説明

非小細胞肺癌において上皮細胞増殖因子レセプターモジュレーターに対する感受性を決定するためのバイオマーカーおよび方法

EGFRバイオマーカーは、EGFRモジュレーターを投与することからなる癌を治療する方法に対して治療応答する哺乳類を同定するための方法に有用であって、該方法は、(a)EGFRモジュレーターに哺乳類由来の生物サンプルを曝露し、(b)該生物サンプルにおいて、少なくとも一つのバイオマーカーのレベルを測定することからなり、EGFRモジュレーターに曝露されていない哺乳類におけるバイオマーカーのレベルと比較した(b)で測定された少なくとも一つのバイオマーカーのレベルとの差は、該哺乳類が癌の治療方法に対して治療応答することを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(配列表)
「コピー1」とラベルしたコンパクトディスクは、10219 PCT.ST25.txt.として配列表を含む。該配列表は、1452KBのサイズであり、2005年3月24日に記録した。コンパクトディスクは、2枚のコンパクトディスクのうちの1枚である。2枚のコンパクトディスクのコピーは、「コピー2」とラベルし、2枚のコンパクトディスクの2枚目である。コンパクトディスクおよび2枚のコピーは、同一であり、本明細書に参照によって引用する。
(技術分野)
本発明は、一般的にファーマコゲノミクスの分野に関し、より具体的には疾病および障害の治療を補助する個人に合わせた遺伝子プロフィールの同定を可能にするために患者の薬物感受性を決定する方法および手順に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、広範囲の組織臨床の異質性を持つ疾病である。通常の組織学および臨床特性は予後に相関しているが、腫瘍の見かけの予後のタイプは、治療への応答性および患者のその後の生存において大きく変化する。
【0003】
各患者に対する治療の個性化を容易にする新規な予後および予測マーカーは、臨床において、小分子または生物分子薬物のような治療に応答する患者を正確に予測するために必要である。その問題は、治療に対する患者の感受性をより良く予測することができる新規なパラメーターの同定によって解決されうる。患者サンプルの分類は、癌の診断および治療の重大な観点である。分子および遺伝子マーカーでの治療に対する患者の応答の関連性は、非応答患者における治療開発のための新しい機会を切り開き、または有効性におけるより高い信頼性のために他の治療の選択肢の中で治療の指標を識別することができる。さらに、薬物、薬剤、または併用療法に対してよく応答しそうな患者の事前選択は、臨床研究における必要な患者数を減少しうるか、または臨床開発プログラム(M. Cockett et al., 2000, Current Opinion in Biotechnology, 11:602-609)を完了するために必要な時間を早めうる。
【0004】
薬物の応答は、標的細胞に対して固有の特性だけでなく、宿主の代謝特性もまた反映するので、患者における薬物感受性を予測できるようにすることは、特に挑戦的な事項である。薬物感受性を予測するための遺伝子情報を使用する試みは、多剤耐性遺伝子、mdr1およびmrp1(P. Sonneveld, 2000, J. Intern. Med., 247:521-534)のような広い効果を有する個別の遺伝子について、主に重点的に取り組んできている。
【0005】
遺伝子のmRNA発現パターンの大規模な特徴付けのためのマイクロアレイ技術の開発は、分子マーカーを体系的に探索すること、および伝統的な組織病理学的方法では明らかでない独特なサブグループに癌を分類することを可能にさせている(J. Khan et al., 1998, Cancer Res., 58:5009-5013; A.A. Alizadeh et al., 2000, Nature, 403:503-511; M. Bittner et al., 2000, Nature, 406:536-540; J. Khan et al., 2001, Nature Medicine, 7(6):673-679; and T.R. Golub et al., 1999, Science, 286:531-537; U. Alon et al., 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96:6745-6750)。かかる技術および分子ツールは、いずれの所定時間においても細胞分布内で多数の転写の発現レベルをモニターすることを可能にさせる(例えば、Schena et al., 1995, Science, 270:467-470; Lockhart et al., 1996, Nature Biotechnology, 14:1675-1680; Blanchard et al., 1996, Nature Biotechnology, 14:1649; U.S. Patent No. 5,569,588 to Ashby et al.を参照されたい)。
【0006】
最近の研究では、ヒトの腫瘍のマイクロアレイ分析によって得られる遺伝子発現情報から臨床成果を予測することができることが発表されている(L.J. van't Veer et al., 2002, Nature, 415:530-536; T. Sorlie et al., 2001, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98:10869-10874; M. Shipp et al., 2002, Nature Medicine, 8(1):68-74: G.Glinsky et al., 2004, The Journal of Clin. Invest., 113(6):913-923)。これらの発見は、癌治療が治療に対する個別の腫瘍応答をより良く予測することによって、大いに改善されることの希望をもたらす。
【0007】
分子レベルでの患者の応答に基づく疾病および障害を治療するために必要である個人に合わせた遺伝子プロフィールの開発を可能にするために、患者の薬物感受性を決定する新規な別の方法および手順が必要とされる。
【0008】
(発明の概要)
本発明は、1またはそれ以上の上皮細胞増殖因子レセプター(EGFR)モジュレーターに対する患者の感受性を決定するための方法および手順を提供する。本発明はまた、癌のような病状のための個々に要求される治療が、1またはそれ以上のEGFRモジュレーターを含むものであって、治療の投与前に、治療に対して応答するかしないかを決定または予測する方法も提供する。1またはそれ以上のEGFRモジュレーターは、例えば1またはそれ以上のEGFR特異的リガンド、1またはそれ以上の小分子EGFR阻害剤、もしくは1またはそれ以上のEGFR結合モノクローナル抗体から選択される化合物である。
【0009】
一態様として、本発明は、EGFRモジュレーターの投与からなる癌を治療する方法に対して治療応答する哺乳類を同定するための方法であって、該方法が、(a)哺乳類において、表1のバイオマーカーから選択される少なくとも一つのバイオマーカーのレベルを測定し;(b)哺乳類由来の生物サンプルをEGFRモジュレーターに曝露し;(c)ステップ(b)で曝露に続いて、該生物サンプルにおいて、少なくとも一つのバイオマーカーのレベルを測定することを特徴とし、ステップ(a)で測定される少なくとも一つのバイオマーカーのレベルと比較して、ステップ(c)で測定される少なくとも一つのバイオマーカーのレベルの差は、哺乳類が癌を治療する方法に対して治療応答することを示す方法を提供する。
【0010】
哺乳類が癌を治療する方法に対して治療応答するかしないかを示すのに充分であるバイオマーカーのレベルにおける差は、公知技術を用いて当業者によって容易に決定され得る。バイオマーカーのレベルにおける増加または減少は、その差が治療応答する哺乳類を同定するのに充分であるかどうかを決定することに関連している。一態様において、充分なバイオマーカーのレベルにおける差は、哺乳類が治療に対して治療応答するかどうかを決定する前に前もって決定することができる。一態様において、バイオマーカーのレベルにおける差は、mRNAレベル(例えば、RT−PCTまたはマイクロアレイによって測定される)の差であり、例えば発現レベルにおいて、少なくとも2倍の差、少なくとも3倍の差、または少なくとも4倍の差のように表す。他の態様として、バイオマーカーのレベルの差は、IHCによって決定される。他の態様として、バイオマーカーのレベルの差は、分散分析(Anova)において、<0.05のp値を意味する。さらに他の態様として、その差は、ELISAアッセイで決定される。
【0011】
本明細書で使用される治療応答は、癌の軽減または抑止を意味する。この事は、癌で影響される個々の平均余命が上昇するか、または1またはそれ以上の癌の症状が軽減されるか、または改善されることを意味する。該用語は、癌性の細胞増殖または腫瘍体積の減少を含む。哺乳類が治療応答するかどうかは、PET画像のような当該技術分野で周知の多くの方法によって測定されうる。
【0012】
該哺乳類は、例えば、ヒト、ラット、マウス、イヌ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ネコ、霊長類、またはサルであり得る。
【0013】
本発明の方法は、例えば哺乳類において、少なくとも一つのバイオマーカーのレベルを測定するステップが哺乳類から生物サンプルを取得すること、次いで生物サンプルにおいて、少なくとも一つのバイオマーカーのレベルを測定することを含むインビトロ法であり得る。生物サンプルは、例えば、少なくとも一つの血清、全新鮮血、末梢血単核細胞、凍結全血液、新鮮血漿、凍結血漿、尿、唾液、皮膚、毛嚢、骨髄、または腫瘍組織を含むことができる。
【0014】
少なくとも一つのバイオマーカーのレベルは、例えば、少なくとも一つのバイオマーカーの蛋白質および/またはmRNA転写のレベルであり得る。
【0015】
他の態様において、本発明は、EGFRモジュレーターを投与することからなる癌の治療方法に対して治療応答する哺乳類を同定する方法であって、該方法が、(a)哺乳類由来の生物サンプルをEGFRモジュレーターに曝露し;(b)ステップ(a)の曝露に続いて、該生物サンプルにおいて、表1のバイオマーカーから選択される少なくとも一つのバイオマーカーのレベルを測定することを特徴とし、該EGFRモジュレーターに曝露されていない哺乳類における少なくとも一つのバイオマーカーのレベルと比較して、ステップ(b)で測定された少なくとも一つのバイオマーカーのレベルにおける差は、哺乳類が癌を治療する方法に対して、治療応答することを示す方法を提供する。
【0016】
さらに他の態様において、本発明は、哺乳類がEGFRモジュレーターを投与することからなる癌の治療方法に対して治療応答するかどうかを試験または予測するための方法であって、該方法が、(a)哺乳類において、表1のバイオマーカーから選択される少なくとも一つのバイオマーカーのレベルを測定し;(b)哺乳類をEGFRモジュレーターに曝露し;(c)ステップ(b)の曝露に続いて、哺乳類において、少なくとも一つのバイオマーカーのレベルを測定することを特徴とし、ステップ(a)で測定された少なくとも一つのバイオマーカーのレベルと比較して、ステップ(c)で測定された少なくとも一つのバイオマーカーのレベルにおける差は、哺乳類が癌を治療する方法に対して治療応答することを示す方法を提供する。
【0017】
他の態様において、本発明は、(a)哺乳類を化合物に曝露し、(b)ステップ(a)の曝露に続いて、哺乳類において、表1のバイオマーカーから選択される少なくとも一つのバイオマーカーのレベルを測定することを特徴とし、該化合物に曝されていない哺乳類におけるバイオマーカーのレベルと比較して、ステップ(b)で測定されたバイオマーカーのレベルにおける差は、該化合物が哺乳類において、EGFR活性を阻害することを示す、哺乳類において、化合物がEGFR活性を阻害するかどうかを決定するための方法を提供する。
【0018】
さらに他の態様において、本発明は、(a)哺乳類を化合物に曝露し;(b)ステップ(a)の曝露に続いて、哺乳類において、表1のバイオマーカーから選択される少なくとも一つのバイオマーカーのレベルを測定することを特徴とし、該化合物に曝露されていない哺乳類におけるバイオマーカーのレベルと比較して、ステップ(b)で測定されたバイオマーカーのレベルにおける差は、哺乳類がEGFR活性を阻害する化合物に曝露されてきたことを示す、哺乳類がEGFR活性を阻害する化合物に曝されたかどうかを決定するための方法を提供する。
【0019】
他の態様において、本発明は、(a)哺乳類を該化合物に曝露し;(b)ステップ(a)の曝露に続いて、哺乳類において、表1のバイオマーカーから選択される少なくとも一つのバイオマーカーのレベルを測定することを特徴とし、該化合物に曝露されていない哺乳類における少なくとも一つのバイオマーカーのレベルと比較して、ステップ(b)で測定された少なくとも一つのバイオマーカーのレベルにおける差は、哺乳類がEGFR活性を阻害する化合物に応答していることを示す、哺乳類がEGFR活性を阻害する化合物に対して応答しているかどうかを決定するための方法を提供する。
【0020】
本明細書で使用される、「応答、応答すること」とは、哺乳類において、生物および細胞応答、ならびに臨床応答(症状の改善、治療効果、または有害事象など)の方法によって応答することを含む。
【0021】
本発明はまた、表1のバイオマーカーから選択される単離されたバイオマーカーも提供する。本発明のバイオマーカーは、表1および配列表に提供されるヌクレオチドおよびアミノ酸配列、ならびにそのフラグメントおよびバリアントから選択される配列を含む。
【0022】
本発明はまた、表1のバイオマーカーから選択される2またはそれ以上のバイオマーカーを含むバイオマーカーセットも提供する。
【0023】
本発明はまた、患者が1またはそれ以上のEGFRモジュレーターを含む治療に対する感受性または抵抗性があるかどうかを決定または予測するためのキットも提供する。患者は、例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)または腫瘍のような癌または腫瘍を有しうる。
【0024】
一態様として、該キットは、1またはそれ以上の本発明の特殊化したマイクロアレイ、患者の組織検体または患者のサンプル由来の試験細胞で使用するための1またはそれ以上のEGFRモジュレーター、および使用説明書を含む、適当な容器を含む。該キットは、mRNAまたは蛋白質のレベルでのバイオマーカーセットの発現をモニターするための試薬または材料をさらに含みうる。
【0025】
他の態様として、本発明は、表1のバイオマーカーから選択される2またはそれ以上のバイオマーカーを含むキットを提供する。
【0026】
さらに他の態様として、本発明は、表1のバイオマーカーから選択される少なくとも一つのバイオマーカーの存在を検出するための少なくとも一つの抗体および核酸を含むキットを提供する。一態様として、該キットは、哺乳類がEGFR活性を阻害する化合物を投与することからなる癌を治療する方法に対して治療応答するかしないかを決定するための説明書をさらに含む。他の態様として、該説明書は、(a)哺乳類において、表1のバイオマーカーから選択される少なくとも一つのバイオマーカーのレベルを測定し、(b)哺乳類を該化合物に曝露し、(c)ステップ(b)の曝露に続いて、哺乳類において、少なくとも一つのバイオマーカーのレベルを測定するステップを含み、ステップ(a)で測定された少なくとも一つのバイオマーカーのレベルと比較して、ステップ(c)で測定された少なくとも一つのバイオマーカーのレベルにおける差は、哺乳類が癌を治療する方法に対して治療応答することを示す。
【0027】
本発明はまた、患者が1またはそれ以上のEGFRモジュレーターの治療に対して感受性または抵抗性があるかどうかを決定するためのスクリーニングアッセイも提供する。
【0028】
本発明はまた、疾病を有する患者の治療をモニターする方法であって、該疾病が1またはそれ以上のEGFRモジュレーターを投与することからなる方法によって治療される方法も提供する。
【0029】
本発明はまた、分子レベルで患者の応答に基づく疾病および障害を治療するために必要である個人に合わせた遺伝子プロフィールも提供する。
【0030】
本発明はまた、1またはそれ以上のEGFRモジュレーターに対して、感受性または抵抗性のどちらかと関連する発現プロフィールを有する1またはそれ以上のバイオマーカーを含む特殊化したマイクロアレイ、例えば、オリゴヌクレオチド・マイクロアレイまたはcDNAマイクロアレイも提供する。
【0031】
本発明はまた、本発明の1またはそれ以上のバイオマーカーに対して向けられたポリクローナルまたはモノクローナルを含む抗体も提供する。
【0032】
本発明は、添付図と組み合わせて考えると、本発明の詳細な説明の解釈をより良く理解されるだろう。
【0033】
(発明の詳細な説明)
有効性、薬物曝露、または臨床応答のすぐに利用しやすい読み出しを提供するバイオマーカーの同定は、候補薬物の臨床開発において、ますます重要である。本発明の態様は、バイオマーカーの一分類として表す、分泌された蛋白質、または血漿バイオマーカーのレベルにおける変化を測定することを含む。一態様として、すぐに利用しやすい原料を表す血漿サンプルは、バイオマーカー分析のための代用組織を提供する。
【0034】
本発明は、特定のシグナル伝達経路の調節に対して応答し、EGFRモジュレーター感受性または抵抗性とも関連するバイオマーカーを提供する。これらのバイオマーカーは、1またはそれ以上のEGFRモジュレーターに対して応答を予測するために用いられうる。一態様として、本発明のバイオマーカーは、ポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列の両方を含む、表1および配列表で提供されるものである。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【表18】

【表19】

【表20】

【表21】

【表22】

【表23】

【表24】

【0035】
表1で与えられるバイオマーカーは、SEQ ID NOS:1-147のヌクレオチド配列およびSEQ ID NOS:148-294のアミノ酸配列を含み、ユニジーン(Unigene)タイトルに関して全部で147個のバイオマーカーとして本表では言及され、複数のプローブセットが単独のバイオマーカー(1個のバイオマーカーに対して、多くて3個のプローブセット)の強度を測定する40例を含む。これらの場合において、この重複性のプローブセットは、同一の全長のcDNAおよび蛋白質配列を紹会する。表2は、NCBI遺伝子座IDおよびプローブセットIDとの間の相関を提供する。
【表25】

【表26】

【表27】

【0036】
バイオマーカーは、EGFRシグナル伝達経路の活性に依存されうる細胞において発現レベルを有し、該細胞によって示されるEGFRモジュレーター感受性とも高い相関がある。バイオマーカーは、EGFRキナーゼ機能または活性の直接的または間接的な阻害または拮抗作用によってEGFRキナーゼ活性に影響を与える、EGFRモジュレーター、好ましくは生物分子、小分子などに対する応答を予測するための有用な分子ツールとして提供される。
【0037】
EGFRモジュレーター
本明細書で使用される、用語「EGFRモジュレーター」とは、EGFR活性またはEGFRシグナル伝達経路を直接的または間接的に調節する生物分子または小分子である化合物または薬物を意味することを意図する。従って、本明細書で使用される化合物または薬物は、小分子および生物分子の両方を含むことを意図する。直接または間接的な調節は、EGFR活性またはEGFRシグナル伝達経路の活性化または阻害を含む。一態様として、阻害は、例えばEGFのようなEGFRリガンドに対するEGFRの結合の阻害を意味する。他の態様として、阻害は、EGFRのキナーゼ活性の阻害を意味する。
【0038】
EGFRモジュレーターは、例えば、EGFR特異的リガンド、小分子EGFR阻害剤、およびEGFRモノクローナル抗体を含む。一態様として、EGFRモジュレーターは、EGFR活性を阻害し、および/またはEGFRシグナル伝達経路を阻害する。他の態様として、該EGFRモジュレーターは、EGFR活性を阻害し、および/またはEGFRシグナル伝達経路を阻害するEGFRモノクローナル抗体である。
【0039】
EGFRモジュレーターは、生物分子または小分子を含む。生物分子は、すべての脂質および450以上の分子量を有する単糖、アミノ酸、およびヌクレオチドのポリマーを含む。従って、生物分子は、例えば、オリゴ糖および多糖類;オリゴペプチド、ポリペプチド、ペプチドおよび蛋白質;およびオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドは、例えば、DNAおよびRNAを含む。
【0040】
生物分子は、さらに上記分子のいずれの誘導体も含む。例えば、生物分子の誘導体は、オリゴペプチド、ポリペプチド、ペプチド、および蛋白質の脂質およびグリコシル化誘導体を含む。
【0041】
生物分子の誘導体は、オリゴ糖および例えばリポ多糖類のような多糖類の脂質誘導体をさらに含む。最も典型的には、生物分子は、抗体、または抗体の機能的な等価体である。抗体の機能的な等価体は、抗体と同程度の結合特性を有し、EGFRを発現する細胞増殖を阻害する。かかる抗体の機能的な等価体は、例えば、キメラ化、ヒト化、および単鎖抗体ならびにそのフラグメントを含む。
【0042】
抗体の機能的な等価体は、抗体の可変または超可変領域のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を持つポリペプチドも含む。他の配列と実質的に同一であるアミノ酸配列は、1またはそれ以上の置換、付加および/または欠損によって他の配列と異なるが、等価な配列であるとみなされる。配列におけるアミノ酸残基の数の好ましくは50%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは10%以下が、蛋白質を置換し、蛋白質に加えられ、蛋白質から欠損される。
【0043】
抗体の機能的な等価体は、好ましくはキメラ化、またはヒト化抗体である。キメラ化抗体は、ヒト以外の抗体の可変領域およびヒト抗体の定常領域を含む。ヒト化抗体は、ヒト以外の抗体の超可変領域(CDR)を含む。例えば、フレームワークの可変領域のような超可変領域以外の可変領域、およびヒト化抗体の定常領域は、ヒト抗体の領域である。
【0044】
ヒト以外の抗体の適当な可変および超可変領域は、モノクローナル抗体が調製される、いずれのヒト以外の哺乳類によっても産生される抗体から生じうる。ヒト以外の哺乳類の適当な具体例は、例えば、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ヤギ、または霊長類を含む。
【0045】
機能的な等価体は、抗体全体と同一であるか、または同程度である結合特性を有する抗体のフラグメントをさらに含む。抗体の適当なフラグメントは、かかるレセプターを発現する細胞増殖を阻害するEGFRチロシンキナーゼに対して特異的に、そして十分な親和性を持って結合する超可変(すなわち、相補性決定)領域のかなりの部分を含むいずれのフラグメントも含む。
【0046】
該フラグメントは、例えば、FabフラグメントまたはF(ab’)2フラグメントの一つまたは両方を含んでも良い。3、4、または5個のCDRのような、かかる領域のすべてよりも少なく含有する機能的なフラグメントもまた含まれるが、好ましくは抗体フラグメントが抗体全体の6個の相補性決定領域のすべてを含む。
【0047】
一態様として、フラグメントは、単鎖抗体、またはFvフラグメントである。単鎖抗体は、相互接続リンカーを有するか、または有しない軽鎖の可変領域に結合した抗体の重鎖の可変領域を少なくとも含むポリペプチドである。従って、Fvフラグメントは、抗体結合部位の全体を含む。これらの鎖は、細菌または真核細胞中で産生されうる。
【0048】
抗体および機能的な等価体は、IgG、IgM、IgA、IgD、またはIgE、およびそのサブクラスのような免疫グロブリンのいずれかの分類に属しうる。一態様として、該抗体は、IgG1サブクラスに属する。機能的な等価体はまた、上記の分類およびサブクラスのいずれの組合せと等価であってもよい。
【0049】
一態様として、EGFR抗体は、Mendelsohnらの米国特許第4943533号に記載されたマウス抗体225から生じるキメラ化、ヒト化、完全にヒトの、および単鎖抗体から選択され得る。
【0050】
他の態様として、EGFR抗体は、Jakobovitsらの米国特許第6235883号、Bendiらの米国特許第5558864号、およびMateo de Acosta del Rioらの米国特許第5891996号に記載された抗体から選択され得る。
【0051】
上述した生物分子に加えて、本発明で有用なEGFRモジュレーターはまた、小分子であってもよい。生物分子ではない分子のいずれも小分子であると本明細書でみなされる。小分子の具体例のいくつかは、有機化合物、有機金属化合物、有機および有機金属化合物の塩、糖、アミノ酸、およびヌクレオチドを含む。小分子は、それらの分子量が450以下であることを除いて、その他の点では生物分子とみなされる分子をさらに含む。従って、小分子は450またはそれ以下の分子量を有する脂質、オリゴ糖、オリゴペプチド、およびオリゴヌクレオチドならびにそれらの誘導体であってもよい。
【0052】
小分子が任意の分子量を有することができることを強調する。それらが典型的に450以下の分子量を有するので、それらは単に小分子と呼ばれる。小分子は、天然に見出される化合物および合成化合物を含む。一態様として、EGFRモジュレーターは、EGFRを発現する腫瘍細胞の増殖を阻害する小分子である。他の態様として、EGFRモジュレーターは、EGFRを発現する難治性の腫瘍細胞の増殖を阻害する小分子である。
【0053】
多数の小分子は、EGFRを阻害するために有用であるとして記載されてきた。例えば、Spadaらの米国特許第5656655号は、EGFRを阻害するスチリル置換ヘテロアリール化合物を開示する。ヘテロアリール基は、1または2個のヘテロ原子を持つ単環、または1〜約4個のヘテロ原子を持つ二環式であり、該化合物は、適宜置換されるか、またはポリ置換される。
【0054】
Spadaらの米国特許第5646153号は、EGFRを阻害するビス単環および/または二環性のアリールヘテロアリール、炭素環およびヘテロ炭素環化合物を開示する。
【0055】
Bridgesらの米国特許第5679683号は、EGFRを阻害する三環性ピリミジン化合物を開示する。該化合物は、第3カラム、35行目から第5カラム、6行目までに記載された縮合したピリミジンヘテロ環誘導体である。
【0056】
Barkerによる米国特許第5616582号は、レセプターチロシンキナーゼ阻害活性を有するキナゾリン誘導体を開示する。
【0057】
Fryらの Science 265, 1093-1095 (1994)の図1は、EGFRを阻害する構造を有する化合物を開示する。
【0058】
Osherovらは、EGFR/HER1およびHER2を阻害するチロホスチン、とりわけ表I、II、III、およびIVの化合物を開示する。
【0059】
Levitzkiらの米国特許第5196446号は、EGFRを阻害するヘテロアリールエテンジイルまたはヘテロアリールエテンジイルアリール化合物、とりわけカラム2、42行目からカラム3、40行目まで開示する。
【0060】
Panekらの Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 283, 1433-1444 (1997)は、レセプターのEGFR、PDGFR、およびFGFRファミリーを阻害するPD166285として同定される化合物を開示する。PD166285は、1436ページの図1で示される構造を有する、6−(2,6−ジクロロフェニル)−2−(4−(2−ジエチルアミノエチルオキシ)フェニルアミノ)−8−メチル−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オンとして同定される。
【0061】
バイオマーカーおよびバイオマーカーセット
本発明は、例えば、癌もしくは腫瘍において、免疫障害、症状もしくは機能不全において、または細胞シグナルおよび/または細胞増殖制御が正常ではないか、または異常である病状において、EGFRまたはEGFR経路を介するシグナルが重要である疾病領域の診断および予後の価値の両方を有する、個々のバイオマーカーおよびバイオマーカーセットを含む。該バイオマーカーセットは、1またはそれ以上のEGFRモジュレーターに対する抵抗性または感受性と高い相関がある、例えば表1で与えられる多数のバイオマーカーのような多くのバイオマーカーを含む。
【0062】
本発明のバイオマーカーセットは、異なった生物系において、または細胞応答のための1またはそれ以上のEGFRモジュレーターの適当な効果を予測するか、または合理的に予知することを可能にする。該バイオマーカーセットは、インビボでの結果を予測するために試験細胞によってEGFRモジュレーター応答のインビトロアッセイで使用され得る。本発明によれば、本明細書に記載される種々のバイオマーカーセット、または他のバイオマーカーまたはマーカーとこれらのバイオマーカーセットの組合せは、例えば、癌患者が1またはそれ以上のEGFRモジュレーターの治療行為にどのように応答するかを予測するために使用され得る。
【0063】
細胞を1またはそれ以上のEGFRモジュレーターに曝露した後、細胞の感受性または抵抗性と相関がある細胞性遺伝子発現パターンのバイオマーカーセットは、EGFRモジュレーターの治療前に1またはそれ以上の腫瘍サンプルのスクリーニングのための有用なツールを提供する。該スクリーニングは、腫瘍であるかないか、従って腫瘍を抱える患者がEGFRモジュレーターの治療に対して応答するかしないかに関するバイオマーカーセットの発現結果に基づいて、1またはそれ以上のEGFRモジュレーターに曝露する腫瘍サンプルの細胞の予測を可能にする。
【0064】
バイオマーカーまたはバイオマーカーセットはまた、EGFRモジュレーターを含む疾病に対して治療を受ける患者において、疾病の処置または治療の進行をモニタリングするためにも、本明細書に記載されるように使用され得る。
【0065】
該バイオマーカーはまた、疾病処置に関する治療の開発のための標的としても提供される。かかる標的は、とりわけ非小細胞肺癌または腫瘍のような肺疾患の治療に適用可能である。実際には、これらのバイオマーカーが感受性および抵抗性の細胞において、異なって発現されるので、それらの発現パターンは、EGFRモジュレーターを用いた治療に対する細胞の感受性の相対強度と相関する。従って、耐性細胞で高度に発現されるバイオマーカーは、EGFRモジュレーター、とりわけEGFR阻害剤に抵抗する腫瘍のための新規な治療の開発のための標的として提供してもよい。
【0066】
バイオマーカー蛋白質および/またはmRNAのレベルは、当業者に周知の方法を用いて決定され得る。例えば、蛋白質の定量は、ELISA、2次元SDS・PAGE、ウェスタンブロット、免疫沈降法、免疫組織化学、蛍光活性化細胞選別法(FACS)、またはフローサイトメトリー法のような方法を用いて実施される。mRNAの定量は、PCR、アレイ・ハイブリダイゼーション法、ノーザンブロット、インシチュ・ハイブリダイゼーション法、ドットブロット法、Taqman、またはRNA分解酵素保護アッセイのような方法を用いて実施される。
【0067】
マイクロアレイ
本発明はまた、1またはそれ以上のバイオマーカーを含み、1またはそれ以上のEGFRモジュレーターに対する感受性または抵抗性のどちらかと相関する発現プロフィールを示す、例えば、オリゴヌクレオチド・マイクロアレイまたはcDNAマイクロアレイのような特殊化したマイクロアレイも含む。かかるマイクロアレイは、腫瘍生検由来の試験細胞において、バイオマーカーの発現レベルを評価するため、およびこれらの試験細胞がEGFRモジュレーターに対する抵抗性または感受性を示しそうかどうかを決定するためのインビトロアッセイに用いられる。例えば、特殊化したマイクロアレイは、本明細書に記載され、表1に示されるように、バイオマーカーまたはそのサブセットのすべてを用いて調製され得る。組織または器官の生検由来の細胞は、単離され、1またはそれ以上のEGFRモジュレーターに曝露される。未処置および処置した細胞の両方から単離された核酸を1またはそれ以上の特殊化したマイクロアレイに適用した後、試験細胞の遺伝子発現パターンは決定され、マイクロアレイにおいてバイオマーカーセットを作るために使用される細胞のコントロ−ルパネルからのバイオマーカーパターンのそれと比較される。試験を受けた細胞からの遺伝子発現パターンの結果に基づいて、該細胞が遺伝子発現の抵抗性または感受性のプロフィールを示すかどうかが決定される。組織または器官の生検由来の試験細胞が1またはそれ以上のEGFRモジュレーターに対して応答してもしなくても、処置または治療のコースは、特殊化したマイクロアレイ分析の結果から収集される情報に基づいて決定または評価される。
【0068】
抗体
本発明はまた、1またはそれ以上のポリペプチドバイオマーカーに対して配向されるポリクローナルまたはモノクローナルを含む抗体も含む。かかる抗体は、例えばインビトロおよびインビボの両方で、診断、検出、スクリーニングおよび/または治療方法を含む、本発明のバイオマーカーを精製し、検出し、標的とするための多様な方法に用いられうる。
【0069】
キット
本発明はまた、患者が1またはそれ以上のEGFRモジュレーターを含む治療に対して、影響を受けやすいか、または抵抗性であるかどうかを決定または予測するためのキットも含む。患者は、例えば非小細胞肺癌または腫瘍のような癌または腫瘍を有していてもよい。かかるキットは、例えば、患者の腫瘍または癌がEGFRモジュレーターの所定の処置または治療に対して抵抗性または感受性であるかどうかを決定または予測するために、患者の生検した腫瘍または他の癌サンプルの試験に使用するための臨床設定に有用である。該キットは、EGFRモジュレーターに対して抵抗性および感受性と関連するそれらのバイオマーカーを含む、例えば、オリゴヌクレオチド・マイクロアレイまたはcDNAマイクロアレイのような1またはそれ以上のマイクロアレイ、とりわけEGFR阻害剤;患者の組織検体または患者サンプル由来の試験細胞に使用するための1またはそれ以上のEGFRモジュレーター;および使用説明書を含む、適当な容器からなる。また本発明で意図されるキットは、本明細書に記載される1またはそれ以上のバイオマーカー、酵素免疫測定法(ELISA)のような免疫アッセイ、例えばウェスタンブロットのような免疫ブロット法、またはインシチュハイブリッド形成法などに基づいて設計されたプライマーを用いる、例えばRT−PCRアッセイのような当該技術分野で実施される他の技術およびシステムを用いて、例えば、mRNAまたは蛋白質のレベルで本発明のバイオマーカーの発現をモニターするための試薬または材料をさらに含むことができる。
【0070】
バイオマーカーおよびバイオマーカーセットの適用
バイオマーカーおよびバイオマーカーセットは、異なった適用にも使用され得る。バイオマーカーセットは、異なった生物系において、いずれのEGFRモジュレーターの適当な効果について予測するために表1に記載されたバイオマーカーのいずれの組合せから構築されうる。本明細書に記載される種々のバイオマーカーおよびバイオマーカーセットは、どのように癌患者がEGFRを調節する化合物と治療行為に応答するかを予測するため、およびどのように患者がEGFR制御経路全体を通して、シグナルを調節する治療行為に応答するかを予測するための疾病管理において、例えば診断または予後指標として使用され得る。
【0071】
バイオマーカーは、EGFRまたはEGFR経路を介するシグナルが重要である疾患領域、例えば、細胞シグナルおよび/または増殖制御が失敗してきた免疫、または癌または腫瘍において、診断および予後の価値の両方を有する。
【0072】
本発明によれば、例えば腫瘍または癌生検のような患者の組織サンプル由来の細胞は、1またはそれ以上のEGFRモジュレーターで治療する前に、1またはそれ以上のバイオマーカーの発現パターンを決定するためにアッセイされうる。一態様として、腫瘍または癌は、NSCLCである。治療が成功するか、または失敗するかは、1またはそれ以上のバイオマーカーのコントロールセットの発現パターンと相対的に類似または異なるか比べて、例えば腫瘍または癌生検のような試験組織(試験細胞)由来の細胞のバイオマーカー発現パターンに基づいて決定される。従って、もし試験細胞がEGFRモジュレーターに対して感受性がある細胞のコントロールパネルにおいて、バイオマーカーのプロフィールに対応するバイオマーカー発現プロフィールを示すなら、個々の癌または腫瘍は、EGFRモジュレーターの治療に対して有効に応答する高い見込みがあるか、または予測される。一方、もし、試験細胞がEGFRモジュレーターに対して抵抗性がある細胞のコントロールパネルのバイオマーカーの発現パターンに対応するバイオマーカーの発現パターンを示すなら、個々の癌または腫瘍がEGFRモジュレーターを用いた治療に対して応答しない高い見込みがあるか、または予測される。
【0073】
本発明はまた、1またはそれ以上のEGFRモジュレーターによって治療可能な疾病を有する患者の治療をモニターする方法も提供する。例えば、腫瘍生検または腫瘍サンプルのような患者の組織サンプルから単離された試験細胞は、EGFRモジュレーターの曝露前後の1またはそれ以上のバイオマーカーの発現パターンを決定するためにアッセイされ、好ましくはEGFRモジュレーターがEGFR阻害剤がよい。処置前後の試験細胞の生じたバイオマーカー発現プロフィールは、EGFRモジュレーターに対して、抵抗性または感受性のどちらかである細胞のコントロールパネルで高度に発現される本明細書に記載および示した1またはそれ以上のバイオマーカーと比較される。従って、もし患者の応答がEGFRモジュレーターまたはバイオマーカーの発現プロフィールの相関に基づいてEGFRモジュレーターによる治療に対して感受性であるなら、患者の治療の予後診断は、好ましいと認められ、治療は継続することができる。また、もしEGFRモジュレーターを用いた治療後、試験細胞がEGFRモジュレーターに対して感受性がある細胞のコントロールパネルに対応するバイオマーカー発現プロフィールにおいて変化を示さないなら、現在の治療が修正され、変更されるか、または中断すらされるべきであることを指標として提供することができる。このモニタリング法は、EGFRモジュレーターでの患者の治療の成功または失敗を示すことができ、かかるモニタリング法は、必要または望まれるとおり繰り返される。
【0074】
本発明のバイオマーカーは、生物系について、いずれの知見も有する前に結果を予測するために使用され得る。本質的にバイオマーカーは、統計ツールであるとみなされる。バイオマーカーは、生物系に分類するために主として使用される表現型を予測するのに有用である。
【0075】
バイオマーカーのすべての完全な機能は、現在までに知られていないが、バイオマーカーのいくつかは、EGFRシグナル経路に直接的または間接的に含まれるようである。また、バイオマーカーのいくつかは、試験されるEGFRモジュレーターに特有の代謝または他の抵抗経路で機能してもよい。にもかかわらず、バイオマーカーの機能についての知見は、本発明の実施に従うバイオマーカーの正確性を決定するために必須ではない。
【0076】
実施例
実施例1−バイオマーカーの同定
表1のバイオマーカーは、3つの特定の方法を用いて同定した。原発腫瘍および細胞株からの転写プロフィールデータは、腫瘍および細胞株にわたる多くの変化がある発現を有する遺伝子を同定するために試験した。また、発現プロフィールがIC50値に基づく感受性/抵抗性の分類と関連する遺伝子を同定するために、細胞株のパネルにおけるIC50を決定する試験を行った。さらに、細胞株および異種移植モデルは、キメラEGFR抗体のセツキシマブ(エルビタックス(Erbitux)(登録商標)として市販される)および小分子のEGFR阻害剤ゲフィチニブで処理し、EGFR阻害剤によって調節される遺伝子を同定した。
【0077】
NSCLC腫瘍および患者:
29個のNSCLC腺癌の腫瘍からRNAを得た(アーデイス社、サマービル、マサチューセッツ州)。腺癌は、NSCLCの最も一般的なサブタイプである。患者の年齢中央値は、65歳であった(範囲:43〜80歳)。腫瘍は、すべてT1〜T4の大きさに属し、AJCC分類では、すべてIA期からIV期までのステージであった。
【0078】
NSCLC細胞株における相対的な薬物感受性の決定:
NSCLC細胞株は、標準的な細胞培養条件を用いて増殖させた:10%ウシ胎仔血清、100IU/mlのペニシリン、100mg/mlのストレプトマイシンおよび2mMのL−グルタミン(すべて、インビトロジェンライフテクノロジー、カールスバッド、カリフォルニア州から入手した)を含むように補充されたDMEM。14個の非小細胞肺癌細胞株をEGFR阻害剤のモノクローナル抗体であるセツキシマブに対するそれらの感受性について試験した。細胞毒性は、BrdU細胞増殖比色ELISA(Roche Applied Science、インディアナポリス、インディアナ州)によって細胞において評価した。これは、DNA合成の間のBrdU導入の測定に基づく細胞増殖の定量のための比色免疫アッセイである。アッセイを実施するために、NSCLC細胞を96ウェルマイクロタイタープレートに2500〜5000細胞/ウェルにてプレートし、24時間後、希釈したモノクローナル抗体薬物を加えた。細胞毒性アッセイに用いられるEGFR阻害剤セツキシマブの濃度は、5μg/ml、4μg/ml、2μg/ml、1μg/mlおよび0.5μg/mlであった。細胞は、37℃で48時間インキュベートし、その時間にBrdUラベルする試薬を加えた。2時間後、ラベルした培地を除去し、細胞を固定し、DNAは、FixDenat溶液を用いて変性した。パーオキシダーゼと共役した抗BrdU抗体を加え、続いて基質反応によって免疫複合体を検出した。反応生成物を450nmでELISA読み取り機にてサンプルの吸収を測定することにより定量した。吸収が大きくなればなるほど、生存細胞数が多くなる。試験した14個の細胞株のうち2個だけは、4〜5μg/mlのIC50を有した。該IC50は、未処理細胞の細胞増殖の50%まで細胞増殖を阻害するために必要な薬物濃度である。3〜6個の個別のBrdUアッセイは、各細胞株に対して実施した。
【0079】
抵抗性/感受性の分類:
図1は、上記のBrdUアッセイで試験した14個のNSCLC細胞株の発現プロファイリングによって決定されるとおり、上皮細胞増殖因子レセプター遺伝子のmRNAレベルを示す。細胞株は、セツキシマブに対して増加する感受性の順番を示す。図1で示すように、セツキシマブに対するEGFRレベルおよび感受性の間には相関がない。試験した14個のNSCLC細胞株のうち、ChagoK1およびL2987は、セツキシマブのIC50濃度で細胞増殖の≧50%阻害を常に示した唯一の2個の細胞株であった。細胞株SW900、Calu6、SK−MES1、H838およびH661は、試験したセツキシマブの投与量において、50%よりかなり低い細胞増殖阻害を示した。残りの細胞株、LX1、H522、H441、H226、A549、SK−LU1およびH2347は、試験したセツキシマブの投与量で細胞増殖の阻害を全く示さなかった。分析に関して、細胞株ChagoK1およびL2987は、感受性として定義され、残りの12個の細胞株は、抵抗性として定義した。
【0080】
遺伝子発現プロファイリング:
NSCLC腺癌に関するRNAは、上記の製造供給元から購入した。NSCLC細胞株に関して、RNAは、RNeasyキット(Qiagen、バレンシア、カリフォルニア州)を用いて50〜70%の融合細胞から単離された。RNAの質は、アジレント2100バイオアナライザー(アジレントテクノロジー、ロックビル、メリーランド州)を用いて、28S:18:リボソームRNA比を測定することによって確認した。RNA全体の濃度を分光光度法で決定した。全RNAの5または10μgをアフィメトリックス・ジーンチップ(Affymetrix Genechip)発現分析技術マニュアルに従って、ビオチン化したプローブを調製するために用いた。標的を製造業者の説明書に従ってヒトHG−U133A遺伝子チップとハイブリダイズを形成した。データをMAS5.0ソフトウェア(アフィメトリックス、サンタクララ、カリフォルニア州)を用いて予備的処理した。各チップについてレベル調整した平均強度は、各サンプルについて全体的な発現レベルを比較するために、全体のチップ強度における小さな差が計上できるように1500スケールにした。
【0081】
データ分析
U133Aチップに存在する22215個のプローブ(遺伝子配列)のすべては、可能性のある予測バイオマーカーとしてみなされた。29個のNSCLC腫瘍のうち少なくとも2個において、発現される遺伝子配列に対する分析を制限するために、少なくとも2個の腫瘍または細胞株において、アフィメトリックスMAS5.0 p>0.04で遺伝子配列を除去し、それぞれ14354および13909遺伝子配列が残った(図2)。
【0082】
次に、肺腫瘍における可変発現を持つ遺伝子を同定するために(およびそれ故、治療に対する応答において、変動と相関することができる可能性が高い)、測定の分散(重量の広がり(90-10)測定基準)(WSpread(90-10)測定基準)を、腫瘍および細胞株の発現プロフィールデータにおいてプローブセットの変動を計算するために使用した。
【数1】

WSpread(90-10)測定基準<30で遺伝子配列を除去し、腺癌腫瘍における4167個の遺伝子配列(図3)および細胞株における4274個の遺伝子配列(図4)が残った。
【0083】
次に、同一の発現フィルターは、NSCLC細胞株データを用いて、4167個の遺伝子配列の残基に適用し、分析用の3572個の遺伝子配列が残った。この後、同一の測定分散フィルターを適用し、分析用の2496個の遺伝子配列が残った。2496個の遺伝子配列のうち、776個の遺伝子配列は、細胞株の分散分析において、トップ1000にランクした。これらの776個の配列は、さらに統計分析のために選択された。776個の遺伝子配列を上記の細胞株(図1)の抵抗性/感受性分類を用いて、両側不等分散t検定に付した。147個の遺伝子配列は、p値<0.05を持つ感受性および抵抗性の細胞株の間に有意な差のある発現プロフィールを示した(図5)。表1は、両側不等分散T検定を用いて同定した147個の遺伝子配列のリストを提供する。これらの147個の遺伝子配列(プローブセット)は、ユニジーンタイトル(Unigene Titles)に関して、124個のバイオマーカーを示す。
【0084】
図1に図示された遺伝子フィルタリングスキームの変動を実施して、図2に図示する。このスキームにおいて、腫瘍および細胞株の両方の分散分析において、343個の遺伝子配列は、トップ1000にランクし、776個の遺伝子配列からの343個の全体を両側不等分散T検定に付した。59個の遺伝子配列は、p値<0.05を持つ感受性および抵抗性の細胞株の間に有意な差のある発現プロフィールを示した。これらの59個のバイオマーカーは、最初の59個のバイオマーカー、すなわちSEQ ID NOS:1-59および148-206として表1に提供される。
【0085】
実施例2−バイオマーカー候補品の実験検証:細胞株導入研究
薬物処理した細胞株において、EGFR阻害剤による調節は、応答が予測されるような候補のバイオマーカーをさらに支持する。導入実験を2個の感受性のある細胞株ChagoK1(セツキシマブおよびゲフィチニブに対して感受性がある)およびL2987(セツキシマブに対して感受性、ゲフィチニブに対して抵抗性がある)において実施した。導入実験はまた、両方のEGFR阻害剤:A549とH226(EGFR+)およびLX−1とH522(EGFR−)細胞株に対して抵抗性があった4個の細胞株でも実施した。
【0086】
細胞を10%FBS(インビトロジェン、カールスバッド、カリフォルニア州)で補充したDMEM中、6ウェルの組織培養皿に播種した。24時間後、細胞は0.5%FBSを含む、DMEMに取り替えられた。次の日に、細胞を4μg/mlのセツキシマブまたは1μMのゲフィチニブのどちらかで処理した。24時間後、細胞を100ng/mlのヒト組み換え上皮細胞増殖因子EGF(バイオソース・インターナショナル、カマリロ、カリフォルニア州)で6時間刺激した。該細胞を培養皿で直接溶解し、RNeasyミニキット(Qiagen、バレンシア、カリフォルニア州)を用いて、RNAの単離を行った。プロファイリングは、U133Aジーンチップ(アフィメトリックス、サンタクララ、カリフォルニア州)で行った。データは、ジーンチップ(登録商標)発現分析ソフトウェアMAS5.0(アフィメトリックス、サンタクララ、カリフォルニア州)を用いて分析した。プロファイリングデータのAnova分析は、シグナル強度に対する四分正規化アフィメトリックスMAS5.0の値を用いて、PartekProパターン認識ソフトウェア(Partek、セントチャールズ、ミシシッピ州)で実施した。
【0087】
試験した147個のプローブセットのうち、21個のプローブセットを表す18個の異なったバイオマーカー(以下の表3で与えられる)を感受性のある細胞株において、EGFR阻害剤の処置および/またはEGF刺激によって高度に制御された(Bonferroni、Anova分析において、p<0.05)。
【表28】

【表29】

【表30】

【表31】

【0088】
これらのバイオマーカーは、EGFおよび/またはEGFR阻害剤の処置によって、それらの発現調節に基づくEGFRシグナル経路に、直接的または間接的に含まれる可能性が高いことは明らかである。
【0089】
実施例3−バイオマーカー候補品の実験検証:肺異種移植モデルにおける薬物治療研究
肺異種移植モデルにおいて、EGFR阻害剤による調節は、応答が予測されるような候補マーカーをさらに支持する。薬物治療実験は、L2987(セツキシマブおよびゲフィチニブに対して感受性である)、A549(セツキシマブおよびゲフィチニブに対して感受性の境界である)、およびLX1(セツキシマブおよびゲフィチニブに対して抵抗性である)肺異種移植モデルで実施された。
【0090】
インビボ抗腫瘍試験
腫瘍は、ドナーマウスから得られた腫瘍フラグメントを用いて、皮下(sc)移植としてヌードマウスで増殖させた。腫瘍経過は、およそ2〜4週間毎に起こった。次いで、腫瘍は所定のサイズ(通常、100〜200mgで、その範囲外の腫瘍は除外された)になる時期まで増殖させて、動物は、種々の治療およびコントロール群に一様に分配した。動物は、セツキシマブ(1mg/マウス、q3d×10,14;ip)またはゲフィチニブ(200mg/kg,q1dX14,14;po)で処置した。処置した動物は、処置に関する毒性/死亡率のために毎日確認した。動物の各群は、処置の開始前の重量(Wt1)を測定し、次いで再び、最後の処置投与後の重量(Wt2)を測定した。体重差(Wt2−Wt1)は、処置に関連した毒性の尺度を提供した。腫瘍が1gmの所定の標的サイズに達するか、または壊死になるまで、腫瘍応答は、1週間に2回キャリパーで腫瘍の測定により決定した。腫瘍重量(mg)を式: 腫瘍重量=(長さ×幅2)/2
から測定した。
抗腫瘍活性は、初期の腫瘍増殖阻害に関して測定した。これは、2つの方法:(i)種々の時点での処置したマウス(T)およびコントロールマウス(C)の腫瘍重量の相対中央値(MTW)を計算すること(効果は、%T/Cとして表した);および(ii)所定の標的サイズに達するまで、処置した腫瘍(T)に必要な時間(日)のコントロール群(C)の時間と比べた差として定義される、腫瘍増殖遅延(T−C値)を計算することで決定された。データの統計評価は、腫瘍の標的サイズに達する時間の比較のためのゲハン(Gehan)が一般化したウィルコキソン(Wilcoxon)試験を用いて実施した(Gehan 1965)。統計の有意差は、p<0.05で示した。抗腫瘍活性は、TVDT(腫瘍体積倍加時間)=コントロール腫瘍が標的サイズに達する中央値(日)−コントロール腫瘍が標的サイズの半分になるまでの中央値(日)である、処置開始後の時間における少なくとも1つの腫瘍体積倍加時間(TVDT)に関する継続的なMTW %T/C≦50%として定義した。さらに処置群は、活性があると称される統計的に有意な腫瘍増殖遅延(T−C値)(p<0.05)によって同時に生じさせる必要があった。
【0091】
処置した動物を処置に関連する毒性/死亡率について毎日確認した。死亡が生じる場合、死亡日を記録した。それらの腫瘍が標的サイズに到達する前に死亡した処置マウスは、薬物毒性によって死亡したとみなした。コントロールマウスは、標的サイズより小さい腫瘍を有して死亡することはなかった。薬物毒性によって引き起こされた1より多い死亡があった処置群は、過剰に毒性のある処置をしていたとみなし、それらのデータは、化合物の抗腫瘍有効性の評価に含まなかった。
【0092】
薬物処置実験
L2987およびA549異種移植動物は、(1)1mg/マウスのセツキシマブ、ip;(2)250mg/kgのゲフィチニブ、po;(3)PEG400/H2Oベヒクル、poまたは4)PBSベヒクル、ipのいずれかの単独投与で投与された。各投与量は、3匹の独立したマウスに与えた。処置3時間および24時間後、該動物を屠殺し、腫瘍を摘出し、すぐにRNAlater溶液(Qiagen, バレンシア、カリフォルニア州)に置いた。
【0093】
RNAは、RNeasyキット(Qiagen, バレンシア、カリフォルニア州)を用いて、腫瘍から単離した。全RNAの質および濃度を、前に書いたとおりに測定した。プロファイリングは、U133Aジーンチップ(アフィメトリックス、サンタクララ、カリフォルニア州)で実施した。データは、ジーンチップ(登録商標)発現分析ソフトウェアMAS5.0(アフィメトリックス、サンタクララ、カリフォルニア州)を用いて分析した。プロファイリングデータのアノーバ分析は、シグナル強度に関して、四分標準化アフィメトリックスMAS5.0値を用いて、PartekProパターン認識ソフトウェア(Partek, セントチャーチル、ミシシッピ州)で実施した。
【0094】
試験した147個のプローブセットから、4個のプローブセットの代表的な3個の遺伝子は、感受性のL2987異種移植におけるEGFR阻害剤処置で十分調節されるが(アノーバ分析において、p<0.005)、境界の感受性を持つA549異種移植においては調節されなかった。3個の遺伝子は、ジャンピング・トランスロケーション・ブレイクポイント(JTB)、3−ホスホアデノシン 5−ホスホスルフェートシンターゼ2(PAPSS2)およびセリンプロテアーゼ阻害剤、Kunitz 1型(SPINT1)である。これらのバイオマーカーは、EGFR阻害剤の処置による、それらの発現調節に基づいてEGFRシグナル経路に直接的または間接的に含まれやすいことは明らかである。
【0095】
実施例4−臨床サンプルにおける免疫組織化学(IHC)アッセイ
前臨床で同定された147個のプローブセットのうち、S100A9(カルグラヌリンB)を臨床サンプルにおける特定の蛋白質の発現および最良応答データとの間のいずれの相関もあるかどうかを測定するために選択した。
【0096】
基本的なIHC方法
ホルマリン固定のパラフィンに埋め込まれた組織は、5μmの切片のスライドで入手可能であった。該切片を標準キシレンで脱パラフィン化し、等級アルコールによって水に水和した。抗原の回収は、プロテイナーゼKを用いて行った。染色は、エンビジョン(Envision)パーオキシダーゼマウスシステム(DakoCytomation, カーピンテリア、カリフォルニア州)を用いることによって、室温で自動染色ワークステーションTechMate1000(BioTek Solutions/Ventana Medical Systems, トゥーソン、アリゾナ州)にて実施した。スライドを過酸化水素遮断培地でそれぞれ2.5分間、3回付して、次いで、マウス抗ヒトカルグラヌリンBモノクローナル抗体(Bachem Biomedical, ドイツ)で60分間反応させた。免疫検出は、ジアミノベンジジン(DAB)発色基質でそれぞれ5分間、3回スライドを置くことにより、エンビジョンシステムで行った。1分間のヘマトキシリンとの対比染色が最終段階であった。染色後、スライドを一連のアルコールから無水エタノールで脱水し、次に、キシレンでリンスした。スライドをカバーガラスおよびパーマウント培地で永久にカバースリップした。スライドは、染色を評価するために顕微鏡で試験した。陽性染色は、暗茶色の色素原(DAB−セイヨウワサビパーオキシダーゼ反応生成物)の存在によって示される。ヘマトキシリン対比染色は、細胞および組織形態を評価するために青色の核染色を提供する。適当な正および負のコントロールを用いた。スライドを2人の別々の評価者によって臨床データ無しに、ランダムに観察し記録した。単純な記録システムは、組織がマーカーに対して陽性または陰性であるかどうかを反映し、染色の相対的なレベルを指示するために用いた。負、低、中、または高の記録スキームを組織の腫瘍細胞染色の相対的な割合を示すのに用いた(図7)。記録システムは、組織から組織への標的の相対的な発現の指示を単に提供する。
【0097】
臨床材料および応答に対する判定基準
ホルマリン固定しパラフィンに埋め込んだ肺腫瘍スライドをセツキシマブのフェーズIIに登録された患者から得た。この試験において、セツキシマブを再発性の非小細胞肺癌患者(非公開)のための単剤治療として用いた。最良の全体的な応答は、処置の開始から疾病の進行または再発するまでを記録した。応答評価は、RECIST判定基準(固形腫瘍における応答評価判定基準、ツチダおよび Therasse, 2001)を用いて実施した。部分応答(PR)は、ベースライン長径の合計を参照として比較して、標的障害の長径
(LD)の合計において、少なくとも30%減少と記載した。進行性の疾病(PD)は、処置の開始または新規障害の出現から最も小さい長径の合計を参照として比較して、標的障害の長径の合計において、20%またはそれ以上増加することをいう。安定な疾病(SD)とは、PRに対して適格となるために十分な減少もなく、またはPDに対して適格となるために十分な増加もないことを記載するために用いた。
【0098】
臨床FFPETスライドにおけるカルグラヌリンBのIHCアッセイ
カルグラヌリンBのIHCアッセイは、再発性のNSCLC患者において、セツキシマブのフェーズII試験に登録された39人の患者からのFFPETスライドで実施した(表4)。39人の患者のうち、10人は、スライドにおいて、検出可能な腫瘍の検体がなかったので、さらなる分析から除いた。カルグラヌリンB染色に関して記録した残りの29人の患者は、臨床応答データに基づいて、2人のPR、12人のSDおよび15人のPD非応答者からなった。このIHC分析で使用される39個のサンプルは、その組織サンプルを入手した患者に由来し、その患者の説明と同意を得ることができた。ここに示す応答データは、全体の研究において、応答速度に影響しないことに留意するべきである。
【0099】
29人の患者のスライドのうち、22人を0として記録し、3人を0.5+と記録し、3人を1+として記録し、1人のスライドを2+として記録した。試験された患者全体の24%は、カルグラヌリンB染色に対して陽性であった(表4)。

【0100】
結果は、以下の表5にまとめる。

カルグラヌリンB陽性であった7人の患者のうち、6人は、疾病の安定化を有し、1人は、進行性の疾病を有する非応答者であった(表5)。潜在的な応答者を同定するためのアッセイの感受性は、40%[6/(6+9)]であり、特異性は、93%[13/(13+1)]である。
【0101】
潜在的な応答者を同定するためのカルグラヌリンBのIHCアッセイの陽性の予測値は、86%[6/(6+1)]であり、陰性の予測値は、59%[13/(13+9)]で、{カイ二乗 p値=0.03}である。
【0102】
データセットは小さいけれど、これらの結果は、カルグラヌリンB陽性患者が疾病の安定化を有する傾向を示す。
【0103】
実施例5−バイオマーカーに対する抗体の生成
バイオマーカーに対する抗体は、多様な方法で調製することができる。例えば、バイオマーカーポリペプチドを発現する細胞は、発現されたポリペプチドに配向するポリクローナル抗体を含む血清の生成を誘導するために動物に投与され得る。一態様において、バイオマーカー蛋白質は、調製され単離されるか、さもなければ当該技術分野における通常の技術を用いて、天然の汚染物を実質的に含まないように精製される。次いで、かかる調製法は、発現し単離されたポリペプチドに対してより強く特異的な活性を持つポリクローナル抗血清を生じさせるために動物に導入した。
【0104】
一態様として、本発明の抗体は、モノクローナル抗体(またはその蛋白質結合フラグメント)である。バイオマーカーポリペプチドを発現する細胞は、いずれの適当な組織培養培地においても培養されるが、10%ウシ胎仔血清(約56℃で不活性化される)を含むように補充され、約10g/Lの非必須アミノ酸、約1,00U/mLのペニシリン、および約100μg/mLのストレプトマイシンを含むために補充されたアール変法イーグル培地中細胞を培養することが好ましい。
【0105】
免疫性を与えられ(高められた)マウスの脾細胞は、抽出され、適当な骨髄腫細胞株で融合され得る。いずれの適当な骨髄腫細胞株も本発明に従って用いられるが、ATCC(マナッサス、バージニア州)から入手可能な親の骨髄腫細胞株(SP2/0)を用いるのが好ましい。融合後、生じたハイブリドーマ細胞は、HAT培地で選択的に維持され、次いで、Wandsらの文献(1981, Gastroenterology, 80:225-232)で記載されるような限界希釈法でクローン化した。かかる選択によって得られるハイブリドーマ細胞は、次いで、ポリペプチド免疫原またはその部分に結合できる抗体を分泌するそれらの細胞クローンを同定するためにアッセイした。
【0106】
またはさらに、バイオマーカーポリペプチドに結合することができる抗体は、抗イディオタイプ抗体を用いる2段階の手順で調製されうる。かかる方法は、抗体がそれら自身の抗原であるという事実を利用しており、それ故、二次抗体に結合する抗体を得ることも可能である。この方法に従って、蛋白質特異的抗体は、動物、好ましくはマウスを免疫化するのに使用され得る。次いで、かかる免疫化された動物の脾細胞は、ハイブリドーマ細胞を生じるために用いられ、該ハイブリドーマ細胞は、蛋白質特異的抗体に結合するための能力がポリペプチドによって遮断されうる抗体を生じるクローンを同定するためにスクリーニングされる。かかる抗体は、蛋白質特異的抗体に対する抗イディオタイプ抗体を含み、さらに蛋白質特異的抗体の形成を誘導するために動物を免疫化するのに使用され得る。
【0107】
実施例6−免疫蛍光アッセイ
例えば、細胞におけるEGFRバイオマーカー蛋白質発現を検証するため、または例えば、細胞表面で発現されるEGFRバイオマーカーを結合する1またはそれ以上の抗体の存在について確認するために、下記の免疫蛍光プロトコルが用いてもよい。つまり、Lab−TekIIチャンバースライドは、カルシウムおよびマグネシウム(DPBS++)を含むDPBS中で、10μg/mLのII型ウシ・コラーゲンと4℃で終夜コーティングする。次いで、該スライドを冷DPBS++で2回洗浄し、全量125μLで8000CHO−CCR5またはCHO pC4形質転換細胞を播種し、95%酸素/5%二酸化炭素の存在下で、37℃でインキュベートした。
【0108】
培養液をアスピレーターでゆっくり除去し、粘着性の細胞を周囲温度でDPBS++にて2回洗浄した。該スライドを0〜4℃で1時間、0.2%BSA(遮断剤)を含むDPBS++で遮断する。遮断溶液をアスピレーターでゆっくり除去し、125μLの抗体含有溶液(抗体含有溶液は、例えば、通常希釈されないで使用されるハイブリドーマ培養液上清、または例えば、約1/100希釈の希釈液のような通常希釈される血清/血漿であり得る)を得る。該スライドを0〜4℃で1時間インキュベートする。次いで、抗体溶液をアスピレーターでゆっくり除去し、細胞を400μLの氷冷遮断溶液で5回洗浄する。次に、遮断溶液中、125μLの1μg/mLのローダミンでラベルした二次抗体(例えば、抗ヒトIgG)を該細胞に加える。再び細胞は、0〜4℃で1時間インキュベートする。
【0109】
次いで二次抗体溶液は、アスピレーターでゆっくり除去し、該細胞を400μLの氷冷遮断溶液で3回、冷DPBS++で5回洗浄する。次いで、該細胞を周囲温度で15分間、DPBS++中、125μLの3.7%ホルムアルデヒドで固定した。その後、該細胞を周囲温度で、400μLのDPBS++にて5回洗浄する。最後に、該細胞を50%グリセロール水溶液に乗せて、ローダミンフィルターを用いて蛍光顕微鏡で観察する。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】図1は、表1のバイオマーカーを同定するために使用されるスキームを図示する。
【図2】図2は、表2のバイオマーカーを同定するために使用されるスキームを図示する。
【図3】図3は、14個のNSCLC細胞株の発現プロファイリングによって決定されるEGFRのmRNAレベルを示す。
【図4】図4は、発現プロフィールの分散分析を図示する。
【図5】図5は、腺癌腫瘍のためのプローブセットの測定分散分布を図示する。
【図6】図6は、細胞株のためのプローブセットの測定分散分布を図示する。
【図7】図7は、カルグラヌリンBのIHCアッセイの染色の記録を図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EGFRモジュレーターを投与することからなる、癌の治療方法に対して治療応答する哺乳類を同定するための方法であって、該方法は、
(a)哺乳類において、表1のバイオマーカーから選択される少なくとも一つのバイオマーカーのレベルを測定し;
(b)該哺乳類由来の生物サンプルをEGFRモジュレーターに曝露し;
(c)ステップ(b)の曝露に続いて、該生物サンプルにおいて、少なくとも一つのバイオマーカーのレベルを測定することを特徴とし、
ステップ(a)で測定される少なくとも一つのバイオマーカーのレベルと比較して、ステップ(c)で測定される少なくとも一つのバイオマーカーのレベルの差は、該哺乳類が癌の治療方法に対して治療応答することを示す方法。
【請求項2】
EGFRモジュレーターを投与することからなる、癌の治療方法に対して治療応答する哺乳類を同定する方法であって、該方法は、
(a)哺乳類由来の生物サンプルをEGFRモジュレーターに曝露し;
(b)ステップ(a)の曝露に続いて、該生物サンプルにおいて、表1のバイオマーカーから選択される少なくとも一つのバイオマーカーのレベルを測定することを特徴とし、
該EGFRモジュレーターに曝露されていない哺乳類において、少なくとも一つのバイオマーカーのレベルと比較して、ステップ(b)で測定した少なくとも一つのバイオマーカーのレベルの差は、該哺乳類が癌の治療方法に対して治療応答することを示す方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−530954(P2007−530954A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505272(P2007−505272)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/010454
【国際公開番号】WO2005/094332
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】