5を中心とする同心円上に等間隔で配置されて、その上部が印加電極2よりも上方に突出し、且つ、その下部は下方に突出して水タンク6の収容空間24内に収容される水と接触するようになっている。図中22は、印加電極2から下方に延設された円筒状のスカートであり、上記複数本の吸水体4の外周を囲んでいるとともに、その下端が吸水体4の下端よりも下方に位置しており、その下端開口には格子状の保護カバー17が被嵌されている。印加電極2におけるこのスカート22は、水タンク6の収容空間24内に収容された水と接触して該水に高電圧を印加すると同時に、保護カバー17と共に吸水体4を保護するものである。
【0013】
印加電極2は、水タンク6を装着したときに該水タンク6の上端開口を略密閉することで、傾いたときにも水タンク6内の水が漏れ出ることを防止している。また、スカート22にはその上下方向全長に亘るスリット23を設けており、水を充填させてある水タンク6を装着する際に上記スリット23を介してスカート22に囲まれる空間内の空気を抜いて、スカート22内への水の流入を許すようになっている。
【0014】
ホルダー10の上端開口を閉じるように装着された対向電極3は、図2に示すように、その中央に開口部15を有している。この開口部15の縁は、上方から見たときに各吸水体4の霧化部13を中心とした同一径の円弧部分Rを、他の円弧部分rで円滑に繋いだ形状となっている。上記開口部15は格子状の保護カバー16で覆っており、開口部15を通して手指等が吸水体4やイオン化針5に接触することを防止している。
【0015】
しかして、一例の静電霧化装置において、水が充填された水タンク6を装着すると、水タンク6内の水が印加電極2のスカート22及び吸水体4に接触するとともに、吸水体4が毛細管現象により水を上端側へと吸い上げる。ここで、対向電極3を接地させるとともに印加電極2に高電圧発生源を接続して負電圧を印加させると、吸水体4の上端に設けてある霧化部13が印加電極2の実質的な電極として機能すると同時に、対向電極3の上記円弧部分Rが実質的な電極として機能し、吸水体4の霧化部13にまで搬送された水にレイリー分裂を起こさせる。レイリー分裂によって霧化部13の水はナノメータサイズの粒子径を有する高帯電のミストに霧化され(これを静電霧化という)、外部へと吐出されることとなる。また、印加電極2に保持されるイオン化針5にも負電圧が同時に印加され、対向電極3との間でのコロナ放電によってマイナスイオンも発生させるようになっている。このとき、仮に電極間の距離が同一であればマイナスイオン発生の為に必要な電圧よりも静電霧化に必要な電圧が高いことから、吸水体4の上端の霧化部13から対向電極3までの距離L1よりもイオン化針5から対向電極3までの距離L2が適当な程度に長くなるよう設定することで、静電霧化の方を生じ易くしている。もっとも、水タンク6内の水が無くなり吸水体4に保持される水も霧化されて無くなった場合には、マイナスイオンの発生のみが継続して行われることとなる。
【0016】
ここにおいて、一例の静電霧化装置にあっては特徴的な構成として、吸水体4を、毛細管現象を生じ得るイオン交換繊維を用いて形成し、吸水体4がイオン交換部18を兼ねるようにしている。上記イオン交換繊維は、イオン交換樹脂等の陽イオン交換機能を有するイオン交換体から成り、例えばナトリウムイオン交換型であればCa2+やMg2+とNaとを交換吸着し、水素イオン交換型であればCa2+やMg2+とHとを交換吸着するものである。上記のようにすることで水タンク6から吸水体4の上端の霧化部13に至るまでの水搬送経路中にイオン交換部18が配されることとなり、水タンク6内に充填させてある水中のCa、Mg等のミネラル成分を除去し、これらミネラル成分を含まない水としてから霧化部13へと搬送することができるので、霧化部13において空気中のCOとの反応によりCaCOやMgO等が析出付着することが防止される。即ち、使用者がCaCOやMgO等の付着物を取り除く定期的なメンテナンスを行わずとも、継続的に静電霧化装置を使用することが可能となっている。なお、上記イオン交換体として水素イオン交換型のものを用いる場合には、pHのバランスを保つ為に陰イオン交換機能を有する他のイオン交換体を併用することが好ましい。
【0017】
また、上記のように吸水体4の全部がイオン交換部18を兼ねるようにするのではなく、例えば図4に示すように、主体部分を多孔質セラミックで形成するとともにその外周面にイオン交換繊維から成るシート材19を巻装して主体部分を被覆させることで吸水体4を形成し、吸水体4の一部がイオン交換部18を兼ねるようにしてもよい。この場合にあっても、上記イオン交換部18は水タンク6から吸水体4の上端の霧化部13に至るまでの水搬送経路中に配されることとなり、CaCOやMgO等の析出付着は防止される。
【0018】
次に、本発明の実施の形態における他例の静電霧化装置について図5〜図8に基づいて説明するが、一例と同様の構成については同一符号を付して説明を省略する。図5に示すように、他例においては上端の開口したカップ状のイオン交換部タンク31を水タンク6の下部に装着しており、イオン交換部タンク31の開口内に水タンク6の下部が嵌入されるようになっている。イオン交換部タンク31の装着時に、水タンク6の多数の通水孔35を穿設してある下底部25とイオン交換部タンク31の下底部33との間には所定の収容空間34が形成され、この収容空間34内にイオン交換部18が収容されるようになっている。イオン交換部18としては、後述するようにイオン交換樹脂等のイオン交換体から成る粒子材36(図6参照)や、同様のイオン交換体から成るシート材37,38(図7、図8参照)を用い、これらが収容空間34内に収容されるようにイオン交換部タンク31内に充填しておけばよい。
【0019】
上記のようにすることで、水タンク6とこれの下方に位置するイオン交換部タンク31とが、通水孔35を介して互いの収容空間24,34が連通した状態で連結され、水タンク6の収容空間24内に収容された水が、イオン交換部タンク31の収容空間34内に収容されたイオン交換部18と接触してイオン交換を行うようになっている。ここでのイオン交換は、一例で既述したものと同様に水中のCa2+、Mg2+等のミネラル成分の陽イオンをNa、H2+等の他の陽イオンと交換吸着させるものである。即ち、他例の静電霧化装置は、水タンク6から吸水体4の上端の霧化部13に至るまでの水搬送経路の中で、水タンク6内に収容してある段階で水と接触してミネラル成分を除去するようにイオン交換部18を直接水タンク6に取り付けたものであり、これにより水タンク6内に充填させてある水中のCa、Mg等のミネラル成分を除去したうえで吸水体4の下部から霧化部13へと搬送することができ、霧化部13におけるCaCOやMgO等の析出付着が確実に防止されるようになっている。
【0020】
図6には、イオン交換部18として多数の粒子材36をイオン交換部タンク31に充填してある場合を示しているが、この場合には、粒子材36として水タンク6の通水孔35を通過し得ないサイズの粒径を有したものを用いる。また、図7に示すように、イオン交換部18として、イオン交換繊維を収納空間34内に収容可能となるように上方から見て丸型に切断して成るシート材37を、イオン交換タンク31内に積層させたものを用いてもよいし、図8に示すように、イオン交換繊維をその幅寸法が収納空間34の高さ寸法に納まるような帯状に切断して成るシート材38を、幾重かにロールさせた状態でイオン交換タンク31内に収納したものを用いてもよい。
【0021】
なお、本例のイオン交換部18を設ける箇所としては、上記のように水タンク6と連通接続されるように該水タンク6の下側に直接取付けたイオン交換部タンク31内に配される構造に限定されず、例えば水タンク6内に収容される袋状の収納部内に配される構造として、イオン交換部18が水タンク6内に収容される水と接触するようにしてもよい。
【0022】
また、他例の吸水体4はその全部を多孔質セラミックで形成したものであるが、これに限らず、一例で示したように吸水体4の一部又は全部が更にイオン交換部18を兼ねるようにしてもよい。この場合、特別な部材を追加せずともイオン交換機能を向上させることができ、霧化部13における析出付着が更に効果的に防止されることとなる。
【符号の説明】
【0023】
2 印加電極
3 対向電極
4 吸水体
6 水タンク
13 霧化部
18 イオン交換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
霧化させるための水を収容する水タンクと、上記水に電圧を印加する印加電極と、上記水と接触するとともにその一端に尖った霧化部を有している吸水体と、吸水体が毛細管現象により水タンクから吸上げた水を該吸水体の霧化部において霧化させてナノメータサイズの粒子径のミストを発生させるための電圧を印加電極に印加する高電圧発生源とを具備する静電霧化装置であって、水タンクから吸水体の霧化部に至るまでの水搬送経路中に、ミネラル成分を除去するためのイオン交換部を設けることを特徴とする静電霧化装置。
【請求項2】
接地電極を更に備えたことを特徴とする請求項1記載の静電霧化装置。
【請求項3】
吸水体を、毛細管現象を生じ且つ陽イオン交換機能を有するイオン交換繊維を用いて形成することで、吸水体にイオン交換部を兼ねさせたことを特徴とする請求項1記載の静電霧化装置。
【請求項4】
イオン交換部が、ナトリウムイオン交換型のものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の静電霧化装置。
【請求項5】
イオン交換部が、水素イオン交換型のものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の静電霧化装置。
【請求項6】
イオン交換部が、水素イオン交換型のものと、陰イオン交換機能を有する他のイオン交換体とを併用したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の静電霧化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−255091(P2009−255091A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183605(P2009−183605)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【分割の表示】特願2003−425045(P2003−425045)の分割
【原出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】