説明

非接触型センサーによる水位確認システム

【課題】実河川での非接触型水位観測が可能とし、低コストかつ高い信頼性を有する情報を提供する。また、Xbee素子を利用することで、従来の水位計に比べ、低価格での水位情報を得、テレメータで伝送していたことに比べ、伝送情報が単純であることから、低コストの情報伝達システムが可能となる。
【解決手段】センサー格納水密箱1を構成する発信部センサーのXbee素子と、受信部2を構成するXbee素子間のZigbee(登録商標)通信の電波が、センサー部分が水面下となった場合に途絶える性質を利用して、水位を検知する。検知後、伝送装置から管理者が保有している携帯電話に文字情報として伝送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、従来の水位計よりも、河川水位を簡便に確認することを可能とする、非接触型センサーを用いた水位確認システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、急激な豪雨により、著しく河川が増水し、橋梁など河川構造物に被害を及ぼすだけでなく、通行者にも被害を与える事態が生じている。こうした事態を避けるべく、道路管理者はパトロールを行い、適切な時期に通行を禁止する措置を行うべきであるが、その判断のために、河川の水位確認は重要な役割を有している。
従来、河川水位はフロート式や圧力式などの方式で測定しており、これらは水位の値を常時測定可能であるが、設置には10〜20百万円程度の費用を要し、また、山間部などの商用電力が得られがたい地域では受電に多額の費用を要することから、実用上、設置が困難であったため、中小河川ではほとんど普及が進んでいない。
しかし、道路の通行止めを判断するための河川の水位情報としては、必ずしもフロート型や圧力式などを用いる場合の連続値である必要がなく、最低限、設定水位を超えたという状態が確認できれば良く、道路管理上は、河川水位を低・高・洪水などの3点程度で把握することで、警戒や通行止めの措置を迅速に構築可能と考えられる。
このために、ICタグ間の通信を活用した水位確認装置が公表されているが、ICタグには2種類があり、このうち、パッシブICタグの離隔距離は1〜2mが限度であり、道路のアンダーパスのような構造では適用できるが、実河川が10〜20mの変動を観測する必要があることに照らすと、適用は困難であった。<特許文献 特開2009−293958>
一方で、アクティブICタグは、通信距離が数十mまでは伸びるが、内臓電池の寿命は長くなく、早ければ1年程度でICタグ自身を交換する必要があることから、頻繁に維持管理をする必要があり、実用的には適用が困難である。
さらに、従来、河川管理者はパソコン画面や大型ディスプレイを用いて、水位の値やその変動状態を確認してきたが、この方式は初期コストが高く、かつ、測定箇所の増加に柔軟に対応するソフトウェアの改良は容易ではなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のICタグを用いた水位確認装置や、テレメータ方式の伝送装置については、そのコスト面を含めた実用性が不十分という欠点があった。
また、山間地では、商用電源の確保に多額の費用を要する場合が少なくないため、従来型の測定装置や伝送装置の設置が困難という欠点もあった。水位データとしても、連続値を表示するには、伝送・表示装置の双方を高度なものとする必要があるという欠点もあった。
本発明は、以上の欠点を克服するために、なされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
水密性の高い筐体にXbee素子を格納し、表面に太陽光発電パネルをつけた装置を橋脚に発信部として複数設置し、橋梁の床版下部や桁の側面部内側にZigbee通信の受信機と伝送装置を設置し、この素子間の通信電波が、水面下となった場合に断絶することを利用して、水位の検知を行う。このセンサーとしては、装置構造や維持作業を単純容易にするため、河川水に接触しない方式が好ましく、無線通信の機能を利用することで解決が可能となる。
得られた情報は「設定水位を超過」「設定水位以下になった」の2種類であり、これを伝送装置から管理者の携帯電話や、管理者の用意する情報システムへ送る。
より精度の高い測定は、発信部センサーの間隔を狭めることで実現が可能であり、この際には、支持母体として筺体を使用せず、電線管等の管体に取り付けることで、間隔の密な検知を行う。さらに、下水の水位測定など腐食性の環境では、発信部を樹脂等で覆うことで耐用年数の長寿命化を行う。
また、これらにより、伝送する情報量も少なくなり、検出センサー、伝送装置ともに低電力で作動可能となることから、山間地などの商用電力非供給地域であっても、低容量の太陽光発電を用いることで給電が可能となる。
さらに、伝送情報が単純であることから、表示側も携帯電話など簡易な装置で情報を表示することが可能となる。
本発明は、以上の構成よりなる水位確認システムである。
【発明の効果】
【0005】
コスト面などから、従来は実用化できなかった、実河川での非接触型水位観測が可能となるため、道路管理のための、低コストかつ高い信頼性を有する情報を提供できる。
Xbee素子を利用することで、従来の水位計に比べ、低価格での水位情報を得ることが可能となる。
従来の水位計は、水位の値をテレメータで伝送していたことに比べ、伝送情報が単純であることから、低コストの情報伝達システムが可能となる。
従来、水位情報をパソコン画面等で表示していたことに比べ、携帯電話の利用を可能とすることで、よりコストの低い表示が可能となる。
【発明を実施するための最良の方法】
【0006】
以下、本発明を実施するための最良の形式について説明する。
水密性の高い筐体にXbee素子を格納し、表面に太陽光発電パネルをつけた発信部装置を、橋脚の上下方向に分けて複数設置し、耐久性向上のため、橋梁の床版下部や桁の側面部内側にZigbee通信の受信機と伝送装置を設置することと考えている。この受信部の給電は、桁の側面部に太陽光発電素子を設置することでまかなう。
将来、より間隔の密な水位把握を行う場合の発信部としては、電線管など管状の部材に、一定間隔で発信部であるXbee素子を設置し、上部から集中給電する方式も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は本システムを構成する主要な要素と、その配置概要を示したものである。 1を構成する発信部センサーと、2を構成する受信部のZigbee通信の電波を、センサー部分が水面下となった場合に途絶える性質を利用して、水位を検知する。検知後、情報は伝送装置から管理者が保有している携帯電話に文字情報として伝送することを基本とする。
【図2】図2は、本システムのフローを示したものである。
【符号の説明】
【0008】
1 センサー格納水密箱には、内部にZigbee通信素子を収納し、表面には太陽光発電素子を取り付ける。
2 受信部には、Zigbee通信の受信部であるXbee素子と、その情報を携帯電話等に発する伝送装置を収納し、電源供給のため桁の側面部に太陽光発電素子を据え付ける。
3 本情報の受信装置としては、一般的な携帯電話、または一般に普及しているパソコンを想定している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に没した状態で無線通信による疎通が損なわれる性質を利用する水位観測装置において、誘電型ICタグに換えて、Zigbee通信を行うXbee素子を使用することによって、一般河川のような水位変動が0〜20mの範囲であっても水位を確認できる装置と、有線による電力が供給されていない山間地でも測定を可能とする太陽光発電による給電装置を備え、さらに、伝送する情報を携帯電話に表示できるようにしたシステム。
【請求項2】
請求項1において、測定水位が設定水位を超過、もしくは低下したという情報のみを伝送することで、従来の河川水位計で一般的であったテレメータ機器を使用する必要を解消し、携帯電話など簡易な伝送装置を利用可能としたシステム。
【請求項3】
請求項1において、簡易な水位確認装置を導入し、また、テレメータ装置を使用しない簡易な伝送装置を用いることで、現場設置機器の消費電力を低減させ、太陽光発電の利用を現実的としたシステム。
【請求項4】
請求項1において、Xbee素子を水密箱に格納する方法に換えて、電線管など管状の素材の表面にXbee素子を垂直方向に複数取り付け、その素子(センサー)間隔を詰めることで、測定間隔の密な水位確認を可能とする装置と、その電線管から集中給電するシステム。
【請求項5】
請求項2の伝送した情報を表示する機能において、専用のパソコンを使用して、大型ディスプレイや専用グラフィックパネルに表示する従来のシステムに比べて、道路・河川管理者や委託を受けた維持業者の携帯電話に、文字メッセージや簡単な画像を送ることで、伝送・表示コストを低減するシステム。
【請求項6】
請求項1および4において、下水処理場のような劣悪な環境でも機器が腐食しないよう、発信部や受信部を樹脂コーティングし、使用可能年限を向上させる装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−154911(P2012−154911A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29146(P2011−29146)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(511039463)株式会社リブテック (1)
【Fターム(参考)】