説明

非対称形状を有する磁気ヘッドとそのシステム

【課題】非対称形状を有する磁気ヘッドとそのシステムを提供する。
【解決手段】磁気ヘッドは、一実施形態によると、主磁極の後縁の第1の側面から主磁極の前縁までの距離が、主磁極の後縁の第2の側面から主磁極の前縁までの距離とは異なるように突起部を有する主磁極、補助磁極、および主磁極と補助磁極を含む磁気回路に巻かれたコイルを含む。別の実施形態では、ディスクドライブシステムは、磁気記憶媒体、磁気媒体に書き込むための先に記載の少なくとも1つの磁気ヘッド、磁気ヘッドを支持するスライダ、および磁気ヘッドの動作を制御するための磁気ヘッドに連結された制御ユニットを含む。別のシステムおよびヘッドも提示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気記録に関し、より詳細には垂直シングル記録(shingled recording)に使用される非対称形状を有する磁気ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置用の高密度記録技術は、磁気記録ヘッドに内蔵される磁極の小型化の著しい進歩を含み、近年著しい進歩を遂げた。しかしながら磁気記録ヘッドにより生成される記録磁界の強度と磁極の容積との相関があるので、磁極のさらなる小型化により、記録磁界の強度の維持が一層困難になるという問題が生じる。
【0003】
この問題に対処する1つのやり方として熱アシスト記録が開発された。熱アシスト記録は、保磁力を低減するために、記録が行われるときに磁気記録媒体を加熱することにより機能する。熱アシスト記録は書き込みに必要な磁界強度を低減する記録方法である。また、最近になって、1Tb/inを越える記録密度を可能にするために回転トルクを利用する別の形態のアシスト記録としてマイクロ波アシスト記録システムが提案された。このシステムでは、高速で回転する高速着磁ロータが垂直磁気記録ヘッドの主磁極に隣接され、大きな磁気異方性を有する磁気記録媒体上にマイクロ波が照射され、データを磁気記録媒体上に記録する。発振器により発生されるマイクロ波の媒体への印加は、媒体内の磁気反転に必要な磁界が低減されることを意味する。これは、磁気記録ヘッドの主磁極により生成される記録磁界の強度が、マイクロ波を使用しない他の従来の装置に必要とされるものより小さくてよいということを示す。
【0004】
また、特許文献1と非特許文献1の両方に引用されるように、別の高密度記録システムとしてシングル記録システム(shingled recording system)が提案された。シングルシステムでは、磁気ヘッドにより磁気記録媒体に記録されるトラックが部分的に重なる。これにより、磁気記録装置は記録されるトラックより狭いトラックピッチを有することができる。記録ヘッドの磁極の幅が従来の装置のものより広い垂直磁気記録装置を使用することも可能であると考えられる。
【0005】
上記状況に照らすと、マイクロ波アシスト記録システム、シングル記録システム等の最近開発されたシステムにおいて動作する一方で十分な記録磁界強度を生成することができる磁気ヘッドを有することは有益であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,443,625号明細書
【特許文献2】特開平2006−323899号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】SRC「技術報告資料」第27号、2009年5月、田川、金井ら
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態では、磁気ヘッドは、主磁極の第1の側面の後縁(トレーリング方向の縁)から前縁(リーディング方向の縁)までの距離が、前記主磁極の第2の側面の後縁から前縁までの距離とは異なるように突起部を有する主磁極と、補助磁極と、前記主磁極と前記補助磁極を含む磁気回路に巻かれたコイルを含む。
【0009】
別の実施形態では、磁気ヘッドは、主磁極の第1の側面の後縁(トレーリング方向の縁)から前縁(リーディング方向の縁)までの距離が、前記主磁極の第2の側面の後縁から前縁までの距離とは異なるように突起部を有する主磁極と、前記補助磁極と、前記主磁極と前記補助磁極を含む磁気回路に巻かれたコイルと、を含み、前記主磁極の前記突起部は、前記主磁極の残りの部分より高い飽和磁束密度を有する磁性材料で構成され、前記主磁極の前記突起部は、前記主磁極の残りの部分より高い透磁率を有する磁性材料で構成され、磁性体が、前記主磁極の後方および側方(トラック幅方向)に位置する。
【0010】
これらの実施形態のいずれも、磁気ヘッド、磁気ヘッド上で磁気媒体(例えば、ハードディスク)を回すための駆動機構、および磁気ヘッドに電気的に接続された制御装置、を含むディスクドライブシステム等の磁気データ記憶システムにおいて実施することができる。
【0011】
本発明の他の態様および利点は、一例として本発明の原理を示す添付図面と併せ以下の詳細説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態による磁気ディスク装置の斜視図である。
【図2】一実施形態によるヘッドアセンブリの前部を示す図である。
【図3】一実施形態による磁気ヘッドの一部の図を示す。
【図4】一実施形態によるトラック中心における磁気ヘッドの断面図である。
【図5】一実施形態による磁気ヘッドを使用する効果を示す等磁界曲線を示す。
【図6】比較例による磁気ヘッドを使用する効果を示す等磁界曲線を示す。
【図7】一実施形態による磁気ヘッドを使用する効果を示す磁気勾配を示す。
【図8】一実施形態による浮上面から見た磁気ヘッドの平面図である。
【図9】一実施形態による磁気ヘッドを使用する効果を示す等磁界曲線を示す。
【図10】一実施形態による磁気ヘッド内の主磁極の先端の斜視図である。
【図11】一実施形態による浮上面から見た磁気ヘッドの平面図である。
【図12】一実施形態による浮上面から見た磁気ヘッドの平面図である。
【図13】一実施形態による磁気ヘッドの製作工程の図を示す。
【図14】シングル磁気記録システムにおけるトラックの重なりを示す概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明は、本発明の一般的原理を示すためになされるのであって、本明細書において特許請求する発明概念を制限することを目的としない。さらに、本明細書に記載の特定の特徴は、様々な可能な組み合わせおよび順列のそれぞれにおいて他の記載特徴と組み合わせて使用することができる。
【0014】
本明細書で特記される場合を除き、すべての用語は、当業者により理解される意味および/または辞書、論文等に定義される意味だけでなく本明細書から示唆される意味も含む可能な最も広い解釈を与えられるものする。
【0015】
本明細書と添付特許請求範囲において使用されるように、単数形式の表現は特記される場合を除き複数の参照を含むということに留意されたい。
【0016】
一般的な実施形態では、磁気ヘッドは、主磁極の後縁の第1の側面から主磁極の前縁までの距離が、主磁極の後縁の第2の側面から主磁極の前縁までの距離とは異なるように突起部を有する主磁極、補助磁極、および主磁極と補助磁極を含む磁気回路に巻かれたコイルを含む。
【0017】
別の一般的な実施形態では、磁気ヘッドは、主磁極の後縁の第1の側面から主磁極の前縁までの距離が、主磁極の後縁の第2の側面から主磁極の前縁までの距離とは異なるように突起部を有する主磁極、補助磁極、および主磁極と補助磁極を含む磁気回路に巻かれたコイルを含み、主磁極の突起部は主磁極の残りの部分より高い飽和磁束密度を有する磁性材料で構成され、主磁極の突起部は主磁極の残りの部分より高い等透磁率を有する磁性材料で構成され、磁性体が主磁極の後縁側および主磁極のトラック幅側に位置する。
【0018】
シングル記録システムは、一実施形態によると、部分的に重なった状態でトラックが磁気ヘッドにより磁気記録媒体上に記録される装置である。記録されるトラックより狭いトラックピッチを有する磁気記録装置を作ることができる。磁極を異なるやり方で設計することにより従来の磁気記録装置で使用されるものより広い磁極を備えた磁気ヘッドを有することも可能である。しかしながら、トラックは重なった状態で記録されるので記録磁界の品質は中間部よりもトラックの端部でより重要である。
【0019】
従来の垂直記録ヘッドでは、磁界の強度と勾配はトラックの中心で大きい。このため、従来の構造を有する垂直磁気記録ヘッドがシングル記録ヘッドとして使用されると、記録ヘッドの良好な特性が利用されないという困難が生じる。記録性能を向上させるためには、磁界分布を記録ヘッドの主磁極の端部により多く集中させることが望ましい。特許文献2と非特許文献1は側面シールドを片側だけに取り付けた装置を引用するがヘッドに対するさらなる改善が望まれる。
【0020】
上記状況に注意すると、トラック端部近傍の磁界品質が改善されたシングル磁気記録システムに好適な磁気記録ヘッドの磁極設計を有することが望ましい。磁気ヘッドは、一実施形態によると、主磁極の前縁から後縁側の左右端部までの距離が互いに異なる構造を有する。
【0021】
別の実施形態では主磁極の後縁側は片側だけに突起または段差を備えている。さらに、主磁極の突起部の飽和磁束密度は大きい。別の実施形態では主磁極の突起部の透磁率は高い。
【0022】
一実施形態によると、トラック端部近傍の磁気勾配が改善されたシングル磁気記録システムに好適な磁気記録ヘッドを提供することが可能である。
【0023】
磁気記録ヘッドが搭載された磁気ディスク装置、ヘッドアセンブリ、およびヘッドスライダの実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0024】
図1には、磁気ディスク装置1の斜視図を示す。図1では、上部カバーは示されない。磁気記録媒体2とヘッドアセンブリ4は磁気ディスク装置1のシャーシ内に収容される。磁気記録媒体2はシャーシの底に設けられたスピンドルモータ3に取り付けられる。ヘッドアセンブリ4は磁気記録媒体2に回転可能に隣接するように軸受上に支持される。ヘッドアセンブリ4の前部はサスペンションアーム5を備え、サスペンションアーム5の先端はヘッドスライダ10を支持する。同時に、ボイスコイルモーター等のコイルモーター7がヘッドアセンブリ4の後方端部に設けられる。コイルモーター7は、ヘッドアセンブリ4を回転させ、磁気記録媒体2を横切ってほぼ半径方向にヘッドスライダ10を移動させる駆動源である。
【0025】
図2はヘッドアセンブリ4の前部を示す概略図である。同図では、方向X、YおよびZはそれぞれヘッドスライダ10の縦、横および厚さ方向を示す。このうち、方向Zはヘッドスライダ10の浮上方向に対応する。また、方向XとYは実質的に、磁気記録媒体2の回転および直径方向(言いかえればトラックの縦および横方向)にそれぞれ対応する。さらに、矢印DRは磁気記録媒体2の回転方向を示し、矢印LDはヘッドスライダ10の先端方向を示し、矢印TRはヘッドスライダ10の後縁方向を示す。
【0026】
ヘッドスライダ10はサスペンションアーム5の先端で支持される。ヘッドスライダ10では、円盤状媒体2に対向する面10aは、エアベアリング面(ABS:Air Bearing Surface)として知られており、空気等の気体のくさび効果により、回転する円盤状媒体2の上に浮かぶ。ヘッドスライダ10は焼結されたアルミ、炭化チタン等で構成された平らな直交形状の摺動台12を備え、薄膜部14が摺動台12の後縁側の端面上に薄膜形成方法を使用して形成される。
【0027】
図4は、ヘッドスライダ10の後縁部上に設けられた薄膜(図2の参照符号14)の主要部分を示す概略の断面図である。記録ヘッド(図4の参照符号32)は、主磁極321と補助磁極325との間の磁性体を含む支柱323を備えている。主磁極321、補助磁極325、および支柱323は、パーマロイ、CoFe合金等の軟磁性材料で構成される。主磁極321はヨーク326を介し先端部327に取り付けられる。先端部327はヘッドの媒体対向面10aまで広がり、その先端面327aは媒体対向面10aに現われる。先端部327の後縁側と側端部は、磁気勾配を高めるために側面シールド38と後縁シールド39を備えている。再生ヘッド34は、磁気抵抗効果素子を含む再生素子341と、磁気抵抗効果素子を取り囲む一対の磁気シールド343、344とを含む。さらに、磁性体を含むシールド37には、磁気シールド344内への記録磁界の流入を低減する目的が与えられている。
【0028】
主磁極321は、先端部327の先端面327aから生成される記録磁界でもって、ヨーク326に巻かれたコイル329により磁化される。先端部327から生成される記録磁界は、磁気ディスク2の磁気記録層21と中間層22に垂直に侵入し、軟磁性反転層23で戻され、補助磁極325により吸収される。記録は、磁化され、先端部327から生成される記録磁界により磁気記録層21に書き込まれる。
【0029】
図3(a)−(b)には、いくつかの実施形態における磁気記録ヘッドのいくつかの図を示す。図3(a)は浮上面から見た薄膜14の主要部分の全体平面図であり、図3(b)は主磁極の端部近傍を示す拡大図である。主磁極の端部は、一実施形態によると、前縁から主磁極の後縁側の第1と第2の端までの距離が互いに異なる構造を有する。換言すれば、主磁極は図3(b)に示されるL1がL2より大きい構造を有する。説明の目的のため、そして決して限定するものではないが、第1と第2の端は、図3(b)に示すように、トラックが右から左に書き込まれるシングル記録システムに使用される主磁極の後縁側の左および右端として説明される。しかしながら、主磁極の突起部は主磁極のいずれかの側にあってもよく、本明細書に記載のように左または右側に限定されない。したがって、トラックが左から右に書き込まれる場合、突起部328は主磁極の左側に位置してよい。
【0030】
引き続き図3(b)を参照すると、このタイプの構造は突起部328により可能である。また、側面シールドの構造は,1つの手法によると、側面シールドがL1側だけに設けられるものである。もちろん、シールドは主磁極の反対側に同様に設けられてよい。磁気ヘッドをこのように配置することにより、磁界勾配がトラック端部の近傍で改善されるシングル磁気記録に好適な磁気記録ヘッドを提供することが可能である。
【0031】
図5は、一実施形態による、磁気ヘッドの磁気記録媒体装置デバイスに適用された磁界強度の3次元磁界計算の結果を示す図である。
【0032】
計算は、図4を参照して、次のように実行される。先端部327を含む主磁極321から生成される磁界は、有限要素法を使用する3次元磁界計算で計算される。主磁極321の先端部327と後縁シールド39間のギャップは約25nmである。主磁界321の先端部327と側面シールド38間のギャップは約40nmである。主磁極321の端面327aの後縁側の端部の幅は80nmである。主磁極321の端面327aには約9°の角度αが付けられ、その前縁端の幅が後縁側端の幅より狭い逆台形形状を端面327aに与える。主磁極321の先端部327の材料は、CoNiFeであり(但し、限定するものではない)、2.4Tの飽和磁束密度と100の相対透磁率を有するものと考えられる。主磁極321のヨーク部326は、80at%Ni−20at%Fe(但し、限定するものではない)であり、1.0Tの飽和磁束密度を有すると考えられる。補助磁極325については、材料の飽和磁束密度が1.0T、Y方向の幅が約30μm、Z方向の長さが約16μm、X方向の長さが約2μmであると考えられる。
【0033】
また、再生ヘッドの磁気シールド343、344とシールド37は、80at%Ni−20at%Fe(但し、そのように限定するものではない)であり、1.0Tの飽和磁束密度を有し、Y方向の幅が約32μm、Z方向の長さが約16μm、X方向の長さが約1.5μmであると考えられる。磁性体38の磁性材料は45at%Ni−55at%Fe(但し、限定するものではない)であり、1.7Tの飽和磁束密度と1000の相対透磁率を有すると考えられる。後縁シールド39と側面シールド38の厚さは約200nmである。コイル329の巻線数は4回であり、記録電流は約35mAであると考えられる。磁気ディスク2の軟磁性下層23は1.1Tの飽和磁束密度を有する材料で作られ、約40nmの厚さを有すると考えられる。磁気記録層21の厚さは約19nmである。中間層22の厚さは約22nmである。ヘッドスライダ10は約9nmだけ浮上するものと推定される。したがって、下層23の表面とスライダ10間の距離は約50nmである。記録磁界は媒体対向面10aから約18.5nmの深さの磁気記録層21の位置における値として計算される。
【0034】
図5のX軸は幅方向をY軸は走査方向を示す。等磁界曲線間の間隔は1000(×1000/4π[A/M])である。磁界分布が図の右側に集中されることは明らかである。磁界は図における文字Aにより示される近傍で最も大きいことがわかるであろう。
【0035】
図6は、突起部328の無い構造の等磁界曲線を示す。磁界は、図5の文字Aに対応する位置において増加しなかった。
【0036】
図7は、8×10(×1000/4π[A/M])の磁界位置における磁気勾配のプロフィールを示す。X軸はトラック幅方向の位置をY軸はそれぞれの最高磁気勾配で正規化された磁気勾配を示す。突起部(図4の参照符号328)の無い従来の構造と比較すると、本明細書に開示された構造では、図7を参照すると、磁気勾配はグラフの右側の中央で最大である。シングル記録の場合には、磁気分布の片側の端がトラックを記録するために使用される。このため、片側に大きな磁気勾配を有する構造はシングル磁気記録に好適である。
【0037】
磁気分布の大きな偏差を有するためには、突起部(図4の参照符号328)のトラック幅方向の幅は突起部328の他のトラック幅方向のものより小さいことが望ましい。また、走査方向の突起部328の長さがトラック幅方向の幅より大きい場合、磁気分布をさらに大きく変化させることが可能である。
【0038】
図8は別の実施形態の構造を示す図である。これは、後縁シールドが主磁極に従う形状を有する構造である。図9は、図8の構造に使用された3次元磁気計算法により磁気分布が計算された等磁界曲線を示す。同図中のより高い磁界密度を有する部分は右側に移動しており、これは装置がシングル磁気記録に好適であることを意味する。
【0039】
図10は、一実施形態による、主磁極の先端の一例の斜視図を示す。シングル磁気記録に好適となるように磁気分布を変化させるためには、トラック幅方向の幅が著しく変化する浮上面から第1の位置(絞り位置)に向かうヘッド素子の高さ方向に突起部328が設けられることが望ましい。
【0040】
また、図11に示すように、突起部328の範囲にわたって使用される磁性体の飽和磁束密度は主磁極の先端部327より大きくてもよい。このようにして、シングル磁気記録に好適となるように磁束を集中させることが可能である。また、突起部328の前縁の片側の磁性体の飽和磁束密度は他の主磁極の先端部327より大きくしてよい。飽和磁束密度に加え、相対透磁率も大きくしてよい。
【0041】
図12に示すように、両側に側面シールドを設ける場合、突起部328の側の主磁極と側面シールド間のギャップW1はW2未満であることが望ましい。このようにして、シングル磁気記録に好適となるようにトラックの片側に磁気分布を集中させることが可能である。
【0042】
主磁極の製造は、一実施形態によると、磁性膜が主磁極上に形成された後に非磁性体層を形成する処理と、この非磁性体層をマスクとして使用して主磁極の磁性膜を切除する後続の処理とを含む。
【0043】
図13(a)−(c)には、一実施形態による主磁極の製造工程のこの部分の一例を示す。同図は浮上面から見た形状を示し、前縁および後縁方向は図の上側と下側に、トラック幅は左から右に示されている。
【0044】
図13(a)では、無機絶縁層50が形成された状況が示され、先端部327の形成後、レジストパターン51がその上に形成される。先端部327の形成方法は、フォトレジストをマスクとして使用するマグネトロンスパッタ方法を使用する処理と、主磁極を形成するために使用されるレジストパターンを使用するめっきを採用する処理とを含む。レジストパターン51は非対称的に形成されるという特徴がある。次に、図13(b)に示すように、レジストパターン50はマスクとして使用され、先端部327と無機絶縁膜50はイオンミリングを使用して切除される。無機絶縁膜50に好適な材料としては限定するものではないが、Al、AlN、Ta、TiC、TiC、SiO、SiO等が挙げられる。図13(c)では、レジストパターン51はイオンミリング後に除去されて示される。次に、側面シールドと後縁シールドが形成される。側面シールドは図13(a)−(c)に示す処理に先立って形成されてもよい。また、図13の処理後、そして前縁のギャップの非磁性体膜の形成後、表面を平らにするために化学研磨、機械研磨等を含む処理が実行されてよい。この方法を使用して、いくつかの実施形態による本明細書に記載の磁気ヘッドを製造することが可能である。
【0045】
図14(a)−(c)には、例示的なシングル記録システムが示される。図14(a)では、トラック幅Tw1を有する第1のトラックが記録される。ディスクと台形状ヘッド間の相対移動は、ヘッド走査が下方向に移動するように行われる。図14(b)では、トラック幅Tw2を有する第2のトラックが第1のトラックに隣接して記録される。図からわかるように、第1と第2のトラックはわずかに重なる。図14(c)では、トラック幅Tw3を有する第3のトラックが第2のトラックに隣接して記録される。再度、第2のトラックは第3のトラックとわずかに重なる。このため、先に説明したように、トラック幅端部におけるヘッドの磁束特性はシングル記録システムでは重要である。本明細書で示すようにトラックは左から右へ書き込まれるが右から左に書き込まれてもよい。
【0046】
様々な実施形態が上に説明されたが、これらはほんの一例として提示したのであって制限するためではないということを理解すべきである。したがって、本発明の実施形態の広さと範囲は、上記例示的な実施形態のいずれかにより制限されるべきでなく、以下の特許請求範囲とそれらの同等物だけにより定義されるべきである。
【符号の説明】
【0047】
1:磁気ディスク装置
2:磁気記録媒体
3:スピンドルモータ
4:ヘッドアセンブリ
5:サスペンションアーム
7:コイルモーター
10:ヘッドスライダ
10a:エアベアリング面
12:摺動台
14:薄膜部
21:磁気記録層
22:中間層
23:軟磁性反転層
32:記録ヘッド
34:再生ヘッド
37:シールド
38:側面シールド
39:後縁シールド
50:無機絶縁層
51:レジストパターン
321:主磁極
323:磁性体を含む支柱
325:補助磁極
326:ヨーク
327:先端部
328:突起部
327a:先端面
329:コイル
341:再生素子
343,344:磁気シールド
DR:磁気記録媒体の回転方向
LD:ヘッドスライダの先端方向
TR:ヘッドスライダの後縁方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主磁極の第1の側面の後縁(トレーリング方向の縁)から前縁(リーディング方向の縁)までの距離が、前記主磁極の第2の側面の後縁から前縁までの距離とは異なるように突起部を有する主磁極と、
補助磁極と、
前記主磁極と前記補助磁極を含む磁気回路に巻かれたコイルと、
を含む磁気ヘッド。
【請求項2】
前記主磁極の前記突起部は、前記主磁極の残りの部分より高い飽和磁束密度を有する磁性材料で構成される、
請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項3】
前記主磁極の前記突起部は、前記主磁極の残りの部分より高い透磁率を有する磁性材料で構成される、
請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項4】
磁気記憶媒体と、
前記磁気記憶媒体に書き込むための請求項1に記載の少なくとも1つの磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを支持するスライダと、
前記磁気ヘッドの動作を制御するための前記磁気ヘッドに連結された制御ユニットと、
を有するディスクドライブシステム。
【請求項5】
磁性体が、前記主磁極の後方および側方(トラック幅方向)に位置する、
請求項1に記載の磁気ヘッド。
【請求項6】
前記主磁極の第1の側面と前記主磁極の第1の側方に位置する磁性体との間の第1の距離は、前記主磁極の第2の側面と前記主磁極の第2の側方に位置する磁性体との間の第2の距離と異なり、前記主磁極の前記突起部はより短い距離を有する側に位置する、
請求項5に記載の磁気ヘッド。
【請求項7】
前記主磁極の側方に位置する前記磁性体は、前記突起部を有する側の前記主磁極の側方だけに位置する、
請求項5に記載の磁気ヘッド。
【請求項8】
前記主磁極の後縁に対向する磁性体の一部は真っすぐである、
請求項5に記載の磁気ヘッド。
【請求項9】
前記主磁極の前記突起部は、前記主磁極の残りの部分より高い飽和磁束密度を有する磁性材料で構成される、
請求項5に記載の磁気ヘッド。
【請求項10】
前記主磁極の前記突起部は、前記主磁極の残りの部分より高い透磁率を有する磁性材料で構成される、
請求項5に記載の磁気ヘッド。
【請求項11】
磁気記憶媒体と、
前記磁気記憶媒体に書き込むための請求項5に記載の少なくとも1つの磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを支持するスライダと、
前記磁気ヘッドの動作を制御するための前記磁気ヘッドに連結された制御ユニットと、
を含むディスクドライブシステム。
【請求項12】
主磁極の第1の側面の後縁(トレーリング方向の縁)から前縁(リーディング方向の縁)までの距離が、前記主磁極の第2の側面の後縁から前縁までの距離とは異なるように突起部を有する主磁極と、
前記補助磁極と、
前記主磁極と前記補助磁極を含む磁気回路に巻かれたコイルと、
を含む磁気ヘッドであって、
前記主磁極の前記突起部は、前記主磁極の残りの部分より高い飽和磁束密度を有する磁性材料で構成され、
前記主磁極の前記突起部は、前記主磁極の残りの部分より高い透磁率を有する磁性材料で構成され、
磁性体が、前記主磁極の後方および側方(トラック幅方向)に位置する、
磁気ヘッド。
【請求項13】
前記主磁極の後縁に対向する前記磁性体の一部は真っすぐである、
請求項12に記載の磁気ヘッド。
【請求項14】
前記主磁極の側方に位置する前記磁性体は、前記突起部を有する側の前記主磁極の側方だけに位置する、
請求項12に記載の磁気ヘッド。
【請求項15】
前記主磁極の第1の側面と前記主磁極の第1の側方に位置する磁性体との間の第1の距離は、前記主磁極の第2の側面と前記主磁極の第2の側方に位置する磁性体との間の第2の距離と異なり、前記主磁極の前記突起部はより短い距離を有する側に位置する、
請求項12に記載の磁気ヘッド。
【請求項16】
磁気記憶媒体と、
前記磁気記憶媒体に書き込むための請求項12に記載の少なくとも1つの磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを支持するスライダと、
前記磁気ヘッドの動作を制御するための前記磁気ヘッドに連結された制御ユニットと、
を含むディスクドライブシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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