説明

静電駆動マイクロメカニカルスイッチングデバイス

【課題】低損失、高アイソレーション、低駆動電圧、スイッチ時間が短いマイクロメカニカルスイッチングデバイスを提供する。
【解決手段】固定電極2および可動電極3を含む駆動部と、前記可動電極3に機械的に接続されているプッシュロッド4と、前記プッシュロッド4の一方の側に機械的に接続されている可動接点要素と、前記プッシュロッド4に機械的に接続されている少なくとも1つの復元ばね5と、信号線7a、7bおよび接地線13と、を備えるスイッチングデバイス1aであり、シャント構成において、前記接地線13と前記信号線7a、7bとの間のオーミックコンタクトを閉成しかつ解放する接点ビーム6を備え、前記接地線13が、前記接点ビーム6と前記接地線13との間に前記オーミックコンタクトを形成するように、前記信号線7a、7bのギャップを通る少なくとも1つの接点バー12を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板のバルクに可動要素が形成され、基板の面における可動要素の水平移動により少なくとも1つのオーミックコンタクトを閉成しかつ解放する静電駆動マイクロメカニカルスイッチングデバイスであって、櫛型電極を有する駆動部であり、電極が固定駆動電極および可動電極を含む、駆動部と、可動電極に機械的に接続されかつ電極を通して延在している可動プッシュロッドと、プッシュロッドの一方の側に機械的に接続されている可動接点要素と、プッシュロッドに機械的に接続されている少なくとも1つの復元ばねと、信号線および接地線であり、信号線がギャップによって分断される2つの部分を含む、信号線および接地線とを備える、スイッチングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電気信号、すなわち高周波(RF)信号用のマイクロメカニカルスイッチは、いくつかの刊行物から既知である。基本概念を、機械的駆動に使用される力を生成する方法と、製造技術と、接点のタイプとに基づき、複数のカテゴリに分類することができる。一般に、スイッチの接点は、金属間接触によって具現化されるオーミック型であるか、または静電容量型であり得る。静電容量スイッチの場合、信号の流れは、伝送線と直列にまたは並列に接続されている静電容量コントラストによって制御される。
【0003】
上述したように、本発明は、オーミックコンタクトを有する静電駆動デバイスに関する。関連する製造技術は、広く「バルク技術」として述べられている。バルク技術では、機械的領域の機能素子はウェハ材料の深部まで構造化され、一方、いわゆる表面技術では、機械要素を先に堆積された材料層内に転写する。
【0004】
マイクロメカニカルスイッチに対する以下の主な要求は、あり得る応用から導出したものである。すなわち、5Vを下回る範囲での低駆動電圧、わずかな駆動電力消費、10μ秒未満の短いスイッチ時間、直流域での完全なアイソレーション、RF域での−30dBを上回るアイソレーション、0.2Ω未満のオン抵抗、−0.5dBを上回るオン状態での電力損失、駆動ポートから信号ポートまでのわずかなクロストーク、10Vを上回る高い自己駆動電圧、10億スイッチサイクルを上回る耐用年数、および統合スイッチの場合の極めて小さい外形または実装されたスイッチ素子の小さいフットプリントである。
【0005】
いくつかの理由により、駆動力を最大限にすることが望ましい。大部分のRF応用では、信号経路の高速スイッチングが要求される。メカニカルスイッチの機能素子のすべてが慣性質量を提供する。力と加速度との線形関係は、力が大きいほど反応が高速になることを意味する。オーミックコンタクトの信頼性が、接触力によって著しく影響を受けることも知られている。接触力が小さいと、接触抵抗が高くなり、電流の流れにより過度な加熱が発生する可能性がある。力が小さいことにより、接触面積も小さくなる。実際の接触は、小さい表面の凹凸でしか発生しない可能性があり、それにより、デバイスの初期故障が発生する可能性がある。
【0006】
オーミックスイッチの場合、比較的高い駆動力の発生が中心的な役割を果たし、それは、機械的可動構造を十分高速に加速させ、十分な接触力を取得し、かつ閉成した接点を開成する時に付着力に打ち勝つために十分な駆動力により、短いスイッチ時間、低い接触抵抗および高い信頼性が達成されるためである、と結論づけることができる。低い駆動電圧は、高い駆動力に対して反するものであり、したがって問題である。
【0007】
静電駆動は、極性の異なる電極間の力に依存する。2つの導電体間の電位差により、エネルギーを保存する電界がもたらされる。導電体の位置が変化することにより、電界に保存されるエネルギーの量、すなわち静電容量が影響を受ける場合、両導電体に誘引力が作用する。この力は、機械的に阻止されなければエネルギー勾配の空間方向への移動をもたらす向きを有している。この状況を以下の式によって記述することができる。
【数1】


ここで、Fは機械力であり、Uは駆動電位であり、xは機械的作動範囲(travel)であり、Cは静電容量である。
【0008】
式(1)によれば、駆動電位を増大させることにより、または静電容量勾配を増大させることにより、力を増大させることができる。電圧の上昇は、一般に、応用によって確定される制限を受ける。一般的な設計目標は、静電容量の勾配を最大限にすることである。単純な平行板コンデンサと1自由度とを想定すると、静電容量の勾配を以下のように記述することができる。
【数2】


ここで、εは真空の誘電率であり、εは誘電体材料の相対誘電率であり、Aは電極の表面積であり、gは初期離隔距離である。ε≒1の気体または真空のみが好適な誘電体材料であるため、一般的な設計目標は、表面積を最大化し、電極の離隔距離を最小化することである。
【0009】
電極面積を増大させる明白な方法は、より大きい電極を使用することである。少なくとも2つの事実により、この方法は実際的な解決法から排除される。機能素子の物理的な寸法を増大させることにより、通常、ウェハ上のデバイスのサイズが大きくなる。結果として、コストが増大し、製造歩留まりが低下する。製造問題に加えて、デバイスが大きくなることにより、集積化問題も発生する。
【0010】
電極の横方向の寸法を増大させることなく面積を増大させる一般的な手法は、櫛型電極を使用するというものである。
【0011】
櫛歯の静電容量を、以下の式によって計算することができる。
【数3】


ここで、lは櫛歯の長さであり、thは、ウェハの深さ方向の櫛歯の厚さであり、g0cは櫛歯の離隔距離であり、nは櫛歯対の数である。横方向寸法が同じであるとすると、平行板コンデンサの静電容量を以下の式によって計算することができる。
【数4】


ここで、wは櫛歯の幅であり、g0pは電極の離隔距離である。櫛型電極は、以下の条件を満たす場合、平行板コンデンサより大きい単位面積当たりの静電容量を提供する。
【数5】

【0012】
(5)を配置し直しかつthおよびg0cの比をARアスペクト比に置き換えることにより、以下の関係を導出することができる。
【数6】


関係(6)は、櫛型電極の利点が直接、エッチングプロセスのあり得る最大アスペクト比によって決まることを述べている。関連するパラメータに対しg0p=1μm、w=1μm、g0c=4μmおよびth=40μm(AR=10)として技術的に実現可能な形状を想定すると、櫛型設計は、単位面積当たり8倍大きい静電容量を提供する。櫛型電極が、高い駆動静電容量を得ることに関して有利であるということを結論付けることができる。
【0013】
しかしながら、静電駆動に関し、高静電容量は、中間結果としての役割を果たすのみである。式(1)によれば、力は静電容量の勾配に比例する。先の計算に対して使用した対称的な設計では、対象となる方向、すなわち櫛歯の向きに対して直交する方向にいかなる正味の力ももたらさない。対称性を破る明白な解決法は非対称レイアウトを使用することであり、すなわち、g0cが櫛型の両側で異なる。g0cは通常可能な限り技術的に小さいように選択されるため、g0cが異なるということは、一般に一方の側のg0cが増大することを意味する。非対称な離隔距離をもたらすより的確な手法は、離隔距離が最小の対称的な櫛歯を製造し、後処理ステップにおいて可動構造を変位させるというものである。この原理を、以下ギャップ低減(gap reduction)と呼ぶ。
【0014】
櫛型設計によって得られる力と平行板コンデンサによって得られる力との比に対して分析的記述を導出することは、容易に可能であるが幾分冗長である。しかしながら、上述した数値例を参照すると、可動構造が2.1μm偏向すると駆動力は等しくなる。3μm偏向しかつそれとともに残っている電極の離隔距離が1μmである(実際に安全な最小数であることが証明されている)と、櫛型設計の力は4倍大きくなる。ギャップ低減の技法により、高静電容量の利点を大きい機械力にうまく移すことができると結論付けることができる。
【0015】
大きい力に加えて、ギャップ低減には、さらなる重要な利点がある。可動要素および固体要素をより近づけることにより、接点要素の残りの作動範囲およびそれとともにスイッチング時間が低減する。オーミックコンタクトスイッチには、確実なスイッチングに対してわずかな作動範囲があればよい。表面粗さ、可撓性および電気的ブレークスルーを考慮しても、最小作動範囲は通常、最小g0cより一桁小さい。
【0016】
ギャップ低減を実現する1つのあり得る解決法は、文書(特許文献1)に示されている。この文書は、その初期位置から偏向する可動構造について記載している。動きは、以下ストッパと呼ぶ接点要素によって停止される。可動要素までの離間距離は、最初に定義された最小離間距離より小さくなる必要があるため、ストッパの存在は矛盾して見える可能性がある。しかしながら、実際には、設計規則から局所的に逸脱することが可能である。「局所的に」という用語は、ストッパの位置における設計が、設計者により非常に注意深く調べられることを意味する。周囲の要素は、ストッパの要件に対して特に適合される必要がある。したがって、任意の位置でその小さい離間距離を制作することは不可能である。設計規則は残っている。
【0017】
ギャップ低減機構の実際の適合性は、一度の駆動に必要な周辺部により、かつ低減したギャップの状態を永久的に維持する技法により定義される。追加の周辺部は、全体的な概念の利点を妨げないように、ウェハの面積のわずかな量しか消費しないものであるべきである。ラッチ機構は、永久的な駆動信号の印可に依存するべきではない。そうでなければ、これにより、連続的に電力が消費されるか、または供給の障害の後に未知の状態になる可能性がある。
【0018】
横方向可動体の偏向状態を維持する技法は、文書(特許文献2)に記載されている。機械式ラッチングは、機械的構造間の形状適合(form−fitting)の結果である。この概念の不都合は、最小離隔距離による横方向間隔が事前に確定されるため明白となる。この場合、中間位置、すなわちg0cの分数おける機械式ラッチングは、実現が困難である。形状適合要素の大きいサイズおよび複雑な形状は、設計規則の局所的な偏差に適していない。
【0019】
実際の実装(平行板電極または櫛型電極)とは無関係に、駆動機構は、接点要素に結合される必要がある。「接点要素」という用語は、スイッチング機能を実現するために物理的に接触させられる金属化構造を言う。アクチュエータと接点要素との間である種の弾性を実現する正当な理由がある。
【0020】
文書(特許文献3)および(特許文献4)は、プログレッシブばねを実装するために可撓性接点を使用することを記載している。スイッチの開成状態では追加の弾性は停止状態である。最初、アクチュエータは、主ばね、すなわち接点を枠に接触させるばねを偏向させる力を提供するのみでよい。駆動電圧を低くすることができる。接触の瞬間、接点の弾性が作動を開始する。アクチュエータの作動は停止しない。駆動電極間の離隔距離は低減し続ける。したがって、力が増大する。機械的に直列に接続されているため、力は、接点に対しその極限まで作用する。
【0021】
表面技術を使用するスイッチの大部分の実装は、駆動電極の物理的接触に依存する。間のアイソレーション層が電気的短絡を防止する。しかしながら、この層は、一般に帯電しやすい。アイソレーションの帯電により、スイッチは解放されない。この故障モードは通常スティッキングと呼ばれる。文書(特許文献3)および(特許文献4)に記載されている発明は、プログレッシブばねを、接触力の増大のためのみでなく、好ましくは解放力の増大のために使用する。追加の解放力は駆動電極にしか作用しないことを留意することが重要である。接点自体は、駆動電圧を低く維持するために通常小さい、主ばねの力のみによって解放される。
【0022】
文書(特許文献5)は、上述したタイプのスイッチングデバイスについて記載している。この文書は、機械力の増大のための要素と、静電駆動部と接点ビームとの間のスイッチの高周波アイソレーションのためのアセンブリとを提供する概念を含んでいる。機械力の増大のための要素は、それぞれ、静電駆動部と接点ビームおよび/またはプログレッシブ効果を有する弾性要素との間のレバー機構かまたは、静電駆動部と接点ビームとの間の力の束に設けられたクラッチ機構のいずれかである。高周波アイソレーションは、レバー機構上のメタライゼーションの分断によって具現化される。
【0023】
静電駆動MEMSスイッチに対する多くの応用では、広い周波数範囲(たとえば1MHz…100GHz)において低い挿入損失および高いアイソレーション(たとえば、それぞれ−0.5dBおよび−30dB)が必要である。低駆動電圧(たとえば5V)で低いスイッチ時間(たとえば10μ秒未満)が達成されるべきであり、スイッチは、接点摩耗および接点スティッキングが信頼性を10スイッチサイクル未満まで制限しないように設計されなければならない。スイッチの接点要素が信号線に永久的に接続され、かつスイッチの接地電位との電気的接続としての役割を果たす、シャント構成でのMEMSスイッチは、基本的に、周波数範囲およびアイソレーション要件に適合するが、以下の問題が発生する。
【0024】
低スイッチ時間および十分な信頼性は、比較的強い駆動力を必要とする。これは、低駆動電圧に対する要求と対照的である。あり得る解決法は、垂直駆動電極と比較して相対的に電極面積が広いために、水平駆動の櫛型駆動電極を適用するというものである。しかしながら、完全な周波数帯域が伝送されるべきであるため、電気的シャント接点とアクチュエータとの間の機械的結合は、信号線を分離させることなく達成されなければならず、かつラインインピーダンスの変動が可能な限り小さくあるべきである。
【0025】
さらなるあり得る解決法は、信号線の可撓性部分であり、それは、シャント接点を支持することができかつアクチュエータに機械的に結合され、スイッチが駆動されるとその屈曲によりさらなる力を提供する。この力は、駆動力を抑制し、接触力を低減させ、その結果、必要な駆動電圧が高くなる。信号線の極めて幅が狭く長い可撓性部分が解決法になるが、この種の信号線のインピーダンスは、大部分の場合、供給線のインピーダンスから大きく逸れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0219113A1号明細書
【特許文献2】独国特許第60 2005 002 277 T2号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0009861A1号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0099252A1号明細書
【特許文献5】国際公開WO2008/110389A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
したがって、本発明の目的は、低損失で、広い周波数範囲において高アイソレーションであり、低駆動電圧でスイッチ時間が短く、かつ十分な信頼性のある、シャント構成のマイクロメカニカルスイッチングデバイスを提供することであり、スイッチングデバイスは、信号線のラインインピーダンスおよびその変動が可能な限り小さいように設計される。
【課題を解決するための手段】
【0028】
その目的は、上述したタイプの静電駆動マイクロメカニカルスイッチングデバイスであって、シャント構成において、接地線と信号線との間のオーミックコンタクトを閉成しかつ解放し、接点要素が、信号線に対して少なくとも部分的に反対方向に延在しかつ信号線の両部分それぞれに電気的かつ機械的に接続されている可動接点ビームを備え、接地線が、接点ビームと接地線との間にオーミックコンタクトを形成するように、信号線のギャップを通る少なくとも1つの接点バーを備え、接点ビーム、信号線および接地線の少なくとも上壁および側壁にコンタクトメタライゼーションが設けられる、スイッチングデバイスによって解決される。
【0029】
本発明によれば、接点ビームを備えたシャント構成のスイッチングデバイスであって、接点ビームは、その両端において、必ずしもではないが概して同一平面状のストリップ信号線である信号線に、機械的にかつ電気的に接続され、かつ電極によって駆動されている可動プッシュロッドにさらに接続される、スイッチングデバイスが提供される。接点ビームは、駆動力によって屈曲する。接点ビームの寸法は、それが高弾性を提供し、したがって駆動を抑制する力が弱いように選択される。しかしながら、接点ビームは、追加の復元力を提供する。この力を使用して、接点のスティッキングを防止することができる。しかしながら、復元力が高すぎると、最小駆動電圧が高くなり、それは望ましくない。したがって、本発明によれば、図面を参照して後述するように、幾分長くかつ細い接点ビームを使用する必要がある。こうした細いビームはインダクタンスが高い。
【0030】
低周波数およびDCでは、接点ビームのインダクタンスは重要ではない。それは、高いGHz周波数において重要である。したがって、本発明は、信号線のかなりの部分が、高周波数に対して追加の容量結合を形成するために、接点部分に対して平行に配置される、スイッチングデバイスを提案する。したがって、長い接点ビームの誘導的影響を低減する追加の電流路が形成される。したがって、ラインインピーダンスの不整合の問題なしに、低剛性に対する要求を満足させることができる。
【0031】
高周波域におけるオーミックスイッチのアイソレーションは、入力ポートから出力ポートまでの容量クロストークによって制限される。したがって、本発明では、信号線内に、2つの接点セットが直列に付与され、それらはともに、オフ状態で開成されオン状態で閉成される。接点は、弾性接点ビームの両側に配置される。
【0032】
可動接点ビームの抵抗は、スイッチのオン抵抗およびオン状態における電力損失の要因になる。したがって、接点ビームにおける両接点間の電気的接続または接点ビームの抵抗は、信号線に対して直列であり、スイッチングデバイスの性能を制限する。したがって、本発明は、接点ビーム、接地線および信号線の上壁および側壁の上に金属を堆積させることを提案し、それにより、この抵抗が著しく低下する。そのコンタクトメタライゼーションを、たとえば接点ビームの構造化の後の金属スパッタリングによって具現化することができる。この場合、メタライゼーション領域を画定するためにシャドウマスクを付与しなければならない。別法として、スイッチングデバイスの可動部分の構造化の前に、電気メッキにより相対的に厚い金属層を付与することができる。それを、可動接点および固定接点に対する接点材料として同様に使用してもよい。しかしながら、その別の解決法では、シリコンエッチングプロセス中にこの層の保護が必要であり、後続するプロセス中に接触面の汚染があり得る。
【0033】
高駆動力および低スイッチ時間を達成するために、非起動状態における可動接点先端部および固定接点先端部の離隔距離と、可動駆動電極および固定駆動電極の離隔距離とがともに、可能な限り小さくなければならない。製造技術制約により、電極間および接点先端部間の間隔の最小寸法が限られる。したがって、本発明の好ましい実施形態によれば、より小さい離隔距離を達成するために、製造シーケンスの最後に起動されるギャップ低減機構が付与される。ギャップ低減機構は、可動枠を備え、それは、各復元ばねの固定端に設けられ、かつ少なくとも部分的に1つの固定付着パッドを包囲し、可動枠は、少なくとも1つの追加の誘引電極に対向し、かつ追加の誘引電極に起動電圧が印可されると付着パッドに向かって移動するように、弾性的に懸架され、可動枠は、可動枠と復元ばねとの間の接続の側において付着パッドにおいて停止し、付着パッドおよび可動枠は、微細溶接によってその配置で永久的に接合される。すべての可動枠によりギャップ低減処置を行った後、駆動電極の離隔距離および接点の離隔距離は永久的に低減する。付着パッドが、可動枠と復元ばねとの間の接続の側において可動枠と接触するように設けられているため、復元力に対する製造公差の影響を低減することができる。
【0034】
その構成の特定の実施形態では、付着パッドは、その上面に、スイッチングデバイスの基板材料のドーピングより高濃度ドーピングを有している。これを用いて、微細溶接の流れをより小さい体積に局所化し、それにより必要なエネルギーおよび電圧をそれぞれ低減することができる。
【0035】
その構成の変形では、機械的安定性を向上させかつ製造公差の影響を低減するために、可動枠は2つの部分に分割される。
【0036】
さらに、可動枠のギャップ低減電極に面している面が、他の面に比較して著しく広いため、機械的剛性を向上させることができ、静電力による望ましくない屈曲および引込みを防止することができる。付着パッドと接触する枠の面は、製造公差により付着パッドの可動枠の対応する面に対する離隔距離が異なることになる場合であっても、両付着パッドに密に接触するための弾性を提供するように具現化される。
【0037】
小さい漏れ電流のために、処理中または陽極接合のような静電気補助ウェハレベルパッケージ手順の間の放電が、スイッチングデバイスの電極または接点に損傷を与える可能性がある。したがって、本発明のさらなる実施形態では、アンダーエッチングにより基板から解放されている金属ブリッジが、スイッチングデバイスの製造および/または処理中に、固定電極および可動電極に電気的に接続されている電気線の間に設けられる。さらなる実施形態によれば、アンダーカットを有する金属ブリッジが、スイッチングデバイスの製造および/または処理中に、信号線および接地線に電気的に接続されている電気線の間に設けられる。金属ブリッジは、製造および処理中の駆動電極間または接点間の電位を阻止する。したがって、上述したようにスイッチングデバイスの製造および処理中の放電および破損を、除去できないにしても大幅に低減することができる。金属ブリッジが、基板のトレンチによってアンダーカットされているため、金属ブリッジの熱伝導性および熱時定数を低減することができる。
【0038】
別法では、固定電極および可動電極、ならびに信号線および接地線のそれぞれに接続されている電気線は、スイッチングデバイスの処理および/またはウェハレベルパッケージング中に、スイッチングデバイスのアイソレーション層の接点窓および後続するメタライゼーションによって、基板材料に電気的に接続され、それにより放電および損傷が低減する。
【0039】
その構成において、アンダーエッチングによって基板から解放されている少なくとも1つの金属ブリッジが、接点窓への接続経路内に挿入されている場合、金属ブリッジを、スイッチングデバイスの製造および処理プロセスの最後に、指定された接点によって提供されなければならない電流によって焼き切ることができる。
【0040】
接点窓が、基板の上面の局所ドーピング領域によって形成され、局所ドーピング領域が金属によって接続され、金属がドーピング領域の上に開口部を有する場合、特に有利である。局所ドーピング領域は、接点窓の真下の基板材料の接触抵抗を低下させる。開口部を小さくすることができ、それは、製造手順の最後において、固定電極と可動電極との間、かつ信号線と接地線との間の電気接続を分断するように、接点窓を別の配置として完全にアンダーエッチングするために、さらなるエッチングステップに使用される。
【0041】
駆動端子と櫛型電極との間の抵抗と駆動電極の静電容量とはともに、電気系の時定数とスイッチ時間の増大とをもたらす。この問題を克服するために、スイッチングデバイスの電極はシリコンから構成され、シリコン材料は駆動部の領域に局所ドーピングされる。これにより、電気系の抵抗は低下し時定数は低減する。
【0042】
復元ばねは、非作動状態に切り換わる時、接点の離隔距離に対しかつ接点の付着力を克服するために十分大きい力を提供する。復元ばねの力は、アクチュエータの力を抑制し、それにより、駆動状態における接触力を低減する。したがって、低剛性の復元ばねを使用することが望ましい。付着力による接点スティッキングの危険をもたらすことなく低剛性のばねを使用することができるために、本発明の実施形態では、プッシュロッドと接点ビームの接点先端部との間に弾性ビーム要素が設けられ、プッシュロッドおよび可動電極の質量は、接点ビームおよび接点先端部の質量の3倍超である。弾性接点ビームは、駆動状態でアクチュエータの力によって圧縮される。非駆動状態に切り換わる時、電極およびプッシュロッドは、復元ばねおよび圧縮された弾性接点ビームの力の下で加速する。最初は、接点は閉成したままである。接点のスティッキングを想定すると、電極およびプッシュロッドの推進力(momentum)によって、分離力が一時的に増幅される。
【0043】
本発明は、シャント構成のスイッチングデバイスを含むため、コンタクトメタライゼーションにより、信号線と接地線との間の容量結合が強固になる。したがって、本発明の別の実施形態では、信号線および/または接地線は、コンタクトメタライゼーションの位置でストリップの2つの側に分割され、ストリップは、基板から深さの隔たりがある。この構成により、結合容量がはるかに小さくなる。信号線または接地線は、コンタクト金属堆積の位置でストリップに分割される。ストリップは、アンダーエッチングが容易に可能であるように幅が狭い。基板からの離隔は、ストリップ間の電気的接続を回避するために必要である。RF電極に対し、各側のストリップの1つを除くすべてが電気的に絶縁されていない。最外ストリップのみが電気的に接続される。ストリップに分割することにより、それぞれ、結合面積が小さくなり、静電容量が低くなる。絶縁されたストリップにより、RF信号線とストリップとの間の結合容量とRF接地とストリップとの間の静電容量との直列接続がもたらされる。静電容量の直列接続により、静電容量が元のものより小さくなる。
【0044】
WLPによるデバイスのハーメチックシールにより、通常、基板またはカバーに垂直ビアを有することが必要となり、それにより外形の小型化が制限される。これを克服するために、本発明の特定の例では、スイッチングデバイスの電気端子への線が、スイッチングデバイスの封止領域内の平坦な溝に配置され、基板に対するアイソレーション層およびラインを覆うさらなるアイソレーション層によって隔離され、さらなるアイソレーション層は、基板の表面が線の領域において平坦であるように部分的に除去される。これにより、埋め込まれた金属線が形成される。したがって、非常に平坦な面を必要とする陽極接合によるウェハレベルパッケージングが可能となる。
【0045】
本発明の別の実施形態では、接地線は、プッシュロッドの方向に延在するスロットによって分断される。
【0046】
本発明の別の好ましい実施形態では、スイッチングデバイスの信号線は、2つの位置においてそれぞれギャップによって分断され、2つの接点要素があり、それらは各々、信号線に対して少なくとも部分的に反対方向に延在し、かつ信号線の両部分に電気的にかつ機械的に接続される可動ビームを備え、またプッシュロッドに機械的に接続され、したがって可動電極によって同時に駆動され、接地線は、接点ビームと接地線との間にオーミックコンタクトを形成するように、信号線の各ギャップの位置に少なくとも1つの接点バーを備える。したがって、本発明のスイッチングデバイスを、二重接点シャント構成で使用することができる。
【0047】
添付図面は、本発明の実施形態がさらに理解されるように含められており、本明細書に組み込まれかつその一部を構成している。図面は、本発明の実施形態を例示し、説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たす。他の実施形態および意図された利点の多くは、以下の詳細な説明を参照してよりよく理解されることになるため、容易に認識されるであろう。図面の要素は、必ずしも互いに対して同じ比例尺で描かれていない。図示するスイッチングデバイスの等しいかまたは同様の要素又は詳細は、同じかまたは同様の参照数字によって識別されている。繰返しを避けるために、特定の図を参照して行うこれら要素または詳細の説明は、絶対的に排除されない場合、他の図にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態による、シャント構成の静電駆動マイクロメカニカルスイッチングデバイスの基本構造の平面図を概略的に示す。
【図2】図示されているコンタクトメタライゼーション領域を含む、本発明の実施形態によるスイッチングデバイスの平面図および断面図を概略的に示す。
【図3】起動前のギャップ低減のための機構を備えた、本発明のさらなる実施形態によるスイッチングデバイスの平面図を概略的に示す。
【図4】ギャップ低減のための機構の起動後の図3のスイッチングデバイスを概略的に示す。
【図5】同様に断面図に示す金属ヒューズを備えた、本発明の別の実施形態によるスイッチングデバイスの平面図を概略的に示す。
【図6】同様に断面図に示す金属ヒューズと高抵抗電流路とを備えた、本発明のさらに別の実施形態によるスイッチングデバイスの平面図を概略的に示す。
【図7】局所ドーピングシリコンを備えた、本発明のさらなる実施形態によるスイッチングデバイスの平面図および断面図を概略的に示す。
【図8】弾性ビームを備えた、非駆動状態での本発明の次の実施形態によるスイッチングデバイスの平面図を概略的に示す。
【図9】駆動状態の図8のスイッチングデバイスを概略的に示す。
【図10】スイッチングデバイスのオン状態とオフ状態との間の切換え中の図8および図9のスイッチングデバイスを概略的に示す。
【図11】推進力による力の増幅を示す、図8〜図10のスイッチングデバイスを概略的に示す。
【図12】接点ビームの接点先端部の上ならびに信号線および接地線の一部の上の図示されているコンタクトメタライゼーション領域を含む、本発明の実施形態によるスイッチングデバイスの平面図を概略的に示す。
【図13】ストリップ状信号線およびコンタクトメタライゼーションを備えた、本発明の別の実施形態によるスイッチングデバイスの平面図を概略的に示す。
【図14】電気端子が平坦な溝に配置されかつアイソレーション層によって隔離されている、本発明の次の実施形態によるスイッチングデバイスの平面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、本発明の実施形態によるシャント構成の静電駆動マイクロメカニカルスイッチングデバイス1の基本構造の平面図を概略的に示す。図1では、シャント接点は閉成している。
【0050】
スイッチングデバイス1は、結晶シリコン基板のバルク材料に形成されている。スイッチングデバイス1の可動部分はすべて、結晶シリコンおよび金属からなる。本発明の他の図示しない実施形態では、スイッチングデバイス1を、別のマイクロメカニカルに処理可能な材料で形成することも可能である。
【0051】
図示する平面図では、スイッチングデバイス1は、実質的に対称的に形成されている。スイッチングデバイス1は、櫛型電極2、3を有する駆動部を備えている。櫛型電極は、基板に直接機械的に接続されている固定電極2と、基板材料から分離されている可動電極3とを含む。可動電極3を、基板の平面において水平に移動させることができる。簡略化するために、図1では、固定電極2および可動電極3の2つの対のみを示しているが、実際には、駆動部は、通常、それぞれ互いに対向する複数の固定電極2および可動電極3から構成される。技術制約によって与えられる最小電極離隔距離および応用に関連する駆動電圧は、ともに、静電駆動力およびスイッチ時間とともに、結果としてスイッチングデバイス1の接触信頼性を制限する。
【0052】
可動電極3は、電極2、3の中心を通って延在する可動プッシュロッド4の両側から延在している。プッシュロッド4は、少なくとも1つの復元ばね5上に懸架され、復元ばね5は、一方の側が基板に機械的に接続されている。図1の例では、プッシュロッド4の端部に2つの復元ばね5が設けられており、プッシュロッド4の中間部分にさらなる復元ばね5が設けられている。本発明の他の図示しない実施形態では、プッシュロッド4に対する復元ばねの数および位置を、図1の構成と比較して変更することができる。
【0053】
プッシュロッド4の非懸架端には、可動または可撓性接点ビーム6が設けられている。接点ビーム6は、プッシュロッド4に対して横方向に、かつスイッチングデバイス1の信号線7に対して少なくとも部分的に反対方向にまたは平行に延在している。接点ビーム6は、図1の参照数字11aによって概略的に示す、特定のインダクタンスおよび抵抗を有している。接点ビーム6の寸法は、高弾性を提供するように選択されている。したがって、接点ビーム6は比較的長くかつ細い。接点ビーム6は、その両端に、それぞれ2つの接点ピン8を備えており、そこで、接点ビーム6は信号線7と電気的にかつ機械的に接続されている。高周波域でのオーミックスイッチのアイソレーションは、入力ポートから出力ポートまでの容量性クロストークによって制限される。
【0054】
上述したように、接点ビーム6は信号線7に対して少なくとも部分的に反対方向に延在するため、信号線7と接点ビーム6との間に、図1に概略的に示す結合容量9がある。
【0055】
スイッチングデバイス1の動作時、接点ビーム6は、電極2、3、プッシュロッド4および復元ばね5の協働によって接点ビーム6に付与される駆動力によって屈曲する。接点ビーム6は、高弾性であるため、駆動を妨げる力はごくわずかである。
【0056】
信号線7は、ギャップ10によって2つの部分7a、7bに分割されており、接点ビーム6の各接点ピン8は、これら部分7a、7bのうちの一方に接続されている。信号線7は、通常RF電極であり、特定のインダクタンスおよび抵抗11bを有している。
【0057】
図1の例では、スイッチングデバイス1の接地線13は、プッシュロッド4の方向に延在するスロット13aによって、2つの接続された部分に分断されている。接地線13の接点バー12は、ギャップ10を通って延在し、図示する駆動状態では接点ビーム6と接触し、スイッチングデバイス1の非駆動状態では接点ビーム6と接触しない。復元ばね5は、駆動部の駆動力を抑制し、スイッチングデバイス1の非駆動状態では、接点ビーム6を接地線13の接点バー12から分離する。図1に示す例では、接地線13はV字形に形成されており、その「V」の軸の間にスロット13aを備えている。本発明の他の図示しない実施形態では、信号線7および接地線13を、図1に示すものとは別の方法で形成することができる。しかしながら、すべての場合において、信号線7および接地線13は、接点ビーム6のスイッチングデバイス1の駆動機構とは反対側に設けられる。
【0058】
たとえば図2に示すように、接点ビーム6と信号線7および接地線13の一部の上壁および側壁は、コンタクトメタライゼーション14によって覆われている。
【0059】
図1の下方部分において実線Lおよび破線Hによって概略的に示すように、スイッチングデバイス1の動作中、低周波数電流路Lおよび高周波数電流路Hがある。低周波数電流路Lは、信号線7bから信号線7bの最も広い延長部を通り、接点ピン8を通り、接点ビーム6を通り、接点バー12を通って、接地線13まで長距離を流れる。高周波数電流路Hは、信号線7bから、接点ビーム6のわずかな部分を通り、接点バー12を通って接地線13まで短距離を流れる。
【0060】
図2の上方部分はまた、コンタクトメタライゼーション14の図示する領域とともに、本発明の実施形態によるスイッチングデバイス1aの平面図を概略的に示す。図2の下方部分は、図2の上方部分の交線A−Aに沿った断面図を示す。図示するように、コンタクトメタライゼーション14の領域では、基板15材料からなる接点ビーム6がメタライゼーション14で覆われており、一方で、金属層16によって覆われている、基板15の他の領域にある信号線7および接地線13の一部の上壁および側壁が、コンタクトメタライゼーション14によってさらに覆われている。
【0061】
コンタクトメタライゼーション14により、この領域における接点ビーム6、信号線7および接地線13の抵抗が大幅に低下する。上述したように、コンタクトメタライゼーション14は、構造の側壁も覆う。これは、横方向の移動によって接点ビーム6と接地線13と間にオーミックコンタクトを得るために必要である。コンタクトメタライゼーション14を、たとえば、接点ビーム6の構造化の後の金属スパッタリングによって形成することができる。コンタクトメタライゼーション14の領域を画定するために、シャドウマスクを付与しなければならない。別法として、電気メッキすることにより、可動部分の構造化の前に比較的厚い金属層を付与することができる。それを、可動接点および固定接点に対して同様に接点材料として使用してもよい。このプロセスの場合、シリコンエッチングプロセス中にその金属層を保護する必要があり、そこでは、後続するプロセスの間に接触面の汚染があり得る。
【0062】
図3は、本発明のさらなる実施形態によるさらなるスイッチングデバイス1bの平面図を概略的に示し、そこでは、スイッチングデバイス1bは、図1のスイッチングデバイス1および図2のスイッチングデバイス1aのように等しいかまたは同様の要素および詳細を備えており、スイッチングデバイス1bは、ギャップ低減のための機構をさらに備えており、そこではその機構の駆動前を示す。図4は、ギャップ低減のための機構の駆動後の図3のスイッチングデバイスを概略的に示す。
【0063】
図3に示す状態では、接点ビーム6は、信号線7の部分7a、7bに機械的にかつ電気的に接続されていない。代りに、後述するギャップ低減の前に接点離隔距離17がある。
【0064】
図4に示すように、接点ビーム6と信号線7との間の接触をもたらすギャップ低減を具現化するために、各復元ばね5の固定端21にそれぞれ、可動枠18、追加の誘引電極19および付着パッド20が挿入されている。可動枠18は、少なくとも部分的に、少なくとも1つの付着パッド20を包囲し、追加の電極19のうちの少なくとも1つに対向している。可動枠18は、さらなる弾性ビームおよびアンカーにより弾性的に懸架されており、それにより、電気的に接続するためにプローブパッドを使用して追加の電極19に駆動電圧が印可されると、可動枠18は付着パッド20に向かって移動する。したがって、接点ビーム6、プッシュロッド4および可動駆動電極3を含むスイッチングデバイス1bの可動部分も同様に移動し、図4に示すように、非駆動状態において、一方の側で固定電極2に対する可動電極3の離隔距離が低減し、かつ接点離隔距離17が低減する。同様に図4に示すように、可動枠18は、少なくとも1つの付着パッド20において停止する22。そして、付着パッド20および可動枠18は、付着パッド20および可動枠18に電流を印可する微細溶接手順によって永久的に接合される。付着パッド20をそれらの上面に高濃度ドーピングすることにより、微細溶接の流れをより小さい体積まで局所化し、それにより、必要なエネルギーおよび電圧をそれぞれ低減することができる。
【0065】
特定の図示しない実施形態では、機械的安定性を向上させかつ製造公差の影響を低減するために、可動枠18を2つの部分に分割することも可能である。さらに、機械的剛性を向上させかつ静電力による望ましくない屈曲および引込みを防止するために、可動枠18の追加の電極19に向いている面は、他の面に比較して大幅に広い。可動枠18の付着パッド20と接触する面は、製造公差により付着パッド20の可動枠18の対応する面に対する隔離距離が異なる場合であっても、付着パッド20に密に接触するための弾性を提供するように具現化される。
【0066】
図3および図4に示す実施形態では、付着パッド20は、可動枠18の対応する面の、可動枠18と復元ばね5との間の接続部分に近くに接触するように配置されている。それにより、復元力5に対する製造公差の影響が低減する。
【0067】
図4に示すように、すべての可動枠18による上述したギャップ低減手順を行った後、駆動電極の離隔距離および接点離隔距離18は永久的に低減する。
【0068】
図5は、本発明の別の実施形態によるスイッチングデバイス1cの平面図を概略的に示し、そこでは、スイッチングデバイス1cは、断面図で示す金属ブリッジ23、24の形態の金属ヒューズも有している。
【0069】
駆動電極2、3および接点(信号線7および接地線13)を電気的に接続する金属ブリッジ23、24により、製造および処理中の駆動電極間または接点間の電位が阻止される。図5において金属ブリッジ23、24の断面図に示すように、金属ブリッジ23、24は、基板15上に形成されたアイソレーション25上の自立ブリッジとして形成されており、金属ブリッジ23、24の熱伝導性および熱時定数を低減するために、基板15においてトレンチ26によりアンダーカットされている。スイッチングデバイス1cの試験における初期ステップでは、これら金属ブリッジ23、24に対し、それらを焼き切りかつ電極2、3と信号線7および接地線13とを互いに切断するために適切な電流によって負荷をかける。
【0070】
図6は、金属ヒューズおよび高抵抗電流路を備えた、本発明のさらなる別の実施形態によるスイッチングデバイス1dの平面図を概略的に示す。
【0071】
この実施形態では、信号線7および接地線13は、アイソレーション層25の窓27を接続することによって基板15に接続される。基板15材料の局所ドーピングにより、接点窓27の真下にドーピングシリコン15aの層がもたらされ、接触抵抗が低下する。これら接点窓27の接続部分に、アンダーカット29を有する金属ブリッジ28が挿入される。RF信号の損失をもたらす可能性のあるこの電気的接続を除去するために、基板15への接続を、製造手順の最後にさらなるエッチングステップによって除去することができる。このエッチングステップ中、接点窓27の真下のシリコンは除去され、それにより、金属と基板15との間の接続も除去される。追加のコンタクトパッドがRF性能を劣化させない領域では、基板15への電気的接続を、金属ブリッジ28の焼切りによりさらに除去することができる。金属ブリッジ28を、指定されたコンタクトパッド30によって供給されなければならない電流によって焼き切ることができる。図6の例では、接点窓27の金属は中間に小さい開口部31を有しており、それは、接点窓27をアンダーエッチングするために製造手順の最後にさらなるエッチングステップで使用される。
【0072】
図7は、局所ドーピングシリコンを備えた、本発明のさらなる実施形態によるスイッチングデバイス1eの平面図および断面図を概略的に示す。スイッチングデバイス1eでは、基板15はシリコン製であり、シリコン材料の表面は、駆動電極2、3の領域において局所ドーピングされている。これにより、電気系の抵抗が低減しかつ時定数が低減する。
【0073】
図8は、弾性ビームを備えた、非駆動状態における本発明の次の実施形態によるスイッチングデバイス1fの平面図を概略的に示す。
【0074】
復元ばね5は、非作動状態に切り換わる時、接点離隔距離に対しかつ接点の付着力に打ち勝つために十分に大きい力を提供する。復元ばね5の力は、アクチュエータの力を抑制し、それにより、駆動状態において接触力を低減する。したがって、低剛性の復元ばね5を使用することが望ましい。付着力による接点スティッキングの危険をもたらすことなく、低剛性の復元ばね5を使用することができるように、図8の実施形態では、プッシュロッド4と接点ビーム6との間に弾性ビーム要素32が挿入され、プッシュロッド4および可動櫛型電極2、3は、接点先端部8を有する接点ビーム8に比較して大幅に質量が大きくなるように設計されている。
【0075】
図9に示すように、弾性ビーム要素32は、駆動状態においてアクチュエータの力によって圧縮される。図10に示すように、非駆動状態に切り換わる時、電極2、3およびプッシュロッド4は、復元ばね5および圧縮された弾性ビーム要素32の力の下で加速する。最初、接点ビーム6と信号線7の部分7a、7bとの間の接点は閉成したままである。接点のスティッキングを想定すると、付着している場合であっても接点バー12を接点ビーム6から分離するために、図11に示すように電極2およびプッシュロッド4の推進力により、分離力が一時的に増幅される。
【0076】
図12は、接点ビーム6の接点先端部8の上および信号線7および接地線13の一部の上の図示するコンタクトメタライゼーション4を備えた、本発明の実施形態によるスイッチングデバイス1の平面図を概略的に示す。信号線7の金属化面と接地線13の金属化面との間に非常にわずかな離隔距離33がある。したがって、コンタクトメタライゼーション14により、RF信号線7とRF接地線13との間の容量結合が強固になる。図12に示すように、コンタクト金属は、表面を覆うのみではなく、同様に構造の側壁をある深さまで覆う。深さが50μm、離隔距離が3μmかつ長さが80μmとすると、メタライゼーションにより12fFの静電容量がもたらされる。この静電容量により、結合リアクタンスが−220jΩになり、それは、整合の結果をもたらすには低すぎる。
【0077】
図13は、はるかに低い結合容量をもたらす構成を示す。信号線7または接地線13は、コンタクトメタライゼーション14の位置においてストリップ34に分割されている。ストリップ34は、アンダーエッチングが容易に可能であるように幅が狭い。基板15からの離隔は、ストリップ34間の電気的接続を回避するために必要である。RF電極7、13に対し、各側のストリップ34の1つを除くすべてが電気的に絶縁されていない。最外ストリップのみが電気的に接続されている。ストリップ34に分割することにより、それぞれ、結合面積がより小さくなり静電容量がより低くなる。絶縁されたストリップ34により、RF信号線7とストリップ34との間の結合容量とRF接地線13とストリップ34との間の静電容量との直列接続がもたらされる。静電容量の直列接続により、静電容量が元のものより小さくなる。
【0078】
ウェハレベルパッケージング(WLP)による上述したスイッチングデバイスのハーメチックシールにより、通常、基板15にまたはカバー101に垂直ビアを有することが必要となり、それにより外形の小型化が制限される。これを克服するために、図14に示す本発明の別の実施形態では、電気端子への金属線が、スイッチングデバイスの封止領域内の平坦な溝15bに配置され、垂直ビアの代りに横方向供給トラフのために基板15に対するアイソレーション層102によって分離される。さらなるアイソレーション層103が金属線を覆い、それは、表面がこの領域で平坦であるように部分的に除去され、埋め込まれた金属線が形成される。したがって、非常に平坦な面を必要とする陽極接合によるウェハレベルパッケージングが可能となる。
【符号の説明】
【0079】
1 スイッチングデバイス
1a〜1f スイッチングデバイス
2 固定電極
3 可動電極
4 プッシュロッド
5 復元ばね
6 接点ビーム
7 信号線
7a 信号線
7b 信号線
8 接点ピン
9 結合容量
10 ギャップ
11a インダクタンスおよび抵抗
11b インダクタンスおよび抵抗
12 接点バー
13 接地線
13a スロット
14 コンタクトメタライゼーション
15 基板
15a ドーピングシリコン
15b 平坦な溝
16 金属層
17 接点離隔距離
18 可動枠
19 誘引電極
20 付着パッド
21 固定端
22 停止
23 金属ブリッジ
24 金属ブリッジ
25 アイソレーション
26 トレンチ
27 接点窓
28 金属ブリッジ
29 アンダーカット
30 コンタクトパッド
31 開口部
32 弾性ビーム要素
33 離隔距離
34 ストリップ
101 カバー
102 アイソレーション層
103 アイソレーション層
L 低周波数電流路
H 高周波数電流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(15)のバルクに可動要素が形成され、前記基板(15)の面における前記可動要素の水平移動により少なくとも1つのオーミックコンタクトを閉成しかつ解放する静電駆動マイクロメカニカルスイッチングデバイス(1)であって、
櫛型電極(2、3)を有する駆動部であり、前記電極(2、3)が固定駆動電極(2)および可動電極(3)を含む、駆動部と、
前記可動電極(3)に機械的に接続されかつ前記電極(2、3)を通して延在している可動プッシュロッド(4)と、
前記プッシュロッド(4)の一方の側に機械的に接続されている可動接点要素と、
前記プッシュロッド(4)に機械的に接続されている少なくとも1つの復元ばね(5)と、
信号線(7)および接地線(13)であり、前記信号線(7)がギャップ(10)によって分断される2つの部分(7a、7b)を含む、信号線(7)および接地線(13)と、
を備える、スイッチングデバイス(1)であり、
シャント構成において、前記接地線(13)と前記信号線(7)との間の前記オーミックコンタクトを閉成しかつ解放し、前記接点要素が、前記信号線(7)に対して少なくとも部分的に反対方向に延在しかつ前記信号線(7)の両部分(7a、7b)それぞれに電気的かつ機械的に接続されている可動接点ビーム(6)を備え、
前記接地線(13)が、前記接点ビーム(6)と前記接地線(13)との間に前記オーミックコンタクトを形成するように、前記信号線(7)の前記ギャップ(10)を通る少なくとも1つの接点バー(12)を備え、
前記接点ビーム(6)、前記信号線(7)および前記接地線(13)の少なくとも上壁および側壁にコンタクトメタライゼーション(14)が設けられることを特徴とするスイッチングデバイス。
【請求項2】
可動枠(18)が、各復元ばね(5)の固定端(21)に設けられ、かつ少なくとも部分的に1つの固定された付着パッド(20)を包囲し、前記可動枠(18)が、少なくとも1つの追加の誘引電極(19)に対向し、かつ前記追加の誘引電極(19)に起動電圧(VGR)が印可されると、前記付着パッド(20)に向かって移動するように弾性的に懸架され、前記可動枠(18)が、前記可動枠(18)と前記復元ばね(5)との間の接続部の側において前記付着パッド(20)において停止し(22)、前記付着パッド(20)および前記可動枠(18)が微細溶接によりその配置で永久的に接合されることを特徴とする、請求項1に記載のスイッチングデバイス。
【請求項3】
前記付着パッド(20)が、それらの上面に、当該スイッチングデバイス(1b)の前記基板(15)の材料のドーピングより高濃度であるドーピングを有することを特徴とする、請求項2に記載のスイッチングデバイス。
【請求項4】
前記可動枠(18)が2つの部分に分割されることを特徴とする、請求項2または3に記載のスイッチングデバイス。
【請求項5】
前記追加の誘引電極(19)に面している前記可動枠(18)の面が、その他の面に比較して幅が広いことを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載のスイッチングデバイス。
【請求項6】
アンダーエッチングにより前記基板(15)から解放されている金属ブリッジ(23)が、当該スイッチングデバイス(1c)の製造および/または処理中に、前記固定電極(2)にかつ前記可動電極(3)に電気的に接続されている電気線間に設けられることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のスイッチングデバイス。
【請求項7】
アンダーエッチングにより前記基板(15)から解放されている金属ブリッジ(24)が、当該スイッチングデバイス(1c)の製造および/または処理中に、前記信号線(7)および前記接地線(13)に電気的に接続されている電気線間に設けられることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のスイッチングデバイス。
【請求項8】
前記固定電極(2)および前記可動電極(3)ならびに前記信号線(7)および前記接地線(13)それぞれに接続されている電気線が、当該スイッチングデバイス(1d)の処理および/またはウェハレベルパッケージング中に、当該スイッチングデバイス(1d)のアイソレーション層(25)の接点窓(27)および後続するメタライゼーションにより、前記基板(15)の材料に電気的に接続されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のスイッチングデバイス。
【請求項9】
アンダーカット(29)を有する少なくとも1つの金属ブリッジ(28)が、前記接点窓(27)への接続経路内に挿入されることを特徴とする、請求項8に記載のスイッチングデバイス。
【請求項10】
前記接点窓(27)が、前記基板(15)の上面に局所ドーピング領域によって形成され、前記局所ドーピング領域が、金属によって一時的に接続され、前記金属が、前記ドーピング領域の上に開口部(31)を有し、前記ドーピング領域が、金属とバルクとの間の短絡を切断するために、当該スイッチングデバイス(1)の接合後に少なくとも部分的に除去されることを特徴とする、請求項8または9に記載のスイッチングデバイス。
【請求項11】
前記電極(2、3)がシリコンから構成され、前記シリコン材料が前記駆動部の領域に局所ドーピングされることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のスイッチングデバイス。
【請求項12】
前記プッシュロッド(4)と前記接点ビーム(6)の接点先端部(8)との間に弾性ビーム要素(32)が設けられ、前記プッシュロッド(4)および前記可動電極(3)の質量が、前記接点ビーム(6)および前記接点先端部(8)の質量の3倍超であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のスイッチングデバイス。
【請求項13】
前記信号線(7)および/または前記接地線(13)が、前記コンタクトメタライゼーション(14)の位置でストリップ(34)の2つの側に分割され、前記ストリップ(34)が前記基板(15)から深さの隔たりがあることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載のスイッチングデバイス。
【請求項14】
当該スイッチングデバイス(1)の電気端子への線が、当該スイッチングデバイス(1)の封止領域内の平坦な溝に配置され、かつ前記基板(15)へのアイソレーション層および前記線を覆うさらなるアイソレーション層によって隔離され、前記さらなるアイソレーション層が、前記基板(15)の表面が前記線の領域において平坦であるように部分的に除去されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載のスイッチングデバイス。
【請求項15】
前記接地線(13)が、前記プッシュロッド(4)の方向に延在しているスロット(13a)によって分断されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載のスイッチングデバイス。
【請求項16】
前記信号線(7)が、2つの位置においてそれぞれギャップ(10)によって分断され、2つの接点要素があり、それら各々が、少なくとも部分的に前記信号線(7)に対して反対方向に延在し、かつ前記信号線(7)の両部分に電気的にかつ機械的に接続されている可動ビーム(6)を備え、また前記プッシュロッド(4)に機械的に接続され、したがって前記可動電極(3)によって同時に駆動され、前記接地線(13)が、前記接点ビーム(6)と前記接地線(13)との間に前記オーミックコンタクトを形成するように、前記信号線(7)の各ギャップ(10)の位置に少なくとも1つの接点バーを備えることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載のスイッチングデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−258553(P2011−258553A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117551(P2011−117551)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(594102418)フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ (63)
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer−Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
【住所又は居所原語表記】Hansastrasse 27c, D−80686 Muenchen, Germany
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)