説明

非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)のマーカーおよびその使用方法

被験体の体液からの試料中の脂質代謝物の量を決定することを含む、被験体の肝臓中のトリグリセリドのレベルを評価するための新規方法を記載する。例えば脂肪症、NAFLDおよびNASHのようは肝障害の診断およびモニタリングにおいてその方法を用いることができる。1つの態様では、本発明は被験体の体液からの1つ以上の試料中の1つ以上の脂質代謝物の量を決定し、1つ以上の脂質代謝物の量を肝障害の存在と相関させることを含む、被験体における肝障害を診断またはモニタリングする方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2006年8月8日に出願された、米国仮特許出願番号60/836,555の優先権の利益を主張し、この米国仮特許出願は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は米国で最も一般的な慢性肝臓疾患である。NASHは肝臓の脂肪炎症ならびに硬変、線維症および肝不全の主要原因である。疾患は進行性であり、脂肪症または非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)として出発し、炎症性脂肪肝(NASH)に進行し、ついには硬変および線維症に至る。疾患は一般的に重篤な肝臓機能不全を生じるまで無症候性である。NAFLDまたはNASHの診断には、これらの疾患のいずれかに関する臨床検査が存在しないので肝臓生検が必要とされる。NASHの診断には脂肪、炎症および細胞周囲線維症またはマロリ小体のいずれかを伴う小葉中心性(ゾーン3)バルーニング変性の存在が必要とされる。NASHは硬変および肝細胞性癌腫にさえ至り得る進行性の肝臓疾患であると考えられるので、この区別は重要である。
【0003】
米国人口におけるNAFLDの罹患率は20〜23%であり、33%ほどに高くなり得て、米国人口におけるNASHの罹患率は2〜3%である。後期疾患にまで進行するNASH患者もいる。およそ15〜50%のNASH患者は重篤な線維症まで進行し、およそ7〜16%は硬変まで進行する。NASH硬変における肝臓特異的死亡率の比率は10年でおよそ10%である。
【0004】
血清アミノトランスフェラーゼ上昇および脂肪肝を示唆する変化を示す肝臓撮像研究は単独でまたは組み合わせでNAFLDをNASHと区別するためには不十分である。NAFLDの自然の病歴および経過を評価すること、または治療もしくは介入に関するその必要性をより明確にすることは困難である。NAFLDおよびNASHの原因はあまり明確にされていないが、典型的にはそれらは肥満、インスリン抵抗性またはII型糖尿病および高脂質血症に関連して生じ、脂肪肝およびNASHは代謝不全症候群の肝臓所見であり、代謝性脂肪性肝炎(MESH)と称されるのがよりよいかもしれないことを示唆する。
【0005】
肝臓は全ての脂質代謝経路に関する主な代謝器官である。正常な条件下で、肝臓は血中脂質レベルを調節し、身体のエネルギー均衡に合致して複合脂質生合成および輸送を管理する。故に肝臓損傷および機能障害は生物レベルで重篤な結果に至り得る。NAFLDは伝統的に良性疾患であるとみなされているが、患者の一部はNASHおよび、肝臓移植を必要とする末期肝臓疾患まで進行する。NAFLDは無症状疾患であるので、現在の診断は針生検によってのみ行うことができる。認識された場合、NAFLDおよびNASHに関する処置方法により、特に初期疾患段階において多少の個体で疾患を遅延または逆行させることができる。
【0006】
必要なことは、NAFLDおよびNASHを診断し、疾患の進行をモニタリングし、処置の有効性を決定するためのより良好な検査方法である。加えて必要なことは、NAFLDおよびNASHを有する患者間で分類および識別し、NAFLDからNASHへの移行の危険性を有する患者を同定するために使用できるより良好な検査方法である。
【0007】
各個々の出版物、特許、特許出願、インターネットサイトまたは受託番号/データベース配列が具体的におよび個別にそのように出典明示により本明細書の一部とすることが示され場合と同一の程度に、本明細書に引用された全ての出版物、特許、特許出願、インターネットサイトおよび受託番号/データベース配列(ポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列の双方を含む)を全目的に関してその全てを出典明示により本明細書の一部とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
いくつかの態様では、本発明は被験体(例えばヒト)の肝臓中のトリグリセリドの蓄積のレベルを評価する、および/または被験体における肝障害の重篤度をモニタリング、診断、分類、評価する、および/またはその進行もしくは退行を評価する方法を提供する。いくつかの実施形態では、肝障害は肝性機能不全、肝性脂肪症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、脂肪性肝炎または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である。いくつかの実施形態では、その方法は被験体からの体液中の1つ以上の脂質代謝物(例えば脂肪酸および/またはエイコサノイド)の量を決定することを含む。
【0009】
1つの態様では、本発明は被験体の体液からの1つ以上の試料中の1つ以上の脂質代謝物の量を決定し、1つ以上の脂質代謝物の量を肝障害の存在と相関させることを含む、被験体における肝障害を診断またはモニタリングする方法を提供する。いくつかの実施形態では、脂質代謝物は脂肪酸および/またはエイコサノイドを含む。いくつかの実施形態では、肝障害は肝性機能不全、肝性脂肪症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、脂肪性肝炎または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である。いくつかの実施形態では、1つ以上の脂質代謝物は、
【0010】
【化1】

からなる群から選択される。1つ以上の脂質代謝物が1つ以上の脂肪酸を含むいくつかの実施形態では、1つ以上の脂肪酸の量は、1つ以上の試料中の1つ以上の脂質クラスの脂質中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量である。いくつかの実施形態では、その方法は1つ以上の脂質代謝物の量を1つ以上の参照(例えば正常対照)と比較することをさらに含む。いくつかの実施形態では、2つ以上の、3つ以上の、4つ以上の、5つ以上の、または6つ以上の脂質代謝物の量を決定する。いくつかの実施形態では、試料は血液、血漿、血清、単離されたリポタンパク質画分、唾液、尿、リンパ液および脳脊髄液からなる群から選択される。
【0011】
本発明の別の態様では、被験体の体液からの試料中の1つ以上の脂質クラスの脂質中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を決定すること、およびその相対量を肝障害の存在と相関させることを含む、被験体における肝障害を診断またはモニタリングする方法を提供し、ここで肝障害は肝性機能不全、肝性脂肪症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、脂肪性肝炎または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である。いくつかの実施形態では、1つ以上の脂肪酸は、
【0012】
【化2】

からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、その方法は1つ以上の脂肪酸の相対量を参照と比較する工程を含む。いくつかの実施形態では、肝障害はNASHであり、その方法は体液中のエイコサノイドのレベルを決定する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、2つ以上の、3つ以上の、4つ以上の、5つ以上の、または6つ以上の脂肪酸の相対量を決定する。いくつかの実施形態では、試料は血液、血漿、血清、単離されたリポタンパク質画分、唾液、尿、リンパ液および脳脊髄液からなる群から選択される。
【0013】
さらに別の態様では、本発明は、被験体の体液からの試料中の脂質代謝物の量を決定することを含む被験体の肝臓中のトリグリセリドのレベルを評価する方法を提供し、ここで脂質代謝物は脂質クラスに存在する脂肪酸であり、ここで脂質クラスは遊離脂肪酸、全脂肪酸、トリグリセリド、コレステロールエステル、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、代謝物の量は、試料中の1つ以上の脂質クラスの脂質中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量である。いくつかの実施形態では、脂肪酸は、
【0014】
【化3】

からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、その方法は1つ以上の脂肪酸の相対量を参照と比較する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、試料は血液、血漿、血清、単離されたリポタンパク質画分、唾液、尿、リンパ液および脳脊髄液からなる群から選択される。
【0015】
本発明のなおさらなる態様では、被験体の体液からの試料中の脂質代謝物の量を決定することを含む、被験体の肝臓中のトリグリセリドのレベルを評価する方法が提供される。いくつかの実施形態では、その方法は少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15または少なくとも20の脂質代謝物の量を決定することを含む。いくつかの実施形態では、脂質代謝物は脂質クラスに存在する脂肪酸である。いくつかの実施形態では、脂質クラスは、遊離脂肪酸、全脂肪酸、トリグリセリド、コレステロールエステル、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、脂質クラスは、中性脂質、遊離脂肪酸、全脂肪酸、トリグリセリド、コレステロールエステル、リン脂質、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、脂質クラスは、中性脂質、全脂肪酸、コレステロールエステルおよびリン脂質からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、代謝物の量は試料中の1つ以上の脂質クラスの脂質中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量である。いくつかの実施形態では、相対量は、(a)試料中のトリグリセリド中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量、(b)試料中の遊離脂肪酸中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量、(c)試料中のホスファチジルコリン中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量、(d)試料中のホスファチジルエタノールアミン中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量、(e)試料中のコレステロールエステル中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量および(f)試料中の全脂質中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、脂肪酸は、
【0016】
【化4】

からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、脂肪酸はTG20:4n6である。いくつかの実施形態では、試料は血液、血漿、血清、単離されたリポタンパク質画分、唾液、尿、リンパ液および脳脊髄液からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、試料は血液、血漿、血清、または単離されたリポタンパク質画分からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、試料はリンパ液および脳脊髄液である。
【0017】
いくつかの実施形態では、被験体の体液からの試料中のトリグリセリド中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を決定することを含む、被験体の肝臓中のトリグリセリドの蓄積のレベルを評価する。いくつかの実施形態では、1つ以上の脂肪酸はTG14:0、TG14:1n5、TG16:0、TG18:1n7、TGMUFA、TGn7、TGSFAおよびTG16:1n7からなる群から選択される。その方法は相対量を参照と比較する工程をさらに含むことができ、ここで相対量が参照よりも多い場合、肝臓中のトリグリセリドの蓄積が示される。いくつかの実施形態では、1つ以上の脂肪酸は、
【0018】
【化5】

からなる群から選択される。その方法は相対量を参照と比較する工程をさらに含むことができ、ここで相対量が参照よりも少ない場合、肝臓中のトリグリセリドの蓄積が示される。いくつかの実施形態では、参照は以前に被験体から得られた体液からの試料中のトリグリセリド中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量である。いくつかの実施形態では参照は、正常な肝臓を有する1以上の被験体の体液からの1つ以上の試料中に見出されるトリグリセリド中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を表す。
【0019】
いくつかの実施形態では、被験体の体液からの試料中の遊離脂肪酸中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量を決定することを含む、被験体の肝臓中のトリグリセリドの蓄積のレベルを評価する。いくつかの実施形態では、脂肪酸はFA16:1n7である。その方法は相対量を参照と比較する工程をさらに含むことができ、ここで相対量が参照よりも少ない場合、肝臓中のトリグリセリドの蓄積が示される。いくつかの実施形態では、参照は、以前に被験体から得られた体液からの試料中の遊離脂肪酸中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量である。いくつかの実施形態では、参照は、正常な肝臓を有する1以上の被験体の体液からの1つ以上の試料中に見出される遊離脂肪酸中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を表す。
【0020】
いくつかの実施形態では、被験体の体液からの試料中のホスファチジルコリン中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を決定することを含む、被験体の肝臓中のトリグリセリドの蓄積のレベルを評価する。いくつかの実施形態では、1つ以上の脂肪酸は、
【0021】
【化6】

からなる群から選択される。その方法は、相対量を参照と比較する工程をさらに含むことができ、ここで相対量が参照よりも多い場合、肝臓中のトリグリセリドの蓄積が示される。いくつかの実施形態では、1つ以上の脂肪酸は、PC18:1n7、PC20:4n6、PC22:5n6、PCn6、PCPUFAおよびPC22:5n3からなる群から選択される。その方法は相対量を参照と比較する工程をさらに含むことができ、ここで相対量が参照よりも少ない場合、肝臓中のトリグリセリドの蓄積が示される。いくつかの実施形態では、参照は、以前に被験体から得られた体液からの試料中のホスファチジルコリン中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量である。いくつかの実施形態では、参照は、正常な肝臓を有する1以上の被験体の体液からの1つ以上の試料中に見出されるホスファチジルコリン中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を表す。
【0022】
いくつかの実施形態では、被験体の体液からの試料中のホスファチジルエタノールアミン中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量を決定することを含む、被験体の肝臓中のトリグリセリドの蓄積のレベルを評価する。いくつかの実施形態では、脂肪酸はPE20:4n6である。その方法は、相対量を参照と比較する工程をさらに含むことができ、ここで相対量が参照よりも少ない場合、肝臓中のトリグリセリドの蓄積が示される。いくつかの実施形態では、参照は、以前に被験体から得られた体液からの試料中のホスファチジルエタノールアミン中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量である。いくつかの実施形態では、参照は、正常な肝臓を有する1以上の被験体の体液からの1つ以上の試料中に見出されるホスファチジルエタノールアミン中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を表す。
【0023】
いくつかの実施形態では、被験体の体液からの試料中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を決定することを含む、被験体の肝臓中のトリグリセリドの蓄積のレベルを評価する。いくつかの実施形態では、1つ以上の脂肪酸は、14:0、16:0、18:0、16:1n7、18:1n7、18:1n9、18:3n6および18:4n3からなる群から選択される。その方法は、相対量を参照と比較する工程をさらに含むことができ、ここで相対量が参照よりも多い場合、肝臓中のトリグリセリドの蓄積が示される。いくつかの実施形態では、1つ以上の脂肪酸は15:0、20:0、22:0、18:2n6、20:2n6、20:3n9、20:4n3、20:4n6、22:4n6および22:5n6からなる群から選択される。その方法は相対量を参照と比較する工程をさらに含むことができ、ここで相対量が参照よりも少ない場合、肝臓中のトリグリセリドの蓄積が示される。いくつかの実施形態では、参照は、以前に被験体から得られた体液からの試料中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量である。いくつかの実施形態では、参照は、正常な肝臓を有する1以上の被験体の体液からの1つ以上の試料中に見出される全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を表す。
【0024】
いくつかの実施形態では、被験体の体液からの試料中のコレステロールエステル中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を決定することを含む、被験体の肝臓中のトリグリセリドの蓄積のレベルを評価する。いくつかの実施形態では、1つ以上の脂肪酸はCE16:1n7、CE18:1n7、CE18:1n9、CE18:2n6、CE18:3n6、CE22:5n3、CE22:6n3、CEMUFA、CEn6、CEn7、CEPUFA、CE14:0からなる群から選択される。その方法は相対量を参照と比較する工程をさらに含むことができ、ここで相対量が参照よりも多い場合、肝臓中のトリグリセリドの蓄積が示される。いくつかの実施形態では、1つ以上の脂肪酸はCE14:1n5、CE18:0、CE20:0、CE20:1n9、CE20:2n6、CE20:3n9、CE20:4n3、CE20:4n6、CE22:0、CE22:2n6、CE24:0およびCESFAからなる群から選択される。その方法は相対量を参照と比較する工程をさらに含むことができ、ここで相対量が参照よりも少ない場合、肝臓中のトリグリセリドの蓄積が示される。いくつかの実施形態では、参照は、以前に被験体から得られた体液からの試料中のコレステロールエステル中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量である。いくつかの実施形態では、参照は、正常な肝臓を有する1以上の被験体の体液からの1つ以上の試料中に見出されるコレステロールエステル中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を表す。
【0025】
いくつかの実施形態では、被験体の体液からの試料中の中性脂質中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を決定することを含む、被験体の肝臓中のトリグリセリドの蓄積のレベルを評価する。いくつかの実施形態では、1つ以上の脂肪酸はTG14:0、TG14:1n5、TG16:0、TG18:1n7、TGMUFA、TGn7、TGSFAおよびTG16:1n7からなる群から選択される。その方法は相対量を参照と比較する工程をさらに含むことができ、ここで相対量が参照よりも多い場合、肝臓中のトリグリセリドの蓄積が示される。いくつかの実施形態では、1つ以上の脂肪酸は、
【0026】
【化7】

からなる群から選択される。その方法は相対量を参照と比較する工程をさらに含むことができ、ここで相対量が参照よりも少ない場合、肝臓中のトリグリセリドの蓄積が示される。いくつかの実施形態では、参照は、以前に被験体から得られた体液からの試料中の中性脂質中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量である。いくつかの実施形態では、参照は、正常な肝臓を有する1以上の被験体の体液からの1つ以上の試料中に見出される中性脂質中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を表す。
【0027】
いくつかの実施形態では、被験体の体液からの試料中のリン脂質中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を決定することを含む、被験体の肝臓中のトリグリセリドの蓄積のレベルを評価する。いくつかの実施形態では、1つ以上の脂肪酸は、
【0028】
【化8】

からなる群から選択される。その方法は相対量を参照と比較する工程をさらに含むことができ、ここで相対量が参照よりも多い場合、肝臓中のトリグリセリドの蓄積が示される。いくつかの実施形態では、1つ以上の脂肪酸はPC18:1n7、PC20:4n6、PC22:5n6、PCn6、PCPUFA、PC22:5n3およびPE20:4n6からなる群から選択される。その方法は相対量を参照と比較する工程をさらに含むことができ、ここで相対量が参照よりも少ない場合、肝臓中のトリグリセリドの蓄積が示される。いくつかの実施形態では、参照は、以前に被験体から得られた体液からの試料中のリン脂質中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量である。いくつかの実施形態では、参照は、正常な肝臓を有する1以上の被験体の体液からの1つ以上の試料中に見出されるリン脂質中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を表す。
【0029】
いくつかの実施形態では、その方法は少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10または少なくとも20のさらなる相対量を決定することを含み、ここで相対量は試料中の1つ以上の脂質クラスの脂質中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量である。いくつかの実施形態では、その方法はさらなる相対量を決定することを含み、ここでさらなる相対量は、(a)試料中のトリグリセリド中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量、(b)試料中の遊離脂肪酸中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量、(c)試料中のホスファチジルコリン中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量、(d)試料中のホスファチジルエタノールアミン中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量、(e)試料中のコレステロールエステル中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量および(f)試料中の全脂質中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、さらなる相対量は、(a)被験体の体液からの試料中のトリグリセリド中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量、ここで1つ以上の脂肪酸はTG14:0、TG14:1n5、TG16:0、TG18:1n7、TGMUFA、TGn7、TGSFAおよびTG16:1n7からなる群から選択される、(b)被験体の体液からの試料中のホスファチジルコリン中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量、ここで1つ以上の脂肪酸は、
【0030】
【化9】

からなる群から選択される、(c)被験体の体液からの試料中のコレステロールエステル中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量、ここで1つ以上の脂肪酸はCE16:1n7、CE18:1n7、CE18:1n9、CE18:2n6、CEI8:3n6、CE22:5n3、CE22:6n3、CEMUFA、CEn6、CEn7、CEPUFA、CE14:0からなる群から選択される、ならびに(d)被験体の体液からの試料中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量、ここで1つ以上の脂肪酸は14:0、16:0、18:0、16:1n7、18:1n7、18:1n9、18:3n6および18:4n3からなる群から選択される、からなる群から選択される。その方法はさらなる相対量をさらなる参照と比較する工程をさらに含むことができ、ここでさらなる相対量がさらなる参照よりも多い場合、肝臓中のトリグリセリドの蓄積が示される。いくつかの実施形態では、さらなる相対量は、(a)被験体の体液からの試料中のトリグリセリド中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量、ここで1つ以上の脂肪酸は、
【0031】
【化10】

からなる群から選択される、(b)被験体の体液からの試料中の遊離脂肪酸中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量、ここで脂肪酸はFA16:1n7である、(c)被験体の体液からの試料中のホスファチジルコリン中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量、ここで1つ以上の脂肪酸はPC18:1n7、PC20:4n6、PC22:5n6、PCn6、PCPUFAおよびPC22:5n3からなる群から選択される、(d)被験体の体液からの試料中のホスファチジルエタノールアミン中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量、ここで脂肪酸はPE20:4n6である、ならびに(e)被験体の体液からの試料中のコレステロールエステル中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量、ここで1つ以上の脂肪酸はCE14:1n5、CE18:0、CE20:0、CE20:1n9、CE20:2n6、CE20:3n9、CE20:4n3、CE20:4n6、CE22:0、CE22:2n6、CE24:0、CESFA、ならびに(f)被験体の体液からの試料中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量、ここで1つ以上の脂肪酸は15:0、20:0、22:0、18:2n6、20:2n6、20:3n9、20:4n3、20:4n6、22:4n6および22:5n6からなる群から選択される、からなる群から選択される。その方法はさらなる相対量を参照と比較する工程をさらに含むことができ、ここで相対量が参照よりも少ない場合、肝臓中のトリグリセリドの蓄積が示される。
【0032】
肝障害の重篤度の診断、モニタリング、評価、および/またはその進行もしくは退行の評価において、被験体の肝臓中のトリグリセリドのレベルを評価する方法を用いることができ、ここで肝障害は、肝性機能不全、肝性脂肪症、NAFLD、脂肪性肝炎およびNASHからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、被験体における肝障害を診断する方法は、(a)被験体の体液からの試料中の1つ以上の脂質クラスの脂質中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を決定すること、(b)その相対量を肝障害の存在と相関させることを含み、ここで肝障害は肝性機能不全、肝性脂肪症、NAFLD、脂肪性肝炎またはNASHである。いくつかの実施形態では、被験体における肝障害の重篤度を評価する方法は、(a)被験体の体液からの試料中の1つ以上の脂質クラスの脂質中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を決定すること、(b)その相対量を肝障害の重篤度と相関させることを含み、ここで肝障害は肝性機能不全、肝性脂肪症、NAFLD、脂肪性肝炎またはNASHである。いくつかの実施形態では、被験体における肝障害をモニタリングする方法は、(a)被験体の体液からの試料中の1つ以上の脂質クラスの脂質中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を決定すること、(b)その相対量を肝障害の状態と相関させることを含み、ここで肝障害は肝性機能不全、肝性脂肪症、NAFLD、脂肪性肝炎またはNASHである。いくつかの実施形態では、被験体における肝障害の進行または退行を評価する方法は、(a)被験体の体液からの試料中の1つ以上の脂質クラスの脂質中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を決定すること、(b)その相対量を肝障害の状態と相関させることを含み、ここで肝障害は肝性機能不全、肝性脂肪症、NAFLD、脂肪性肝炎またはNASHである。いくつかの実施形態では、2つ以上の時点で相対量を測定する。いくつかの実施形態では、肝障害の重篤度をモニタリング、評価、またはその進行もしくは退行を評価する方法を用いて被験体の処置に対する応答を決定する。いくつかの実施形態では、その方法は相対量を参照と比較する工程をさらに含むことができ、ここで相対量が参照よりも多い場合、肝性機能不全、肝性脂肪症、NAFLD、脂肪性肝炎またはNASHが示される。いくつかの実施形態では、その方法は相対量を参照と比較する工程を含むことができ、ここで相対量が参照よりも少ない場合、肝性機能不全、肝性脂肪症、NAFLD、脂肪性肝炎またはNASHが示される。いくつかの実施形態では、被験体の体液からの試料中の1つ以上の脂質クラスの脂質中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸のさらなる相対量を決定する工程をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、肝障害は、肝炎、HIV感染、HBV感染、HCV感染、ウイルス誘起脂肪症、および非ウイルス性感染性作用物質により誘起される脂肪症からなる群から選択される1つ以上の状態に関連する。いくつかの実施形態では、肝障害は薬物誘起脂肪症に関連する。いくつかの実施形態では、薬物誘起脂肪症はタモキシフェン、脱共役タンパク質阻害剤、イソニアジド、リファンピシン、フィブラートまたはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アゴニストにより誘起される。いくつかの実施形態では、肝障害は、肥満、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、糖尿病、インスリン抵抗性、および代謝障害からなる群から選択される1つ以上の状態に関連する。いくつかの実施形態では、肝障害は、アルコール性脂肪肝疾患およびアルコール性脂肪性肝炎からなる群から選択される1つ以上の状態に関連する。いくつかの実施形態では、肝障害は先天性代謝異常または遺伝子変化に関連する。いくつかの実施形態では、先天性代謝異常または遺伝子変化はシトリン欠損、ヘモクロマトーシスおよび高フェリチン血症からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、肝障害は毒素誘起脂肪症または毒素誘起脂肪性肝炎に関連する。いくつかの実施形態では、毒素誘起脂肪症または毒素誘起脂肪性肝炎は、四塩化炭素により誘起される。いくつかの実施形態では、肝障害は、栄養障害、栄養吸収障害、セリアック病およびリポジストロフィーからなる群から選択される1つ以上の状態に関連する。いくつかの実施形態では、肝障害は肥満外科手術または肝臓移植に関連する。
【0033】
肝障害の重篤度を診断、モニタリング、評価する方法において、およびその進行もしくは退行を評価するためにさらなるバイオマーカーおよび試験を用いることができる。いくつかの実施形態では、その方法は、(c)被験体からの体液もしくは細胞試料中のマロニル−CoAもしくはマロニルカルニチンのレベルを決定すること、ここで正常レベルよりも高いことは脂肪症、NAFLDもしくはNASHを示す、(d)被験体からの体液もしくは細胞試料中のアシルカルニチン、遊離カルニチンもしくはブチロベタインのレベルを決定すること、ここで正常レベルよりも低いことは肝性機能不全、肝性脂肪症、NAFLD、脂肪性肝炎もしくはNASHを示す、および/または(e)被験体からの体液もしくは細胞試料中のステロールもしくは胆汁酸のレベルを決定すること、ここで正常レベルよりも高いことは肝性機能不全、肝性脂肪症、NAFLD、脂肪性肝炎もしくはNASHを示す、をさらに含む。いくつかの実施形態では、アシルカルニチンは表3のアシルカルニチンである。いくつかの実施形態では、ステロールまたは胆汁酸は表4のステロールまたは胆汁酸である。いくつかの実施形態では、その方法は被験体からの体液または細胞試料中のエイコサノイドのレベルを決定する工程を含み、ここで正常レベルよりも高いことはNASHを示す。いくつかの実施形態では、エイコサノイドは表2のエイコサノイドである。いくつかの実施形態では、その方法は被験体からの体液または細胞試料中のサイトカイン、サイトケラチン、ケモカイン、アディポカインまたはレプチンのレベルを決定する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、サイトカイン、サイトケラチン、ケモカイン、アディポカインまたはレプチンはTNF、IL−6、CCL2/MCP−1またはCCL19であり、正常レベルよりも高いことはNASHを示す。いくつかの実施形態では、サイトカインまたはサイトケラチンはIL−8、IL−18、サイトケラチン8またはサイトケラチン18であり、正常レベルよりも低いことはNASHを示す。いくつかの実施形態では、その方法は(a)被験体の身体検査を実施すること、(b)被験体の血液中のアミノトランスフェラーゼのレベルを測定すること、または(c)被験体の肝臓の画像を得ることの工程をさらに含む。
【0034】
上記した態様の各々、および本明細書に記載されるその他の態様のいくつかの実施形態では、被験体はヒトのような哺乳動物である。いくつかの実施形態では、哺乳動物は霊長類である。
【0035】
上記した態様の各々、および本明細書に記載されるその他の態様のいくつかの実施形態では、被験体は肝臓移植片ドナー候補であるか、肥満外科手術のために評価されているか、肥満外科手術を行ったことがあるか、または体重減少に関してモニタリングされている。
【0036】
本発明のいくつかのさらなる態様では、本発明の方法において使用するためのキットが提供される。いくつかの実施形態では、キットは(a)マーカー(例えば脂肪酸またはエイコサノイド)に対する抗体および(b)使用のための説明書を含む。いくつかの実施形態では、キットは、(c)第2のマーカー(例えば脂肪酸またはエイコサノイド)に対する第2の抗体をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、(d)第3のマーカー(例えば脂肪酸またはエイコサノイド)に対する第3の抗体をさらに含む。
【0037】
本発明の態様または実施形態が本明細書にてマーカッシュ群またはその他の代替の群に関して記載される場合、本発明は全体として列挙される群全体のみならず、その群の各メンバーを個別に、および主群の全ての可能な小群、1つ以上のその群メンバーを欠く主群をも包含する。本発明はまた、主張される発明における1つ以上のいずれかの群メンバーの明示的な除外をも認識する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、トリグリセリド(または任意のその他の脂質クラス)の相対比率(濃灰色で示す)である脂質代謝物を、例えば血清または血漿中で、肝性トリグリセリド中のその脂質代謝物の相対比率の定量的測定値として測定できること示す。
【図2】図2は、正常被験体からの一致した血漿および肝臓脂質クラスの脂肪酸組成物の相関性を示す。
【図3】図3は、肝性トリグリセリド濃度(ナノモル/g)と肝性トリグリセリド中の20:4n6の相対比率との間の関係(全トリグリセリド脂肪酸のモルパーセンテージとして表現)を示す。
【図4】図4は、肝臓TG20:4n6に関する受信者動作特性(ROC)曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(発明の詳細な説明)
いくつかの態様では、本発明は肝性機能不全、肝性脂肪症、NAFLD、脂肪性肝炎およびNASHのような肝臓トリグリセリドレベルの上昇に関連する肝障害を有する患者を診断、分類および/またはモニタリングし、脂肪症またはNAFLDから脂肪性肝炎またはNASHに移行する危険性を有する患者を同定するために用いることができる検査方法を提供する。
【0040】
肝性トリグリセリドレベルは脂肪症の重篤度を決定する。肝臓内のトリグリセリドの蓄積(脂肪症)は超低密度リポタンパク質(VLDL)分泌を介する肝臓からのトリグリセリドの不十分な排出の結果であるので、血漿中のトリグリセリドの絶対量は脂肪症の規模の一貫した測定ではない。本発明は、体液中の脂質代謝物の特定の量が、肝臓から血漿へのトリグリセリドの絶対流出量とは独立して肝臓トリグリセリドレベルと相関することを見出した。
【0041】
1つの態様では、本発明は被験体の体液からの1つ以上の試料中の1つ以上の脂質代謝物の量を決定すること、および1つ以上の脂質代謝物の量を肝障害の存在と相関させることを含む、被験体における肝障害を診断またはモニタリングする方法を提供する。いくつかの実施形態では、脂質代謝物は脂肪酸および/またはエイコサノイドを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の脂質代謝物は、
【0042】
【化11】

からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、肝障害は肝性機能不全、肝性脂肪症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、脂肪性肝炎または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である。
【0043】
本明細書にて用いられる脂肪酸脂質代謝物の命名法に関して、接頭辞「CE」、「DG」、「FA」、「LY」、「PC」、「PE」、「SM」、「TG」または「TL」で標識された脂肪酸は、各々試料中のコレステロールエステル、ジグリセリド、遊離脂肪酸、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、トリグリセリドおよび全脂質内に存在する、指示された脂肪酸を指す。いくつかの実施形態では、指示された脂肪酸構成成分を接頭辞により指示される脂質クラス内の全脂肪酸の比率として定量化する。接頭辞「SP」は、本明細書では試料中のスフィンゴミエリン中の脂肪酸に関する「SM」と互換的に使用される。接頭辞または特定の脂質クラスのその他の指示のない脂肪酸に対する言及は、試料中の全脂質内に存在する脂肪酸を示す。接頭辞「CE」、「DG」、「FA」、「LY」、「PC」、「PE」、「SM」、「TG」または「TL」に続く「LC」なる用語は、試料中の接頭辞により指示される全脂質クラスの量(例えば血清または血漿のグラムあたりのナノモルとして表現されるクラスの脂質の濃度)を指す。いくつかの実施形態では、例えば血漿または血清からの測定値に関して、略語「PC18:2n6」は、リノール酸(18:2n6)からなる血漿または血清ホスファチジルコリンのパーセンテージを示し、「TGLC」なる用語は、血漿または血清中に存在するトリグリセリドの絶対量(例えばグラムあたりのナノモル)を示す。
【0044】
いくつかの実施形態では、肝障害は脂肪症および/またはNAFLDであり、1つ以上の脂質代謝物は、
【0045】
【化12】

からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、(a)脂質代謝物:
【0046】
【化13−1】

【0047】
【化13−2】

は脂肪症および/またはNAFLDと正に関連し、(b)脂質代謝物:
【0048】
【化14】

は脂肪症および/またはNAFLDと負に関連する。いくつかの実施形態では、測定される脂質代謝物は1つ以上の脂肪酸を含み、各々の脂肪酸の量は(脂肪酸に先行する接頭辞により指示されるような)脂質クラスの脂質中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量である。
【0049】
本明細書で使用される際には、障害と「正に関連する」または「正に相関する」代謝物には、正常対照被験体または正常対照参照に相対してその濃度が障害と共に一般的に上昇するこれらの代謝物が含まれる。障害と「負に関連する」または「負に相関する」代謝物には一般的に、正常対照被験体または正常対照参照に相対して、その濃度が障害と共に低下するこれらの代謝物が含まれる。
【0050】
いくつかの代替の実施形態では、肝障害はNASHであり、1つ以上の脂質代謝物は、
【0051】
【化15−1】

【0052】
【化15−2】

からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、(a)脂質代謝物:
【0053】
【化16】

はNASHと正に関連し、(b)脂質代謝物:
【0054】
【化17】

はNASHと負に関連する。いくつかの実施形態では、測定される脂質代謝物は1つ以上の脂肪酸を含み、各々の脂肪酸の量は(脂肪酸に先行する接頭辞により指示されるような)脂質クラスの脂質中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量である。
【0055】
重ねて、本発明の態様または実施形態が本明細書にてマーカッシュ群またはその他の代替の群に関して記載される場合、本発明は全体として列挙される群全体のみならず、その群の各メンバーを個別に、および主群の全ての可能な小群、1つ以上のその群メンバーを欠く主群をも包含する。本発明はまた、主張される発明における1つ以上のいずれかの群メンバーの明示的な除外をも認識する。
【0056】
実施形態が「含む」なる言語と共に記載される場合はいつも、「からなる」および/または「本質的に〜からなる」のことばで記載される別のように類似する実施形態もまた提供されると理解される。
【0057】
「a」、「an」および「the」は、局面が明確に別のように規定しなければ複数の言及を含む。
【0058】
化学的用語は、特記しない場合、当分野において公知として用いられる。
【0059】
図1に示されるように、トリグリセリド(または任意のその他の脂質クラス)の相対比率(濃灰色で示す)である脂質代謝物を、血清または血漿のような体液中で、肝性トリグリセリド(またはその他の脂質)中のその脂質代謝物の相対比率の定量的測定値として測定できる。脂質代謝物(または脂質代謝物の集合)のこの相対比率が肝性トリグリセリド濃度と相関する場合、それはVLDL中の肝臓からのトリグリセリドの流出量とは独立して、肝性脂肪症の定量的サロゲートとして提供される。故に、特定の脂質クラス内の特定の脂肪酸のモルパーセンテージまたはその他の相対量を、脂肪症に関する定量的サロゲートとして用いることができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、単一の脂質代謝物の相対量(例えばモルパーセンテージまたは重量パーセント)を本発明の方法において用いることができる。その他の実施形態では、2つ以上の脂質代謝物、例えば2、3、4、5、10、15、20以上の脂質代謝物の相対量(例えばモルパーセンテージまたは重量パーセンテージ)を本発明の方法において用いることができる。いくつかの実施形態では、相対量はモルパーセンテージである。いくつかの実施形態では、相対量は重量パーセンテージである。1つ以上の脂質代謝物の量に加えて、被験体からの試料中の以下で定義されるような1つ以上のバイオマーカーの量を本発明の方法において用いることができる。いくつかの実施形態では、バイオマーカーの量は試料中のバイオマーカーの絶対量である。いくつかの実施形態では、バイオマーカーの量は試料中のバイオマーカーの濃度である。
【0061】
本発明にしたがって、2つ以上の脂質代謝物により付与される影響を分析する場合、これらの脂質代謝物の影響を個別に評価するか、または例えば各脂質代謝物の影響を定量するための種々の数式もしくはモデルを用いることにより、これらの脂質代謝物の正味の影響を得るかのいずれかを行うことができる。変数として1つ以上の脂質代謝物のレベルを含有する式には、変数として1つ以上の脂質代謝物の値を用いる任意の数式、モデル、等式、または数学的もしくは統計学的原理もしくは方法に基づいて確立された表現が含まれる。
【0062】
一般的に任意の適当な数学的分析を用いて、被験体の肝臓の状態の投影に関して2つ以上の脂質代謝物の正味の影響を分析することができる。例えば、分散の多変量解析、多変量回帰、重回帰のような方法を用いて従属変数と独立変数の間の関係を決定することができる。階層的および非階層的方法の双方を含むクラスタリングならびに非計量的二次元尺度法を用いて、変数の間およびこれらの変数の変化の間の関連性を決定することができる。
【0063】
加えて、主成分分析は研究の次元を低下させる一般的な方式であり、データセットの分散−共分散構造を解釈するために用いることができる。重回帰およびクラスター分析のような適用において主成分分析を用いることができる。因子分析を用いて観察された変数から「隠れた」変数を構築することにより共分散を記載する。因子分析を主成分分析の延長と考えることができ、ここで主成分分析は最尤法と共にパラメーター推定として用いられる。さらに、2つのベクトルの平均の均等性のような単純仮説は、ホテリングのT二乗統計量を用いて検定することができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、1つ以上の脂質代謝物を変数として含有する式は、回帰分析、例えば多重線形回帰を用いることにより確立される。展開される式の例には、限定するものではないが、以下のものが含まれる。
【0065】
【数1】

式は1、2、3、4、5、10、15、20以上の脂質代謝物のような1つ以上の脂質代謝物を変数として用いることができる。公知の肝臓の状態から得られた一連のデータを用いることにより、これらの式の定数を確立することができる。通常、これらの式で用いられる脂質代謝物のレベルはある時点でのレベルまたはある期間にわたるレベルの変化のいずれかあり得る。
【0066】
本発明によれば、脂質代謝物を用いて確立された数式を用いて、ある期間にわたる被験体の肝臓の状態を定性的または定量的のいずれかで評価することができる。例えば、変数として1つ以上の脂質代謝物を有する式を用いて被験体の肝臓の状態を直接計算することができる。加えて、1つ以上の脂質代謝物を含有する式の正味の値を、肝臓の状態のパターン、例えば脂肪肝疾患の進行または退行に対応するかかる式の標準値と比較することができ、かかる比較の結果を用いて肝臓の状態の発達を投影することができる。具体的には、肝臓の状態の進行に割り当てられるか、もしくは関連するかかる式の標準値に類似するか、またはその範囲内の式の正味の値を有する被験体は、ある期間にわたって進行を経験する可能性がある。同様に、退行に割り当てられるか、もしくは関連するかかる式の標準値に類似するか、またはその範囲内の式の正味の値を有する被験体は、ある期間にわたってその肝臓の状態の退行を経験する可能性がある。
【0067】
同様に、1つ以上の脂質代謝物および1つ以上のバイオマーカーにより付与される正味の影響を分析する場合にも、これらの数学的モデリング方法および式を用いることができる。
【0068】
体液中の脂質代謝物を測定することができる。体液の非限定例には、例えば血液、血漿、血清、単離されたリポタンパク質画分、唾液、尿、リンパ液、脳脊髄液および胆汁酸が含まれる。いくつかの実施形態では、脂質代謝物は血液、血漿、血清または単離されたリポタンパク質画分のような血液基盤の体液中で測定される。いくつかの実施形態では、脂質代謝物は血漿中で測定される。いくつかの実施形態では、脂質代謝物は血清中で測定される。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明は1つ以上の、2つ以上の、3つ以上の、4つ以上の、5つ以上の、または6つ以上の脂質代謝物の量を決定する方法を提供する。
【0070】
いくつかの実施形態では、測定される脂質代謝物は、(a)15−HETEおよび15−ケト−PGF2α、(b)TG18:1n7およびPC20:3n6、(c)11−HETEおよびCE22.6n3、(d)11−HETEおよびPCTL、ならびに(e)PC22:6n3およびPC18:3n3からなる群から選択される一対の脂質代謝物を含む、1つ以上の脂質代謝物からなる群から選択される一対の脂質代謝物を含む。いくつかの実施形態では、その方法は肝障害をNAFLDに対してNASHとして分類する方法である。
【0071】
脂肪症、NAFLD、NASHおよび/またはその他の肝障害に関する脂肪酸マーカー
いくつかの実施形態では、脂質代謝物は特定の脂質クラス内に存在する脂肪酸である。脂質代謝物は、限定するものではないが、以下の表1に列挙される代謝物の各々、および以下の実施例4の表7および8に列挙される代謝物の各々を包含する。いくつかの実施形態では、脂質代謝物はTG20:4n6である。その方法は2、3、4、5、10、15、20以上の脂質代謝物のような1を超える脂質代謝物の量を測定することを伴うことができる。いくつかの実施形態では、表1の2つ以上の脂質代謝物を測定する。いくつかの実施形態では、表1の3つ以上の脂質代謝物を測定する。いくつかの実施形態では、表1の5つ以上の脂質代謝物を測定する。いくつかの実施形態では、表7および/または8の2つ以上の脂質代謝物を測定する。いくつかの実施形態では、表7および/または8の3つ以上の脂質代謝物を測定する。いくつかの実施形態では、表7および/または8の5つ以上の脂質代謝物を測定する。いくつかの実施形態では、脂質代謝物は肝臓トリグリセリドレベルと正に相関する。いくつかの実施形態では、脂質代謝物は肝臓トリグリセリドレベルと負に相関する。いくつかの実施形態では、脂質代謝物をその特定の脂質クラス内の相対量として測定する。いくつかの実施形態では、脂質代謝物をその特定の脂質クラス内のモルパーセンテージとして測定する。いくつかの実施形態では、脂質代謝物をその特定の脂質クラス内の重量パーセンテージとして測定する。
【0072】
(表1.肝性脂肪症の血液基盤の脂質代謝物マーカー(モルパーセンテージに基づく))
【0073】
【表1−1】

【0074】
【表1−2】

【0075】
【表1−3】

表1では、接頭辞「TG」、「FA」、「PC」、「PE」および「CE」は各々トリグリセリド、遊離脂肪酸、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンおよびコレステロールエステル内に存在する脂肪酸に対応する。故に「TG14:0」はトリグリセリド内に存在する脂肪酸14:0を示す。表1では、「14:0」(接頭辞を何ら伴わない)は、全脂肪酸内に存在する脂肪酸14:0を示す。
【0076】
脂質クラスは例えば中性脂質、リン脂質、遊離脂肪酸、全脂肪酸、トリグリセリド、コレステロールエステル、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ジグリセリドまたはリゾホスファチジルコリンでよい。いくつかの実施形態では、脂質クラスは中性脂質、リン脂質、遊離脂肪酸、全脂肪酸、トリグリセリド、コレステロールエステル、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、脂質クラスは中性脂質、リン脂質、全脂肪酸およびコレステロールエステルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、脂質クラスは遊離脂肪酸、全脂肪酸、トリグリセリド、コレステロールエステル、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、脂質クラスは遊離脂肪酸である。いくつかの実施形態では、脂質クラスは全脂肪酸である。いくつかの実施形態では、脂質クラスはトリグリセリドである。いくつかの実施形態では、脂質クラスはコレステロールエステルである。いくつかの実施形態では、脂質クラスはホスファチジルコリンである。いくつかの実施形態では、脂質クラスはホスファチジルエタノールアミンである。いくつかの実施形態では、脂質クラスはリン脂質である。いくつかの実施形態では、脂質クラスは中性脂質である。いくつかの実施形態では、脂質クラスはジグリセリドである。いくつかの実施形態では、脂質クラスはスフィンゴミエリンである。
【0077】
いくつかの実施形態では、1つ以上の脂肪酸を含む1つ以上の脂質代謝物が測定される。いくつかの実施形態では、1つ以上の脂質代謝物は、
【0078】
【化18】

からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、各々の脂肪酸の量は(脂肪酸に先行する接頭辞により指示されるような)脂質クラスの脂質中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量である。
【0079】
例えばいくつかの実施形態では、1つ以上の脂肪酸は、
【0080】
【化19】

からなる群から選択される。
【0081】
いくつかの実施形態では、肝障害は脂肪症および/またはNAFLDであり、1つ以上の脂質代謝物は、
【0082】
【化20】

からなる群から選択される。
【0083】
いくつかの実施形態では、脂質代謝物:
【0084】
【化21】

は脂肪症および/またはNAFLDと正に関連する。いくつかの実施形態では、脂質代謝物:
【0085】
【化22】

は脂肪症および/またはNAFLDと負に関連する。
【0086】
いくつかの代替の実施形態では、肝障害はNASHであり、1つ以上の脂質代謝物は、
【0087】
【化23−1】

【0088】
【化23−2】

からなる群から選択される。
【0089】
いくつかの実施形態では、脂質代謝物:
【0090】
【化24】

はNASHと正に関連する。いくつかの実施形態では、脂質代謝物:
【0091】
【化25】

はNASHと負に関連する。
【0092】
いくつかの実施形態では、
【0093】
【化26】

の相対量が参照(例えば正常対照)よりも多い場合、次いで肝臓中のトリグリセリドの蓄積が示される。いくつかの実施形態では、肝性機能不全、肝性脂肪症、NAFLDおよび/またはNASHが示される。
【0094】
いくつかの実施形態では、
【0095】
【化27】

の相対量が参照(例えば正常対照)よりも少ない場合、次いで肝臓中のトリグリセリドの蓄積が示される。いくつかの実施形態では、肝性機能不全、肝性脂肪症、NAFLDおよび/またはNASHが示される。
【0096】
いくつかの実施形態では、脂肪酸の量(例えば特定の脂質クラス内の脂肪酸の相対量)は血液、血清、血漿または単離されたリポタンパク質画分試料から決定される。
【0097】
脂肪症、NAFLD、NASHおよび/またはその他の肝障害に関するエイコサノイド マーカー
本発明は試料中で測定される1つの、いくつかのまたは全ての脂質代謝物がエイコサノイドであり得る方法を提供する。エイコサノイドの非限定例を表2、実施例5の表9、および実施例5の表10にて提供する。エイコサノイドに関する略語の例を表9に示す。
【0098】
(表2.エイコサノイドの一覧表)
【0099】
【表2−1】

【0100】
【表2−2】

いくつかの実施形態では、その方法は2、3、4、5、10、15、20以上の脂質代謝物のような1を超える脂質代謝物の量を測定することを伴うことができ、それは本明細書に記載される2、3、4、5、10、15、20以上の脂肪酸マーカーおよび/または本明細書に記載される2、3、4、5、10、15、20以上のエイコサノイドマーカーを含むことができる。いくつかの実施形態では、表2の2つ以上の脂質代謝物を測定する。いくつかの実施形態では、表2の3つ以上の脂質代謝物を測定する。いくつかの実施形態では、表2の5つ以上の脂質代謝物を測定する。いくつかの実施形態では、表9および/または10(以下の実施例5を参照)の2つ以上の脂質代謝物を測定する。いくつかの実施形態では、表9および/または10の3つ以上の脂質代謝物を測定する。いくつかの実施形態では、表9および/または10の5つ以上の脂質代謝物を測定する。いくつかの実施形態では、表1、表2、表7(以下の実施例4を参照)、表8(以下の実施例4を参照)、表9および/または表10の2つ以上の脂質代謝物を測定する。いくつかの実施形態では、表1、表2、表7、表8、表9および/または表10の3つ以上の脂質代謝物を測定する。いくつかの実施形態では、表1、表2、表7、表8、表9および/または表10の5つ以上の脂質代謝物を測定する。いくつかの実施形態では、表7、表8および/または表10の2つ以上の脂質代謝物を測定する。いくつかの実施形態では、表7、表8および/または表10の3つ以上の脂質代謝物を測定する。いくつかの実施形態では、表7、表8および/または表10の5つ以上の脂質代謝物を測定する。
【0101】
いくつかの実施形態では、1つ以上の脂質代謝物は、
【0102】
【化28】

からなる群から選択される。
【0103】
いくつかの実施形態では、以下のエイコサノイドはNASHと正に関連する:PGB2;PGE2;PGF2α;15−ケト−PGF2α;5−HETE;8−HETE;9−HETE;11−HETE;12−HETE;12−HEPE;11,12−EpETrE;8,9−DiHETrE;および15−HETE。いくつかの実施形態では、15−HETEは脂肪症および/またはNAFLDと正に関連する。いくつかの実施形態では、以下のエイコサノイドは脂肪症および/またはNAFLDと負に関連する:PGA2M;6−ケト−PGF1α;11−DTXB2;12,13−DiHOME;9,10−EpOME;12,13−EpOME;および19,20−DiHDPA。いくつかの実施形態では、エイコサノイド19,20−DiHDPAはNASHと負に関連する。
【0104】
ある特定の実施形態では、その方法は、被験体の体液からの試料中の1つ以上の脂質クラスの脂質中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を決定することのみならず、被験体からの体液中のエイコサノイドのレベルを決定する工程をも含む、被験体におけるNASHを診断する方法である。いくつかの実施形態では、エイコサノイドの正常なレベルよりも高いことはNASHを示す。いくつかの実施形態では、エイコサノイドは15−HETE;PGB2;PGE2;PGF2α;15−ケト−PGF2α;5−HETE;8−HETE;9−HETE;11−HETE;12−HETE;12−HEPE;11,12−EpETrE;および8,9−DiHETrEからなる群から選択される。
【0105】
いくつかの実施形態では、エイコサノイドの量を血液、血清、血漿または単離されたリポタンパク質画分から決定する。
【0106】
脂肪症、NAFLD、NASHおよび/またはその他の肝障害に関するその他のマーカー
いくつかの実施形態では、本発明は、さらに本明細書にて提供されるいずれかの1つ以上の脂肪酸および/またはエイコサノイドのような1つ以上の脂質代謝物の量を試料中で決定するのみならず、1つ以上のさらなるバイオマーカーをも決定する。
【0107】
以下のさらなるバイオマーカーは脂肪症、NAFLDおよびNASHの診断の助けとなり得る:
(1)マロニル−CoAおよびマロニルカルニチン(肝臓中のトリグリセリドのレベルの上昇と共にレベルは上昇する)、
(2)表3(肝臓中のトリグリセリドのレベルの上昇と共にレベルは低下する)もしくは実施例6に列挙される遊離カルニチン、ブチロベタインおよびアシルカルニチン、ならびに/または
(3)表4(コレステロール合成の増大と共にレベルは上昇する)もしくは実施例6に列挙されるステロールおよび胆汁酸。
【0108】
体液および細胞試料を用いて、これらのさらなるバイオマーカーを測定することができる。細胞試料の例には、限定するものではないがリンパ球およびマクロファージが含まれる。
【0109】
(表3.アシルカルニチンの一覧表)
【0110】
【表3】

(表4.胆汁酸およびステロールの一覧表)
【0111】
【表4】

加えて以下のさらなるバイオマーカーは、NAFLDとは区別してNASHを診断する助けとなり得る。
(1)表4(コレステロール合成の増大と共にレベルは上昇する)もしくは実施例6に列挙されるステロールおよび胆汁酸
(2)限定するものではないが表2(前記)、実施例5の表9もしくは実施例5の表10に示されるものを含むエイコサノイド、ならびに/または
(3)限定するものではないがTNFα、IL−6、CCL2/MCP−1およびCCL19(NASHでレベルは上昇する):IL−8、IL−18、サイトケラチン8およびサイトケラチン18(NASHでレベルは低下する)を含むサイトカイン、サイトケラチン、ケモカイン、アディポカインもしくはレプチン。
【0112】
体液および細胞試料を用いてさらなるマーカーを測定することができる。細胞試料の例には、限定するものではないがリンパ球およびマクロファージが含まれる。
【0113】
これらのバイオマーカーに関するさらなる情報を、(サイトカイン)Haukeland JWら Systemic inflammation in nonalcoholic fatty liver disease is characterized by elevated levels of CCL2.J Hepatol.44(6):l167−74(2006年6月);およびAbiru Sら Serum cytokine and soluble cytokine receptor levels in patients with non−alcoholic steatohepatitis.Liver Int.26(l):39−45(2006年2月);(マロニル−CoA)Savage DBら Reversal of diet−induced hepatic steatosis and hepatic insulin resistance by antisense oligonucleotide inhibitors of acetyl−CoA carboxylases l and 2.J Clin Invest.116(3):817−24(2006年3月);およびHammond LEら Mitochondrial glycerol−3−phosphate acyltransferase−1 is essential in liver for the metabolism of excess acyl−CoAs.J Biol Chem.280(27):25629−36(2005年7月8日);(ブチロベタイン)Higashi Yら Effect of gamma−butyrobetaine on fatty liver in juvenile visceral steatosis mice.J Pharm Pharmacol.53(4):527−33(2001年4月)に見出すことができる。
【0114】
脂質代謝物の測定に加えて、1つ以上のこれらのさらなるバイオマーカーの量の測定値を、本発明の方法において用いることができる。いくつかの実施形態では、1つのバイオマーカーの量を被験体からの試料中で測定する。いくつかの実施形態では、2つのバイオマーカーの量を被験体からの試料中で測定する。その他の実施形態では、3、4、5、6、7、8、10、12、15、20以上のバイオマーカーを被験体からの試料中で測定する。
【0115】
診断およびモニタリングの方法
本発明の方法を用いて肝障害、例えば肝性機能不全、肝性脂肪症、NAFLD、脂肪性肝炎またはNASHを診断することができる。その方法を用いて肝障害の重篤度を評価し、肝障害をモニタリングし、および/または肝障害の進行もしくは退行を評価することもできる。いくつかの実施形態では、肝障害は肝性機能不全である。いくつかの実施形態では、肝障害は肝性脂肪症である。いくつかの実施形態では、肝障害はNAFLDである。いくつかの実施形態では、肝障害は肝性脂肪性肝炎である。いくつかの実施形態では、肝障害はNASHである。
【0116】
いくつかの実施形態では、その方法は1つ以上の脂質代謝物の量を1つ以上の参照と比較することを含む。いくつかの実施形態では、参照は脂質代謝物の正常レベルを表す。いくつかの実施形態では、参照は同一被験体に関して以前に測定された脂質代謝物の量である。いくつかの実施形態では、参照は、以前に被験体から得られた体液からの試料中のトリグリセリド中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量である。いくつかの実施形態では、参照は、正常な肝臓を有する1以上の被験体の体液からの1つ以上の試料中に見出されるトリグリセリド中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を表す。
【0117】
例えば診断の方法は被験体の体液からの試料中の1つ以上の脂質クラスの脂質中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を決定すること、およびその量を肝障害の存在と相関させることを含むことができる。いくつかの実施形態では、その方法は相対量を参照と比較する工程をさらに含むことができ、ここで相対量が参照よりも多い場合、肝性機能不全、肝性脂肪症、NAFLD、脂肪性肝炎またはNASHが示される。いくつかの実施形態では、その方法は相対量を参照と比較する工程をさらに含むことができ、ここで相対量が参照よりも少ない場合、肝性機能不全、肝性脂肪症、NAFLD、脂肪性肝炎またはNASHが示される。
【0118】
同様に、肝障害の重篤度を測定することができ、ここで相対量は肝障害の重篤度を示す。加えて、相対量は肝臓の現在の状態を示し、故に肝障害をモニタリングでき、および/または障害の進行もしくは退行を評価することができる。相対量を2つ以上の時点で測定することができる。いくつかの実施形態では、相対量を2、3、4、5、6、7、8、10、12、15、20以上の時点で測定できる。各々の時点を1以上の時間、日、週または月で分けることができる。1を超える時点で相対量を測定することにより、臨床医は被験体の処置に対する応答を評価することができる。
【0119】
いくつかの実施形態では、相対量を参照と比較することができる。いくつかの実施形態では、相対量が参照よりも多い場合、肝性機能不全、肝性脂肪症、NAFLD、脂肪性肝炎またはNASHが示される。いくつかの実施形態では、相対量が参照よりも少ない場合、肝性機能不全、肝性脂肪症、NAFLD、脂肪性肝炎またはNASHが示される。相対量と参照との間の差異を用いて重篤度を示すこともできる。例えば、相対量が漸増的に参照よりも増えるとき、疾患の重篤度の漸増が示される。または、例えば相対量が漸減的に参照よりも少なくなるとき、疾患の重篤度の漸増が示される。参照の例は限定するものではないが、正常な肝臓を有する個体、肝性機能不全を有する個体、脂肪症を有する個体、NAFLDを有する個体、脂肪性肝炎を有する個体、NASHを有する個体、硬変を有する個体および/または線維症を有する個体からの脂質代謝物の量に基づき得る。参照はまた、特定の原因、例えば1つ以上の以下で見出されるものの結果である肝障害を有する個体にも基づき得る。参照はまた、以前に例えば肝障害を発達させる前、処置を開始する前、処置の終了後に、および/または処置の間の異なる時点で被験体から得られた試料に基づき得る。いくつかの実施形態では、参照は、以前に被験体から得られた体液の試料中の1つ以上の脂質クラス中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量である。いくつかの実施形態では、参照は、正常な肝臓を有する1以上の被験体の体液の1つ以上の試料中の1つ以上の脂質クラス中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を表す。
【0120】
いくつかの実施形態では、被験体は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、哺乳動物は霊長類である。いくつかの実施形態では、被験体はヒトである。
【0121】
いくつかの実施形態では、その方法は、被験体の処置に対する応答を決定するために用いられる肝障害をモニタリングする方法である。
【0122】
脂肪症、NAFLD、脂肪性肝炎およびNASHの原因
本発明の方法から利益を享受し得る脂肪酸肝障害は、種々の因子により引き起こされ得る。非限定例には、肝炎;黄熱、HIV、HBVおよびHCVのようなウイルス性または非ウイルス性感染性作用物質により誘起される脂肪症;タモキシフェン、脱共役タンパク質阻害剤、イソニアジド、リファンピシン、フィブラートおよびペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アゴニストによるような薬物誘起脂肪症;肥満、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、糖尿病、インスリン抵抗性および代謝障害のような代謝原因;アルコール性脂肪肝疾患およびアルコール性脂肪性肝炎のようなアルコール基盤の原因;シトリン欠損、ヘモクロマトーシスおよび高フェリチン血症のような先天性代謝異常または遺伝子変化;例えば四塩化炭素による毒素誘起脂肪症または毒素誘起脂肪性肝炎のような毒素誘起原因;栄養障害;栄養吸収障害;セリアック病;リポジストロフィー;肥満外科手術;ならびに肝臓移植が含まれる。
【0123】
故に、いくつかの実施形態では、肝障害は、肝炎、HIV感染、HBV感染、HCV感染、ウイルス誘起脂肪症、非ウイルス性感染性作用物質により誘起される脂肪症、薬物誘起脂肪症、肥満、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、糖尿病、インスリン抵抗性、代謝障害、アルコール性脂肪肝疾患、アルコール性脂肪性肝炎、先天性代謝異常、遺伝子変化、毒素誘起脂肪症、毒素誘起脂肪性肝炎、栄養障害、栄養吸収障害、セリアック病、リポジストロフィー、肥満外科手術および肝臓移植からなる群から選択される1つ以上の状態に関連する。
【0124】
診断方法を肝臓移植片の評価、肝臓移植片提供のための個体の適合性、肥満外科手術の前の評価、手術に対する応答を評価するための肥満外科手術患者の評価、および体重減少患者の評価のために用いることもできる。
【0125】
脂質代謝物およびバイオマーカーの測定の方法
脂質代謝物含量に関するアッセイを体液試料において実施することができる。いくつかの実施形態では、脂質代謝物の量を血液、血漿、血清、単離されたリポタンパク質画分、唾液、尿、リンパ液および脳脊髄液からなる群から選択される試料から決定する。いくつかの実施形態では、アッセイを全血、血漿、血清、単離されたリポタンパク質画分で実施することができる。いくつかの実施形態では、試料は血漿または血清である。さらなるバイオマーカーに関するアッセイを体液または細胞試料で実施することができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、複数の異なる脂質代謝物を同一試料中で測定する。その他の実施形態では、複数の脂質代謝物の各々を異なる試料から測定する。複数の試料を用いる場合、試料は被験体の同一または異なる体液からでよい。
【0127】
限定するものではないが、質量分析(MS)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、無勾配HPLC、勾配HPLC、順相クロマトグラフィー、逆相HPLC、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動、微小流体工学、クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー(GC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、固定金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)、アフィニティークロマトグラフィー、イムノアッセイおよび/または比色アッセイを利用する方法を含む当業者に公知の方法により、脂質代謝物およびその他のバイオマーカーを容易に単離および/または定量することができる。いくつかの実施形態では、本発明の方法は脂質代謝物含量を決定するためにMSを利用する。いくつかの実施形態では、本発明の方法は脂質代謝物含量を決定するためにイムノアッセイを利用する。いくつかの実施形態では、本発明の方法はバイオマーカーの濃度を決定するためにMSを利用する。いくつかの実施形態では、本発明の方法はバイオマーカーの濃度を決定するためにイムノアッセイを利用する。
【0128】
種々の分析方法が当業者に周知であり、以下の文献においてさらに記載されており、それをその全てにおいて出典明示により本明細書の一部とする。
【0129】
【数2】

【0130】
【数3】

【0131】
【数4】

TrueMass(登録商標)分析プラットフォームを本発明の方法のために用いることもできる。TrueMass(登録商標)は、トリグリセリド、コレステロールエステルおよびリン脂質代謝物のような構造およびエネルギー脂質代謝物に関与するおよそ400の個々の代謝物に関して血清または血漿から定量的データを得るために用いることができる分析プラットフォームである。構造およびエネルギー脂質は代謝の中心的な構成成分であり、身体の事実上あらゆる生物学的過程に組み込まれるので、このプラットフォームは疾患のプロファイリングに有用である。血漿または血清試料のためのデータセットは遊離コレステロールならびに、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリン、トリグリセリド、ジグリセリド、遊離脂肪酸、およびコレステロールエステルからの以下の脂肪酸:
【0132】
【化29】

ならびに16:0、18:0、18:1n9および18:1n7のプラスマロゲン誘導体の定量的測定を含む。TrueMass(登録商標)を使用するための方法は当業者に公知であり、以下の文献にも記載されており、それはその全てにおいて出典明示により本明細書の一部とする。米国特許出願第11/296829号(12/6/05出願):Mutch DMら An integrative metabolism approach identifies stearoyl−CoA desaturase as a target for an arachidonate−enriched diet.FASEB J.19(6):599−601(2005年4月);Epub (2005年1月24日);Stone SJら Lipopenia and skin barrier abnormalities in DGAT2−deficient mice.J Biol Chem.279(12):11767−76(2004年3月19日);Watkins SMら Phosphatidylethanolamine−N−methyltransferase activity and dietary choline regulate liver−plasma lipid flux and essential fatty acid metabolism in mice.J Nutr.133(11):3386−91(2003年11月);Watkins SMら Lipid metabolome−wide effects of the PPARgamma agonist rosiglitazone.Lipid Res.43(11):1809−17(2002年11月)。
【0133】
適当な方法の非限定例(その全てにおいて出典明示により本明細書の一部とする)を、Generating,Viewing,Interpreting,and Utilizing a Quantitative Database of Metabolitesと題された米国特許出願公開第2004/0143461号およびPCT公開第WO03/005628号;Stanton,B.ら Interaction of estrogen and 2,3,7,8−tetracholorodibenzo p−dioxin(TCDD)with hepatic fatty acid synthesis and metabolism of male chickens(Gallus domesticus).Comp.Biochem.and Physiology Part C 129:137−150(2001);Watkins,S.M.ら Unique Phospholipid Metabolism in Mouse Heart in Response to Dietary Docosahexaenoic or α−Linoleic acids.Lipids.36(3):247−254(2001);およびBernhardt,T.G.ら Purification of fatty acid ethyl esters by solid−phase extraction and high−performance liquid chromatography.J.of Chromatography B,675:189−196(1996)においても見出すことができる。
【0134】
非限定例として、その方法は以下の工程を含み得る。抽出、脂質クラス分離、脂肪酸メチルエステルの調製ならびに脂肪酸およびステロール分離および定量。方法の非限定例には以下の工程が含まれる。(1)抽出:Folch抽出の変法を用いてクロロホルム:メタノール(2:1容量/容量)で血漿200μlから脂質を抽出する(Folch,J.、M.Leesら、「A simple method for the isolation and purification of total lipides from animal tissues」J Biol Chem 226(1):497−509(1957))。定量用の基本の内部標準のパネルの存在下で各抽出を実施する。抽出された脂質を濃縮し、HPLCによる分離に備える。(2)脂質クラス分離:個々の脂質クラスを種々の方法を用いてHPLCにより抽出物から分離する。各々の分離された脂質クラスを収集し、トランスエステル化に備えて窒素下で乾燥させる。(3)脂肪酸メチルエステルの調製:脂質クラスを密封されたバイアル内で3N メタノール性HCl中窒素雰囲気下100℃で45分間トランスエステル化する。得られた脂肪酸メチルエステルを混合物からヘキサンで抽出し、窒素下でヘキサン抽出物を密封することによりガスクロマトグラフィーのための自動注入に備える。(4)脂肪酸およびステロール分離および定量:30m DB−225MSキャピラリーカラム(J&W Scientific、Folsom、CA)および水素炎イオン化検出器を装備したガスクロマトグラフ(Hewlett−Packard model6890、Wilmington、DE)を用いてキャピラリーガスクロマトグラフィーにより脂肪酸メチルエステルを分離および定量する。
【0135】
脂質代謝物の定量において、サロゲートまたは内部標準を用いることができる。サロゲート標準は当分野において公知である。サロゲート標準の非限定例は、とりわけ「Generating,Viewing,Interpreting,and Utilizing a Quantitative Database of Metabolites」と題されたPCT公開第WO03/005628号の16−17頁および25−31頁ならびに米国特許出願公開第2004/0143461号(その全てにおいて出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。サロゲート標準の非限定例を以下の表5においても提供する。
【0136】
(表5.基本のサロゲート標準の例)
【0137】
【表5−1】

【0138】
【表5−2】

【0139】
【表5−3】

キット
本発明の方法を実行するためのキットを提供する。そのキットは(a)1つ以上の脂質代謝物の量を測定するための1つ以上の試薬、および(b)使用のための説明書を含む。キットは1、2、3、4、5、10、15、20以上の脂質代謝物の量を測定するための1、2、3、4、5、10、15、20以上の試薬を提供し得る。キットはさらに、上記および表2−4にて開示されたもののような1つ以上のさらなるバイオマーカーを測定するための1つ以上の試薬を提供し得る。いくつかの実施形態では、キットは、イムノアッセイにおいて使用するための1つ以上の試薬を含む。いくつかの実施形態では、キットは、MSアッセイにおいて使用するための1つ以上の試薬を含む。いくつかの実施形態では、試薬は抗体である。抗体を作成する方法は当業者に公知である。
【0140】
いくつかの態様では、本発明は、本明細書に記載される方法の各々において使用するためのキットを提供し、ここでそのキットは(a)脂質代謝物に対する抗体、および(b)使用のための説明書を含む。いくつかの実施形態では、キットはさらに、(c)第2の脂質代謝物に対する第2の抗体を含む。いくつかの実施形態では、キットはさらに(d)第3の脂質代謝物に対する第3の抗体を含む。いくつかの実施形態では、第1、第2および/または第3の脂質代謝物は脂肪酸である。
【0141】
以下の非限定的な実施例により本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0142】
実施例1−3に関する材料および方法
研究集団
第1のデータセットは49個の肝臓生検試料を含み、それは肝性トリグリセリド組成および肝性トリグリセリド濃度との相関性を決定するためにプロファイリングされた。組織の病理学的試験により評価されるように、これらの試料のうち、8人の被験体がNASHに分類され、6人の被験体がNAFLDに分類され、35個が正常試料であった。これらの49個の肝臓試料は多様な人種(白色、黒色および不確定)の男性および女性から収集された。正常な肝臓を有する9人の被験体は一致する血漿試料を提供した。これらの試料を用いて肝臓トリグリセリド含量と血漿脂質代謝物との間の相関性を提供した。
【0143】
第2のデータセットには肝性機能不全を有する8人の被験体および(肝臓生検により)正常な8人の個体からの血清試料が含まれた。このデータセットを用いて肝臓生検分析からの所見を確認した。
【0144】
分析方法
血漿および組織からの脂質を、基本の内部標準の存在下、Folchらの方法(Folch,J.ら A simple method for the isolation and purification of total lipids from animal tissues.J.Biol.Chem.226:497−509(1957))によりクロロホルム−メタノール(2:1、容量/容量)を用いて抽出した。各分析に関して血漿200μlを使用した。各抽出物内の個々の脂質クラスをWatkins,S.M.ら Unique phospholipid metabolism in mouse heart in response to dietary docosahexaenoic or {alpha}−linolenic acids.Lipids.36:247−254(2001)に記載されるように、調製用薄層クロマトグラフィーにより分離した。
【0145】
基本の脂質クラス標準化合物を薄層クロマトグラフィープレートの2本の外側のレーンにスポットして、試料脂質クラスの位置確認を可能にした。各脂質画分をプレートから掻き取り、密封バイアル内で3N メタノール性HCl中、窒素雰囲気下100℃で45分間トランスエステル化した。得られた脂肪酸メチルエステルを混合物から0.05%ブチル化ヒドロキシトルエン含有ヘキサンで抽出し、窒素下でヘキサン抽出物を密封することによりガスクロマトグラフィーに備えた。
【0146】
Watkins,S.M.ら Unique phospholipid metabolism in mouse heart in response to dietary docosahexaenoic or {alpha}−linolenic acids.Lipids.36:247−254(2001)に記載されるように、30m DB−225MSキャピラリーカラム(J&W Scientific、Folsom、CA)および水素炎イオン化検出器を装備したガスクロマトグラフ(Hewlett−Packard model6890、Wilmington、DE)を用いて、キャピラリーガスクロマトグラフィーにより脂肪酸メチルエステルを分離および定量した。
【0147】
一度クロマトグラムを作成すると、分析用ソフトウェア(Atlas 2003:Thermo Electron Corporation)により参照標準に基づいて目的の各分析被験体脂質代謝物を同定し、未加工エリアを作成した。各分析対象に関する未加工エリア、ピーク形パラメーターおよび応答因子を情報管理システムにエクスポートし、ここで積分アルゴリズムを用いて目的の各分析対象に関する補正エリアを作成した。適切なサロゲートの面積に対する分析対象ピークの面積の比を取ることにより定量データを計算した。この比率を元来の試料におけるサロゲートの濃度に乗じて、試料形式のグラムあたりのマイクログラムでデータを作成した。次いで各分析対象をその分子量で除し、1000を乗じて試料のグラムあたりの分析対象のナノモルを計算した。各脂肪酸の濃度をそのクラス内の脂肪酸の濃度の合計で除して、各脂質クラスに関するモルパーセンテージデータを計算した。
【0148】
統計方法
被験体の30%を超えて検出されない代謝物は統計分析には含めなかった。
【0149】
データ
変換されていないモルパーセンテージデータを用いて肝性トリグリセリド含量と相関させ、肝性機能不全研究における結果の確認にも使用した。
【0150】
相関性
ピアソンの相関係数を用いて各代謝物と全肝性トリグリセリドとの関係性を評価した。表6の代謝物は全肝性トリグリセリドと相関し(α<0.2)、肝性機能不全と正常個体との間で血清中に観察された差異と比較した。肝性機能不全個体で逆の効果を有した(2群:正常および肝性機能不全に関する不対スチューデントt検定による)これらの代謝物は、表6に含めなかった。
【0151】
実施例1
血漿および肝臓脂肪酸組成物の相関性
肝性トリグリセリド含量と相関する、脂質クラスのパーセンテージ組成物として表現される脂質代謝物は血液からアッセイできることが見出された。血液基盤の測定値に関する可能性を決定して、肝性脂質クラス脂肪酸組成物を正確に反映するために正常ヒトなヒトから(第1の被験体のセットから)の一致した血漿−肝臓試料からの個々の脂質クラスの脂肪酸組成物を相関させた。血液血漿と肝臓の組成物間の相関性は、トリグリセリドおよびホスファチジルコリンクラスに対して優れており、コレステロールエステルクラスに関して幾分良好であった(図2)。これにより、トリグリセリドおよびホスファチジルコリンの血液血漿脂肪酸組成物が、各々トリグリセリドおよびホスファチジルコリンの肝臓脂肪酸組成物の正確な指標であることが示された。故に、肝臓の組成データが脂肪症と十分に相関する場合、脂肪酸の血液血漿基盤の測定値は肝臓(脂肪症)におけるトリグリセリドの定量的な量を示し得る。
【0152】
優れた分類を提供し、単一の脂質生合成経路と合致し、肝臓トリグリセリドの予測となる、15−20の比例的な脂肪症のマーカーがヒト肝臓生検で同定された。肝臓TG20:4n6に関する受信者動作特性(ROC)曲線を図4に示す。
【0153】
実施例2
肝性脂肪症と肝性脂肪酸組成物との間の相関性
第1のデータセットをこの実験において使用した。49人の被験体の肝臓試料を、肝性脂肪症および炎症の程度に関して分類した。6人の被験体がNAFLDに分類され、8人の被験体がNASHに分類された。全てのその他の試料を正常と推定した。TrueMass(登録商標)技術を用いて試料をプロファイリングし、多くの代謝物が全肝性トリグリセリド濃度と正または負のいずれかで相関することが見出された。とりわけ、一飽和脂肪酸は一般的に脂肪症と正に相関し、必須脂肪酸は一般的に脂肪症と負に相関した。全肝性トリグリセリドと十分に相関する代謝物の一例は、トリグリセリド中に存在する全脂肪酸のパーセンテージとして表現される脂肪酸20:4n6であった(図3)
図3は肝性トリグリセリド濃度(ナノモル/g)と肝性トリグリセリド中20:4n6の相対比率(全トリグリセリド脂肪酸のモルパーセンテージとして表現される)との間の関係性を示す。TG20:4n6の相対比率は、肝臓中のトリグリセリドの全濃度の優れた予測因子であった。正常に分類されたにもかかわらず、いくつかの正常試料はNAFLDレベルのトリグリセリドを呈し、20:4n6の相対比率は全トリグリセリド濃度の優れた予測因子のままであった。
【0154】
実施例3
NAFLDおよびNASHのマーカー
表6のNAFLDおよびNASHの代謝物マーカーは、肝臓の全トリグリセリド含量とのその観察されたおよび/または予測された相関性に基づいて選択された。加えてこれらのマーカーは、正常肝臓機能または肝性機能不全を有する試験された16人全ての被験体を分類するのに有用ないくつかの相関性を示した。
【0155】
(表6:肝性脂肪症の血液基盤の脂質代謝物マーカー(モルパーセンテージに基づく))
【0156】
【表6−1】

【0157】
【表6−2】

【0158】
【表6−3】

実施例4
血漿中のNAFLDおよびNASHの脂肪酸マーカー
研究集団
NASH、NAFLDおよび正常対照血漿試料のセットを収集して、血漿中の脂質組成物における差異を試験した。NASHの患者は30人の、NAFLDの患者は7人、正常被験体は12人であった。
【0159】
分析方法
絶食時血漿、血清および肝臓試料から脂質代謝物を定量した。測定された脂質には、コレステロール、コレステロールエステル(CE)、ジグリセリド(DG)、遊離コレステロール(FS)、遊離脂肪酸(FA)、リゾホスファチジルコリン(LY)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)およびトリグリセリド(TG)が含まれた。CE、DG、FA、LY、PC、PEおよびTG脂質クラスに関して、以下の脂肪酸構成成分が脂質クラス内の全脂肪酸の比率として定量された。
【0160】
【化30】

16:0、18:0、18:1n7および18:1n9のプラスマロゲン誘導体、t16:1n7t18:1n9t18:2n6。この実施例では、「LC」なる用語は、示される値が血清または血漿のグラムあたりのナノモルとして表現される脂質クラスの全濃度であることを示す。故にこの実施例では、PC18:2n6なる略語は、リノール酸(18:2n6)からなる血漿または血清ホスファチジルコリンのパーセンテージを示し、TGLCなる用語は血漿または血清中に存在するトリグリセリドの絶対量(グラムあたりのナノモル)を示す。
【0161】
試料からの脂質は、各脂質クラスに関する基本のサロゲート標準の存在下で、液体:液体抽出により抽出され、脂質抽出物を創成した。分析されている材料の量を正確に決定するために、試料およびサロゲートの質量をこの工程で記録した。試料およびサロゲート標準の質量を用いて、各脂質クラスの各脂肪酸の定量的な量を計算した。
【0162】
中性およびリン脂質クラスを、Varian Vac Elut 20真空マニフォールドおよびSupelco LC−SIシリカ充填SPEカートリッジを用いて固相抽出により互いに分離した。これらの抽出物を一度調製すると、中性脂質クラスをシリカゲルG−60TLCプレートの調製用薄層クロマトグラフィーにより分離した。リン脂質クラスを、Agilent 1100シリーズHPLCの高速液体クロマトグラフィーによりPhenomenex Sperex 5u OH Diolカラム(250×4.6mm、5ミクロン)およびSEDEX75蒸発光散乱検出器を用いて分離した。一度各クラスを単離すると、脂質クラスをメタノール中1%硫酸でトランスエステル化し、脂肪酸メチルエステル(FAME)の形成に至った。各クラスに関するFAME混合物をAgilent GC6890のキャピラリーガスクロマトグラフィー(GC)によりJ&W Scientific HP−88融合シリカキャピラリーカラム(30m×25μm、0.2μmフィルム)および水素炎イオン化検出器を用いて分離および定量した。
【0163】
統計方法
NAFLDおよびNASHのマーカーに関して、モルパーセンテージデータおよび脂質クラス濃度を評価した。データを分析用に変換しなかった。被験体の30%を超えて検出されない代謝物は統計分析には含めなかった。両側t検定を用いて群(NASH対正常、およびNAFLD対正常)を比較した。
【0164】
結果
表7および8は、各々NASHおよびNAFLDと有意に関連するマーカーを示す。NASHおよびNAFLD被験体におけるたいていの脂質クラスは、正常と有意に異ならなかった。ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルコリンは、NASHにおいて正常に相対して有意に減少した(t検定からのp値:0.001、0.021)。ホスファチジルコリンおよびリゾホスファチジルコリンは、NAFLDにおいて正常に相対して有意に減少した(t検定からのp値:0.05、0.042)。ノンパラメトリックウィルコクソン検定から非常に類似した結果が得られた。
【0165】
オメガ3脂肪酸、特にDHAは、正常対照に相対してNASH被験体において減少した。DHAの減少はCE、PCおよびPEで定量的および組成的の双方で正常対照に相対してNASHにおいて認められた。DHAはFA、LYおよびTGで組成的にのみ正常対照に相対してNASHにおいて有意に減少した。18:3n3はPCで定量的および組成的の双方で有意に減少したが、それは遊離脂肪酸で組成的にただ有意に減少した。22:5n3は、PCで正常被験体に相対してNASHおよびNAFLDにおいて組成的に有意に増加した。
【0166】
18:2n6は、リン脂質で正常被験体に相対してNASHおよびNAFLDにおいて定量的に有意に減少したが、20:3n6はCE、FAおよびTGで有意に増加した。組成的には、18:2n6はLYでのみ有意に減少したが、20:3n6はDGを除いて各脂質クラスで正常対照に相対してNASHおよびNAFLDにおいて増加した。
【0167】
飽和脂肪酸はPE、PCおよびDGで正常対照に相対してNASHにおいて有意に増加した。NAFLD被験体もまた正常対照よりも高い飽和脂肪酸を有する傾向があった。組成的には、18:0のみがCE、LYおよびPCでNASHおよびNAFLDにおいて増加した。
【0168】
(表7.NASHマーカー(t検定において1で有意、p値を丸括弧内に示す))
【0169】
【表7−1】

【0170】
【表7−2】

(表8.NAFLDマーカー(t検定において1で有意、p値を丸括弧内に示す))
【0171】
【表8】

実施例3で同定されたこととは対照的に、この特定の研究では、以下の代謝物が脂肪症と正に関連することが見出されなかった。PC20:2n6;PC18:1n7;およびCE22:6n3。さらにこの研究では、実施例3で同定されたこととは対照的に、以下の代謝物が脂肪症と負に関連することが見出されなかった。TG20:3n6;TG22:5n3;およびPC22:5n3。
【0172】
実施例5
血漿中のNAFLDおよびNASHのエイコサノイドマーカー
研究集団
研究3で用いた研究集団の亜集団を用いてNASH、NAFLDおよび正常被験体の間のエイコサノイドの脂質組成物における差異を決定した。NASH患者は26人、NAFLD患者は5人、および正常対照は12人であった。
【0173】
分析方法
タンパク質沈殿およびろ過、その後LC/MSへの負荷を用いて、血漿または血清250μlからエイコサノイドを抽出した。定量用に重水素化されたサロゲートの混合物20μlを各試料に加え、完全に混合した。各血漿/血清試料10μlに抗酸化溶液(50:50MeOH:HO中0.2mg/ml BHT.EDTA)を加え、完全に混合した。メタノール1mlを各試料に加え、続いて混合することによりタンパク質沈殿を実施した。試料を−4℃および17000gで10分間遠心した。上澄を窒素下、10psiで2時間乾燥させた。乾燥した試料をメタノール:脱イオン化水(50:50)60μlで再構築した。混合した後、試料をLC/MSMS分析用にシラン処理されたオートサンプラーインサートに移した。試料をApplied Biosystems 4000 QTRAPに連結されたAgilent Stable Bond C18カラム(150×2.1mm、1.8ミクロン)に注入した。分析被験体をネガティブエレクトロスプレイによりイオン化し、タンデムMSモードで質量分析器を操作した。
【0174】
多くのエイコサノイドに関する略語を以下の表9にて提供する。
【0175】
(表9.エイコサノイド)
【0176】
【表9−1】

【0177】
【表9−2】

【0178】
【表9−3】

統計方法
定量的データ(血漿グラムあたりのピコモル)をNAFLDおよびNASHのマーカーに関して評価した。定量的データを分析用に変換しなかった。被験体の30%を超えて検出されない代謝物は統計分析には含めなかった。両側t検定を用いて群(NASH対正常、およびNAFLD対正常)を比較した。
【0179】
結果
表10は、NASHおよびNAFLDと有意に関連したエイコサノイド代謝物を示す。NAFLD群は、有意に高い13,14−ジヒドロ−l5−ケトプロスタグランジンA、11−デヒドロ−トロンボキサンBおよび12,13−ジヒドロキシオクタデセン酸を有する。19,20−ジヒドロキシドコサペンタエン酸は、t検定によると有意に減少したが、ウィルコクソン検定による有意性には到達しなかった。
【0180】
NASH群は、ウィルコクソン検定により評価されるように有意に高いプロスタグランジンE、15−ケト−プロスタグランジンF2□、およびロイコトリエンDを有したが、t検定による有意性には到達しなかった。5−HETE、8−HETE、9−HETE、11−HETE、12−HETEおよび15−HETEを含むHETE類は、NASHにおいて双方の検定で正常を超えて有意に増加した。11−HETEおよび15−HETEは直線的に反相関したが、対数尺度でいくらかの脂質クラスのDHAとさらに強く反相関した。
【0181】
(表10.NASHおよびNAFLDマーカー(t検定において1で有意、p値を丸括弧内に示す))
【0182】
【表10】

実施例6
マーカーの組み合わせに基づく分類
記載されたマーカー代謝物から直接的に、またはこれらのマーカーの単純な組み合わせからのいずれかでNASHの診断法を築くことができる。各診断適用は独特な性能特性を必要とするので、代謝物濃度を単純なアルゴリズムと組み合わせて、特定の望ましい検定に必要とされる感度および特異度を提供することができる。
【0183】
実施例4および5からの結果を用いてNAFLDおよび正常被験体からNASHを区別するための分類指標を開発した。代謝物対の直線的な組み合わせを、受信者動作特性曲線(ROC)を用いてNASH対NAFLDを分類するその能力に関して評価した。この実験において評価される性能特性には、ROC曲線下面積(ROC AUC)、検定の感度および特異度が含まれた。全体的な感度および特異度を提供した組み合わせ(組み合わせ1)、低特異度で高感度(組み合わせ2および3)および低感度で高特異度(組み合わせ4および5)の例を以下の表11に示す。
【0184】
代謝物の直線的な組み合わせは、この実施例のためのアルゴリズム方法として選択されたが、任意のアルゴリズム(比率等を含む)を用いて主張される代謝物からの検定変数を作成することができる。
【0185】
(表11.NAFLDおよび正常被験体からのNASHの分類における代謝物の直線的な組み合わせの性能)
【0186】
【表11】

望ましい検定性能は適用に依存する(例えば、被験体が検定に基づいて侵襲性の手順を行うことになっている場合、高度な特異度を確実にすることが最も有用であり得る)。アルゴリズムの個々の代謝物構成成分および分類のための閾値(臨界値)を選択することにより、検定の性能を調整することができる。アルゴリズムに含めるために選択される代謝物は、本明細書に記載されるエイコサノイドもしくは脂肪酸マーカーのいずれか、または以下のアシルカルニチン、ステロール、胆汁酸もしくはオキシステロールのいずれかでよい。カルニチン代謝物およびアシルカルニチン;L−カルニチン、g−ブチロベタイン;トリメチルリジン;アセチルカルニチン;プロピオニルカルニチン;ブチリルカルニチン;バレリルカルニチン;ヘキサノイルカルニチン;オクタノイルカルニチン;デカノイルカルニチン;ドデカノイルカルニチン;ミリストイルカルニチン;パルミトイルカルニチン;ステアロイルカルニチン;オレオイルカルニチン;リノレオイルカルニチン。ステロール、胆汁酸およびオキシステロール;コレステロール;7−デヒドロコレステロール;デスモステロール;ラノステロール;ラソステロール;コレスタノール;コプロスタノール;b−シトステロール;カンプエステロール;スチグマステロール;4−コレステン−7a−オール−3−オン;7a−ヒドロキシコレステロール;27−ヒドロキシコレステロール;25−ヒドロキシコレステロール;24S−ヒドロキシコレステロール;4b−ヒドロキシコレステロール;コール酸;ケノデオキシコール酸;デオキシコール酸;リトコール酸;グリココール酸;グリコケノデオキシコール酸;グリコデオキシコール酸;グリコリトコール酸;タウロコール酸;タウロケノデオキシコール酸;タウロデオキシコール酸;タウロリトコール酸;ウルソデオキシコール酸;グリコウルソデオキシコール酸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における肝障害を診断またはモニタリングする方法であって、
(A)該被験体の体液からの1つ以上の試料中の1つ以上の脂質代謝物の量を決定する工程、および
(B)該1つ以上の脂質代謝物の量を肝障害の存在と相関させる工程を含み、
ここで該脂質代謝物は脂肪酸および/またはエイコサノイドであり、ここで該肝障害は肝性機能不全、肝性脂肪症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、脂肪性肝炎または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、方法。
【請求項2】
前記1つ以上の脂質代謝物が、
【化31】

からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の脂質代謝物が1つ以上の脂肪酸を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の脂肪酸の量が、1つ以上の試料中の1つ以上の脂質クラスの脂質中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の脂質代謝物が1つ以上のエイコサノイドを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記肝障害が脂肪症、NAFLDまたはNASHである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の脂質代謝物の量を1つ以上の参照と比較することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記肝障害が脂肪症またはNAFLDであり、1つ以上の脂質代謝物が、
【化32】

からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
(a)前記脂質代謝物:
【化33】

が前記肝障害と正に関連し、
(b)前記脂質代謝物:
【化34】

が前記肝障害と負に関連する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記肝障害がNASHであり、前記1つ以上の脂質代謝物が、
【化35−1】

【化35−2】

からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
(a)前記脂質代謝物:
【化36】

が前記肝障害と正に関連し、
(b)前記脂質代謝物:
【化37】

が前記肝障害と負に関連する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
2つ以上の前記脂質代謝物の量が決定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上の脂質代謝物が、
(a)15−HETEおよび15−ケト−PGF2α
(b)TG18:1n7およびPC20:3n6、
(c)11−HETEおよびCE22.6n3、
(d)11−HETEおよびPCTL、および
(e)PC22:6n3およびPC18:3n3、
からなる群から選択される1対の脂質代謝物を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記被験体の処置に対する応答を決定するためにモニタリングの方法が用いられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
前記肝障害が肝炎、HIV感染、HBV感染、HCV感染、ウイルス誘起脂肪症、非ウイルス性感染性作用物質により誘起される脂肪症、薬物誘起脂肪症、肥満、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、糖尿病、インスリン抵抗性、代謝障害、アルコール性脂肪肝疾患、アルコール性脂肪性肝炎、先天性代謝異常、遺伝子変化、毒素誘起脂肪症、毒素誘起脂肪性肝炎、栄養障害、栄養吸収障害、セリアック病、リポジストロフィー、肥満外科手術および肝臓移植からなる群から選択される1つ以上の状態に関連する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
前記試料が血液、血漿、血清、単離されたリポタンパク質画分、唾液、尿、リンパ液および脳脊髄液からなる群から選択される、請求項1、2、8、9、10または11に記載の方法。
【請求項17】
前記試料が血液、血漿、血清または単離されたリポタンパク質画分からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記被験体がヒトである請求項1、2、8、9、10または11に記載の方法。
【請求項19】
被験体における肝障害を診断またはモニタリングする方法であって、該被験体の体液からの試料中の1つ以上の脂質クラスの脂質中の全脂肪酸含量に対する1つ以上の脂肪酸の相対量を決定する工程、および
該相対量を肝障害の存在と相関させる工程を含み、
ここで該肝障害は肝性機能不全、肝性脂肪症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、脂肪性肝炎または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、方法。
【請求項20】
1つ以上の脂肪酸が、
【化38】

からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記1つ以上の脂肪酸の相対量を参照と比較する工程をさらに含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
(a)
【化39】

の相対量が参照よりも多い、および/または
(b)
【化40】

の相対量が参照よりも少ない場合、肝性機能不全、肝性脂肪症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、脂肪性肝炎または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が示される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記被験体におけるNASHを診断する方法であって、請求項19に記載の方法の工程を含み、さらに被験体からの体液中のエイコサノイドのレベルを決定する工程を含み、ここで正常レベルよりも高いことがNASHを示す、方法。
【請求項24】
前記エイコサノイドがl5−HETE;PGB2;PGE2;PGF2α;15−ケト−PGF2α;5−HETE;8−HETE;9−HETE;11−HETE;12−HETE;12−HEPE;11,12−EpETrE;および8,9−DiHETrEからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
2つ以上の脂肪酸の相対量が決定される、請求項19または20に記載の方法。
【請求項26】
前記被験体の処置に対する応答を決定するためにモニタリングの方法が用いられる、請求項1または19に記載の方法。
【請求項27】
被験体の肝臓中のトリグリセリドのレベルを評価する方法であって、該被験体の体液からの試料中の脂質代謝物の量を決定する工程を含み、
ここで該脂質代謝物は脂質クラスに存在する脂肪酸であり、
ここで該脂質クラスは遊離脂肪酸、全脂肪酸、トリグリセリド、コレステロールエステル、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミンからなる群から選択される、方法。
【請求項28】
前記代謝物の量が試料中の1つ以上の脂質クラスの脂質中の全脂肪酸含量に対する脂肪酸の相対量である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記脂肪酸が、
【化41】

からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
1つ以上の脂肪酸の相対量を参照と比較する工程をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
(a)
【化42】

の相対量が参照よりも多い、および/または
(b)
【化43】

の相対量が参照よりも少ない場合、肝臓中のトリグリセリドの蓄積が示される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記被験体の体液からの試料中の第2の異なる脂質代謝物の相対量を決定する工程をさらに含み、ここで該第2の脂質代謝物が、
【化44】

からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記肝障害が肝炎、HIV感染、HBV感染、HCV感染、ウイルス誘起脂肪症、非ウイルス性感染性作用物質により誘起される脂肪症、薬物誘起脂肪症、肥満、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、糖尿病、インスリン抵抗性、代謝障害、アルコール性脂肪肝疾患、アルコール性脂肪性肝炎、先天性代謝異常、遺伝子変化、毒素誘起脂肪症、毒素誘起脂肪性肝炎、栄養障害、栄養吸収障害、セリアック病、リポジストロフィー、肥満外科手術および肝臓移植からなる群から選択される1つ以上の状態に関連する、請求項19または27に記載の方法。
【請求項34】
前記試料が血液、血漿、血清、単離されたリポタンパク質画分、唾液、尿、リンパ液および脳脊髄液からなる群から選択される、請求項19、20、22、27、28、29、30、31または32に記載の方法。
【請求項35】
前記試料が血液、血漿、血清または単離されたリポタンパク質画分からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記被験体がヒトである請求項19、20、22、27、28、29、30、31または32に記載の方法。
【請求項37】
前記被験体が肝臓移植片ドナー候補であるか、肥満外科手術のために評価されているか、肥満外科手術を行ったことがあるか、または体重減少に関してモニタリングされている、請求項1、19または27に記載の方法。
【請求項38】
請求項19、20、27、28または29に記載の方法で使用するためのキットであって、該キットが、
(a)脂肪酸に対する抗体および
(b)使用のための説明書、
を含む、キット。
【請求項39】
前記キットが、
(c)第2の脂肪酸に対する第2の抗体、
をさらに含む、請求項38に記載のキット。
【請求項40】
請求項1または2に記載の方法で使用するためのキットであって、該キットが、
(a)1つ以上の脂質代謝物に対する抗体および
(b)使用のための説明書、
を含む、キット。
【請求項41】
前記キットが2つ以上の脂質代謝物に対する抗体を含む、請求項40に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−500566(P2010−500566A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523847(P2009−523847)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/017726
【国際公開番号】WO2008/021192
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(506053674)テシス バイオサイエンス, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】