説明

非常停止ボタン取付構造

【課題】 非常停止ボタンを押した際に、ロック状態を解除し難くすることによって、作業者に、非常停止ボタンを安易に押させないようにする。
【解決手段】 非常停止ボタンスイッチ1は、スイッチ押圧部11を押すとロック機構により押された状態が保持され、スイッチ押圧部11を円周方向に回転させることによりロックが解除される。操作盤2は、指先が入る大きさの透孔5を有していて、ネジ等の固定具によりエンジン駆動作業機外面に取り外し可能に固定されている。該操作盤2の透孔5を設けた部分の内側に、側部に開口部6を有するスイッチブラケット3を取り付け、それに非常停止ボタンスイッチ1を取り付ける。そのようにして、非常停止ボタンスイッチ1が押されたら、工具を使って前記固定具を取り外して操作盤2を取り出さなければ、ロックの解除ができなくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン駆動発電機,エンジン駆動溶接機,エンジン駆動のコンプレッサ等のエンジン駆動作業機において、作業中にエンジンを緊急に停止させるための非常停止ボタン取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジン駆動作業機では、作業中、エンジンに異常振動や異常音が発生する等、緊急事態が発生したとき、安全確保のため、即時にエンジンを停止させる必要がある。そのような場合に備えて、エンジン駆動作業機には非常停止ボタンが設けられており、緊急時にそれを押すとエンジンを即時に停止させることができる。
【0003】
従来、エンジン駆動作業機の非常停止ボタンは、例えば特許文献1に示されるように、作業位置の近くに、カバー体から突出させて設けている。しかしながら、非常停止ボタンを、そのようにカバー体から突出させて設けると、作業中、誤操作により非常停止ボタンを押してしまい、エンジンを停止させてしまうおそれがある。また、押しボタン式非常停止ボタンの場合は、非常停止するまで押し続け、停止後ボタンを離したら、バネの作用でボタンが元の位置に復帰する形式になっているため、ボタンが誤操作されたか否かが判別できず、エンジンが何故停止したのか戸惑うことも起こりうる。
【0004】
そこで、図8に示されるような、プッシュロックターンリセットスイッチと呼ばれている、ボタンを押すと、押された状態のままの状態が保持されるようにした非常停止ボタンスイッチが用いられるようになった。図8(A)は非常停止ボタンスイッチ1の正面図、図8(B)は側面図であり、11はスイッチ押圧部、12はスイッチ作動杆、13は端子、14は接点ユニット、15はロックナットである。
【0005】
スイッチ押圧部11は円盤状をしていて、その上面には、図8(A)に示すように、回転方向を示す矢印が表示されている。そのスイッチ押圧部11を押すとスイッチ作動杆12が押し込まれて接点ユニット14を作動させるが、その際、非常停止ボタンスイッチ1がロックされ、スイッチ押圧部11から手を離してもそのままの状態が保持される。
【0006】
一方、スイッチ押圧部11,スイッチ作動杆12がロック状態のとき、スイッチ押圧部11を矢印の方向に回転させるとロックが解除されて、スイッチ作動杆12が元の状態に復帰する。
【0007】
この非常停止ボタンスイッチ1は、図9に示すように、操作盤2の一部に形成した凹部に配置して、スイッチ押圧部11が操作盤2の外面から突出しないようにする。このように、スイッチ押圧部11が突出しないようにすれば、作業中、誤操作により非常停止ボタンスイッチ1を押してしまうことを防止できる。また、非常停止ボタンスイッチ1は、スイッチ押圧部11を押すと、押した状態のままロックされるため、非常停止ボタンスイッチ1が操作されたか否かが判別できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−307004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、エンジン駆動作業機では、エンジンを停止させる時、エンジン保護のために所定時間エンジンを冷機運転させてから停止させる。特にターボ付エンジンの場合は、ターボはかなりの高温になっており、急に停止させると高温になっているターボが急冷されて破損や故障の原因になり、エンジンの寿命を縮めてしまう。そればかりか、エンジン駆動作業機内のターボの近くに可燃性の物がある場合は、火災になったりすることも考えられる。したがって、停止時には十分な冷機運転が必要になる。
【0010】
そこで、エンジン駆動作業機を停止させる際に、まず、作業中の負荷を止めてから、エンジンが「高速」状態で運転しているのを、速度切替スイッチにより「低速」又は「アイドリング」側にして5分間程度冷機運転を行い、十分にエンジンを冷却してからキースイッチをオフにしてエンジンを止める方法がとられる。また、キースイッチをオフにしてもエンジンを直ちには停止させずに、自動的に冷機運転を行うという自動ストップ機能を持たせたものもある。
【0011】
そのように、エンジン駆動作業機を停止させる際には、所定時間以上、エンジンを冷機運転させてから停止させる必要がある。
【0012】
しかしながら、上記従来の非常停止ボタン取付構造を有するエンジン駆動作業機では、非常停止ボタンが容易に操作できるため、作業者が、非常時でない時でも安易に操作をしてしまうという問題点があった。例えば、作業が終わってエンジンを停止させる際に、通常の停止方法の代わりに、非常停止ボタンを押して停止させるという不正操作が起こりうる。
【0013】
また、自動ストップ機能を有している場合、キースイッチをオフにしてもエンジンは自動的に冷機運転を行い、すぐには停止しないため、不慣れな作業者があせって非常停止ボタンを操作してしまうことも起こりうる。
【0014】
そのように、本来エンジンを非常停止させるべき時以外に非常停止ボタンをむやみに押すと、エンジンの寿命を縮めたり、火災を起こしたりするおそれがあるという問題点があった。
【0015】
本発明は、そのような問題点に鑑み、非常停止ボタンを押した際に、押した状態を解除し難くすることによって、非常停止ボタンを安易に押させなくすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するため、本願の請求項1にかかる発明は、円盤状のスイッチ押圧部を押すとロック機構により動作状態が保持され、前記スイッチ押圧部を円周方向に回転させることによりロックが解除される非常停止ボタンスイッチをエンジン駆動作業機の操作盤に取り付ける非常停止ボタン取付構造であって、前記操作盤は、指先が入る大きさの透孔を有していて、工具を用いて着脱可能な固定具によりエンジン駆動作業機外面に固定され、該操作盤の前記透孔を設けた部分の内側に、操作盤対向面にスイッチ取付孔が形成され、側部に開口部を有するスイッチブラケットを取り付け、該スイッチブラケットの前記スイッチ取付孔に前記非常停止ボタンスイッチを取り付けたことを特徴とする。
【0017】
また、本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる発明において、前記操作盤の透孔とスイッチ押圧部との間に、前記スイッチブラケット内でスライド可能なスイッチプレートを介在させたことを特徴とする。
【0018】
また、本願の請求項3にかかる発明は、請求項2にかかる発明において、前記スイッチ
プレートを透明にしたことを特徴とする。
【0019】
また、本願の請求項4にかかる発明は、請求項1,2又は3にかかる発明において、前記開口部をスイッチブラケットの左右に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、次のような効果を奏する。
すなわち、請求項1にかかる発明においては、指先が入る大きさの透孔を有していて、工具を用いて着脱可能な固定具によりエンジン駆動作業機外面に固定される操作盤の前記透孔を設けた部分の内側に、操作盤対向面にスイッチ取付孔が形成され、側部に開口部を有するスイッチブラケットを取り付け、前記スイッチ取付孔にロック機構を有する非常停止ボタンスイッチを取り付けた。その結果、非常停止ボタンを押すと、それを解除するには、工具を使って作業機外面から操作盤を取り外したり、係止片に引掛けて手前に倒したりしてから非常停止ボタンのロックを解除しなければならず、手間がかかるので、作業者は、非常停止ボタンを安易には押しにくくなる。
【0021】
また、請求項2にかかる発明においては、請求項1にかかる非常停止ボタン取付構造において、操作盤の透孔とスイッチ押圧部との間に、スイッチブラケット内でスライド可能なスイッチプレートを介在させたので、透孔から雨水や塵埃が浸入するのを防止できる。しかも、火災報知器のように、ボタンの前に設けられたアクリル板を破って非常ボタンを押す方式では、元の状態に復旧させるのに、破ったアクリル板を取り替える必要があるが、本発明ではそのような部品交換の必要がない。
【0022】
また、請求項3にかかる発明においては、請求項2にかかる非常停止ボタン取付構造において、スイッチプレートを透明にしたので、内部にある非常停止ボタンの位置が一目で分かる。
【0023】
また、請求項4にかかる発明においては、請求項1,2又は3にかかる非常停止ボタン取付構造において、開口部をスイッチブラケットの左右に設けたので、非常停止ボタンのスイッチ押圧部を左右両側から操作できるので、ロック解除の操作がし易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に一実施例に係る非常停止ボタン取付構造を示す図である。
【図2】エンジン駆動作業機の外観を示す図である。
【図3】エンジン駆動作業機の操作盤を示す図である。
【図4】図3に示した操作盤の非常停止ボタン取付部を示す図である。
【図5】スイッチブラケットを示す図である。
【図6】スイッチプレートを示す図である。
【図7】非常停止ボタンの動作説明図である。
【図8】非常停止ボタンを示す図である。
【図9】従来の非常停止ボタン取付構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明に一実施例に係る非常停止ボタン取付構造を示す図である。図1において、1は非常停止ボタンスイッチ、2は操作盤、3はスイッチブラケット、4はスイッチプレート、5は透孔、6は開口部、7はスタッドボルト、8はナットである。
【0027】
操作盤2は、図2に示すように、エンジン駆動作業機の筐体9の外面に取り付けられる。筐体9の内部には、エンジン及び該エンジンによって駆動される発電機,溶接機,コンプレッサ等の作業機本体等が収納されている。
【0028】
操作盤2には、図3に示すように、エンジンを起動したり停止させたりするキースイッチ21及び燃料残量やエンジン温度等を表示するための各種計器22等が配設されており、係止片23をエンジン駆動作業機の筐体9の開口下縁に係合させてから、周縁部に設けた複数の取付孔24に六角ボルト又は十字穴付きネジ等を通すことにより、エンジン駆動作業機の筐体9に取り付けられる。
【0029】
その操作盤2の一部をなす非常停止ボタン取付部25には、指先が入る大きさの透孔5が形成されていて、その内部に非常停止ボタンスイッチ1が設けられる。図4に非常停止ボタン取付部25を示す。図4に示すように、透孔5の内側にスイッチ押圧部11が見えている。
【0030】
スイッチブラケット3は、図5に正面図,平面図及び側面図で示すように、左右両側に開口部6を有した箱形をしていて、その奥面には、非常停止ボタンスイッチ1を取り付けるためのスイッチ取付孔31が設けられ、上下には、スイッチブラケット3を操作盤2に取り付けるためのブラケット取付片32が設けられている。そして、両ブラケット取付片32,32には、スタッドボルト7を通すためのスタッドボルト挿通部33が設けられている。
【0031】
スイッチプレート4は、透明なプラスチック板であり、図6に示すように、四角形をしていて、その寸法は、スイッチブラケット3の内側の寸法よりやや小さく、スイッチブラケット3の奥面と平行な状態のままスイッチブラケット3の中でスライドできるようになっている。
【0032】
操作盤2への非常停止ボタンスイッチ1の取付は次のようにして行う。まず、非常停止ボタンスイッチ1から接点ユニット14とロックナット15を取り外し、その端部を、スイッチブラケット3のスイッチ取付孔31に挿入し、ロックナット15で締め付けて固定する。その後、接点ユニット14を取り付ける。
【0033】
そのようにして非常停止ボタンスイッチ1を取り付けたスイッチブラケット3を、透孔5を設けた部分の操作盤2内側にスタッドボルト7とナット8とで取り付ける。その際、非常停止ボタンスイッチ1のスイッチ押圧部11と透孔5との間にスイッチプレート4を挟み込んだ状態で取り付けるが、非常停止ボタンスイッチ1の押し込みストロークは通常5〜6mmあり、スイッチ押圧部11をスイッチプレート4で1mm程度押し込んだ状態で取り付けるようにすれば、非常停止ボタンスイッチ1側のバネの反力でスイッチプレート4が透孔5側に押さえつけられるので、スイッチプレート4はガタツキなく固定される。
【0034】
なお、スイッチブラケット3の内側、及び、スイッチプレート4の形状は必ずしも四角形である必要はなく、スイッチプレート4がスイッチブラケット3内を円滑にスライドできる形状であればよい。また、スイッチプレート4を透明にすれば、内部にある非常停止ボタンの位置が一目で分かるようになる。しかし、その必要がなければ、不透明な材料で形成してもよい。
【0035】
次に、図7を参照しながら、この非常停止ボタンの動作を説明する。図7(A)は、非常停止ボタンを押す前の、通常の状態を示している。エンジンに異常音が発生した場合等の非常時には、透孔5を通して、手の指でスイッチプレート4を押し込む。その結果、図
7(B)に示すように、非常停止ボタンスイッチ1のスイッチ押圧部11が押し込まれて非常停止ボタンスイッチ1の接点が開放されて、エンジンが緊急停止される。そのように非常停止ボタンスイッチ1が作動すると、非常停止ボタンスイッチ1はロックされて、図7(A)の状態には戻らない。しかも、そのままでは、非常停止ボタンスイッチ1のスイッチ押圧部11をつまんで回転させることができないので、非常停止ボタンスイッチ1のロックを解除することはできない。
【0036】
非常停止ボタンスイッチ1のロックを解除するには、スパナ,ドライバー等の工具を使って、取付孔24に通して操作盤2を筐体9の外面に固定している数本の六角ボルト又は十字穴付きネジを外し、筐体9から操作盤2を取り外したり、手前に倒して、スイッチブラケット3の開口部6から指を入れてスイッチ押圧部11を回してロックを解除する。
【0037】
その際、非常停止ボタンスイッチ1のバネの反力はなくなっていてスイッチプレート4は多少ガタついているものの、スイッチブラケット3の中で引っ掛かることはなく、スイッチ押圧部11を回して非常停止ボタンスイッチ1のロックが解除されれば、バネの反力で非常停止ボタンスイッチ1及びスイッチプレート4は元の状態に復帰する。
【符号の説明】
【0038】
1 非常停止ボタンスイッチ
2 操作盤
3 スイッチブラケット
4 スイッチプレート
5 透孔
6 開口部
7 スタッドボルト
8 ナット
9 筐体
11 スイッチ押圧部
12 スイッチ作動杆
13 端子
14 接点ユニット
15 ロックナット
21 キースイッチ
22 計器
23 係止片
24 取付孔
25 非常停止ボタン取付部
31 スイッチ取付孔
32 ブラケット取付片
33 スタッドボルト挿通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状のスイッチ押圧部を押すとロック機構により動作状態が保持され、前記スイッチ押圧部を円周方向に回転させることによりロックが解除される非常停止ボタンスイッチをエンジン駆動作業機の操作盤に取り付ける非常停止ボタン取付構造であって、
前記操作盤は、指先が入る大きさの透孔を有していて、工具を用いて着脱可能な固定具によりエンジン駆動作業機外面に固定され、該操作盤の前記透孔を設けた部分の内側に、操作盤対向面にスイッチ取付孔が形成され、側部に開口部を有するスイッチブラケットを取り付け、該スイッチブラケットの前記スイッチ取付孔に前記非常停止ボタンスイッチを取り付けたことを特徴とする非常停止ボタン取付構造。
【請求項2】
前記操作盤の透孔とスイッチ押圧部との間に、前記スイッチブラケット内でスライド可能なスイッチプレートを介在させたことを特徴とする請求項1に記載の非常停止ボタン取付構造。
【請求項3】
前記スイッチプレートを透明にしたことを特徴とする請求項2に記載の非常停止ボタン取付構造。
【請求項4】
前記開口部をスイッチブラケットの左右に設けたことを特徴とする請求項1,2又は3に記載の非常停止ボタン取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−15060(P2013−15060A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147883(P2011−147883)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000109819)デンヨー株式会社 (88)