説明

非水和性結晶形を調製する方法

非水和性結晶形を、3−ブロモ−1−(3−クロロ−2−ピリジニル)−N−[4−シアノ−2−メチル−6−[(メチルアミノ)−カルボニル]フェニル]−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド(化合物1)の水和性結晶形から調製する方法が開示されている。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−ブロモ−1−(3−クロロ−2−ピリジニル)−N−[4−シアノ−2−メチル−6−[(メチルアミノ)カルボニル]フェニル]−1H−ピラゾール−5−カルボキサミドの水和性結晶形から非水和性結晶形を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および2が、3−ブロモ−1−(3−クロロ−2−ピリジニル)−N−[4−シアノ−2−メチル−6−[(メチルアミノ)−カルボニル]フェニル]−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド(化合物1)の調製方法、ならびに、殺虫剤としてのこの化合物の実用性を開示している。特許文献2は、1−プロパノールからの再結晶による化合物1の精製をさらに開示している。
【0003】
一定の結晶性化合物が異形体として存在することが可能であることは技術分野において周知である。「異形体」という用語は、異なる結晶形態で結晶化することが可能である化学化合物の特定の結晶形態を指し、これらの形態は、異なる配置および/またはコンホメーションの分子を結晶格子中に有する。異形体は同一の化学組成を有することが可能であるが、これらはまた格子に弱くもしくは強固に結合していることが可能である共結晶化水または他の分子の存在または不在によって、組成が異なっていることが可能である。異形体は、結晶形状、密度、硬度、色、化学安定性、融点、吸湿性、懸濁性、溶解速度および生物学的利用可能性などの、化学的、物理的および生物学的特性が異なっていることが可能である。
【0004】
これまでのところ、任意の単一の化合物の結晶性異形体の発生および数を予測すること、または、任意の特定の異形体の特定の物理化学的特性を予測することは不可能である。最も重要なことに、生体への投与後の熱力学的安定性および潜在的に異なる挙動を事前に判定することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第04/067528号パンフレット
【特許文献2】国際公開第06/062978号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも2θ反射位置6.78、11.09、19.94、20.99、26.57、26.98および31.52を有するX線回析パターンにより特徴付けられる化合物1の異形体Aを調製する方法であって;水、n−ヘプタン、1−クロロブタン、トルエン、1−ブタノールおよび1−ペンタノールからなる群から選択される溶剤と、少なくとも2θ反射位置7.43、9.89、18.68、19.36、22.16、23.09および25.70を有するX線回析パターンにより特徴付けられる化合物1の異形体Bとを含む混合物を約40℃〜溶剤の沸点の温度で加熱する工程を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】2θ反射位置に対してグラフ化された絶対強度カウントを示す化合物1の異形体Aの粉末X線回析パターンである。
【図2】2θ反射位置に対してグラフ化された絶対強度カウントを示す化合物1の異形体Bの粉末X線回析パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において用いられるところ、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」という用語、または、これらのいずれかの他の変形は、非排他的な包含をカバーしていることが意図されている。例えば、要素の一覧を含む組成物、プロセス、方法、物品、または、装置は、必ずしもこれらの要素のみに限定されることはなく、明示的に列挙されていないか、または、このような組成物、プロセス、方法、物品、または、装置に固有である他の要素が包含されていてもよい。さらに、そうでないと明記されていない限りにおいて、「または」は、包括的なまたはを指し、排他的なまたはを指さない。例えば、条件AまたはBは以下のいずれか一つにより満たされる:Aが真であり(または存在し)およびBが偽である(または不在である)、Aが偽であり(または不在であり)およびBが真である(または存在する)、ならびに、AおよびBの両方が真である(または存在する)。
【0009】
また、本発明の構成要素または構成成分に先行する不定冠詞「a」および「an」は、構成要素または構成成分の事例(すなわち、発生)の数に関して比制限的であることが意図される。従って、「a」または「an」は、1つまたは少なくとも1つを含むと読解されるべきであり、構成要素または構成成分の単数形の語形は、その数が明らかに単数を意味しない限りにおいては複数をも包含する。
【0010】
化合物1は、3−ブロモ−1−(3−クロロ−2−ピリジニル)−N−[4−シアノ−2−メチル−6−[(メチルアミノ)カルボニル]フェニル]−1H−ピラゾール−5−カルボキサミドであると共に、以下の化学構造を有する。
【化1】

【0011】
化合物1は、2種以上の結晶形(すなわち異形体)で存在していることが可能である。当業者は、化合物1の異形体は、同一の化合物1の他の異形体または異形体の混合物と比して、有益な効果(例えば、有用な配合物の調製に対する適合性、向上した生物学的性能)を示すことが可能であることを認めるであろう。化学安定性、ろ過性、溶解度、吸湿性、融点、固体密度および流動性に関する差は、製造方法および配合物の開発、ならびに、植物処置剤の品質および効力に顕著な効果を有する可能性がある。
【0012】
化合物1の非水和性異形体(異形体A)を、通常は化合物1の調製手法によって最初に形成される化合物1の水和性異形体(異形体B)から調製する方法がここに発見された。異形体Bの含水量は大気湿度の変化に曝された場合に顕著に変化する。異形体Bとは異なり、異形体Aは、大気湿度の変化に曝されたときに相当量の水を得たり失ったりしない。しかも、異形体Aは、典型的には、長期の保管の最中に異形体Bに転化されることはない。この意外な安定性が、化合物1のより一貫したアッセイを促進させる。また、これらの特徴によって、化合物1の異形体Aは、持続性の安定な固体配合物の製造に良好に好適とされており、安定な有効成分含有量の特定が可能とされている。
【0013】
しかも、異形体Aは、異形体Bと比してより効率的なろ過を可能とする物理的形態を有する。大規模合成および単離の最中、異形体Aの分離の優れた容易性は、プロセス製造コストを削減させることが可能である。
【0014】
粉末X線回析が、化合物1の異形体AおよびBの両方の結晶化相を識別するために用いられる。異形体AおよびBを特徴づけるために、データを、Philips X’PERT自動粉末回折計、Model 3040で得た。室温でサンプルを、Model PW 1775またはModel PW 3065多位置サンプルチェンジャーでのバッチモードにかけた。この回折計は、自動可変スリット、キセノン比例計数管およびグラファイトモノクロメーターを備えていた。放射線は、Cu(Kα)、45kV、40mAであった。サンプルを、低バックグラウンドガラス試料ホルダ上に乾燥スミアとして準備した。データは、0.03度の等ステップサイズおよび2.0秒/ステップの計数時間での連続走査を用いて、2〜60度から2θ角度で回収した。相同定およびサンプルの回折パターンの基準材料との比較のために、MDI/JadeソフトウェアをInternational Committee for Diffraction Dataデータベースと一緒に用いた。
【0015】
化合物1の異形体Aの粉末X線回析パターンが図1に示されている。対応する2θ値が表1に作表されている。
【0016】
【表1】

【0017】
化合物1の異形体Bの粉末X線回析パターンが図2に示されている。対応する2θ値が表2に作表されている。
【0018】
【表2】

【0019】
化合物1の結晶性異形体はまた、IR分光分析によって特徴付けられることが可能である。IRスペクトルは、固体用のGolden Gate ATRアクセサリを用いてFTS 3000 FTIR分光計(Varian,USA)で計測した。IRスペクトルは、表3(異形体A)および表4(異形体B)に示されている以下のバンド極大を含む。
【0020】
【表3】

【0021】
【表4】

【0022】
化合物1の結晶性異形体はまた、ラマンおよび近赤外分光分析によって特徴付けられると共に、相互に区別されることが可能である。
【0023】
本発明の実施形態は以下を含む。
実施形態1.溶剤がn−ヘプタンである発明の概要に記載の方法。
【0024】
実施形態1a.温度が約40〜約100℃である実施形態1の方法。
【0025】
実施形態2.溶剤がトルエンである発明の概要に記載の方法。
【0026】
実施形態2a.温度が約40〜約111℃である実施形態2の方法。
【0027】
実施形態3.溶剤が1−クロロブタンまたは1−クロロペンタンである発明の概要に記載の方法。
【0028】
実施形態3a.溶剤が1−クロロブタンである発明の概要に記載の方法。
【0029】
実施形態3b.溶剤が1−クロロペンタンである発明の概要に記載の方法。
【0030】
実施形態3c.温度が約40〜約77℃である実施形態3aの方法。
【0031】
実施形態4.溶剤が1−ブタノールまたは1−ペンタノールである発明の概要に記載の方法。
【0032】
実施形態4a.溶剤が1−ブタノールである発明の概要に記載の方法。
【0033】
実施形態4b.溶剤が1−ペンタノールである発明の概要に記載の方法。
【0034】
実施形態4c.温度が約40〜約100℃である実施形態4〜4bのいずれか1つの方法。
【0035】
実施形態5.溶剤が水である発明の概要に記載の方法。
【0036】
実施形態5a.温度が約60〜約100℃である実施形態5の方法。
【0037】
実施形態5b.温度が約70〜約100℃である実施形態5aの方法。
【0038】
実施形態5c.温度が約70〜約90℃である実施形態5aの方法。
【0039】
実施形態5d.混合物が少なくとも約2時間加熱される実施形態5〜5cのいずれか1つの方法。
【0040】
実施形態5e.混合物の加熱が約48時間以下である実施形態5dの方法。
【0041】
実施形態5f.混合物の加熱が約24時間以下である実施形態5eの方法。
【0042】
実施形態5g.混合物の加熱が約12時間以下である実施形態5fの方法。
【0043】
実施形態6.混合物が少なくとも約30重量%水から構成される実施形態5〜5gのいずれか1つの方法。
【0044】
実施形態6a.混合物が少なくとも約40重量%水から構成される実施形態6の方法。
【0045】
実施形態6b.混合物が少なくとも約80重量%水から構成される実施形態6aの方法。
【0046】
実施形態6c.混合物が少なくとも約90重量%水から構成される実施形態6bの方法。
【0047】
実施形態6d.混合物が少なくとも約95重量%水から構成される実施形態6cの方法。
【0048】
実施形態6e.混合物が少なくとも約98重量%水から構成される実施形態6dの方法。
【0049】
実施形態7.異形体Bの重量を基準として約0.1〜10重量%の(化合物1の)異形体Aが加熱工程の前に混合物に添加される、発明の概要または実施形態1〜6eのいずれか1つに記載の方法。
【0050】
実施形態7a.異形体Bの重量を基準として約0.2〜5重量%の(化合物1の)異形体Aが加熱工程の前に混合物に添加される実施形態7の方法。
【0051】
化合物1の異形体Bは、一定の有機溶剤から選択される溶剤(すなわち、分子が少なくとも1個の炭素原子を含有している溶剤)を含む液体相の存在下に加熱されることによって、化合物1の異形体Aに転化されることが可能である。一定の有機溶剤のみがこの転化のために足り、近似した同族体を超えた予測は不可能であって、それ故、好適なクラスの有機溶剤の特定には実験が必要とされる。しかしながら、一般に異形体Bの異形体Aへの転化に良好に作用する有機溶剤のクラスとしては、C〜Cn−アルキルアルコール(例えば、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール)、C〜Cn−アルキルクロリド(例えば、n−ブチルクロリドまたはn−ペンチルクロリド)、C〜C10アルカン(例えば、n−ヘキサン、ヘキサン、n−ヘプタン、ヘプタン)、C〜Cアルキルから独立して選択される2個以下の置換基で任意により置換されたC〜C10シクロアルカン(例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン)、ならびに、C〜Cアルキルから独立して選択される3個以下の置換基で任意により置換されたベンゼン(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン)が挙げられることが見出されている。異形体Bは典型的には水(水和水、および、例えばウェットケーキ中に存在する残存水として)を含んでいると共に、異形体Aは無水物であるため、水が転化の最中に遊離化される。共沸蒸留が、異形体転化混合物から水を除去するために度々用いられることが可能である。
【0052】
注目すべきことに、水は、異形体Bを異形体Aに転化するための加熱される液体相中で、溶剤としてきわめて良好に作用することがここに発見されている。これは、水性媒体中では、顕著な量の水をその結晶格子中に保持することが可能である異形体Bが、無水異形体Aよりも優勢であると予期することが可能であるために、特に予想外である。それにもかかわらず、水は、異形体Bの異形体Aへの転化のための液体相の形成に特に好適であることがここに見出されている。転化は、約100℃(すなわち、水の標準沸点)以下の温度で、商業的に簡便な時間内に略100%の完了まで、高収率で進行する。水は有機溶剤よりもかなり安価であるだけではなく、異形体Aは水への溶解度が低いために、ろ過による容易な単離が可能である。あるいは、異形体Aが水中に高濃度で存在する場合、異形体Aは、水の蒸発によって単離されることが可能である。有機溶剤とは異なり、混合物から蒸発した水を補足する必要性はない。
【0053】
本方法の一実施形態において、異形体Bおよび水(異形体Aの増加量に伴って)を含む混合物は、低減することとなる量の異形体Bおよび増大することとなる量の異形体Aを含む固体相と、水および任意により他の溶剤を含む液体相とから構成される。典型的には、任意の他の溶剤は水溶性の有機溶剤から選択されるが、低い水溶性を有する有機溶剤もまた用いられ得ることが可能である。従って、典型的には、本方法のこの実施形態における混合物の液体相は、少なくとも約50%、および、より典型的には少なくとも約80%、90%または95%、ならびに、最も典型的には少なくとも約98重量%水から構成される。
【0054】
上述の実施形態の方法は、化合物1の異形体Bおよび水を含む混合物を加熱することにより化合物1の異形体Bを化合物1の異形体Aに転化する手段を提供する。典型的には、懸濁液またはスラリーの形態での固体化合物1の異形体Bおよび水の混合物が、混合物の混合および加熱手段を備えた適切な大きさの容器内に入れられる。次いで、この混合物が異形体Bの異形体Aへの転化が完了するに十分な期間の間、混合を伴いながら加熱される。混合方法は、内的(例えば、攪拌棒またはオーバーヘッド攪拌機)または外的(例えば、反応容器の回転または振盪)であることが可能である。通常は、加熱の前に異形体Aの種結晶を異形体B含有混合物に加えることが有利である。種結晶の追加は、総転化時間を短縮させ、および、いくつかの場合において、転化が生じるために必要な温度を低下させる。異形体Bの異形体Aへの転化の後、混合物は冷却されると共に、生成物が単離される。固体と液体相との相対量に応じて、生成物の単離は、スラリーのさらなる乾燥を含んでいることが可能であり、または、混合物が懸濁液である場合、任意の洗浄に続くろ過、次いで、乾燥を含んでいることが可能である。
【0055】
混合物中の水の量を変更して、異なるプロセス器具に適応させることが可能である。例えば、大過剰量の水の使用(すなわち、水が異形体B結晶が懸濁している液体相である場合)は、オーバーヘッド攪拌機などの従来の器具での攪拌を容易とする。この懸濁液は、しかしながら、所望の温度に加熱するために顕著なエネルギーを必要とする。化合物1の異形体Aへの転化が完了した後、懸濁液は、ろ過されて固体生成物が単離されることが可能である。この濡れた固体生成物(またはウェットケーキ)は、さらに乾燥されて水を含まない配合組成物の調製に好適な結晶性生成物を得ることが可能であるか、または、水性配合組成物(例えば、水性懸濁液濃縮物)の調製に直接的に用いられることが可能である。
【0056】
本方法の好ましい実施形態は、化合物1の異形体Bおよび水の混合物を、水を混合を容易とするに必要とされる量だけ含有するスラリーとして調製する工程を含む。より少量の水の使用は、スラリーを所望の温度に加熱するために必要なエネルギーが少ないために有利である。加えて、異形体A結晶はスラリーを単に乾燥させることによって単離可能であるため、異形体A結晶を単離するための個別のろ過ステップが不要である。異形体Bの異形体Aへの転化に用いられる容器の構成に応じて、この乾燥プロセスを直接的に容器自体の中で実施することが有利であることが可能である。大規模な商業的プロセスにおいては、固体を一つのコンテナから他へ移す必要性の排除は、顕著な経費の削減をもたらす。あるいは、異形体A結晶は、さらなる乾燥のために他の容器好適に移すことも可能である。
【0057】
従って、本発明の好ましい実施形態において、化合物1の異形体Bの結晶は、水と組み合わされて、典型的には約20〜60重量%含水量、より典型的には30〜50重量%含水量、および、最も典型的には約40重量%含水量を含むスラリーが形成される。
【0058】
さらなる詳細がなくても、上記の記載を用いる当業者は、本発明を最大限にまで利用可能であると考えられている。以下の実施例は、従って、単なる例示であり、本開示を如何様にも限定するものではないと解釈されるべきである。各実施例に関する出発材料は、同一の調製工程により調製されたものである必要は必ずしもないであろう。パーセントは、他に記載がなければ重量基準である。
【0059】
化合物1の異形体Bの化合物1の異形体Aへの転化の特定の実施例が以下に記されている。
【実施例】
【0060】
実施例1
化合物1の異形体Aの調製(水中のスラリーを使用)
250mL、平底ジャケット付き円柱状の反応器(およそ6cm内径、Wilmad−LabGlass)に、化合物1の異形体Bの水−ウェットケーキ(67.8g、単離した生成物ケーキを追加の水で洗浄し;水−ウェットケーキを乾燥させず、さらなる加工なしでそのまま用いたことを除き、国際公開第06/062978号パンフレットの実施例15の手法に準拠して得た)を仕込んだ。水−ウェットケーキは、およそ1%残存アセトニトリルを含む、およそ40重量%の総含水量を有していた。次いで、この反応器に、種結晶として、2.0gの化合物1の異形体A(異形体Bのヘプタン中の異形体Bのスラリーの加熱および共沸的乾燥により調製した;近IR分析で97.4%異形体A)を添加した。オーバーヘッド攪拌を、ガラス、4翼、45度ピッチインペラを用いて、4.5cmの全体径およびおよそ2.2cmの翼突出高で設置した。反応器の蓋を取り付けると共に、熱電対を1つの開いている蓋を通して挿入した。すべての他の蓋孔は、混合物からの水分の蒸発を防止するためにストッパーで留めた。攪拌は、およそ21回転/分で開始した。83℃を維持するように設定した再循環加熱/冷却機からの熱い油を反応器のジャケットを通して循環させると共に、反応器の内容物を6.25時間加熱および混合させ、その後、反応器の内容物を冷却し、混合せずに一晩静置させた。次の日に、加熱および混合を同一の条件を用いて再開すると共にこれを7.25時間維持した。加熱時間の最中に、攪拌を停止した後に反応器の蓋を外して、サンプルを反応器から回収した。各サンプルの取得の前に、反応器の内容物はスパチュラを用いて手で完全に混合して均質にした。1〜3gの重さのサンプルを回収し、次いで、真空オーブン中に入れて、わずかな窒素流下におよそ50℃および17〜40kPaで一晩乾燥させた。次いで、サンプルを近IR分析により結晶形について分析した。サンプルに関する結晶形アッセイ結果は以下の通りである。
【0061】
【表5】

【0062】
合計で13.5時間加熱した後、反応器を25℃に冷却すると共に、反応器の内容物を乾燥ディッシュに移し、わずかな窒素流下に、50℃および17〜40kPaで真空オーブン中で一晩乾燥させて、28.2gの乾燥化合物1の異形体A(HPLCアッセイで92.3%純度、Karl Fisher滴定で0.1%HO)を得た。
【0063】
実施例2
化合物1の異形体Aの調製(水中の懸濁液を使用)
100mL丸底フラスコに、化合物1の異形体B(5.00g、1−プロパノールから再結晶せずに国際公開第06/062978号パンフレットの実施例15の手法に準拠して調製した、近IR分析で4.2%異形体A)、化合物1の異形体A(1−プロパノールからの再結晶を含む国際公開第06/062978号パンフレットの実施例15の手法に準拠して調製した、0.05g、近IR分析で97.0%異形体A)および水(15mL)を仕込んだ。この混合物を70℃に加熱した水浴中で4時間回転させた。25℃に冷却した後、混合物をろ過し、少分量の水で洗浄し、真空オーブン中で60℃および17〜40kPaで乾燥させて、(近IR分析で96.8%異形体A)、4.74g(93.9%回収率)の、218〜220℃で溶融する化合物1の異形体Aを得た。
【0064】
実施例3
化合物1の異形体Aの調製(n−ヘプタン中の懸濁液を使用)
オーバーヘッド攪拌、熱電対、サンプリングディップチューブ、窒素入口、50:50グリコール:水液で満たした閉ループ循環冷却機により冷却される蒸留還流ヘッドおよび還流凝縮器を備えた6Lガラス−ジャケット付き円柱状反応器に、化合物1の異形体B(906.1gの水−ウェットケーキ、乾燥後の重量損失により測定されたおよそ40%水分;1−プロパノールからの再結晶および乾燥を行わない、国際公開第06/062978号パンフレットの実施例15の手法に準拠して調製した;X線回析により測定した異形体B)を仕込んだ。冷却機温度は5℃に設定した。反応器を窒素でフラッシュした後、反応器に、500mLの新しいn−ヘプタン、および、本実施例に記載されている同等の手法から再利用した2000mLのn−ヘプタン濾液を仕込んだ。反応器を再度窒素でフラッシュし、攪拌を開始し、および、反応混合物を97.5℃のジャケット設定点に加熱した。混合物温度が大気圧でおよそ80℃に達した時点で反応混合物は沸騰し始め、凝縮物(すなわち、凝縮した蒸気)を、還流凝縮器引取装置から下部引取装置で変更した1000mLメスシリンダーに誘導した。凝縮物は2種の別々の清透な液体層を形成した。水から構成されていた凝縮物の下層を、メスシリンダーから周期的に除去すると共に計量した。およそ350mLの新たなn−ヘプタンを反応器に戻して、凝縮物回収シリンダを介して除去されたn−ヘプタンの損失を補償した。反応混合物温度は系から水が除かれるに伴って徐々に昇温した。反応混合物温度が90℃に達したら、ジャケット設定点を110℃に上げ、および、反応混合物を還流でさらにおよそ2時間加熱した。反応混合物のサンプルは、サンプルディップチューブを介して周期的に採取した。これらのサンプルをろ過し、得られたウェットケーキを回収し、真空オーブン中で乾燥させ、および、近IR分析によりアッセイに供した。サンプルに関する結晶形アッセイ結果は以下の通りである。
【0065】
【表6】

【0066】
留出物から除去した水性層の総体積は363mLであった。反応器を25℃に冷却すると共に、一晩静置させた。反応混合物を短時間の間攪拌して粗いガラスフリットフィルタ漏斗への結晶スラリーの移動を補助し、および、スラリーを真空ろ過に供した。濾液は再利用して、反応器に残存する生成物をフィルタにすすいだ。ウェットケーキを、真空オーブン中で、一晩、80℃でわずかな窒素ブリード下に乾燥させて、529.5gの生成物を得た。乾燥させた生成物は、近IR分析およびX線回析によって異形体Aであることが見出された(近IR分析で97.1%異形体A)。
【0067】
実施例4
化合物1の異形体Aの調製(1−クロロブタン中の懸濁液を使用)
ガラススクリューキャップバイアルに、化合物1の異形体B(0.509g)、化合物1の異形体A(0.503g、実施例3に類似のプロセスによって異形体Bから調製した)および1−クロロブタン(5.8g)を仕込んだ。磁気攪拌棒を追加すると共にバイアルにキャップをした。バイアルを、加熱磁気攪拌プレート上のアルミニウムトレイ中に入れた。アルミニウムトレイを45℃に加熱し、および反応混合物を、この温度でおよそ27時間攪拌した。次いで、反応混合物を減圧を用いてBuechner漏斗をとおしてろ過した。フィルタケーキをおよそ30分間かけて空気乾燥させ、次いで、新たなガラスバイアルに移した。バイアルを織布で覆うと共に、60〜70℃および17〜40kPaに維持した真空オーブンにおよそ3日間入れた。乾燥した固形分を近IRにより分析したところ、97.4%異形体Aであることが見出された。
【0068】
実施例5
化合物1の異形体Aの調製(トルエン中の懸濁液を使用)
オーバーヘッド攪拌、ディーンスタークトラップおよび還流凝縮器、熱電対および滴下漏斗を備えた1000mLガラス円柱状のジャケット付き反応器に、化合物1の異形体B(100g、単離した生成物ケーキをアセトニトリル/水混合物中で再度スラリー化し、ろ過し、および、乾燥させたことを除き、国際公開第06/062978号パンフレットの実施例15の手法に準拠して得た;異形体BはX線回析により確認した)を仕込んだ。反応器を窒素でフラッシュした後、反応器に500mLのトルエンを仕込み、反応器の内容物を混合してスラリーを形成した。このスラリーを、ジャケット流体の温度を120℃に昇温させることにより加熱した。スラリーが102.6℃に達した時点で凝縮物が回収され始め、これを、ディーンスタークトラップに回収した。およそ還流で1時間の後、4.4gの下位(水性)層をトラップから除去した。さらに20分間後、スラリーはより希釈されて、攪拌が一時的に停止されると急速に反応器の底に沈降する大きな固体粒子から構成されているように見えた。還流で合計でおよそ2時間の後、反応混合物を20℃に冷却した。反応混合物を取り出し、減圧を用いてろ過して、砂のような外観を有するウェットケーキを得た。生成物ケーキを2分量の合計で150mLの新たなトルエンで洗浄すると共に、次いで、乾燥ディッシュに移した。生成物ケーキを、真空オーブン中に100℃および17〜40kPaで、わずかな窒素ブリードで3日間乾燥させた。乾燥させた生成物をX線回析により化合物1の異形体A(92.2グラム)と判定した;近IR分析は、生成物が95.6%異形体Aであることを示した。
【0069】
実施例6
化合物1の異形体Aの調製(1−ブタノール中の懸濁液を使用)
ガラススクリューキャップバイアルに、化合物1の異形体B(0.572g)、化合物1の異形体A(0.578g、実施例3に類似のプロセスによって異形体Bから調製した)および1−ブタノール(4.0g)を仕込んだ。磁気攪拌棒を追加すると共にバイアルにキャップをした。バイアルを、加熱磁気攪拌プレート上のアルミニウムトレイ中に入れた。アルミニウムトレイを60℃に加熱し、および反応混合物を、この温度でおよそ24時間攪拌した。次いで、反応混合物を減圧を用いてBuechner漏斗をとおしてろ過した。フィルタケーキをおよそ30分間かけて空気乾燥させ、次いで、新たなガラスバイアルに移した。バイアルを織布で覆うと共に、およそ60℃および17〜40kPaの真空オーブンにおよそ3日間入れた。乾燥した固形分を近IRにより分析したところ、96.7%異形体Aであることが見出された。
【0070】
実施例7
化合物1の異形体Aの調製(1−ペンタノール中の懸濁液を使用)
ガラススクリューキャップバイアルに、化合物1の異形体B(0.611g)、化合物1の異形体A(0.605g、実施例3に類似のプロセスによって異形体Bから調製した)および1−ペンタノール(4.0g)を仕込んだ。磁気攪拌棒を追加すると共にバイアルにキャップをした。バイアルを、加熱磁気攪拌プレート上のアルミニウムトレイ中に入れた。アルミニウムトレイを60℃に加熱し、および反応混合物を、この温度でおよそ24時間攪拌した。次いで、反応混合物を減圧を用いてBuechner漏斗をとおしてろ過した。フィルタケーキをおよそ30分間かけて空気乾燥させ、次いで、新たなガラスバイアルに移した。バイアルを織布で覆うと共に、およそ60℃および17〜40kPaに維持した真空オーブンにおよそ3日間入れた。乾燥した固形分を近IRにより分析したところ、97.2%異形体Aであることが見出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2θ反射位置
【表1】

を有するX線回析パターンにより特徴付けられる3−ブロモ−1−(3−クロロ−2−ピリジニル)−N−[4−シアノ−2−メチル−6−[(メチルアミノ)カルボニル]フェニル]−1H−ピラゾール−5−カルボキサミドの多形体Aを製造する方法であって、
水、n−ヘプタン、1−クロロブタン、トルエン、1−ブタノールおよび1−ペンタノールからなる群から選択される溶媒と、少なくとも2θ反射位置
【表2】

を有するX線回析パターンにより特徴付けられる3−ブロモ−1−(3−クロロ−2−ピリジニル)−N−[4−シアノ−2−メチル−6−[(メチルアミノ)カルボニル]フェニル]−1H−ピラゾール−5−カルボキサミドの多形体Bとを含む混合物を約40℃〜溶媒の沸点の温度で加熱する工程を含む、上記方法。
【請求項2】
溶媒がn−ヘプタンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶媒がトルエンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
溶媒が1−クロロブタンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
溶媒が1−ブタノールまたは1−ペンタノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
溶媒が水である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
温度が約60〜約100℃である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
温度が約70〜約100℃である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
温度が約70〜約90℃である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
混合物を少なくとも約2時間加熱する、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
混合物の加熱が約48時間以下である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
混合物の加熱が約24時間以下である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
混合物の加熱が約12時間以下である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
多形体Bの質量に対して約0.1〜10質量%の多形体Aを加熱工程の前に混合物に添加する、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
多形体Bの質量に対して約0.2〜5質量%の多形体Aを加熱工程の前に混合物に添加する、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2012−508747(P2012−508747A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536436(P2011−536436)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/063991
【国際公開番号】WO2010/056720
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】