説明

非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池

【課題】高速でより安定した搬送が可能で、製造適正に優れた非水系二次電池用セパレータを提供する。
【解決手段】多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一方の側に塗工され、有機高分子化合物を含む機能性多孔質層とを含み、前記機能性多孔質層の表面に最大径が50μm以上1mm以下の凹部を0.1個/m以上20個/m以下の範囲で有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非水系二次電池用セパレータの用途に適するフィルム状の樹脂材料として、通気性のある基材上に多孔質層が塗布形成されたコーティング材が知られている。例えば、ポリプロピレン微多孔膜の上にポリフッ化ビニリデン共重合体からなる多孔質膜を成膜した複合多孔膜が開示されている(例えば、特許文献1参照)。多孔質層は、リチウムイオン電池の電解液に対する膨潤性・保持性等を高める目的で設けられている。
【0003】
このようなコーティング材の製造方法としては、(i)多孔質の塗工層を構成する有機高分子化合物及び水溶性有機溶媒を含む塗工液を調製する工程と、(ii)塗工液を基材の片面もしくは両面に塗工する工程と、(iii)塗工された塗工層を有する基材を、水又は水と水溶性有機溶剤の混合液からなる凝固液を有する凝固浴中に浸漬し、該塗工層を凝固させる工程と、(iv)水洗及び乾燥させる工程とからなる湿式塗工法が広く知られている。特に、上記(ii)〜(iv)の工程間において、基材を連続的に搬送する連続式の湿式塗工法が知られており(例えば、特許文献2参照)、生産性が高く、良質のコーティング膜を得やすいという観点から優れた方法とされている。
また、別の方法として、(a)多孔質の塗工層を構成する有機高分子化合物及び溶媒を含む塗工液を調製する工程と、(b)調製された塗工液を基材の片面もしくは両面に塗工する工程と、(c)塗工により形成された塗工層を乾燥させる工程とで構成される乾式塗工方法も知られている。
【0004】
上記のような連続式の湿式塗工法や乾式塗工方法においては、より生産性を高める等の観点から、コーティング材をさらに速く搬送する技術の確立が望まれている。
【0005】
上記状況のもと、例えば特許文献2には、最大径が0.5μm以上5μm以下のコーティング層由来の凝集物を400μm内に20個以上存在させた複合セパレータが提案されている。この複合セパレータによれば、電池特性を損なうことなく、高速搬送が可能で高い生産性が達成されるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−171495号公報
【特許文献2】特開2010−160939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、塗工層が形成された基材が搬送ロールで搬送される際には、塗工層に残存する内部応力によって、塗工膜の剥がれ、筋状の塗工ムラや巻取り時のシワ(巻取シワ)、あるいは蛇行などの欠点が発生する場合がある。さらにセパレータの搬送速度を上げた場合には、搬送状態が不安定となり、欠点が拡大するおそれもある。欠点の程度によっては、当該セパレータを用いて電池を製造した場合に良好なサイクル特性が得られなくなるおそれもある。
【0008】
しかしながら、上述した特許文献2に記載の技術においては、このような塗工層の残存応力に関して何ら考慮されておらず、残存応力による不具合の改善が望まれている。
【0009】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、高速でより安定した搬送が可能で、製造適正に優れた非水系二次電池用セパレータ、及びサイクル特性に優れた非水系二次電池を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
1. 多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一方の側に塗工され、有機高分子化合物を含む機能性多孔質層と、を含み、前記機能性多孔質層の表面に最大径が50μm以上1mm以下の凹部を0.1個/m以上20個/m以下の範囲で有する非水系二次電池用セパレータである。
2. 前記凹部は、前記機能性多孔質層の表面からの平均深さが、該層の平均厚みの20%以上80%以下である上記1に記載の非水系二次電池用セパレータである。
3. 前記機能性多孔質層は、融点又は熱分解温度が200℃以上の耐熱性樹脂を含む耐熱性多孔質層、及びポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む接着性多孔質層の少なくとも一方である上記1又は上記2に記載の非水系二次電池用セパレータである。
4. 前記耐熱性樹脂は、全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、及びポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも一種であり、前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、(i)フッ化ビニリデンの単独重合体、及び(ii)テトラフロロエチレン、ヘキサフロロプロピレン、トリフロロエチレン、トリクロロエチレン、及びフッ化ビニルから選ばれる少なくとも一種とフッ化ビニリデンとの共重合体から選ばれる少なくとも一種である上記3に記載の非水系二次電池用セパレータである。
5. 前記機能性多孔質層は、更に、無機フィラー及び有機フィラーから選ばれる少なくとも一方を含む上記1〜上記4のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータである。
6. 正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置された上記1〜上記5のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータとを備え、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高速でより安定した搬送が可能で、製造適正に優れた非水系二次電池用セパレータを提供することができる。また、本発明のセパレータを用いることにより、サイクル特性に優れた非水系二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の非水系二次電池用セパレータ、及びこれを用いた非水系二次電池について詳細に説明する。
【0013】
<非水系二次電池用セパレータ>
本発明の非水系二次電池用セパレータ(以下、単に「セパレータ」ともいう。)は、多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一方の側に塗工され、有機高分子化合物を含む機能性多孔質層と、を含み、前記機能性多孔質層に最大径が50μm以上1mm以下の凹部を0.1個/m以上20個/m以下の範囲で有する。
【0014】
基材の上にアラミドやフッ素系樹脂などを用いた多孔質層等を設けてセパレータを製造する過程では、多孔質層が設けられた基材が搬送ロールで搬送される際、多孔質層に残存する内部応力によって、塗工膜の剥がれ、筋状の塗工ムラや巻取り時のシワ(巻取シワ)、あるいは蛇行などを招来し、欠点の発生や安定した搬送性が得られないことがある。
生産性の観点から、従来より基材等をより高速に搬送する生産方式が期待されているが、単に高速化すると多孔質層はさらに剥がれやすくなり、搬送性も不安定になる。高速化する技術の1つとして樹脂層中に無機フィラー等の粒子を含めて表面凸部を形成する技術が知られているが、表面に凸部を形成するのみでは応力を効果的に逃すことは難しく、塗工ムラや巻取シワ、蛇行の発生を必ずしも解消し得ないのが実情である。一方、耐熱性の樹脂を用いる等により所望とする耐熱性を保てる場合等や平滑性や密着性の観点からは、樹脂層に無機フィラー等の粒子を含めないことが望まれる。無機フィラー等の粒子を含めない場合には、依然として上記のような塗工ムラ等の搬送上の不安定さは解消されない。
本発明においては、基材上に機能性多孔質層を設けると共に、少なくとも最表層に位置する層の表面に所定サイズの凹部を所定数の範囲で設けることで、例えば無機フィラー等の粒子を含めない場合でも、製造過程で基材や多孔質層に生じた応力が凹部を介して解放され、高速化した場合に搬送方向と交差する方向の力が軽減されるため、搬送性が安定化する。これにより、製造過程で生じやすい塗工層における筋状ムラや皺、剥離などの故障が抑制されると共に、層間の接着が良好に保たれ、例えば後工程の乾燥等で生じやすい剥離現象も防止される。
【0015】
本発明の非水系二次電池用セパレータは、機能性多孔質層の表面に最大径が50μm以上1mm以下の凹部が、0.1個/m以上20個/m以下の範囲で設けられる。このようなサイズの凹部が上記範囲を満たすように形成されていると、セパレータに残存する内部応力が発散され、上述した本発明の効果が得られるようになる。
【0016】
機能性多孔質層の表面に形成される凹部の最大径が上記範囲にあることは、表面に積極的に凹部が形成されており、例えば塗工ムラ等により形成される凹凸形状とは区別されるものであることを意味する。さらに付言すると、凹部の最大径が50μm未満である場合、凹部の面積が小さ過ぎて応力が解放され難く、凹部を設けたことによる効果が低くなり、また凹部の最大径が1mmを超える場合、凹みが大き過ぎて筋や斑の原因となる。
凹部の最大径としては、上記同様の理由から、50μm以上500μm以下の範囲が好ましく、更には50μm以上300μm以下の範囲が好ましい。
【0017】
凹部の形状は、特に限定されるものではないが、例えば円形、楕円形、多角形、楔形など、その外周縁が閉曲線を構成する形状であればいずれをも含むものである。
凹部の最大径は、機能性多孔質層の表面において凹部周縁の一部と他の一部とを結ぶ線分の最大長さであり、例えば、凹部が円形又は楕円形であるときには、最大径は最長の直径をさし、凹部が多角形であるときには、最大径は最長の対角線をさす。
【0018】
また、表面に形成される凹部の数が0.1個/m未満であると、高速搬送した際に蛇行等が生じないように安定に保つのに必要とされる応力を逃しきれず、結果として筋状ムラ等の塗工不良や、巻取り時の巻取シワ、蛇行、塗工層の剥がれ等を招く搬送不良を防ぐことができない。また、凹部の数が20個/mを超える範囲では、イオン伝導に著しい偏りが生じやすく、電池のサイクル特性を向上させることができない。
最表層表面に形成される凹部の数としては、上記同様の理由から、0.1個/m以上10個/m以下の範囲が好ましく、0.1個/m以上5個/m以下の範囲がより好ましい。
【0019】
前記凹部は、前記機能性多孔質層の表面からの平均深さが、該層の平均厚みの20%以上80%以下であることが好ましい。このような凹部が形成されていることで、基材上に形成された機能性多孔質層に加わる応力が緩和され、ロール搬送時の搬送が良好になり、層の剥がれも抑制される。
【0020】
本発明における機能性多孔質層は、好ましくは、有機高分子化合物を含む溶液を多孔質基材の表面に塗工後、塗工形成された塗工層を、高分子化合物の貧溶媒を含む溶液中に浸漬し高分子化合物を凝固させる工程を設けることにより形成される。
このとき、塗工液中の気泡の大きさや数は、いずれの方法により制御されてもよい。
最表層の凹部の大きさや数を制御する方法としては、塗工液を塗工して機能性多孔質層を形成するに際し、調製後の塗工液を一時的に放置したり、調製後の塗工液を加圧又は減圧環境下に曝すなどの方法が好適である。
具体的には、塗工液中の気泡の数や大きさを減じるときには、例えば、塗工液をその調製後に撹拌せずに長時間静置する方法、減圧して脱気する方法、加圧して気泡を溶液中に溶解させる方法等が挙げられる。逆に、塗工液中の気泡の数や大きさを増すときには、空気に接触する面を保持したまま撹拌する方法や循環する方法等が挙げられる。例えば前記方法により、高分子化合物を含む溶液中に含まれる気泡の数を100ml当たり0.1個以上500個以下の範囲に制御したり、気泡の最大径を50μm以上1mm以下の範囲に制御することが好ましい。気泡の数は、0.1個/100ml以上であることで0.1個/m以上の凹部が形成されやすく、また500個/100ml以下であることで凹部を20個/m以下に抑えることができる。また、気泡の大きさは、50μm以上であることで50μm以上の凹部が形成されやすく、また1mm以下であることで凹部の最大径が1mmに抑えられる。
【0021】
本発明のセパレータは、特に、接着力を有して滑り性の低い材料(例えばポリフッ化ビニリデン系樹脂)を用いて機能性多孔質層が設けられる場合に有効である。
【0022】
本発明の非水系二次電池用セパレータは、機械強度とエネルギー密度の観点から、総厚が5〜35μmであることが好ましい。また、本発明の非水系二次電池用セパレータの各物性は、下記の範囲を満たしていることが好ましい。すなわち、
(1)空孔率は、透過性、機械強度、及びハンドリング性の観点から、30〜60%であることが好ましい。
(2)ガーレ値(JIS P8117)は、機械強度と膜抵抗のバランスが良くなるという観点から、100〜500sec/100ccであることが好ましい。
(3)膜抵抗は、非水系二次電池の負荷特性を確保する観点から、1〜10ohm・cmであることが好ましい。膜抵抗とは、セパレータに電解液を含浸させたときの抵抗値であり、交流法にて測定される。
(4)突刺強度は、250〜1000gであることが好ましい。
(5)引張強度は、10N以上であることが好ましい。
(6)105℃での熱収縮率は、0.5〜10%であることが好ましい。
(7)曲路率は、良好なイオン透過性を確保する観点から、1.5〜2.5の範囲であることが好ましい。
【0023】
[多孔質基材]
本発明の非水系二次電池用セパレータは、多孔質基材を設けて構成されている。多孔質基材(以下、単に「基材」ともいう。)とは、内部に空孔ないし空隙を有する基材を意味する。このような基材としては、微多孔膜や、不織布、紙状シート等の繊維状物からなる多孔性シート等を挙げることができる。
なお、微多孔膜とは、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造を有し、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能に形成された膜を意味する。
【0024】
多孔質基材を構成する材料は、電気絶縁性を有する有機材料あるいは無機材料のいずれをも使用できる。基材にシャットダウン機能を付与する観点から、熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。ここで、シャットダウン機能とは、電池温度が高められた場合に、熱可塑性樹脂が溶融して多孔質基材の孔を閉塞することによりイオンの移動を遮断し、電池の熱暴走を防止する機能を意味する。熱可塑性樹脂としては、融点200℃未満の熱可塑性樹脂が適当であり、特にポリオレフィンが好ましく、多孔質基材としてポリオレフィン微多孔膜を用いた態様が好ましい。
【0025】
ポリオレフィン微多孔膜としては、良好な力学物性とイオン透過性を有するポリオレフィン微多孔膜が好適であり、例えば従来の非水系二次電池用セパレータに適用されているものを好適に用いることができる。ポリオレフィン微多孔膜は、電池の安全性を確保するためのシャットダウン機能を有する観点から、ポリエチレンを主成分に含むものが好ましい。「主成分」とは、ポリオレフィンの多孔質基材中における割合が50質量%以上であることをいい、好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよいことを意味する。具体的には、ポリエチレンが95質量%以上含まれる厚さ5μm以上の微多孔膜が好ましい。
【0026】
前記繊維状物からなる多孔性シートとしては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、芳香族ポリアミドやポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド等の耐熱性高分子等からなる繊維状物、あるいはこれらの繊維状物の混合物からなる多孔性シートを挙げることができる。
【0027】
本発明において、多孔質基材の膜厚は、十分な力学物性、ハンドリング性及び内部抵抗の観点から、5μm以上25μm以下が好適である。多孔質基材のガーレ値(JIS P8117)は、イオン透過性や短絡防止の観点から、50秒/100cc以上800秒/100cc以下が好適である。多孔質基材の突刺強度は、製造歩留まりの観点から、300g以上が適切である。多孔質基材の空孔率は、シャットダウン特性、透過性、機械強度、及びハンドリング性の観点から、30〜60%であることが好ましい。多孔質基材の膜抵抗は、非水系二次電池の負荷特性の観点から、0.5〜8ohm・cmであることが好ましい。多孔質基材の引張強度は、10N以上であることが好ましい。
【0028】
多孔質基材の好適例であるポリオレフィン微多孔膜は、例えば以下の方法で製造することができる。すなわち、溶融したポリオレフィン樹脂をT−ダイから押し出してシート化し、これを適切な結晶化処理を施した後、延伸しさらに適切な熱処理をして微多孔膜とする方法が挙げられる。又は、流動パラフィンなどの可塑剤と一緒に溶融したポリオレフィン樹脂をT−ダイから押し出し、これを冷却してシート化し、延伸した後、可塑剤を抽出し適切な熱処理をして微多孔膜とする方法等も挙げられる。
【0029】
[機能性多孔質層]
本発明の非水系二次電池用セパレータは、多孔質基材の少なくとも一方の側に塗工された、有機高分子化合物を含む機能性多孔質層を有している。
本発明における機能性多孔質層は、耐熱性、接着性、電解液の濡れ性、イオン透過性、滑り性、静電気防止特性などの各種機能を必要に応じてセパレータに付与する多孔質層であり、有機高分子化合物を含んで構成された微多孔膜状の塗工層である。ここで、微多孔膜状の層とは、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった層をいう。なお、機能性多孔質層には、必要に応じて、フィラーなどの他の成分が含まれていてもよい。
【0030】
このような機能性多孔質層としては、融点又は熱分解温度が200℃以上の耐熱性樹脂を含む耐熱性多孔質層、及びポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む接着性多孔質層の少なくとも一方であることが好ましい。その場合、以下の積層構成が好ましい。
(i) 耐熱性層/基材/耐熱性層
(ii) 接着性層/基材/接着性層
(iii)耐熱性層/基材/接着性層
(iv) 接着性層/耐熱性層/基材/耐熱性層/接着性層
なお、耐熱性多孔質層が多孔質基材の両面側に形成された態様は、耐熱性付与の観点から好ましく、その意味では上記(i)や(iv)の構成が好ましい。
【0031】
また、接着性多孔質層は、電解液を含んだ状態で熱プレスによって電極と接着される接着性層であるため、セパレータの最外層として設けられることが好ましい。特に、非水系二次電池を構成する正極と負極の両方がセパレータと接着されていることがサイクル寿命の点で好ましいため、接着性多孔質層がセパレータの外側の両面に形成されていることが好ましく、その意味では上記(ii)や(iv)の構成が好ましい。
【0032】
機能性多孔質層に含有される有機高分子化合物としては、フッ素原子を含むフッ素系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、及びセルロースなどが好適に挙げられる。これら樹脂は、機能性多孔質層において、一種単独で用いられてもよいし、二種以上が併用されてもよい。
【0033】
上記の中でも、耐熱性を付与する場合は、全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも一種の耐熱性樹脂を用いることが好ましい。また、電極とセパレータの間の接着性を付与する場合は、(i)フッ化ビニリデンの単独重合体、及び(ii)テトラフロロエチレン、ヘキサフロロプロピレン、トリフロロエチレン、トリクロロエチレン、及びフッ化ビニルのうちの一種類又は二種類以上とフッ化ビニリデンとの共重合体から選ばれる少なくとも一種のポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いることが好ましい。
本発明において、機能性多孔質層の空孔率は、イオン透過性等の観点から、30〜70%が好ましい。また、機能性多孔質層の膜厚は、耐熱性多孔質層であれば、片面で1〜12μmであることが耐熱性の観点から好ましく、接着性多孔質層であれば、片面で0.5〜5μmであることが接着性及びイオン透過性の観点から好ましい。
【0034】
本発明においては、機能性多孔質層には、滑り性付与等の観点から、無機フィラー及び/又は有機フィラーが含まれていてもよい。無機フィラーとしては、特に限定はないが、例えば、アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニアなどの金属酸化物、炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩、リン酸カルシウムなどの金属リン酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物などが好適に用いられる。有機フィラーとしては、特に限定はないが、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
フィラーの平均粒子径は、高温時の耐短絡性や成形性等の観点から、0.1〜3μmの範囲が好ましい。
機能性多孔質層中におけるフィラーの含有量としては、セパレータ製造時における塗工性や搬送性等を向上させる観点からは、機能性多孔質層中におけるフィラーの含有量は85質量%以下が好ましく、フィラーを含まない(0質量%)ことが特に好ましい。
【0035】
[セパレータの製造方法]
上述した本発明の非水系二次電池用セパレータは、例えば下記(1)〜(5)の工程を設けて作製することが可能である。
【0036】
(1)塗工用スラリーの作製
機能性多孔質層を構成する有機高分子化合物を溶剤に溶かし、塗工用スラリーを作製する。溶剤は、有機高分子化合物を溶解するものであればよく、特に限定はないが、具体的には極性溶剤が好ましく、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。また、該溶剤は、これらの極性溶剤に加えて有機高分子化合物に対して貧溶剤となる溶剤も加えることができる。このような貧溶剤を適用することで、ミクロ相分離構造が誘発され、機能性多孔質層を形成する上で多孔化が容易となる。貧溶剤としては、アルコールの類が好適であり、特にグリコールのような多価アルコールが好適である。塗工用スラリー中の耐熱性樹脂の濃度は4〜9質量%が好ましい。また必要に応じ、これに無機フィラー等を分散させて塗工用スラリーとする。上述したように、本発明のように最表層の凹部の大きさや数を制御する方法としては、調製後の塗工用スラリーを一時的に放置したり、調製後の塗工液を加圧又は減圧環境下に曝すなどの方法が好適である。
(2)スラリーの塗工
スラリーを多孔質基材の少なくとも一方の表面に塗工する。多孔質基材の両面に機能性多孔質層を形成する場合は、基材の両面に同時に塗工することが、工程の短縮という観点で好ましい。塗工用スラリーを塗工する方法としては、ナイフコーター法、グラビアコーター法、スクリーン印刷法、マイヤーバー法、ダイコーター法、リバースロールコーター法、インクジェット法、スプレー法、ロールコーター法などが挙げられる。この中でも、塗膜を均一に形成するという観点において、リバースロールコーター法が好適である。多孔質基材の両面に同時に塗工する場合は、例えば、多孔質基材を一対のマイヤーバーの間に通すことで多孔質基材の両面に過剰な塗工用スラリーを塗工し、これを一対のリバースロールコーターの間に通して過剰なスラリーを掻き落すことで精密計量するという方法が挙げられる。
(3)スラリーの凝固
スラリーが塗工された基材を、前記有機高分子化合物を凝固させることが可能な凝固液で処理することにより、有機高分子化合物を凝固させて、機能性多孔質層を形成する。
凝固液で処理する方法としては、塗工用スラリーを塗工した基材に対して凝固液をスプレーで吹き付ける方法や、当該基材を凝固液の入った浴(凝固浴)中に浸漬する方法などが挙げられる。凝固液としては、当該耐熱性樹脂を凝固できるものであれば特に限定されないが、水、又は、スラリーに用いた溶剤に水を適当量混合させたものが好ましい。ここで、水の混合量は凝固液に対して40〜80質量%が好適である。
(4)凝固液の除去
凝固液を水洗することによって除去する。
(5)乾燥
シートから水を乾燥して除去する。乾燥方法は特に限定は無いが、乾燥温度は50〜80℃が好適であり、高い乾燥温度を適用する場合は、熱収縮による寸法変化が起こらないようにするために、ロールに接触させるような方法を適用することが好ましい。
なお、本発明のセパレータは、上述した湿式凝固法以外にも、上記(1)〜(2)の工程の後、乾燥して溶媒を揮発除去することによって多孔質層を形成する、いわゆる乾式凝固法によっても製造することができる。
【0037】
<非水系二次電池>
本発明の非水系二次電池は、正極と、負極と、正極及び負極の間に配置され、上述した構成を有する本発明の非水系二次電池用セパレータとを備え、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力が得られるように構成されたものである。非水系二次電池としては、リチウムイオン二次電池に好適に適用することができる。
【0038】
非水系二次電池は、正極及び負極の間にセパレータが配置され、これらの電池要素に電解液が含浸された構成となっている。
正極は、正極活物質、バインダー樹脂、及び導電助剤からなる電極層を、正極集電体上に成形した構成が一般的である。正極活物質はコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、スピネル構造のマンガン酸リチウム、オリビン構造のリン酸鉄リチウムなどが挙げられる。バインダー樹脂はポリフッ化ビニリデン系樹脂が一般的である。また、導電助剤はアセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛粉末などが一般的である。集電体は厚さ5〜20μmのアルミ箔を用いることが多い。
負極は、負極活物質、及びバインダー樹脂からなる電極層を、負極集電体上に成形した構成が一般的であり、場合によっては導電助剤も添加する。負極活物質はリチウムを電気化学的に吸蔵可能な炭素材料、シリコン、錫などのリチウムと合金化する材料などが挙げられる。バインダー樹脂はポリフッ化ビニリデン系樹脂又はブチレン−スタジエンゴムなどが一般的である。導電助剤はアセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛粉末などが一般的である。集電体は厚さ5〜20μmの銅箔を用いることが多い。また、上記の負極とは別に金属リチウム箔を負極として用いることもある。
電解液はリチウム塩を適切な溶媒に溶かした構成となっている。リチウム塩はLiPF、LiBF、LiClOなどが挙げられる。溶媒はエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フロロエチレンカーボネート、ジフロロエチレンカーボネートといった環状カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート及びそのフッ素置換体といった鎖状カーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンといった環状エステル、これらの混合溶溶媒を好適に用いることが可能である。具体的には環状カーボネート/鎖状カーボネート=20〜40/80〜60重量比の溶媒にリチウム塩を0.5〜1.5M溶解したものが一般的である。
本発明の非水系二次電池用セパレータは金属缶外装の電池にも適用可能であるが、接着性多孔質層を備えた構成の場合は電極との接着性が良好であるため、アルミラミネートフィルム外装のソフトパック電池に好適に用いられる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0040】
(測定・評価)
(1)凹部の検出
作製した非水系二次電池用セパレータを、その一方の面から三波長昼白色蛍光灯(FPL27EX−N/パナソニック社製)により30cm離して照射して反対の面から観察を行い、周囲よりも明るく観察された点状部分を検出した。更にその点状部分の形状を実体顕微鏡で観察し、円状、楕円状、多角形、あるいは楔状などの形であることを確認した。この部分の表面形状をサーフテストSV2100(ミツトヨ社製)を用いて測定し、最大径が50μm以上1mm以下であり、輪郭の内側が凹型形状になっている部分の数をカウントした。また、セパレータ表面からの凹部の深さは、サーフテストSV2100(ミツトヨ社製)を用い、凹部の最大径部分を横断するように断面形状に沿って任意に20点測定し、測定された表面から最も深い部分の深さの平均値と塗工膜の平均厚みとから下式にしたがって求めた。
凹部の平均深さ(%)= 最深部の20点平均深さ/塗工膜の平均厚み×100
【0041】
(2)膜厚
作製した非水系二次電池用セパレータの厚み(ポリエチレン微多孔膜及び機能性多孔質層の合計厚み)及びポリエチレン微多孔膜の厚みを、接触式の膜厚計(LITEMATIC、ミツトヨ社製)にて20点測定し、これを平均することにより求めた。ここで、接触端子は、底面が直径0.5cmの円柱状のものを用いた。
【0042】
(3)蛇行
塗工用スラリーを塗工し乾燥させて機能性多孔質層を形成した後、ロール状に巻き取る際に発生した巻きズレが1mm未満であった場合を「○」とし、巻きズレが1mm以上5mm未満であった場合を「△」とし、巻きズレが5mm以上であった場合を「×」として評価した。
【0043】
(4)塗工筋
機能性多孔膜の形成後、ロール状に巻き取ったロール捲回物の表面に斜めから光を当て、塗工筋を目視にて観察した。塗工筋の存在が明確に確認された場合を「×」とし、僅かに確認された場合を「△」とし、存在が確認されなかった場合を「○」として評価した。
【0044】
(5)巻き皺
機能性多孔膜の形成後、ロール状に巻き取ったロール捲回物の表面に斜めから光を当て、巻き皺を目視にて観察した。巻き皺の存在が確認された場合を「×」とし、存在が確認されなかった場合を「○」として評価した。
【0045】
(6)機能性多孔質層(塗工層)の剥がれ
作製した非水系二次電池用セパレータを、その一方の面から三波長昼白色蛍光灯(FPL27EX−N/パナソニック社製)により30cm離して照射し、剥がれた部分を目視にて観察した。剥がれた部分が1m当たり0.05個未満の場合を「○」とし、1m当たり0.05個以上0.1個未満の場合を「△」とし、1m当たり0.1個以上の場合を「×」として評価した。
【0046】
(7)スラリー中の気泡数
調製した塗工用スラリーを100mlサンプリングし、平滑なガラス板の上に1mm厚さでキャストした。この状態で3分間静置し、液表面において観察される気泡の数を求めた。
【0047】
(8)空孔率
機能性多孔質層及びポリオレフィン微多孔膜の空孔率は、下記式から求めた。
ε={1−Ws/(ds・t)}×100
ここで、ε:空孔率(%)、Ws:目付(g/m)、ds:真密度(g/cm)、t:膜厚(μm)である。
【0048】
(9)サイクル特性
−a.正極−
コバルト酸リチウム(LiCoO、日本化学工業社製)粉末89.5部と、アセチレンブラック4.5部、及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)の乾燥質量が6部となるように、PVdFの6質量%N−メチル−2−ピロリドン(NMP;以下同様)溶液を用い、正極剤ペーストを作製した。得られたペーストを、厚さ20μmのアルミ箔上に塗工乾燥した後、プレスして、厚み97μmの正極を得た。
−b.負極−
負極活物質としてメソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB、大阪瓦斯化学社製)粉末87部と、アセチレンブラック3部、及びPVdFの乾燥質量が10部となるように、PVdFの6質量%NMP溶液を用い、負極剤ペーストを作製した。得られたペーストを、厚さ18μmの銅箔上に塗工乾燥した後、プレスして、厚み90μmの負極を作製した。
−c.電解液−
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを3:7の質量比(=EC:EMC)で混合した混合溶液に、LiPFをその濃度が1mol/Lとなるように溶解し、これを電解液として用いた。
−d.リチウムイオン二次電池の作製−
上記の正極(2cm×1.4cm)及び負極(2.2cm×1.6cm)を、以下に示す実施例及び比較例において作製した非水系二次電池用セパレータ(2.6cm×2.2cm)を介して対向配置した。これに、上記の電解液(0.15〜0.19g)を含浸させ、アルミラミネートフィルムからなる外装に封入して、リチウムイオン二次電池を作製した。
−e.サイクル試験−
作製したリチウムイオン二次電池について、充放電測定装置(HJ−101SM6、北斗電工社製)を使用し、充放電を100サイクル繰り返した。このとき、充放電の条件として、充電については1.6mA/hで4.2Vまでの充電を行ない、放電については1.6mA/hで2.75Vまでの放電を行なうようにした。
−f.評価−
1サイクル目の放電容量と100サイクル目の放電容量から、容量保持率(充放電を繰返したときの容量変化)を以下の式により算出し、これをサイクル特性を評価する指標とした。
容量保持率(%)
=(100サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)×100
各リチウムイオン二次電池の容量保持率が85%以上であった場合、実用上許容できる範囲として合格(○)と判定し、容量保持率が85%を下回った場合、実用上支障を来たす範囲として不合格(×)と判定した。
【0049】
(実施例1)
−ポリエチレン微多孔膜の作製−
ポリエチレンパウダーとしてTicona社製のGUR2126(重量平均分子量415万、融点141℃)と、GURX143(重量平均分子量56万、融点135℃)とを用いた。GUR2126とGURX143とを1:9(質量比)の比率になるように、ポリエチレン濃度が30質量%となるように流動パラフィンとデカリンの混合溶媒中に溶解させ、ポリエチレン溶液を作製した。このポリエチレン溶液の組成は、ポリエチレン:流動パラフィン:デカリン=30:45:25(質量比)である。
【0050】
続いて、このポリエチレン溶液を148℃でダイから押し出し、水浴中で冷却して、60℃で8分間、95℃で15分間かけて乾燥させ、ゲル状テープ(ベーステープ)を作製し、得られたベーステープを縦延伸した後、横延伸を行なって、2方向に逐次延伸する2軸延伸を行なった。ここで、縦延伸は、延伸倍率を5.5倍、延伸温度を90℃とし、横延伸は、延伸倍率を11.0倍、延伸温度を105℃とした。横延伸の後に125℃で熱固定を行なった。次に、これを塩化メチレン浴に浸漬し、流動パラフィンとデカリンを抽出した。その後、50℃で乾燥させ、120℃でアニール処理することで、ポリエチレン微多孔膜(多孔質基材)を作製した。
作製したポリエチレン微多孔膜の物性は、膜厚:12μm、空孔率:50%であった。
【0051】
−塗工用スラリーの調製−
有機高分子化合物としてメタ型全芳香族ポリアミド(メタアラミド)であるコーネックス(登録商標;帝人テクノプロダクツ社製)を、固形分濃度で5.5質量%となるようにジメチルアセトアミド(DMAc)及びトリプロピレングリコール(TPG)の質量比が50:50である混合溶媒に混合し、撹拌した。混合後、得られた混合液を室温で0.2MPaにて加圧することで、塗工用スラリーを調製した。
【0052】
−セパレータの作製−
次いで、一対のマイヤーバー(番手#6)を20μmのクリアランスで対峙させた。マイヤーバーに上記塗工用スラリーを適量のせ、一対のマイヤーバー間に長尺状のポリエチレン微多孔膜を通過させることにより、ポリエチレン微多孔膜の両面に、ポリエチレン微多孔膜の搬送速度50m/minにて塗工用スラリーを塗工した。これを、水:DMAc:TPG=50:25:25[質量比]の組成で40℃に調節された凝固液中に浸漬した。次いで、水洗・乾燥を行なった後、巻取り部にてロール状に巻き取った。
このようにして、ポリエチレン微多孔膜の表裏両面に機能性多孔質層(ここでは耐熱性多孔質層)が形成された、厚み18μmの非水系二次電池用セパレータを作製した。
【0053】
作製したセパレータについて、膜厚、空孔率、スラリー中の気泡数、凹部の数、塗工筋、巻きシワ、蛇行、塗工層の剥れ、及びサイクル特性の評価を行ない、評価及び測定の結果を下記表1に示す。
【0054】
(実施例2)
実施例1において、「塗工用スラリーの調製」を下記のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製し、評価した。評価結果は、下記表1に示す。
〜塗工用スラリーの調製〜
有機高分子化合物としてメタ型全芳香族ポリアミドであるコーネックス(登録商標;帝人テクノプロダクツ社製)と平均粒子径0.8μmの水酸化マグネシウム(協和化学工業社製、キスマ5P)とを質量比で25:75となるように混合し、この混合物を、メタ型全芳香族ポリアミド濃度が5.5質量%となるように、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びトリプロピレングリコール(TPG)の質量比が50:50である混合溶媒に混合した。混合後、得られた混合液を大気圧下、室温で5時間静置することにより、塗工用スラリーを得た。
【0055】
(実施例3)
実施例1において、塗工用スラリーの調製に用いたコーネックス(メタ型全芳香族ポリアミド)を、クレハ化学社製のKFポリマー #9300(ポリフッ化ビニリデン系樹脂(PVdF))に代え、「塗工用スラリーの調製」で得られた混合液の撹拌を0.1atm下で30分間行なうようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製し、評価した。評価結果は、下記表1に示す。
【0056】
(実施例4)
実施例1において、「塗工用スラリーの調製」で得られた混合液の撹拌を0.1MPa下で行なうようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製し、評価した。評価結果は、下記表1に示す。
【0057】
(実施例5)
実施例1において、「塗工用スラリーの調製」で得られた混合液を、大気圧下、室温で24時間静置したこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製し、評価した。評価結果は、下記表1に示す。
【0058】
(比較例1)
実施例1において、「塗工用スラリーの調製」で得られた混合液に対する加圧を0.2MPaから0.02MPaに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製し、評価した。評価結果は、下記表1に示す。
【0059】
(比較例2)
実施例3において、「塗工用スラリーの調製」で得られた混合液を減圧せず、30分静置したこと以外は、実施例3と同様にして、セパレータを作製し、評価した。評価結果は、下記表1に示す。
【0060】
(比較例3)
実施例1において、「塗工用スラリーの調製」で得られた混合液を加圧せず、96時間静置したこと以外は、実施例1と同様にして、セパレータを作製し、評価した。評価結果は、下記表1に示す。
【0061】
(比較例4)
実施例3の「塗工用スラリーの調製」において、混合液に対する減圧を行わず、室温で96時間静置したこと以外は、実施例3と同様にして、セパレータを作製し、評価した。評価結果は、下記表1に示す。
【0062】
(比較例5)
比較例3において、「セパレータの作製」でのポリエチレン微多孔膜の搬送速度を50m/minから5m/minに変更したこと以外は、比較例3と同様にして、セパレータを作製し、評価した。評価結果は、下記表1に示す。
【0063】
【表1】



【0064】
前記表1に示すように、セパレータの最表層を形成している耐熱性多孔質層表面の凹部が所定数の範囲で形成された実施例では、製造過程での巻きシワや蛇行の発生が抑えられ、乾燥時に生じやすい耐熱性多孔質層の剥がれの発生もみられなかった。これは、製造過程で耐熱性多孔質層に加わる応力が表層に形成された凹部で緩和され、耐熱性多孔質層と搬送ロールとの間の摩擦が適度に低減されたためと推測される。実施例で得られたセパレータを用いたリチウム二次電池は、長期に亘り安定的に発電運転させることができた。
これに対して、セパレータの最表層に所定数の凹部が形成されていない比較例では、製造途中で蛇行が生じたり、巻き取り時にシワが発生し、また乾燥時には、耐熱性多孔質層の剥がれもみられた。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の非水系二次電池用セパレータは、剥離耐性が高く良好なサイクル安定性を発揮し、搬送工程を設けて行なう製造に適性を有し生産性に優れており、リチウム電池用途に好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材と、前記多孔質基材の少なくとも一方の側に塗工され、有機高分子化合物を含む機能性多孔質層と、を含み、
前記機能性多孔質層の表面に最大径が50μm以上1mm以下の凹部を0.1個/m以上20個/m以下の範囲で有する非水系二次電池用セパレータ。
【請求項2】
前記凹部は、前記機能性多孔質層の表面からの平均深さが、該層の平均厚みの20%以上80%以下である請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項3】
前記機能性多孔質層は、融点又は熱分解温度が200℃以上の耐熱性樹脂を含む耐熱性多孔質層、及びポリフッ化ビニリデン系樹脂を含む接着性多孔質層の少なくとも一方である請求項1又は請求項2に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項4】
前記耐熱性樹脂は、全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、及びポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも一種であり、
前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、(i)フッ化ビニリデンの単独重合体、及び(ii)テトラフロロエチレン、ヘキサフロロプロピレン、トリフロロエチレン、トリクロロエチレン、及びフッ化ビニルから選ばれる少なくとも一種とフッ化ビニリデンとの共重合体から選ばれる少なくとも一種である請求項3に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項5】
前記機能性多孔質層は、更に、無機フィラー及び有機フィラーから選ばれる少なくとも一方を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項6】
正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置された請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータとを備え、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池。

【公開番号】特開2013−69582(P2013−69582A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208160(P2011−208160)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】