説明

非水二次電池

【課題】充放電のサイクルによる電極巻回体の変形を抑制し、かつ外部から大きな力を受けた場合にも端面エッジで電極巻回体を傷付けることなく、強度の高いセンターピンを有する非水二次電池を得る。
【解決手段】電池ケース内に、帯状の正極および負極が帯状のセパレータを挟んで円柱状に巻回された電極巻回体と、電極巻回体の中心空隙部に配された中空円筒状のセンターピン19とを収容してある。センターピン19は、1枚の板部材を縦長円筒状に曲げ形成したものである。板部材は、左右の両端部がそれぞれ上下幅方向にわたって矩形波状に凹凸形成されている。そのうえで、各端部の凸部21は、対向する各端部の凹部22を介してセンターピンの内側に嵌まり込んでおり、板部材の両端部が凹凸状に噛合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に電池ケース内に円柱状の電極巻回体を収容するリチウムイオン二次電池などの非水二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
前記電極巻回体では、巻取芯に帯状の正極および負極をセパレータを挟んだ状態で巻回したのち、巻取芯を抜き取るので、電極巻回体の中心部には前記巻取芯を抜き取った後の空隙部が生じ残る。このため、充放電の繰り返しなどで電極の体積が増加した場合には、その電極の一部が前記空隙部に入り込んで電極が変形し、電池容量の低下などを引き起こす不都合がある。また、前記電極の変形によって前記空隙部が潰れた場合には、内部短絡などによって電池ケースの底部で発生したガスが、電池ケースの開口上面を塞ぐ封口板に設けたガス抜き用のベントから排気されにくくなる。
【0003】
この防止対策として特許文献1〜3では、中空円筒状に加工したセンターピンを電極巻回体の中心空隙部に嵌め込んで、電極の変形を抑えている。ところが、特許文献1のセンターピンでは、電池に大きな外力が加わって電極巻回体とセンターピンとが押し潰されると、センターピンの端面エッジがセパレータを突き破り、内部短絡を引き起こすおそれがある。このため、特許文献2では、センターピンを形成する金属材の突き合わせ端部をピン内部に折り曲げて、金属材の両端面もしくはその近傍に角落とし部を設けてある。
【0004】
【特許文献1】特開平04−332481号公報(段落番号0014、図4)
【特許文献2】特開2003−92148号公報(段落番号0046、図2)
【特許文献3】特開平11−204130号公報(段落番号0004・0007−0008、図2−12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2では、角落とし部を設けたことによってセンターピンの両端部近傍の周壁が凹んでセンターピンの真円度が低下し、センターピンの強度が低下する。また、充放電の繰り返しで電極に変形が発生した場合に、角落とし部の凹みに電極が入り込んで電極の変形が集中し、電池容量の低下や短絡などを引き起こすおそれがある。
【0006】
さらに、センターピンが押し潰されるほどの大きな外力が加わった場合には、センターピンの内部空間が閉塞され、電池ケースの底部で発生したガスが、前記封口板のガス抜き用のベントから排気されにくくなる。
【0007】
そこで本発明の目的は、センターピンの形状に工夫を凝らすことで、センターピンの端面エッジで電極巻回体が傷付くことを抑えながら、センターピンの真円度を高くしてセンターピンの強度を高くし、電極巻回体の変形を抑えることができる非水二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、図4に示すごとく、電池ケース1内に、帯状の正極10および負極11が帯状のセパレータ12を挟んで円柱状に巻回された電極巻回体7と、電極巻回体7の中心空隙部に配された中空円筒状のセンターピン19とを収容した非水二次電池において、図1ないし図3に示すごとく、センターピン19が、1枚の板部材20を縦長円筒状に曲げて形成されており、板部材20の左右端部に、凸部21と凹部22とがそれぞれ上下間にわたって交互に形成されており、板部材20の各端部の凸部21が、対向する端部の凹部22を介してピン内部に嵌まり込むことで、前記両端部の凸部21と凹部22どうしが噛合していることを特徴とする。
【0009】
センターピン19は、図5に示すごとく、1枚の板部材20をS字状に曲げて縦長円筒状に曲げ形成し、直径方向に延びる中央壁21と、中央壁21の両端からそれぞれ逆向きに折り曲げて形成された断面半円状の一対の周壁26・26とを有しており、各周壁26の連出端部26aがそれぞれ内向きに折り返されて、中央壁21で受け止められる形態にしてもよい。ここでは、各周壁26の連出端部26aと中央壁21とが接している場合と、各周壁26の連出端部26aと中央壁21との間に若干の隙間を有する場合とが含まれる。
【0010】
具体的には、センターピン19は金属材料からなる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の本発明によれば、センターピン19が1枚の板部材20で曲げ形成されるため、複数の板部材を溶接などで接合して製造する場合に比べて容易に製造できる。板部材20の凸部21は、大きく折り曲げなくてもセンターピン19の内側に嵌まり込むので、センターピン19の周壁に生じる凹みを小さくできて、センターピン19の全体をほぼ真円の筒形状にできる。したがって、センターピン19の強度が高くなって、充放電時における電極の変形を抑制できる。
【0012】
しかも、板部材20の両端部が凹凸状に噛合して確りと結合されるので、この点でもセンターピン19の強度がアップし、外圧が加わってもセンターピン19が押し潰され難くなる。凸部21がセンターピン19の内側に嵌まり込む分だけ、凸部21の端面エッジで電極巻回体7が傷付けられることもない。
【0013】
請求項2の本発明では、センターピン19の内部に中央壁21が形成され、各周壁26の連出端部26aが中央壁21でそれぞれ受け止められるので、センターピン19の強度が向上する。しかも、センターピン19がほぼ円筒形状になるうえ、各周壁26の連出端部26aがそれぞれ内向きに折り返されているので、連出端部26aの端面エッジで電極巻回体7が傷付けられることがなく、どの角度から外力が加わってセンターピンが潰れた場合でも、電池が内部短絡を引き起こしにくいことになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施例1) 図1ないし図4は本発明が対象とする非水二次電池の実施例を示す。電池は、外径寸法が17.8mm、高さ寸法が65.0mmであり、0.2C(5時間放電率)における放電容量が2200mAhの円筒形状の電池である。
【0015】
電池は、図4に示すごとく、上面が開口する有底円筒形状の電池ケース1と、電池ケース1の開口上面を塞ぐアルミニウム製の封口板2と、封口板2の上側に配した合成樹脂製の絶縁パッキング3と、絶縁パッキング3の上側に配したアルミニウム製の防爆弁5と、防爆弁5の外側上面に配した端子板6と、電池ケース1内に収容される電極巻回体7および非水電解液とを有する。電池ケース1の開口部の内周面側には、シール用の合成樹脂製の環状ガスケット9が装着されている。電池ケース1は圧延鋼鈑からなる。
【0016】
電極巻回体7は、正極活物質を塗布した帯状の正極10と、負極活物質を塗布した帯状の負極11とを合成樹脂製フィルムからなる帯状のセパレータ12を挟んで積層し、これを円柱状に巻回してある。正極10と封口板2とは第1の導電タブ15で接続し、負極11と電池ケース1の底面とは第2の導電タブ16で接続する。電極巻回体7の上部には、合成樹脂製の絶縁体17が配されている。
【0017】
封口板2の中央の薄肉部の上面には、防爆弁5の中央部を溶接してあり、前記薄肉部の周囲に、電池内圧を防爆弁5に導くための圧力導出孔を有する。防爆弁5の中央部の周囲には薄肉部が設けられている。
【0018】
端子板6は、表面にニッケルメッキが施された圧延鋼鈑で帽子状に形成されており、ガス排出口を有する。絶縁パッキング3は、封口板2と防爆弁5との周縁部どうしを絶縁するとともに、電解液が漏れないように封止する。正極10と端子板6とは、導電タブ15と封口板2と防爆弁5とを介して導通している。
【0019】
過充電などで電池内圧が上昇すると、防爆弁5が上側に膨張して、封口板2の薄肉部が破断し、あるいは防爆弁5との溶接部分が剥離して電流を遮断し、次に防爆弁5の薄肉部が開裂して、端子板6のガス排出口からガスが排出される。
【0020】
電極巻回体7の中心空隙部には、センターピン19を挿入する。センターピン19は、ステンレス鋼製の1枚の板部材20(図2参照)を縦長円筒状に曲げることで形成されており、外径寸法が3.4mm、長さ寸法が55mmの縦長の中空円筒である。板部材20は、厚さ寸法が0.3mmである。センターピン19の外周にはセパレータ12を介在させることにより、正極10および負極11と、センターピン19とが絶縁されている。
【0021】
板部材20の両端部には、それぞれ上下間にわたって、3つの角形の凸部21と、4つの凹部22とが交互に存在するよう矩形波状に凹凸形成されている。板部材20を円筒状に丸く曲げたとき、図1および図3に示すごとく、板部材の各端部の各凸部21が、対向する端部の各凹部22を介してセンターピン19の内側にそれぞれ曲げられて嵌まり込み、両端部が凹凸状に噛合する。
【0022】
各凸部21の湾曲度は、図3に示すごとく小さい。これに伴ない、センターピン19の周壁において板部材20の両端突き合わせ部に生じる凹みも小さくなり、センターピン19は縦長の正しく円筒形状に近いものになる。
【0023】
なお、電池内部で発生したガスの一部は、センターピン19の内側空間を通って封口板2側へ排出される。前記凸部21は完全な四角形である必要はなく、角部が丸く角落としされていてもよい。
【0024】
(実施例2) 図5は本発明の実施例2を示しており、センターピン19は、厚さ寸法が0.3mmのステンレス鋼製の1枚の板部材をS字状に曲げて縦長の円筒形状に形成されており、外径寸法が3.5mm、長さ寸法が55mmである。つまり、センターピン19は、直径方向に延びる縦向きの平坦な中央壁25と、中央壁25の両端でそれぞれ逆向きに折り曲げ形成された断面半円状の一対の周壁26・26とを有する。
【0025】
各周壁26の連出端部26aは、それぞれセンターピン19の内側に折り返してあって、中央壁25に添う。中央壁25に加わる面方向の押し潰し力は、中央壁25が直接受け止めるとともに、中央壁25に対して直交方向に加わる押し潰し力は、各周壁26の連出端部26aが中央壁21に押し付けられて中央壁25で受け止められる。その他の点は、実施例1と同じであるので説明を省略する。なお、各周壁26の折り返し部には、ある程度のアールを設けてもよい。
【0026】
(比較例1) 比較例1では、図6に示すごとくセンターピン19は、厚さ寸法が0.3mmのステンレス鋼でテーパー付中空筒状体に形成してある。なお、比較例1のセンターピン19は、外径寸法が3.4mm、長さ寸法が55mm、板部材の両端間の隙間寸法が0.8mmである。その他の点は、実施例1と同じであるので説明を省略する。
【0027】
(比較例2) 比較例2では、図7に示すごとくセンターピン19は、厚さ寸法が0.3mmのステンレス鋼でテーパー付中空筒状体に形成してあるとともに、板部材の突き合わせ端部をピン内部に折り曲げて、角落とし部を設けてある。なお、比較例2のセンターピン19は、外径寸法が3.5mm、長さ寸法が55mmである。その他の点は、実施例1と同じであるので説明を省略する。
【0028】
〈試験〉 実施例1・2および比較例1・2の各電池をそれぞれ10個ずつ用意して、4.2Vまで充電したのち、UL規格1642に準拠した丸棒圧壊試験を行った。すなわち、直径寸法が7.9mmの金属製丸棒を電池の中央部に電池の高さ方向と直交する方向に置き、電池から61cmの高さ位置から9.1kgのおもりを落下させた。この後、電池の高さ方向の両端面を取り除き、一方の端面側の中央空隙部にエアーパイプを挿入して、0.3〜0.5MPaのガス圧の窒素ガス(N2 )を流入して、他方の端面側から窒素ガスが抜け出るかどうかを確認した。
【0029】
また、電池にあらかじめ熱電対を貼り付けておき、前記丸棒圧壊試験時の電池の表面温度を測定し、120℃以上の高温となった個数を調べた。表1はその結果を示す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1に示すごとく、実施例1・2では、試験した全ての電池で窒素ガスが抜け出ており、試験後においてもセンターピン19の内部空間が確保されていると考えられる。また、実施例1・2では、試験した全ての電池で表面温度が120℃未満となっている。これは試験によって潰れたセンターピン19で電極巻回体7がほぼ傷付けられておらず、内部短絡をほとんど起こしていないためと考えられる。
【0032】
これに対し、比較例1では、試験した電池の半数で窒素ガスが抜け出ておらず、比較例2では、10個のうちの3個の電池で窒素ガスが抜け出ていない。これは試験によってセンターピン19が潰れて、センターピン19の内部空間が閉塞されたためと考えられる。また、比較例1では、10個のうちの2個の電池で表面温度が120℃以上になっている。これは試験によって潰れたセンターピン19の端面エッジで電極巻回体7が傷付けられて、内部短絡を引き起こしたためと考えられる。
【0033】
実施例1において、センターピン19の凸部21および凹部22の数は任意に設定できるが、多すぎるとセンターピン19の製造が困難となるので、凸部21および凹部22の数は、2つから8つの範囲が好ましく、3つから6つの範囲がさらに好ましい。各実施例において、センターピン19の上下方向の各先端部は、電極巻回体7の中心空隙部へのセンターピン19の挿入を容易にするために、それぞれテーパー状に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1に係るセンターピンの正面図
【図2】センターピンの展開図
【図3】図1のA−A線断面図
【図4】非水二次電池の縦断面図
【図5】実施例2のセンターピンの横断平面図
【図6】比較例1のセンターピンの斜視図
【図7】比較例2のセンターピンの斜視図
【符号の説明】
【0035】
1 電池ケース
6 電極巻回体
10 正極
11 負極
12 セパレータ
19 センターピン
20 板部材
21 凸部
22 凹部
25 中央壁
26 周壁
26a 周壁の連出端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池ケース内に、帯状の正極および負極が帯状のセパレータを挟んで円柱状に巻回された電極巻回体と、前記電極巻回体の中心空隙部に配された中空円筒状のセンターピンとを収容した非水二次電池であって、
前記センターピンが、1枚の板部材を縦長円筒状に曲げて形成されており、
前記板部材の左右端部に、凸部と凹部とがそれぞれ上下間にわたって交互に形成されており、
前記板部材の各端部の凸部が、対向する各端部の凹部を介してピン内部に嵌まり込むことで、前記両端部の前記凸部と前記凹部どうしが噛合していることを特徴とする非水二次電池。
【請求項2】
電池ケース内に、帯状の正極および負極が帯状のセパレータを挟んで円柱状に巻回された電極巻回体と、前記電極巻回体の中心空隙部に配された中空円筒状のセンターピンとを収容した非水二次電池であって、
前記センターピンが、1枚の板部材をS字状に曲げて縦長円筒状に曲げ形成されており、
前記センターピンは、直径方向に延びる中央壁と、前記中央壁の両端からそれぞれ逆向き折り曲げて形成された断面半円状の一対の周壁とを有しており、
前記各周壁の連出端部が、それぞれ内向きに折り返されて、前記中央壁で受け止められていることを特徴とする非水二次電池。
【請求項3】
前記センターピンが金属材料からなる請求項1又は2記載の非水二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−4792(P2006−4792A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180598(P2004−180598)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】