説明

非水電解液二次電池の製造方法

【課題】本発明は、非水電解液二次電池の注液工程を短時間で行う技術を提供することを目的とする。
【解決手段】ケース内に、電極を捲回して構成される捲回体及び非水電解液を収容する非水電解液二次電池を製造する方法であって、前記非水電解液を前記ケース内に注液する際に、前記捲回体の捲回軸方向中央部の温度を捲回軸方向端部の温度よりも低くし、当該捲回体内に圧力差を発生させる。これにより、ケース内に注液される非水電解液に圧力をかけて捲回体中央部への浸透を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の大容量化の要請に伴い、電極(正極および負極)を捲回して構成した捲回体の大型化が進んでいる。その一方で、大型化した捲回体に非水電解液を含浸させる作業工程の長時間化が問題となっている。
【0003】
特許文献1には、真空ポンプ、加圧ポンプ、ガスボンベ及び注液ポンプに連通するチャンバ内で行われる非水電解液二次電池への注液工程が開示されている。
この注液工程は、真空ポンプによってチャンバ内を減圧する第一工程と、ガスボンベから非水電解液に溶解し得る気体を注入する第二工程と、加圧ポンプでチャンバ内を加圧しつつ、注液ポンプから二次電池に注液する第三工程と、真空ポンプで減圧し、第二工程で注入された気体を除去する第四工程とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−335181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のように、真空ポンプで減圧した状態で電解液を注液する場合、注液用の設備が大型になり高コストに繋がるという課題がある。さらには、電池ケースに減圧用のポートが必要になるが、その開口位置に制約がある。このため、密度が高く、含浸に時間のかかる捲回体中央部への浸透時間を短くすることが困難であるという課題がある。
本発明は、捲回体中央部への非水電解液の浸透時間を短縮し、非水電解液二次電池への注液を短時間で行う技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の非水電解液二次電池の製造方法は、ケース内に、電極を捲回して構成される捲回体及び非水電解液を収容する非水電解液二次電池を製造する方法であって、前記非水電解液を前記ケース内に注液する際に、前記捲回体の捲回軸方向中央部の温度を捲回軸方向端部の温度よりも低くし、当該捲回体内に圧力差を発生させる。
【0007】
前記捲回体は、前記電極を捲回した後に扁平状にプレスすることにより構成され、前記捲回した電極を扁平状にプレスして前記捲回体を構成する際に、前記捲回体の捲回軸方向中央部の温度を捲回軸方向端部の温度よりも低くすることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、非水電解液二次電池の注液工程を短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】非水電解液二次電池を示す図である。
【図2】捲回体を示す図である。
【図3】非水電解液を注液する工程を示す図である。
【図4】注液工程における捲回体内での圧力の作用を示す図である。
【図5】捲回体をプレスする工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示すように、非水電解液二次電池1(以下、単に「電池1」)は、捲回体2及び非水電解液を収容するケース3と、ケース3の一面から外方に向けて突出する正極・負極の外部端子4・4とを具備する。捲回体2は、電池1の充放電要素となる電極体であって、電極(正極および負極)を捲回して構成されている。外部端子4・4は、捲回体2の正極側・負極側にそれぞれ接続されている。ケース3において、外部端子4・4が突出する面には、ケース3内に非水電解液を注液するための注液口5が設けられている。
【0011】
図2に示すように、電極材料が塗工された正極箔11及び負極箔12を、セパレータ13を介して積層し、ロール状に捲回する。さらに、正極箔11、負極箔12、セパレータ13をロール状に捲回した状態から、対向する両側からプレスすることによって、これらを扁平状に成形する。このようにして、ケース3の内部空間に応じた形状に成形された捲回体2が製造される。
捲回体2の捲回軸方向両端部には、正極箔11及び負極箔12の前記電極材料が塗工されていない未塗工部が突出しており、その部分において正極箔11及び負極箔12と外部端子4・4とがそれぞれ接続される。
【0012】
図3及び図4に示すように、注液工程では、捲回体2がケース3に収容された状態で、注液口5からケース3内に非水電解液が注液される。ケース3内に注液された非水電解液は、捲回体2の開放端である捲回軸方向端からその中央部に向かって浸透し、捲回体2の内部に含浸する。
【0013】
図3に示すように、注液工程中にケース3内に所定の温度分布が生じるように、ケース3の周囲に温度制御装置20が配置されている。
温度制御装置20は、ケース3を挿入できる深さを有する箱状に構成され、捲回体2の捲回軸方向中央部に相当する部位に冷却装置21、捲回体2の捲回軸方向両端部に相当する部位に加熱装置22・22が内蔵されている。言い換えれば、加熱装置22・22は、捲回体2の開放端近傍に配置されており、冷却装置21は、加熱装置22・22の間に配置されている。
【0014】
冷却装置21は、ケース3の幅広面の表面及び裏面に接する又はケース3の熱を抜熱可能なクーラ(冷却部)を含む。冷却装置21は、捲回体2の捲回軸方向中央部に相当する位置、つまり電池1の外部端子4・4が配置される間の領域に設けられる。
注液工程において、冷却装置21は、捲回体2の中央部の温度が他の部位よりも低くなるように電池1を冷却する。例えば、冷却装置21によって冷却される部分において、捲回体2の温度が10℃から15℃程度となるように冷却装置21の出力等を設定することが好ましい。
【0015】
加熱装置22は、ケース3の幅広面の表面及び裏面に接する又はケース3に熱を伝達可能なヒータ(加熱部)を含む。加熱装置22のヒータは、捲回体2の捲回軸方向端部に相当する位置、つまり電池1の外部端子4・4が配置される部位及びその外側に設けられる。
注液工程において、加熱装置22は、捲回体2の端部の温度が他の部位よりも高くなるように電池1を加熱する。例えば、加熱装置22によって加熱される部分において、捲回体2の温度が70℃から80℃程度となるように加熱装置22の出力等を設定することが好ましい。ただし、この設定温度の上限値は、捲回体2のセパレータ13の温度特性等、電池1の構成要素の特性に応じて設定する必要がある。
【0016】
以上のように、注液工程において、温度制御装置20に収容された電池1は、捲回体2の中央部が冷却装置21によって冷却されるとともに、その両端部が加熱装置22・22によって加熱される。
これにより、ケース3(捲回体2)内に温度分布が生じる。注液工程においてケース3内の体積は一定であるため、図4に示すように、捲回体2内には温度分布に応じた圧力分布が生じる。つまり、捲回体2内では、高温部が高圧、低温部が低圧となり、特に捲回軸方向中央部が低圧となる。従って、ケース3内に注入された非水電解液に圧力が作用し、捲回体2の中央部への含浸が促進される。
このように、注液工程において、温度制御装置20を用いてケース3(捲回体2)内に温度分布を発生させることで、捲回体2の中央部への含浸速度を向上し、注液工程にかかる時間を短縮可能としている。
【0017】
さらに、捲回体2だけでなくケース3内にも温度分布を作ることで、非水電解液がケース3内で対流し、捲回体2への含浸を促進させることができる。
また、電池ケース内を減圧し、ケース内外の圧力差を設ける従来技術と異なり、本実施形態では、ケース3内の捲回体2に温度差を設けて、圧力差を設けている。このため、大きな設備を必要とせず、電池1のケース3を収容し温度分布を付与する温度制御装置20を導入するだけで良く、設備コストの面で有利である。
【0018】
なお、温度制御装置20の形態は、上記のような箱状のものに限らず、電池1のケース3の幅広面の全体を両側から挟み込むことが可能であれば良い。例えば、冷却装置21及び加熱装置22・22を含む平板を二つ組み合わせて、ケース3の幅広面に当接させるなどの形態を採用できる。
また、冷却装置21及び加熱装置22・22の配置は、非水電解液の含浸速度を向上したい部位(捲回体2の捲回軸方向中央部)が低温となり、その他の部位(捲回軸方向端部)が高温となるような温度分布を付与できるものであれば良く、上記の実施形態に限定されない。
【0019】
図5に示すように、捲回体2をプレスする際に用いるプレス装置30は、温度制御装置20と同様の温度調整機能を有する。
すなわち、ロール状に捲回される捲回体2の相対する両側面を押圧し、扁平状にプレス成形するためのプレス装置30は、捲回体2の捲回軸方向中央部分に相当する部位に冷却装置31、捲回体2の捲回軸方向両端部に相当する部位に加熱装置32・32を備える。
【0020】
冷却装置31は、温度制御装置20の冷却装置21と同様に構成され、捲回体2の幅広面の表面及び裏面の熱を抜熱するものである。加熱装置32は、温度制御装置20の加熱装置22と同様に構成され、捲回体2の幅広面の表面及び裏面を加熱するものである。
プレス装置30によって捲回体2をプレスする際に、冷却装置31及び加熱装置32・32によって、捲回体2自体に、注液工程で付与する温度分布と同様の温度分布を付与する。
【0021】
以上のように、注液工程の前工程である捲回体2のプレス工程において、プレス装置30によって捲回体2をプレスするとともに、捲回体2の捲回軸方向に沿って温度分布を付与することによって、注液工程における温度制御装置20による温度分布の付与にかかる時間を短縮することができる。従って、注液工程にかかる時間をさらに短縮できる。
【符号の説明】
【0022】
1:非水電解液二次電池、2:捲回体、3:ケース、20:温度制御装置、21:冷却装置、22:加熱装置、30:プレス装置、31:冷却装置、32:加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に、電極を捲回して構成される捲回体及び非水電解液を収容する非水電解液二次電池を製造する方法であって、
前記非水電解液を前記ケース内に注液する際に、前記捲回体の捲回軸方向中央部の温度を捲回軸方向端部の温度よりも低くし、当該捲回体内に圧力差を発生させることを特徴とする非水電解液二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記捲回体は、前記電極を捲回した後に扁平状にプレスすることにより構成され、
前記捲回した電極を扁平状にプレスして前記捲回体を構成する際に、
前記捲回体の捲回軸方向中央部の温度を捲回軸方向端部の温度よりも低くする請求項1に記載の非水電解液二次電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−110033(P2013−110033A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255583(P2011−255583)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】