説明

非水系二次電池用セパレータ

【課題】本発明は、高温下における熱収縮率に優れ、かつ、良好な膜抵抗を有する非水系二次電池用セパレータを提供することを目的とする。
【解決手段】ポリオレフィン多孔質基材と、耐熱性樹脂および無機フィラーを含んで形成され、前記多孔質基材の片面または両面に積層された耐熱性多孔質層と、備えた非水系二次電池用セパレータであって、前記耐熱性多孔質層の空孔率が5%以上30%未満であることを特徴とする非水系二次電池用セパレータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非水系二次電池に用いるセパレータに関する。具体的には非水系二次電池の安全性を高めるセパレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表される非水系二次電池は、例えば携帯電話やノートパソコンと言った携帯用電子機器の主電源として広範に普及している。このようなリチウムイオン二次電池においては、さらなる高エネルギー密度化・高容量化・高出力化を達成すべく技術開発が進められており、今後もこの要求はさらに高まることが予想される。このような要求に応えていくためにも、電池の高度な安全性を確保する技術がより一層重要となってきている。
【0003】
一般的に、リチウムイオン二次電池のセパレータには、ポリエチレンやポリプロピレンからなる微多孔膜が用いられている。このセパレータには、リチウムイオン二次電池の安全性を確保する目的で、シャットダウン機能と呼ばれる機能が備わっている。このシャットダウン機能とは、電池温度が上昇してある温度に達したときに著しく抵抗が増大する機能を言う。このシャットダウン機能により、電池が何らかの原因で発熱したときに、電流を遮断することができ、電池のさらなる発熱を防止し、発煙・発火・爆発を防ぐことができる。このようなシャットダウン機能は、セパレータを構成する材料が溶融・変形し、セパレータの孔を閉塞することを作動原理としている。そのため、ポリエチレンからなるセパレータの場合はポリエチレンの融点近傍の140℃近傍でシャットダウン機能が作動し、ポリプロピレンの場合は165℃程度でこの機能が作動する。このシャットダウン機能は、確実に電池の安全性を確保するという観点からも、比較的に低温で作動することが好ましく、このためポリエチレンの方が一般的に用いられている。
【0004】
一方で、リチウムイオン二次電池のセパレータには、シャットダウン機能に加え、十分な耐熱性を有することも要求されている。その理由は次の通りである。従来のポリエチレン等の微多孔膜のみからなるセパレータにおいては、シャットダウン機能が作動した後、さらに電池がシャットダウン機能が作動する温度以上に曝され続けることで、セパレータの溶融(いわゆるメルトダウン)が進行してしまう。これはシャットダウン機能の原理から考えると当然である。このメルトダウンの結果、電池内部で短絡が生じ、これに伴って大きな熱が発生してしまうため、電池は発煙・発火・爆発といった危険に曝されることになる。このため、セパレータにはシャットダウン機能に加えて、シャットダウン機能が作動する温度近傍でメルトダウンが生じない程度の十分な耐熱性が要求される。
【0005】
ここにおいて、従来、シャットダウン機能と耐熱性の両方をセパレータに付与するために、ポリエチレン微多孔膜にポリイミドや芳香族ポリアミドなどの耐熱性樹脂からなる多孔質層をコーティングしたセパレータが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。このようなセパレータにおいては、ポリエチレンの融点近傍(140℃程度)でシャットダウン機能が作動すると共に、耐熱性多孔質層が十分な耐熱性を示すことにより180℃以上においてもメルトダウンが発生しない。
【0006】
しかし、従来提案されてきているこのタイプのセパレータは、180℃における熱収縮率が十分とはいえず、熱収縮によるセパレータの破膜や位置ずれによって電極間の短絡が発生することが懸念される。また、セパレータの熱収縮を抑えるために耐熱層の厚みを大きくしたり、耐熱層を緻密な構造にしたりすることも考えられるが、これにより膜抵抗が増大してしまい、電池特性を低下させてしまうことも懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008/062727号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2008/156033号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、高温下における熱収縮率に優れ、かつ、良好な膜抵抗を有する非水系二次電池用セパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の構成により解決可能である事を見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下の構成を採用する。
【0010】
1. ポリオレフィン多孔質基材と、耐熱性樹脂および無機フィラーを含んで形成され、前記多孔質基材の片面または両面に積層された耐熱性多孔質層と、備えた非水系二次電池用セパレータであって、前記耐熱性多孔質層の空孔率が5%以上30%未満であることを特徴とする非水系二次電池用セパレータ。
2. 前記耐熱性樹脂がメタ型全芳香族ポリアミドまたはパラ型全芳香族ポリアミドであることを特徴とする上記1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
3. 前記無機フィラーが、金属酸化物、金属炭酸塩、金属リン酸塩、金属水酸化物から選ばれる少なくとも1つ以上であることを特徴とする上記1または2に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高温下における熱収縮率に優れ、かつ、良好な膜抵抗を有する非水系二次電池用セパレータを提供することができる。かかるセパレータを用いたリチウムイオン二次電池はセパレータの収縮による短絡を防止でき、安全性に優れた非水系二次電池を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について順次説明する。なお、これらの説明及び実施例は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0013】
[非水系二次電池用セパレータ]
本発明の非水系二次電池用セパレータは、ポリオレフィン多孔質基材と、耐熱性樹脂および無機フィラーを含んで形成され、前記多孔質基材の片面または両面に積層された耐熱性多孔質層と、備えた非水系二次電池用セパレータであって、前記耐熱性多孔質層の空孔率が5%以上30%未満であることを特徴とする。
【0014】
このような本発明の非水系二次電池用セパレータによれば、ポリオレフィン多孔質基材によりシャットダウン機能が得られると共に、耐熱性多孔質層によりシャットダウン温度以上の温度においてもポリオレフィンが保持されるため、メルトダウンが生じ難く、高温時の安全性を確保できる。特に、耐熱性多孔質層の空孔率が5%以上30%未満であることで、例えば180度程度の高温下においても熱収縮率が低いものとなり、かつ、十分な膜抵抗を有したものとなる。従って、本発明のセパレータによれば、安全性に優れた非水系二次電池を得ることができる。
【0015】
本発明の非水系二次電池用セパレータは、非水系二次電池のエネルギー密度の観点から、全体の膜厚が30μm以下であることが好ましい。セパレータのガーレ値(JIS・P8117)は、機械強度と膜抵抗のバランスが良くなるという観点から、100〜500sec/100ccであることが好ましい。セパレータの膜抵抗は、非水系二次電池の負荷特性の観点から、1.5〜10ohm・cmであることが好ましい。セパレータの180℃における熱収縮率は5〜20%であることが好ましい。
【0016】
[ポリオレフィン多孔質基材]
本発明のセパレータに用いるポリオレフィン多孔質基材は、内部に多数の空孔ないし空隙を有し、かつ、これら空孔等が互いに連結された多孔質構造を有したものであれば特に限定されるものではない。このような基材としては、例えば微多孔膜、不織布、紙状シート、その他三次元ネットーワーク構造を有するシート等が挙げられる。このうちハンドリング性や強度の観点から微多孔膜が好ましい。また、当該ポリオレフィン多孔質基材は、所定の温度まで加熱されることにより、微多孔膜内の微細孔が閉塞し、シャットダウン機能が発現されるようになっている。
【0017】
ポリオレフィンとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等が挙げられる。中でも良好なシャットダウン特性が得られるという観点で、ポリエチレンを90重量%以上含むものが好適である。ポリエチレンは、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどが好適に用いられ、特に、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンが好適である。さらに、高密度ポリエチレンと超高分子量ポリエチレンの混合物からなるポリエチレンは、強度と成形性の観点から好ましい。
【0018】
ポリオレフィン多孔質基材の膜厚は、非水系二次電池のエネルギー密度、負荷特性、機械強度およびハンドリング性の観点から、5〜25μmであることが好ましい。ポリオレフィン多孔質基材の空孔率は、透過性、機械強度およびハンドリング性の観点から、30〜60%であることが好ましい。ポリオレフィン多孔質基材のガーレ値(JIS・P8117)は、機械強度と膜抵抗をバランス良く得るという観点から、50〜500sec/100ccであることが好ましい。
【0019】
[耐熱性多孔質層]
本発明において、耐熱性多孔質層としては、微多孔膜状、不織布状、紙状、その他三次元ネットーワーク状の多孔質構造を有した層を挙げることができるが、より優れた耐熱性が得られる点で、微多孔膜状の層であることが好ましい。ここで、微多孔膜状の層とは、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった層のことを言う。
【0020】
本発明で用いられる耐熱性樹脂は、融点200℃以上のポリマー、あるいは融点を有しないが分解温度が200℃以上のポリマーが適当である。このような耐熱性樹脂の好ましい例としては、全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミドおよびセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂が挙げられる。特に、耐久性の観点から、メタ型全芳香族ポリアミドあるいはパラ型全芳香族ポリアミドが好適である。
【0021】
本発明において、耐熱性多孔質層はポリオレフィン微多孔膜の両面または片面に形成すればよいが、ハンドリング性、耐久性および熱収縮の抑制効果の観点から、基材の表裏両面に形成した方が好ましい。なお、耐熱性多孔質層を基材上に固定するためには、耐熱性多孔質層を塗工法により基材上に直接形成する手法が好ましいが、これに限らず、別途製造した耐熱性多孔質層のシートを基材上に接着剤等を用いて接着する手法や、熱融着や圧着などの手法も採用することができる。
【0022】
本発明において、耐熱性多孔質層の厚みについては、耐熱性多孔質層が基材の両面に形成されている場合は、耐熱性多孔質層の厚みの合計が3μm以上12μm以下であることが好ましく、耐熱性多孔質層が基材の片面にのみ形成されている場合は耐熱性多孔質層の厚みが3μm以上12μm以下であることが好ましい。
【0023】
本発明において、耐熱性多孔質層の空孔率は5%以上30%未満である。この空孔率が5%未満であると、膜抵抗が高く電池のセパレータとして使用できないという問題があるため、好ましくない。一方、空孔率が30%以上になると、熱収縮率が高くなり電池の安全性が損なわれるという問題があるため、好ましくない。
【0024】
なお、耐熱性多孔質層の空孔率を上述の範囲に制御する方法としては、特に制限されるものではない。例えば、耐熱性樹脂としてメタ型全芳香族ポリアミドを用い、これを溶剤に溶解させて基材に塗工した後、凝固させる方法の場合は、凝固液の組成や温度を制御すること等が挙げられる。また、例えば、耐熱性樹脂としてパラ型全芳香族ポリアミドを用い、これを溶剤に溶解させて基材に塗工した後、析出させる方法の場合は、ポリマーの析出条件(湿度や温度等)を制御すること等が挙げられる。この場合、基本的には、湿度が低い程、析出温度が低い程、無機フィラーの添加量が少ない程、耐熱性多孔質層の空孔率が小さくなる。
【0025】
本発明において、耐熱性多孔質層には無機フィラーが含まれていることが好ましい。無機フィラーとしては、特に限定はないが、例えばアルミナやチタニア、シリカ、ジルコニアなどの金属酸化物、炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩、硫酸バリウムなどの金属硫酸塩、リン酸カルシウムなどの金属リン酸塩、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物から選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0026】
中でも、無機フィラーとしては、200〜400℃において吸熱反応を生じるものであるものが好ましい。この様な特性を有する無機フィラーとしては、例えば金属水酸化物、硼素塩化合物または粘土鉱物等からなる無機フィラーであって、200〜400℃において吸熱反応を生じるものが挙げられる。具体的には、例えば、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム、アルミン酸カルシウム、ドーソナイト、硼酸亜鉛等が挙げられ、これらは単独若しくは2種以上を組合せて用いることができる。
【0027】
本発明において、無機フィラーの平均粒子径は、高温時の耐短絡性や成形性等の観点から、0.1〜2μmの範囲が好ましい。本発明において、耐熱性多孔質層における無機フィラーの含有量は、耐熱性多孔質層の空孔率を制御する観点から、1〜50重量%であることが好ましい。
【0028】
[非水系二次電池用セパレータの製造法]
本発明において、非水系二次電池用セパレータの製造法は、上述した構成の本発明のセパレータが製造できれば特に限定されないが、例えば下記(1)〜(5)の工程を経て製造することが可能である。
【0029】
(1)塗工用スラリーの作製
耐熱性樹脂を溶剤に溶かし、塗工用スラリーを作製する。溶剤は耐熱性樹脂を溶解するものであればよく、特に限定は無いが、具体的には極性溶剤が好ましく、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。また、当該溶剤はこれらの極性溶剤に加えて耐熱性樹脂に対して貧溶剤となる溶剤も加えることができる。このような貧溶剤を適用することでミクロ相分離構造が誘発され、耐熱性多孔質層を形成する上で多孔化が容易となる。貧溶剤としては、アルコールの類が好適であり、特にグリコールのような多価アルコールが好適である。塗工用スラリー中の耐熱性樹脂の濃度は4〜9重量%が好ましい。また必要に応じ、これに無機フィラーを分散させて塗工用スラリーとする。塗工用スラリー中に無機フィラーを分散させるに当たって、無機フィラーの分散性が好ましくないときは、無機フィラーをシランカップリング剤などで表面処理し、分散性を改善する手法も適用可能である。
【0030】
(2)スラリーの塗工
スラリーをポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の表面に塗工する。ポリオレフィン微多孔膜の両面に耐熱性多孔質層を形成する場合は、基材の両面に同時に塗工することが、工程の短縮という観点で好ましい。塗工用スラリーを塗工する方法としては、ナイフコーター法、グラビアコーター法、スクリーン印刷法、マイヤーバー法、ダイコーター法、リバースロールコーター法、インクジェット法、スプレー法、ロールコーター法などが挙げられる。この中でも、塗膜を均一に形成するという観点において、リバースロールコーター法が好適である。基材の両面に同時に塗工する場合は、例えば、基材を一対のマイヤーバーの間に通すことで基材の両面に過剰な塗工用スラリーを塗布し、これを一対のリバースロールコーターの間に通して過剰なスラリーを掻き落すことで精密計量するという方法が挙げられる。
【0031】
(3)スラリーの凝固
スラリーが塗工された基材を、前記耐熱性樹脂を凝固させることが可能な凝固液で処理する。塗工用スラリーを塗工した基材を、当該耐熱性樹脂を凝固させることが可能な凝固液、あるいは湿熱雰囲気下で処理することにより、耐熱性樹脂を凝固させて、耐熱性多孔質層を形成する。凝固液で処理する方法としては、塗工用スラリーを塗工した基材に対して凝固液をスプレーで吹き付ける方法や、当該基材を凝固液の入った浴(凝固浴)中に浸漬する方法や、所定の湿度と温度の雰囲気下で析出させ、続いて凝固浴に浸漬して凝固させる方法などが挙げられる。ここで、凝固浴を設置する場合は、塗工装置の下方に設置することが好ましい。凝固液としては、当該耐熱性樹脂を凝固できるものであれば特に限定されないが、水、または、スラリーに用いた溶剤に水を適当量混合させたものが好ましい。ここで、水の混合量は凝固液に対して40〜80重量%が好適である。水の量が40重量%より少ないと、耐熱性樹脂を凝固するのに必要な時間が長くなったり、凝固が不十分になる場合がある。また、水の量が80重量%より多いと、溶剤回収においてコスト高となったり、凝固液と接触する表面の凝固が速くなりすぎて表面が十分に多孔化されない場合がある。
【0032】
(4)凝固液の除去
凝固液を水洗することによって除去する。
【0033】
(5)乾燥
シートから水を乾燥して除去する。乾燥方法は特に限定は無いが、乾燥温度は50〜80℃が好適であり、高い乾燥温度を適用する場合は熱収縮による寸法変化が起こらないようにするためにロールに接触させるような方法を適用することが好ましい。
【0034】
[非水系二次電池]
本発明において、非水系二次電池は、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池であって、上述したセパレータを用いたことを特徴とする。本発明のセパレータが適用される非水系二次電池の種類や構成は、何ら限定されるものではないが、正極とセパレータと負極が順に積層された電池要素に電解液が含浸され、これが外装に封入された構造となった構成であれば、いずれにも適用可能である。
【0035】
負極は、負極活物質、導電助剤およびバインダーからなる負極合剤が、集電体上に成形された構造となっている。負極活物質としては、リチウムを電気化学的にドープすることが可能な材料が挙げられ、例えば炭素材料、シリコン、アルミニウム、スズ、ウッド合金などが挙げられる。導電助剤は、アセチレンブラック、ケッチェンブラックといった炭素材料が挙げられる。バインダーは有機高分子からなり、例えばポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。集電体には銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔などを用いることが可能である。
【0036】
正極は、正極活物質、導電助剤およびバインダーからなる正極合剤が、集電体上に成形された構造となっている。正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物等が挙げられ、具体的にはLiCoO、LiNiO、LiMn0.5Ni0.5、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiMn、LiFePO、LiCo0.5Ni0.5、LiAl0.25Ni0.75等が挙げられる。導電助剤はアセチレンブラック、ケッチェンブラックといった炭素材料が挙げられる。バインダーは有機高分子からなり、例えばポリフッ化ビニリデンなどが挙げられる。集電体にはアルミ箔、ステンレス箔、チタン箔などを用いることが可能である。
【0037】
電解液は、リチウム塩を非水系溶媒に溶解した構成である。リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiClOなどが挙げられる。非水系溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ビニレンカーボネートなどが挙げられ、これらは単独で用いても混合して用いてもよい。
【0038】
外装材は、金属缶またはアルミラミネートパック等が挙げられる。電池の形状は角型、円筒型、コイン型などがあるが、本発明のセパレータはいずれの形状においても好適に適用することが可能である。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
本実施例における各値は、以下の方法に従って求めた。
【0040】
[膜厚]
ポリオレフィン微多孔膜及び非水系二次電池用セパレータの膜厚は、接触式の膜厚計(ミツトヨ社製)にて20点測定し、これを平均することで求めた。ここで接触端子は底面が直径0.5cmの円柱状のものを用いた。
【0041】
[目付け]
非水系二次電池用セパレータの目付は、サンプルを10cm×10cmに切り出し重量を測定する。この重量を面積で割ることで1m当たりの重量である目付を求めた。
【0042】
[空孔率]
構成材料がa、b、c…、nからなり、構成材料の重量がWa、Wb、Wc…、Wn(g・cm)であり、それぞれの真密度がda、db、dc…、dn(g/cm)で、着目する層の膜厚をt(cm)としたとき、空孔率ε(%)は以下の式より求めた。
ε={1−(Wa/da+Wb/db+Wc/dc+…+Wn/dn)/t}×100
【0043】
[膜抵抗]
サンプルとなるセパレータを、2.6cm×2.0cmのサイズに切り出した。非イオン性界面活性剤(花王社製;エマルゲン210P)を3重量%溶解したメタノール溶液に、切り出したセパレータを浸漬し、風乾した。厚さ20μmのアルミ箔を、2.0cm×1.4cmに切り出しリードタブを付けた。このアルミ箔を2枚用意して、アルミ箔間に切り出したセパレータを、アルミ箔が短絡しないように挟んだ。電解液には、プロピレンカーボネートとエチレンカーボネートが1対1の重量比で混合された溶媒中にLiBFを1M溶解させたものを用い、この電解液を上記セパレータに含浸させた。これをアルミラミネートパック中に、タブがアルミパックの外に出るようにして減圧封入した。このようなセルを、アルミ箔中にセパレータが1枚、2枚、3枚となるようにそれぞれ作製した。このセルを20℃の恒温槽中に入れ、交流インピーダンス法で、振幅10mV、周波数100kHzにてこのセルの抵抗を測定した。測定されたセルの抵抗値を、セパレータの枚数に対してプロットし、このプロットを線形近似し、傾きを求めた。この傾きに、電極面積である2.0cm×1.4cmを乗じて、セパレータ1枚当たりの膜抵抗(ohm・cm)を求めた。
【0044】
[熱収縮率]
サンプルとなるセパレータを18cm(MD方向)×6cm(TD方向)に切り出した
。TD方向を2等分する線上に上部から2cm、17cmの箇所(点A、点B)に印を付けた。また、MD方向を2等分する線上に左から1cm、5cmの箇所(点C、点D)に印を付けた。これにクリップをつけ(クリップをつける場所はMD方向の上部2cm以内の箇所)180℃に調整したオーブンの中につるし、無張力下で30分間熱処理を行った。2点AB間、CD間の長さを熱処理前後で測定し、以下の式から熱収縮率を求めた。
MD方向熱収縮率={(熱処理前のABの長さ−熱処理後のABの長さ)/熱処理前のABの長さ}×100
TD方向熱収縮率={(熱処理前のCDの長さ−熱処理後のCDの長さ)/熱処理前のCDの長さ}×100
【0045】
[実施例1]
(1)ポリエチレン多孔膜の製造
ポリエチレンパウダーとして、Ticona社製のGUR2126(重量平均分子量415万、融点141℃)とGURX143(重量平均分子量56万、融点135℃)を用いた。GUR2126とGURX143を、1:9(重量比)となるようにして、ポリエチレン濃度が30重量%となるように流動パラフィン(松村石油研究所社製;スモイルP−350P;沸点480℃)とデカリンの混合溶媒中に溶解させ、ポリエチレン溶液を作製した。このポリエチレン溶液の組成は、ポリエチレン:流動パラフィン:デカリン=30:45:25(重量比)であった。
このポリエチレン溶液を148℃でダイから押し出し、水浴中で冷却してゲル状テープ(ベーステープ)を作製した。このベーステープを60℃で8分、95℃で15分乾燥し、次いで、ベーステープを縦延伸、横延伸と逐次行う2軸延伸にて延伸した。ここで、縦延伸は5.5倍、延伸温度は90℃、横延伸は延伸倍率11.0倍、延伸温度は105℃とした。横延伸の後に125℃で熱固定を行った。次にこれを塩化メチレン浴に浸漬し、流動パラフィンとデカリンを抽出した。その後、50℃で乾燥し、120℃でアニール処理しポリエチレン微多孔膜を得た。膜厚は12μm、空孔率37%、ガーレ値301sec/100cc、膜抵抗2.6ohm・cmであった。
【0046】
(2)ポリメタフェニレンイソフタルアミドの製造
イソフタル酸クロライド160.5gをテトラヒドロフラン1120mlに溶解し、撹拌しながら、メタフェニレンジアミン85.2gをテトラヒドロフラン1120mlに溶解した溶液を、細流として徐々に加えていくと白濁した乳白色の溶液が得られた。撹拌を約5分間継続した後、更に撹拌しながら炭酸ソーダ167.6g、食塩317gを3400mlの水に溶かした水溶液を速やかに加え、5分間撹拌した。反応系は数秒後に粘度が増大後、再び低下し、白色の懸濁液が得られた。これを静置し、分離した透明な水溶液層を取り除き、ろ過によってポリメタフェニレンイソフタルアミドの白色重合体185.3gが得られた。
【0047】
(3)セパレータの製造
上記のポリメタフェニレンイソフタルアミドと平均粒子径0.8μmの水酸化マグネシウム(協和化学社製;キスマ5)からなる無機フィラーとが、重量比で90:10なるように調整し、これらをポリメタフェニレンイソフタルアミド濃度が2重量%となるように、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)が重量比80:20となっている混合溶媒に混合し、塗工用スラリーを得た。
ポリエチレン微多孔膜上にクリアランスが0.3mmであるドクターナイフで上記スラリーを塗工した。そして、塗工されたものを、重量比で水:DMAc:TPG=50:40:10で20℃となっている凝固液中に浸漬した。次いで水洗・乾燥を行った。これにより、ポリエチレン微多孔膜の片面にポリメタフェニレンイソフタルアミドおよび水酸化マグネシウムからなる耐熱性多孔質層が形成された、本発明の非水系二次電池用セパレータを得た。得られたセパレータの特性を表1および表2に示した。なお、以下の実施例2〜4および比較例1,2の特性についてもまとめて表1および表2に示した。
【0048】
[実施例2]
(1)ポリパラフェエニレンテレフラルアミド溶液の製造
5Lのセパラブルフラスコに窒素気流下、NMP1000g中に塩化カルシウム68.7gを加え100℃で溶解させ、室温まで冷却した後にパラフェニレンジアミン31.01gを加えて溶解させた。ここにテレフタル酸ジクロライド56.80gを液温が20℃以上に上がらないように少しずつ添加し撹拌した。この溶液を脱泡し、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)6重量%のNMP溶液を得た。
【0049】
(2)セパレータの製造
上記のPPTA溶液にさらにNMPを加えて、1.5重量%のPPTA溶液に調整した。この溶液100重量部に対して、平均粒径0.2μmのα−アルミナ(大明化学社製、TM−5D)を1.05重量部添加し、撹拌して分散させた。クリアランスが0.3mmであるドクターナイフで実施例1で得られたポリエチレン微多孔膜の片面上に塗布した。これを30℃、湿度60%の雰囲気下で10分間静置後、25℃の流水で6時間洗浄した。真空下、40℃で12時間乾燥させた。これにより、ポリエチレン微多孔膜の片面にポリパラフェニレンイソフタルアミドおよびα−アルミナからなる耐熱性多孔質層が形成された、本発明の非水系二次電池用セパレータを得た。
【0050】
[実施例3]
実施例1で得られたポリメタフェニレンイソフタルアミドと平均粒径0.3μmの硫酸バリウム(堺化学社製、B−30)からなる無機フィラーとが、重量比で90:10となるように調整し、これらをポリメタフェニレンイソフタルアミド濃度が2重量%となるように、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)が重量比60:40となっている混合溶媒に混合し、塗工用スラリーを得た。
クリアランスが0.3mmであるドクターナイフで実施例1で得られたポリエチレン微多孔膜の片面上に塗布した。そして、塗工されたものを、重量比で水:DMAc:TPG=50:30:20で40℃となっている凝固液中に浸漬した。次いで水洗・乾燥を行った。これにより、ポリエチレン微多孔膜の片面にポリメタフェニレンイソフタルアミドおよび硫酸バリウムからなる耐熱性多孔質層が形成された、本発明の非水系二次電池用セパレータを得た。
【0051】
[実施例4]
ポリメタフェニレンイソフタルアミドと平均粒径1μmの炭酸カルシウム(林化成社製、エスカロン#2300)の重量比が95:5であること以外は、実施例1と同様にして、本発明の非水系二次電池用セパレータを得た。
【0052】
[比較例1]
α−アルミナが0.26重量部であること、および、PPTA溶液を塗布した後に25℃、湿度70%の雰囲気下で10分間静置したこと以外は、実施例2と同様にして、非水系二次電池用セパレータを得た。
【0053】
[比較例2]
α−アルミナが1.28重量部であること、および、PPTA溶液を塗布した後に35℃、湿度70%の雰囲気下で10分間静置したこと以外は、実施例2と同様にして、非水系二次電池用セパレータを得た。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン多孔質基材と、耐熱性樹脂および無機フィラーを含んで形成され、前記多孔質基材の片面または両面に積層された耐熱性多孔質層と、備えた非水系二次電池用セパレータであって、
前記耐熱性多孔質層の空孔率が5%以上30%未満であることを特徴とする非水系二次電池用セパレータ。
【請求項2】
前記耐熱性樹脂がメタ型全芳香族ポリアミドまたはパラ型全芳香族ポリアミドであることを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項3】
前記無機フィラーが、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属リン酸塩、金属水酸化物から選ばれる少なくとも1つ以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の非水系二次電池用セパレータ。

【公開番号】特開2011−210435(P2011−210435A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75112(P2010−75112)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】