説明

非水系二次電池用負極活物質、非水系二次電池及び使用方法

【課題】新規な非水系二次電池用負極活物質、非水系二次電池及び使用方法を提供する。
【解決手段】コイン型電池20は、カップ形状の電池ケース21と、この電池ケース21の内部に設けられた正極22と、正極22に対してセパレータ24を介して対向する位置に設けられた負極23と、支持塩を含む非水電解液27と、絶縁材により形成されたガスケット25と、電池ケース21の開口部に配設されガスケット25を介して電池ケース21を密封する封口板26と、を備えている。ここでは、負極23は、基本組成LiNi1-xMnx2(0<x<0.5)で表される酸化物を負極活物質として有するものである。この酸化物は、Niの価数が2価及び3価であり、Mnの価数が4価であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系二次電池用負極活物質、非水系二次電池及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非水系二次電池用負極活物質としては、金属リチウムや炭素材料、酸化物系のものなどが知られている。ここで、酸化物系のものとしては、リチウム−バナジウム複合酸化物からなる負極材料などが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この負極材料は、2>Li/Vモル比>1.05の組成を有し、六方晶系で指数付けした格子定数a,cの比がc/a≦5.17の結晶を含むものであり、放電容量や充放電効率がよいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−68305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、非水系二次電池は、パソコンや携帯電話から電気自動車やハイブリッド自動車などまでの幅広い用途があり、用途によって求められる特性が異なることがある。そこで、非水系二次電池用負極活物質や非水系二次電池の選択肢となりうる、新規な非水系二次電池用負極活物質及び非水系二次電池が望まれていた。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、新規な非水系二次電池用負極活物質、非水系二次電池及び使用方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明者らは、リチウムニッケルマンガン複合酸化物を非水系二次電池用負極活物質として用いて二次電池を作製したところ、電池として作動し、充放電可能であることを見いだし、本発明を完成するに至った
【0007】
即ち、本発明の非水系二次電池用負極活物質は、基本組成LiNi1-xMnx2(0<x<0.5)で表されるものである。
【発明の効果】
【0008】
この非水系二次電池用負極活物質を用いた二次電池は、充放電可能であり、電池として作動することができる。このため、各種機器の電源用途に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】コイン型電池20の構成の概略を表す断面図である。
【図2】実験例1の非水系二次電池用負極活物質のX線回折測定結果である。
【図3】実験例1の非水系二次電池用負極活物質の1サイクル目の充放電曲線である。
【図4】LiNi1-xMnx2のx値と初期酸化(放電)容量との関係を示すグラフである。
【図5】LiNi1-xMnx2のx値と不可逆容量割合との関係を示すグラフである。
【図6】LiNi1-xMnx2のx値と酸化(放電)容量維持率との関係を示すグラフである。
【図7】LiNi1-xMnx2のx値とNiのK吸収端のX線スペクトルのエネルギーとの関係を示すグラフである。
【図8】LiNi1-xMnx2のx値とMnのK吸収端のX線スペクトルのエネルギーとの関係を示すグラフである。
【図9】LiNi1-xMnx2のx値とピーク面積強度比I(003)/I(104)との関係を示すグラフである。
【図10】LiNi1-xMnx2のx値と遷移金属層間の距離Dとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の非水系二次電池用負極活物質は、基本組成LiNi1-xMnx2(0<x<0.5)で表される酸化物である。ここで、xは0より大きく0.5未満の範囲である。この範囲であれば、充放電可能であり、電池として作動することができる。また、充放電容量を高め、不可逆容量を小さくし、繰り返し充放電におけるサイクル特性を高めることができる。このうち、xが0より大きく0.15以下の範囲であれば、初期放電容量をより高めることができる。また、xが0.25以上0.40以下の範囲であれば、不可逆容量をより小さくし、繰り返し充放電時のサイクル特性をより高めることができる。なお、このような基本組成で表されるものであれば、NiやMnの一部が遷移金属元素などの他の元素で置換(ドープ)されていてもよいし、化学量論組成のものだけでなく、一部の元素が欠損または過剰となる非化学量論組成のものであってもよい。NiやMnの一部と置換する他の元素は、Mg,Al,Coのいずれか1以上であることが好ましい。また、置換する他の元素は、遷移金属のうちいずれかとしてもよい。また、NiやMnの一部が置換されている場合には、置換量は、基本組成におけるNi及びMnの総量の0.8mol%より大きく12mol%未満であることが好ましく、1.0mol%以上10mol%以下であることがより好ましい。なお、結晶格子内でMgはMg2+としてNi2+と置換され、AlとCoはAl3+、Co3+としてNi3+と置換されると考えられる。
【0011】
本発明の非水系二次電池用負極活物質は、酸化物に含まれるNiの価数が2価及び3価であり、Mnの価数が4価であることが好ましい。こうすれば、充放電容量を高め、不可逆容量を小さくし、繰り返し充放電におけるサイクル特性を高めることができる。ここで、価数は、X線吸収微細構造を測定し、K吸収端の吸収極大値の吸収量を1としたときに吸収量0.5に相当するX線スペクトルのエネルギーから導き出した形式酸化数をいうものとする。また、価数は、リチウム基準で2.5V以上3.3V以下の範囲の電極電位のものを測定した値をいい、製造後最初の充電前のものを測定した値であることが好ましい。形式酸化数は、具体的には以下のように導出することができる。以下には、X線吸収微細構造(X−ray Absorption Fine Structure,XAFS)の測定について説明する。この測定および原理は、例えば「X線吸収微細構造―XAFSの測定と解析」(宇田川康夫編1993年)に記載されている。具体的には、物質に単色X線を照射して透過させたとき、物質に照射されたX線の強度(入射強度:I0)と、物質を透過してきたX線の強度(透過強度:It)とからその物質のX線吸光度が得られ、X線吸光度をモニターしながら入射X線のエネルギー(eV)を変化させてX線吸収スペクトルを測定する。このとき、X線吸光度が急激に増加するポイントがあり、このポイントにおけるX線のエネルギー値を吸収端という。吸収端は物質を構成する元素に固有のものであり、この吸収端付近から1000eV程度高いエネルギー側に現れる微細な振動構造をX線吸収微細構造という。特に、X線吸収端近傍の構造測定(X−ray Absorption Near−K−edge Structures,XANES)を行い、遷移金属元素のK吸収端近傍に現れる吸収極大値の吸収量を1としたときに吸収量0.5に相当するX線スペクトルのエネルギーから酸化物中の遷移金属イオンの酸化数を調べることができる。X線吸収端近傍の微細構造は遷移金属イオンの配位状況と密接に関わっており、厳密な酸化数の算出には基準試料として立方密充填酸素配列を持つ層構造の酸化物を用いる必要がある。なお、ここではMn4+の基準試料としてLi2MnO3、Mn3+の基準試料として層構造LiMnO2、Ni3+の基準試料としてLiCo0.5Ni0.52、Ni2+およびMn4+の基準試料としてLiCo1/3Ni1/3Mn1/32を用いたものとする。なお、C.SJohonsonおよびM.M.ThackerayらがChemistry of Materials,15,2313−2322,2003のなかで、立方密充填酸素配列をもつLiNi0.5Mn0.52へのリチウム挿入により六方密充填酸素配列のLi2Ni0.5Mn0.52が得られることを示している。そして、合成した活物質の結晶格子内にNi3+とMn3+が存在せずにNi2+とMn4+のみが含まれることにより構造安定性、充放電安定性が優れるとしている。これに対して、本発明の非水系二次電池用負極活物質は、組成式LiNi1-xMnx2(0<x<0.5)で表されるものとすることで機能を発現させるものである点で異なるといえる。また、本発明のうち層状酸化物内のNi,MnをNi2+,Ni3+,Mn4+の組み合わせとしたものについては、このような価数とすることによって機能をより高めるものである点で上記文献と思想が異なるといえる。
【0012】
本発明の非水系二次電池用負極活物質は、空間群R3mで仮定した場合のX線回折ピークの(003)面と(104)面とのピーク面積強度比I(003)/I(104)が、1.4より小さいことが好ましく、1.2以下であることがより好ましく、1.1以下であることが更に好ましい。また、0.8より大きいことが好ましく、0.9以上であることがより好ましい。このように、ピーク面積強度比が0.8より大きく1.4より小さければ、初期酸化容量を高め、初期不可逆容量割合を小さくし、繰り返し充放電のサイクル特性を高めることができる。
【0013】
また、この非水系二次電池用負極活物質は、六方晶系の層構造を有すると考えられるが、層間距離D(Å)が4.727より大きいことが好ましく、4.733以上であることがより好ましく、4.747以上であることがさらに好ましい。また、4.767未満であることが好ましく、4.760以下であることがさらに好ましい。なお、この層間距離は、各回折ピークの回折角度とミラー指数から最小二乗法を用いて最適化し、遷移金属層間の距離Dを算出した値とする。
【0014】
本発明の非水系二次電池用負極活物質の製造方法は、例えば、(1)原料を調整する調整工程と、(2)メカニカルアロイ法によって原料を混合する混合工程と、(3)得られた混合原料を焼成する焼成工程とを含むものとしてもよい。調整工程では、LiNi1-xMnx2(0<x<0.5)の組成の酸化物を得られるように原料を調整する。原料は特に限定されないが、例えば、Li源として水酸化リチウム、Ni源としてNiOなどNiを含む酸化物、Mn源としてMnOなどMnを含む酸化物を用いることができる。また、NiやMnの一部と置換する他の元素として、例えばMg,Al,Coのいずれか1以上の酸化物などを加えてもよい。また、置換する他の元素としては、遷移金属としてもよい。この置換量は、基本組成におけるNi及びMnの総量の0.8mol%より大きく12mol%未満となるように調製することが好ましく、1.0mol%以上10mol%以下となるように調製することがより好ましい。混合工程では、まず、メカニカルアロイ法によって原料を機械的に混合する。このメカニカルアロイ法では、原料の混合度を調整可能であるため、NiやMnの価数を制御可能である。メカニカルアロイ法は、例えば遊星型ボールミルなどのボールミルを用いることができる。こうすれば、混合の度合いを回転数、時間およびボール径などの種々のパラメータを用いて変化させることが可能である。例えば、ジルコニア容器とジルコニアボールを有する遊星型ボールミル装置を用い、ボールと上述した原料とを40:1の重量比とし、エタノールなど溶媒を上述した原料に加えて、公転回転数200rpm、公自転比を1.25として24時間処理してもよい。このような条件で処理を行うことで、原料が十分に混合され、その後の焼成によって得られる酸化物中のNiの価数を2価及び3価とし、Mnの価数を4価とすることができる。次に、ボールミル処理で得られたスラリー状の混合原料を濃縮・乾固させる。濃縮・乾固の方法は、特に限定されないが、ロータリーエバポレータを用いることが好ましい。ロータリーエバポレーターを用いる方法では、濾過などの場合と比較して、成分の溶出等を抑制可能だからである。焼成工程では、得られた混合原料を焼成する。焼成に際しては、得られた混合原料をペレット状に加圧成形して用いてもよい。焼成雰囲気は、空気雰囲気や酸素雰囲気などの酸化雰囲気であることが好ましい。焼成温度は、組成により最適温度が異なるが、800℃以上1200℃以下であることが好ましい。また、焼成初期から目的とする焼成温度であることが好ましく、焼成開始から一気に焼成温度まで昇温することが好ましい。焼成時間は約12時間程度とすることができる。なお、非水系二次電池用負極活物質の製造方法は、上記工程に限定されず、例えば、新たな工程を加えるものとしてもよいし、上記工程のいずれかを省略するものとしてもよい。例えば、調整工程を省略して市販の混合粉末などを用いてもよい。
【0015】
本発明の非水系二次電池は、上述した本発明の非水系二次電池用負極活物質を有する負極と、正極活物質を有する正極と、正極と負極との間に介在し、イオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えたものである。
【0016】
本発明の非水系二次電池において、負極は、例えば負極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。導電材は、負極の電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンマー(EPDM)、スルホン化EPDM、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。負極活物質、導電材、結着材を分散させる溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBRなどのラテックスで活物質をスラリー化してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの多糖類を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。
【0017】
本発明の非水系二次電池において、正極は、例えば正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極活物質としては、本発明の非水系二次電池用負極活物質を負極に用いた場合に、作動可能なものであればよく、例えば、LiCoO2やLiNiO2、LiNi0.5Mn0.52などの層状岩塩構造のものや、LiMn24などのなどのスピネル型構造のもの、LiFePO4などのポリアニオン系のものなどを用いることができる。特に、層状岩塩構造のものが好ましい。また、リチウム基準で3.0V以上で作動(酸化・還元)可能であることが好ましく、3.5V以上で作動可能であることがより好ましく、4.0V以上で作動可能であることがさらに好ましい。また、正極に用いられる導電材、結着材、集電体、溶剤などは、それぞれ負極で例示したものを適宜用いることができる。
【0018】
本発明の非水系二次電池において、非水系のイオン伝導媒体は、支持塩を有機溶媒に溶かした非水電解液やイオン性液体、ゲル電解質、固体電解質などを用いることができる。このうち、非水電解液であることが好ましい。支持塩としては、例えば、LiPF6,LiClO4,LiAsF6,LiBF4,Li(CF3SO22N,Li(CF3SO3),LiN(C25SO2)などの公知の支持塩を用いることができる。支持塩の濃度としては、0.1〜2.0Mであることが好ましく、0.8〜1.2Mであることがより好ましい。有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)など従来の二次電池やキャパシタに使われる有機溶媒が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。また、イオン性液体としては、特に限定されるものではないが、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロスルホニル)イミドや1−エチル−3−ブチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートなどを用いることができる。ゲル電解質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリフッ化ビニリデンやポリエチレングリコール、ポリアクリロニトリルなどの高分子類またはアミノ酸誘導体やソルビトール誘導体などの糖類に、支持塩を含む電解液を含ませてなるゲル電解質が挙げられる。固体電解質としては、無機固体電解質や有機固体電解質などが挙げられる。無機固体電解質としては、例えば、Liの窒化物、ハロゲン化物、酸素酸塩などがよく知られている。なかでも、Li4SiO4、Li4SiO4−LiI−LiOH、xLi3PO4−(1−x)Li4SiO4、Li2SiS3、Li3PO4−Li2S−SiS2、硫化リン化合物などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリホスファゼン、ポリエチレンスルフィド、ポリヘキサフルオロプロピレンなどやこれらの誘導体が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
【0019】
本発明のリチウム二次電池は、負極と正極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、二次電池の使用範囲に耐え得る組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の微多孔フィルムが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複合して用いてもよい。
【0020】
本発明のリチウム二次電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。このリチウム二次電池の一例を図1に示す。図1は、コイン型電池20の構成の概略を表す断面図である。このコイン型電池20は、カップ形状の電池ケース21と、この電池ケース21の内部に設けられた正極22と、正極22に対してセパレータ24を介して対向する位置に設けられた負極23と、支持塩を含む非水電解液27と、絶縁材により形成されたガスケット25と、電池ケース21の開口部に配設されガスケット25を介して電池ケース21を密封する封口板26と、を備えている。ここでは、負極23は、基本組成LiNi1-xMnx2(0<x<0.5)で表される酸化物を負極活物質として有するものである。
【0021】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0022】
例えば、上述した実施形態では、非水系二次電池用負極活物質として説明したが、この非水系二次電池用負極活物質の使用方法としてもよい。即ち、本発明の使用方法は、基本組成LiNi1-xMnx2(0<x<0.5)で表される酸化物を、非水系二次電池用負極活物質として使用する使用方法である。この使用方法では、充放電可能であり、電池として作動することができる。このとき、酸化物は立方密充填酸素配列のLiNi1-xMnx2を六方密充填酸素配列のLi2Ni1-xMnx2へと酸素配列様式を変化させながらリチウムイオンが挿入されるものと考えられ、作動電位はリチウム基準で1〜2V程度であると考えられる。本発明の使用方法では、充電終止時の負極の電位がリチウム金属に対して0.8V以上1.2V以下、放電終止時の負極の電位がリチウム金属に対して2.7V以上3.4V以下となるような範囲で使用することが好ましい。なお、この使用方法において、酸化物は、上述したいずれかの態様を採用していてもよい。
【実施例】
【0023】
以下には、本発明の非水系二次電池用負極活物質を具体的に作製した例を実験例として説明する。
(実験例1)
[非水系二次電池用負極活物質の合成]
組成式LiNi0.67Mn0.332で表される負極活物質を以下のように合成した。まず、焼成後の組成がLiNi0.67Mn0.332となるように原料であるNiO、MnO、LiOHを秤量して調製し、遊星型ボールミル(p−6、フリッチュジャパン株式会社)のポットに投入した。次に、ボールミルのジルコニア容器中にジルコニアボールと前駆体を重量比40対1となるように調整して入れ、ジルコニア容器の2/3程度までエタノールを加えて公転回転数200rpm、公自転比を1.25として24時間処理することによりスラリー状の前駆体を作製した。なお、この装置は公転するテーブル上に2個のポットを乗せ、歯車を利用して同時に公転と自転とをさせることで、ポット内のボールに高い遠心力を作用させることができるものである。この遊星型ボールミルによるメカニカルアロイ法では、ナノオーダーで構成元素の混合を制御し得る。このようにして得られたスラリー状の前駆体をロータリーエバポレータ(R−215V、日本ビュッヒ)で濃縮・乾固させ、100℃のオーブン内で一晩乾燥させて前駆体粉末を得た。そして、得られた前駆体粉末を直径2cm、厚さ5mm程度のペレットに加圧成型し、酸化雰囲気下で焼成して実験例1の負極活物質を得た。焼成は、組成により最適焼成温度が異なるものの、電気炉中で800〜1000℃の温度まで一気に昇温し、その温度で混合物を12時間焼成することにより実験例1の非水系二次電池用負極活物質を得た。
【0024】
[X線回折測定]
得られた非水系二次電池用負極活物質について、粉末X線回折測定を行った。測定は放射線としてCuKα線(波長1.54051Å)を使用したX線回折装置(RINT2200,リガク)を用いて行った。X線の単色化にはグラファイトの単結晶モノクロメーターを用い、印加電圧を40kV、電流30mAに設定して測定を行った。また、測定は3°/minの走査速度で行い10°から100°(2θ)の角度範囲で記録した。CuKα線で測定したときの2θ=18〜20°付近に出現する回折ピークが、空間群R3mの六方晶系で帰属したときの(003)回折ピーク、2θ=44〜45°付近に出現する回折ピークが(104)回折ピークである。(003)回折ピークの面積強度I(003)及び(104)回折ピークの面積強度I(104)を算出し、面積強度比I(003)/I(104)を算出した。さらに、各回折ピークの回折角度とミラー指数から最小二乗法を用いて最適化し、遷移金属層間の距離D(Å)を算出した。
【0025】
[二極式評価セルの作製]
作用極は、以下のように作製した。まず上述のように作製した非水系二次電池用負極活物質を85wt%、導電材としてカーボンブラックを5wt%、結着材としてポリフッ化ビニリデンを10wt%混合し、分散材としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加、分散してスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10μm厚の銅箔集電体に均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを得た。この塗布シートを加圧プレス処理し、2.05cm2の面積に打ち抜いて円盤状の電極を準備した。イオン伝導媒体としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比で30:70の割合で混合した非水溶媒に六フッ化リン酸リチウムを1mol/lとなるように添加した非水電解液を用いた。上記負極を作用極とし、リチウム金属箔(厚み300μm)を対極として、両電極の間に上記非水電解液を含浸させたセパレータ(東燃タピルス)を挟んで二極式評価セルを作製した。
【0026】
[充放電試験]
作製した二極式評価セルを用い、20℃の温度環境下、0.1C(0.3mA)で0.9Vまで還元(充電)したのち、0.1Cで3.0Vまで酸化(放電)させた。この充放電操作の1回目の還元容量Q(1st)red、酸化容量Q(1st)oxiを測定し、Rirrev=[Q(1st)red−Q(1st)oxi)/Q(1st)red×100]で表される初期充放電時の不可逆容量割合(%)を算出した。また、この充放電操作を10回繰り返したときの10回目の酸化容量Q(10th)oxiを測定し、Q(1st)oxiに対するQ(10th)oxiの割合Rcyc=[Q(10th)oxi/Q(1st)oxi×100]で表される酸化容量維持率を求めた。
【0027】
[X線吸収微細構造の測定]
得られた非水系二次電池用負極活物質について、X線吸収微細構造を測定し、K吸収端の吸収極大値の吸収量を1としたときに吸収量0.5に相当するX線スペクトルのエネルギーから導き出した形式酸化数を求めた。ここでは、4価のMn(Mn4+)の基準試料としてLi2MnO3、3価のMn(Mn3+)の基準試料として層構造LiMnO2を、3価のNi(Ni3+)の基準試料としてLiCo0.5Ni0.52、2価のNi(Ni2+)およびMn4+の基準試料としてLiCo1/3Ni1/3Mn1/32を用いた。この、X線吸収微細構造の測定は実験例1〜7について行った。なお、遷移金属イオンの酸化数測定方法としてXPSなどの分析手法が用いられる場合があるが、XPSは測定範囲が材料表面に制限されることから材料全体の酸化数を知ることができない。このため、活物質全体の酸化数を調べることが可能なX線吸収微細構造を測定し、K吸収端の吸収極大値の吸収量を1としたときに吸収量0.5に相当するX線スペクトルのエネルギーから酸化数を算出した。
【0028】
(実験例2〜5)
焼成後の組成がLiNi0.75Mn0.252となるように原料を調製した以外は実験例1と同様に実験例2の負極活物質を作製し、評価を行った。また、焼成後の組成がLiNi0.6Mn0.42となるように原料を調製した以外は実験例1と同様に実験例3の負極活物質を作製し、評価を行った。また、焼成後の組成がLiNi0.85Mn0.152となるように原料を調製した以外は実験例1と同様に実験例4の負極活物質を作製し、評価を行った。また、焼成後の組成がLiNi0.9Mn0.12となるように原料を調製した以外は実験例1と同様に実験例5の負極活物質を作製し、評価を行った。
【0029】
(実験例6,7)
焼成後の組成がLiNi0.5Mn0.52となるように原料を調製した以外は実験例1と同様に実験例6の負極活物質を作製し、評価を行った。また、焼成後の組成がLiNiO2となるように原料を調製した以外は実験例1と同様に実験例7の負極活物質を作製し、評価を行った。
【0030】
図2は、実験例1の非水系二次電池用負極活物質のX線回折測定結果である。ここでは、ピーク面積強度比I(003)/I(104)は0.94であった。図3は、実験例1の非水系二次電池用負極活物質の1サイクル目の充放電曲線である。図3より、実験例1の負極活物質は、リチウム基準で0.9V以上3.0V以下の範囲で作動(酸化・還元)可能であり、負極として利用できることが分かった。表1には、実験例1〜7の初期酸化容量、不可逆容量割合、酸化容量維持率を示す。LiNi1-xMnx2(0<x<0.5)で表される実験例1〜5では、LiNiO2で表される実験例7と比較して、初期酸化容量は同程度であるが、不可逆容量割合が小さくなり、酸化容量維持率が大きくなることが分かった。また、LiNi1-xMnx2(0<x<0.5)で表される実験例1〜5では、LiNi0.5Mn0.52で表される実験例6と比較して、初期酸化容量が大きく、不可逆容量割合が小さく、酸化容量が大きくなることが分かった。以上より、非水系二次電池用負極活物質としては、基本組成がLiNi1-xMnx2(0<x<0.5)で表される酸化物であることが好ましいことが分かった。
【0031】
【表1】

【0032】
(実験例8,9)
ボールミル処理の時間を4時間とした(NiとMnの混合が不完全になったと推察される)以外は実験例1と同様に実験例8の負極活物質を作製し、評価を行った。また、ボールミル処理を4時間とした以外は実験例2と同様に実験例9の負極活物質を作製し、評価を行った。
【0033】
図4は、LiNi1-xMnx2のx値と初期酸化(放電)容量との関係を示すグラフである。図5は、LiNi1-xMnx2のx値と不可逆容量割合との関係を示すグラフである。図6は、LiNi1-xMnx2のx値と酸化(放電)容量維持率との関係を示すグラフである。図4,5,6では、ボールミル処理の時間を24時間としたものを○、ボールミル処理の時間を4時間としたものを△で示した。これによれば、特に同一組成の場合には、ボールミル処理時間が24時間と長い方が、初期酸化容量が大きく、初期不可逆容量割合が小さく、酸化容量維持率が大きくなり、好ましいことが分かった。表2には、実験例1,2,8,9の初期酸化容量、初期不可逆容量割合、酸化容量維持率を示す。
【0034】
【表2】

【0035】
図7は、LiNi1-xMnx2のx値とNiのK吸収端のX線スペクトルのエネルギーとの関係を示すグラフである。図8は、LiNi1-xMnx2のx値とMnのK吸収端のX線スペクトルのエネルギーとの関係を示すグラフである。図7,8では、ボールミル処理の時間を24時間としたものを○、ボールミル処理の時間を4時間としたものを△で示した。図7のNi3+ラインのエネルギーはLiCo0.5Ni0.52、Ni2+ラインはLiCo1/3Ni1/3Mn1/32から算出したものであり、図8のMn4+ラインのエネルギーはLi2MnO3およびLiCo1/3Ni1/3Mn1/32、Mn3+ラインは層構造LiMnO2から算出したものである。実験例6のLiNi0.5Mn0.52はNi2+とMn4+の組み合わせからなり、実験例7のLiNiO2はNi3+に加え微少量のNi2+を含んでいた。また、ボールミル処理時間を4時間とし、ニッケルとマンガンの混合が不完全と考えられる実験例8,9では、Ni2+,Ni3+,Mn3+,Mn4+の組み合わせとなった。これに対して、実験例1〜5では、Ni2+,Ni3+,Mn4+の組み合わせとなることが分かった。Ni2+,Ni3+,Mn4+の組み合わせとなる実験例1〜5では、初期酸化容量が大きく、初期不可逆容量割合が小さく、酸化容量維持率が大きいことから、これらの間には対応関係があると推察された。以上より、非水系二次電池用負極活物質としては、基本組成LiNi1-xMnx2(0<x<0.5)で表される酸化物であり、ボールミル処理時間を24時間として酸化物中のNiの価数が2価及び3価でありMnの価数が4価であるものとすることが好ましいことが分かった。なお、組成式LiNi1-xMnx2(0<x<0.5)で表される負極活物質中のNiとMnがNi2+,Ni3+,Mn4+からなる場合、Ni2+が層構造を安定化する役割を果たし、Mn4+が酸化還元反応に寄与するときのNi3+のヤーン・テラー歪みの効果により、立方密充填から六方密充填への酸素配列の変化が促進されるものと推察された。これに対し、結晶格子中でのニッケルとマンガンの混合が不十分な材料はNiとMnがNi2+,Ni3+,Mn3+,Mn4+からなり、格子中でのMn3+の存在により層構造を不安定化させるものと推察された。
【0036】
図9は、LiNi1-xMnx2のx値とピーク面積強度比I(003)/I(104)との関係を示すグラフである。I(003)/I(104)≦1.1を満足する実験例1のLiNi0.67Mn0.332、実験例2のLiNi0.75Mn0.252、実験例3のLiNi0.6Mn0.42では、不可逆容量割合が小さく、初期酸化容量が大きく、優れた充放電挙動を示した(図5,6参照)。また、面積強度比I(003)/I(104)がI(003)/I(104)≦1.1の境界線をまたぐLiNi0.85Mn0.152とLiNi0.75Mn0.252を比較すると、LiNi0.75Mn0.252の組成で急激に充放電挙動が向上することが分かった(図5,6参照)。図10は、LiNi1-xMnx2のx値と遷移金属層間の距離Dとの関係を示すグラフである。D≧4.74を満足する実験例1のLiNi0.67Mn0.332、実験例2のLiNi0.75Mn0.252、実験例3のLiNi0.6Mn0.42では、不可逆容量割合が小さく、酸化容量が大きく、優れた充放電挙動を示した(図5,6参照)。また、D≧4.74の境界線をまたぐLiNi0.85Mn0.152とLiNi0.75Mn0.252を比較すると、LiNi0.75Mn0.252の組成で急激に充放電挙動が向上することが分かった(図5,6参照)。なお、X線回折ピークの面積強度比がI(003)/I(104)≦1.1となるとき、リチウム層に部分的に遷移金属イオンが存在し、これが遷移金属層を支える柱の役割を果たすことにより構造安定性が増ものと推察された。また、このとき、層構造の遷移金属層間の距離がD≧4.74を満たすから立方密充填から六方密充填への酸素配列の変化を阻害しにくいと推察された。表3には、実験例1〜5及び実験例6,7のピーク面積強度比I(003)/I(104)及び、D値を示した。
【0037】
【表3】

【0038】
(実験例10〜12)
Mgをドープし、焼成後の組成がLiNi0.66Mn0.33Mg0.012となるように原料を調製した以外は実験例1と同様に実験例10の負極活物質を作製し、評価を行った。また、焼成後の組成がLiNi0.63Mn0.33Mg0.042となるように原料を調製した以外は実験例10と同様に実験例11の負極活物質を作製し、評価を行った。また、焼成後の組成がLiNi0.57Mn0.33Mg0.102となるように原料を調製した以外は実験例10と同様に実験例12の負極活物質を作製し、評価を行った。
【0039】
(実験例13,14)
焼成後の組成がLiNi0.663Mn0.33Mg0.0072となるように原料を調製した以外は実験例10と同様に実験例13の負極活物質を作製し、評価を行った。また、焼成後の組成がLiNi0.55Mn0.33Mg0.122となるように原料を調製した以外は実験例10と同様に実験例14の負極活物質を作製し、評価を行った。
【0040】
表4には、実験例1,10〜14の初期酸化容量、初期不可逆容量割合、酸化容量維持率を示す。
【0041】
【表4】

【0042】
(実験例15〜17)
Alをドープし、焼成後の組成がLiNi0.665Mn0.325Al0.012となるように原料を調製した以外は実験例1と同様に実験例15の負極活物質を作製し、評価を行った。また、焼成後の組成がLiNi0.65Mn0.31Al0.042となるように原料を調製した以外は実験例15と同様に実験例16の負極活物質を作製し、評価を行った。また、焼成後の組成がLiNi0.62Mn0.28Al0.12となるように原料を調製した以外は実験例15と同様に実験例17の負極活物質を作製し、評価を行った。
【0043】
(実験例18〜19)
焼成後の組成がLiNi0.666Mn0.326Al0.0082となるように原料を調製した以外は実験例17と同様に実験例18の負極活物質を作製し、評価を行った。また、焼成後の組成がLiNi0.61Mn0.27Al0.122となるように原料を調製した以外は実験例17と同様に実験例19の負極活物質を作製し、評価を行った。
【0044】
表5には、実験例1,15〜19の初期酸化容量、初期不可逆容量割合、酸化容量維持率を示す。
【0045】
【表5】

【0046】
(実験例20〜22)
Coをドープし、焼成後の組成がLiNi0.665Mn0.325Co0.012となるように原料を調製した以外は実験例1と同様に実験例20の負極活物質を作製し、評価を行った。また、焼成後の組成がLiNi0.65Mn0.31Co0.042となるように原料を調製した以外は実験例20と同様に実験例21の負極活物質を作製し、評価を行った。また、焼成後の組成がLiNi0.62Mn0.28Co0.12となるように原料を調製した以外は実験例20と同様に実験例22の負極活物質を作製し、評価を行った。
【0047】
(実験例23,24)
焼成後の組成がLiNi0.666Mn0.326Co0.0082となるように原料を調製した以外は実験例20と同様に実験例23の負極活物質を作製し、評価を行った。また、焼成後の組成がLiNi0.61Mn0.27Co0.122となるように原料を調製した以外は実験例20と同様に実験例24の負極活物質を作製し、評価を行った。
【0048】
表6には、実験例1,20〜24の初期酸化容量、初期不可逆容量割合、酸化容量維持率を示す。
【0049】
【表6】

【0050】
表4〜6より、ドープ量が1.0mol%以上10mol%以下のときにMg,Al,Coの全てについてドープの効果が現れることが分かった。具体的には、初期酸化容量(Q(1st)oxi)に変化は見られなかったが、不可逆容量割合(Rirrev)が減少し、かつ容量維持率(Rcyc)が向上することが分かった。なお、上記異種元素ドープについては、結晶格子内でマグネシウムはMg2+としてNi2+と置換、アルミニウムとコバルトはAl3+、Co3+としてNi3+と置換されることにより立方密充填から六方密充填への酸素配列の変化を促進させたものと推察された。
【0051】
全ての実験例において充放電が可能であったものの、実験例6では不可逆容量割合が特に高く、実験例7では容量維持率が特に低くなった。これに対し、実験例8及び9では、実験例6より不可逆容量割合が低く、実験例7より容量維持率が高くなった。さらに、実験例1〜5,10〜24は初期酸化容量、不可逆容量割合、容量維持率のいずれもが良好となり、なかでも実験例10〜12,15〜17,20〜22では不可逆容量割合が減少し、かつ容量維持率が向上した。
【符号の説明】
【0052】
20 コイン型電池、21 電池ケース、22 正極、23 負極、24 セパレータ、25 ガスケット、26 封口板、27 非水電解液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本組成LiNi1-xMnx2(0<x<0.5)で表される非水系二次電池用負極活物質。
【請求項2】
Niの価数が2価及び3価であり、Mnの価数が4価である、請求項1に記載の非水系二次電池用負極活物質。
【請求項3】
前記基本組成におけるNi及びMnの総量の1.0mol%以上10mol%以下をMg,Al,Coのいずれか1以上で置換されている、請求項1又は2に記載の非水系二次電池用負極活物質。
【請求項4】
空間群R3mで仮定した場合のX線回折ピークの(003)面と(104)面とのピーク面積強度比がI(003)/I(104)≦1.1を満たす、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水系二次電池用負極活物質。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の負極活物質を有する負極と、
正極活物質を有する正極と、
正極と負極との間に介在し、イオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えた非水系二次電池。
【請求項6】
基本組成LiNi1-xMnx2(0<x<0.5)で表される酸化物を、非水系二次電池用負極活物質として使用する使用方法。
【請求項7】
前記酸化物は、Niの価数が2価及び3価であり、Mnの価数が4価である、請求項6に記載の使用方法。
【請求項8】
前記酸化物は、前記基本組成におけるNi及びMnの総量の1.0mol%以上10mol%以下をMg,Al,Coのいずれか1以上で置換されている、請求項6又は7に記載の使用方法。
【請求項9】
前記酸化物は、空間群R3mで仮定した場合のX線回折ピークの(003)面と(104)面とのピーク面積強度比がI(003)/I(104)≦1.1を満たす、請求項6〜8のいずれか1項に記載の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−129269(P2011−129269A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284049(P2009−284049)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】