説明

非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池

【課題】ポリオレフィン微多孔膜及び耐熱性多孔質層を備えた非水系二次電池用セパレータに関し、電池の生産性及び安全性を高める非水系二次電池用セパレータを提供する。
【解決手段】ポリオレフィン微多孔膜と、前記ポリオレフィン微多孔膜の片面又は両面に設けられた耐熱性多孔質層と、前記ポリオレフィン微多孔膜と前記耐熱性多孔質層との間に設けられ、熱可塑性エラストマー及びゴム成分から選択される少なくとも一種を含む接着層と、を備えた非水系二次電池用セパレータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表される非水系二次電池は、携帯電話やノートパソコンといった携帯用電子機器の主電源として広範に普及している。非水系二次電池には、更なる高エネルギー密度化が求められているが、安全性の確保が技術的な課題となっている。
非水系二次電池の安全性の確保に関し、セパレータには、繰り返しの充放電の間に破膜しない一定以上の機械的特性、異常加熱した場合に速やかに電池反応が停止される特性(シャットダウン特性)、高温になっても形状を維持して正極物質と負極物質が直接反応する危険な事態を防止する性能(耐短絡性)等が要求される。
【0003】
このような事情のもと、従来、ポリオレフィン微多孔膜の片面又は両面に耐熱性高分子を含む多孔質層(耐熱性多孔質層)を塗工形成したセパレータが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。これらの提案によれば、セパレータのシャットダウン特性や耐短絡性の向上効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−209570号公報
【特許文献2】特開2000−030686号公報
【特許文献3】特開2009−205959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セパレータの耐熱性多孔質層については、電池製造過程あるいは使用時において、その一部が剥れたり、脱落することがないことが望まれる。耐熱性多孔質層の欠落が生じた場合、電池の歩留まりが低下し、また、耐熱性多孔質層が欠落した部分においてはセパレータの耐熱性と耐短絡性が失われるため、電池の安全性にも問題が生じることが考えられるからである。したがって、ポリオレフィン微多孔膜の面上に耐熱性多孔質層を備えたセパレータにおいては、耐熱性多孔質層がよく保持されていることが必要である。
【0006】
本発明は、ポリオレフィン微多孔膜及び耐熱性多孔質層を備えた非水系二次電池用セパレータに関し、電池の生産性及び安全性を高める非水系二次電池用セパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するための具体的手段は以下のとおりである。
<1> ポリオレフィン微多孔膜と、前記ポリオレフィン微多孔膜の片面又は両面に設けられた耐熱性多孔質層と、前記ポリオレフィン微多孔膜と前記耐熱性多孔質層との間に設けられ、熱可塑性エラストマー及びゴム成分から選択される少なくとも一種を含む接着層と、を備えた非水系二次電池用セパレータ。
<2> 前記接着層は、塗工量が0.05g/m以上1.0g/m以下である<1>に記載の非水系二次電池用セパレータ。
<3> 正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置される<1>又は<2>に記載の非水系二次電池用セパレータとを備え、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリオレフィン微多孔膜及び耐熱性多孔質層を備えた非水系二次電池用セパレータに関し、電池の生産性及び安全性を高める非水系二次電池用セパレータを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0010】
<非水系二次電池用セパレータ>
本発明の非水系二次電池用セパレータは、ポリオレフィン微多孔膜と、前記ポリオレフィン微多孔膜の片面又は両面に設けられた耐熱性多孔質層と、前記ポリオレフィン微多孔膜と前記耐熱性多孔質層との間に設けられ、熱可塑性エラストマー及びゴム成分から選択される少なくとも一種を含む接着層と、を備えた非水系二次電池用セパレータである。
本発明の非水系二次電池用セパレータは、ポリオレフィン微多孔膜と耐熱性多孔質層との間に、熱可塑性エラストマー及びゴム成分から選択される少なくとも一種を含む接着層を備えることにより、耐熱性多孔質層の保持をよくし、電池製造過程及び電池使用時における耐熱性多孔質層の剥れや脱落を抑制し、よって、電池の製造時の歩留まり、及び電池の使用時の安全性を向上させることができる。
【0011】
本発明において、上記の効果が奏されるメカニズムは、特定の理論に拘束されるものではないが、以下のように推測される。
熱可塑性エラストマー及びゴム成分から選択される少なくとも一種を含む接着層は、熱可塑性エラストマー及びゴム成分に起因する可撓性を有する。接着層が可撓性を有することにより、セパレータに機械的外力が加えられた場合、その衝撃が緩和され、セパレータから耐熱性多孔質層が剥れたり脱落することが抑制されるものと推測される。その結果、電池の製造時の歩留まり、及び電池の使用時の安全性が向上すると考えられる。
【0012】
(接着層)
本発明の非水系二次電池用セパレータにおいて、接着層は、ポリオレフィン微多孔膜と耐熱性多孔質層との間に設けられ、セパレータから耐熱性多孔質層が剥れたり脱落することを抑制する。
本発明の非水系二次電池用セパレータにおいて、耐熱性多孔質層はポリオレフィン微多孔膜の片面又は両面に設けられるが、耐熱性多孔質層がポリオレフィン微多孔膜の両面に設けられている場合、接着層は、ポリオレフィン微多孔膜の両面において、ポリオレフィン微多孔膜と耐熱性多孔質層との間に設けられる。
本発明において、接着層は、熱可塑性エラストマー及びゴム成分から選択される少なくとも一種を含む。
【0013】
[熱可塑性エラストマー]
熱可塑性エラストマーの一般的な構造は、軟質層(ソフトセグメント)と硬質層(ハードセグメント)からなる。軟質層と硬質層が相まって、熱可塑性エラストマー特有のゴム弾性を有する。熱可塑性エラストマーとしては、特に制限されないが、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0014】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレンブチレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレンプロピレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレンエチレンプロピレン−スチレン共重合体、及びスチレン系熱可塑性エラストマーコンパウンド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0015】
スチレン系熱可塑性エラストマーの市販品の例を次に列挙すると、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体としては、例えば、タフプレン(A125、126S等)、アサプレンT(411、414等)(以上、旭化成株式会社)、及びクレイトンD(1101、1102等)(クレイトンポリマージャパン株式会社)が挙げられる。スチレン−イソプレン−スチレン共重合体としては、例えば、クレイトンD1124(クレイトンポリマージャパン株式会社)が挙げられる。スチレン−エチレンブチレン−スチレン共重合体としては、例えば、タフテックH(1031、1041等)(旭化成株式会社)、セプトン(8004、8006等)(株式会社クラレ)、及びクレイトンG(1650、1651等)(クレイトンポリマージャパン株式会社)が挙げられる。スチレン−エチレンプロピレン−スチレン共重合体としては、例えば、セプトン(2002、2005等)(株式会社クラレ)が挙げられる。スチレン−エチレンエチレンプロピレン−スチレン共重合体としては、例えば、セプトン4033(株式会社クラレ)が挙げられる。
【0016】
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、エチレン−αオレフィン共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体(メタロセン触媒)、非晶性ポリαオレフィン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、及びポリプロピレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上組み合わせて用いてもよい。
オレフィン系熱可塑性エラストマーの市販品の例としては、例えば、ミラストマー(7030、8030等)(三井化学株式会社)、タフマー(A−4085、P−0180、P−0480等)(三井化学株式会社)等が挙げられる。
【0017】
[ゴム成分]
ゴム成分としては、特に制限されないが、例えば、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、EPM(エチレンプロピレンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンジエン三元共重合体)、ACM(アクリルゴム)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0018】
SBRとしては、例えば、JSR(0202、T5582等:JSR株式会社)、及びNipol(1721、2057S等:日本ゼオン株式会社)が挙げられる。BRとしては、例えば、JSR(RB810、RB820、RB830等:JSR株式会社)、及びNipol(BR1220、BR1241等:日本ゼオン株式会社)が挙げられる。EPMとしては、例えば、JSR EP57P(JSR株式会社)が挙げられる。EPDMとしては、例えば、JSR EP24、EP27(JSR株式会社)が挙げられる。ACMとしては、例えば、Nipol(AR31、AR32等:日本ゼオン株式会社)が挙げられる。
【0019】
ゴム成分としては、コア・シェル構造を備えたものであってもよい。ゴム成分におけるコア・シェル構造は、芯部分と外殻部分からなる構造を有し、芯部分と外殻部分とで樹脂の組成が異なる。コア・シェル構造を備えたゴム成分は、芯部分を構成する樹脂と外殻部分を構成する樹脂に関し、(i)ガラス転移温度(Tg)の高い樹脂と低い樹脂とを組み合せてTgの制御ができる、(ii)外殻部分の樹脂を変えることにより、他の材料への相溶性や接着性の調整ができる、(iii)粘性の高い樹脂と弾性の高い樹脂とを組み合わせて粘弾性の制御ができる、等のメリットがある。
コア・シェル構造を備えたゴム成分の具体例としては、コア・シェル構造からなるパラペット(SA−NW001等)(株式会社クラレ)、及びRP−101(根上工業株式会社)が挙げられる。
コア・シェル構造を備えたゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよく、前述のほかのゴム成分と組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本発明において、接着層に含まれる熱可塑性エラストマー及びゴム成分は、そのガラス転移温度(Tg)が120℃以下であることが好ましい。前記ガラス転移温度(Tg)が120℃以下であると、接着層の可撓性が良好であり、耐熱性多孔質層の剥れや脱落を防ぐ効果が高い。また、前記ガラス転移温度(Tg)が120℃以下であると、充放電を繰り返して長期間使用する場合や、使用時に温度が上昇した場合においても、接着層の可撓性が失われにくい。前記ガラス転移温度(Tg)は、−50〜120℃であることが好ましく、−40〜100℃であることがより好ましい。
【0021】
本発明において、接着層には、熱可塑性エラストマー及びゴム成分以外のその他の成分が含まれていても構わないが、不純物が溶出されない観点から、その他の成分(例えば、製造過程で不可避的に混入する成分)の含有量は少ないことが好ましく、含まれないことがより好ましい。
【0022】
本発明において、接着層は、塗工量が0.05g/m以上1.0g/m以下であることが好ましい。塗工量が0.05g/m以上であると、接着層の可撓性が良好であり、耐熱性多孔質層の欠落がよく抑制される。他方、塗工量が1.0g/m以下であると、接着層がポリオレフィン微多孔膜及び耐熱性多孔質層の微多孔を塞ぎにくく、電池性能への影響がない。塗工量は、0.08g/m以上1.0g/m以下であることがより好ましく、0.1g/m以上1.0g/m以下であることが更に好ましい。
なお、本発明で接着層について言う塗工量は、乾燥後の塗工量である。
【0023】
[接着層の形成方法]
ポリオレフィン微多孔膜上に接着層を形成する方法は特に限定されるものではないが、例えば、下記の方法(a)及び(b)が挙げられる。以下、接着層の形成方法の説明において、熱可塑性エラストマー及びゴム成分を「ポリマー」と称することがある。
【0024】
(a)少なくとも一種のポリマーを溶剤に溶解あるいは水系エマルジョンとして分散させて得た液状物を、ポリオレフィン微多孔膜に塗布して塗布膜を形成し、その後に前記塗布膜から溶剤や水を除去して接着層を形成する方法。
(b)少なくとも一種のポリマーを溶剤に溶解あるいは水系エマルジョンとして分散させて得た液状物を、基体に塗布して塗布膜を形成し、前記塗布膜を前記基体上からポリオレフィン微多孔膜上に転写して接着層を形成する方法。
【0025】
上記(a)及び(b)において、溶剤はポリマーを溶解するものであればよく、特に限定はないが、具体的には非プロトン性極性溶剤が好ましく、例えば、メチルエチルケトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
【0026】
上記(a)及び(b)において、ポリマーを溶剤に溶解あるいは水系エマルジョンとして分散させて得た液状物は、ポリマー濃度が、1質量%〜20質量%であることが好ましい。ポリマー濃度が1質量%以上であると、前記液状物を用いて形成された接着層の可撓性が良好であり、耐熱性多孔質層の欠落がよく抑制される。他方、ポリマー濃度が20質量%以下であると、前記液状物を用いて形成された接着層がポリオレフィン微多孔膜及び耐熱性多孔質層の微多孔を塞ぎにくい。
【0027】
(ポリオレフィン微多孔膜)
本発明において、ポリオレフィン微多孔膜は、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった膜を意味する。かかる微多孔膜は、130〜150℃で軟化し、多孔質の空隙が閉塞されシャットダウン機能を発現し、かつ非水系二次電池の電解液に溶解しない微多孔膜であることが好ましい。
【0028】
ポリオレフィン微多孔膜の厚みは、5μm〜25μmが好ましく、さらに好ましくは5μm〜20μmである。厚みが5μm以上であると、シャットダウン機能が良好である。他方、厚みが25μm以下であると、耐熱性多孔質層も加えた非水系二次電池用セパレータの厚みとして適当であり、高電気容量化が達成できる。
ポリオレフィン微多孔膜の空孔率は、透過性、機械強度及びハンドリング性の観点から、30〜80%であることが好ましい。空孔率が30%以上であると、透過性、電解液の保持量が適当である。他方、空孔率が80%以下であると、ポリオレフィン微多孔膜の機械強度の点で好ましく、またシャットダウン機能が良好である。空孔率は、より好ましくは40〜60%である。
ポリオレフィン微多孔膜のガーレ値(JIS・P8117)は、機械強度と膜抵抗をバランスよく得るという観点から、50〜500sec/100ccであることが好ましい。
【0029】
ポリオレフィン微多孔膜の膜抵抗は、非水系二次電池の負荷特性の観点から、0.5〜5ohm・cmであることが好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜の突刺強度は250g以上であることが好ましい。突刺強度が250g以上であると、非水系二次電池を作製した場合、電極の凹凸や衝撃等でセパレータにピンホール等が発生しにくく、非水系二次電池が短絡する可能性が低い。
ポリオレフィン微多孔膜の引張強度は、10N以上であることが好ましい。引張強度が10N以上であると、非水系二次電池を作製する時にセパレータを捲回する際に、セパレータが破損しにくい。
【0030】
[ポリオレフィン]
ポリオレフィン微多孔膜に用いるポリオレフィン樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、及び1−オクテン等のモノマーを重合して得られる重合体(ホモ重合体や共重合体、多段重合体等)が挙げられ、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン、ポリブテン、エチレンプロピレンラバー等が挙げられる。
【0031】
前記ポリオレフィン樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。例えば、シャットダウン挙動に重点をおいて、高密度ポリエチレンと中密度ポリエチレンとの混合物にすることが可能である。ほかに、耐短絡性又は機械的物性(突刺し強度等)の向上に注目して、高密度ポリエチレンと超高分子量ポリエチレンとの混合物にすることが可能である。また、耐熱性に注目して、ポリエチレンとポリプロピレンとの混合物にすることが可能である。
【0032】
ポリオレフィン微多孔膜の融点を低下させる観点から、前記ポリオレフィン樹脂は高密度ポリエチレンを含むことが好ましい。高密度ポリエチレンが、前記ポリオレフィン樹脂中に占める割合としては、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。
【0033】
[ポリオレフィン微多孔膜の製造方法]
本発明において、ポリオレフィン微多孔膜の製造方法に特に制限はないが、例えば溶液法や溶融法等の適用が可能であり、具体的には下記(1)〜(6)の工程を経て製造することが好ましい。
【0034】
(1)ポリオレフィン溶液の調製
所定の量比のポリオレフィンを溶剤に溶解させたポリオレフィン溶液を調製する。この時、溶剤を混合してポリオレフィン溶液を作製しても構わない。溶剤としては、例えばパラフィン、流動パラフィン、パラフィン油、鉱油、ひまし油、テトラリン、エチレングリコール、グリセリン、デカリン、トルエン、キシレン、ジエチルトリアミン、エチルジアミン、ジメチルスルホキシド、ヘキサン等が挙げられる。
【0035】
ポリオレフィン溶液の濃度は1〜35質量%が好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。ポリオレフィン溶液の濃度が1質量%以上であると、冷却ゲル化して得られるゲル状成形物が溶媒で高度に膨潤しないように維持できるため変形しにくく、取扱い性が良好である。他方、ポリオレフィン溶液の濃度が35質量%以下であると、押し出しの際の圧力が抑えられるため吐出量を維持することが可能で生産性に優れる。また、押し出し工程での配向が進みにくく、延伸性や均一性を確保するのに有利である。
ポリオレフィン溶液は、異物除去のため、濾過して使用することが好ましい。濾過装置、濾過フィルターの形状、濾過の様式などは特に制限はなく、従来公知の装置、様式を使用することができる。濾過フィルターの穴径は、濾過性の観点から1μm〜50μmが好ましい。
【0036】
(2)ポリオレフィン溶液の押出
調製したポリオレフィン溶液を一軸押出機、もしくは二軸押出機で混練し、融点以上かつ融点+60℃以下の温度でTダイもしくはIダイで押し出す。好ましくは二軸押出機を用いる。そして、押し出したポリオレフィン溶液をチルロール又は冷却浴に通過させて、ゲル状組成物を形成する。この際、ゲル化温度以下に急冷しゲル化することが好ましい。特に、溶媒として揮発性溶剤と不揮発性溶剤とを組み合せて用いた場合において、結晶パラメータを制御するという観点では、ゲル状組成物の冷却速度は30℃/分以上であることが好ましい。
【0037】
(3)脱溶媒処理
次いで、ゲル状組成物から溶媒を除去する。揮発性溶剤を使用する場合、予熱工程も兼ねて加熱等により蒸発させゲル状組成物から溶媒を除くこともできる。また、不揮発性溶媒の場合は圧力をかけて絞り出すなどして溶媒を除くことができる。なお、溶媒は完全に除く必要はない。
【0038】
(4)ゲル状組成物の延伸
脱溶媒処理に次いで、ゲル状組成物を延伸する。ここで、延伸処理の前に弛緩処理を行ってもよい。延伸処理は、ゲル状成形物を加熱し、通常のテンター法、ロール法、圧延法もしくはこれらの方法の組合せによって、所定の倍率で2軸延伸する。2軸延伸は同時又は逐次のどちらであってもよい。また、縦多段延伸や3乃至4段延伸とすることもできる。
延伸温度は、90℃以上、成膜に使用するポリオレフィンの融点未満であることが好ましく、さらに好ましくは100〜120℃である。加熱温度が融点未満であると、ゲル状成形物が溶解しにくいために延伸を良好に行える。また、加熱温度が90℃以上であると、ゲル状成形物の軟化が十分で延伸において破膜せずに高倍率の延伸が可能である。
【0039】
延伸倍率は、原反の厚さによって異なるが、1軸方向で少なくとも2倍以上、好ましくは4〜20倍で行うことが好ましい。特に、延伸倍率が機械方向(MD方向)に4〜10倍、機械方向の垂直方向(TD方向)に6〜15倍であることが好ましい。延伸速度は、充放電のサイクル安定性、耐短絡性を好適に高める観点から、200%/秒以下とすることが好ましい。
延伸後、必要に応じて熱固定を行い、熱寸法安定性を持たせる。延伸、熱固定をさらに2段あるいはそれ以上繰返すことにより熱収縮性を抑制し、耐短絡性をより好適に高めることができる。このときMD及び又はTD方向の延伸性倍率は1.5から3倍と比較的低いことが好ましい。
【0040】
(5)溶剤の抽出・除去
延伸後のゲル状組成物を抽出溶剤に浸漬して、溶媒を抽出する。抽出溶剤としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、デカリン、テトラリン等の炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素、メチレンクロライド等の塩素化炭化水素、三フッ化エタン等のフッ化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等の易揮発性のものを用いることができる。これらの溶剤はポリオレフィン樹脂の溶解に用いた溶剤に応じて適宜選択し、単独もしくは混合して用いることができる。溶媒の抽出は、微多孔膜中の溶媒を1質量%未満に迄除去する。
【0041】
(6)微多孔膜のアニール
微多孔膜をアニールにより熱セットする。アニール温度は、微多孔膜の熱収縮率の観点から、80〜150℃で実施することが好ましく、115〜135℃であることがより好ましい。
アニール時間は、微多孔膜の熱収縮率を低減する観点から、1分以上とすることが好ましく、1分〜1時間とすることができる。微多孔膜の変形を抑制する観点からは、長時間のアニールが好ましい。微多孔膜の熱収縮をより低減させるために、アニール時間を1時間から5時間程度まで延長することも可能である。
【0042】
(耐熱性多孔質層)
本発明において、耐熱性多孔質層は、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった層を意味する。
【0043】
本発明において、耐熱性多孔質層はポリオレフィン微多孔膜の両面又は片面に形成すればよいが、ハンドリング性、耐久性及び熱収縮の抑制効果の観点から、ポリオレフィン微多孔膜の両面に形成された態様が好ましい。
本発明において、耐熱性多孔質層がポリオレフィン微多孔膜の両面に形成されている場合は、耐熱性多孔質層の厚みの合計が3μm以上12μm以下であることが好ましく、耐熱性多孔質層がポリオレフィン微多孔膜の片面にのみ形成されている場合は、耐熱性多孔質層の厚みが3μm以上12μm以下であることが好ましい。このような厚みの範囲は、ハンドリング性、耐久性、熱収縮の抑制効果、及び液枯れしにくい点で好ましい。
本発明において、耐熱性多孔質層の空孔率は、液枯れしにくい観点から、30〜90%の範囲が好適であり、より好ましくは30〜70%である。
【0044】
[耐熱性高分子]
本発明において、耐熱性多孔質層を構成する耐熱性高分子としては、融点200℃以上の結晶性高分子、あるいは融点を有しないが分解温度が200℃以上の高分子が好ましく、例えば、全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド及びセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂が挙げられる。
かかる高分子(以下「耐熱性樹脂」とも言う。)は、ホモポリマーであってもよく、さらに柔軟性の発揮など、所望の目的により若干の共重合成分を含有することも可能である。すなわち、例えば全芳香族ポリアミドにおいては、例えば少量の脂肪族成分を共重合することも可能である。
さらにかかる耐熱性樹脂は、電解質溶液に対し不溶性であり、耐久性が高いことにより全芳香族ポリアミドが好適であり、多孔質層を形成しやすく耐酸化還元性に優れるという観点から、メタ型全芳香族ポリアミドであるポリメタフェニレンイソフタルアミドがさらに好適である。
【0045】
[無機フィラー]
本発明において、耐熱性多孔質層には無機フィラーが含まれていることが好ましい。無機フィラーとしては、特に限定はないが、アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア等の金属酸化物、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩、リン酸カルシウム等の金属リン酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物等が好適に用いられる。このような無機フィラーは、不純物の溶出や耐久性の観点から結晶性の高いものが好ましい。
【0046】
無機フィラーとしては、200〜400℃において吸熱反応を生じるものが好ましい。非水系二次電池では、正極の分解に伴う発熱が最も危険と考えられており、この分解は300℃近傍で起こる。このため、吸熱反応の発生温度が200〜400℃の範囲であれば、非水系二次電池の発熱を防ぐ上で有効である。
200〜400℃において吸熱反応を生じる無機フィラーとして、金属水酸化物、硼素塩化合物又は粘土鉱物等からなる無機フィラーが挙げられる。具体的には、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム、アルミン酸カルシウム、ドーソナイト、硼酸亜鉛等が挙げられる。水酸化アルミニウムやドーソナイト、アルミン酸カルシウムは200〜300℃の範囲において脱水反応が起こり、また、水酸化マグネシウムや硼酸亜鉛は300〜400℃の範囲において脱水反応が起こるため、これらの無機フィラーのうち少なくともいずれか一種を用いることが好ましい。
上記無機フィラーは単独若しくは2種以上を組み合せて用いることができる。また、これらの難燃性の無機フィラーには、アルミナやジルコニア、シリカ、マグネシア、チタニア等の金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属炭酸塩等の他の無機フィラーを適宜混合して用いることもできる。
【0047】
本発明において、無機フィラーの平均粒子径は、高温時の耐短絡性や成形性等の観点から、0.1μm〜2μmが好ましい。耐熱性多孔質層における無機フィラーの含有量は、耐熱性向上効果、透過性及びハンドリング性の観点から、50〜95質量%であることが好ましい。
なお、耐熱性多孔質層中の無機フィラーは、耐熱性多孔質層が微多孔膜状である場合は耐熱性樹脂に捕捉された状態で存在し、耐熱性多孔質層が不織布等の場合は構成繊維中に存在するか、樹脂等のバインダーにより不織布表面等に固定されていればよい。
【0048】
[耐熱性多孔質層の形成方法]
本発明において、耐熱性多孔質層の形成方法に特に制限はないが、具体的には下記(1)〜(5)の工程を経て形成することが好ましい。なお、下記(1)の工程を実施する前に、基材となるポリオレフィン微多孔膜の耐熱性多孔質層を形成する面上には、接着層を形成しておく。
【0049】
(1)塗工用スラリーの作製
耐熱性樹脂を溶剤に溶かし、塗工用スラリーを作製する。溶剤は耐熱性樹脂を溶解するものであればよく、特に限定はないが、極性溶剤が好ましく、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。また、当該溶剤は、極性溶剤に加えて耐熱性樹脂に対して貧溶剤となる溶剤も加えることができる。このような貧溶剤を適用することでミクロ相分離構造が誘発され、耐熱性多孔質層を形成する上で多孔化が容易となる。貧溶剤としては、アルコール類が好適であり、特にグリコールのような多価アルコールが好適である。
塗工用スラリー中の耐熱性樹脂の濃度は4〜9質量%が好ましい。また必要に応じ、これに無機フィラーを分散させて塗工用スラリーとする。塗工用スラリー中に無機フィラーを分散させるに当たって、無機フィラーの分散性が好ましくないときは、無機フィラーをシランカップリング剤等で表面処理し、分散性を改善する手法も適用可能である。
【0050】
(2)スラリーの塗工
スラリーをポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の表面に塗工する。ポリオレフィン微多孔膜の両面に耐熱性多孔質層を形成する場合は、基材の両面に同時に塗工することが、工程の短縮という観点で好ましい。塗工用スラリーを塗工する方法としては、ナイフコーター法、グラビアコーター法、ダイコーター法、リバースロールコーター法、ロールコーター法、マイヤーバー法、スクリーン印刷法、インクジェット法、スプレー法等が挙げられる。塗膜を均一に形成するという観点において、リバースロールコーター法が好適である。
ポリオレフィン微多孔膜の両面に同時に塗工する場合は、例えば、ポリオレフィン微多孔膜を一対のマイヤーバーの間に通すことで両面に過剰な塗工用スラリーを塗布し、これを一対のリバースロールコーターの間に通して過剰なスラリーを掻き落すことで精密計量するという方法を採用できる。
塗工用スラリーは、微細異物除去のため、塗工に先立ち濾過することが好ましい。濾過装置、フィルターの形状、設置位置は特に制限はなく、従来公知の装置、フィルターを所定の位置に設置して使用することができる。フィルターの穴径は、濾過性と生産性の観点から、1μm以上100μm以下が好ましい。
【0051】
(3)スラリーの凝固
ポリオレフィン微多孔膜に塗工用スラリーを塗工したものを、耐熱性樹脂を凝固させることが可能な凝固液で処理することにより、耐熱性樹脂を凝固させて、耐熱性多孔質層を形成する。処理方法としては、塗工用スラリーを塗工した面に凝固液をスプレーで吹き付ける方法や、塗工用スラリーを塗工したポリオレフィン微多孔膜を凝固液の入った浴(凝固浴)中に浸漬する方法などが挙げられる。ここで、凝固浴を設置する場合は、塗工装置の下方に設置することが好ましい。
凝固液としては、耐熱性樹脂を凝固できるものであれば特に限定されないが、水、又は、スラリーに用いた溶剤に水を適当量混合させたものが好ましい。ここで、水の混合量は、凝固効率や多孔化の観点から、凝固液に対して40〜80質量%が好ましい。
【0052】
(4)凝固液の除去
スラリーの凝固に用いた凝固液を、水洗することによって、除去する。
【0053】
(5)乾燥
ポリオレフィン微多孔膜に耐熱性樹脂の塗工層を形成したシートから、水を乾燥により除去する。乾燥方法は特に限定はないが、乾燥温度は50〜80℃が好適であり、高い乾燥温度を適用する場合は熱収縮による寸法変化が起こらないようにするためにロールに接触させる方法を適用することが好ましい。
【0054】
(セパレータの諸特性)
本発明の非水系二次電池用セパレータは、非水系二次電池を作製した場合の電池のエネルギー密度の観点から、全体の膜厚が30μm以下であることが好ましい。
本発明の非水系二次電池用セパレータの空孔率は、透過性、機械強度及びハンドリング性の観点から、30〜70%であることが好ましく、40〜60%であることがより好ましい。
本発明の非水系二次電池用セパレータのガーレ値(JIS・P8117)は、機械強度と膜抵抗のバランスがよい点で、100〜500sec/100ccであることが好ましい。
本発明の非水系二次電池用セパレータの膜抵抗は、非水系二次電池の負荷特性の観点から、1.5〜10ohm・cmであることが好ましい。
【0055】
本発明の非水系二次電池用セパレータの突刺強度は、250g〜1000gであることが好ましい。突刺強度が250g以上であると、非水系二次電池を作製した場合、セパレータにピンホール等が発生しにくく、非水系二次電池の短絡発生を抑制できる。
本発明の非水系二次電池用セパレータの引張強度は、10N以上であることが好ましい。引張強度が10N以上であると、非水系二次電池を作製する時にセパレータを捲回する際に、セパレータが破損しにくい。
【0056】
本発明の非水系二次電池用セパレータの105℃における熱収縮率は、0.5〜10%であることが好ましい。熱収縮率がこの範囲にあると、セパレータの形状安定性とシャットダウン特性のバランスがよい。より好ましくは0.5〜5%である。
【0057】
<非水系二次電池>
本発明の非水系二次電池は、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池であって、正極と、負極と、既述の構成の非水系二次電池用セパレータを備える。非水系二次電池は、負極と正極がセパレータを介して対向している電池要素に電解液が含浸され、これが外装に封入された構造を有する。
【0058】
負極は、負極活物質、導電助剤及びバインダーからなる負極合剤が、集電体上に成形された構造である。負極活物質としては、リチウムを電気化学的にドープすることが可能な材料が挙げられ、例えば炭素材料、シリコン、アルミニウム、スズ、ウッド合金等が挙げられる。負極活物質は、セパレータが液枯れしにくい点では、リチウムを脱ドープする過程における体積変化率が3%以上のものが好ましい。かかる負極活物質としては、例えばSn、SnSb、AgSn、人造黒鉛、グラファイト、Si、SiO、V等が挙げられる。導電助剤は、アセチレンブラック、ケッチェンブラックといった炭素材料が挙げられる。バインダーは有機高分子からなり、例えばポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。集電体には銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔等を用いることが可能である。
【0059】
正極は、正極活物質、導電助剤及びバインダーからなる正極合剤が、集電体上に成形された構造である。正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物等が挙げられ、具体的にはLiCoO、LiNiO、LiMn0.5Ni0.5、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiMn、LiFePO、LiCo0.5Ni0.5、LiAl0.25Ni0.75等が挙げられる。正極活物質は、セパレータが液枯れしにくい点では、リチウムを脱ドープする過程における体積変化率が1%以上のものが好ましい。かかる正極活物質としては、例えばLiMn、LiCoO、LiNiO、LiCo0.5Ni0.5、LiAl0.25Ni0.75等が挙げられる。導電助剤はアセチレンブラック、ケッチェンブラックといった炭素材料が挙げられる。バインダーは有機高分子からなり、例えばポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。集電体にはアルミ箔、ステンレス箔、チタン箔等を用いることが可能である。
【0060】
電解液は、リチウム塩を非水系溶媒に溶解した溶液である。リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiClO等が挙げられる。非水系溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ビニレンカーボネート等が挙げられ、これらは単独で用いても混合して用いてもよい。
【0061】
外装材は、金属缶又はアルミラミネートパック等が挙げられる。電池の形状は角型、円筒型、コイン型等があるが、本発明の非水系二次電池用セパレータは、いずれの形状においても好適に適用することが可能である。
【実施例】
【0062】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0063】
本発明の実施例及び比較例で適用した測定方法は、以下のとおりである。
(1)接着層の塗工量
ポリオレフィン微多孔膜の片面または両面に接着層を設けたサンプルを10cm×10cmに切り出し質量を測定する。別途、接着層を設けていないポリオレフィン微多孔膜を10cm×10cmに切り出し質量を測定する。前者の質量から後者の質量を減じ、面積で除することで接着層の塗工量(g/m)を求めた。
(2)膜厚
ポリオレフィン微多孔膜及び非水系二次電池用セパレータの膜厚は、接触式の膜厚計(ミツトヨ社製)にて20点測定し、これを平均することで求めた。ここで、接触端子は底面が直径0.5cmの円柱状のものを用いた。
(3)目付
非水系二次電池用セパレータの目付(1m当たりの質量)は、サンプルを10cm×10cmに切り出し質量を測定し、この質量を面積で除することで求めた。
(4)ガーレ値
非水系二次電池用セパレータのガーレ値は、JIS P8117に従って求めた。
(5)ゲルボフレックス試験
非水系二次電池用セパレータのゲルボフレックス試験は、ゲルボフレックステスター(テスター工業製)を用い、常温(25℃)、1000サイクルの条件で実施した。
【0064】
(実施例1)
[ポリエチレン微多孔膜の製造]
ポリエチレンパウダーとしてTicona社製のGUR2126(重量平均分子量415万、融点141℃)とGURX143(重量平均分子量56万、融点135℃)を用意した。混合比(GUR2126:GURX143)が1:9(質量比)で、ポリエチレン濃度が30質量%となるように、GUR2126とGURX143とを流動パラフィンとデカリンの混合溶媒に溶解させ、ポリエチレン溶液を作製した。該ポリエチレン溶液の組成は、ポリエチレン:流動パラフィン:デカリン=30:45:25(質量比)とした。
このポリエチレン溶液を148℃でダイから押し出し、水浴中で冷却して、60℃で8分、95℃で15分乾燥し、ゲル状テープ(ベーステープ)を作製した。該ベーステープを縦延伸と横延伸とを逐次行う2軸延伸にて延伸した。ここで、縦延伸は延伸倍率5.5倍、延伸温度は90℃、横延伸は延伸倍率11.0倍、延伸温度は105℃とした。横延伸の後に125℃で熱固定を行った。次にこれを塩化メチレン浴に浸漬し、流動パラフィンとデカリンを抽出した。その後、50℃で乾燥し、120℃でアニール処理することでポリエチレン微多孔膜を得た。このポリエチレン微多孔膜の物性は、膜厚11.5μm、空孔率36%、透気度301秒/100ccであった。
【0065】
[接着層の形成]
上記で得たポリエチレン微多孔膜の片面に、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(旭化成工業製タフプレンA125)のメチルエチルケトン溶液(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体の濃度5質量%)を、乾燥時の塗工量が0.05g/mとなるようにグラビアロールで塗工し、60℃で1時間乾燥させ、接着層を形成した。続いて、ポリエチレン微多孔膜のもう一方の面にも、同様にして、乾燥時の塗工量が0.05g/mの接着層を形成した。
【0066】
[耐熱性多孔質層の形成]
メタ型全芳香族ポリアミドであるコーネックス(登録商標;帝人テクノプロダクツ社製)と平均粒子径0.8μmの水酸化マグネシウム(協和化学製キスマ5P)とを用意した。両者の混合比(メタ型全芳香族ポリアミド:水酸化マグネシウム)が25:75(質量比)で、メタ型全芳香族ポリアミド濃度が5.5質量%となるように、メタ型全芳香族ポリアミドと水酸化マグネシウムとをジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)との混合溶媒(質量比50:50)に混合して、塗工用スラリーを作製した。
20μmのクリアランスで対峙させた一対のマイヤーバー(番手#6)に、上記塗工用スラリーを適量のせ、両面に接着層を設けたポリエチレン微多孔膜をマイヤーバー間に通して、その両面に塗工用スラリーを塗工した。
これを、40℃の凝固液(水:DMAc:TPG=50:25:25[質量比])に浸漬した。次いで、水洗と乾燥を行い、ポリエチレン微多孔膜の両面に耐熱性多孔質層を設けた非水系二次電池用セパレータを得た。このセパレータの物性を表1に示す。
【0067】
[非水系二次電池の製造]
コバルト酸リチウム(LiCoO)(日本化学工業社製)89.5質量部、アセチレンブラック(電気化学工業社製デンカブラック)4.5質量部、ポリフッ化ビニリデン(クレハ化学社製)6質量部となるようにN−メチル−2−ピロリドンを用いてこれらを混練し、スラリーを作製した。このスラリーを厚さ20μmのアルミ箔上に塗布し、乾燥後プレスして、厚さ100μmの正極を得た。
メソフェーズカーボンマイクロビーズ(大阪瓦斯化学社製)87質量部、アセチレンブラック(電気化学工業社製デンカブラック)3質量部、ポリフッ化ビニリデン(クレハ化学社製)10質量部となるように、N−メチル−2−ピロリドンを用いてこれらを混練し、スラリーを作製した。このスラリーを厚さ18μmの銅箔上に塗布し、乾燥後プレスして、厚さ90μmの負極を得た。
【0068】
前記で得た非水系二次電池用セパレータをセパレータとし、上記で得た正極及び負極を対向配置させた。これに電解液を含浸させ、アルミラミネートフィルムからなる外装内に封入して非水系二次電池を作製した。電解液には、1MのLiPF/[エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート(質量比3:7)]溶液(キシダ化学社製)を用いた。この非水系二次電池は、正極面積が2×1.4cm、負極面積が2.2×1.6cmであり、設定容量は8mAh(4.2V−2.75Vの範囲)である。
上記で得た非水系二次電池は、放電容量、負荷特性、サイクル特性ともに実用上問題なく良好であった。
【0069】
(実施例2)
実施例1において、接着層の形成に用いたスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体のメチルエチルケトン溶液をエチレン−αオレフィン共重合体(三井化学株式会社製タフマーA−4085)のメチルエチルケトン溶液(エチレン−αオレフィン共重合体の濃度5質量%)に変更した以外は実施例1と同様にして、非水系二次電池用セパレータを得た。このセパレータの物性を表1に示す。
【0070】
(実施例3)
実施例1において、接着層の形成に用いたスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体のメチルエチルケトン溶液をEPDM(エチレンプロピレンジエン三元共重合体)(JSR株式会社製JSR EP24)のメチルエチルケトン溶液(EPDMの濃度5質量%)に変更した以外は実施例1と同様にして、非水系二次電池用セパレータを得た。このセパレータの物性を表1に示す。
【0071】
(実施例4)
実施例1において、接着層の塗工量を0.1g/mに変更した以外は実施例1と同様にして、非水系二次電池用セパレータを得た。このセパレータの物性を表1に示す。
【0072】
(実施例5)
実施例1において、接着層の塗工量を0.5g/mに変更した以外は実施例1と同様にして、非水系二次電池用セパレータを得た。このセパレータの物性を表1に示す。
【0073】
(実施例6)
実施例1において、接着層の塗工量を1.0g/mに変更した以外は実施例1と同様にして、非水系二次電池用セパレータを得た。このセパレータの物性を表1に示す。
【0074】
(比較例1)
実施例1において、接着層を形成しなかった以外は実施例1と同様にして、非水系二次電池用セパレータを得た。このセパレータの物性を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表1に示すとおり、実施例1〜6は、ガーレ値が特に増大することもなく、セパレータの透過性が損なわれることもなかった。
実施例1〜6は、比較例1に比べ、ゲルボフレックス試験で発生するピンホールの個数が極めて少なく、耐熱性多孔質層の欠落が抑制されたことが明らかである。
よって、本発明によれば、ポリオレフィン微多孔膜及び耐熱性多孔質層を備えた非水系二次電池用セパレータに関し、電池の生産性及び安全性を高める非水系二次電池用セパレータを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン微多孔膜と、
前記ポリオレフィン微多孔膜の片面又は両面に設けられた耐熱性多孔質層と、
前記ポリオレフィン微多孔膜と前記耐熱性多孔質層との間に設けられ、熱可塑性エラストマー及びゴム成分から選択される少なくとも一種を含む接着層と、
を備えた非水系二次電池用セパレータ。
【請求項2】
前記接着層は、塗工量が0.05g/m以上1.0g/m以下である請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項3】
正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置される請求項1又は請求項2に記載の非水系二次電池用セパレータとを備え、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池。