説明

非同期転送モードにおける中継線の動的帯域割当方式

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は非同期転送モードにおける中継線の動的帯域割当方式に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の非同期転送モード(以下ATM)通信網においては、ATM通信方式の中継線に設けられた仮想パス(ここで仮想パスとは、物理的な伝送網上の任意のATM交換機間に論理的に経路と帯域とを定めた直通リンクである)は呼発生に関わらず網設計時に仮想パスの伝送容量が定められ、また、呼の受付可否判断は呼発生時にユーザからのトラヒック申告値を基に帯域幅を算出し、仮想パスの空き容量と比較することにより行われる。
【0003】次いで、受け付けた呼の品質を確保するために、端末の属性や通信情報のメディアに応じて転送処理の優先制御を行ったり、新たな仮想パスに接続中の呼を迂回させることにより、品質制御を行っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この従来の非同期転送モード通信方式においては、通信網に設けられた仮想パスの伝送容量が網設計時に定められるため、仮想パス毎の帯域利用が一定でなく、中継線の有効利用がなされず、また統計多重効果を考慮した仮想パスの伝送容量設定を行った場合に設定以上のセルが送出されると、セル廃棄率などの品質低下の影響が中継線全体に及ぶという問題点があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の非同期転送モードにおける中継線の動的帯域割当方式は、非同期転送モードの通信方式の中継線と任意の通信方式の端末とを収容する電子交換機において、前記中継線に複数の仮想パスを設定する仮想パス設定手段と、前記仮想パス毎に帯域を割り当てる帯域割当手段と、複数の前記仮想パスを2つに束ねた仮想パス群に通信品質によって分類された属性を付加する属性付加手段と、呼が発生した際に端末の属性や通信情報のメディア特性に応じた前記仮想パス群に属する仮想パスを選択する仮想パス選択手段と、前記仮想パスに割り当てられた帯域を基に前記呼の受付けの拒否を決定する呼受付拒否手段と、前記各仮想パス群に含まれる前記各仮想パスに予め割り当てた帯域の総和に応じて前記中継線上の前記仮想パス群に帯域を比例配分して割り当てる群帯域割当手段と、前記仮想パス群に付与した優先度に応じて前記中継線にセルを送出するセル送出手段と、前記仮想パス群毎に通過セル数を計数して通信情報の伝送量を監視する通信量監視手段と、前記中継線が塞がった際に一時的に前記セルを待ち合わせるセル待合わせ手段と、前記仮想パス群の待合わせ中のセル数および待合わせ時間を計測して前記仮想パス群の輻輳を監視する輻輳監視手段と、前記仮想パス群から前記中継線に送出する通信量を群帯域以下に抑える通信量抑制手段と、前記仮想パス群が輻輳した際に前記各仮想パス群の前記群帯域を変更する群帯域変更手段とを備え、前記仮想パスの帯域の総和が前記中継線の伝送帯域を上回るような帯域の割当を可能とすることを特徴とする。
【0006】そして、前記仮想パス群に付加する属性情報を分類する前記通信品質はセル遅延時間,セル廃棄率を含んでいる。
【0007】
【実施例】次に、本発明について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施例を示す電子交換機のブロック図、図2は図1に示す電子交換機の機能配置図、図3R>3,図4,図5は図1における仮想パス設定から仮想パス群帯域変更に至る処理フローを示すフローチャートで、図3は仮想パス設定から属性付加までの流れを示し、図4は図3の流れに続き呼発生から呼接続までの処理の流れを示し、図5はセル送出から群帯域変更に至る処理の流れを示す。
【0008】図1に示すように、本実施例では、ATMの通信方式を具備した電子交換機11,12において、ATMの中継線41に仮想パス51,52,53,54を設定する(図3に示すステップ301)。
【0009】仮想パスには、仮想パス毎に帯域の割当てを行い(ステップ302)、仮想パス51,52と53,54とを束ねて2つの仮想パス群71,72とし(ステップ303)、束ねた仮想パス群に通信品質によって分類された属性を付加する(ステップ304)。
【0010】また、呼発生時に、図2に示す呼処理部(以下CP)96は各端末(図1に示す音声端末(TEL101,102,201,202)、データ端末(DTE103,104,203,204))の属性や通信情報のメディアに応じて仮想パス群の選択を行い、仮想パスに割り当てられた帯域を基にCP96において呼の受付可否を決定し、公知の呼接続法に従って、例えば図1R>1におけるTEL101と仮想パス51との間に接続呼61を、TEL201と仮想パス51との間に接続呼65を、TEL102と仮想パス52との間に接続呼62を、TEL202と仮想パス52との間に接続呼66を、DTE103と仮想パス53との間に接続呼63を、DTE203と仮想パス53との間に接続呼67を、DTE104と仮想パス54との間に接続呼64を、DTE204と仮想パス54との間に接続呼68をそれぞれ設定する。
【0011】この図3に示す流れにより、TEL101とTEL201とを、TEL102とTEL202とを、DTE103とDTE203とを、DTE104とDTE204とをそれぞれ接続する。
【0012】図1において、中継線41に設定する2つの仮想パス群71,72に各仮想パスに予め割り当てた帯域の総和に応じて帯域を比例配分して割り当てる(図3R>3に示すステップ305)。
【0013】次に図2において、電子交換機10は端末100を端末インタフェース(以下U−IF)81に収容し、非同期転送モードの中継線400を中継線インタフェース(以下N−IF)82に収容している。
【0014】電子交換機10のクロスコネクト機構30において、クロスコネクト処理部(以下XP)97は仮想パススイッチ制御部(以下VPCTL)93を起動し、VPCTL93が非同期転送モードスイッチ(以下ATMSW)84の仮想パススイッチ(以下VPSW)86を接続することによりN−IF82と仮想パスインタフェース(以下V−IF)83との間に仮想パスという通信経路が設定される。
【0015】図3におけるステップ305に続いて電子交換機10の交換機構20が端末100の発信要求を受け付けると(ステップ401)、CP96は端末100の属性や通信情報のメディア特性から仮想パスを選択する(ステップ402)。
【0016】次に該当パスの有無を判定し(ステップ403)、該当パスが有れば発信した端末100から通信品質の要求を受信し(ステップ404)、通信情報のメディアに応じて通信品質(セル遅延時間,セル廃棄率)を決定してその通信品質に応じて仮想パスを選択し、仮想パスに割り当てられた帯域を基に受付の可否を決定する(ステップ405)。
【0017】そして受付可であれば(ステップ406でYES)、公知の交換手段によりチャネルスイッチ制御部(以下CHCTL)92を起動して、CHCTL92がATMSW84のチャネルスイッチ(以下CHSW)85を接続することによりU−IF81とV−IF83との間に接続呼という通信経路が設定される(ステップ407)。
【0018】この図4に示す流れにより、端末100は非同期転送モードの中継線400を介して通信が可能になる(ステップ408)。
【0019】また、ステップ403で該当パス無しのとき、またはステップ406で受付拒否のときには、公知の手段により発信不可を通知し(ステップ409)、呼接続は行われない(ステップ410)。
【0020】次に図2において、中継線400は端末100の属性や通信情報のメディア特性に応じた仮想パスを選択し、選択した仮想パスの帯域を基にCP96において呼の受付の可否を決定する。
【0021】信号処理部(以下SP)94,95では選択した仮想パス群に付与した優先度に応じて中継線400にセルを送出する(ステップ501)。
【0022】そして、SP94,95では、中継線400のセル数を計測して送出する通信量を監視し(ステップ502)、中継線400の閉塞を検出した際に(ステップ503でYES)、一時的にセルの待合わせ処理を行う(ステップ504)。
【0023】図1に示す中継線41の仮想パス群71,72の輻輳を監視して(ステップ505)、中継線輻輳を検出したときには(ステップ506でYES)、仮想パス群71,72に比例配分された帯域を変更する(ステップ507)。
【0024】この図5に示す流れを実施することにより、仮想パスの帯域の総和が中継線の伝送帯域を上回るような帯域の割当てを可能とする。
【0025】なお、ステップ503でNOのときはステップ504をスキップしてステップ505へ進み、また、ステップ506でNOのときはステップ507をスキップする。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、非同期転送モードの通信方式の中継線に複数の仮想パスを設け、仮想パス毎に帯域を割り当て、複数の仮想パスを2つに束ねてこの束ねた仮想パス群に通信品質によって分類された属性を付加し、仮想パス群が輻輳した際に、各仮想パス群の群帯域を変更することにより、仮想パスの帯域の総和が中継線の伝送帯域を上回るような帯域の割当てが可能になるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す電子交換機のブロック図である。
【図2】図1に示す電子交換機の機能配置図である。
【図3】図1における仮想パス設定から属性付加までの処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】図3の流れに続き呼発生から呼接続までの処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】セル送出から群帯域変更に至る処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
10,11,12 電子交換機
20,21,22 交換機構
30,31,32 クロスコネクト機構
41,400 中継線
51,52,53,54 仮想パス
61,62,63,64,65,66,67,68 接続呼
71,72 仮想パス群
81 端末インタフェース(U−IF)
82 中継線インタフェース(N−IF)
83 仮想パスインタフェース(V−IF)
84 非同期転送モードスイッチ(ATMSW)
85 チャネルスイッチ(CHSW)
86 仮想パススイッチ(VPSW)
91 スイッチ制御部(SWCTL)
92 チャネルスイッチ制御部(CHCTL)
93 仮想パススイッチ制御部(VPCTL)
94,95 信号処理部(SP)
96 呼処理部(CP)
97 クロスコネクタ処理部(XP)
100 端末
101,102,201,202 音声端末(TEL)
103,104,203,204 データ端末(DTE)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 非同期転送モードの通信方式の中継線と任意の通信方式の端末とを収容する電子交換機において、前記中継線に複数の仮想パスを設定する仮想パス設定手段と、前記仮想パス毎に帯域を割り当てる帯域割当手段と、複数の前記仮想パスを2つに束ねた仮想パス群に通信品質によって分類された属性を付加する属性付加手段と、呼が発生した際に端末の属性や通信情報のメディア特性に応じた前記仮想パス群に属する仮想パスを選択する仮想パス選択手段と、前記仮想パスに割り当てられた帯域を基に前記呼の受付けの拒否を決定する呼受付拒否手段と、前記各仮想パス群に含まれる前記各仮想パスに予め割り当てた帯域の総和に応じて前記中継線上の前記仮想パス群に帯域を比例配分して割り当てる群帯域割当手段と、前記仮想パス群に付与した優先度に応じて前記中継線にセルを送出するセル送出手段と、前記仮想パス群毎に通過セル数を計数して通信情報の伝送量を監視する通信量監視手段と、前記中継線が塞がった際に一時的に前記セルを待ち合わせるセル待合わせ手段と、前記仮想パス群の待合わせ中のセル数および待合わせ時間を計測して前記仮想パス群の輻輳を監視する輻輳監視手段と、前記仮想パス群から前記中継線に送出する通信量を群帯域以下に抑える通信量抑制手段と、前記仮想パス群が輻輳した際に前記各仮想パス群の前記群帯域を変更する群帯域変更手段とを備え、前記仮想パスの帯域の総和が前記中継線の伝送帯域を上回るような帯域の割当を可能とすることを特徴とする非同期転送モードにおける中継線の動的帯域割当方式。
【請求項2】 前記仮想パス群に付加する属性情報を分類する前記通信品質はセル遅延時間,セル廃棄率を含むことを特徴とする請求項1記載の非同期転送モードにおける中継線の動的帯域割当方式。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】第2740433号
【登録日】平成10年(1998)1月23日
【発行日】平成10年(1998)4月15日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−319562
【出願日】平成4年(1992)11月30日
【公開番号】特開平6−169316
【公開日】平成6年(1994)6月14日
【審査請求日】平成8年(1996)12月24日
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000232047)日本電気エンジニアリング株式会社 (47)
【参考文献】
【文献】特開 平3−119845(JP,A)
【文献】特開 平4−150439(JP,A)
【文献】電子情報通信学会論文誌,VOL.J72−B−I,NO.11 (1989−11−25),PP.904−916