説明

非接触/接触式カードの書込み・読出し制御モジュール

【課題】非接触式と接触式の2種類のICカードに対応可能で、アンテナ素子から近接するグラウンドパターンへの無線電波の飛びつきを軽減すること。
【解決手段】回路基板10にスパイラル状のパターンコイルで形成された非接触ICカードとの間で非接触通信により信号の授受を行うためのコイルアンテナ12と、コイルアンテナ12から離間した状態で取り付けられ接触ICカード35を挿脱可能で接触ICカード35との間で信号の授受を行うための接触ICカード用コネクタとを備える。コイルアンテナ12の外側端部はグラウンドパターン13に接続するグラウンド端子2とし、パターンコイルの内側端部を給電部となる入出力端子1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触式カード及び接触式カードの両方に対応可能な書込み・読出し制御モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ETC(Electronic Toll Collection)車載器にICカードをセットすることにより、有料道路の入口及び出口ゲートで車輌を停止させることなく、入口及び出口ゲートに備えられた制御ユニットと無線通信して道路使用料金の支払い決済を瞬時に行うシステムが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ETC車載器におけるICカードの読取方式には非接触式と接触式の2種類がある。非接触式の場合は、コイルアンテナにより13.56MHz(例えば、日本)帯の無線電波を用いて車載器側モジュールとICカードとで通信を行う。接触式の場合は、カードコネクタを介して車載器側モジュールとICカードとで通信を行う。
【0004】
図3(a)はICカード読取方式が非接触式の車載器側モジュールの模式図である。
車載器側モジュールは、回路基板10上に、電子回路等が搭載される部品配置エリア11と、スパイラル状のコイルアンテナ12とが形成されている。また、部品配置エリア11とコイルアンテナ12との間にグラウンドパターン13が形成されており、電源ライン14のマイナス端子14aがグラウンドパターン13に接続され、プラス端子14bが回路基板10の非グラウンド領域の電源入力端子に接続されている。コイルアンテナ12は、スパイラル状のパターンコイルの外側端部に形成された入出力端子15が給電部となり、パターンコイルの中心部となる内側端部がグラウンド端子16となっている。
【0005】
図3(b)はICカード読取方式が接触式の場合に用いられる接触カード用コネクタの模式図である。接触カード用コネクタは、モールド樹脂等の材料で形成されたカードホルダ21を備え、カードホルダ21の両側にグラウンドパターン22a,22bが形成されている。カードホルダ21に接触式カード23を装填してカード側の端子をカードホルダ21側の接触端子と直接接触させて情報の授受を行う。
【0006】
図3(c)に示すように、図3(a)に示す回路基板10の所定領域に、図3(b)に示す上記接触カード用コネクタを取り付けることで、非接触式と接触式の2種類のICカードに対応可能な車載器側モジュールを実現することができる。具体的には、接触カード用コネクタを回路基板10に対してコイルアンテナ12の上に重ねるように取り付けている。コイルアンテナ12の両側のスペースに接触カード用コネクタのグラウンドパターン22a,22bを近接配置して、当該グラウンドパターン22a,22bの上端部をグラウンドパターン13の下端に接触させて、接触カード用コネクタを回路基板10に取り付けている。
【0007】
これにより、非接触式ICカードの場合は接触カード用コネクタの上からコイルアンテナ12を近接配置することによりICカード側のアンテナ素子とモジュール側のコイルアンテナ12との間で情報が非接触で授受される。また、接触式ICカードの場合は接触カード用コネクタのカードホルダ21に接触式カード23を装填することにより接触式で情報が授受される。
【特許文献1】特開2000−048153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の車載器側モジュールは、スパイラル状のコイルアンテナ12がコイル外側からの給電(入出力端子15)となっているため、コイルアンテナ12の外側コイル12a,12bが強電界部となって当該外側コイル12a,12bに近接したグラウンドパターン22a,22bへ13.56MHz(例えば、日本)帯の無線電波が飛びつく現象が生じて、電源ライン14へ漏洩するといった問題がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、非接触式と接触式の2種類のICカードに対応可能で、アンテナ素子から近接するグラウンドパターンへの無線電波の飛びつきを軽減でき、電源ラインへ漏洩する恐れのない非接触/接触式カードの書込み・読出し制御モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の非接触/接触式カードの書込み・読出し制御モジュールは、回路基板と、前記回路基板のアンテナ形成領域にスパイラル状のパターンコイルで形成され非接触ICカードとの間で非接触通信により信号の授受を行うためのアンテナ素子と、前記回路基板のアンテナ形成領域に前記アンテナ素子から離間した状態で取り付けられ接触ICカードを挿脱可能であり挿入された接触ICカードとの間で信号の授受を行うための接触ICカード用コネクタと、前記回路基板に配置され前記アンテナ素子又は前記接触ICカード用コネクタを介して前記非接触ICカード又は前記接触ICカードとの間で授受される信号を処理する電子回路と、前記回路基板に形成されたグラウンドパターン部とを備え、前記アンテナ素子は、前記パターンコイルの外側端部を前記グラウンドパターン部に接続すると共に、前記パターンコイルの内側端部を給電部としたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、回路基板に形成されたアンテナ素子を介して非接触ICカードとの間で非接触通信により信号の授受が行なわれ、回路基板のアンテナ形成領域に取り付けられた接触ICカード用コネクタを介して接触ICカードとの間で信号の授受が行なわれる。非接触ICカードに対するアンテナ素子を介した書込み又は読出しの場合、アンテナ素子のパターンコイルの内側端部を給電部としたので、パターンコイルの外側の電界強度が弱くなり近接するグラウンドパターン部への飛びつきが軽減され、電源ラインへの漏洩が防止される。
【0012】
また本発明は、上記非接触/接触式カードの書込み・読出し制御モジュールにおいて、前記グラウンドパターン部は、前記アンテナ素子を取り囲むように形成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成により、グラウンドパターン部がアンテナ素子を取り囲むように形成されているので安定した動作を実現できると共に、アンテナ素子の外側コイルとグラウンドパターン部の一部とが近接していてもパターンコイル外側の電界強度が弱いのでグラウンドパターンへの飛びつきが軽減される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非接触式と接触式の2種類のICカードに対応可能で、アンテナ素子から近接するグラウンドパターンへの無線電波の飛びつきを軽減でき、電源ラインへの漏洩を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は本実施の形態に係るETC車載器に備えた車載器側モジュールの模式図である。同図において、本実施の形態の車載器側モジュールと図3(c)に示す車載器側モジュールとの同一部分には同一符号を付している。本実施の形態に係る車載器側モジュールは、コイルアンテナ12のコイル内側から給電すると共にコイル外側をグラウンドに接続し、外側コイル12a,12bが強電界とならないようにしたものである。
【0016】
本実施の形態の車載器側モジュールは、コイルアンテナ12の給電位置及びグラウンド位置の変更を除いて、図3(c)に示す車載器側モジュールと基本的に同一構成を有する。すなわち、長方形状をなす回路基板10の上方に部品配置エリア11が形成され、そこに所定の演算能力を有する電子回路が搭載される。電子回路は、ICカードとの間で授受した情報の記憶及び所定の演算処理を実行可能である。部品配置エリア11とアンテナ形成エリアとを高周波的に隔てるように、両者の間に部品配置エリア11から僅かに離間した状態でグラウンドパターン13が形成されている。グラウンドパターン13の下方に形成されたアンテナ形成エリアに、スパイラル状のパターンコイルからなるコイルアンテナ12が形成されている。コイルアンテナ12が形成された回路基板10のアンテナ形成エリア上面に当該コイルアンテナ12と接触しないように離間させて接触カード用コネクタが取り付けられている。接触カード用コネクタのカードホルダ21は、カード挿入口側に切欠き部が形成されており、接触式ICカードの挿入有無を目視確認できるようになっている。アンテナ形成エリアの回路基板10上面にはコイルアンテナ12の外側コイル12a,12bに対して非接触であるが近接して接触カード用コネクタの左右一対のグラウンドパターン22a,22bが形成されている。一対のグラウンドパターン22a,22bの内側上面にカードホルダ21の左右両側の下面を載せるようにしてカードホルダ21がコイルアンテナ12上方に浮いた状態でアンテナ上に配置されている。
【0017】
図2はコイルアンテナ12の電界強度分布を示す模式図である。上記した通り、本実施の形態ではスパイラル状をなすコイルアンテナ12の内側中心部であるコイル内側端を入出力端子1にして給電部とし、コイルアンテナ12の最外側となるコイル外側端部をグラウンド端子2としている。これにより、図2に示すようにコイルアンテナ12の電界強度分布は給電部に近いコイル中心部ほど電界強度が強く、コイル外側へ行くほど給電部から離れるので電界強度が弱くなる。したがって、接触カード用コネクタのグラウンドパターン22a,22bと近接している外側コイル12a,12bは電界強度が弱い状態となっている。
【0018】
以上のように構成された車載器側モジュールでは、非接触式ICカードに対して非接触で情報の書込み及び読出しを行う場合、コイルアンテナ12のコイル内側端である入出力端子1に給電が行われ、車載器側モジュールのコイルアンテナ12から書込み情報が無線電波で放射される。車載器側モジュールのコイルアンテナ12に対して対向配置された非接触式ICカードのアンテナ素子に無線電波が入射すると非接触式ICカードに情報が書き込まれると共にカード側の情報が無線電波で放射される。この無線電波をコイルアンテナ12で受信して部品配置エリア11の電子回路へ入力する。このようにして情報の授受が行われる。
【0019】
このとき、上記した通りコイルアンテナ12の外側コイル12a,12bは電界強度が弱い状態となっているので、外側コイル12a,12bに近接している接触カード用コネクタのグラウンドパターン22a,22bへの飛びつき現象は実質的に問題とならない程度まで軽減される。したがって、コイルアンテナ12の外側コイル12a,12bからグラウンドパターン22a,22b、13を介して電源ライン14への情報漏洩も発生しない。
【0020】
また、接触式ICカードに対して接触カード用コネクタを介して情報の書込み及び読出しを行う場合、接触カード用コネクタのカードホルダ21に接触式カード23が装填される。接触式カード23の情報は接触カード用コネクタを介して接続された車載器側モジュール側の電子部品から直接読出されると共に、車載器側モジュール側の電子部品から情報が書き込まれる。
【0021】
このように本実施の形態によれば、車載器側モジュールのコイルアンテナ12に対してコイル内側から給電すると共にコイル外側をグラウンドに接続し、外側コイル12a,12bが強電界とならないようにしたので、非接触式と接触式の2種類のICカードに対応可能であると共に、コイルアンテナ12から近接するグラウンドパターン22a、22bへの無線電波の飛びつきを軽減でき、電源ライン14への漏洩を防止することができる。
【0022】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、ETC車載器以外にも接触式ICカードと非接触式ICカードの両方に対応する用途であれば適用可能である。例えば、入退室管理装置のゲートシステム等にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、非接触式と接触式の2種類のICカードに対応可能な車載器側モジュールに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車載器側モジュールの模式図
【図2】上記一実施の形態に用いられるコイルアンテナの電界強度分布を示す模式図
【図3】(a)ICカード読取方式が非接触式の車載器側モジュールの模式図、(b)ICカード読取方式が接触式の場合に用いられる接触カード用コネクタの模式図、(c)非接触式と接触式の2種類のICカードに対応可能にした車載器側モジュールの模式図
【符号の説明】
【0025】
1…入出力端子
2…グラウンド端子
10…回路基板
11…部品配置エリア
12…コイルアンテナ
13…グラウンドパターン(モジュール回路基板側)
14…電源ライン
14a…マイナス端子
14b…プラス端子
21…カードホルダ
22a,22b…グラウンドパターン(コネクタ側)
23…接触式カード



【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、前記回路基板のアンテナ形成領域にスパイラル状のパターンコイルで形成され非接触ICカードとの間で非接触通信により信号の授受を行うためのアンテナ素子と、前記回路基板のアンテナ形成領域に前記アンテナ素子から離間した状態で取り付けられ接触ICカードを挿脱可能であり挿入された接触ICカードとの間で信号の授受を行うための接触ICカード用コネクタと、前記回路基板に配置され前記アンテナ素子又は前記接触ICカード用コネクタを介して前記非接触ICカード又は前記接触ICカードとの間で授受される信号を処理する電子回路と、前記回路基板に形成されたグラウンドパターン部と、を備え、
前記アンテナ素子は、前記パターンコイルの外側端部を前記グラウンドパターン部に接続すると共に、前記パターンコイルの内側端部を給電部としたことを特徴とする非接触/接触式カードの書込み・読出し制御モジュール。
【請求項2】
前記グラウンドパターン部は、前記アンテナ素子を取り囲むように形成されていることを特徴とする請求項1記載の非接触/接触式カードの書込み・読出し制御モジュール。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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