説明

非凝集抗体Fcドメインの製造方法

精製されたFcペプチド鎖の溶液の有用な製造方法が開示される。該方法は、抗体Fcドメインを含んでなる高分子量の凝集ペプチド鎖を、また抗体Fcドメインを含んでなるより低分子量の非凝集ペプチド鎖から分離するためプロテインAクロマトグラフィーを使用する。本発明の方法により得られる精製されたFcペプチド鎖の溶液は、5%未満の凝集物、および精製にかけられたFcペプチド鎖の70%以上を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体Fcドメインを含んでなる凝集および非凝集ペプチド鎖を分離するためのプロテインAクロマトグラフィーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Fcペプチド鎖を含むモノクローナル抗体(mAb)分子の治療剤としての使用は、多様な疾患の処置のための有効なアプローチとなった。下述されるミメティボディ(mimetibody)分子のようなFcペプチド鎖を含有する抗体由来分子、およびFc融合分子もまた治療的可能性を有する。加えて、これらの分子は、多様な疾患の免疫病因論ならびに他の生物学的過程のより良好な理解を獲得するための有用な研究ツールである。
【0003】
抗体、ミメティボディおよびFc融合分子の大規模での製造および精製は、治療若しくは研究使用のためこれらのFcペプチド鎖分子を製造するのに必要である。こうした分子の製造および精製で一般に遭遇する一問題は、複数のFcペプチド鎖分子を含んでなる可溶性高分子量凝集物(例えば2種以上の非凝集低分子量抗体若しくはミメティボディ分子の凝集物)の形成である。こうした凝集物の存在は、若干の患者が凝集物を受領することに応答して生命を脅かす免疫反応に苦しむことができるという危険性のため治療的製剤で高度に望ましくない。加えて、Fcペプチド鎖凝集物は、研究若しくは治療的用途に意図しているFcペプチド鎖製剤中の望ましくない不溶性沈殿の形成を引き起こし得る。
【0004】
Fcペプチド鎖分子の精製の間の一目標は、凝集分子を本質的に含まない非凝集Fcペプチド鎖産物(例えば非凝集低分子量抗体若しくはミメティボディ分子)を高収率で得ることである。典型的に、70%以上のFcペプチド鎖の総パーセント収率で5%未満の凝集物を含有する精製されたFcペプチド鎖の製造が望ましい。
【0005】
Fcペプチド鎖分子の製造および精製の第一段階の1つは、通常プロテインAクロマトグラフィー樹脂に基づく精製段階である。プロテインAクロマトグラフィー樹脂はFcペプチド鎖を特異的に結合するプロテインAペプチド鎖を含んでなる。この結合活性は、凝集若しくは非凝集のFcペプチド鎖の間を識別せず、双方がプロテインAクロマトグラフィー樹脂に結合する。重要なことに、プロテインAクロマトグラフィー樹脂はこの特異的結合に基づきFcペプチド鎖を他の分子から分離する。こうした樹脂は、分子量の差違に基づきFcペプチド鎖を他の分子若しくは複合体から分離しない。結果、慣習的プロテインAクロマトグラフィー法において、凝集高分子量Fcペプチド鎖および非凝集低分子量Fcペプチド鎖双方が、溶出段階の間にプロテインAクロマトグラフィー樹脂から遊離される。これは、大量の望ましくない凝集Fcペプチド鎖分子および所望の非凝集Fcペプチド鎖分子双方を含んでなる水性溶液を生じる。
【0006】
凝集および非凝集Fcペプチド鎖分子を分離する慣習的プロテインAクロマトグラフィー法の不能の1つの結果は、5%未満の凝集物を含有する非凝集Fcペプチドの調製物を得るためにサイズ排除クロマトグラフィー若しくはイオン交換クロマトグラフィー技術のような数種の付加的な精製過程が必要とされることである。この後処理は高価であり、時間を要し、そして総パーセント収率値を70%より十分下に低下させる。
【0007】
従って、付加的な精製過程の使用を伴わない、5%未満の凝集物を含有する精製されたFcペプチド鎖調製物を70%以上の総パーセント収率値で製造する、プロテインAクロマトグラフィーに基づく精製方法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一局面は、非凝集Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチド鎖を含んでなる水性サンプルを提供する段階;不溶性物質に結合されかつサンプル中の非凝集Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチド鎖の総質量の70%以上を結合することが可能なプロテインAペプチド鎖の集団と該サンプルを接触させる段階;10mMないし129mMの塩濃度および3.24ないし3.93のpHを有する水性溶液とプロテインAペプチド鎖の該集団を接触させる段階;ならびに、プロテインAペプチド鎖の集団との接触から該水性溶液を除去して5%未満の凝集Fcペプチド鎖を含んでなる精製された非凝集Fcペプチド鎖の溶液を生じる段階を含んでなる、精製された非凝集Fcペプチド鎖の溶液の製造方法である。
【0009】
本発明の別の局面は、非凝集Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチド鎖を含んでなる水性サンプルを提供する段階;不溶性物質に結合されかつサンプル中の非凝集Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチド鎖の総質量の70%以上を結合することが可能なプロテインAペプチド鎖の集団と該サンプルを接触させる段階;41mMないし97mMの塩濃度および3.42ないし3.74のpHを有する水性溶液とプロテインAペプチド鎖の該集団を接触させる段階;ならびに、プロテインAペプチド鎖の集団との接触から該水性溶液を除去して5%未満の凝集Fcペプチド鎖を含んでなる精製された非凝集Fcペプチド鎖の溶液を生じる段階を含んでなる、精製された非凝集Fcペプチド鎖の溶液の製造方法であり;Fcペプチド鎖の総パーセント収率は70%以上である。
【0010】
本発明の別の局面は、非凝集Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチド鎖を含んでなる水性サンプルを提供する段階;不溶性物質に結合されかつサンプル中の非凝集Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチド鎖の総質量の70%以上を結合することが可能なプロテインAペプチド鎖の集団と該サンプルを接触させる段階;55mMないし85mMの塩濃度および3.50ないし3.66のpHを有する水性溶液とプロテインAペプチド鎖の該集団を接触させる段階;ならびに、プロテインAペプチド鎖の集団との接触から該水性溶液を除去して、5%未満の凝集Fcペプチド鎖を含んでなる精製された非凝集Fcペプチド鎖の溶液を生じる段階を含んでなる、精製された非凝集Fcペプチド鎖の溶液の製造方法であり;Fcペプチド鎖の総パーセント収率は70%以上である。
【0011】
本発明の別の局面は、非凝集ミメティボディFcペプチド鎖および凝集ミメティボディFcペプチド鎖を含んでなる水性サンプルを提供する段階;不溶性物質に結合されかつサンプル中の非凝集ミメティボディFcペプチド鎖および凝集ミメティボディFcペプチド鎖の総質量の70%以上を結合することが可能なプロテインAペプチド鎖の集団と該サンプルを接触させる段階;55mMないし85mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度および3.50ないし3.66のpHを有する水性溶液とプロテインAペプチド鎖の該集団を接触させる段階;ならびに、プロテインAペプチド鎖の集団との接触から該水性溶液を除去して、5%未満の凝集ミメティボディFcペプチド鎖を含んでなる精製された非凝集ミメティボディFcペプチド鎖の溶液を生じる段階を含んでなる、精製された非凝集ミメティボディFcペプチド鎖の溶液の製造方法であり;ミメティボディFcペプチド鎖の総パーセント収率は70%以上である。
【0012】
[発明の詳細な記述]
本明細で引用される限定されるものでないが特許および特許出願を挙げることができる全刊行物は、引用することによりあたかも完全に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0013】
本明細書および請求の範囲で使用されるところの単数形「ある(a、and)」および「該(the)」は、文脈が別の方法で明瞭に指示しない限り複数の言及を包含する。従
って、例えば、「1ペプチド鎖」への言及は1若しくはそれ以上のペプチド鎖への言及であり、そして当業者に既知のその同等物を包含する。
【0014】
別の方法で定義されない限り、本明細書で使用される全部の技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されると同一の意味を有する。本明細書に記述されるものに類似若しくは同等のいかなる組成物および方法も本発明の実務若しくは試験で使用し得るとは言え、例示的組成物および方法を本明細書に記述する。
【0015】
「凝集物」という用語は、付加的なFcペプチド鎖が4本のFcペプチド鎖に共有若しくは非共有結合されているかどうかに依存して4本以上の個別のFcペプチド鎖を含んでなる分子若しくは複合体を意味している。凝集物の形態の分子若しくは複合体は非凝集形態より大きい分子量を有する。
【0016】
「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体、マウス、ヒト、ヒト化およびキメラモノクローナル抗体を包含するモノクローナル抗体、ならびに抗体フラグメント、部分若しくはバリアントを含んでなる免疫グロブリンすなわち抗体分子を意味している。抗体は構成的に発現されかつプラズマ細胞により分泌される分泌型タンパク質である。抗体は、ハイブリドーマ生成のような標準的方法により不死化したプラズマ細胞を使用して、または、骨髄腫細胞のような不死化B細胞若しくはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、植物細胞および昆虫細胞のような他の細胞型への抗体Hおよび/若しくはL鎖遺伝子のトランスフェクションによってもまた製造し得る。
【0017】
「Fcペプチド鎖」という用語は、プロテインAを結合するのに十分な免疫グロブリンH鎖C2定常領域ペプチド鎖および免疫グロブリンH鎖C3定常領域ペプチド鎖の一部分を含んでなるペプチド鎖を意味している。こうした定常領域ペプチド鎖は、IgGのようないずれのアイソタイプの抗体H鎖由来であってもよく、および「Fcドメイン」ともまた称されることがある(例えば図1を参照されたい)。Fcペプチド鎖は、プロテインAを結合するのに十分な免疫グロブリンH鎖C2定常領域ペプチド鎖および免疫グロブリンH鎖C3定常領域ペプチド鎖の双方を含んでなる個別のペプチド鎖(例えば一本鎖抗体)、または2、3、4若しくはそれ以上のこうした個別のペプチド鎖の会合(例えば抗体若しくはミメティボディ分子の会合)でありうる。Fcペプチド鎖は、例えば、Fcドメインを含んでなる抗体分子、Fcドメインを含んでなるFc融合ペプチド鎖、およびFcドメインを含んでなるミメティボディペプチド鎖を包含する分子の一属を表す(図1)。「Fcペプチド鎖」という用語は、非凝集Fcペプチド鎖、凝集Fcペプチド鎖、若しくは凝集および非凝集Fcペプチド鎖双方を記述するのに使用し得る。
【0018】
本明細書で使用されるところの「H鎖」という用語は、免疫グロブリンおよび抗体分子中で見出される2つの型のポリペプチド鎖の分子量に関してより重いほうを意味している。
【0019】
「ミメティボディ」という用語は、一般式(I):
(M−L−V2−H−C2−C3)(t)
(I)
ここでMは生物活性ペプチド鎖であり、Lはペプチド鎖リンカーであり、V2は免疫グロブリン可変領域のC末端の一部分であり、Hは免疫グロブリン可変ヒンジ領域ペプチド鎖の一部分であり、C2は免疫グロブリンH鎖C2定常領域ペプチド鎖であり、およびC3は免疫グロブリンH鎖C3定常領域ペプチド鎖であり、ならびにtは4未満若しくはこれに等しい整数である、
を含んでなるペプチド鎖を意味している。ミメティボディのC2−C3部分は抗体Fcドメインの一部分を含んでなり、そしてプロテインAにより結合され得るFcペプチド
鎖である。ミメティボディ分子はFcドメインを含んでなるペプチド鎖の一属を代表する。Fcペプチド鎖のこの属は、例えばFcドメインを含んでなる抗体分子、Fcドメインを含んでなるFc融合ペプチド鎖、およびFcドメインを含んでなるミメティボディペプチド鎖を包含する(図1)。
【0020】
「ペプチド鎖」という用語は、ペプチド結合により連結されて1本の鎖を形成する最低2アミノ酸残基を含んでなる分子を意味している。50以上のアミノ酸の大型ペプチド鎖は「ポリペプチド」若しくは「タンパク質」と称されうる。50未満のアミノ酸の小型ペプチド鎖は「ペプチド」と称されうる。
【0021】
「パーセント凝集物」という値は、サンプル中に存在する凝集および非凝集双方の全Fcペプチド鎖の質量での総量に関するサンプル中に存在する凝集Fcペプチド鎖の質量パーセンテージである。この値は、実験データを使用して決定しうるか、若しくは実験データの代表的なデータのセットに当てはめた等式を使用して数学的にコンピュータ計算しうる。
【0022】
「総パーセント収率」という値は、精製段階にかけられるサンプル中に当初存在する非凝集Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチド鎖の質量での総量に関する精製段階により生じられるサンプル中に存在する非凝集Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチド鎖の質量パーセンテージである。この値は、実験データを使用して決定しうるか、若しくは実験データの代表的なデータ組に当てはめた等式を使用して数学的にコンピュータ計算しうる。
【0023】
「総パーセント収率」という値は「特異的パーセント収率」という値と異なる。「特異的パーセント収率」という値は、精製段階にかけられるサンプル中に当初存在する特定のFcペプチドの質量での総量に関する精製段階により生じられるサンプル中に存在する特定のFcペプチド鎖の質量パーセンテージである。例えば、特定のFcペプチド鎖が非凝集Fcペプチド鎖である場合には、「特異的パーセント収率」値は、精製段階にかけられるサンプル中に当初存在する特定のFcペプチドの質量での総量に関する精製段階により生じられるサンプル中に存在する非凝集Fcペプチド鎖の質量パーセンテージである。
【0024】
「総パーセント収率」値は、望ましいまたは所定の精製段階若しくは過程により生じられる結果を記述するために、「パーセント凝集物」値のような他のパラメータとともに本発明の技術領域で典型的に使用される。
【0025】
「集団」という用語は2本のプロテインAペプチド鎖のような最低2品目を意味している。
【0026】
「プロテインA」という用語は、1本のFcペプチド鎖を結合することが可能である配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5に対する最低85%の同一性をもつ配列を含んでなるペプチド鎖を意味している。配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のプロテインAのFcペプチド鎖結合E、D、A、BおよびCドメインをそれぞれ表す。2ペプチド鎖間の同一性は、Vector NTI v.9.0.0(Invitrogen Corp.、カリフォルニア州カールズバッド)のAlignXモジュールのデフォルトの設定を使用する対(pair−wise)アミノ酸配列アライメントにより決定し得る。AlignXは対様式でアミノ酸配列アライメントを実行するのにCLUSTALWアルゴリズムを使用する。
【0027】
「非凝集」という用語は上で定義されたところの凝集物を欠くことを意味している。例えば、抗体若しくはミメティボディ分子は、4本の個別のFcペプチド鎖をその非凝集形
態で含み得る(図1)が、しかし4本以上の個別のFcペプチド鎖をその凝集形態で含むことができる。
【0028】
本発明は精製されたFcペプチド鎖の溶液の有用な製造方法を提供する。該方法は、また抗体Fcドメインを含んでなるより低分子量の非凝集ペプチド鎖から抗体Fcドメインを含んでなる高分子量の凝集ペプチド鎖を分離するのにプロテインAクロマトグラフィーを使用する。本発明の方法により得られる精製されたFcペプチド鎖の溶液は、70%以上という総パーセント収率で5%未満の凝集物を含有する。これらの結果は、精製の間に使用される水性溶液中に洗剤若しくはポリマーを包含することなく達成し得る。
【0029】
本発明の一局面は、非凝集Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチド鎖を含んでなる水性サンプルを提供する段階;不溶性物質に結合されかつサンプル中の非凝集Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチド鎖の総質量の70%以上を結合することが可能なプロテインAペプチド鎖の集団と該サンプルを接触させる段階;10mMないし129mMの塩濃度および3.24ないし3.93のpHを有する水性溶液とプロテインAペプチド鎖の該集団を接触させる段階;ならびに、プロテインAペプチド鎖の集団との接触から該水性溶液を除去して5%未満の凝集Fcペプチド鎖を含んでなる精製された非凝集Fcペプチド鎖の溶液を生じる段階を含んでなる、精製された非凝集Fcペプチド鎖の溶液の製造方法であり;Fcペプチド鎖の総パーセント収率は70%以上である。
【0030】
凝集Fcペプチド鎖および非凝集Fcペプチド鎖を含んでなる水性サンプルは多様な供給源から得ることができる。例えば、こうしたサンプルは、細胞により媒体中に分泌された凝集および非凝集Fcペプチド鎖を含有する細胞培地でありうる。あるいはこうしたサンプルは細胞培養物ライセートでありうる。こうしたサンプルは、水性溶液で再構成される凍結乾燥Fcペプチドのような他の供給源から得ることができる。凝集および非凝集Fcペプチド鎖を産生する細胞は、Fcペプチド鎖を発現することが可能な原核生物、真核生物若しくは古細菌(archeal)細胞でありうる。
【0031】
本発明の方法を使用してFcドメインを含んでなるFcペプチド鎖分子の一属を精製しうる。Fcペプチド鎖分子のこの属は、例えばFcドメインを含んでなる抗体分子、Fcドメインを含んでなるFc融合ペプチド鎖およびFcドメインを含んでなるミメティボディペプチド鎖を包含する(図1)。ミメティボディ分子は、Fcドメインを含んでなるペプチド鎖の一属の例示的代表である。
【0032】
水性サンプル中の非凝集Fcペプチドは4本を超えない個別のFcペプチド鎖を含んでなる。例えば、非凝集Fcペプチドは2個の抗体H鎖分子および2個の抗体L鎖分子よりなる抗体分子でありうる(図1)。こうした分子は4本を超えないFcペプチド鎖を含有する。1本のFcペプチド鎖が第一のH鎖に存在し、そして1本が第二のH鎖に存在する。
【0033】
非凝集Fcペプチドはまた、1個の抗体H鎖分子および1個の抗体L鎖分子よりなる、ときに抗体半分子(half−molecule)と称される一本鎖抗体分子でもありうる。こうした分子は、それがただ1本の抗体H鎖を含有するために4本を超えないFcペプチド鎖を含有する。
【0034】
非凝集Fcペプチドは、目的の第二のペプチド鎖に融合された1個のFcドメインを含んでなる2本の同一のペプチド鎖よりなるFc融合分子でもまたありうる(図1)。こうした分子は4本を超えないFcペプチド鎖を含有する。1本のFcペプチド鎖が第一のH鎖に存在し、そして1本が第二のH鎖に存在する。
【0035】
非凝集Fcペプチドは一般式(M−L−V2−H−C2−C3)の4本までのペプチド鎖よりなるミメティボディ分子でもまたありうる。こうした分子は4本を超えないFcペプチド鎖を含有する。
【0036】
非凝集ミメティボディ分子は、図1におよび上の記述により示されるところの抗体分子およびFc融合分子の双方の特徴を含んでなる。ミメティボディ分子の抗体様特徴は、抗体由来可変領域V2ペプチド鎖配列、抗体由来ヒンジペプチド鎖配列、抗体由来H鎖C2定常領域ペプチド鎖配列、および抗体由来C3定常領域ペプチド鎖配列を包含する。ミメティボディ分子のFc融合分子様特徴は、生物活性Mペプチド鎖、抗体H鎖C2定常領域ペプチド鎖配列および抗体C3定常領域ペプチド鎖配列を包含する。結果、ミメティボディ分子は、抗体およびFc融合クラスの分子の双方(図1)ならびにこれらの分子種を含んでなるFcペプチド鎖の属(図1)を代表する。
【0037】
本発明の方法において、水性サンプル中の凝集Fcペプチドは4本以上の個別のFcペプチド鎖を含んでなる。例えば、凝集Fcペプチド鎖は、会合されたようになった2個以上の抗体分子、2個以上のミメティボディ分子若しくは2個以上のFc融合分子を含みうる。こうした分子は、共有結合、疎水性相互作用若しくは他の非共有結合のようないずれかの機構により会合したようになることができる。
【0038】
3抗体分子の凝集物は6本の抗体H鎖および6本の抗体L鎖を含みうる。こうした分子は各抗体H鎖について1本の6本のFcペプチド鎖を含んでなり、そしてそれが4本以上の個別のFcペプチド鎖を含有するために凝集Fcペプチド鎖である。
【0039】
3ミメティボディ分子の凝集物は6本の抗体由来H鎖C2−C3ペプチド鎖を含みうる。こうした分子は各H鎖C2−C3ペプチド鎖について1本の6本のFcペプチド鎖を含んでなり、そしてそれが4本以上の個別のFcペプチド鎖を含有するために凝集Fcペプチド鎖である。
【0040】
Fc融合分子の凝集物は、目的の第二のペプチド鎖に融合された1個のFcドメインをそれぞれが含んでなる6本の同一ペプチド鎖を含みうる。こうした分子は各ペプチド鎖について1本の6本のFcペプチド鎖を含んでなり、そしてそれが4本以上の個別のFcペプチド鎖を含有するために凝集Fcペプチド鎖である。
【0041】
当業者は、上で例示されたもの(例えば4個若しくはそれ以上の抗体分子の凝集物)以外のより高次の凝集物分子を認識するであろう。加えて、当業者は、抗体、ミメティボディ若しくはFc融合半分子の2個の全分子との会合は、こうした分子が5本の個別のFcペプチド鎖を含むことができるために、凝集Fcペプチドを生じることができることを認識するであろう。こうした分子は、それが4本以上の個別のペプチド鎖を含有するために凝集Fcペプチド鎖である。
【0042】
本発明の方法での使用に適する不溶性物質に結合されたプロテインAペプチド鎖の集団(プロテインA複合物質)は多くの異なる形式で提供されうる。1つのこうした形式は例えばプロテインAクロマトグラフィー樹脂のようなビーズである。典型的には、こうしたビーズ様樹脂をクロマトグラフィーのためのカラムに負荷する。Mabselect(R)(GE Healthcare UK Ltd.、英国バーミンガムシャー州リトル・シャルフォント)プロテインAクロマトグラフィー樹脂はこうした形式の一例である。Mabselect(R)プロテインAクロマトグラフィー樹脂は、40ないし130μMの直径(平均直径は85μMである)をもつ不溶性の高度に架橋したアガロース素材にエポキシカップリング化学を介し複合された組換え発現されたプロテインAペプチド鎖の集団を含んでなる。Mabselect(R)プロテインAクロマトグラフィー樹脂は媒体
1mlあたりおよそ30mgのヒトIgG抗体の動的結合能力を有する。動的結合能力は、20cmの床高をもつカラム中で500cm/hの移動相速度での前端分析により10%破過で測定される。Mabselect SuRe(R)(GE Healthcare UK Ltd.、英国バーミンガムシャー州リトル・シャルフォント)はこうした形式の別の例である。Mabselect SuRe(R)プロテインAクロマトグラフィー樹脂はMabselect(R)に本質的に同一であるが、しかし塩基性pHを耐えるプロテインAペプチド鎖分子に複合されている。他の形式は、プレート若しくはキャピラリーとして供給される不溶性物質にプロテインA分子の集団が直接若しくは間接的に結合されているプレートおよびキャピラリーの形式である。当業者は、不溶性物質に結合されたプロテインAペプチド鎖の集団を提供するのに適する他の形式およびガラス、金属若しくは有機ポリマーのような不溶性物質を認識するであろう。
【0043】
本発明の方法において、不溶性物質に結合されたプロテインAペプチド鎖は、Fcペプチド鎖を結合することが可能である配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5に対する最低85%の同一性をもつ配列を含んでなる。配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4若しくは配列番号5は、それぞれ、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)プロテインAのFcペプチド鎖結合E、D、A、BおよびCドメインのアミノ酸配列を表す。これらの配列のそれぞれは個別にプロテインAペプチド鎖の例である。配列番号6のアミノ酸残基1ないし441はプロテインAペプチド鎖の別の例である。配列番号6のアミノ酸配列は、E、D、A、BおよびCドメインにわたる黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)プロテインAの成熟形態のFcペプチド鎖結合細胞外ドメインの一部分に対応する。こうしたプロテインAペプチド鎖の他の例は、単離された黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)株により産生されるか若しくは塩基性pH値に対する抵抗性のような特定の特性を有するように改変されているプロテインAペプチド鎖を包含する。当業者は、こうしたプロテインAペプチド鎖の付加的な例を認識するであろう。
【0044】
本発明の方法において典型的に、不溶性プロテインA複合物質は、凝集および非凝集Fcペプチドを含んでなる水性サンプルとの接触前に適切な緩衝溶液で平衡化する。pH7.4で50mM NaHPOおよび150mM NaClを含有する溶液が1種のこうした平衡緩衝液の一例である。pH7.4で50mM NaHPO、150mM NaClおよび0.1%ポリソルベート−80を含有する溶液が1種のこうした平衡緩衝液の別の例である。9.0のpHで0.05Mホウ酸、4.0M NaClを含有する溶液がこうした平衡緩衝液の別の例である。プロテインA複合物質は、平衡化が起こるのに十分な時間該物質を特定の緩衝溶液と接触させることにより該溶液で平衡化し得る。平衡化後に、プロテインA複合物質を平衡緩衝液若しくは同等な溶液で洗浄して微粒子若しくは汚染分子のような残余の不純物を除去しうる。本発明の方法での使用のためのプロテインA複合物質を製造するのに適する付加的な平衡緩衝液組成物および技術は当業者に公知である。
【0045】
水性サンプル中の凝集および非凝集Fcペプチドはある範囲の条件下でプロテインA複合物質に結合することができる。プロテインA複合物質と接触させた水性サンプル中の凝集および非凝集Fcペプチドは、典型的に、該サンプルのpH値が約6.0ないし8.0である場合にこうした物質に結合することができる。最適の結合に必要な接触の時間は経験的に容易に決定され、そして典型的には約数分である。
【0046】
標準的緩衝真核生物細胞培地組成物を含んでなる水性サンプル中の凝集および非凝集FcペプチドはプロテインA複合物質に結合することができる。約5.6ないし7.4のpH値をもつ血清を含まないAIM−V(R)細胞培地(Invitrogen Inc.、カリフォルニア州カールズバッド)およびRoswell Park Memoria
l Institute 1640(RPMI−1640)細胞培地は、こうした標準的緩衝真核生物細胞培地組成物の2例である。7.4のpH値のリン酸緩衝生理的食塩水(PBS)のような他の水性組成物中に存在する凝集および非凝集Fcペプチドもまた、プロテインA複合物質に結合することができる。
【0047】
いくつかの例において、プロテインA複合物質へのFcペプチドの結合を助長するために塩、洗剤若しくは他の分子を水性サンプル若しくは溶液に添加することが必要でありうる。当業者は、プロテインA複合物質と接触しかつサンプル中に存在するFcペプチド鎖の結合を確保するのに適する付加的な水性サンプルおよび溶液組成物を認識するであろう。
【0048】
本発明の方法において、不溶性物質に結合されたプロテインAペプチド鎖の集団は、サンプル中に存在する非凝集性Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチド鎖の総質量の70%以上を結合することが可能でなければならない。標準的方法を使用してこうしたプロテインA複合物質の結合能力を測定し得る。例えば、標準的サイズ排除HPLC(SE−HPLC)および標準的タンパク質アッセイ法を使用して、プロテインA複合物質と接触前の水性サンプルの非凝集Fcペプチド含量を測定し得る。ある容量の水性サンプルをその後、結合が起こるのに十分な時間プロテインA複合物質と接触させ得る。水性サンプルをその後プロテインA複合物質との接触から除去し、そして生じる水性サンプルの非凝集Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチド鎖含量を測定する。プロテインA複合物質は、該生じるサンプルが、水性サンプル中に当初存在した非凝集Fcペプチド鎖および非凝集Fcペプチド鎖の総質量の30%未満を含有する場合に、サンプル中に存在する非凝集Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチド鎖の総質量の70%以上を結合することが可能である。当業者は、プロテインA複合物質の結合能力を測定するための動的結合能力測定技術のような他の技術を認識するであろう。加えて、当業者は、プロテインA複合物との接触の時間およびFcペプチド鎖を含んでなる水性サンプルの塩濃度若しくはpHのような他のパラメータを、所定のプロテインA複合物質の結合能力および本発明の方法での使用のための該物質の適合性を最適化するように調節し得ることを認識するであろう。
【0049】
本発明の方法において、集団不溶性物質に結合されたプロテインAペプチド鎖を、10mMないし129mMの塩濃度および3.24ないし3.93のpHを有する水性溶液と接触させる。これはプロテインA複合物質への凝集および非凝集Fcペプチド鎖双方の結合をもたらす。10mMないし129mMの塩濃度および3.24ないし3.93のpHを有する水性溶液との接触が、プロテインAペプチド鎖に結合された非凝集Fcペプチド鎖を、結合されたFcペプチド鎖凝集物より速い速度で水性溶液に進入させると考えられる。該結果は、5%未満の凝集Fcペプチド鎖を含んでなる精製されたFcペプチド鎖の溶液が70%以上のFcペプチド鎖の総パーセント収率で得られることである。
【0050】
本発明の方法において、10mMないし129mMの塩濃度および3.24ないし3.93のpHを有する水性溶液を、段階的勾配、非段階的勾配若しくは混成勾配の使用によりプロテインA複合物質と接触させ得る。段階的勾配の各「段階」は、特定の組成の水性溶液とプロテインA分子の集団を特定時間接触させることを必要とする。段階的勾配は、プロテインA複合物質と接触される10mMないし129mMの塩濃度および3.24ないし3.93のpHを有する水性溶液をもたらす単一若しくは複数段階を含みうる。非段階的勾配での勾配は直線的若しくは非直線的(例えば指数関数的)であることができ、また、プロテインA複合物質と接触される水性溶液の組成は、ある時間にわたり直線的若しくは非直線的様式で連続的に変動する。非段階的勾配は、該非段階的勾配の適用の間の特定の時間点でプロテインA複合物質と接触される10mMないし129mMの塩濃度および3.24ないし3.93のpHを有する水性溶液をもたらす。段階的勾配および非段階的勾配を組合せて混成勾配を生成してもまたよい。当業者は、10mMないし129mM
の塩濃度および3.24ないし3.93のpHを有する水性溶液とのプロテインAペプチド鎖の集団の他の接触方法を認識するであろう。
【0051】
本発明の方法において、10mMないし129mMの塩濃度および3.24ないし3.93のpHを有する水性溶液を、凝集および非凝集Fcペプチド鎖を結合したプロテインA複合物質との接触から除去する。これは、5%未満の凝集Fcペプチド鎖を含んでなる精製されたFcペプチド鎖の溶液を70%以上のFcペプチド鎖の総パーセント収率値で生じる。これらの総パーセント収率およびパーセント凝集物値は、部分的に、プロテインA複合物質と接触された10mMないし129mMの塩濃度および3.24ないし3.93のpHを有する水性溶液の容量全体を収集することにより達成される。これは、10mMないし129mMの塩濃度および3.24ないし3.93のpHを有する水性溶液をカラムに充填されたプロテインA複合樹脂物質と接触させること、ならびに該カラムからその後溶離される水性溶液の容量全体を収集することにより、プロテインAクロマトグラフィーカラム上で達成し得る。こうして、該カラムから溶離される非凝集Fcペプチド鎖の集団全体を収集し、それは70%以上のFcペプチド鎖の総パーセント収率を確保する。重要なことに、溶離される水性溶液の容量全体が5%未満の凝集物を含有するような、プロテインA複合物質に結合されてカラム上に留まる凝集Fcペプチド鎖の塊。あるいは、当業者は、精製されたFcペプチド鎖の生じる溶液中のFcペプチド鎖の総パーセント収率が70%以上となることを確実にするために、プロテインAペプチド鎖の集団と接触される水性溶液のタンパク質濃度、伝導度、pHおよび非凝集Fcペプチド鎖含量のような他のパラメータをモニターしうることを認識するであろう。
【0052】
本発明の方法において、水性サンプル若しくは精製された溶液中の凝集Fcペプチド鎖および非凝集Fcペプチド鎖の含量は、標準的サイズ排除HPLC(SE−HPLC)およびタンパク質アッセイ法を使用して測定し得る。測定された値をその後使用して、本発明の方法により得られる精製されたFcペプチド鎖の溶液の凝集Fcペプチド含量を決定し得る。当業者は、精製されたFcペプチド鎖の溶液中の凝集Fcペプチド鎖のパーセンテージを確かめるのに使用し得る凝集および非凝集Fcペプチド鎖(例えば非変性ゲル電気泳動)ならびにタンパク質含量を検出するための他の技術を認識するであろう。
【0053】
本発明の方法において、水性サンプル若しくは精製されたFcペプチド鎖溶液中の非凝集Fcペプチド鎖含量を、上述されたところの標準的サイズ排除HPLC(SE−HPLC)およびタンパク質アッセイ法を使用して測定し得る。測定された値をその後使用して、本発明の方法により得られる精製されたFcペプチド鎖の溶液の非凝集Fcペプチド鎖含量、および本発明の方法にかけられる水性サンプルの非凝集Fcペプチド鎖含量を決定し得る。これらの値をその後使用して、本発明の方法により製造される精製されたFcペプチド鎖の溶液中のFcペプチド鎖の総パーセント収率を確かめることができる。これらの値を使用して、本発明の方法により製造される精製されたFcペプチド鎖の溶液中の非凝集Fcペプチド鎖の特異的パーセント収率もまた確かめることができる。
【0054】
本発明の方法の一態様において、不溶性物質に結合されたプロテインAペプチド鎖の集団は0.005cmないし0.05cmの理論段値に同等な高さを有する。理論段相当高さ(HETP)値はプロテインA複合物質のようなクロマトグラフィー物質の分離効率の尺度である。プロテインA複合物質のようなクロマトグラフィー物質のHETP値の決定方法は当該技術分野で公知である。こうした方法は、MartinとSynge、35 Biochem.J.1358(1941)にもまた記述されている。
【0055】
本発明の方法の別の態様において、塩はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩である。
【0056】
本発明の方法の別の態様において、非凝集Fcペプチド鎖はミメティボディである。本発明の本態様を使用して精製しうるミメティボディの一例は、配列番号7により記述されるアミノ酸配列をもつミメティボディである。当業者は他のミメティボディ分子を認識するであろう。
【0057】
本発明の別の局面は、非凝集Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチド鎖を含んでなる水性サンプルを提供する段階;不溶性物質に結合されかつサンプル中の非凝集Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチド鎖の総質量の70%以上を結合することが可能なプロテインAペプチド鎖の集団と該サンプルを接触させる段階;41mMないし97mMの塩濃度および3.42ないし3.74のpHを有する水性溶液とプロテインAペプチド鎖の該集団を接触させる段階;ならびにプロテインAペプチド鎖の集団との接触から該水性溶液を除去して5%未満の凝集Fcペプチド鎖を含んでなる精製された非凝集Fcペプチド鎖の溶液を生じる段階を含んでなる、精製された非凝集Fcペプチド鎖の溶液の製造方法であり;Fcペプチド鎖の総パーセント収率は70%以上である。
【0058】
本発明の方法の一態様において、不溶性物質に結合されたプロテインAペプチド鎖の集団は0.005cmないし0.05cmの理論段値に同等な高さを有する。
【0059】
本発明の方法の別の態様において、塩はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩である。
【0060】
本発明の方法の別の態様において、非凝集Fcペプチド鎖はミメティボディである。
【0061】
本発明の別の局面は、非凝集Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチド鎖を含んでなる水性サンプルを提供する段階;不溶性物質に結合されかつサンプル中の非凝集Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチド鎖の総質量の70%以上を結合することが可能なプロテインAペプチド鎖の集団と該サンプルを接触させる段階;55mMないし85mMの塩濃度および3.50ないし3.66のpHを有する水性溶液とプロテインAペプチド鎖の該集団を接触させる段階;ならびにプロテインAペプチド鎖の集団との接触から該水性溶液を除去して5%未満の凝集Fcペプチド鎖を含んでなる精製された非凝集Fcペプチド鎖の溶液を生じる段階を含んでなる、精製された非凝集Fcペプチド鎖の溶液の製造方法であり;Fcペプチド鎖の総パーセント収率は70%以上である。
【0062】
本発明の方法の一態様において、不溶性物質に結合されたプロテインAペプチド鎖の集団は0.005cmないし0.05cmの理論段値に同等な高さを有する。
【0063】
本発明の方法の別の態様において、塩はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩である。
【0064】
本発明の方法の別の態様において、非凝集Fcペプチド鎖はミメティボディである。
【0065】
本発明の別の局面は、非凝集ミメティボディFcペプチド鎖および凝集ミメティボディFcペプチド鎖を含んでなる水性サンプルを提供する段階;不溶性物質に結合されかつサンプル中の非凝集ミメティボディFcペプチド鎖および凝集ミメティボディFcペプチド鎖の総質量の70%以上を結合することが可能なプロテインAペプチド鎖の集団と該サンプルを接触させる段階;55mMないし85mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度および3.50ないし3.66のpHを有する水性溶液とプロテインAペプチド鎖の該集団を接触させる段階;ならびにプロテインAペプチド鎖の集団との接触から該水性溶液を除去して5%未満の凝集ミメティボディFcペプチド鎖を含んでなる精製された非凝集ミメティボディFcペプチド鎖の溶液を生じる段階を含んでなる、精製され
た非凝集ミメティボディFcペプチド鎖の溶液の製造方法であり;ミメティボディFcペプチド鎖の総パーセント収率は70%以上である。
【0066】
本発明の方法の一態様において、不溶性物質に結合されたプロテインAペプチド鎖の集団は0.005cmないし0.05cmの理論段値に同等な高さを有する。
【0067】
本発明は今や以下の特定の制限しない実施例を参照して記述されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】代表的Fcペプチド鎖分子の図。選択されたペプチド鎖の特徴を示す。
【図2】当てはめたTotalPercentYield(x,y)等式のプロット。総パーセント収率値はmMでの緩衝剤トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度およびpHの関数として示される。
【図3】当てはめたPercentAggregate(x,y)等式のプロット。パーセント凝集物値はmMでの緩衝剤トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度およびpHの関数として示される。
【図4】当てはめたObjectiveFunction2(x,y)等式のプロット。目的関数値はmMでの緩衝剤トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度およびpHの関数として示される。0以上の目的関数値は、70%以上の総パーセント収率値で質量で5%未満の凝集物を含んでなる、プロテインAクロマトグラフィーカラムのFcペプチド鎖溶離液サンプルに対応する。
【実施例1】
【0069】
凝集および非凝集抗体FcドメインのプロテインAクロマトグラフィー分離
プロテインAクロマトグラフィーは、特定の溶離条件を使用する場合に抗体Fcドメイン(Fcペプチド鎖)を含んでなる凝集および非凝集ペプチド鎖を分離するのに使用し得る(表1)。
【0070】
【表1】

【0071】
プロテインAクロマトグラフィーカラムに負荷した凝集Fcペプチド鎖の90%が、カラム溶離緩衝液が3.6のpHの50mM酢酸ナトリウムを含んだ場合に非凝集Fcペプチド鎖から分離された(表1)。
【0072】
プロテインAは、抗体Fcドメインがペプチド鎖中に存在しかつ到達可能である場合に
こうしたドメインを特異的に結合する。標準的条件下のプロテインAクロマトグラフィーは、双方の分類の分子がFcドメインを含んでなるために、凝集Fcペプチド鎖および非凝集Fcペプチド鎖双方の精製された混合物を生じる。結果、本発明において、プロテインAクロマトグラフィーカラムに負荷された混合物中に双方の分類のペプチド鎖が存在する場合に凝集Fcペプチド鎖から非凝集Fcペプチド鎖を分離し得るプロテインAクロマトグラフィーカラム溶離条件の選択(表1)は、当該技術分野で教示若しくは示唆されなかった。
【0073】
非凝集および凝集双方のFcペプチド鎖ならびに他のFc以外のペプチド鎖を含有する細胞培養物上清サンプルを、真核生物C1374C細胞を培養することにより製造した。C1374C細胞は組換えミメティボディペプチド鎖および他のペプチド鎖をこれらの細胞周囲の細胞培養培地中に分泌する。C1374C細胞により発現される非凝集ミメティボディペプチド鎖は、一般式(I)
(M−L−V2−H−C2−C3)(t)
(I)
ここで、Mはエリスロポエチン受容体結合分子であり、tは4未満若しくはそれに等しい整数であり、そして他の構成要素は上で定義されたとおりである
を有する。C1374C細胞により発現されるミメティボディのC2−C3部分は抗体Fcドメインの一部分を含んでなり、そしてプロテインAにより結合され得る。標準的なサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)分析は、C1374C細胞培養物上清が、Fcドメインを欠く他のペプチド鎖に加えて高分子量Fcドメインを含んでなるミメティボディ凝集物(例えばt>4を伴うミメティボディ分子)およびt≦4を伴う非凝集Fcドメインを含んでなるミメティボディ分子双方を含有する(表1)ことを示す。所望の非凝集ミメティボディ産物分子は一般式(M−L−V2−H−C2−C3)の4本のペプチド鎖よりなる。
【0074】
C1374C細胞は標準的細胞培養条件下に血清を含まない既知組成の培地中37℃で培養した。1mg/mlと2mg/mlの間の総タンパク質を含有するC1374C細胞培養物上清をその後、その後のクロマトグラフィー分析のため収集した。
【0075】
凝集および非凝集Fcペプチド鎖を分離するためのプロテインAクロマトグラフィーは後に続くとおり実施した。クロマトグラフィーは19℃と25℃との間の温度で実施した。最初に、Mabselect(R)(GE Healthcare UK Ltd.、英国バッキンガムシャー州リトル・シャルフォント)プロテインAクロマトグラフィーカラム中の樹脂を、pH7.4の50mM NaHPOおよび150mM NaClを含有する溶液で平衡化し、そして基礎A280nm値を測定した。A280nm値はカラム溶出物のような溶液中のペプチド鎖濃度の尺度である。第二に、1mlの上清あたり1.8mgの総タンパク質を含有するC1374C細胞培養物上清112.8mlをプロテインAクロマトグラフィーカラム上に負荷した。SE−HPLCは、負荷された上清サンプルが20.50mgの凝集Fcペプチド鎖を含有したことを示した。第三に、測定したA280nm値が基礎値に戻るまで、カラム中の樹脂をpH7.4の50mM NaHPOおよび150mM NaClを含有する溶液で初回洗浄した。第四に、カラムをpH5.0の100mM NaCHCOOの溶液で第二回洗浄し、そしてカラム溶出物サンプルを収集した。第五に、プロテインAクロマトグラフィーカラム樹脂に結合されたペプチド鎖を、pH3.6の50mM NaCHCOOの溶液で溶離し、そしてカラム溶出物サンプルを収集した。最後に、プロテインAクロマトグラフィーカラムに結合されたまま留まるペプチド鎖を、pH3.0の100mM NaCHCOOの溶液でカラム樹脂からストリップし(strip off)、そしてカラム溶出物サンプルを収集した。上清およびカラム溶出物サンプル双方中のタンパク質濃度をその後、標準的方法を使用して測定した。これらのサンプル中の凝集Fcペプチド鎖含量もまた標準的SE−HPLC
法を使用して測定した。
【0076】
プロテインA樹脂クロマトグラフィーカラムからFcペプチド鎖を溶離するためにpH3.6の50mM NaCHCOOの溶液を使用することは、C1374C細胞培養物上清中に当初存在した凝集Fcペプチド鎖の90%を非凝集Fcペプチド鎖から分離した(表1)。具体的には、20.50mgのFcペプチド鎖凝集物が、プロテインAクロマトグラフィーカラム上に負荷したC1374C細胞培養物上清サンプル中に存在したが、しかし2.06mgのみのFcペプチド鎖凝集物がpH3.6の50mM NaCHCOOの溶液で樹脂から溶離された。Fcペプチド鎖凝集物のこの2.06mgの質量は、溶離後に収集したサンプル中に存在する総ペプチド鎖質量の1.32%のみを構成した。溶離後に収集したサンプル中の残存するペプチド鎖質量は非凝集ミメティボディFcペプチド鎖を構成した。この残存するペプチド鎖質量は、プロテインAクロマトグラフィーカラム上に当初負荷された非凝集および凝集ミメティボディFcペプチド鎖の76.9質量%の総パーセント収率を表した。pH3.0の100mM NaCHCOOの溶液でプロテインAクロマトグラフィーカラム樹脂をストリップすることは、Fcペプチド鎖凝集物の17.42mgの回収をもたらした。この17.42mgの質量はカラム上に負荷されたFc凝集物質量の85.0%の特異的パーセント収率値を表した。一緒に、このデータは、プロテインAカラムクロマトグラフィーを使用して特定の塩濃度値およびpH値を溶離段階で使用する場合に凝集および非凝集Fcペプチド鎖を分離し得ることを示す。
【実施例2】
【0077】
プロテインAクロマトグラフィー後のFcペプチド鎖の総パーセント収率は溶離緩衝液の塩濃度およびpHの関数である
プロテインAクロマトグラフィーカラムからの溶離後に回収されるFcペプチド鎖の質量での総パーセント収率は、溶離緩衝液トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度およびpHの関数である(表2および図2)。
【0078】
【表2】

【0079】
実験データからの総パーセント収率値は、プロテインAクロマトグラフィーカラム上に当初負荷した上清サンプル中に存在する非凝集Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチドの質量での総量に関する溶離後に回収された精製されたサンプル中に存在する非凝集Fcペ
プチド鎖および凝集Fcペプチド鎖の質量パーセンテージを表す。総パーセント収率値はプロテインAクロマトグラフィーカラムからの溶離後の非凝集Fcペプチドおよび凝集Fcペプチド鎖分子双方の効率的回収の尺度である。これらの実験について、C1374C細胞培養、上清収集、プロテインAクロマトグラフィーカラム調製、カラム平衡化および上清負荷は上で実施例1に記述されたとおり実施した。クロマトグラフィーは19℃と25℃の間の温度で実施した。カラム中の樹脂は、測定されたA280nm値が基礎値に戻るまでpH7.4の50mM NaHPOおよび150mM NaClを含有する溶液で初回洗浄した。カラムをその後、pH5.0の100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩(NHC(CHOH)・CHCOOH;(JT Baker、ニュージャージー州フィリップスバーグ)の溶液で第二回洗浄した。プロテインAクロマトグラフィーカラム樹脂に結合されたペプチド鎖は、各個別のプロテインAクロマトグラフィー実験で、表2に示される濃度およびpH値のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩(NHC(CHOH)・CHCOOH;(JT Baker、ニュージャージー州フィリップスバーグ)の溶液で溶離した。溶離緩衝液の塩濃度およびpH値は双方とも各個別の実験で変動した。サンプル中のタンパク質濃度および凝集Fcペプチド鎖含量は、上で実施例1に記述されたところの標準的SE−HPLC法を使用して測定した。
【0080】
これらの実験から得た総パーセント収率値(z軸値)をその後、溶離緩衝液トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度(x軸値)およびpH値(y軸値)の関数としてプロットした(データは示されない)。標準的多項式曲線当てはめをその後、最小二乗法を使用して実施して、プロットした実験データに当てはめた最適化多項式を得た。
【0081】
得られた多項式を”TotalPercentYield”等式と呼称した。TotalPercentYield等式は、プロテインAクロマトグラフィーにより得られる総パーセント収率値(z軸)を、溶離緩衝液トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度(x軸値)およびpH(y軸値)双方の関数として数学的に記述し得ることを示す。TotalPercentYield関数は
TotalPercentYield(x,y)=−0.676x+0.209xy−62.4y+295.747
式中
x=トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度;mM
および
y=pH
である。
【0082】
TotalPercentYield関数のグラフプロットを図2に示す。これらの分析は、プロテインAクロマトグラフィーカラムからの溶離後のFcペプチド鎖の質量での総パーセント収率が、溶離緩衝液トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度およびpHの関数であることを示す(表2および図2)。
【0083】
生物製剤の製造のためにプロテインAカラムクロマトグラフィーを最適に使用するためには、TotalPercentYield値が70%以上でなければならない。TotalPercentYield関数により記述される関数の関係を使用して、こうした最適TotalPercentYield値(例えば>70%)を生じるプロテインAクロマトグラフィー条件を同定し得る。
【実施例3】
【0084】
プロテインAクロマトグラフィー溶離液中の凝集Fcペプチド鎖パーセントは溶離緩衝液の塩濃度およびpHの関数である
プロテインAクロマトグラフィーカラム精製後に回収される溶離されたサンプル中の凝集Fcペプチド鎖の質量パーセンテージは、溶離緩衝液トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度およびpHの関数である(表2および図3)。該実験データからのパーセント凝集物値はサンプル中に存在する凝集および非凝集双方の全Fcペプチド鎖の質量での総量に関する溶離後に回収された精製されたサンプル中に存在する凝集Fcペプチド鎖の質量パーセンテージを表す。パーセント凝集物値は、プロテインAクロマトグラフィー後に回収される溶離されたサンプル中の凝集Fcペプチド鎖汚染レベルの尺度である。差別的に述べられれば、パーセント凝集物は回収された溶離されたサンプルの純度の尺度である。
【0085】
溶離されたサンプルは上で実施例2に記述されたプロテインAクロマトグラフィー実験により製造したものであった。溶離緩衝液トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度およびpH値は双方とも各個別の実験で変動された(表2)。これらのサンプル中のタンパク質濃度および凝集Fcペプチド鎖含量は、上で実施例1に記述されたところの標準的SE−HPLC法を使用して測定した。
【0086】
これらの実験から得たパーセント凝集物値(z軸値)をその後、溶離緩衝液トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度(x軸値)およびpH値(y軸値)の関数としてプロットした(データは示されない)。標準的多項式曲線当てはめをその後、最小二乗法を使用して実施して、プロットした実験データに当てはめた最適化多項式を得た。
【0087】
得られた多項式を”PercentAggregate”等式と呼称した。PercentAggregate等式は、プロテインAクロマトグラフィーにより得たパーセント凝集物値(z軸)を、溶離緩衝液トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度(x軸値)およびpH(y軸値)双方の関数として数学的に記述し得ることを示す。PercentAggregate関数は
PercentAggregate(x,y)=0.00242x−0.0213x−0.0819xy−1.576y+0.551y+29.680
式中
x=トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度;mM
および
y=pH
である。
【0088】
PercentAggregate関数のグラフプロットを図3に示す。これらの分析は、プロテインAクロマトグラフィーカラム精製後に回収される溶離されたサンプル中の質量でのパーセント凝集物が、溶離緩衝液トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度およびpHの関数であることを示す(表2および図3)。
【0089】
生物製剤の製造のためプロテインAカラムクロマトグラフィーを最適に使用するために、PercentAggregate値は5%未満でなければならない。PercentAggregate関数により記述される関数の関係を使用して、こうした最適なPercentAggregate値(例えば<5%)を生じるプロテインAクロマトグラフィー条件を同定し得る。
【実施例4】
【0090】
最適の総パーセント収率およびパーセント凝集物値のためのプロテインAクロマトグラフィー溶離緩衝液の塩およびpH値の選択
最適のFcペプチド鎖総パーセント収率およびパーセント凝集物値をもつ溶離液サンプルを得るためのプロテインAクロマトグラフィー溶離緩衝液の塩およびpH値を、数学的
最適化問題解決技術を使用して同定した。
【0091】
第一に、Fcペプチド鎖を含んでなる生物製剤の製造のための最適のTotalPercentYield値を選択した。選択される最適のTotalPercentYield値は70%以上でなければならない(上の実施例2を参照されたい)。TotalPercentYield値のこの最適の組は、以下のファジー組:
【0092】
【数1】

【0093】
を使用して数学的に表し得る。上の実施例3に示されるとおり、TotalPercentYield値は、プロテインAクロマトグラフィー溶離緩衝液のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度およびpHの関数である。
【0094】
ファジー組m(TotalPercentYield)の値は2方法のいずれを使用しても計算し得る。第一の方法において、所定のプロテインAクロマトグラフィー溶離緩衝液塩濃度およびpH値でのm(TotalPercentYield)値は、個別のクロマトグラフィー実験から実験的に決定した総パーセント収率値(表2)を使用して計算する。第二の方法において、所定のプロテインAクロマトグラフィー溶離緩衝液塩濃度およびpH値のm(TotalPercentYield)値は、実験的に決定した総パーセント収率値データ組に最小二乗法により当てはめた多項TotalPercentYield関数を使用して計算し得る(表2)。
【0095】
ファジー組m(TotalPercentYield)の値は、総パーセント収率が所定の塩濃度およびpH値で70%未満である場合に0であることができる。ファジー組m(TotalPercentYield)の値は、総パーセント収率が70%以上かつ100%未満である場合に(TotalPercentYield−70)/(100−70)に等しい。例えば、総パーセント収率が80%である場合には、m(TotalPercentYield)は(80−70)/(100−70)すなわち0.3に等しい。あるいは、ファジー組m(TotalPercentYield)の値は、総パーセント収率が所定の塩濃度およびpH値で100%以上若しくはそれに等しい場合に1であることができる。
【0096】
第二に、Fcペプチド鎖を含んでなる生物製剤の製造のための最適のPercentAggregate値をその後選択した。選択される最適のPercentAggregate値は5%未満でなければならない(上の実施例2を参照されたい)。これは以下のファジー組:
【0097】
【数2】

【0098】
を使用して数学的に表し得る。
【0099】
上の実施例3に示されるとおり、PercentAggregate値は、プロテインAクロマトグラフィー溶離緩衝液のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度およびpHの関数である。
【0100】
該ファジー組m(PercentAggregate)の値は2方法のいずれを使用しても計算し得る。第一の方法において、所定のプロテインAクロマトグラフィー溶離緩衝液の塩濃度およびpH値でのm(PercentAggregate)値は、個別のクロマトグラフィー実験からの実験的に決定したパーセント凝集物値(表2)を使用して計算する。第二の方法において、所定のプロテインAクロマトグラフィー溶離緩衝液の塩濃度およびpH値でのm(PercentAggregate)値は、実験的に決定されるパーセント凝集物値のデータ組に最小二乗法により当てはめた多項PercentAggregate関数を使用して計算し得る(表2)。
【0101】
ファジー組m(PercentAggregate)の値は、パーセント凝集物が所定の塩濃度およびpH値で0%未満若しくはそれに等しい場合に1であることができる。ファジー組m(PercentAggregate)の値は、パーセント凝集物が0%以上かつ5%未満である場合に(5−PercentAggregate)/(5−0)に等しい。例えば、パーセント凝集物が2%である場合には、m(PercentAggregate)は(5−2)/(5−0)すなわち0.6に等しい。あるいは、ファジー組m(PercentAggregate)の値は、パーセント凝集物が所定の塩濃度およびpH値で5%以上若しくはそれに等しい場合に0であることができる。
【0102】
第三に、所定の溶離緩衝液の塩濃度およびpHについて生成されるm(TotalPercentYield)およびm(PercentAggregate)ファジー組値を使用して、以下の”ObjectiveFunction1”等式:
ObjectiveFunction1=[m(TotalPercentYield)×m(PercentAggregate)]1/2
を使用して目的関数値を計算した。計算された目的関数値(z軸)をその後、プロテインAクロマトグラフィー溶離緩衝液トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度(x軸およびpH(y軸)の関数としてプロットした(データは示されない)。標準的多項式曲線当てはめをその後最小二乗法を使用して実施して、プロットしたデータに当てはめた最適化多項式を得た。得られた多項式を”ObjectiveFunction2”等式と呼称した。
【0103】
プロットしたObjectiveFunction1値を計算するのに使用しかつ当てはめたObjectiveFunction2等式を生成するのに使用するm(TotalPercentYield)およびm(PercentAggregate)ファジー組値を、2供給源のいずれかからのデータを使用して計算した。例えば、プロットしたO
bjectiveFunction1値のいくつかは、実験的に決定した総パーセント収率およびパーセント凝集物値を使用して計算した(表2)。プロットした他のObjectiveFunction1値(表3)は、上述された表2のデータ組を当てはめた等式を使用して生成したTotalPercentYieldおよびPercentAggregate値を使用して計算した。表2および表3双方の目的関数値をその後プロットし、そして当てはめたObjectiveFunction2等式を生成するのに使用した。これは、当てはめた多項式を歪ませ得る当てはめたObjectiveFunction2等式を生成するのに使用したデータ組に「ギャップ」が存在しなかったことを確実にするために行った。
【0104】
【表3】

【0105】
【表4】

【0106】
【表5】

【0107】
ObjectiveFunction2等式は、プロテインAクロマトグラフィーにより得られるObjectiveFunction1値(z軸)が、溶離緩衝液トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度(x軸値)およびpH(y軸値)双方の関数として数学的に記述され得ることを示す。ObjectiveFunction2関数は
ObjectiveFunction2(x,y)=(3.58×10−5)exp[−0.5(0.00171x−0.1927xy+50.515y+0.4540x−348.52y+589.487)]
式中
x=トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度;mM
および
y=pH
である。ObjectiveFunction2等式は、69.0mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度および3.58のpHで0.466の極大を有する。
【0108】
数学的最適化の問題において、「目的関数」は、解決される場合に、目的関数から最大若しくは最適値を得ることを可能にする変数の値を示す等式である。ここで、上述されたObjectiveFunction2等式を使用して、プロテインAクロマトグラフィーを使用して質量で5%未満の凝集物を含んでなる精製されたFcペプチド鎖サンプルを70%以上のFcペプチド鎖の総パーセント収率で得ることを可能にする特定の溶離緩衝液の塩濃度(x変数)およびpH(y変数)値を同定した。
【0109】
例えば、0という目的関数値を生じるプロテインAクロマトグラフィー溶離緩衝液の塩濃度およびpH値(図4を参照されたい)は、所望の最適の特徴をもつ精製されたFcペプチド鎖サンプルを製造するのに使用し得ない。対照的に、1.0という最大の可能な目的関数値までの0.0以上の目的関数値を生じるプロテインAクロマトグラフィー溶離緩衝液の塩濃度およびpH値(上のObjectiveFunction1を参照されたい)は、所望の最適の特徴をもつ精製されたFcペプチド鎖サンプルを製造するのに使用し得る可能な値の範囲を表す。最良の可能な溶離緩衝液塩濃度およびpH値は、可能な限り1.0に近い目的関数値を生じるものである。ObjectiveFunction2等式について、最良の可能な溶離緩衝液塩濃度およびpH値は、0.466という極大値に可能な限り近い目的関数値を生じるものである。
【0110】
上のObjectivefunction2等式およびそのグラフ表示(図4)を使用して、質量で5%未満の凝集物を含んでなる精製されたFcペプチド鎖サンプルを70%以上のFcペプチド鎖の総パーセント収率で得るのに最適である特定のプロテインAクロマトグラフィー溶離緩衝液の塩濃度およびpH値若しくはこうした値の範囲を同定し得る。
【実施例5】
【0111】
最適のプロテインAクロマトグラフィー溶離緩衝液組成の選択における使用のためのObjectiveFunction2等式の検証
Objectivefunction2等式若しくはそのグラフ表示のいずれかを使用して同定される特定のプロテインAクロマトグラフィー緩衝液の塩濃度およびpH値は、質量で5%未満の凝集物を含んでなる精製されたFcペプチド鎖溶離液サンプルを70%以上のFcペプチド鎖の総パーセント収率で生じることが実験的に確認された(表5)。具体的には、得られた溶離されたサンプルは、84.7%以上のFcペプチドの質量での総パーセント収率(すなわち総パーセント収率値は84.7%以上であった)で質量で2.93%の凝集Fcペプチド鎖(すなわちパーセント凝集物値は2.93%であった)を含有した。
【0112】
この確認プロテインAクロマトグラフィー実験は後に続くとおり実施した。第一に、Objectivefunction2等式のグラフ表示(プロット)を使用して0.4以上のObjectiveFunction2値を同定した(z軸)(図4)。対応するトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度(x軸)およびpH(y軸)値をその後同定した。同定されたトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度値は65mMであった。同定されたpH値は3.55であった。
【0113】
3.55というpHで65mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩を含有する水性プロテインAクロマトグラフィー溶離緩衝液をその後調製した。この確認実験のためのC1374C細胞培養、上清収集、プロテインAクロマトグラフィーカラム調製、カラム平衡化、上清負荷およびカラム洗浄は上の実施例1に記述されたとおり実施した。クロマトグラフィーは19℃と25℃の間の温度で実施した。プロテインAクロマトグラフィーカラム樹脂に結合したペプチド鎖は、3.55のpHの65mMトリス(ヒドロキ
シメチル)アミノメタン酢酸塩を含有する溶離緩衝液でプロテインAクロマトグラフィーカラム樹脂から溶離した。プロテインAクロマトグラフィーカラムをその後、3.0のpHの0.1Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩の溶液でストリップした。サンプル中のタンパク質濃度、凝集Fcペプチド鎖含量および非凝集Fcペプチド鎖含量は、上の実施例1で記述されたところの標準的SE−HPLC法を使用して測定した。
【0114】
溶離液サンプルの分析は、該サンプルが、84.7%以上のFcペプチド鎖の質量での総パーセント収率(すなわち総パーセント収率は84.7%以上であった)で質量で2.93%の凝集Fcペプチド鎖を含有した(すなわちパーセント凝集物値は2.93%であった)ことを確認した。プロテインAクロマトグラフィーカラム上に当初負荷された細胞培養物上清は9.89%の凝集物を含有した。ストリップ後のカラムからの全体的非凝集Fcペプチド鎖特異的パーセント収率は91.3質量%であった。PercentAggregateおよびTotalPercentYield等式を使用して、3.55のpH(y値)の65mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩(x値)を含んでなる溶離緩衝液を使用するプロテインAクロマトグラフィーから生じる溶離液サンプル中のそれぞれパーセント凝集物値および総パーセント収率値を予測した。予測されたパーセント凝集物値は1.7%であり、そして予測された総パーセント収率値は78.5%であった。双方の値は、本検証実験の溶離液サンプルで実際に得られた総パーセント収率およびパーセント凝集物値に合理的に近い。
【0115】
これらの結果は、Objectivefunction2等式若しくはそのグラフ表示を使用して、質量で5%未満の凝集物を含んでなる精製されたFcペプチド鎖溶離液サンプルを70%以上のFcペプチド鎖の総パーセント収率で製造し得ることを示す(表5)。これらの結果は、プロテインAクロマトグラフィーを使用して非凝集Fcペプチド鎖から凝集Fcペプチド鎖を分離し得ることもまたさらに確認する。ここで論考される結果は、2種の異なるミメティボディ産生細胞株を使用する4回の独立に実施した検証実験を代表する。
【0116】
本発明は今や完全に記述されたので、付随する請求の範囲の技術思想若しくは範囲から離れることなくそれに対して多くの変更および改変をなし得ることが当業者に明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)非凝集Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチド鎖を含んでなる水性サンプルを提供する段階;
b)不溶性物質に結合されかつサンプル中の非凝集Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチド鎖の総質量の70%以上を結合することが可能なプロテインAペプチド鎖の集団と該サンプルを接触させる段階;
c)10mMないし129mMの塩濃度および3.24ないし3.93のpHを有する水性溶液とプロテインAペプチド鎖の該集団を接触させる段階;ならびに
d)プロテインAペプチド鎖の集団との接触から該水性溶液を除去して、5%未満の凝集Fcペプチド鎖を含んでなる精製された非凝集Fcペプチド鎖の溶液を生じる段階
を含んでなり、
Fcペプチド鎖の総パーセント収率が70%以上である、
精製された非凝集Fcペプチド鎖の溶液の製造方法。
【請求項2】
不溶性物質に結合されたプロテインAペプチド鎖の集団が0.005cmないし0.05cmの理論段値に同等な高さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
塩がトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
非凝集Fcペプチド鎖がミメティボディである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
a)非凝集Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチド鎖を含んでなる水性サンプルを提供する段階;
b)不溶性物質に結合されかつサンプル中の非凝集Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチド鎖の総質量の70%以上を結合することが可能なプロテインAペプチド鎖の集団と該サンプルを接触させる段階;
c)41mMないし97mMの塩濃度および3.42ないし3.74のpHを有する水性溶液とプロテインAペプチド鎖の該集団を接触させる段階;ならびに
d)プロテインAペプチド鎖の集団との接触から該水性溶液を除去して、5%未満の凝集Fcペプチド鎖を含んでなる精製された非凝集Fcペプチド鎖の溶液を生じる段階
を含んでなり、
Fcペプチド鎖の総パーセント収率が70%以上である、
精製された非凝集Fcペプチド鎖の溶液の製造方法。
【請求項6】
不溶性物質に結合されたプロテインAペプチド鎖の集団が0.005cmないし0.05cmの理論段値に同等な高さを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
塩がトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
非凝集Fcペプチド鎖がミメティボディである、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
a)非凝集Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチド鎖を含んでなる水性サンプルを提供する段階;
b)不溶性物質に結合されかつサンプル中の非凝集Fcペプチド鎖および凝集Fcペプチド鎖の総質量の70%以上を結合することが可能なプロテインAペプチド鎖の集団と該サンプルを接触させる段階;
c)55mMないし85mMの塩濃度および3.50ないし3.66のpHを有する水性溶液とプロテインAペプチド鎖の該集団を接触させる段階;ならびに
d)プロテインAペプチド鎖の集団との接触から該水性溶液を除去して、5%未満の凝集
Fcペプチド鎖を含んでなる精製された非凝集Fcペプチド鎖の溶液を生じる段階
を含んでなり、
Fcペプチド鎖の総パーセント収率が70%以上である、
精製された非凝集Fcペプチド鎖の溶液の製造方法。
【請求項10】
不溶性物質に結合されたプロテインAペプチド鎖の集団が0.005cmないし0.05cmの理論段値に同等な高さを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
塩がトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
非凝集Fcペプチド鎖がミメティボディである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
a)非凝集ミメティボディFcペプチド鎖および凝集ミメティボディFcペプチド鎖を含んでなる水性サンプルを提供する段階;
b)不溶性物質に結合されかつサンプル中の非凝集ミメティボディFcペプチド鎖および凝集ミメティボディFcペプチド鎖の総質量の70%以上を結合することが可能なプロテインAペプチド鎖の集団と該サンプルを接触させる段階;
c)55mMないし85mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン酢酸塩濃度および3.50ないし3.66のpHを有する水性溶液とプロテインAペプチド鎖の該集団を接触させる段階;ならびに
d)プロテインAペプチド鎖の集団との接触から該水性溶液を除去して、5%未満の凝集ミメティボディFcペプチド鎖を含んでなる精製された非凝集ミメティボディFcペプチド鎖の溶液を生じる段階
を含んでなり、
ミメティボディFcペプチド鎖の総パーセント収率が70%以上である、
精製された非凝集ミメティボディFcペプチド鎖の溶液の製造方法。
【請求項14】
不溶性物質に結合されたプロテインAペプチド鎖の集団が0.005cmないし0.05cmの理論段値に同等な高さを有する、請求項13記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−507583(P2010−507583A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533564(P2009−533564)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/081921
【国際公開番号】WO2008/049106
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(509087759)セントコア・オーソ・バイオテツク・インコーポレーテツド (77)
【Fターム(参考)】