説明

非ポリマー持続性解離供給システム

【課題】非ポリマー材料を用いて体内の所定の位置にインプラントを形成するための方法及び組成物の提供。
【解決手段】非ポリマー材料を用いて体内の所定の位置にインプラントを形成するための方法及び組成物、及びそのようなインプラントの医療器具及び薬剤供給システムとしての使用に関する。その組成物は歯周疾患或いはその他の組織欠損部治療目的で動物に適用され、埋植用物品の適合性と性能を増進させ、生物学的活性剤の供給を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非ポリマー持続性解離供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー材料は長年にわたって縫合材、外科用クリップ、カテーテル、人工血管、及びインプラントのような医療器具の製造に用いられてきた。上記の材料はまた、シリコーンエラストマーが脂肪適合性染料の解離率の制御に役立つことが30年以上前に発見され(ジェイ・フォークマン(J.Folkman)他、J.Surg.Res.4:139-142(1964))てから、生物学的活性剤の制御解離にも用いられている。このことが、薬剤を制御解離させるためのシリコーンエラストマーの評価につながった。これらの成果が数多く製品化されたが、中でもレボノルジェストレル(levonorgestrel)の制御解離用皮下インプラントであるノルプラント(Norplant(登録商標))(J. Posti.,Sci.Technol.Pract.Pham.3(4):309-312(1987);米国特許No.4,341,728(ロバートソン/Robertson)及び4,292,965(ナッシュ/Nash,The Population Council.Inc.)も参照)、それからエストラジオールを供給して去勢牛の成長を促進する(シー(Hsieh)他、Drug Develop.& Ind.Pharm.13:2651−2666(1987))コンプドース(Compudose)(登録商標)インプラント(エリ・リリー・アンド・カンパニー(Eli Lilly and Company))が例として挙げられる。それ以外にも、ポリエチレン、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)及びエチレンビニルアセテートのコポリマー類等、非生分解性ポリマーが薬剤の供給に用いられてきた。
【0003】
さらに最近になって、生分解性ポリマー類がその生分解性ゆえに、薬剤供給器具に用いられるようになった。これらのポリマーの例としては、ラクチド、グリコリド、e-カプロラクトン、及びそのコポリマーをベースとしたものが挙げられる(ヨールズ(Yolles),米国特許No.3,887,699;ケント(Kent),米国特許No.4,675,189;ピット(pitt),米国特許No.4,148,871;シンドラー(Schindler),米国特許No.4,702,917)。ポリオルトエステル類(polyorthoesters)や重合無水物(polyanhydrides)も、薬剤解離用生腐蝕性基質として、また医療器具として用いられてきた(米国特許No.4,093,709及び4,138,344、チョイとヘラー(Choi and Heller);米国特許No.4,906,474、ドムとランジャー(Domb and Langer),M.I.T.)。
【0004】
上記のポリマー類は室温では固体であるため、体外では固体構造物に形成され、外科的手法によって体内に挿入される。ミクロ単位の粒子(microparticles)、ミクロ単位の球体(microsheres)、ミクロ単位のカプセル(microcapsules)、或いはナノ単位の粒子(nanoparticles)の形態にすれば、標準的な注入器と針を用いることで体内に注入できる。
【0005】
米国特許No.4,938,763(ダン(Dunn))では、生分解性ポリマーを生体適合性溶剤と化合させて人体に投与可能な組成物を形成する方法と組成物を開示しており、それによれば溶剤がポリマー組成物から離れて体液に拡散又は浸出する。ポリマーは水に溶けないため、水性体液と接触すると凝固或いは沈殿して固形インプラントを形成し、それが医療器具として用いられる。ポリマー組成物中に薬剤が含まれている場合、ポリマー凝固物としてインプラント基質に合体する。
【0006】
そのようなシステムの問題点は、ポリマーを十分に溶かすために高濃度の有機溶剤が必要になることである。ポリマー組成物はまた、長ポリマー鎖が動く際の抵抗があるために流動粘度が高い。その上、ポリマーの種類によっては生分解の期間がさほど短縮できない。なぜなら、ポリマーが可溶性になったり代謝する前にポリマー鎖を加水分解して短くする必要があるからである。それゆえ、材料は生分解性を有し、生体適合性溶剤に溶解して比較的粘性の無い組成物となり、かつ水にさらされると沈殿或いは凝固して固形インプラントを形成するものでなければならない。
【0007】
非ポリマー材料は固形薬剤供給基質として使用されることが記載されている。
例えば、丸薬に成形してステロイド投与に用いられるコレステロール(シムキン(Shimkin)他、内分泌学(Endocrinology)29:1020(1941))、ナルトレキソン(ミスラ(Misra)、『麻薬拮抗薬(Narcotic antagonists)』:ナルトレキソン薬化学及び持続性解離製剤(Naltrexone harmachemistry and sustained release preparations)、『リサーチ・モノグラフ(Research Monograph)』28,ウィレット(Willette)他、ナショナル・インスティチュート・オン・ドラッグ・アビューズ(National Institute on Drug Abuse(1981))、及び黄体形成ホルモン解離システム(ケント(Kent)、米国特許4,452,775)等である。燐脂質は別の非ポリマー材料であり、薬剤供給用リポゾームの製剤に利用されてきた。
【0008】
これらのシステムの問題点は、固形のコレステロール丸薬を埋植するために外科的切開或いは大型の套管針を必要とすることである。燐脂質とコレステロールから成るリポゾームは標準的な注入器と針を用いて注入可能だが、これらの材料は相当な準備を要し、安定性に乏しく、ある時間で多量の薬剤を小さな粒子内部に詰めて解離することは不可能である。その上、リポゾームは小さな粒子であるため、埋植した位置にとどまりにくい。また、合併症が起こった場合に小さなリポゾーム粒子を除去するのが困難であるため、治療を終了させなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明は、非ポリマー材料から成り、所定の位置に固形インプラントを埋植するために用いられる組成物の供給を目的とする。本発明の別の目的は、生分解性ポリマー製インプラントよりも短い期間で生分解する固形インプラントの供給である。また別の目的は、流動粘度が低く加圧器によって投与可能であり、かつ人体の所定の位置で生分解性インプラントとなつて医療器具及び/又は薬剤を制御しながら供給するシステムとして用いられる組成物を供給することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、動物の身体の所定の位置に固形基質を形成するための非ポリマー組成物、及びその組成物を医療器具又は持続性解離供給システム等として使用することに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
その組成物は生体適合性を有する非ポリマー材料及び、薬剤としての条件を満たす有機溶剤で構成されている。非ポリマー組成物は生分解性及び/又は生腐食性を有し、水性液又は体液にはほとんど溶解しない。有機溶剤はその非ポリマー剤の溶解度を高め、混和程度から分散可能な程度までの範囲で、水或いは他の水性媒体に溶解する。動物の埋植位置に配置されると、非ポリマー材料は最終的には固体に変化する。そのインプラントは細胞の成長や組織の再生を促進することによって、傷や組織の修復、神経の再生、軟組織や硬組織の再生等の組織欠損治療に適用できる。
【0012】
その組成物には生物学的活性剤(生物活性剤)、例えば抗炎剤、抗ウィルス剤、埋植位置の治療と感染防止用抗菌剤或いは抗かび剤、成長因子、ホルモン等が含まれる。その結果インプラントは、動物に生物活性剤を供給するシステムとなる。
【0013】
組成物には、任意の要素が含まれていてもよい。例えば、基質内部に孔を生じる分離孔形成剤、そして/又はインプラン基質の崩壊率及び/又はインプラント基質から生体内で生物活性剤の解離率を制御するための解離率調整剤等である。孔形成剤の例としては、サッカロース、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、セルロース系ポリマー等がある。解離率調整剤の例としては、クエン酸ジメチル、クエン酸トリエチル、ヘプタン酸エチル、グリセリン、ヘキサンジオール等が挙げられる。組成物にはまた、インプラント形成中に組成物から、及び/又は形成されたインプラントからの解離を制御するため、生物活性剤と共に制御解離成分が含まれていてもよい。そのような制御解離成分の例としては、ミクロ単位のカプセル、ミクロ単位の球体、リポゾーム、ナノ単位の粒子、成いはその他のミクロ構造物、或いは繊維、ビーズその他のマクロ構造物がある。或いは、薬品の低水溶解性塩、薬品とキャリア分子との錯体或いは共有結合抱合物等が挙げられる。
【0014】
所定の位置に固形インプラントを形成するために、組成物を注入器に入れて標準的な針を用いて動物の体内に注入することができる。注入方法としては、皮下注入、筋肉注入、腹腔内注入、病巣内注入等が挙げられる。また、組成物を組織の表面にブラシで塗る、吹き付ける等して投与してもよい。また、組成物を加圧エアロゾルディスペンサー、ポンプ式ディスペンサー或いはその他の加圧器によって投与してもよい。
【0015】
組成物は、間隙、組織の欠損、外科的切開部分、火傷の領域や表面の傷をカバーする目的で皮膚表面の埋植位置に用いられる。組成物は、水様からやや粘り気を有する程度、パテ状或いはペースト状までの範囲で、粘ちゅう度と共に流動性を有する。非ポリマー材料は、有機溶剤が付近の組織液に散逸することによって最終的に凝固してミクロの孔を有する固形の基質になる。固形のインプラントと異なり、非ポリマー組成物は固化時に欠損位置の内部で操作され形成され得る。都合のよいことに、組成物の成形性のおかげで、硬化する際に埋植位置の凹凸部分、間隙、亀裂、穴等になじみ易い。そうしてできた固形基質は生分解性、生体吸収性及び/又は生腐蝕性を有し、周囲の組織液に徐々に吸収されて酵素の作用、化学的及び/又は細胞による加水分解作用を通じて壊変する。
【0016】
都合のよいことに、本発明の非ポリマー組成物の流動粘性はポリマー組成物より低い。この特性ゆえに、組成物を形成する際に固形内容の比率を高く、溶剤の量を減らせるので液状となり注入器と針を介する注入等の加圧器を用いて組織に投与できる。非ポリマー材料は単細胞で構成されており、身体で溶解され代謝されるまでに必要な加水分解作用が一度ですむため、高い分解率が要求される場合にも用いられる。非ポリマー組成物は加水分解以外のメカニズムによって酵素分解されてもよい。よって、これらの材料から成る基質は表面から分解し生体腐食性インプラントになる。
【0017】
発明の詳細
本発明は生分解性及び水凝固性を有する非ポリマー材料、及び水性媒体に混和・分散する生体適合性・無毒の有機溶剤から成る生分解性組成物を供給する。動物の体内に埋植するとき、有機溶剤は組成物から周囲の組織液に散逸、分散或いは浸出し、非ポリマー材料は徐々に凝固或いは沈殿して固形のミクロ孔性基質になる。こうしてできたインプラントは様々な用途に用いられる。例えば、細胞の成長と組織の再生を増進するバリアシステム、薬剤や薬物のような生体活性剤の供給その他の用途である。組成物やそれから構成される固形インプラントは生体適合性を有し、それゆえ非ポリマー材料、溶剤、固形基質のいずれも埋植位置において組織を刺激したり、壊死の原因となることはほとんど無い。
【0018】
ここで用いられている「埋植位置」(implant site)という語は、筋肉や脂肪のような軟組織或いは骨のような硬組織の内部又は表面で、非ポリマー組成物が適用され得る位置を含む。埋植位置の例としては、組織再生位置のような組織欠損、歯周ポケットのような空隙、外科的切開部又はその他のポケットや空洞部、口腔、膣、直腸、鼻の穴、眼の盲嚢(cul-de-sac of the eye)等の自然の空洞部、それ以外にも組成物をその表面或いは内部に配置して固形インプラントにできる部分、例えば切傷、擦傷、火傷部分等の皮膚表面欠損が挙げられる。「生分解性」という語句は、非ポリマー材料及び/又はインプラントの基質が酵素の作用、単純な或いは酵素接触加水分解作用及び/又は他の同様なメカニズムによって人体内で経時的に分解することを指す。「生腐蝕性」とは、インプラント基質が、周囲の組織液、細胞作用等に見られる物質と接触して少なくとも部分的に、経時的に腐蝕又は分解することである。「生体吸収性」とは、非ポリマー基質が崩壊して細胞、組織等によって人体内に吸収されることを意味する。
【0019】
[非ポリマー材料]
本発明の組成物で有用な非ポリマー材料は、生体適合性を有し、水や体液にはほとんど溶けず、動物体内で生分解性及び/又は生腐食性を有する。非ポリマー材料は、水溶性有機溶剤に少なくとも部分的に溶解する。その非ポリマー材料はまた、溶剤成分が組成物から散逸、分散或いは浸出して非ポリマー材料が水性媒体に接触すると、凝固或いは固化して固形インプラント基質を形成することも可能である。その固形基質は、ゼラチン状から、可塑性が強く成型可能なまで、硬く密な固体までの領域の安定した堅さを有する。
【0020】
組成物中で用いられる非ポリマー材料は、一般的に前記の特徴をすべて持っている。有用な非ポリマー材料の例としては以下のようなものがある。コレステロール、スチグマステロール、β−シトステロール及びエストラジオール等のステロール類、コレステリルステアレートのようなコレステリルエステル類、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸及びリグノセリン酸といったC12-C24脂肪酸類、モノオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノドコサン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、グリセリルモノデセノエート(glyceryl monodicenoate)、ジパルミチン酸グリセリル、ジドコサン酸グリセリル、ジミリスチン酸グリセリル、グリセリルジデセノエート(glyceryl didecenoate)、トリドコサン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、グリセリルトリデセノエート(glyceryl tridicenoate)、トリステアリン酸グリセリル、及びその混合物を含むC18−C36のモノ−、ジ−、及びトリアシルグリセリド類(triacylglycerides)、ジステアリン酸サッカロース及びパルミチン酸サッカロースのようなサッカロース脂肪酸エステル類、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、及びトリステアリン酸ソルビタンのようなソルビタン脂肪酸エステル類、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール及びセトステアリルアルコール(cetostearyl alcohol)のようなC16-C18脂肪アルコール類、パルミチン酸セチル、パルミチン酸セテアリル(cetearyl palmitate)のような脂肪アルコール類及び脂肪酸類のエステル類、ステアリン酸無水物のような脂肪酸の無水物類、ホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、及びそのリソ誘導体類(lysoderivatives)のようなホスホリピド類、スフィンゴシン及びその誘導体類、ステアリル、パルミトイル、及びトリコサニルスピンゴメリン(tricosanyl spingomyelins)のようなスピンゴメリン類(tricosanylspingomyelins)、ステアリル及びパルミトイルセラミド類のようなセラミド類、グリコスフィンゴリピド類、ラノリン及びラノリンアルコール類、及びそれらの化合物や混合物である。望ましい非ポリマー材料の例としては、コレステロール、モノステアリン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセロール、ステアリン酸、ステアリン酸無水物、モノオレイン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル、及びアセチル化モノグリセリド類が挙げられる。
【0021】
非ポリマー材料は、適合性を有する適切な有機溶剤と化合してある組成物を形成し、その組成物は、水様からやや粘性を持つものまで、望ましい粘ちゅう度を有し、塗り広げられるパテやペースト状にまでなる。組成物の粘ちゅう度は、溶剤中の非ポリマー材料の溶解度や生成物中の非ポリマー材料の濃度、生成物中の生物学的活性剤の濃度、及び/又は添加剤の存在等の要因に従って変動する。特定の溶剤への非ポリマー材料の溶解度は、結晶度、親水性、イオン特性及び脂溶性といった要因によって変動する。従って、イオン特性や溶媒中の非ポリマー材料濃度は、望ましい溶解度を得るため調節可能である。非常に望ましい非ポリマー材料は、結晶度が低く、無極性で、より疎水性である。
【0022】
[有機溶剤]
適切な有機溶剤は、生体適合性を有し、薬剤としての条件を満たし、かつ少なくとも非ポリマー材料を一部溶解するものである。そのような有機溶剤は、水に対して混和程度から分散可能なまでの範囲で溶解性を持つ。その溶剤は、所定位置の組成物から、血清、リンパ液、脳スパイラル液(cerebral spiral fluid)(CSF)、唾液等としてインプラントから水性組織液中に拡散、分散或いは浸出することができる。その溶剤のヒルデブランド(HLD)溶解率が約9〜13(cal/cm3)1/2の範囲であることが望ましい。溶剤の極性の程度は、水中での溶解度が5%以上となる程度の有効性を持つのが望ましい。
【0023】
有用な溶剤は例えば以下のようなものである。N−メチル−2−ピロリドン(NMP)及び2−ピロリドン(2−ピロル)のような置換ヘテロ環状化合物、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、及びジメチルカーボネートのような炭酸のエステル類及びアルキルアルコール類、酢酸、乳酸、ヘプタン酸のような脂肪酸類、2−エチオキシエチルアセテート(2-ethyoxyethyl acetate)、酢酸エチル、酢酸メチル、乳酸エチル、エチルブチレート、マロン酸ジエチル、ジエチルグルトネート(diethyl glutonate)、クエン酸トリブチル、ジエチルサクシネート(diethyl succinate)、トリブチリン、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジメチル、ジメチルサクシネート(dimethyl succinate)、シュウ酸ジメチル、クエン酸ジメチル、クエン酸トリエチル、アセチルトリブチルシトレート(acetyl tributyl citrate)、グリセリルトリアセテート(glyceryl triacetate)のようなモノ−、ジ−、及びトリカルボン酸類のアルキルエステル類、アセトン及びメチルエチルケトンのようなアルキルケトン類、2−エトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテル、グリコフロル(glycofurol)及びグリセロールホルマール(glycerol formal)のようなエーテルアルコール類、エタノールやプロパノールのようなアルコール類、ポリピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、グリセリン(グリセロール)、1,3−ブチレングリコール及びイソプロピリデングリコール(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソロン(dioxolone)−4−メタノール;ソルケタル(Solketal)のようなポリヒドロキシアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなジアルキルアミド類、ジメチルスルフォキシド(DMSO)及びジメチルスルホン、テトラヒドロフラン、それから、e−カプロラクトン及びブチロラクトンのようなラクトン類、カプロラクタムのような環状アルキルアミド類(cyclic alkyl amides)、N,Nジメチル−m−トルアミド及び1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−oneのような芳香アミド類、その他、及びそれらの混合物及び化合物である。望ましい溶剤には、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、乳酸エチル、プロピレンカーボネート、グリコフロル、グリセロールホルマール、及びイソプロピリデングリコールが含まれる。
【0024】
混合溶剤は非ポリマー材料の溶解度を変化させるので、水性溶媒中での凝固或いは沈殿率が低い非ポリマー材料の凝固率を上げるために用いることができる。例えば、非ポリマー材料を良い溶剤(すなわち、溶剤が非ポリマー材料を高い程度まで溶解することができる)とそれより劣る溶剤(すなわち、溶剤に非ポリマー材料がほとんど溶けない)の混合物と化合させてもよい。凝固促進溶剤システムを有効量の良い溶剤とそれより劣る溶剤又は非溶剤で構成すれば、非ポリマー材料がある組織に適用されるまで組成物中に溶解し、その後溶剤の沈殿或いは拡散に伴って組成物中から付近の組織液に凝固或いは沈殿するので望ましい。
【0025】
組成物中の非ポリマー材料の濃度は、埋植位置に投与された時に溶剤が速やかにそして効果的に沈殿し、非ポリマー材料が凝固する程度が普通である。この濃度は溶剤1mlあたり非ポリマー材料が約0.01グラムから約19グラムの範囲内であり、望ましくは1mlあたり0.1〜6グラム程度である。
【0026】
水或いは体液のような水性溶媒に接触すると、溶剤は組成物からその水性溶媒に拡散若しくは浸出し、非ポリマー材料は凝固して固形基質を形成する。非ポリマー材料が所定の位置で、埋植後およそ1〜5日の間に固化して固形基質になるのが望ましく、望ましくは約1〜3日以内、望ましくは約2時間以内である。
【0027】
非ポリマー材料の組成物は、少量の生分解性、生体吸収性熱可塑性ポリマーと化合させてもよい。例えば、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリグリコライド(polyglycolide)、或いはそのコポリマーである。そうすれば、より粘性が高く、より密で(coherent)、固化中に配置されたところに保持される固形インプラント又は組成物を供給できる。そのような熱可塑性ポリマーは、ダン(Dunn)他に対する米国特許No.B1 4,938,763(1990年7月3日発行、1995年7月4日特許証発行)に開示されている。その開示内容を参考までにここに引用する。
【0028】
[孔形成及び孔形成剤]
組成物から形成された固形の非ポリマー基質は、ミクロ孔構造を持つ。孔は幾つかの手段によって、インプラントの固形基質内部に形成される。固化・凝固中の非ポリマー基質から溶剤を付近の組織液中に散逸、分散或いは拡散させると、基質中に孔溝(pore channels)を含む孔を生じることがある。固形インプラントの孔のサイズは、およそ1〜500ミクロンの範囲で、固形基質の多孔度は約5〜95%である。
【0029】
溶剤が凝固中の非ポリマー組成物から移動する際の作用によって、多孔質の内側コア部と比較的孔の少ない外側ミクロ孔スキンの2層孔構造を有する固形基質ができる。固形インプラントの内側のコア部がほぼ均一でスキンがコアに比べ孔が少ないのが望ましい。インプラント外側のスキン部の孔の直径は内側のコア部の孔に比べて実質的に小さいのが望ましい。スキン層の孔のサイズが直径にして約0.001ミクロン〜約50ミクロンであることが望ましい。
【0030】
或いは、孔形成剤を組成物に加えてインプラント基質にさらに孔を設けてもよい。孔形成剤は、水や体液に実質的に可溶性で、凝固中の非ポリマー材料及び/又はインプラントの固形基質から埋植位置周辺の体液に散逸するものであれば、有機或いは無機薬剤としての条件を満たすどのような物質でもよい。孔形成剤を加えて形成された多孔性基質は、ほぼ同サイズの孔が全面的に設けられている多孔性構造となる。
【0031】
孔形成剤が有機溶剤に溶けず非ポリマー材料との均一な混合物を形成するのが望ましい。その孔形成剤は、水に混和しない物質であり、速やかに分解して水溶解性物質になるものであってもよい。固形基質が形成されるまでにその孔形成剤が混合物中の非ポリマー材料及び有機溶剤と化合するのが望ましい。組成物中で使用可能な適切な孔形成剤は、例えば、サッカロースやデキストロースといった糖類、塩化ナトリウムや炭酸ナトリウムのような塩類、ヒドロキシルプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコールやポリビニルピロリドンといったポリマー類等が挙げられる。塩や糖等、孔サイズが一定している固形結晶が望ましい。
【0032】
組成物が埋植位置に投与される際、溶剤及び/又は孔形成剤は周囲の組織液に分散、散逸或いは溶解する。このため、凝固化中の基質内部でミクロ孔の溝が形成される。或いは、その孔形成剤を固形基質から周囲の組織液に溶剤より遅い速度で散逸させるか、基質の生分解や生腐蝕によって経時的に基質から解離させてもよい。孔形成剤が埋植から短い時間で凝固中のインプラント基質から散逸するのが望ましい。そうすれば、多孔性の基質が形成され、そのインプラントの特定の目的を達する上で役立つ多孔性構造となるからである。特定の目的とは、例えば、組織再生位置用バリアシステム、持効性薬剤・薬物用基質等である。
【0033】
固形インプラント基質の多孔度は、組成物中の溶剤及び/又は孔形成剤といった水溶性又は分散性要素の濃度によって変えられる。例えば、高濃度の水溶性要素が組成物中に存在すれば、かなり多孔性の基質となる。組成物中の非ポリマー材料に対する孔形成剤の濃度は、基質内の孔形成の程度、すなわち多孔性の程度を変える目的で変更してもよい。一般的な配合では、組成物中に非ポリマー材料1グラムあたり0.01〜1グラムの孔形成剤が含まれる。
【0034】
固形インプラントの基質に形成される孔のサイズ或いは直径はインプラント基質内部の孔形成剤のサイズ及び/又は分布によって調整することができる。例えば、非ポリマー材料に比較的溶解しにくい孔形成剤であれば粒子サイズに従って組成物中に選択的に添加してもよく、そうすれば孔形成剤のサイズに相当する直径を持つ孔が生じる。非ポリマー混合物に溶ける孔形成剤を用いれば、混合物及び凝固中の基質、それに固形基質内の孔形成剤の分布及び/又は凝集パターンによって、孔サイズと孔の程度を変化させることができる。
【0035】
インプラントが誘導性組織再生促進を目的として使用されている場合、基質内の孔の直径は、上皮細胞の成長を阻止しインプラントの基質内への結合組織細胞の成長を増進するのに有効であることが望ましい。基質の孔のサイズや多孔性の程度が、養分及びその他の成長因子のような成長促進物質の、既に基質内部に成長している細胞への拡散を助長するものであれば尚望ましい。基質の多孔性は、インプラントが使用中に故障・破損すること無く希望の時間内にほぼ完璧な構造を維持し続けることが可能であることが望ましい。
【0036】
骨細胞の再成長及び組織再生に有効なインプラントとするために、インプラントの孔の直径は約3〜500ミクロンであることが望ましく、より望ましくは約25〜200ミクロン、さらに望ましくは約75〜150ミクロンである。基質の有孔率が約5〜95%、さらにいえば25〜85%であれば望ましい。そうすれば細胞と組織の基質内部への成長が最大になり、完璧な構造となるからである。
【0037】
固形非ポリマー基質内部の孔の直径と分布は、例えば、その基質の断面を調べる等の走査電子顕微鏡検査によって計測することができる。非ポリマー基質の有孔率は、現在の技術で周知の適切な方法、例えば、水銀圧入ポロシメトリー、比重や密度の比較、走査電子顕微鏡写真からの計算等によって計測することができる。さらに、有孔率は組成物に含まれる水溶性材料の割合若しくはパーセンテージに従って算出してもよい。例えば、ある組成物に約30%の非ポリマー材料と約70%の溶剤及び/又はその他の水溶性成分が含まれていれば、有孔率が70%のポリマー基質を有するインプラントが製造される。
【0038】
[生物学的活性剤]
或いはその組成物が、薬剤、薬物その他の生物学的活性剤を埋植位置から近辺或いは遠方の組織に持続的・連続的に供給できるようなシステムを提供できるものであってもよい。生物学的活性剤は、動物の体内で局所或いは全身に生物学的、生理学的、或いは治療上の効果をもたらすことができる。例えば、活性剤の作用によって、感染や炎症を制御し、骨の成長や組織再生を増進し、腫瘍の成長を制御し、骨の成長を増進する等の機能がもたらされる。
【0039】
生物学的活性剤は、非ポリマー組成物に溶解或いは分散して均質な混合物を形成し、埋植の際にインプラント基質に合体するものが望ましい。固形基質が経時的に分解すると、生物学的活性剤は基質から近辺の組織液、及び関連のある体組織や器官に、埋植位置から近くても遠くても、望ましい割合を制御しながら解離される。基質からの生物学的活性剤の解離は、水性媒体中への生物学的活性剤の溶解度、基質内部での薬品の分布、サイズ、形状、多孔度、それに固形基質の溶解度と生分解性等によつて変化させてもよい。
【0040】
非ポリマー組成物と固形基質には、動物に生物学的、生理学的、薬理学的、及び/又は治療上望ましいレベルの効果をもたらす上で望ましい量の生物学的活性剤が含まれている。生物学的活性剤は、動物体内での生物学的或いは生理学的な活動を刺激したりあるいは抑制したりする。組成物中にどれほどの生物活性剤を含めてよいかについては、一般には決定的な上限は無い。唯一の限度は効果的に適用するための物理的限度である。例えば、生物活性剤の濃度が高すぎないようにすれば、成分の持つ粘性によって望ましい方法で埋植位置までの供給が抑制される。組成物に合体される生物活性剤の量の下限は、生物活性剤の作用と処置のために望ましい期間次第である。生物活性剤は非ポリマー材料の拡散、溶解及び/又は生分解によって生体内の固形基質から徐々に解離される。
【0041】
有用な生物学的活性剤の例には、動物の全身的感染或いは欠損位置の局所的感染を防止することのできる物質が含まれる。例を挙げるならば、ヒドロコルチゾンやプレドニソンのような抗炎剤、ペニシリン、セファロスポリン、バシトラシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ゲンタマイシン、キノリン、ネオマイシン、クリンダマイシン、カナマイシン、メトロニダゾール等の抗菌剤、キナクリン、クロロキン、ビダラビン等の抗寄生虫剤、ナイスタチン等の抗黴剤、アシクロビア、リバビリン、インターフェロン等の抗ウイルス剤、サリチル酸、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、フルルビプロフェン、モルヒネ等の鎮痛剤、コカイン、リドカイン、ブピバカイン、ベンゾカイン等の局部麻酔薬、肝炎、インフルエンザ、麻疹、風疹、破傷風、ポリオ、狂犬病等に対する抗体を刺激する免疫原類(ワクチン類)、酢酸ロイプロリド(leuprolide acetate)(LH-RH作働薬)、ナファレリン、ガニレリックス(ganirelix)等のペプチド類等である。
【0042】
さらに、細胞や組織の成長及び生存を促進したり細胞の機能を増大させることができる物質やその代謝性前駆体(metabolic precursor)が用いられる。例を挙げると、ガングリオシード、神経成長因子(nerve growth factor)等の神経成長促進物質、フィブロネクチン(FN)、ヒト成長ホルモン(HGH)、コロニー刺激因子、骨形態形成タンパク質、血小板由来増殖因子(PDGF)、インシュリン由来増殖因子(IGF-I、IGF-II)、形質転換成長因子−アルファ(TGF−α)、形質転換成長因子−ベータ(TGF−β)、上皮増殖因子(EGF)、繊維芽細胞生長因子(FGF)、インターロイキン−1(IL-1)等の硬組織或いは軟組織成長促進剤、ボーンチップ、脱塩凍結乾燥骨材料等の骨誘導剤(osteoinductive agent)、及びメトトレキサート、5−フルオロウラシル、アドリアマイシン、ビンブラスチン、シスプラチン、毒素や腫瘍壊死因子に対し凝固するガン特異性抗体等の抗ガン剤が挙げられる。
【0043】
他に用いられる物質を以下に列記する。例えば、プロゲステロン、テストステロン、それに濾胞刺激ホルモン(FSH)(産児制限、受胎率増進)、インシュリン、ソマトトロピン等のホルモン、ジフェンヒドラミン、クロルフェネシン等の抗ヒスタミン剤、ジギタリス、ニトログリセリン、パパベリン、ストレプトキナーゼ等の心臓血管作用薬、塩酸シメチジン、ヨウ化イソプロパミド等の潰瘍治療薬、硫酸メタプロテノール、アミノフィリン等の気管支拡張剤、テオフィリン、ナイアシン、ミノキシジル等の血管拡張剤、トランキライザー、B-アドレナリン遮断薬、ドーパミン等の中枢神経性剤、リスペリドン(risperidone)、オランザピン(olanzapine)等の抗精神病薬、ナルトレキソン、ナロキソン、ブプレノルフィン等の麻薬拮抗薬及びその他の物質が挙げられる。
本発明で利用できるその他の生物学的活性剤の例については、米国特許No.5,324,519に記載されている。その開示内容を参考までにここに引用する。
【0044】
[基質崩壊の制御]
固形非ポリマー基質は動物の埋植位置内部で生分解、生腐蝕及び/又は生体吸収可能である。一般に、インプラント基質は約2週間〜約12ヶ月の期間、望ましくは2〜12週間、望ましくは14〜60日で崩壊する。インプラントの崩壊率は、非ポリマー材料のタイプや量それに親水性の変更、孔形成剤の添加、及び/又は非ポリマー材料の構成要素の濃度を変更することによって制御できる。
【0045】
例えば、非ポリマー材料の量や選択によって、固形基質が埋植位置に維持されている時間の長さを数日から数週間、数ヶ月まで変更することができる。細胞の成長や組織の再生を増進する目的でインプラントを利用する時、固形基質が壊変する割合が、基質が細胞の成長によって近辺の細胞或いは組織から移動できる程度である、約2〜8週間が望ましい。
【0046】
[生物活性剤の解離率の調整]
様々な解離率制御法によって、固化基質からの生物活性剤の解離率を、比較的速いものから比較的遅いものまで、または遅くからより速くまで、広範囲に設定できる。そのような制御法には、組成物中の非ポリマー材料と生物活性剤の濃度を調節する、解離率調整剤の使用、及び/又は使用する非ポリマー材料の変更若しくは孔形成剤の添加による固形基質の崩壊の調整等の方法がある。
【0047】
固形基質からの生物活性剤の解離率は、組成物中の要素の濃度を変更すれば調節可能である。例えば、非ポリマー材料の濃度が低めの組成物で構成される基質からは、生物活性剤がより解離され易くなる。
【0048】
組成物中に非ポリマー剤用及び有機溶媒と一緒に解離率調整剤を入れて、固形基質からの生物活性剤の解離率を希望通りに変え、生物活性剤を制御しながら持続的に解離させることができる。そのような解離率調整剤は水に混和するものから分散するものまで、或いは水に不溶性の有機物であってもよい。その解離調整剤は、組成物中の非ポリマー材料及び有機溶剤に適合し、なおかつ望ましくは、薬剤としての条件を満たす。解離率調整剤を添加する場合、組成物中に調整剤が約0.5〜15%、さらにいえば約5〜10%含まれていることが望ましい。
【0049】
解離率調整剤はエポキシ化大豆油或いはその他のエポキシ化野菜油のような可塑化合物であってもよい。解離調整剤は、組成物中に非ポリマー材料を溶解させるのに用いられる前記有機溶剤であってもよいが、その際に使用されている第1の有機溶剤とは異なる。例えば、非ポリマー材料と生物活性剤をN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、微量ではあるが有効量の別の有機溶剤、例えばアジピン酸ジメチルをその組成物に添加してその生物活性剤が固形基質から解離される率を調整することもできる。望ましい有機溶剤解離調整剤は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ヘプタン酸エチル、アジピン酸ジメチル、グリセリルトリアセテート(glyceryl triacetate)、フタル酸ジメチル等である。解離率調整剤は単独でも、組み合わせて使用してもよい。解離調整剤として適切な有機溶剤の組み合わせとしては例えば、グリセリン/プロピレングリコール、ソルビトール/グリセリン(glycerine)等がある。
【0050】
解離率調整剤を使用すると、生物活性剤の解離が減少或いは増加する。例えば、ヘプタン酸エチルのような疎水性化合物を添加すると生物活性剤が固形基質から解離されるスピードを遅くすることができ、一方ポリエチレングリコールのような親水性物質だと、生物活性剤の解離を増加させることができる。
【0051】
[制御解離成分]
その組成物には、所定位置のインプラント及び/又は形成後のインプラントから凝固した時に、組成物からの生物活性剤の解離を制御する構造又は成分が含まれていてもよい。制御済みの解離組成物は、活性剤を持続的に解離し易くしまた活性剤が凝固中の成分から初期飛散(initial burst)するのを制御し、かつ、より高濃度の活性剤をインプラントに安全に添加する(introduce)のを助ける。また、活性剤のパーセンテージがさらに高いと、インプラント中に残留して持続性の解離が可能になり、初期飛散の間にその影響で消失することがないので、インプラントの効率を向上させることもできる。
【0052】
制御調整成分については一つ或いは複数のモードを使用できる。制御解離成分は、例えば、サイズにして約10nmから500ミクロン、望ましくは約150ミクロン未満のミクロ構造で、例を挙げるならば、ミクロ単位のカプセル、リポ球体(liposphere)やミクロ単位の球体のようなミクロ単位の粒子、ナノ単位の粒子、リポゾーム、ミセル、シクロデキストリンのようなかご状化合物等である。或いは、サイズが500ミクロンより大きいマクロ構造でもよく、例を挙げるならば繊維、フィルム、ロッド、ディスク、シリンダー、ビーズ等でありその中には活性剤を薄膜(membrane)に入れたリザーバシステム(reservoir system)、又は活性剤を基質全体に分布させた一体式(monolithic)システムが含まれる。及び/又は、活性剤の低水溶解性塩(40℃、4時間で、溶解度は25gm/l以下)であってもよく、その塩には対活性剤イオンとしてカルボン酸アニオンが含まれ、そのようなカルボン酸アニオンの例として、パモイックアシッド(pamoic acid)、タンニン酸若しくはステアリン酸等のイオン形状(ionic form)が挙げられる。
【0053】
制御解離成分は、活性剤の錯体や共有結合抱合体のような分子制御解離システムであってもよく、その活性剤はキャリヤ分子と結合(associate)して活性剤の水溶性や輸送能(transport properties)を変える(alter)。キャリヤ分子としては以下のものが挙げられる。ポリグリコライド(polyglycolide)、ポリ(DL-ラクチド)(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)等の水に不溶性のポリマー及びコポリマーとターポリマー及びそれらの化合物及び混合物、或いは、ポリ(リンゴ酸)、ポリエチレングリコール、ポリ−L−アスパラギン酸、ポリ(グルタミン酸)、ポリリシン、デキストラン及びN−(2−ヒドロキシプロピル)−メタクリルアミド(HPMA)のような水溶性ポリマー、若しくはステアリン酸のような小さい有機分子等である。内部でキャリヤ分子が活性剤と有効結合(operatively associated)している錯体は、水中で崩壊するが、活性剤がインプラントから解離するのを遅らせる。活性剤とキャリヤの錯体に、亜鉛、マグネシウム、カルシウム等の金属陽イオンが選択的に含まれていてもよい。
【0054】
制御解離成分は、所定の位置で固化する際、インプラント基質内に埋め込まれるよう、組成物中に分散させてもよい。インプラントに制御解離成分が含まれていると、活性剤が少なくとも二通りのモードで制御解離される。一つのモードは、制御解離成分からの活性剤の解離率に基づいており、もう一つは活性剤が固形インプラントから生分解、生腐蝕、拡散及び/又は浸出によって解離される率に基づいている。制御解離成分について詳細は、米国特許No.08/225,140に記載されており、その開示内容をここに参考までに引用する。
【0055】
[非ポリマー組成物の使用]
非ポリマー組成物は、歯周ポケットのような空隙のある組織、皮膚表面の傷、外科的切開部、骨の損傷等、動物のあらゆる組識欠損の治療に用いることができる。埋植位置の表面若しくは内部に供給されると、組成物は徐々に凝固若しくは沈殿して約1〜5日、望ましくは約1〜3日、望ましくは約2時間以内で固形のミクロ構造基質を形成する。
【0056】
例えば、その組成物を腕や脚の骨折等の骨の組織の欠損、歯の欠損等に適用できる。その場合、骨の組織を付近の軟組織から外科的に分離して欠損部を露出した後にその組成物を欠損部に適用すると、そこで組成物が硬化して所定の位置で固形インプラントになるので望ましい。
【0057】
固形基質は、表層を成してその上で細胞が成長できるようにすることで、誘導組織再生用バリアシステムとしての機能も果たすことができる。骨組織のような硬組織の再生を増進するために、固形インプラント基質によって新しい細胞の成長を支持するのが望ましい。その新たな細胞は、体液によって徐々に吸収・腐蝕されてきた時に基質にとって代わる。
【0058】
その組成物は、注入、噴霧、吹きつけ、ブラッシング、塗布、被覆加工等によって組織表面に供給することができる。供給は、カニューレ、カテーテル、注入器、加圧器、ポンプ、ブラシ等を介してなされ、注入器には必要に応じて18〜25ゲージの針を付けてもよくまた針がなくてもかまわない。その組成物は、フィルムの形状で組織表面に適用することもできる。その結果、例えば組織表面にフィルム包帯剤を施し、及び/又はある組織を別の組織又はインプラントに接着することが可能になる。
【0059】
非ポリマー組成物を歯周病治療に用いる場合、その歯根に覆い被さっている歯肉組織を切除してエンベロープ若しくはポケットを形成し、組成物を露出した歯根に対してポケット内部に供給すると、組成物がそこで硬化して固形基質になる。また、歯肉組織を介して切開を加えることによって歯根を露出させ、材料を切開部を通じてブラッシング、吹きつけ等の手段で歯根表面に適用することにより、組成物を歯の欠損部に供給することも可能である。
【0060】
皮膚或いはその他組織の傷の治療に用いる時は、組成物の表面に水性媒体を用いて非ポリマー材料の凝固を増進させることができる。
【0061】
凝固中の組成物は展性があり埋植位置で巧みに操作すれば組織欠損の輪郭に確実に合致させられるという利点がある。例えば、歯周欠損部を覆う歯肉組織が固化しつつある基質の表面で刺激され(urged)、組織の表面に圧力をかけることで固まりつつある基質が確実に歯根や骨の形状及び輪郭に合致するようになる。固形基質は、ゼラチン状から成形・固定可能な固さ、さらには従来のボーンセメントに似た剛性構造までの範囲の一貫した硬度を有する。
【0062】
固形インプラントは、動物体以外の非ポリマー材料から形成して固形基質として埋植位置に挿入することもできる。例えば、これまで水その他水性媒体で被覆されていたガラスや磁器等の支持表面に用いてその組成物表面にさらに水を加える。固形基質は、溶剤が周辺の水性媒体に散逸する際形成される。インプラントはその後、動物の埋植位置に配置してもよい。
【0063】
その組成物は、縫合材、鉤、プロテーゼ、カテーテル、金属ネジ、骨板、ピン、ガーゼ等の包帯といった、埋植用器具に適用し、埋植位置での埋植用器具と身体組織との適合性、性能及び/又は機能を増進させたりすることも可能である。非ポリマーシステムは、埋植用器具表面に被覆加工されたり、身体の組織に適用した後埋植用器具をその上に埋植してもよく、或いはその埋植用器具を埋植して非ポリマー組成物で被覆加工することもできる。例えば、組成物を埋植用器具の凸凹表面に用いてその表面を滑らかにすることによって凸凹の端部が付近の組織に接触することから生じる摩擦を減らし、器具の適合性を増進させることができる。非ポリマーシステムは、埋植用器具の性能や機能を増進させるために用いることもできる。例えば、組成物をガーゼ包帯に適用すれば包帯部分の組織との適合性・接着性を向上させることができる。切開部分から体内に挿入するカテーテルや人工肛門のような器具の周囲に組成物を用いると、そのカテーテルや人工肛門をその場所に固定し、及び/又は器具と組織間の空隙を充填してしっかりと密封することによって細菌感染や体液の損失を減少させることができる。非ポリマー組成物と埋植用器具を組み合わせて使用することによって、組織をその場所に保持し及び/又はまとめ、その埋植用器具を組織に接着及び/又は固定し、傷口や空隙を充填する及び/又は密封するといったこともできる。
【0064】
非ポリマー組成物の製剤及びその組成物を生体に投与することは、最終的には医師や場合によっては歯科医等、臨床現場の専門家(patient's attending health care professional)の判断やプロトコルに委ねられる。要素をどのように製剤するかという選択は、現場の医療専門家によってなされるであろう。生物活性剤を使用しない場合、固形インプラントは細胞の成長や組織修復を促進する構造体として機能させることができる。生物活性剤を使用すると、インプラントは上記の機能のみならず、生物活性剤を動物の組織及び/又は器官に供給する機能も有することになる。
【0065】
患者に投与される組成物に含まれる要素の有効量と濃度は、一般に、その用途によって決まる。空隙を充填することが目的であれば、有効量の要素を含む組成物を投与してこの目的を達成する。生物活性剤の投与が目的であれば、その量と解離率はその生物活性剤の製造者の指示通りにする。一般に、組成物中の生物活性剤の濃度は非ポリマー組成物1グラムあたり0.01〜400mg程度である。
【0066】
本発明を以下、様々な実施例及び望ましい実施態様と技術を参照して説明する。しかしながら、本発明の精神及び請求範囲内で様々な変更や調整が為され得るのは言うまでもない。
【実施例1】
【0067】
コレステロールをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と混合し、パウダー状の豚ソマトトロピン−A(PST−A)を添加して30重量%のコレステロール、60重量%のNMP、10重量%のPST−Aから成る生成物を得た。その生成物を1ccのポリプロピレン注入器に入れ、その注入器から生成物を一滴、風袋控除をしたpH7.4の燐酸緩衝食塩水入りバイアルに散らした。燐酸緩衝食塩水に添加した生成物の重量を記録した。それからバイアルをテフロン(Teflon)(登録商標)で裏張りしたねじ込口金で密封し、37℃の撹拌槽(shaker bath)内に配置した。全実施例でサンプルは3個ずつ準備された。燐酸緩衝食塩水(PBS)は一定の時間毎に除去され新しいPBSと交換された。解離液はピアース(Pierce)BCA(登録商標)蛋白質評価で分析するまで5℃で保存された。データによると、そのコレステロールインプラントは72時間経過後PST−Aを持続的に解離し、累積解離率は3時間後で5.3%、6時間後で5.4%、12時間後には5.5%、24時間後には5.8%そして72時間後には6.3%であった。
【実施例2】
【0068】
グリセロールトリステアレート(glycerol tristearate)(GST)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)と混合し、豚ソマトトロピン−A(PST−A)を添加して30重量%のGST、60重量%のNMP、10重量%のPST−Aから成る生成物を得た。本生成物からのPST−Aの解離率は、上記実施例1と同様の手順で決定された。PST−Aの解離は7日目まで持続し、その累積解離率は1日後に45.8%、2日後に53.6%、4日後に59.9%そして7日後には61.1%であった。
【実施例3】
【0069】
GSTをジメチルスルホキシド(DMSO)と混合し、PST−Aを添加して30重量%のGST、60重量%のDMSO、10重量%のPST−Aから成る生成物を得た。上記実施例1に例示された手順で処理を行うと、DMSOを含む本生成物からのPST−Aの解離率は、NMPを含む実施例2のそれに比較して大幅に減少した。その累積解離率は1日後は4.0%、2日後に5.4%、4日後には8.2%そして7日後には8.5%であった。
【実施例4】
【0070】
GSTをDMSOと混合し、パウダー状の炭酸ナトリウムとPST−Aを添加して30重量%のGST、50重量%のDMSO、10重量%の炭酸ナトリウム、及び10重量%のPST−Aから成る生成物を得た。水溶性孔形成剤である炭酸ナトリウムを添加したことによって、炭酸ナトリウムを含まない上記実施例3に比べ基質からのPST−Aの解離が大幅に増加した。その累積解離率は1日後は67.3%、3日後に69.7%、5日後に70.3%、そして7日後には70.8%であった。
【実施例5】
【0071】
GSTをクエン酸トリエチル(TEC)と混合し、パウダー状のPST−Aを添加して30重量%のGST、60重量%のTEC、及び10重量%のPST−Aから成る生成物を得た。この生成物からのPST−Aの解離率は、実施例2のNMP生成物及び実施例3のDMSO生成物との中間であった。累積解離率は1日後は15.4%、2日後に15.9%、4日後に16.4%、そして7日後には16.6%であった。
【実施例6】
【0072】
ステアリン酸無水物(stearic anhydride)(SAH)をNMPと混合し、パウダー状のPST−Aを添加して30重量%のSAH、60重量%のNMP、及び10重量%のPST−Aから成る生成物を得た。実施例1と同様の手順によって、この生成物からのPST−Aの解離率が決定された。累積解離率は1日後は56.5%、2日後に58.4%、4日後に60.7%、そして7日後には61.1%であった。
【実施例7】
【0073】
イーストマン・ケミカル・カンパニー(Eastman Chemical Company)よりマイヴェロール(Myverol)18−92として供給されているグリセリルモノリネアート(glyceryl monolineate)(GMOL)をDMSOに溶解し、パウダー状の水溶性抗生物質であるドキシサイクリン水和物(doxycycline hyclate)を添加して59%のGMOL、40%のDMSO、及び1%のドキシサイクリン水和物を含む生成物を得た。生成物は1−ccポリプロピレン注入器に入れ、その注入器から生成物を一滴、風袋控除したpH7.4の燐酸緩衝食塩水(PBS)入りバイアルに散らした。PBSに添加した生成物の重量を記録した。それからバイアルをテフロン(Teflon)(登録商標)で裏張りしたねじ込口金で密封し、37℃の攪拌層内に配置した。全実施例でサンプルは3個ずつ準備された。PBS溶液は一定の時間毎に除去され新しいPBSと交換された。解離液はその後、ドキシサイクリン水和物の濃度について、濃度対UV吸収の標準曲線の比較によって紫外線スペクトロスコピー(UV)で分析した。データによると、そのGMOLインプラントは水溶性ドキシサイクリン水和物の解離を持続し、累積解離率は2時間後で77%、5時間後は94%であった。
【実施例8】
【0074】
GMOLをNMPに溶解し、ドキシサイクリン水和物を添加して59%のGMOL、40%のNMP、及び1%のドキシサイクリン水和物を含む生成物を得た。本生成物からのドキシサイクリン水和物の解離率は、上記実施例7と同様の手順で決定された。この生成物はNMPを含むため、DMSOを含む実施例7の生成物よりも解離が速かった。その累積解離率は2時間後に90%、5時間後には100%であった。
【実施例9】
【0075】
GMOLをDMSOに溶解し、ドキシサイクリン水和物を添加して69%のGMOL、30%のGMSO、及び1%のドキシサイクリン水和物を含む生成物を得た。実施例7より高濃度のGMOLを含有する本生成物を、ドキサイクリンの解離について評価してみると、実施例7の生成物よりも解離が持続した。ドキシサイクリン水和物の累積解離率は、2時間後には65%、5時間後には79%であった。
【実施例10】
【0076】
イーストマン・ケミカル・カンパニーよりマイヴェロール18−99として供給されているモノオレイン酸グリセリル(glyceryl monooleate)(GMOO)をDMSOに溶解し、パウダー状のドキシサイクリン水和物を添加して69%のGMOO、30%のDMSO、及び1%のドキシサイクリン水和物を含む生成物を得た。この生成物からのドキシサイクリンの累積解離率はGMOLを含む実施例9の生成物と類似しており、累積解離率は2時間後には68%、5時間後は79%であった。
【実施例11】
【0077】
GMOOをNMPに溶解し、ドキシサイクリン水和物(hydrate)を添加して69%のGMOO、30%のNMP、及び1%のドキシサイクリン水和物を含む生成物を得た。この生成物からのドキシサイクリンの累積解離率はDMSOを含む実施例10の生成物に匹敵しており、累積解離率は2時間後には70%、5時間後は84%であった。
【実施例12】
【0078】
イーストマン・ケミカルズ・カンパニー(Eastman Chemicals Company)よりマイヴァセット(Myvacet)7−07として供給されているアセチル化モノグリセリド(AMOG)をNMPに溶解し、ドキシサイクリン水和物を添加して69%のAMOG、30%のNMP、及び1%のドキシサイクリン水和物を含む生成物を得た。この生成物の薬剤解離を実施例7に記載の方法で評価したところ、この材料からのドキシサイクリンの解離率は実施例8と11に記載されている生成物からの解離率に比べかなり低下しており、累積解離率は2時間後には2%、5時間後は4%、8時間後は62%、そして24時間後には90%であった。
【実施例13】
【0079】
実施例7と同じGMOLとDMSOの生成物を準備し、ドキシサイクリン水和物の代わりにナルトレキソンを添加した。麻薬拮抗薬であるナルトレキソンの塩基フォーム(base form)はより一層疎水性の薬剤を得るために用いられた。しかしながら、ナルトレキソンの累積解離率は、より親水性のドキシサイクリン水和物を用いた実施例7のそれと類似していた。すなわち、ナルトレキソンの累積解離率は、2時間後には77%、5時間後には94%であった。
【実施例14】
【0080】
実施例8と同じGMOLとNMPの生成物を準備し、ドキシサイクリン水和物の代わりにナルトレキソン塩基を添加した。ナルトレキソンの累積解離率は、2時間後には77%、5時間後には100%であった。この率は、より親水性を有するドキシサイクリン水和物を用いた実施例8の生成物のそれより低いものであった。
【実施例15】
【0081】
実施例9と同じGMOLとDMSOの生成物を準備し、ドキシサイクリン水和物の代わりにナルトレキソンを添加した。ナルトレキソンの累積解離率は、2時間後には59%、5時間後には76%であった。
【実施例16】
【0082】
実施例10と同じGMOOとDMSOの生成物を準備し、ドキシサイクリン水和物の代わりにナルトレキソンを添加した。ナルトレキソンの累積解離率は、2時間後には59%、5時間後には82%であった。
【実施例17】
【0083】
実施例11と同じGMOOとNMPの生成物を準備し、ドキシサイクリン水和物の代わりにナルトレキソンを添加した。ナルトレキソンの累積解離率は、2時間後には78%、5時間後には92%であった。
【実施例18】
【0084】
実施例12と同じAMOGとNMPの生成物を準備し、ドキシサイクリン水和物の代わりにナルトレキソンを添加した。この生成物ではナルトレキソンの解離がかなり長引き、累積解離率は、2時間後には3%、5時間後には11%、8時間後は28%、24時間後は42%、そして72時間後には78%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)及び(b)を含む生分解性インプラントを体内の所定の位置に形成するための組成物。
(a) 生分解性を有する非ポリマー性、水不溶性の材料。
(b) 水若しくは体液に対し、混和性ないし分散性であり、前記組成物を体内に配置すると前記組成物から散逸、拡散、若しくは浸出し、それによって非ポリマー材料が凝固若しくは沈殿してインプラントを生成する生物適合性有機溶剤。
【請求項2】
溶剤が、非ポリマー材料を溶解する第1の溶剤と、非ポリマー材料を溶解しない又は第1の溶剤ほどには非ポリマー材料を溶解しない第2の溶剤の混合物を含み、第1及び第2の溶剤が前記混合物中に、そこに存在する非ポリマー材料を少なくとも一部溶解する割合で含まれ、それによってその組成物を身体内部に配置すると第1の溶剤が体内に散逸、分散又は浸出してその結果第2の溶剤の第1の溶剤に対する割合が増加し、それによって非ポリマー材料が沈殿又は凝固して固形基質を形成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
第1の溶剤が、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、アセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、グリセロールホルマール、グリコフロール、イソプロピリデングリコール、テトラヒドロフラン、カプロラクタム、及びそれらの混合物からなる群から選ばれ、第2の溶剤が水、エタノール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコールからなる群から選ばれる、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
さらに生物学的活性剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記活性剤を含む制御解離成分をさらに含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項6】
糖、塩、水溶性ポリマー、及び速やかに分解して水溶性物質になる水不溶性物質からなる群から選ばれる孔形成剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
生体内でインプラント基質からの生物学的活性剤の解離率を制御する解離率調整剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
水性媒体と水不溶性生分解性の非ポリマー材料の成分との接触により形成された固形微多孔性基質と、水又は体液に対し混和性ないし分散性であり、体内に配置すると前記組成物から散逸、拡散、若しくは浸出し、それによって非ポリマー材料が凝固若しくは沈殿して固形インプラントを形成する生物適合性有機溶剤とを含む制御解離インプラントに適した非ポリマーシステム。
【請求項9】
基質がコアとスキンを含み、前記コアは直径約1〜500ミクロンの孔を有し、前記スキンは直径50ミクロン未満の孔を有する、請求項8に記載の非ポリマーシステム。
【請求項10】
基質が、誘導組織再生用バリアを提供するのに効果的な多孔性を有する、請求項8に記載の非ポリマーシステム。
【請求項11】
組成物が、さらに生物学的活性剤、孔形成剤、解離率調整剤、或いはそれらを組み合わせたものを含む、請求項8に記載の非ポリマーシステム。
【請求項12】
下記(a)及び(b)を含む動物組織欠損の処理方法。
(a) 請求項1記載の組成物の組織欠損部への投与。
(b) 固形インプラントの形成のための所定位置での前記組成物の凝固又は沈殿の許容;前記インプラントは組織欠損の処理に有効である。
【請求項13】
前記組成物がさらに生物学的活性剤を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
下記の(a)及び(b)を含む、生物学的活性剤を動物に供給する方法。
(a) 前記請求項3記載の組成物の動物への投与。
(b) 固形インプラント形成のための所定位置での前記組成物の凝固又は沈殿の許容;前記生物学的活性剤は、動物へ供給される。
【請求項15】
下記の(a)及び(b)を含む、歯周病処理方法。
(a) 請求項1に記載の組成物の患者への投与。
(b) 固形インプラント形成のための所定位置での前記組成物の凝固又は沈殿の許容;前記インプラントは、歯周病に侵された組織の治療に有効である。
【請求項16】
外科的埋植用器具と体組織との適合性、機能或いは両方を増進させる方法であり、請求項1に記載の組成物を外科的埋植用器具、身体組織或いは双方に適用し、その組成物を器具と組み合わせることによって埋植用器具と身体組織との適合性、機能或いは両方を増進させる方法。

【公開番号】特開2009−19038(P2009−19038A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163960(P2008−163960)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【分割の表示】特願平9−516794の分割
【原出願日】平成8年10月25日(1996.10.25)
【出願人】(506041660)キューエルティー・ユーエスエイ・インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】