説明

非接触走行方式のエレベータ

【課題】案内開始時に必要となる最大電力を抑え、少ない電源容量で乗りかごを非接触で走行案内させる。
【解決手段】乗りかごを磁気力の作用によりガイドレールから浮上させて非接触で走行案内する案内装置を備えたエレベータにおいて、上記乗りかごの少なくとも2軸以上の運動軸(x,y,θ,ξ,ψ軸)に関して磁気力を発生させるように上記案内装置を制御する。その際、案内開始時には、上記各運動軸のうち一部に対してのみ制御を行い、案内開始から所定の時間が経過した後、他の運動軸に対して制御を行う。これにより、非接触案内制御に必要となる電流の最大値を低く抑えることが可能になり、従来よりも少ない電源容量にて案内装置を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗りかごをガイドレールに対して非接触で走行させる非接触走行方式のエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベータの乗りかごは、昇降路内に垂直方向に設置された一対のガイドレールに支持され、巻上機に巻き掛けられたロープを介して昇降動作する。その際、負荷荷重の不均衡や乗客の移動により揺動するが、ガイドレールに支持されることで、これらの揺動が抑制されるようになっている。
【0003】
ここで、エレベータに用いられる案内装置としては、従来、ガイドレールに接する車輪とサスペンションとで構成されたローラーガイド、もしくは、ガイドレールに対して摺動して案内するガイドシュー等が用いられていた。しかし、このような接触方式の案内装置では、ガイドレールの歪みや継ぎ目、表面状態に起因する振動や騒音が車輪もしくは摺動部を介して乗りかご内に伝達したり、ローラーガイドが回転する際に発生する転動音により、エレベータの快適性が損なわれるといった問題があった。
【0004】
こうした問題点を解決するために、従来、例えば特許文献1に開示されているように、電磁石により構成された案内装置を乗りかごに搭載し、鉄製のガイドレールに対して磁気力を作用させて、乗りかごを非接触で案内する方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献2においては、上記電磁石を用いた構造で問題となる制御性の低下および消費電力の増大等を解決する手段として、案内装置に永久磁石を備える方法が提案されている。
【特許文献1】特開平5−178563号公報
【特許文献2】特開2001−19286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような非接触方式の案内装置では、通常、非接触状態への浮上開始から乗りかごの走行・停止、そして浮上停止までの間において、所定の制御則に従って磁気力を制御して乗りかごを走行案内するように構成されている。
【0007】
その際、乗りかごが安定して非接触状態(浮上状態)にあるときには、案内に必要とする電力が比較的少なくて済む。しかし、乗りかごがガイドレールに接触している状態から離脱して浮上するとき(案内開始時)には、瞬間的に比較的大きな電力が必要となる。したがって、案内装置の電源容量としては、この案内開始時の電力に合わせて十分に余裕を持たせて設計しなければならなかった。
【0008】
本発明は上記のような点に鑑みなされたもので、案内開始時に必要となる最大電力を抑え、少ない電源容量で乗りかごを非接触で走行させることのできる非接触走行方式のエレベータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点による非接触走行方式のエレベータは、昇降路内に上下方向に敷設されたガイドレールと、このガイドレールに沿って昇降動作する乗りかごと、この乗りかごの上記ガイドレールとの対向部に設置され、磁気力の作用により上記乗りかごを上記ガイドレールから浮上させて非接触で走行案内する案内装置と、上記乗りかごの少なくとも2軸以上の運動軸に関して磁気力を発生させるように上記案内装置を制御するものであり、案内開始時には、上記各運動軸のうちの一部に対してのみ制御を行い、案内開始から所定の時間が経過した後、他の運動軸に対して制御を行う制御装置とを具備したことを特徴とする。
【0010】
本発明の他の観点による非接触走行方式のエレベータは、昇降路内に上下方向に敷設されたガイドレールと、このガイドレールに沿って昇降動作する乗りかごと、この乗りかごの上記ガイドレールとの対向部に設置され、磁気力の作用により上記乗りかごを上記ガイドレールから浮上させて非接触で走行案内する案内装置と、上記乗りかごの少なくとも2軸以上の運動軸に関して磁気力を発生させるように上記案内装置を制御するものであり、上記各運動軸毎に設定された制御ゲインを有し、上記各運動軸のうちの特定の運動軸に関しては、案内開始から案内に必要となる磁気力を発生させるための制御ゲインにより制御を行い、他の運動軸に関しては、案内開始時には案内に必要となる磁気力を発生させるための制御ゲインよりも低く設定された制御ゲインにより制御を行い、案内開始から所定の時間が経過した後、上記各運動軸を所定の制御ゲインにより制御する制御装置とを具備したことを特徴とする。
【0011】
本発明の他の観点による非接触走行方式のエレベータは、昇降路内に上下方向に敷設されたガイドレールと、このガイドレールに沿って昇降動作する乗りかごと、この乗りかごの上記ガイドレールとの対向部に設置され、磁気力の作用により上記乗りかごを上記ガイドレールから浮上させて非接触で走行案内する案内装置と、上記乗りかごの少なくとも2軸以上の運動軸に関して磁気力を発生させるように上記案内装置を制御するものであり、上記各運動軸毎に設定された制御ゲインを有し、上記各運動軸に関する案内位置が所定の範囲内にあるときには、通常状態で案内するための制御ゲインにより制御を行い、案内位置が所定の範囲外にあるときには、一部または全部の運動軸の制御ゲインを、通常状態で案内するための制御ゲインとは異なる制御ゲインで制御する制御装置とを具備したことを特徴とする。
【0012】
本発明の他の観点による非接触走行方式のエレベータは、昇降路内に上下方向に敷設されたガイドレールと、このガイドレールに沿って昇降動作する乗りかごと、この乗りかごの上記ガイドレールとの対向部に設置され、磁気力の作用により上記乗りかごを上記ガイドレールから浮上させて非接触で走行案内する案内装置と、上記乗りかごの少なくとも2軸以上の運動軸に関して磁気力を発生させるように上記案内装置を制御するものであり、上記各運動軸毎に設定された少なくとも2種類の制御ゲインを有し、上記各運動軸の状態に応じて上記各制御ゲインを切り替えて制御する制御装置とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、案内開始時に必要となる最大電力を抑え、少ない電源容量で乗りかごを非接触で走行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る非接触案内装置をエレベータの乗りかごに適用した場合の斜視図である。
【0016】
図1に示すように、エレベータの昇降路1内には、鉄製で強磁性体からなる一対のガイドレール2a,2bが立設されている。乗りかご4は、図示せぬ巻上機に巻き掛けられたロープ3によって吊り下げられており、上記巻上機の回転駆動に伴い、ガイドレール2a,2bに沿って昇降動作する。なお、図中の4aはかごドアであり、乗りかご4が各階に着床したときに開閉動作する。
【0017】
ここで、乗りかご4のかごドア4aを正面として見た場合に、そのかごドア4aの左右方向をx軸、前後方向をy軸、上下方向をz軸とする。また、x,y,z軸に対する回転方向をθ,ξ,ψとする。
【0018】
乗りかご4の上下左右の四隅の連結部に、ガイドレール2a,2bに対向させて案内装置5a,5b,5c,5dが取り付けられている。後述するように、この案内装置5a,5b,5c,5dの磁気力を制御することで、乗りかご4をガイドレール2a,2bから浮上させて非接触にて走行案内する。
【0019】
なお、磁気力の制御は、図1に示した6つの運動軸(x,y,z,θ,ξ,ψ)のうちのz軸を除く5つの運動軸に対して行われる。z軸方向を除くのは、z軸方向はロープ3にて乗りかご4を支えており、浮上には関係しないためである。
【0020】
図2に右側のガイドレール2bの上部に取り付けられた案内装置5bを代表として、その構成を示す。
【0021】
案内装置5bは、磁石ユニット6と、磁石ユニット6とガイドレール2a,2bとの間の距離を検出するギャップセンサ7と、それらを支持している台座8とで構成されている。その他の案内装置5a,5c,5dについても同様の構成である。
【0022】
図3に示すように、磁石ユニット6は、永久磁石9a,9bと、ガイドレール2a,2bを3方向から囲む形で磁極を対向させる継鉄10a,10b,10cと、その継鉄10a,10b,10cを鉄心として磁極部分の磁束を操作することのできる電磁石を構成するコイル11a,11b,11c,11dとからなる。
【0023】
このような構成において、ギャップセンサ7等によって検出された磁気回路中の状態量に基づいてコイル11に励磁される。これにより、ガイドレール2a,2bと磁石ユニット6とが電磁力の発生によって離間し、乗りかご4を非接触で走行案内することができる。
【0024】
(制御装置の構成)
図4は非接触案内を行うための制御装置の構成を示すブロック図である。
【0025】
制御装置21は、磁石ユニット6およびガイドレール2a,2bによって形成される磁気回路中の物理量を検出するセンサ部22と、このセンサ部22からの信号に基づいて乗りかご4を非接触案内させるべく各コイル11に印加する電圧を演算する演算器23と、演算器23の出力に基づいて各コイル11に電力を供給するパワーアンプ24とで構成されており、これらで乗りかご4の四隅に設置された磁石ユニット6の吸引力を制御している。
【0026】
センサ部22は、各磁石ユニット6とガイドレール2a,2bとの間の空隙の大きさを検出するギャップセンサ7と、各コイル11に流れる電流値を検出する電流検出器25とで構成されている。
【0027】
演算器23は、図1に示したx,y,θ,ξ,ψの5つの運動軸に関する演算処理を行うものである。図5に示すように、この演算器23は、ギャップ長偏差座標変換器31、励磁電流偏差座標変換器32、制御電圧演算器33、制御電圧座標逆変換器34から構成されている。
【0028】
ギャップ長偏差座標変換器31は、各ギャップセンサ7から得られたギャップ長と、その設定値の差であるギャップ長偏差信号から乗りかご4のx方向の移動量Δx,y方向の移動量Δy,θ方向(ロール方向)の回転角Δθ,ξ方向(ピッチ方向)の回転角Δξ,ψ方向(ヨー方向)の回転角Δψを演算する。
【0029】
励磁電流偏差座標変換器32は、各コイル11の電流検出器25から得られた電流値と、その設定値の差である電流偏差信号から乗りかご4のx方向の運動にかかわる電流偏差Δix、y方向の運動にかかわる電流偏差Δiy、θ方向の回転にかかわる電流偏差Δiθ、ξ方向の回転にかかわる電流偏差Δiξ、ψ方向の回転にかかわる電流偏差Δiψを演算する。
【0030】
制御電圧演算器33は、ギャップ長偏差座標変換器31および励磁電流偏差座標変換器32の出力Δx,Δy,Δθ,Δξ,Δψ,Δix,Δiy,Δiθ,Δiξ,Δiψに基づいて、x,y,θ,ξ,ψの5つのモードにおいて、乗りかご4を安定に非接触案内させるためのモード別電磁石制御電圧ex,ey,eθ,eξ,eψを演算する。
【0031】
制御電圧座標逆変換器34は、制御電圧演算器33の出力ex,ey,eθ,eξ,eψより各磁石ユニット6のそれぞれのコイル励磁電圧を演算し、この結果をもとにパワーアンプ24を駆動させる。
【0032】
この制御電圧演算器33は、さらに詳しくは、xモード制御電圧演算器33a、yモード制御電圧演算器33b、θモード制御電圧演算器33c、ξモード制御電圧演算器33d、ψモード制御電圧演算器33eから構成されている。
【0033】
さらに、制御電圧演算器33a〜33eの各々の内部構造は、図6のようになっている。すなわち、制御電圧演算器33a〜33eは、それぞれに微分器36、ゲイン補償器37、積分補償器38、加減算器39から構成されている。
【0034】
微分器36は、モード変位Δx,Δy,Δθ,Δξ,Δψのそれぞれから時間変化率Δx′,Δy′,Δθ′,Δξ′,Δψ′を演算する。ゲイン補償器37は、モード変位Δx,…、モード変位の時間変化率Δx′,…、モード電流Δix,…それぞれに対して適当な制御ゲインを乗じる。積分補償器38は、電流偏差目標値とモード電流Δix,…の差を積分して適当な制御ゲインを乗じる。加減算器39は、全部のゲイン補償器37および積分補償器38の出力値を加減算することにより各モード(x,y,θ,ξ,ψ)の励磁電圧(ex,ey,eθ,eξ,eψ)を演算する。
【0035】
このような構成の演算器23によってフィードバック制御を施すことにより、磁石ユニット6とガイドレール2a,2bとの間に所定のギャップ長を維持させるべく、各コイル11に励磁する電流を制御する。これによって、定常状態において、各磁石ユニット6におけるギャップ長は、永久磁石9の起磁力による各磁石ユニットの磁気的吸引力が、乗りかご4に作用するx方向の力、y方向の力、θ方向のトルク、ξ方向のトルクおよびψ方向のトルクとちょうど釣り合うような長さになる。
【0036】
このように、定常状態においてコイル11の励磁電流を零に収束させることによって非接触案内制御を行っており、乗りかご4の重量および不平衡力の大きさの如何にかかわらず、永久磁石9の吸引力で乗りかご4を安定に支持する、いわゆる「ゼロパワー制御」が施される。
【0037】
ゼロパワー制御による磁気案内系が構成されることにより、乗りかご4がガイドレール2a,2bに対して非接触で安定に支持され、定常状態にあるときには、各コイル11に流れる電流は零に収束し、安定支持に必要となる力は全て永久磁石9による磁気力でまかなわれることになる。
【0038】
これは、乗りかご4の重量やバランスが変化した場合でも同様である。すなわち、乗りかご4に何らかの外力が加えられた場合、案内装置5a,5b,5c,5dとガイドレール2a,2bとの間の空隙の大きさを所定の大きさにするために過渡的にコイル11に電流が流れることになるが、再度安定状態になった際には、上記制御手法を用いることにより、コイル11に流れる電流は零に収束し、そのとき乗りかご4に加わる荷重と、永久磁石9の磁気力によって発生する吸引力とが釣り合う大きさの空隙が形成される。
【0039】
なお、浮上案内における磁石ユニットの構成およびゼロパワー制御については、特開2001−19286号公報に詳細に示されているため、ここでは省略する。
【0040】
(動作)
次に、乗りかご4がガイドレール2a,2bに接触した状態から浮上し、非接触案内状態(非接触にて案内走行可能な状態)に移行するときの動きについて説明する。
【0041】
図7は非接触案内制御を行っていないときのエレベータの乗りかご4を上から見た場合の平面図である。案内装置5a,5b,5c,5dは、その一部をガイドレール2a,2bに接触させている。この図7では、乗りかご4の上部に搭載された案内装置5a,5bのみが図示されており、紙面の横方向がx、紙面の縦方向がyとなる。
【0042】
通常、この状態から非接触案内制御を開始した場合、乗りかご4の上下方向(z方向)を除く5つの運動軸x,y,θ,ξ,ψごとに設計された全ての制御系が作用し、全運動軸を同時に浮上させるべく案内装置5a,5b,5c,5dの各コイル11に電流が励磁される。したがって、各コイル11には、図8に示すように、全運動軸で浮上に必要となる電流が瞬時に流れることになり、非常に大きな電流が励磁されることになる。このため、案内装置の電源容量として十分に余裕を持たせておく必要があるといったことは既に背景技術の項で述べた通りである。
【0043】
そこで、本実施形態では、非接触案内制御を開始する際に、上記5つの運動軸x,y,θ,ξ,ψの一部の運動軸に対してのみ制御(励磁電流の制御)を行い、その後、所定の時間が経過して安定にしたら、残りの他の運動軸に対して制御を行うことで、瞬間的に大きな電流を流すことを防いで、トータルの電力消費を抑えるようにしている。
【0044】
今、例えばx方向とθ方向の2軸の運動軸を最初に制御する場合を想定して説明する。そのときの各運動軸毎の変化と、全コイルを励磁する電流の絶対値の総和との関係を図9に示す。
【0045】
この場合、乗りかご4は、図9に示すように、はじめにx軸およびθ軸に関する方向にのみ浮上して非接触案内状態となる。その際に、必要となる電流は2軸の電流制御に用いる分のみである。
【0046】
その後、所定の時間が経過してx,θ方向の案内制御が安定した時点で、x,θ軸の非接触案内状態を安定に維持したまま、残りの運動軸であるy,ξ,ψの運動軸について制御を行う。このとき必要となる電流は、3軸の起動に用いる分と、既に非接触案内状態となっている2軸の姿勢を維持する分である。
【0047】
以上のようなプロセスで案内を開始することにより、乗りかご4は、最終的に全運動軸のx,y,θ,ξ,ψ軸について安定に浮上することになり、図10に示すように、ガイドレール2a,2bに接触することなく案内されることになる。
【0048】
その際、各運動軸に対する制御開始のタイミングがずれていることで、案内開始時に全軸を同時に浮上させるのに必要となる電流値よりも低い電流値で乗りかご4を非接触で案内することができる。
【0049】
また、本実施形態では、各運動軸についてゼロパワー制御が実施されているため、それぞれの運動軸について安定に浮上した状態では、各運動軸を制御するための制御電流は零に収束する。そのため、最初に制御を開始した運動軸が安定した後は、非常に小さな電流で浮上状態を維持することが可能となる。よって、後から制御を開始する運動軸で浮上に必要となる電流を付加しても、全電流値としては比較的小さな電流で済む。
【0050】
このように、各運動軸の制御開始のタイミングをずらすことにより、非接触案内制御に必要となる電流の最大値を低く抑えることが可能になり、従来よりも少ない電源容量にて案内装置を実現することができる。
【0051】
なお、ここでは一例として、最初にx,θ軸の制御を行い、その後にy,ξ,ψ軸の制御を行うものとして説明したが、制御開始の組み合わせはこの例に限らず、任意の組み合わせが可能である。
【0052】
また、ここでは制御開始のタイミングを2回に分けた例を示したが、さらに多数回に分けて制御を開始しても良く、その場合にはさらに最大電流を低く抑えることが可能となる。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0054】
図11は本発明の第2の実施形態に係る制御電圧演算器33a〜33eの構成を示すブロック図であり、図6と対応している。図6と異なる点は、ゲイン係数乗算器41が追加されていることである。
【0055】
すなわち、第2の実施形態では、上記第1の実施形態と同様に、エレベータの乗りかご4を磁気力によって浮上案内する。その際に、各運動軸のゲイン補償器37および積分補償器38の制御ゲインのそれぞれに、ゲイン係数乗算器41によって所定のゲイン係数(α1,α2,α3,α4)を乗じるように構成されている。
【0056】
このような構成において、通常はゲイン係数の値を「1」とし、予め設定された制御ゲイン(つまり、制御ゲイン×1)で磁石ユニット6の制御を行う。
【0057】
ここで、非接触案内制御を開始する際に、例えば図12に示すように、x軸とθ軸に関するゲイン係数を通常の「1」よりも大きく設定する。なお、どの程度までゲイン係数を大きくするのかは、案内装置の浮上能力などによって決められる。
【0058】
x軸とθ軸に関するゲイン係数を大きくすると、最終的に得られる制御ゲインが相対的に他の軸よりも大きくなる。このため、主にx,θ軸に関する力が乗りかご4に作用し、x,θ軸に関して非接触案内状態になる。このとき、相対的に制御ゲインが低くなっている他の軸、つまり、y,ξ,ψの各軸については、非接触案内に十分な電流が励磁されないため、浮上しない可能性がある。
【0059】
そこで、x,θ軸に関するゲイン係数を徐々に1に近づけていく。すると、x,θ軸に関する非接触案内を保ったまま、相対的に他の軸に関する制御ゲインが大きくなり、y,ξ,ψ軸に対して十分な電流が励磁されるようになると、それらの軸方向にも非接触案内状態とすることができる。
【0060】
その後、y,ξ,ψの各軸も安定した時点で、それらの軸に関するゲイン係数を通常値の「1」に戻すことで、予め設定された制御ゲインによる案内制御が行なわれる。このとき、ゲイン係数の大きさを運動軸毎に差をつけるか、一部の運動軸のゲイン係数を通常時の「1」のままとして変化させないことで、各運動軸が非接触案内状態に移行する順序を決めることができる。
【0061】
また、図12に示すように、所定の移行時間を設けて、その間でゲイン係数を線形的に変化させると、制御状態の急激な変化がなくなり、滑らかに、安定して制御ゲインを変化させることができる。これにより、乗りかご4に大きな衝撃を与えることなく、安定して案内することが可能となる。
【0062】
また、線形的に変化させるのではなく、所定のローパスフィルタを介してゲイン係数を変化させることでも良い。このように、ローパスフィルタを介してゲイン係数を変化させても、図13に示すように、滑らかに制御ゲインの値を変化させることが可能である。
【0063】
このように、各運動軸に関するゲイン係数を時間経過に応じて変化させることでも、上記第1の実施形態と同様に、非接触案内制御に必要となる電流の最大値を低く抑えることが可能になり、従来よりも少ない電源容量にて案内装置を実現することができる。
【0064】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
なお、基本的な回路構成については上記第2の実施形態の図11と同様であるため、ここでは、ゲイン係数のかけ方の違いについて説明する。
【0065】
すなわち、第3の実施形態では、上記第2の実施形態と同様に、乗りかご4を磁気力によって案内し、各運動軸の制御ゲインのそれぞれに、ゲイン係数乗算器41によって所定のゲイン係数(α1,α2,α3,α4)を乗じるように構成されている。
【0066】
このような構成において、通常は、ゲイン係数の値を「1」とし、予め設定された制御ゲインによって各磁石ユニット6の制御を行い、乗りかご4の案内状態に応じてゲイン係数を変化させて案内制御を行う。
【0067】
ここで、非接触案内時において、各磁石ユニット6に対する各運動軸の案内位置が所定の案内範囲(浮上範囲)内にあるときには、ゲイン係数を通常時の「1」として制御する。一方、所定の案内範囲外であれば、ゲイン係数を通常時の「1」よりも大きな値とする。上記所定の案内範囲外とは、接触状態であるか、あるいは、案内位置が安定位置から大きく離れたの状態のことである。
【0068】
例えば図14に示すように、x軸とθ軸に関する変位が所定の案内範囲外の場合には、x軸およびθ軸に関する運動軸の制御ゲインにかかわるゲイン係数を通常時の「1」よりも大きな値とする。なお、どの程度までゲイン係数を大きくするのかは、案内装置の浮上能力などによって決められる。
【0069】
そうすることで、所定の案内範囲外の運動軸に関して、通常よりも大きなフィードバックが働くため、その運動軸について、安定位置に修正する力が大きくことになり、結果的に乗りかご4の非接触案内状態を維持することができる。
【0070】
また、y,ξ,ψの各軸に関する変位が所定の案内範囲を超えた場合にも、上記同様に、これらの運動軸の制御ゲインに関わるゲイン係数を大きくして、フィードバックを強くする。
【0071】
さらに、各軸におけるゲイン係数の値のうち、特定の軸(例えばx,θ軸)に関するゲイン係数と、その特定の軸以外の軸(例えばy,ξ,ψ軸)に関するゲイン係数の大きさに差を設けておく。案内制御を行っていない場合には、図15に示すように、乗りかご4および案内装置5a,5b,5c,5dは、ガイドレール2a,2bに接触した状態となっている。このとき、各運動軸もしくは磁石ユニット6の案内位置は所定の範囲外にあることになる。そのため、制御ゲインは通常よりも大きなゲイン係数がかかった値となる。
【0072】
その際、各運動軸におけるゲイン係数に差を設けておくことで、乗りかご4がガイドレール2a,2bに接触しているときに、各軸方向に関する制御ゲインに差が生じる。
【0073】
例えば、x,θ軸に関するゲイン係数を、y,ξ,ψ軸に関するゲイン係数よりも大きく設定しておくことで、浮上制御開始時に、x,θ軸について高いフィードバックがかかり、x,θ軸に関して非接触案内状態になる。そうして、x,θ軸にかかわる案内位置が所定の範囲内に入った時点で、x,θ軸に関するゲイン係数の値を通常の値まで変化させる。
【0074】
すると、まだ非接触案内状態になっておらず、所定の範囲外に案内位置があるy,ξ,ψ軸に関するゲイン係数は大きな値に設定されているため、相対的にy,ξ,ψ軸に関する制御ゲインが大きくなり、それらの運動軸についても非接触案内状態となるべく力が作用する。そうして、最終的に全軸方向について非接触案内状態になり、所定の範囲内に案内位置が収束すると、すべての軸に関するゲイン係数が通常値の「1」となり、予め設定された制御ゲインによる安定した案内制御が行われる。
【0075】
また、上記第2の実施形態と同様、ゲイン係数の変化を急峻なものではなく、所定の移行時間を要して線形的に変化させたり、ローパスフィルタを介して滑らかに変化させても良い。これにより、乗りかご4の案内状態を滑らかに移行させることが可能となる。
【0076】
また、案内位置が所定の範囲外にあるときに、制御ゲインを変化させることから、通常案内時において、何らかの外乱などにより乗りかご4がガイドレール2a,2bに接触しそうになった場合でも、速やかに制御ゲインを高くして、ガイドレール2a,2bへの接触を回避することが可能となる。
【0077】
このように、各運動軸に関するゲイン係数を各運動軸毎に変位に応じて変化させることでも、上記第1の実施形態と同様に、非接触案内制御に必要となる電流の最大値を低く抑えることが可能になり、従来よりも少ない電源容量にて案内装置を実現することができる。
【0078】
なお、上記第2、第3の実施形態において、各制御軸の全ての制御ゲインについてゲイン係数を設けた例を示したが、全ての制御ゲインについてゲイン係数を設ける必要はなく、一部の制御ゲインについてのみゲイン係数を設けてもよい。
【0079】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
【0080】
図16は本発明の第4の実施形態に係る制御電圧演算器33a〜33eの構成を示すブロック図であり、図6と対応している。図6と異なる点は、ゲイン補償器37が第1のゲイン補償器42と第2のゲイン補償器44で構成され、積分補償器38が第1の積分補償器43と第2の積分補償器45で構成されていることである。
【0081】
すなわち、第4の実施形態では、上記第1の実施形態と同様、乗りかご4を磁気力によって案内するが、その際に図16に示すように、各運動軸の制御ゲインを少なくとも2種類設定しておく。
【0082】
図16の例では、第1のゲイン補償器42、第1の積分補償器43に用いる制御ゲインを第1の制御ゲインとし、第2のゲイン補償器44、第2の積分補償器45に用いる制御ゲインを第2の制御ゲインとしている。また、少なくとも1つの運動軸に関して、第2の制御ゲインの少なくとも1つは第1の制御ゲインよりも大きな値を用いるものとし、全体として大きな制御が生じるようにする。また、第1の制御ゲインと第2の制御ゲインを切り替える切替え器46を設けておく。
【0083】
今、x方向とθ方向の2軸の運動軸に関する第2の制御ゲインは比較的大きな値を持っており、y,ξ,ψ軸の第2の制御ゲインは比較的小さな値を持っているものとする。図17に示すように、案内開始時に第2の制御ゲインを用いた場合、まず、大きな制御ゲインで制御されるx,θ軸の運動軸が非接触案内状態となる。
【0084】
ここで、x,θ軸が安定して非接触案内状態となった時点で、切替え器46によりx,θ軸に関する制御ゲインを第2の制御ゲインから第1の制御ゲインに変更する。すると、y,ξ,ψ軸に関する運動軸に関する制御ゲインが大きくなるため、それらの軸方向について非接触案内状態となる。そうして、全軸方向が非接触案内状態となった時点で、これらの制御ゲインを第1の制御ゲインに切り替えて通常案内状態にする。
【0085】
また、第1の制御ゲインと第2の制御ゲインの切り替え時に、所定の移行時間を要して線形的に変化させたり、ローパスフィルタを介して滑らかに変化させることにより、乗りかご4に乗っている人に制御の急峻な切り替えを感じさせないことができる。
【0086】
なお、上記実施形態では、各運動軸における第2の制御ゲインの大きさに明確な差を設ける例について説明したが、特に第2の制御ゲインに明確な差がなくても問題はない。案内開始時には、通常案内時よりも速い収束性が必要となる場合があるため、案内開始時に第2の制御ゲインを用いて、通常案内時とは異なる制御ゲインを用いることは効果的である。
【0087】
また、上記実施形態では、各運動軸に関して2種類の制御ゲイン(第1の制御ゲインと第2の制御ゲイン)を設ける構成としたが、さらに多数の制御ゲインを設けて、これらを時間経過に伴って切り替えるようにしても良い。
【0088】
このように、各運動軸に関して複数の異なる制御ゲインを設け、これらを時間経過に伴って切り替えることでも、上記第1の実施形態と同様に、非接触案内制御に必要となる電流の最大値を低く抑えることが可能になり、従来よりも少ない電源容量にて案内装置を実現することができる。
【0089】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
なお、基本的な回路構成については上記第4の実施形態の図16と同様であるため、ここでは、制御ゲインの切替え方の違いについて説明する。
【0090】
すなわち、第5の実施形態では、上記第4の実施形態と同様に、各運動軸のゲイン補償器37および積分補償器38に用いる制御ゲインを少なくとも2種類設定しておく。
【0091】
ここで、所定の範囲内に案内位置があるときに用いられる通常案内時の制御ゲインを第1のゲイン補償器42、第1の積分補償器43とし、所定の範囲外にあるときに用いられる制御ゲインを第2のゲイン補償器44、第2の積分補償器45とする。
【0092】
また、第1のゲイン補償器42、第1の積分補償器43に用いる制御ゲインを第1の制御ゲインとし、第2のゲイン補償器44、第2の積分補償器45に用いる制御ゲインを第2の制御ゲインとする。
【0093】
ここで、図18に示すように、案内制御時は第1の制御ゲインを用いて制御を行い、その間に何らかの外乱によって案内位置が所定の範囲外になったときに、第2の制御ゲインに切り替える。その際、第2の制御ゲインを第1の制御ゲインよりも高く設定しておくことで、乗りかご4がガイドレール2a,2bと接触しそうになったときに、比較的強い力で安定状態に戻す力が作用することになる。
【0094】
また、案内制御を行っておらず、乗りかご4がガイドレール2a,2bに接触している場合は、第2の制御ゲインが用いられるため、案内開始時には必然的に第2の制御ゲインを使うことになる。このとき、各運動軸の第2の制御ゲインの大きさに明確な差を設けておくことで、図19に示すように、案内開始時に非接触案内状態に移行する軸の順番を任意に設定できる。これにより、各運動軸を順次安定化させて、最終的に乗りかご4を非接触案内状態にすることができる。
【0095】
また、上記第4の実施形態と同様に、第1の制御ゲインと第2の制御ゲインの切り替え時に、所定の移行時間を要して線形的に変化させたり、ローパスフィルタを介して滑らかに変化させることによって、乗りかご4を滑らかに案内することができる。
【0096】
このように、各運動軸に関して複数の異なる制御ゲインを設け、これらを変位に応じて切り替えることでも、上記第1の実施形態と同様に、非接触案内制御に必要となる電流の最大値を低く抑えることが可能になり、従来よりも少ない電源容量にて案内装置を実現することができる。
【0097】
なお、上記各実施形態では、磁石ユニット6に永久磁石9を含んだ案内装置において、ゼロパワー制御を施す場合について説明した。ゼロパワー制御を施す場合には、各運動軸毎に安定して非接触案内状態になった軸に関する励磁電流は零に収束するため、各運動軸に対する制御を順次切り替えていくことで、最大電流を抑える効果が高い。
【0098】
また、磁石ユニット6に永久磁石9を含まない案内装置であっても、非接触案内の開始時に大きな電流を必要とし、かつ、安定案内時に比較的少ない電流での案内が可能な場合に、これまで述べてきた手法を用いることで、全体の最大電流を低く抑えることが可能となる。
【0099】
さらに、上記第4、第5の実施形態において、各制御軸の全ての制御ゲインについて第2の制御ゲインを設けた例を示したが、全ての制御ゲインについて第2の制御ゲインを設ける必要はなく、一部の制御ゲインについてのみ、第2のゲインを設けてもよい。
【0100】
また、上記各実施形態では、x,θの運動軸と、y,ξ,ψの運動軸の2組に分けて制御を行う場合を例として説明したが、これらの組み合わせや、組み合わせの数は限定されるものではなく、任意の軸の組み合わせが可能であるとともに、さらに多段階に制御を分離して、順次案内を行っていく軸を変えて実施しても良い。
【0101】
要するに、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の形態を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を省略してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態に係る非接触案内装置をエレベータの乗りかごに適用した場合の斜視図である。
【図2】図2は本発明の第1の実施形態における非接触案内装置の構成を示す斜視図である。
【図3】図3は本発明の第1の実施形態における非接触案内装置の磁石ユニットの構成を示す斜視図である。
【図4】図4は本発明の第1の実施形態における非接触案内装置を制御するための制御装置の構成を示すブロック図である。
【図5】図5は本発明の第1の実施形態における制御装置に設けられた演算器の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は本発明の第1の実施形態における制御装置に設けられた演算器の内部構成を示す図であり、各モードの制御電圧演算器の構成を示すブロック図である。
【図7】図7は本発明の第1の実施形態におけるエレベータの乗りかごの接触状態を上から見た場合の平面図である。
【図8】図8は従来方式による各運動軸の動作と電流との関係を説明するための図である。
【図9】図9は本発明の第1の実施形態における各運動軸の動作と電流との関係を説明するための図である。
【図10】図10は本発明の第1の実施形態におけるエレベータの乗りかごの非接触案内状態を上から見た場合の平面図である。
【図11】図11は本発明の第2の実施形態における各モードの制御電圧演算器の構成を示すブロック図である。
【図12】図12は第2の実施形態における各運動軸の動作と電流との関係を説明するための図である。
【図13】図13は本発明の第2の実施形態においてローパスフィルタを用いた場合の各運動軸の動作と電流との関係を説明するための図である。
【図14】図14は本発明の第3の実施形態における各運動軸の動作と電流との関係を説明するための図である。
【図15】図15は本発明の第3の実施形態における各運動軸の動作と電流との関係を説明するための図である。
【図16】図16は本発明の第4の実施形態における各モードの制御電圧演算器の構成を示すブロック図である。
【図17】図17は本発明の第4の実施形態における各運動軸の動作と電流との関係を説明するための図である。
【図18】図18は本発明の第5の実施形態における各運動軸の動作と電流との関係を説明するための図である。
【図19】図19は本発明の第5の実施形態における各運動軸の動作と電流との関係を説明するための図である。
【符号の説明】
【0103】
1…昇降路、2…ガイドレール、3…ロープ、4…乗りかご、4a…かごドア、5…案内装置、6…磁石ユニット、7…センサ、8…台座、9a,9b…永久磁石、10a,10b,10c…継鉄、11a,11b,11c,11d…コイル、21…制御装置、22…センサ部、23…電流検出器、24…パワーアンプ、25…演算器、31…ギャップ長偏差座標変換器、32…励磁電流偏差座標変換器、33…制御電圧演算器、34…制御電圧座標逆変換器、36…微分器、37…ゲイン補償器、38…積分補償器、39…加減算器、41…ゲイン係数乗算器、42…第1のゲイン補償器、43…第1の積分補償器、44…第2のゲイン補償器、45…第2の積分補償器、46…切替え器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内に上下方向に敷設されたガイドレールと、
このガイドレールに沿って昇降動作する乗りかごと、
この乗りかごの上記ガイドレールとの対向部に設置され、磁気力の作用により上記乗りかごを上記ガイドレールから浮上させて非接触で走行案内する案内装置と、
上記乗りかごの少なくとも2軸以上の運動軸に関して磁気力を発生させるように上記案内装置を制御するものであり、
案内開始時には、上記各運動軸のうちの一部に対してのみ制御を行い、案内開始から所定の時間が経過した後、他の運動軸に対して制御を行う制御装置と
を具備したことを特徴とする非接触走行方式のエレベータ。
【請求項2】
昇降路内に上下方向に敷設されたガイドレールと、
このガイドレールに沿って昇降動作する乗りかごと、
この乗りかごの上記ガイドレールとの対向部に設置され、磁気力の作用により上記乗りかごを上記ガイドレールから浮上させて非接触で走行案内する案内装置と、
上記乗りかごの少なくとも2軸以上の運動軸に関して磁気力を発生させるように上記案内装置を制御するものであり、
上記各運動軸毎に設定された制御ゲインを有し、
上記各運動軸のうちの特定の運動軸に関しては、案内開始から案内に必要となる磁気力を発生させるための制御ゲインにより制御を行い、他の運動軸に関しては、案内開始時には案内に必要となる磁気力を発生させるための制御ゲインよりも低く設定された制御ゲインにより制御を行い、案内開始から所定の時間が経過した後、上記各運動軸を所定の制御ゲインにより制御する制御装置と
を具備したことを特徴とする非接触走行方式のエレベータ。
【請求項3】
上記制御装置は、上記各運動軸に関する制御ゲインの値を調整するためのゲイン係数を有し、
案内開始時には、上記各運動軸のうち一部または全部の制御ゲインのゲイン係数を変更し、所定の時間が経過した後に、上記各運動軸の制御ゲインのゲイン係数を所定の値に設定して制御を行うことを特徴とする請求項2記載の非接触走行方式のエレベータ。
【請求項4】
上記制御装置は、
案内開始時には、上記各運動軸のうちの特定の運動軸のゲイン係数を、他の運動軸のゲイン係数よりも大きくし、所定の時間が経過した後、上記特定の運動軸のゲイン係数と上記他の運動軸のゲイン係数との相対差を小さくすることを特徴とする請求項3記載の非接触走行方式のエレベータ。
【請求項5】
昇降路内に上下方向に敷設されたガイドレールと、
このガイドレールに沿って昇降動作する乗りかごと、
この乗りかごの上記ガイドレールとの対向部に設置され、磁気力の作用により上記乗りかごを上記ガイドレールから浮上させて非接触で走行案内する案内装置と、
上記乗りかごの少なくとも2軸以上の運動軸に関して磁気力を発生させるように上記案内装置を制御するものであり、
上記各運動軸毎に設定された制御ゲインを有し、
上記各運動軸に関する案内位置が所定の範囲内にあるときには、通常状態で案内するための制御ゲインにより制御を行い、案内位置が所定の範囲外にあるときには、一部または全部の運動軸の制御ゲインを、通常状態で案内するための制御ゲインとは異なる制御ゲインで制御する制御装置と
を具備したことを特徴とする非接触走行方式のエレベータ。
【請求項6】
上記制御装置は、上記各運動軸に関する制御ゲインの値を調整するためのゲイン係数を有し、
上記各運動軸に関する案内位置が所定の範囲内にあるときには、ゲイン係数を所定の値に設定し、案内位置が所定の範囲外にあるときには、一部または全部の運動軸のゲイン係数を変更して制御することを特徴とする請求項5記載の非接触走行方式のエレベータ。
【請求項7】
上記各制御ゲインにおける各々のゲイン係数のうち、少なくとも1つの運動軸に関するゲイン係数が、他のゲイン係数とは異なることを特徴とする請求項6記載の非接触走行方式のエレベータ。
【請求項8】
上記制御装置は、あるゲイン係数から別のゲイン係数に変化させる際に、移行時間を設けて、その間に徐々に変化させることを特徴とする請求項3、4、6または7記載の非接触走行方式のエレベータ。
【請求項9】
上記制御装置は、あるゲイン係数から別のゲイン係数に上記移行時間の間に線形的に変化させることを特徴とする請求項8記載の非接触走行方式のエレベータ。
【請求項10】
上記制御装置は、あるゲイン係数から別のゲイン係数に上記移行時間の間にローパスフィルタを介して変化させることを特徴とする請求項8記載の非接触走行方式のエレベータ。
【請求項11】
昇降路内に上下方向に敷設されたガイドレールと、
このガイドレールに沿って昇降動作する乗りかごと、
この乗りかごの上記ガイドレールとの対向部に設置され、磁気力の作用により上記乗りかごを上記ガイドレールから浮上させて非接触で走行案内する案内装置と、
上記乗りかごの少なくとも2軸以上の運動軸に関して磁気力を発生させるように上記案内装置を制御するものであり、
上記各運動軸毎に設定された少なくとも2種類の制御ゲインを有し、
上記各運動軸の状態に応じて上記各制御ゲインを切り替えて制御する制御装置と
を具備したことを特徴とする非接触走行方式のエレベータ。
【請求項12】
上記制御装置は、
上記各運動軸毎に設定された第1の制御ゲインと第2の制御ゲインを有し、
案内開始時には、上記各運動軸の一部または全部を上記第2の制御ゲインを用いて制御し、所定の時間が経過した後、上記各運動軸の全てに関して上記第1の制御ゲインを用いて制御することを特徴とする請求項11記載の非接触走行方式のエレベータ。
【請求項13】
上記制御装置は、
上記各運動軸毎に設定された第1の制御ゲインと第2の制御ゲインを有し、
上記各運動軸に関する案内位置が所定の範囲内にあるときは、上記第1の制御ゲインを用いて制御を行い、案内位置が所定の範囲外にあるときには、上記各運動軸の一部または全部を上記第2の制御ゲインを用いて制御することを特徴とする請求項11記載の非接触走行方式のエレベータ。
【請求項14】
上記第2の制御ゲインの少なくとも1つは、上記第1の制御ゲインよりも大きく設定されていることを特徴とする請求項12または13記載の非接触走行方式のエレベータ。
【請求項15】
上記制御装置は、ある制御ゲインから別の制御ゲインに変化させる際に、移行時間を設けて、その間に徐々に変化させることを特徴とする請求項11、12、13または14記載の非接触走行方式のエレベータ。
【請求項16】
上記制御装置は、ある制御ゲインから別の制御ゲインに上記移行時間の間に線形的に変化させることを特徴とする請求項15記載の非接触走行方式のエレベータ。
【請求項17】
上記制御装置は、ある制御ゲインから別の制御ゲインに上記移行時間の間にローパスフィルタを介して変化させることを特徴とすることを特徴とする請求項15記載の非接触走行方式のエレベータ。
【請求項18】
上記案内装置は、電磁石を有する磁石ユニットからなり、
上記制御装置は、上記電磁石に励磁する電流を制御することで、上記乗りかごを上記ガイドレールに接触させることなく走行案内することを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1つに記載の非接触走行方式のエレベータ。
【請求項19】
上記案内装置は、電磁石および永久磁石を有する磁石ユニットを有し、
上記制御装置は、上記電磁石に励磁する電流を制御することで、上記乗りかごを上記ガイドレールに接触させることなく走行案内することを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1つに記載の非接触走行方式のエレベータ。
【請求項20】
上記制御装置は、
上記乗りかごを上記ガイドレールに接触させることなく走行案内すると共に、上記乗りかごに作用する外力の有無に関わらず、上記電磁石に励磁する電流の定常値を零に収束させることを特徴とする請求項19記載の非接触走行方式のエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−63065(P2008−63065A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241708(P2006−241708)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】