説明

非再呼吸気道陽圧換気法及びその装置

呼気/休止段階で基準レベルの圧力、流量又は流量体積の流体を患者に供給する患者換気装置。基準レベルから基準レベルより低い解除レベルに流体の圧力、流量又は流量体積を減少して、呼気/休止段階に続く解放段階で流体流の供給を患者から解除する。解放段階に続く供給段階で解除レベルから基準レベルを超える最高レベルに流体の圧力、流量又は流量体積を増大する。最後に、流体の圧力、流量又は流量体積を最高レベルから基準レベルに戻す。

【発明の詳細な説明】
【優先権主張】
【0001】
本願は、米国特許法第119条(e)の規定により、2004年7月14日に出願された米国仮出願番号第60/587,781号の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、患者換気法、特に、患者の肺内の流体を交換する方法を改善する患者換気法及びその換気法を実施する医療用人工呼吸器に関する。
【背景技術】
【0003】
患者(被験者)の生理的必要性に従って安全かつ効果的に患者の肺を換気することが、医療用換気の目標である。従って、患者の種々の必要性に応じて、医療用人工呼吸器(換気装置)を動作する種々の方法が開発された。例えば、吸気間に所望の圧力、流量又は流量体積の流体を患者の肺に供給しかつ呼気間に所望の圧力、流量又は流量体積の流体を患者の肺から排気して患者の肺を換気することは、周知である。患者の肺を換気しかつ患者に流体を供給する開始時期、周期及び限度を制御する種々の換気法が従来の人工呼吸器により行われている。下記特許文献1は、従来の前記人工呼吸器及びその動作を開示する。
【0004】
下記の気道圧解放換気法(APRV)として知られる換気法が急性肺損傷又は成人呼吸障害症候群(ARDS)の治療に承認された。この換気法は、持続気道陽圧に付加される気道内圧を定期的、短期又は断続的に解除しながら、一定の圧力で流体流を患者気道に供給する圧力支援の持続気道陽圧(CPAP)法と同様である。気道圧解放換気法が多くの団体で承認されているが、気道圧解放換気法より患者に対してより自然な下記従来の換気法も、更に好ましい。
【特許文献1】米国特許第5,868,133号公報(デブリーズ名義)
【特許文献2】米国特許第4,773,411号公報(ダウンズ名義)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
必要であっても従来の技術に存在しないのは、患者の不快感を最小にすると同時に、患者の肺から交換される気体量又は液体量等の流体量を増大しかつ各人工呼吸器周期間に患者の肺に導入される新鮮な流体量を増大する方法で、従来の換気法と気道圧解放換気法(APRV)との長所を組み合わせる換気法と、換気法を実施する医療用人工呼吸器とである。
従って、前記要求を満たす患者換気法を提供するのが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(a)呼気/休止段階で基準レベルの圧力、流量又は流量体積の流体を患者に供給する過程と、(b)呼気/休止段階に続く解放段階で、基準レベルの圧力、流量又は流量体積の流体の圧力を基準レベルより小さい解除レベルに減少して患者から流体流の供給を解除する過程とを含む患者換気法を提供する本発明の一実施の形態により、前記目的が達成される。解放段階後、患者に供給される流体の圧力、流量又は流量体積は、供給段階で基準レベルを超える最高レベルに増大される。その後、流体の圧力、流量又は流量体積は、最高レベルから基準レベルまで戻される。
【0007】
本発明の更なる目的は、患者回路、患者回路を通じて患者に加圧流体を供給する圧力発生器及び圧力発生器を制御する制御手段を備える医療用人工呼吸器を提供することである。より詳細には、制御手段により圧力発生器を制御して、前記換気法により流体流が患者に供給される。
【0008】
本発明の更に別の目的は、(a)第1の圧力下で患者に流体を供給する過程と、(b)第1の圧力下での流体供給を終了した後に、第1の圧力より低い第2の圧力下で患者に流体を供給する過程と、(c)第2の圧力下での流体供給を終了した後に、第1の圧力より高い第3の圧力下で患者に流体を供給する過程とを含む換気法に従う患者換気装置を提供することである。(a)から(c)までの過程は、各呼吸周期を通じて反復される。
【0009】
参照符号により各図の対応する部分を示す添付図面に関する以下の説明、特許請求の範囲及び本明細書の全構成部分により、本発明の前記目的及び他の目的、特徴及び特性、構造の関連要素の操作法及び機能、部品の組み合わせ並びに製造経済性は、明らかとなろう。しかしながら、図面は、図示及び説明の目的に過ぎず、発明の範囲を制限しないものであることは、明確に理解できよう。別途明記しない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用する用語「1つ(a)」、「1つ(an)」及び「その(the)」の単数形は、複数の対象を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に示すように、医療用人工呼吸器2は、通常、加圧流体供給源4と、加圧流体供給源4に接続されかつ加圧流体供給源4からの加圧流体を受ける圧力調整器6とを備える。加圧流体供給源4は、送風器(ベローズ)、ピストン、送風装置(ブロワ)又はこれらの組み合わせ等の圧力発生器により気体の圧力を上昇する従来の加圧タンクから供給される気体でよい。患者回路8に供給される加圧流体、即ち、気体又は液体の圧力を調整する圧力調整器6は、患者界面材(インターフェイス)12を通じて圧力を調整した流体を患者10に搬送する。圧力発生器と総称する通常の加圧調整装置に、加圧流体供給源4と圧力調整器6とを組み合わせられることは理解できよう。例えば、送風装置又は圧縮装置の上流又は下流の何れかに気体流量/圧力制御弁を接続して、送風装置又は圧縮装置の動作を制御して、圧力発生装置から排出される気体流に所望の出力圧力を発生させることは、公知である。本明細書の用語「人工呼吸器」又は「換気装置」は、患者10の気道に加圧流体流を供給する装置又はシステムを指称する。前記用語は、吸気間に吸気気道陽圧(IPAP)で気体流を供給しかつ呼気間に呼気気道陽圧(EPAP)により気体流を供給する持続気道陽圧装置(CPAP)又は2段階(バイレベル)装置等の生命維持人工呼吸器(侵襲的又は非侵襲的に動作される)と、圧力支援装置とを含む。
【0011】
医療用人工呼吸器2に設けられる流量センサ14は、圧力調整器6から患者回路8に供給される流体の流量及び/又は流量体積を検出して、検出した流体流量、流量体積又はそれらの両方を示す信号を制御装置16に供給する。しかしながら、所望により、流量センサ14を省略してもよい。
【0012】
また、通常設けられる圧力センサ18も、患者回路8内、特に患者界面材12内の流体流の圧力を検出する。圧力センサ18から制御装置16に出力される圧力信号を使用して、患者10に供給される流体流の圧力を監視し、特に、患者10の吸気量及び呼気量を検出することができる。流量センサ14、圧力センサ18又はそれらの両方からの1つ又は2つ以上の信号に応じて、下記の方法により制御装置16は、患者10への加圧流体を圧力調整器6に供給させる。別法として、制御装置16と加圧流体供給源4との間を破線で接続するように、制御装置16により加圧流体供給源4を制御して、患者10に加圧流体を供給してもよい。
【0013】
前記のように、加圧流体供給源4は、例えば、呼吸用気体、気体、空気、酸素、ヘリウム酸素又は呼吸用液体等の流体を供給する供給源、例えば、ピストン、ベローズ又は送風器等を備えることができる。圧力調整器6は、ポペット弁、ソレノイド弁、バタフライ(蝶形)弁又はスリーブ弁を備えることができる。加圧流体供給源4がピストン又は送風装置であれば、制御装置16は、ピストン又は送風器の動作速度を制御して、加圧流体供給源4からの流体の圧力及び/又は流量を制御することができる。
【0014】
本発明の一実施の形態では、患者回路8は、圧力調整器6と患者界面材12との間に単一アーム回路として接続される第1の管となる導管20を備える。第1の管、即ち導管20は、積極的な排出又は消極的な排出を行う排出組立体22を備える。積極的な排出を行う排出組立体22に設けられる改良ポペット弁は、吸気間に患者10に流体流を供給するときに、排出組立体22を通じて患者回路8から排出される気体流を遮断又は制限する動作と、呼気間に患者10が患者回路8から排出する気体流を開放し又は排気量を増大する動作とを行う。消極的な排出を行う排出組立体22は、第1の管、即ち導管20、患者界面材12又はそれらの両方に形成される孔又は他の開口部を有する。患者10が自然に呼気を行って患者回路8からの排出気体を除去すると共に、吸気間に患者10に流体流を供給できる両作用を両立し又は調和するように、排出組立体22に設けられる単一又は複数の孔の寸法、形状、数及び位置が選択される。
【0015】
別法として、排出組立体22を省略して、患者10が排出する流体を人工呼吸器2に搬送し、そこで吐出された流体を大気に排出する2アーム回路となる第2の管、即ち導管24を患者回路8に設けてもよい。通常、第2のアームからの流体の排出を制御する排出流量制御装置が人工呼吸器2に設けられる。
【0016】
図示しないが、患者回路8に酸素等の補助気体を供給することも公知である。補助気体の供給源は、酸素タンク、液体酸素貯蔵容器、病院の壁式酸素供給装置又は酸素濃縮装置等の何れかの従来の気体供給源でよい。人工呼吸器2、加圧流体供給源4の上流又は下流、圧力調整器6、流量センサ14又は圧力センサ18を含む何れかの位置で一次気体流に補助気体流を導入することができる。導管24又は患者界面材12内にも補助気体流を導入できる。
【0017】
人工呼吸器2を利用する患者10の肺を換気する2つの従来方法である従来の換気法と気道圧解放換気法(APRV)とを以下説明し、その後、人工呼吸器2を利用して患者10を換気する本発明の方法として非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)を説明する。患者10の呼吸又は呼吸周期に同期する患者10の換気法を以下説明する。しかしながら、この換気法は、本発明の限定解釈を意味せず、特に気道圧解放換気法(APRV)及び非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の動作態様では、患者10の呼吸又は呼吸周期から独立して患者10を換気できよう。従来では、患者10の呼吸又は呼吸周期から独立する患者10の換気法を「強制呼吸法」又は「機械式呼吸法」と呼ぶこともある。しかしながら、これは、本発明の限定解釈にはならない。
【0018】
図1に続く図2A〜図2Cに示すように、圧力制限の下で従来の支援制御法により動作される人工呼吸器2は、まず、第1の期間30に圧力P2で患者10に流体流を供給し、その後、患者10に付与される各換気周期28の第2の期間32と第3の期間34に圧力P2より低い圧力P1で患者10に流体流を供給する。患者10への換気を開始する従来の換気態様では、換気周期28の第1の期間30は、患者10の吸入作用に一致する時間であり、第2の期間32は、患者10の呼気作用に一致する時間であり、第3の期間34は、患者10の呼吸作用の休止期間に一致する。
【0019】
図2A〜図2Cは、第1の期間30と第2の期間32とを中央に図示し、第1の期間30と第2の期間32の両側に第3の期間34を示す。時間と圧力を示す図2A〜図2Cの各XY軸上の期間30〜34の相対的位置を所望により調整できることは、当業者に自明であるから、図2A〜図2Cは、本発明を限定して解釈する根拠にはならない。例えば、第1の期間30、第2の期間32又は第2の期間32直後の第3の期間34の始期を図2A〜図2Cに示す各XY軸の縦軸上の位置に表示してもよい。
【0020】
図2Aに示すように、第1の期間30に至る第3の期間34に、望ましくは0〜10水柱センチメートル(cmH2O)(10.1973cmH2O=1000Pa=1000N/m2)間の圧力P1で流体流が患者10に供給される。第1の期間30の始期又はその付近で、人工呼吸器2は、圧力P1から望ましくは10〜60cmH2O間の圧力P2に流体流の圧力を増大させる。第2の期間32の始期又はその付近で、人工呼吸器2は、圧力P2から圧力P1に流体流の圧力を減少する。その後、次の第1の期間30の始期又はその付近まで、流体流の圧力が圧力P1に維持される。人工呼吸器2の従来の換気法動作では、患者10が各第1の期間30に吸気を開始するとき及び各第2の期間32に呼気を開始するときの患者10の各呼吸周期間に、圧力をP1からP2に変化させ、その後に圧力P1に戻す過程を反復することが望ましい。しかしながら、この過程は、本発明を限定して解釈するものではない。
【0021】
図2Bは、第1の期間30に患者10に流入する流体流量(流体速度)と、第2の期間32に患者10から排出される流体流量と、第3の期間34に患者10に流入し又は患者10から排出される無流体流量を示す。ハッチング領域は、第1の期間30に患者10の肺内に流入する新鮮な流体流量を示す。
【0022】
図2Cは、第1の期間30及び第2の期間32にそれぞれ患者10に流入しかつ患者10から流出する流体の流量体積と、第3の期間34に患者10に流入又は患者10から流出する無流体とを示す。図2Cでは、VTは、各呼吸周期間に患者10の肺に流入しかつ流出する流体の一周期の総合流量体積を示し、VTFは、第1の吸気期間30に患者10の肺に流入する新鮮な流体の流量体積を示す。新鮮な流体流量体積(VTF)は、図2Bのハッチング領域に相当する。全患者呼吸システムの死界(デッドスペース)の換気に総合流量体積(VT)の流量体積の一部が使用されるので、総合流量体積(VT)は、新鮮な流体流量体積(VTF)より大きい。
【0023】
従来の換気法の圧力制限態様を図2A〜図2Cに示すが、換気法の他の従来態様も公知であることは、理解されよう。例えば、吸気間に患者10の気道に流入する流体の流量を流速又は流量体積に基づいて制限することができる。換気の開始及び周期を患者の動作又は時間に基かせることもできる。
【0024】
図1及び図2A〜図2Cと共に、図3A〜図3Cに示すように、気道圧解放換気法(APRV)で作動されるとき、患者10に適用される各換気周期28の第1の期間30及び第3の期間34に、人工呼吸器2は、圧力P3により流体流を患者10に供給する。しかしながら、各換気周期28の第2の期間32に、人工呼吸器2は、圧力P3より低い圧力P4により流体流を患者10に供給する。
【0025】
図3A〜図3Cは、図示のみの目的で、第1の期間30及び第2の期間32の両側に第3の期間34を示すが、少なくとも図2A〜図2Cの第3の期間34と同様の理由で、本発明を第3の期間34に限定して解釈してはならない。気道圧解放換気法(APRV)は、例えば、特許文献2に記載される。
【0026】
図3Aに示すように、第2の期間32に至る第3の期間34に、望ましくは20〜40cmH2O間の圧力P3で流体流が患者10に供給される。人工呼吸器2は、第2の期間32の始期又はその付近で圧力P3から望ましくは0〜10cmH2O間の圧力P4に流体流の圧力を減少させる。第1の期間30の始期又はその付近で、人工呼吸器2は、流体流の圧力を圧力P4からP3に増大させる。その後、次の第2の期間32の始期又はその付近まで流体流の圧力は、圧力P3に維持される。人工呼吸器2の気道圧解放換気(APRV)態様では、望ましくは、患者10の各呼吸周期、即ち、機械調整呼吸から独立して、圧力をP4からP3に変化させ、その後P3に戻す過程が、患者10の各換気周期28間に反復される。
【0027】
しかしながら、第2の期間32中かつ/又は第2の期間32の始期の直前に患者10が呼気を行い、第1の期間30に患者10が吸気を行うと想定される患者10の各呼吸周期に気道圧解放換気法(APRV)の各換気周期28を所望により同期させてもよい。しかしながら、換気周期の同期に本発明を限定して解釈してはならない。
【0028】
気道圧解放換気法(APRV)の態様では、第2の期間32の始期を次の第1の期間30の直前まで遅延できる。これは、第1の期間30に第2の期間32を直接続行させる図2Bに示す従来の換気法の態様とは対照的である。
【0029】
気道圧解放換気法(APRV)の動作態様での患者10の機能残気量(FRC、呼吸筋が全て弛緩したときに肺内に残留する気体量)を示す図2Cと図3Cとを比較すると、第2の期間32に至る第3の期間34に圧力P3で流体流を患者10に供給する図3では、従来の換気法態様での図2Cの患者10の機能残気量(FRC)より高い又は大きいことが分かる。患者10の肺内流体流量体積が第3の期間34に機能残気量(FRC)まで戻る図2Cに対し、図3Cに示す気道圧解放換気法(APRV)の動作態様では、第1の期間30後に圧力P3に流体流を維持するので、患者10の機能残気量(FRC)が増大する。従って、気道圧解放換気法(APRV)の動作態様では、第1の期間30及び第2の期間32を除き、従来の換気法の動作態様での患者10の機能残気量(FRC)より高い機能残気量(FRC)に患者10の肺内流体流量体積が維持される。
【0030】
図3Bのハッチング領域は、第1の期間30に患者10の肺内に流入する流体速度を示す。図3Cの新鮮な流体流量体積(VTF)は、第1の期間30に患者10の肺内に流入する新鮮な流体の流量体積を示し、図3Bのハッチング領域に相当する。図2Cと図3Cとを比較すると、気道圧解放換気法(APRV)の動作態様での図3Cに示す新鮮な流体流量体積(VTF)は、従来の換気法動作による図2Cに示す新鮮な流体流量体積(VTF)より大きく、図3Cでは、気道圧解放換気法(APRV)動作による新鮮な流体流量体積(VTF)と総合流量体積(VT)とが等しいことが分かる。従って、気道圧解放換気法(APRV)の動作態様では、各換気周期28に患者10の肺内で、従来の換気法の動作態様より多量の流体を交換できよう。
【0031】
第1の期間30及び第3の期間34に圧力P3で流体流を患者10に供給し、第2の期間32に圧力P4で流体流を患者10に供給するので、快適でない患者10も存在するため、気道圧解放換気法(APRV)の動作態様で人工呼吸器2を作動するとき、特に、人工呼吸器2に機械調整呼吸法を利用するとき、患者10を鎮静化させて、患者10の不快感を回避することが必要である。にも関わらず、気道圧解放換気法(APRV)の動作態様は、特定の呼吸器疾患又は呼吸器障害の治療に臨床上重要であることが判明した。
【0032】
本発明の原理による非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の動作態様を図4A〜図4Cについて以下説明する。非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の動作態様では、人工呼吸器2は、各換気周期28の休止段階44で圧力P5の流体流を患者10に供給する。休止段階44は、患者10に供給される流体の圧力、流量又は流量体積を基準レベルP5に維持する換気状態に相当する。例示的な図示の実施の形態では、基準レベルP5は、患者10に供給される流体の圧力、流量又は流量体積がほぼ一定である患者10への換気に相当する。
【0033】
休止段階44を呼気段階46の延長とみなすことができる。患者10によりかつ特定の状況下では、休止段階44を極めて短くし又は設けなくてもよいことも理解できよう。換言すれば、例えば、急激な呼吸のとき等の呼気段階46の終期に、流体が一定圧力、一定流量又は一定流量体積の明確な期間がないとき、休止段階44を呼気段階46に代えてもよい。このように、本発明では、休止段階44を設けても設けなくても、供給段階40と解放段階(気体の供給を解除する段階)42との間の期間を「呼気/休止段階」と総称する。
【0034】
人工呼吸器2は、各換気周期28の解放段階42中に流体流の供給を患者10から解除するので、患者10の呼吸器系から使用済みの気体を除去し、患者10の肺、気道及び患者回路8の一部を含む全患者呼吸器系の死界を除去又は低減することができる。例えば、患者10に供給される流体流の圧力を基準圧力レベルP5より低い解除圧力レベルP6に低下させることにより、死界の除去又は低減を達成できる。各換気周期28の供給段階40中に、解除圧力レベルP6から基準レベルP5より高い最高圧力レベルP7に流体圧力を上昇させることにより、人工呼吸器2は、患者10に新鮮な流体流を供給する。その後、流体流を制御して、呼気段階46で流体の圧力、流量又は流量体積が最高レベルP7から基準レベルP5に戻される。
【0035】
前記のように、呼気段階46の延長とみなせる休止段階44で、人工呼吸器2は、基準圧力レベルP5で流体流を患者10に供給する。図4A〜図4Cは、図示のみの目的で解放段階42、供給段階40及び呼気段階46の両側に休止段階44を示すが、図2A〜図2Cの第3の期間34について説明した少なくとも前記理由により、本発明を限定して解釈してはならない。
【0036】
図4Aに示すように、解放段階42に至る休止段階44では、5〜30cmH2Oの範囲、通常望ましい約15cmH2Oの基準圧力P5で流体流が患者10に供給される。本発明は、呼気終末陽圧呼吸(PEEP)又は呼気終末陽圧呼吸(PEEP)若しくは呼気終末陽圧呼吸(PEEP)定数を加えた圧力値に基準圧力P5を設定することを企図する。解放段階42の始期又はその付近で、人工呼吸器2は、圧力P5から0〜15cmH2O、通常望ましい約5cmH2Oの圧力P6まで流体圧力を減圧する。供給段階40の始期又はその付近で、人工呼吸器2は、圧力P6から15〜60cmH2O、通常望ましい約30cmH2Oの圧力P7まで流体圧力を加圧する。供給段階40後に呼気段階46の始期又はその付近で、人工呼吸器2は、圧力P7から圧力P5に流体圧力を減圧する。その後、次の解放段階42の始期又はその付近で圧力P5に流体圧力を維持する。
【0037】
人工呼吸器2の非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の動作態様では、圧力をP5からP6に変更する過程、圧力をP6からP7に変更する過程、その後、圧力をP7からP5に戻す過程を含む各換気周期28を、患者10の各呼吸周期から独立して患者10に反復することが望ましい。しかしながら、非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の動作態様では、解放段階42中かつ/又は解放段階42の始期の直前に患者10が呼気を行い、供給段階40で患者10が吸気を行い、呼気段階46で呼気を行うとみなせる患者10の各呼吸周期に各換気周期28を所望により同期させてもよい。しかしながら、換気周期の同期に本発明を限定して解釈してはならない。
【0038】
図2Bと図4Bとを比較すると、非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の動作態様では、次の供給段階40の直前まで解放段階42の始期を遅延できることが分かる。これは、次の第1の期間30の直前まで第2の期間32の始期を遅延する前記気道圧解放換気法(APRV)の動作態様と同様である。更に、気道圧解放換気法(APRV)の動作態様と同様に、非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の動作態様では、休止段階44に流体圧力を圧力P5に維持することにより、換気法動作の従来の態様での患者10の機能残気量(FRC)より大きく、患者10の機能残気量(FRC)を増大させることができる。
【0039】
非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の動作態様では、供給段階40中に圧力P7の流体流を患者10に供給するので、非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の動作態様で供給段階40中の患者10の肺に導入される流体流量体積は、気道圧解放換気法(APRV)の動作態様の第1の期間30中に患者10の肺に導入される流体の流量体積より大きいであろう。その結果、非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の動作態様での新鮮な流体流量体積(VTF)、即ち、患者10の肺に流入する新鮮な流体の一周期の流量体積は、気道圧解放換気法(APRV)及び従来の換気法の動作態様の新鮮な流体流量体積(VTF)より大きいであろう。従って、非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の動作態様では、気道圧解放換気法(APRV)又は従来の換気法の動作態様より多量の流体を各換気周期28中に患者10の肺内で交換できよう。
【0040】
図4Bのハッチング領域は、供給段階40に患者10の肺内に流入する新鮮な流体の速度を示し、図4Cの新鮮な流体流量体積(VTF)に相当する。図4Cに示すように、非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の動作態様では、新鮮な流体流量体積(VTF)と総合流量体積(VT)とは等しい。呼気段階46/休止段階44で圧力P5の流体流を供給しかつ供給段階40で圧力P7の流体流を供給する患者10には、快適でないこともあるので、非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の動作態様で人工呼吸器2を作動させるとき、患者10を鎮静化することが必要な場合もある。このように、本発明による患者10の換気法では、従来の又は気道圧解放換気法(APRV)の動作態様により患者10の肺を換気する新鮮な流体の流量体積を超えて、患者10に供給する新鮮な流体の流量体積を増大しかつ患者10の肺内に交換される流体の流量体積を増大することができる。
【0041】
前記実施の形態では、制限される圧力で流体流量を説明した。即ち、呼気段階46/休止段階44、解放段階42及び供給段階40で流体圧力に基づき、流体流量が制御される。1つ又は2つ以上の前記段階で他の同様の特性に基づいて流体流量の制御を本発明が企図することは、理解できよう。例えば、本発明は、流速又は流量体積に基づいて流体の流量を制御することも企図する。例えば、呼気段階46/休止段階44で患者10の肺内の流体流量体積を基準レベルに維持し、解放段階42で患者10の肺内の流体流量体積を基準レベル以下に減少させ、供給段階40で患者10の肺内の流体流量体積を基準レベルを超えて増大させ、次の呼気段階46で患者10の肺内の流体流量体積を基準レベルに戻して休止段階44に達するように、体積制限法で人工呼吸器2を作動することもできる。
【0042】
例えば、呼気段階46/休止段階44で基準レベルに患者10の肺内の流体流量を維持し、例えば、患者10の気道又は肺から使用済みの気体の一部を除去して、解放段階42で基準レベル以下に患者10の肺内の流体流量を減少させ、供給段階40で患者10の肺内の流体流量を基準レベルを超えて増大させ、休止段階44に向かって次の呼気段階46で患者10の肺内の流体流量を基準レベルに戻すように、流速制限法で人工呼吸器2を動作することもできる。
【0043】
本発明は、患者10に供給される流体の圧力、流量又は流量体積ではなく、休止段階44、解放段階42、供給段階40及び呼気段階46の継続期間を時間基準で制御することも企図する。例えば、先行する供給段階40の終期に続く所定の期間で解放段階42を開始するように人工呼吸器2をプログラム制御してもよい。解放段階42の持続時間を予め決められた期間に設定してもよい。同様に、供給段階40の持続時間を予め決められた期間に設定してもよい。勿論、圧力、流量又は流量体積の時間基準で制御することは、自発的に呼吸しない患者10に最適である。
【0044】
本発明は、解放段階42、供給段階40及び/又は供給段階40に続く呼気段階46及び休止段階44の基準レベルに戻る間に、圧力、流量又は流量体積の波形形状を特定の輪郭又は外形に制御することも企図する。逆に、解放段階42、供給段階40及び/又は供給段階40に続く呼気段階46/休止段階44の基準レベルに戻る間に圧力、流量又は流量体積の波形形状を無制御とすることも企図する。換言すれば、圧力の制限態様では、人工呼吸器2は、休止段階44、解放段階42及び供給段階40での基準圧力、解除圧力及び最高圧力等の目標圧力の達成を追求しながら、特定形状の圧力曲線を無制御に放置することができる。この場合、患者10の適応性及び耐性等の患者10の呼吸構造、患者10の動作及び人工呼吸器2の機械的性能に圧力曲線の形状が追従する。同一呼吸周期内の一段階では圧力、流量又は流量体積の波形形状を制御できるが、他の段階では抑制できないことも理解されよう。
【0045】
本発明は、動作中の休止段階44、解放段階42、供給段階40及び呼気段階46で供給される圧力(P5,P6,P7)、流量又は流量体積のレベルを制御することを企図することも理解されよう。即ち、患者10及び/又は人工呼吸器システムの監視状態に基づいて、休止段階44、解放段階42、供給段階40及び呼気段階46に供給される圧力、流量又は流量体積のレベルを人工呼吸器システムにより自動的に滴定し、検出し、調整することができる。患者10に供給される気体流の圧力を自動的に調整する技術は、周知である。本発明は、休止段階44、解放段階42、供給段階40及び呼気段階46に供給される圧力、流量又は流量体積のレベルを設定する従来の前記自動滴定技術を使用することを企図する。呼吸毎に又はそれより低い頻度で継続的にこれを実施してもよい。
【0046】
前記のように、本発明は、非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の動作態様で各患者10の呼吸に各換気周期28を同期できることを企図する。非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の動作態様で供給される圧力送出を患者10の自発的呼吸に同期させる技術も複数存在する。圧力発生装置により患者10に供給される例示的な圧力波形を示す図5〜図7について前記同期技術を説明する。本明細書中の用語「開始(トリガ)」は、呼吸周期の呼気段階から吸気段階への移行を指称し、用語「周期(サイクル)」は、呼吸周期の吸気段階から呼気段階への移行を指称する。用語「開始(トリガ)」は、吸気動作又は吸気信号により開始する解放段階への移行も指称する。用語「周期(サイクル)」は、呼気動作又は呼気信号により開始する解放段階への移行も指称する。本明細書中で使用される用語「開始(トリガ)」及び「周期(サイクル)」は、1つの段階から次の段階への移行を指称するのであって、換気装置が、開始事象又は周期事象の検出時に患者10に供給される気体の圧力、流量若しくは流量体積を調整又は変更することを必ずしも意図するものではない点に留意すべきである。
【0047】
図5は、患者10の自発的な吸気動作の開始点50で供給段階52を開始する非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の換気態様を示す。患者10の呼気動作、時間、流量、流量体積、圧力又はこれらの何れかの組み合わせに基づいて供給段階52の期間を反復させることができる。即ち、患者10が呼気動作を試みるとき、何れかの従来技術を使用して、呼気動作を検出して、供給段階52から呼気/休止段階56への周期点54で人工呼吸器2を反復させることができる。予め決められた期間が経過したとき、閾値流速を検出したとき、閾値流量体積に達したとき、閾値圧力に達したとき又はこれらの何れかの組み合わせにより、前記周期を反復してもよい。周期事象として患者10の呼気動作を人工呼吸器2が使用する必要がないので、図5の周期点54を任意点として示す理由がここにある。
【0048】
患者10の動作、時間、流量、流量体積又は圧力に基づいて、呼気/休止段階56の持続時間を制御することができる。例えば、本発明は、周期点54後に予め決められた期間待機し、期間経過後に、解放段階58を開始することを企図する。純粋に時間基準でなく、監視する媒介変数(パラメータ)に基づいて、解放段階58の開始、即ち、呼気/休止段階56の持続時間を制御できることは理解されよう。例えば、流量、圧力、流量体積又はこれらの何れかの組み合わせが予め決められた閾値に達したとき、解放段階58を開始することができる。本実施の形態では、例えば、患者10が自発的に吸気を開始する開始事象が発生するまで、換気装置は、解放段階58のままである。吸気の開始により換気装置が供給段階52に移行し、前記過程が反復される。
【0049】
図6は、自発的な患者10の吸気動作の開始点60で解放段階62を開始する非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の換気態様を示す。即ち、何れかの従来技術を使用して、患者10の吸気を始めようとする瞬間を検出し、解放段階62を開始する。患者10の動作、時間、流量、流量体積、圧力又はこれらの何れかの組み合わせに基づいて、解放段階62の持続時間を制御することができる。例えば、患者10が更に吸気動作を行うとき、何れかの従来技術を使用して更なる吸気動作を検出して、人工呼吸器2を供給段階64に移行することができる。予め決められた期間が経過した場合、閾値流速を検出した場合、閾値流量体積に達した場合、閾値圧力に達した場合又はこれらの何れかの組み合わせの場合に、解放段階62から供給段階64に移行してもよい。
【0050】
患者10の呼気動作、時間、流量、流量体積、圧力又はこれらの何れかの組み合わせに基づいて、供給段階64の持続時間を反復させることができる。即ち、供給段階64を一度開始して患者10が呼気を試みる場合に、何れかの従来技術を使用して呼気動作を検出して、人工呼吸器2は、周期点66で呼気/休止段階68に反復することができる。予め決められた期間が経過した場合、閾値流速を検出した場合、閾値流量体積に達した場合、閾値圧力に達した場合又はこれらの何れかの組み合わせの場合に、人工呼吸器2を反復させてもよい。本実施の形態では、例えば、患者10が自発的に吸気を開始するときに、次の開始事象が発生するまで、換気装置は、呼気/休止段階68のままである。次の開始事象により、換気装置は、解放段階62に移行し、前記過程が反復される。
【0051】
図7は、患者10の自発的な呼気周期に解放段階を同期させる非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の換気態様を示す。周期点70で患者10が呼気を開始し、人工呼吸器2は、先行する呼気段階から解放段階72に移行する。何れかの従来の技術を使用して、周期点を検出することができる。患者10の動作、時間、流量、流量体積、圧力又はこれらの何れかの組み合わせに基づいて、解放段階72の持続時間が制御される。例えば、患者10が開始点74で吸気を試みる場合、人工呼吸器2は、開始点74から供給段階76に移行する。
【0052】
時間、流量、流量体積、圧力又はこれらの何れかの組み合わせに基づいて、供給段階76の持続時間を制御することができる。即ち、予め決められた期間が経過した場合、閾値流速を検出した場合、閾値流量体積に達した場合、閾値圧力に達した場合又はこれらの何れかの組み合わせの場合に、換気装置は、供給段階76を終了して、呼気/休止段階78に移行する。本実施の形態では、例えば、患者10が自発的に呼気を開始するときに、換気装置は、次の周期事象が発生するまで呼気/休止段階78のままである。換気装置は、次の周期事象により解放段階72に移行し、前記過程が反復される。
【0053】
患者10自身の吸気動作に必ずしも基づかずに、解放段階72から供給段階76に移行してもよいことに留意すべきである。この場合、患者10が吸気を試みるとき、吸気動作は、換気装置の活動に影響を与えない。このように、患者10の吸気動作に基づく必要のない図7に示す複数の開始点は、圧力の移行を示す。
【0054】
非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の全段階で、患者10が自発的に呼吸できる(呼吸の補助又は無補助を問わず、呼吸の支援又は無支援を問わず)ことが重要である。本発明の他の実施の形態では、非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の一部段階又は全段階で、患者10は、自発的に呼吸を行うことができない。
【0055】
通常呼吸の吸気持続時間又は呼気持続時間に関連して、非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の何れかの段階又は全段階を極めて短くし又は極めて長くしできることも重要である。非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の他の動作態様では、非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の段階を呼吸周期に関連付けても、関連付けなくてもよい。例えば、機能残気量(FRC)を制御する非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の原理により圧力を変更して、一定期間、異なる機能残気量(FRC)レベルで患者10が呼吸することができる。
【0056】
3段階で変動する流量/圧力を使用して、流体の流量体積、圧力又は流量を制御することにより患者10の肺に導入される新鮮な流体量を増大する技術の状況について、非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の動作態様の発明を説明した。患者10自身の換気動作を増大し又は患者10自身の換気動作に代わり、この流体量増大操作が通常行われる。しかしながら、換気に関連せず又は人工呼吸器の使用に無関係の治療目的で、非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の動作態様の使用を本発明が企図することも理解されよう。前記非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の動作態様の他の数応用例を説明する。
【0057】
患者10の顔面に外圧を加える場面で、非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の圧力供給技術を使用できる。例えば、救急蘇生又は理学療法を行う間に患者10に外部から加えられる圧力を制御する非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の変形態様を使用することができる。この実施の形態では、患者10の顔面に印加される圧力変動に非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の動作態様が付加される。呼吸器系の利用の有無に拘らず、血圧制御又は心臓の活動制御に非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)技術を使用することができる。非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の動作態様により流体ポンプを操作することができる。非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の流体ポンプは、例えば、心臓の機能を増大し又は心臓の機能を代替する。動脈、血管又は他の導管等の患者10の循環器系、他の生理的器官又はこれらの一部に圧力を加えるのに非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)動作を使用してもよい。要するに、例えば、理学療法、マッサージ器、脚又は腕の血圧計バンド並びに腹筋及び/又は便秘用の刺激装置等の広範囲の分野で、圧力解放段階を含んで圧力を支援する非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)又は3段階法を広く応用することができる。前記応用例が、換気分野を除く領域での非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の動作態様の他の用途の例示に過ぎないことは、理解されよう。非再呼吸気道陽圧換気法(NRPAP)の動作態様の使用例を前記特定例に本発明を制限する意図ではない。
【0058】
好適な実施の形態について本発明を説明した。前記詳細な説明を閲読し理解すれば、本発明の明白な修正実施の態様及び変形実施の形態が他の当業者にも明らかとなろう。添付の特許請求の範囲又はその均等の範囲内にある限り、全ての修正実施の形態及び変形実施の形態を含むものとして本発明を解釈すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の原理による換気法により作動する人工呼吸器、患者及び患者回路を含む換気装置の概略ブロック図
【図2】従来の換気法により患者の肺を換気する際に得られる波形図(図2A〜図2C)
【図3】気道内圧解放換気法により患者の肺を換気する際に得られる波形図(図3A〜図3C)
【図4】本発明による患者の肺を換気する際に得られる波形図(図4A〜図4C)
【図5】本発明の換気法を使用して、圧力印加の開始及び圧力の周期動作を示す圧力波形図
【図6】本発明の換気法を使用して、圧力印加の開始及び圧力の周期動作を示す圧力波形図
【図7】本発明の換気法を使用して、圧力印加の開始及び圧力の周期動作を示す圧力波形図
【符号の説明】
【0060】
(2)・・圧力発生器(人工呼吸器)、 (6,16)・・圧力制御手段(圧力調整器及び制御装置)、 (8)・・患者回路、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)患者に加圧流体を搬送する患者回路(8)と、
(b)患者に加圧流体を搬送する患者回路に接続される圧力発生器(2)と、
(c)圧力発生器を制御して、
(1)呼気/休止段階で基準レベルの圧力、流量又は流量体積の流体を患者に供給する、
(2)呼気/休止段階に続く解放段階で流体の圧力、流量又は流量体積を基準レベルから基準レベルより小さい解除レベルまで減少させて、流体流の供給を患者から解除する、
(3)解放段階に続く供給段階で、患者に供給される流体の圧力、流量又は流量体積を解除レベルから基準レベルを超える最高レベルに増大する、及び
(4)流体の圧力、流量又は流量体積を最高レベルから基準レベルに戻す、
動作を行う圧力制御手段(6,16)とを備えることを特徴とする医療用人工呼吸器。
【請求項2】
圧力制御手段は、(a)から(d)の過程を反復する請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項3】
圧力制御手段は、(a)患者の自発的呼吸から独立して又は(b)患者の自発的呼吸に同期して、呼気/休止段階、解放段階、供給段階又はこれらの何れかの組み合わせ段階に移行する請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項4】
圧力制御手段は、供給段階で流体の圧力、流量又は流量体積を圧力限度、流量限度又は流量体積限度に増大させる請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項5】
圧力制御手段は、呼気/休止段階、解放段階又は供給段階の持続時間を時間基準で制御する請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項6】
呼気/休止段階で供給される流体流の圧力基準レベルは、5〜30cmH2Oの範囲にあり、解放段階で供給される流体流の圧力解除レベルは、0〜15cmH2Oの範囲にあり、供給段階で供給される流体流の圧力最高レベルは、15〜60cmH2Oの範囲にある請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項7】
呼気/休止段階で基準レベルの圧力、流量又は流量体積の流体を患者に供給する供給手段と、
呼気/休止段階に続く解放段階で、基準レベルから基準レベルより小さい解除レベルに流体の圧力、流量又は流量体積を減少して、流体流の供給を患者から解除する解放手段と、
解放段階に続く供給段階で、解除レベルから基準レベルを超える最高レベルに患者に供給される流体の圧力、流量又は流量体積を増加する増大手段と、
流体の圧力、流量又は流量体積を最高レベルから基準レベルに戻す復帰手段とを備えることを特徴とする医療用人工呼吸器。
【請求項8】
(a)患者の自発的呼吸から独立して又は(b)患者の自発的呼吸に同期して、流体の呼気/休止段階、解放段階、供給段階又はこれらの何れかの組み合わせ段階に移行する請求項7に記載の人工呼吸器。
【請求項9】
供給段階で患者に供給される流体の圧力、流量又は流量体積を増大する増大手段は、供給段階の開始時に患者の吸気に同期する請求項7に記載の人工呼吸器。
【請求項10】
供給段階で患者に供給される流体の圧力、流量又は流量体積を増加する増大手段は、流体の圧力、流量体積又は流量を制限できる制限手段である請求項7に記載の人工呼吸器。
【請求項11】
呼気/休止段階で患者に流体を供給する供給手段は、呼気/休止段階の持続時間を時間基準で制御し、解放段階で流体流の供給を患者から解除する解放手段は、解放段階の持続時間を時間基準で制御し又は供給段階で患者に供給される流体の圧力、流量又は流量体積を増加する増大手段は、供給段階の持続時間を時間基準で制御する請求項7に記載の人工呼吸器。
【請求項12】
呼気/休止段階で供給される流体流の圧力基準レベルは、5〜30cmH2Oの範囲にあり、解放段階で供給される流体流の圧力解除レベルは、0〜15cmH2Oの範囲にあり、供給段階で供給される流体流の圧力最高レベルは、15〜60cmH2Oの範囲にある請求項7に記載の人工呼吸器。
【請求項13】
患者に加圧流体を搬送する患者回路と、
患者回路を通じて患者に加圧流体を供給する圧力発生器と、
圧力発生器を制御する制御手段とを備え、
制御手段は、(a)第1の圧力により患者に流体を供給し、(b)第1の圧力より低い第2の圧力で患者に流体を供給しかつ(c)第1の圧力より高い第3の圧力で患者に流体を供給することを特徴とする医療用人工呼吸器。
【請求項14】
制御手段は、患者の呼吸に反応して、患者の呼気時に、第1の圧力又は第2の圧力で患者に流体を供給しかつ患者の吸気時に、第3の圧力で患者に流体を供給する請求項13に記載の医療用人工呼吸器。
【請求項15】
制御手段は、圧力発生器を制御して、患者の呼吸動作から独立して第1の圧力、第2の圧力及び第3の圧力で患者に周期的に流体を供給する請求項13に記載の医療用人工呼吸器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−506474(P2008−506474A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521703(P2007−521703)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/025319
【国際公開番号】WO2006/020146
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(505338497)アールアイシー・インベストメンツ・エルエルシー (81)