説明

非水電解質蓄電デバイス用セパレータ及び非水電解質蓄電デバイス

【課題】改良されたエポキシ樹脂多孔質膜を備えた非水電解質蓄電デバイス用セパレータを提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂多孔質膜の赤外吸収スペクトルの1240cm-1に存在する吸収ピークのピーク強度Ioに対する、無水酢酸処理を施した後の当該エポキシ樹脂多孔質膜の赤外吸収スペクトルの1240cm-1に存在するピークのピーク強度Iの比I/Ioが、1.0以上2.4以下である、非水電解質蓄電デバイス用セパレータとする。比I/Ioの値により、エポキシ樹脂多孔質膜中に存在する活性な水酸基の量を評価することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質蓄電デバイス用セパレータ及び非水電解質蓄電デバイスに関する。本発明は、特に、エポキシ樹脂を用いたセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境保全、化石燃料の枯渇等の諸問題を背景に、リチウムイオン二次電池やリチウムイオンキャパシタなどに代表される非水電解質蓄電デバイスの需要が年々増加している。非水電解質蓄電デバイスのセパレータとして、従来、ポリオレフィン多孔質膜が使用されている。ポリオレフィン多孔質膜は、以下に説明する方法で製造することができる。
【0003】
まず、溶媒とポリオレフィン樹脂とを混合及び加熱してポリオレフィン溶液を調製する。Tダイ等の金型を用い、ポリオレフィン溶液をシート形状に成形しながら吐出及び冷却し、シート状の成形体を得る。シート状の成形体を延伸するとともに、成形体から溶媒を除去する。これにより、ポリオレフィン多孔質膜が得られる。成形体から溶媒を除去する工程で、有機溶剤が使用される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−192487号公報
【特許文献2】特開2000−30683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記製造方法において、有機溶剤として、ジクロロメタンのようなハロゲン化有機化合物を使用することが多い。ハロゲン化有機化合物の使用は、環境に対する負荷が非常に大きいので問題となっている。
【0006】
他方、特許文献2に記載されている方法(いわゆる乾式法)によれば、環境に対する負荷が大きい溶剤を使用せずにポリオレフィン多孔質膜を製造することができる。しかし、この方法には、多孔質膜の孔径を制御するのが難しい問題がある。また、この方法で製造された多孔質膜をセパレータとして用いると、蓄電デバイスの内部でイオン透過の偏りが発生しやすい問題もある。
【0007】
エポキシ樹脂多孔質膜は、ハロゲンフリーの溶剤を用いてエポキシ樹脂シートからポロゲンを除去することにより製造することができる。また、ポロゲンの含有量及び種類によって、空孔率及び孔径等のパラメータも比較的容易に制御しうる。しかし、これまで、エポキシ樹脂多孔質膜は、非水電解質蓄電デバイス用セパレータとしては特性面においてポリオレフィン多孔質膜に劣るものとみなされてきた。比較例として後述するとおり、本発明者による当初の検討においても、エポキシ樹脂多孔質膜をセパレータとして用いた蓄電デバイスは、十分な充放電特性を発揮するものとはならなかった。
【0008】
本発明の目的は、改良されたエポキシ樹脂多孔質膜を備えた非水電解質蓄電デバイス用セパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、
エポキシ樹脂多孔質膜を備えた非水電解質蓄電デバイス用セパレータであって、
前記エポキシ樹脂多孔質膜の赤外吸収スペクトルの1240cm-1に存在する吸収ピークのピーク強度Ioに対する、無水酢酸処理を施した後の当該エポキシ樹脂多孔質膜の赤外吸収スペクトルの1240cm-1に存在するピークのピーク強度Iの比I/Ioが、1.0以上2.4以下である、非水電解質蓄電デバイス用セパレータを提供する。
【0010】
ここで、無水酢酸処理とは、エポキシ樹脂多孔質膜を、20℃の無水酢酸に10分間浸漬させた後、23℃のチャンバー内で風乾させ、さらに70℃のオーブン内で10分間加熱することにより実施する処理である。
【0011】
別の側面から、本発明は、カソードと、アノードと、
前記カソードと前記アノードとの間に配置された、本発明によるセパレータと、イオン伝導性を有する電解質と、を備えた、非水電解質蓄電デバイスを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エポキシ樹脂多孔質膜を備えた非水電解質蓄電デバイス用セパレータを、非水電解質蓄電デバイスの充放電特性の向上に適するように改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電デバイスの概略断面図
【図2A】無水酢酸処理に伴うエポキシ樹脂多孔質膜の赤外吸収スペクトルの変化の一例を示す図(比較例3)
【図2B】図2Aの部分拡大図
【図2C】図2Aの部分拡大図
【図3A】無水酢酸処理に伴うエポキシ樹脂多孔質膜の赤外吸収スペクトルの変化の一例を示す図(実施例1)
【図3B】図3Aの部分拡大図
【図3C】図3Aの部分拡大図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の一実施形態を説明する。なお、以下において、常温とは、5℃〜35℃の温度範囲を意味する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る非水電解質蓄電デバイス100は、カソード2、アノード3、セパレータ4及びケース5を備えている。セパレータ4は、カソード2とアノード3との間に配置されている。カソード2、アノード3及びセパレータ4は、一体的に巻回されて発電要素としての電極群10を構成している。電極群10は、底部を有するケース5に収容されている。蓄電デバイス100は、典型的には、リチウムイオン二次電池である。
【0016】
本実施形態において、ケース5は円筒の形状を有している。すなわち、蓄電デバイス100は円筒の形状を有している。しかし、蓄電デバイス100の形状は特に限定されない。蓄電デバイス100は、例えば、扁平な角型の形状を有していてもよい。また、電極群10は巻回構造を必須としない。カソード2、セパレータ4及びアノード3が単に積層されることによって、板状の電極群が形成されていてもよい。ケース5は、ステンレス、アルミニウム等の金属で作られている。さらに、電極群10が可撓性を有する材料で作られたケースに入れられていてもよい。可撓性を有する材料は、例えば、アルミニウム箔と、アルミニウム箔の両面に貼り合わされた樹脂フィルムとで構成されている。
【0017】
蓄電デバイス100は、さらに、カソードリード2a、アノードリード3a、蓋体6、パッキン9及び2つの絶縁板8を備えている。蓋体6は、パッキン9を介してケース5の開口部に固定されている。2つの絶縁板8は、電極群10の上部と下部とにそれぞれ配置されている。カソードリード2aは、カソード2に電気的に接続された一端と、蓋体6に電気的に接続された他端とを有する。アノードリード3aは、アノード3に電気的に接続された一端と、ケース5の底部に電気的に接続された他端とを有する。蓄電デバイス100の内部にはイオン伝導性を有する非水電解質(典型的には非水電解液)が充填されている。非水電解質は、電極群10に含浸されている。これにより、セパレータ4を通じて、カソード2とアノード3との間でイオン(典型的にはリチウムイオン)の移動が可能となっている。
【0018】
カソード2は、例えば、リチウムイオンを吸蔵及び放出しうるカソード活物質と、バインダーと、集電体とで構成されうる。例えば、バインダーを含む溶液にカソード活物質を混合して合剤を調製し、この合剤をカソード集電体に塗布及び乾燥させることによってカソード2を作製できる。
【0019】
カソード活物質としては、例えば、リチウムイオン二次電池のカソード活物質として用いられている公知の材料を使用できる。具体的には、リチウム含有遷移金属酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化物、カルコゲン化合物等をカソード活物質として使用できる。リチウム含有遷移金属酸化物としては、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、それらの遷移金属の一部が他の金属で置換された化合物が挙げられる。リチウム含有遷移金属リン酸化物としては、LiFePO4、LiFePO4の遷移金属(Fe)の一部が他の金属で置換された化合物が挙げられる。カルコゲン化合物としては、二硫化チタン、二硫化モリブデンが挙げられる。
【0020】
バインダーとしては、公知の樹脂を使用できる。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ヘキサフロロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンターポリマー等の炭化水素系樹脂、それらの混合物をバインダーとして使用できる。導電助剤として、カーボンブラック等の導電性粉末がカソード2に含まれていてもよい。
【0021】
カソード集電体としては、耐酸化性に優れた金属材料、例えば箔状又はメッシュ状に加工されたアルミニウムが好適に用いられる。
【0022】
アノード3は、例えば、リチウムイオンを吸蔵及び放出しうるアノード活物質と、バインダーと、集電体とで構成されうる。アノード3も、カソード2と同様の方法で作製できる。カソード2で用いたバインダーと同様のものをアノード3に使用できる。
【0023】
アノード活物質としては、例えば、リチウムイオン二次電池のアノード活物質として用いられている公知の材料を使用できる。具体的には、炭素系活物質、リチウムと合金を形成しうる合金系活物質、リチウムチタン複合酸化物(例えばLi4Ti512)等をアノード活物質として使用できる。炭素系活物質としては、コークス、ピッチ、フェノール樹脂、ポリイミド、セルロース等の焼成体、人造黒鉛、天然黒鉛等が挙げられる。合金系活物質としては、アルミニウム、スズ、スズ化合物、シリコン、シリコン化合物等が挙げられる。
【0024】
アノード集電体としては、例えば、還元安定性に優れた金属材料、例えば箔状又はメッシュ状に加工された銅又は銅合金が好適に用いられる。リチウムチタン複合酸化物等の高電位アノード活物質を用いる場合には、箔状又はメッシュ状に加工されたアルミニウムもアノード集電体として使用できる。
【0025】
非水電解液は、典型的には、非水溶媒及び電解質を含んでいる。具体的には、例えば、リチウム塩(電解質)を非水溶媒に溶解させた電解液を好適に使用できる。また、非水電解液を含むゲル電解質、リチウム塩をポリエチレンオキシド等のポリマーに溶解及び分解させた固体電解質等も非水電解質として使用できる。リチウム塩としては、ホウ四フッ化リチウム(LiBF4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、トリフロロスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)等が挙げられる。非水
溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、これらの混合物等が挙げられる。
【0026】
次に、セパレータ4について詳しく説明する。
【0027】
本実施形態において、セパレータ4は、三次元網目状骨格と、空孔とを備えたエポキシ樹脂多孔質膜で構成されている。セパレータ4の表面と裏面との間でイオンが移動できるように、つまり、カソード2とアノード3との間をイオンが移動できるように、隣り合う空孔は互いに連通していてもよい。
【0028】
セパレータ4を構成するエポキシ樹脂多孔質膜の赤外吸収スペクトル(IRスペクトル)の1240cm−1に存在するピーク強度の無水酢酸処理による変化の程度は、従来よりも抑制されている。具体的には、無水酢酸処理前のピーク強度Ioに対する無水酢酸処理後のピーク強度Iの比I/Ioが1.0以上2.4以下、好ましくは1.0以上1.6以下、の範囲にある。
【0029】
図2A〜図2Cとして、エポキシ樹脂多孔質膜のIRスペクトルの変化の一例を示す。このIRスペクトルは、後述する比較例3において測定したものである。IRスペクトルの1240cm-1付近における吸収ピークはC−O−C結合による吸収に由来し、1740cm-1付近における吸収ピークはC=O結合による吸収に由来する(図2B)。また、3300〜3500cm-1付近における吸収ピークはOH結合による吸収に由来する(図2C)。なお、当業者には明らかな事項であるが、C−O−C結合に由来する吸収ピークの頂点は、厳密に1240cm-1に現れるとは限らない。本明細書における「1240cm-1に存在するピーク」は、頂点が1240cm-1に存在するピークのみではなく中腹が1240cm-1に存在するピークも包含される。
【0030】
無水酢酸処理後、C−O−C結合及びC=O結合による吸収ピークは大きくなり、OH結合による吸収ピークは小さくなる。これは、エポキシ樹脂多孔質膜中に存在するアルコール性の水酸基(C−OH)と無水酢酸((CH3COO)2O)とが反応し、カルボン酸エステル結合(酢酸エステル:C−O−C(=O)−CH3)が生成したことを意味している。したがって、無水酢酸処理による吸収ピークの変化が顕著であればあるほど、エポキシ樹脂多孔質膜には反応に関与しうる水酸基が多く含まれていることになる。以下、反応に関与しうる水酸基を「活性水酸基」ということがある。この意味において、例えば樹脂中に埋もれていて反応種と接触できない水酸基は不活性である。
【0031】
実験の結果、活性水酸基の量が少ないエポキシ樹脂多孔質膜、言い換えると無水酢酸処理を施しても上述の各ピークが大きく変化しないエポキシ樹脂多孔質膜、を非水電解質蓄電デバイス用セパレータとして使用すると、従来のエポキシ樹脂多孔質膜をセパレータとして用いた場合よりも、非水電解質蓄電デバイスの特性が向上することが見出された。図3A〜図3Cとして、エポキシ樹脂多孔質膜のIRスペクトルの変化の別の一例を示す。このIRスペクトルは、後述する実施例1において測定したものである。図2A〜図2Cと比較すると、このIRスペクトルにおけるC−O−C結合、C=O結合及びOH結合による吸収ピークの変化の程度が抑制されていることが理解できる。
【0032】
活性水酸基の量は、水酸基に由来する吸収ピークの変化により直接評価することも考えられるが、この吸収ピークが存在する波長域の吸収スペクトルのベースラインはエポキシ樹脂多孔質膜に含まれる孔による散乱の影響を受けやすい。このため、この吸収ピークを用いて水酸基の量を評価するためには、無水酢酸処理による孔の状態の変化による影響を排除することが必要となる。C=O結合による吸収ピークも孔による散乱の影響を受けることがある。これらを考慮すると、活性水酸基の量は、C−O−C結合に由来する1240cm-1のピークにより評価することがより適切である。実施例の欄に示すように、C−O−C結合に由来する吸収ピークの強度比I/Ioを低くしていくと、2.4付近を境界として、非水電解質蓄電デバイスの放電効率が大きく向上することが見出された。
【0033】
アミン系の硬化剤を用いた場合、硬化反応が十分に進行すると、硬化剤は、3級アミンとしてエポキシ樹脂の分子鎖中に取り込まれる。しかし、硬化反応が十分に進行しないと、アミン系の硬化剤は、2級アミンとしてエポキシ樹脂多孔質膜に残存する。この2級アミンも、活性水酸基と同様、エポキシ樹脂多孔質膜内に活性な反応点を形成し得る。しかし、無水酢酸処理を実施すると、2級アミン(−NH−)は、無水酢酸と反応して3級アミン(−NM−;ここで、Mは−C(=O)R)へと変化し、カルボン酸アミド結合が生成する。カルボン酸アミド結合は、一般式:N−C(=O)−Rにより示される。この結合に含まれるC−N結合は、1240cm-1近傍に吸収を有する。従って、この観点からも、1240cm-1に存在するピークに基づいてエポキシ樹脂多孔質膜を評価することは妥当と考えられる。1240cm-1に存在する吸収ピークによる評価は、基本的には活性水酸基の量を推定するためのものであるが、エポキシ樹脂の硬化反応が不十分であって2級アミンが相当量存在するエポキシ樹脂多孔質膜については、反応に関与しうる2級アミン(活性2級アミン)の量も併せて評価するものとして利用できる。
【0034】
なお、硬化剤に由来する2級アミンがすべて3級アミンに変化する程度にまで硬化が進行したとしても、エポキシ基の開環により生成した水酸基はエポキシ樹脂多孔質膜に残存し得る。これを考慮し、以下では、エポキシ樹脂多孔質膜に残る活性な官能基として、主として活性水酸基を挙げつつ説明を続けるが、上記で述べたように、エポキシ樹脂多孔質膜には活性2級アミンも含まれていることがある。また、以下では、無水酢酸処理を、主として、活性水酸基の量を評価するための処理として記述するが、正確に述べると、無水酢酸処理は、活性水酸基とともに活性2級アミンの量を評価することを可能にするための処理である。
【0035】
エポキシ樹脂多孔質膜に含まれる活性水酸基の量(より正確に言うと全水酸基量に占める活性水酸基量の比率)は、エポキシ樹脂多孔質膜の比表面積に影響される。実験の結果、エポキシ樹脂多孔質膜の比表面積は、エポキシ樹脂組成物を調製するために撹拌しているときの溶液の温度が高くなるにつれて大きくなる傾向があることが確認された。従って、エポキシ樹脂組成物の調製は、撹拌時の溶液温度が高くなりすぎないように抑えながら、具体的には撹拌時の溶液温度を65℃未満、さらには60℃未満、に保ちながら、実施することが好ましい。他方、撹拌時の溶液温度が低すぎる場合には、エポキシ樹脂の硬化反応が十分に進行せず、架橋構造も未発達となる。架橋が十分に形成されていないと、エポキシ樹脂多孔質膜において水酸基が活性水酸基として露出しやすくなり、2級アミンの量も多くなる。従って、溶液温度は、30℃以上、さらには33℃以上、特に35℃以上、が好ましい。
【0036】
エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(プレポリマー)、硬化剤及びポロゲン(細孔形成剤)を混合した溶液を撹拌することにより調製される。この際、エポキシ樹脂と硬化剤との反応による発熱が溶液の温度を上昇させる。溶液温度の上昇を抑制するための有効な手法の一つは、硬化剤を2回に分けて添加することである。より具体的には、エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂とポロゲンと硬化剤の一部とを含む溶液を撹拌する工程Aと、前記溶液に硬化剤の別の一部を添加し、さらに溶液を撹拌する工程Bとを具備する方法により調製することが好ましい。工程Bは2回以上実施してもよく、最後の工程Bでは添加するべき硬化剤の残部すべてが溶液に添加される。
【0037】
エポキシ樹脂多孔質膜に含まれる活性水酸基の量は、エポキシ樹脂組成物の撹拌速度等にも影響を受ける。製造効率の向上に反することにはなるが、エポキシ樹脂組成物の調製に際しては、撹拌装置による撹拌速度(具体的には撹拌のための単位時間あたりの回転数)を抑えながら長い時間をかけて各成分を混合することが好ましい。好ましい撹拌速度(撹拌装置の回転数)及び撹拌時間は、撹拌装置の種類、撹拌するべき溶液の量、エポキシ樹脂と硬化剤との反応性等によって相違するため、一律に記述することには困難がある。撹拌の際の溶液の温度上昇の程度が不明である場合には、適宜温度を測定しながら撹拌を実施するか、あるいは予め試験によって溶液温度が所定値(例えば60℃)以上に上昇しない撹拌条件を把握してから、撹拌を実施するとよい。
【0038】
エポキシ樹脂多孔質膜に含まれる活性水酸基の量を決定する要因は複合的であるため、その量を減少させる具体的方法を単純に一般化して記述することには限界がある。例えば、後述する実施例からも理解できるように、活性水酸基の量は撹拌時の溶液温度のみによって定まるわけではない。活性水酸基の量に影響を与える要因には、上述の溶液温度等に加え、エポキシ樹脂のエポキシ当量、エポキシ樹脂組成物についてのω(ωについては後述する)、エポキシ樹脂と硬化剤との反応性、エポキシ当量と硬化剤との当量比率等も含まれる。これら要因をどのように定めるかについては後述する実施例が有用な指針となる。また、何らかの理由によりこれら要因を実施例から読み取れる好適な範囲に定めることが困難である場合には、以下の方法を採用することにより、活性水酸基の量が低下したエポキシ樹脂多孔質膜を得ることができる。
【0039】
エポキシ樹脂多孔質膜に含まれる活性水酸基を減少させる確実な方法は、エポキシ樹脂多孔質膜又はエポキシ樹脂シートをカルボン酸又はその誘導体で予め処理しておく(前処理しておく)ことである。具体的には、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物及びカルボン酸ハライドから選ばれる少なくとも1つの化合物にエポキシ樹脂多孔質膜又はエポキシ樹脂シートを接触させることにより、エポキシ樹脂多孔質膜に含まれる水酸基又はエポキシ樹脂シートを構成するエポキシ樹脂組成物の硬化体に含まれる水酸基と前記化合物とを反応させてカルボン酸エステル結合を生成させることが好ましい。エポキシ樹脂多孔質膜又はエポキシ樹脂シートに2級アミンが含まれている場合には、2級アミンと前記化合物との接触により、カルボン酸アミド結合が生成し得る。カルボン酸等を用いて前処理する場合、撹拌時の溶液温度を上述の範囲(65℃未満)に制御する必要はない。この場合、撹拌時の溶液温度は例えば120℃未満、好ましくは100℃未満である。
【0040】
カルボン酸又はその誘導体(R−C(=O)−X)を用いて、エポキシ樹脂多孔質膜又はエポキシ樹脂シート中の水酸基(C−OH)をカルボン酸エステル結合(C−O−C(=O)−R)に変化させることにより、エポキシ樹脂多孔質膜の活性水酸基の量は確実に減少する。また、2級アミンを3級アミンに変化させることにより、活性2級アミンの量は確実に減少する。ここで、カルボン酸エステル結合(C−O−C(=O)−R)及びカルボン酸アミド結合(N−C(=O)−R)の左端の炭素原子及び窒素原子はエポキシ樹脂の分子鎖に含まれる原子であり、右端のRはカルボン酸等の有機残基である。図2A〜図2Cから容易に理解できるとおり、予めこれらの活性な官能基をエステル化又はアミド化しておくことにより、無水酢酸処理前後における1240cm-1の吸収ピークについての強度比I/Ioは減少して1.0に近づく。上述の無水酢酸処理と同様の処理を前処理として実施しておくことも可能である。なお、上記では、エポキシ樹脂に取り込まれた硬化剤に残る活性なアミンが2級アミンである典型的な例を示したが、膜に取り込まれた硬化剤に1級アミンが残存する場合もある。従って、より正確に述べると、カルボン酸アミド結合は、膜に残存する活性1級アミン又は活性2級アミンと無水酢酸とが反応して生成する。
【0041】
上記のカルボン酸エステル結合は、その生成過程から明らかなように、エポキシ樹脂を構成する主鎖から分岐した分岐鎖(−O−C(=O)−R)を構成する。また、カルボン酸アミド結合は、エポキシ樹脂を構成する主鎖から分岐した分岐鎖(−C(=O)−R)を構成する。本発明によるエポキシ樹脂多孔質膜の好ましい一例は、該多孔質膜を構成するエポキシ樹脂が、主鎖中の炭素原子と同原子からの分岐鎖とから構成されるカルボン酸エステル結合、及び/又は主鎖中の窒素原子と同原子からの分岐鎖とから構成されるカルボン酸アミド結合を含むと共に、強度比I/Ioとして1.0〜2.4、場合によっては1.0を示す。
【0042】
ここで、カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸等の脂肪族モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、トリル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸等の脂肪族又は芳香族のジカルボン酸を例示できる。カルボン酸塩としては、上記に例示したカルボン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩を挙げることができる。カルボン酸無水物としては、上記に例示したカルボン酸の無水物、例えば無水酢酸、無水フタル酸、を挙げることができる。カルボン酸ハライドとしては、上記に例示したカルボン酸のハロゲン化物、具体的にはカルボン酸フッ化物、カルボン酸塩化物、カルボン酸臭化物、カルボン酸ヨウ化物を挙げることができる。
【0043】
セパレータ4は、例えば、5〜50μmの範囲の厚さを有する。セパレータ4が厚すぎると、カソード2とアノード3との間のイオンの移動が困難となる。5μm未満の厚さのセパレータ4を製造することは不可能ではないが、蓄電デバイス100の信頼性を確保するうえで、5μm以上、特に10μm以上の厚さが好ましい。
【0044】
セパレータ4は、例えば、20〜80%の範囲の空孔率を有し、0.02〜1μmの範囲の平均孔径を有する。空孔率及び平均孔径がこのような範囲に調節されていると、セパレータ4は、必要とされる機能を十分に発揮しうる。
【0045】
空孔率は、以下の方法で測定できる。まず、測定対象を一定の寸法(例えば、直径6cmの円形)に切断し、その体積及び重量を求める。得られた結果を次式に代入して空孔率を算出する。
空孔率(%)=100×(V−(W/D))/V
V:体積(cm3
W:重量(g)
D:構成成分の平均密度(g/cm3
【0046】
平均孔径は、走査型電子顕微鏡でセパレータ4の断面を観察して求めることができる。具体的には、視野幅60μm、かつ表面から所定の深さ(例えば、セパレータ4の厚さの1/5〜1/100)までの範囲内に存在する空孔のそれぞれについて、画像処理を行って孔径を求め、それらの平均値を平均孔径として求めることができる。画像処理は、例えば、フリーソフト「Image J」又はAdobe社製「Photoshop」を使用して行える。
【0047】
また、セパレータ4は、1〜1000秒/100cm3、特に10〜1000秒/100cm3、の範囲の通気度(ガーレー値)を有していてもよい。セパレータ4がこのような範囲に通気度を有していることにより、カソード2とアノード3との間をイオンが容易に移動しうる。通気度は、日本工業規格(JIS)P8117に規定された方法に従って測定できる。
【0048】
エポキシ樹脂多孔質膜は、例えば、下記(a)(b)及び(c)のいずれかの方法で製造することができる。方法(a)及び(b)は、エポキシ樹脂組成物をシート状に成形した後で硬化工程を実施する点で共通している。方法(c)は、エポキシ樹脂のブロック状の硬化体を作り、その硬化体をシート状に成形することを特徴としている。
【0049】
方法(a)
エポキシ樹脂組成物のシート状成形体が得られるように、エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物を基板上に塗布する。その後、エポキシ樹脂組成物のシート状成形体を加熱してエポキシ樹脂を三次元架橋させる。その際、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとの相分離により共連続構造が形成される。その後、得られたエポキシ樹脂シートからポロゲンを洗浄によって除去し、乾燥させることにより、三次元網目状骨格と連通する空孔とを有するエポキシ樹脂多孔質膜が得られる。基板の種類は特に限定されず、プラスチック基板、ガラス基板、金属板等を基板として使用できる。
【0050】
方法(b)
エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物を基板上に塗布する。その後、塗布したエポキシ樹脂組成物の上に別の基板を被せてサンドイッチ構造体を作製する。なお、基板と基板との間に一定の間隔を確保するために、基板の四隅にスペーサー(例えば、両面テープ)を設けてもよい。次に、サンドイッチ構造体を加熱してエポキシ樹脂を三次元架橋させる。その際、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとの相分離により共連続構造が形成される。その後、得られたエポキシ樹脂シートを取り出し、ポロゲンを洗浄によって除去し、乾燥させることにより、三次元網目状骨格と連通する空孔とを有するエポキシ樹脂多孔質膜が得られる。基板の種類は特に制限されず、プラスチック基板、ガラス基板、金属板等を基板として使用できる。特に、ガラス基板を好適に使用できる。
【0051】
方法(c)
エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含むエポキシ樹脂組成物を所定形状の金型内に充填する。その後、エポキシ樹脂を三次元架橋させることによって、円筒状又は円柱状のエポキシ樹脂組成物の硬化体を作製する。その際、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとの相分離により共連続構造が形成される。その後、エポキシ樹脂組成物の硬化体を円筒軸又は円柱軸を中心に回転させながら、硬化体の表層部を所定の厚さに切削して長尺状のエポキシ樹脂シートを作製する。そして、エポキシ樹脂シートに含まれたポロゲンを洗浄によって除去し、乾燥させることにより、三次元網目状骨格と連通する空孔とを有するエポキシ樹脂多孔質膜が得られる。
【0052】
以下、方法(c)を例として取り上げつつ、エポキシ樹脂多孔質膜の製造方法についてさらに詳細に説明する。なお、エポキシ樹脂組成物を調製する工程、エポキシ樹脂を硬化させる工程、ポロゲンを除去する工程等は、各方法に共通している。また、使用できる材料も各方法に共通である。
【0053】
方法(c)によれば、エポキシ樹脂多孔質膜は、以下の主要な工程を経て製造される。
(i)エポキシ樹脂組成物を調製する。
(ii)エポキシ樹脂組成物の硬化体をシート状に成形する。
(iii)エポキシ樹脂シートからポロゲンを除去する。
【0054】
まず、エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲン(細孔形成剤)を含むエポキシ樹脂組成物を調製する。具体的には、エポキシ樹脂及び硬化剤をポロゲンに溶解させて均一な溶液を調製する。ただし、上記のとおり、これらを一度に混合すると溶液の温度が過度に上昇する場合には、硬化剤は少なくとも2回に分けて添加するとよい。また、溶液の撹拌は、撹拌による温度上昇を考慮して十分な時間をかけて実施することが好ましい。
【0055】
エポキシ樹脂としては、芳香族エポキシ樹脂及び非芳香族エポキシ樹脂のいずれも使用可能である。芳香族エポキシ樹脂としては、ポリフェニルベースエポキシ樹脂、フルオレン環を含むエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂、複素芳香環(例えば、トリアジン環)を含むエポキシ樹脂等が挙げられる。ポリフェニルベースエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタンベースエポキシ樹脂等が挙げられる。非芳香族エポキシ樹脂としては、脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フルオレン環を含むエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートを含むエポキシ樹脂、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルアミン型エポキシ樹脂及び脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つが好適であり、これらの中でも6000以下のエポキシ当量及び170℃以下の融点を有するものを好適に使用できる。これらのエポキシ樹脂を使用すると、均一な三次元網目状骨格及び均一な空孔を形成できるとともに、エポキシ樹脂多孔質膜に優れた耐薬品性及び高い強度を付与できる。
【0057】
非水電解質蓄電デバイス用セパレータとして用いるエポキシ樹脂としては、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂及び脂環族グリシジルアミン型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つが好ましい。
【0058】
硬化剤としては、芳香族硬化剤及び非芳香族硬化剤のいずれも使用可能である。芳香族硬化剤としては、芳香族アミン(例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルベンゼン)、芳香族酸無水物(例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸)、フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、複素芳香環を含むアミン(例えば、トリアジン環を含むアミン)等が挙げられる。非芳香族硬化剤としては、脂肪族アミン類(例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン、ポリメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン)、脂環族アミン類(例えば、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、これらの変性品)、ポリアミン類とダイマー酸とを含む脂肪族ポリアミドアミン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
これらの中でも、分子内に一級アミンを2つ以上有する硬化剤を好適に使用できる。具体的には、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ポリメチレンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン及びビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンからなる群より選ばれる少なくとも1つを好適に使用できる。これらの硬化剤を使用すると、均一な三次元網目状骨格及び均一な空孔を形成できるとともに、エポキシ樹脂多孔質膜に高い強度及び適切な弾性を付与できる。
【0060】
エポキシ樹脂と硬化剤との組み合わせとしては、芳香族エポキシ樹脂と脂肪族アミン硬化剤との組み合わせ、芳香族エポキシ樹脂と脂環族アミン硬化剤との組み合わせ、又は脂環族エポキシ樹脂と芳香族アミン硬化剤との組み合わせが好ましい。これらの組み合わせにより、エポキシ樹脂多孔質膜に優れた耐熱性を付与できる。
【0061】
ポロゲンは、エポキシ樹脂及び硬化剤を溶かすことができる溶剤でありうる。ポロゲンは、また、エポキシ樹脂と硬化剤とが重合した後、反応誘起相分離を生じさせることができる溶剤として使用される。具体的には、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンジメチルエーテル等のエーテル類をポロゲンとして使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
これらの中でも、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、分子量600以下のポリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル及びポリオキシエチレンジメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1つを好適に使用できる。特に、分子量200以下のポリエチレングリコール、分子量500以下のポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群より選ばれる少なくとも1つを好適に使用できる。これらのポロゲンを使用すると、均一な三次元網目状骨格及び均一な空孔を形成できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
また、個々のエポキシ樹脂又は硬化剤と常温で不溶又は難溶であっても、エポキシ樹脂と硬化剤との反応物が可溶となる溶剤についてはポロゲンとして使用可能である。このようなポロゲンとしては、例えば、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「エピコート5058」)が挙げられる。
【0064】
エポキシ樹脂多孔質膜の空孔率、平均孔径及び孔径分布は、原料の種類、原料の配合比率及び反応条件(例えば、反応誘起相分離時における加熱温度及び加熱時間)に応じて変化する。そのため、目的とする空孔率、平均孔径、孔径分布を得るために、最適な条件を選択することが好ましい。また、相分離時におけるエポキシ樹脂架橋体の分子量、分子量分布、溶液の粘度、架橋反応速度等を制御することにより、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとの共連続構造を特定の状態で固定し、安定した多孔質構造を得ることができる。
【0065】
エポキシ樹脂に対する硬化剤の配合比率は、例えば、エポキシ基1当量に対して硬化剤当量が0.6〜1.5である。適切な硬化剤当量は、エポキシ樹脂多孔質膜の耐熱性、化学的耐久性、力学特性等の特性の向上に寄与する。
【0066】
硬化剤の他に、目的とする多孔質構造を得るために、溶液中に硬化促進剤を添加してもよい。硬化促進剤としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の3級アミン、2−フェノール−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェノール−4,5−ジヒドロキシイミダゾール等のイミダゾール類が挙げられる。
【0067】
エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンの総重量に対して、一般には、40〜80重量%のポロゲンを使用することができる。
【0068】
ただし、非水電解質蓄電デバイスのセパレータとしての用途では、エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンの総重量に対するエポキシ樹脂及び硬化剤の重量の合計の比率をω%と表示したときに、ωが30〜50%の範囲となるように、エポキシ樹脂組成物を調製することが好ましい。ωを好ましい範囲に調整することにより、反応温度を組成の面から調整することが容易となり、空孔率、孔径、比表面積等の膜物性及び構造を好ましい範囲に調整することができる。
【0069】
エポキシ樹脂多孔質膜の平均孔径を所望の範囲に調節する方法の1つとして、エポキシ当量の異なる2種以上のエポキシ樹脂を混合して用いる方法が挙げられる。その際、エポキシ当量の差は100以上であることが好ましく、常温で液状のエポキシ樹脂と常温で固形のエポキシ樹脂とを混合して用いる場合もある。
【0070】
次に、エポキシ樹脂、硬化剤及びポロゲンを含む溶液からエポキシ樹脂組成物の硬化体を作製する。具体的には、溶液を金型に充填し、必要に応じて加熱する。エポキシ樹脂を三次元架橋させることによって、所定の形状を有する硬化体が得られる。その際、エポキシ樹脂架橋体とポロゲンとが相分離することにより、共連続構造が形成される。
【0071】
硬化体の形状は特に限定されない。円柱状又は円筒状の金型を使用すれば、円筒又は円柱の形状を有する硬化体を得ることができる。硬化体が円筒又は円柱の形状を有していると切削工程を実施しやすい。
【0072】
硬化体の寸法は特に限定されない。硬化体が円筒又は円柱の形状を有している場合、エポキシ樹脂多孔質膜の製造効率の観点から、硬化体の直径は、例えば20cm以上であり、好ましくは30〜150cmである。硬化体の長さ(軸方向)も、得るべきエポキシ樹脂多孔質膜の寸法を考慮して適宜設定することができる。硬化体の長さは、例えば20〜200cmであり、取扱いやすさの観点から20〜150cmであることが好ましく、20〜120cmであることがより好ましい。
【0073】
次に、硬化体をシート状に成形する。円筒又は円柱の形状を有する硬化体は、以下の方法でシート状に成形されうる。具体的には、硬化体をシャフトに取り付け、長尺の形状を有するエポキシ樹脂シートが得られるように、切削刃(スライサー)を用いて、硬化体の側面の表層部を所定の厚さで切削(スライス)する。詳細には、硬化体の円筒軸O(又は円柱軸)を中心として、切削刃に対して硬化体を相対的に回転させながら硬化体の表層部を切削する。この方法によれば、効率的にエポキシ樹脂シートを作製することができる。
【0074】
硬化体を切削するときのライン速度は、例えば2〜70m/minの範囲にある。エポキシ樹脂シートの厚さは、エポキシ樹脂多孔質膜の目標厚さ(10〜50μm)に応じて決定される。ポロゲンを除去して乾燥させると厚さが若干減少するので、エポキシ樹脂シートは、通常、エポキシ樹脂多孔質膜の目標厚さよりも若干厚い。エポキシ樹脂シートの長さは特に限定されないが、エポキシ樹脂シートの製造効率の観点から、例えば100m以上であり、好ましくは1000m以上である。
【0075】
さらに、エポキシ樹脂シートからポロゲンを抽出し、除去する(多孔化工程)。具体的には、ハロゲンフリーの溶剤にエポキシ樹脂シートを浸漬することによって、エポキシ樹脂シートからポロゲンを除去することが好ましい。これにより、エポキシ樹脂多孔質膜が得られる。
【0076】
エポキシ樹脂シートからポロゲンを除去するためのハロゲンフリーの溶剤として、水、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)及びTHF(テトラヒドロフラン)からなる群より選ばれる少なくとも1つをポロゲンの種類に応じて使用できる。また、水、二酸化炭素等の超臨界流体もポロゲンを除去するための溶剤として使用できる。エポキシ樹脂シートからポロゲンを積極的に除去するために、超音波洗浄を行ってもよく、また、溶剤を加熱して用いてもよい。
【0077】
ポロゲンを除去するための洗浄装置も特に限定されず、公知の洗浄装置を使用できる。エポキシ樹脂シートを溶剤に浸漬することによってポロゲンを除去する場合には、洗浄槽を複数備えた多段洗浄装置を好適に使用できる。洗浄の段数としては、3段以上がより好ましい。また、カウンターフローを利用することによって、実質的に多段洗浄を行ってもよい。さらに、各段の洗浄で、溶剤の温度を変えたり、溶剤の種類を変えたりしてもよい。
【0078】
ポロゲンを除去した後、エポキシ樹脂多孔質膜の乾燥処理を行う。乾燥条件は特に限定されず、温度は通常40〜120℃程度であり、50〜100℃程度が好ましく、乾燥時間は10秒〜5分程度である。乾燥処理には、テンター方式、フローティング方式、ロール方式、ベルト方式等の公知のシート乾燥方法を採用した乾燥装置を使用できる。複数の乾燥方法を組み合わせてもよい。ただし、引き続き活性水酸基の処理を行う場合には、この乾燥工程は省略してもよい。
【0079】
活性水酸基等を減少させるための前処理(処理工程)では、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物及びカルボン酸ハライドから選ばれる少なくとも1つを処理剤として使用することが好ましい。処理工程は、ポロゲンを除去する多孔化工程の前後いずれに実施してもよい。処理工程は、多孔化工程との併合工程として実施することもできる。すなわち、処理工程と多孔化工程との関係は、以下の1)〜3)のとおりとなる。
【0080】
1)処理工程は多孔化工程の前に実施することができる。この場合は、多孔化される前のエポキシ樹脂組成物の硬化体とポロゲンとを含むエポキシ樹脂シートが処理の対象となり、エポキシ樹脂組成物の硬化体に含まれる水酸基と上記化合物とが反応して、カルボン酸エステル結合が生成する。
【0081】
2)処理工程は多孔化工程の後に実施することができる。この場合は、エポキシ樹脂多孔質膜が処理の対象となり、エポキシ樹脂多孔質膜に含まれる水酸基と上記化合物とが反応して、カルボン酸エステル結合が生成する。
【0082】
3)処理工程は多孔化工程との併合工程として実施することができる。この場合は、1つにまとめられた併合工程において、上記化合物とポロゲンを除去するための溶剤とを含む処理液が用いられ、エポキシ樹脂シートからポロゲンが除去されながらカルボン酸エステル結合が生成する。言い換えると、エポキシ樹脂シートからポロゲンが除去されることによる多孔化と多孔化により形成される表面におけるカルボン酸エステル結合の生成とが並行して進行する。
【0083】
実験により確認されたところによると、上記1)〜3)のいずれによっても、エポキシ樹脂多孔質膜に含まれる活性水酸基等の量は低下する。
【0084】
活性な官能基の処理は、処理剤を含む処理液にエポキシ樹脂多孔質膜又は多孔化する前のエポキシ樹脂シートを接触させること、具体的には(ア)処理液にエポキシ樹脂多孔質膜又はエポキシ樹脂シートを浸漬させる、又は(イ)処理液をエポキシ樹脂多孔質膜又はエポキシ樹脂シートに塗布又は噴霧する、ことにより実施することができる。処理液としては水溶液が好適であるが、これに限らず、処理剤の種類によっては、溶媒としてトルエン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、エタノール、イソプロパノール、これらの混合溶媒等を用いてもよい。また、処理剤が処理温度で液体である場合は、その液体をそのまま処理液として用いることも可能である。即ち、処理液としては、液体である処理剤又は処理剤を含む溶液を用いることができる。
【0085】
処理液の塗布又は噴霧による官能基の処理は、処理液の蒸発を考慮する必要がないために処理液の濃度調整が不要であるとともに処理液の必要量を見積もりやすいこと、吐出口の温度を調整すれば容易に処理液の温度を制御できること等の理由から、量産に適している。
【0086】
活性な官能基の処理は、(ウ)処理液の蒸気をエポキシ樹脂多孔質膜に接触させることにより実施することもできる。例えば、巻き取った状態のエポキシ樹脂多孔質膜、すなわちエポキシ樹脂多孔質膜の巻回体を、処理液の蒸気を含む雰囲気に接した状態で静置しておくことにより、官能基を処理することが可能である。この処理は、例えばエポキシ樹脂多孔質膜の巻回体を内部に静置した容器や処理室に処理液の蒸気を供給することにより実施することができる。
【0087】
処理液は、常温でエポキシ樹脂多孔質膜又はエポキシ樹脂シートに接触させれば足りるが、必要に応じて、常温を超える温度にまで加熱してもよい。この場合の加熱温度は、例えば常温を超え80℃の範囲、特に常温を超え70℃以下の範囲である。また、処理時間は、エポキシ樹脂多孔質膜等の表面に処理剤が十分行き渡る時間とすればよいが、浸漬又は塗布による場合は、例えば常温では10秒間〜30分間、常温を超えた温度域では1秒間〜5分間が適切である。
【0088】
処理液との接触の後、必要に応じてエポキシ樹脂多孔質膜を加熱するとよい。加熱条件は、水酸基のエステル化等が十分進行するように適宜定めればよいが、一例を挙げると常温の範囲から80℃に至る温度範囲、特に常温の範囲から70℃に至る温度範囲、1秒間〜60分間、場合によっては5〜60分間の条件が適切である。また、加熱に先立って、エポキシ樹脂多孔質膜は、余分な溶液を除去するために乾燥させておいてもよい。この乾燥は、通常、常温で実施する風乾により行えば足りる。
【0089】
加熱した後には、膜中に残存するカルボン酸等の化合物を除去するために、エポキシ樹脂多孔質膜の洗浄が実施され、さらに乾燥処理が実施される。洗浄のための溶剤としては、水が適しているが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、これらの混合溶媒、これらと水との混合溶媒等を用いてもよい。洗浄及び乾燥のための装置ならびに温度については、ポロゲンの洗浄及び乾燥について上述した装置及び温度を適用することができる。
【0090】
上記1)によれば、ポロゲンを除去する多孔化工程においてポロゲンとともに処理剤として用いる上記化合物を除去することができる。このため、処理剤を除去するための洗浄を追加して実施する必要がない。また、上記3)によれば、処理剤による処理工程を多孔化工程と別の工程として実施する必要がない。従って、上記1)及び3)は製造効率上、上記2)よりも有利である。
【0091】
なお、セパレータ4は、エポキシ樹脂多孔質膜のみで構成されていてもよいし、エポキシ樹脂多孔質膜と他の多孔質材料との積層体で構成されていてもよい。他の多孔質材料としては、ポリエチレン多孔質膜、ポリプロピレン多孔質膜等のポリオレフィン多孔質膜、セルロース多孔質膜、フッ素樹脂多孔質膜等が挙げられる。他の多孔質材料は、エポキシ樹脂多孔質膜の片面にのみ設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。
【0092】
同様に、セパレータ4は、エポキシ樹脂多孔質膜と補強材との積層体で構成されていてもよい。補強材としては、織布、不織布等が挙げられる。補強材は、エポキシ樹脂多孔質膜の片面にのみ設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。
【実施例】
【0093】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下において、RO水は逆浸透膜を用いて処理して得た純水を、DMFはN,N−ジメチルホルムアミドを、v/vは体積比を、それぞれ意味する。また、以下の各実施例及び比較例における溶液の撹拌の際には、外部から加熱又は冷却を行っていない。なお、溶液撹拌の際の雰囲気温度(室温)は、いずれの場合においても約23℃であった。特性の評価方法は以下のとおりとした。
【0094】
[1240cm-1ピーク強度比I/Io]
IRスペクトル(赤外吸収スペクトル)は、エポキシ樹脂多孔質膜をそのまま測定サンプルとして、透過型FT−IR装置(FT/IR−470Plus、JASCO製)を用いて測定した。得られたチャートから、1240cm-1に存在する吸収ピークの強度Ioを求めた。また、各測定サンプルについて、次に述べる無水酢酸処理の後においても同処理の前と同一条件でIRスペクトルを測定し、1240cm-1に存在する吸収ピークの強度Iを求めた。これらの結果に基づいてピーク強度比I/Ioを算出した。
【0095】
無水酢酸処理の詳細を説明する。まず、20℃の無水酢酸にエポキシ樹脂多孔質膜を10分間浸漬させた。その後、エポキシ樹脂多孔質膜を風乾させ、さらに内部を70℃に維持したオーブン内で10分間加熱した。なお、エポキシ樹脂多孔質膜の風乾は、内部を23℃に維持したドラフトチャンバー内で完全に乾燥が終了するまで(厳密には質量減が見られなくなるまで)実施した。オーブンから取り出したエポキシ樹脂多孔質膜は、エタノール及びRO水にそれぞれ10分間ずつ浸漬させ、膜に残存する無水酢酸を洗浄した。最後に、50℃に保持したオーブン内でエポキシ樹脂多孔質膜を乾燥させた。
【0096】
なお、上記では、厳密を期すために、無水酢酸処理の温度条件を明確に特定したが、少なくとも無水酢酸の温度及びドラフトチャンバー内の温度については、多少変動したとしても、得られるデータの値が実質的に同一であることが実験により確認されている。とりわけ無水酢酸の温度については、50℃近くにまで上昇させても、データの値に実質的な変化は見られなかった。従って、厳密に値を定めるべき場合には無水酢酸の温度を20℃とするべきであるが、無水酢酸の温度を10〜30℃程度として無水酢酸処理を実施しても、得られるデータに実質的な相違はない。
【0097】
[空孔率]
各実施例及び比較例で用いたエポキシ樹脂とアミン(硬化剤)とを用いてエポキシ樹脂の無孔体を作製し、この無孔体の比重及び各エポキシ樹脂多孔質膜の比重から、空孔率を算出した。
【0098】
[通気度]
日本工業規格(JIS)P8117で規定された方法に従って、各エポキシ樹脂多孔質膜の通気度(ガーレー値)を測定した。
【0099】
[リチウムイオン二次電池の特性評価]
各実施例及び比較例から得たエポキシ樹脂多孔質膜からなるセパレータを備えたリチウムイオン二次電池を以下の方法に従って作製した。
【0100】
89重量部のコバルト酸リチウム(日本化学工業社製、セルシードC−10)、10重量部のアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)、5重量部のPVDF(呉羽化学工業社製、KFポリマーL#1120)を混合し、固形分濃度が15重量%となるようにN−メチル−2−ピロリドンを加えてカソード用スラリーを得た。このスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔(集電体)上に200μmの厚さで塗布した。塗膜を80℃で1時間、120℃で2時間真空乾燥した後、ロールプレスにて加圧した。これにより、100μmの厚さのカソード活物質層を有するカソードを得た。
【0101】
80重量部のメソカーボンマイクロビーズ(大阪ガスケミカル社製、MCMB6−28)、10重量部のアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)、10重量部のPVDF(呉羽化学工業社製、KFポリマーL#1120)を混合し、固形分濃度が15重量%となるようにN−メチル−2−ピロリドンを加えてアノード用スラリーを得た。このスラリーを厚さ20μmの銅箔(集電体)上に200μmの厚さで塗布した。塗膜を80℃で1時間、120℃で2時間真空乾燥した後、ロールプレスにて加圧した。これにより、100μmの厚さのアノード活物質層を有するアノードを得た。
【0102】
次に、カソード、アノード及びセパレータを用いて電極群を組み立てた。具体的には、カソード、エポキシ樹脂多孔質膜(セパレータ)及びアノードを積層し、電極群を得た。電極群をアルミニウムラミネートパッケージに入れた後、パッケージに電解液を注入した。電解液として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを1:2の体積比で含む溶媒にLiPF6を1.4mol/リットルの濃度で溶解させ、ビニレンカーボネートを1重量%含むものを用いた。最後に、パッケージを封口して、リチウムイオン二次電池を得た。
【0103】
以上により得た各リチウムイオン二次電池について、以下に従って、初期充放電容量及び放電効率を測定した。なお、各試験には、他の試験を受けていない新しい電池を使用した。
【0104】
[初期充放電容量]
25℃の温度、0.2CmAの電流で、各電池の充放電を3回繰り返した。充電は4.2Vまで定電流充電、そこからは定電圧充電とした。また、放電は定電流放電で、カットオフ電圧は2.75Vとした。このとき、1回目の放電容量を初期容量として測定した。
【0105】
[3rd/1st放電効率]
25℃の温度、0.2CmAの電流で、各電池を3回充放電させた。充電は4.2Vまで定電流充電、そこからは定電圧充電とした。また、放電は定電流放電で、カットオフ電圧は2.75Vとした。各電池において、1回目の放電量に対する3回目の放電量を%で算出した。
【0106】
(実施例1)
φ120mm×150mmの円筒形のステンレス容器の内側に離型剤(ナガセケムテックス製、QZ−13)を薄く塗布し、この容器を80℃に設定した乾燥機中で乾燥させた。
【0107】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学製、jER828、エポキシ当量184〜194g/eq.)475.8gをポリプロピレングリコール(三洋化成製サンニックスPP−400)697.2gに溶解させ、エポキシ樹脂/ポリプロピレングリコール溶液を調製した。そしてこの溶液を前記ステンレス容器内に加えた。その後、1,6−ジアミノヘキサン(特級、東京化成製)72.0gを前記容器内に加えた。
【0108】
スリーワンモーターを用いて、撹拌翼で200rpmにて285分撹拌した。撹拌に伴って上記溶液の温度は上昇し、撹拌直後には37.2℃に達した。その後、真空盤(AZONE VZ型)を用いて、室温下で約0.1MPaにて泡がなくなるまで真空脱泡した。その後、50℃で約1日放置して硬化させた。
【0109】
次に、ステンレス容器からエポキシ樹脂ブロックを取り出し、切削旋盤装置を用いて30μmの厚みで連続的にスライスしてエポキシ樹脂シートを得た。該エポキシ樹脂シートをRO水/DMF=1/1(v/v)混合液中で10分間超音波洗浄した後、RO水のみで10分間超音波洗浄し、RO水中12時間浸漬させてポリプロピレングリコールを除去した。その後、80℃での乾燥を2時間行って、エポキシ樹脂多孔質膜を得た。
【0110】
(実施例2)
φ120mm×150mmの円筒形のステンレス容器の内側に離型剤(ナガセケムテックス製、QZ−13)を薄く塗布し、この容器を80℃に設定した乾燥機中で乾燥させた。
【0111】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学製、jER827、エポキシ当量180〜190g/eq.)475.8gをポリプロピレングリコール(三洋化成製サンニックス、PP−400)697.2gに溶解させ、エポキシ樹脂/ポリプロピレングリコール溶液を調製した。そしてこの溶液を前記ステンレス容器内に加えた。その後、1,6−ジアミノヘキサン(特級、東京化成製)72.0gを前記容器内に加えた。
【0112】
スリーワンモーターを用いて、撹拌翼で200rpmにて240分撹拌した。撹拌に伴って上記溶液の温度は上昇し、撹拌直後には36.1℃に達した。その後、真空盤(AZONE VZ型)を用いて、室温下で約0.1MPaにて泡がなくなるまで真空脱泡した。その後、50℃で約1日放置して硬化させた。
【0113】
次に、ステンレス容器からエポキシ樹脂ブロックを取り出し、切削旋盤装置を用いて30μmの厚みで連続的にスライスしてエポキシ樹脂シートを得た。該エポキシ樹脂シートをRO水/DMF=1/1(v/v)混合液中で10分間超音波洗浄した後、RO水のみで10分間超音波洗浄し、RO水中12時間浸漬させてポリプロピレングリコールを除去した。その後、80℃での乾燥を2時間行って、エポキシ樹脂多孔質膜を得た。
【0114】
(実施例3)
φ120mm×150mmの円筒形のステンレス容器の内側に離型剤(ナガセケムテックス製、QZ−13)を薄く塗布し、この容器を80℃に設定した乾燥機中で乾燥させた。
【0115】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学製、jER828)475.8gをポリプロピレングリコール(三洋化成製サンニックスPP−400)697.2gに溶解させ、エポキシ樹脂/ポリプロピレングリコール溶液を調製した。そしてこの溶液を前記ステンレス容器内に加えた。その後、1,6−ジアミノヘキサン(特級、東京化成製)72.0gを前記容器内に加えた。
【0116】
スリーワンモーターを用いて、撹拌翼で200rpmにて237分撹拌した。撹拌に伴って上記溶液の温度は上昇し、撹拌直後にはおよそ41℃に達した。その後、真空盤(AZONE VZ型)を用いて、室温下で約0.1MPaにて泡がなくなるまで真空脱泡した。その後、50℃で約1日放置して硬化させた。
【0117】
次に、ステンレス容器からエポキシ樹脂ブロックを取り出し、切削旋盤装置を用いて30μmの厚みで連続的にスライスしてエポキシ樹脂シートを得た。該エポキシ樹脂シートをRO水/DMF=1/1(v/v)混合液中で10分間超音波洗浄した後、RO水のみで10分間超音波洗浄し、RO水中12時間浸漬させてポリプロピレングリコールを除去した。その後、80℃での乾燥を2時間行って、エポキシ樹脂多孔質膜を得た。
【0118】
(実施例4)
10Lの円筒形のポリ容器にビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学製、jER828)3126.9gと1,6−ジアミノヘキサン(特級、東京化成製)94.6gをポリプロピレングリコール(三洋化成製サンニックスPP−400)5400gに溶解させ、エポキシ樹脂/アミン/ポリプロピレングリコール溶液を調製した。その後、前記ジアミノヘキサン380gを前記ポリ容器に添加し、遊星撹拌装置を用い、約0.7kPaで真空脱泡すると同時に自/公転比率3/4の条件下、公転300rpmで10分間撹拌する手順を9回繰り返した。前記溶液の温度は、ジアミノヘキサンを追加してからの撹拌に伴って調製後の溶液温度から上昇し、撹拌直後には48.2℃に達した。
【0119】
その後、ポリ容器からエポキシ樹脂ブロックを取出し、切削旋盤装置を用いて30μmの厚みで連続的にスライスしてエポキシ樹脂シートを得た。該エポキシ樹脂シートをRO水/DMF=1/1(v/v)混合液に10分間浸漬する手順を3回繰り返し、次にRO水のみで10分間浸漬を2回繰り返すことでポリプロピレングリコールを除去した。その後、80℃での乾燥を2時間行って、エポキシ樹脂多孔質膜を得た。
【0120】
(実施例5)
10Lの円筒形のポリ容器にビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学製、jER828)3283.2gと1,6−ジアミノヘキサン(特級、東京化成製)99.4gをポリプロピレングリコール(三洋化成製サンニックスPP−400)5220gに溶解させ、エポキシ樹脂/アミン/ポリプロピレングリコール溶液を調製した。その後、前記1,6−ジアミノヘキサン400gを前記ポリ容器に添加し、遊星撹拌装置を用い、約0.7kPaで真空脱泡すると同時に自/公転比率3/4の条件下、公転300rpmで10分間撹拌する手順を8回繰り返した。前記溶液の温度は、ジアミノヘキサンを追加してからの撹拌に伴って調製後の溶液温度から上昇し、撹拌直後には52.8℃に達した。
【0121】
その後、ポリ容器からエポキシ樹脂ブロックを取出し、切削旋盤装置を用いて30μmの厚みで連続的にスライスしてエポキシ樹脂シートを得た。該エポキシ樹脂シートをRO水/DMF=1/1(v/v)混合液に10分間浸漬する手順を3回繰り返し、次にRO水のみで10分間浸漬を2回繰り返すことでポリプロピレングリコールを除去した。その後、80℃での乾燥を2時間行って、エポキシ樹脂多孔質膜を得た。
【0122】
(実施例6)
45Lの円筒形の金属容器にビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学製、jER828)12656.2gと1,6−ジアミノヘキサン(特級、東京化成製)383gをポリプロピレングリコール(三洋化成製サンニックスPP−400)18545.5gに溶解させ、エポキシ樹脂/アミン/ポリプロピレングリコール溶液を調製した。その後、前記1,6−ジアミノヘキサン1532gを前記容器に添加した。
【0123】
スリーワンモーターを用いて、真空に引きながら撹拌翼で80rpmにて135分撹拌した。前記溶液の温度は、ジアミノヘキサンを追加してからの撹拌に伴って調製後の溶液温度から上昇し、撹拌直後には57.5℃に達した。その後、室温下で約1日放置して硬化させた。
【0124】
容器からエポキシ樹脂ブロックを取出し、切削旋盤装置を用いて30μmの厚みで連続的にスライスしてエポキシ樹脂シートを得た。該エポキシ樹脂シートをRO水/DMF=1/1(v/v)混合液中で10分間超音波洗浄した後、RO水のみで10分間超音波洗浄し、RO水中12時間浸漬させてポリプロピレングリコールを除去した。その後、80℃での乾燥を2時間行って、エポキシ樹脂多孔質膜を得た。
【0125】
(実施例7)
10Lの円筒形のポリ容器にビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学製、jER828)3126.9gと1,6−ジアミノヘキサン(特級、東京化成製)94.6gをポリプロピレングリコール(三洋化成製サンニックスPP−400)5400gに溶解させ、エポキシ樹脂/アミン/ポリプロピレングリコール溶液を調製した。その後、前記ジアミノヘキサン380gを前記ポリ容器に添加し、遊星撹拌装置を用い、約0.7kPaで真空脱泡すると同時に自公転比率3/4の条件下公転500rpmで10分間撹拌する手順を4回繰り返し、さらに公転500rpmで5分間1回確認した。前記溶液の温度は、ジアミノヘキサンを追加してからの撹拌に伴って調製後の溶液温度から上昇し、撹拌直後には58.9℃に達した。
【0126】
その後、ポリ容器からエポキシ樹脂ブロックを取出し、切削旋盤装置を用いて30μmの厚みで連続的にスライスしてエポキシ樹脂シートを得た。該エポキシ樹脂シートをRO水/DMF=1/1(v/v)混合液に10分間浸漬する手順を3回繰り返し、次にRO水のみで10分間浸漬を2回繰り返すことでポリプロピレングリコールを除去した。その後、80℃での乾燥を2時間行って、エポキシ樹脂多孔質膜を得た。
【0127】
(比較例1)
φ180×180mmの円筒形のステンレス容器の内側に離型剤(ナガセケムテックス製、QZ−13)を薄く塗布し、この容器を80℃に設定した乾燥機中で乾燥させた。
【0128】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学製、jER827)1060.2g、及びビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学製、jER1001、エポキシ当量450〜500g/eq.)151.5g、及びビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学製、jER1009、エポキシ当量2400〜3300g/eq.)302.9gを、ポリエチレングリコール(三洋化成製、PEG200)3055gに溶解させ、エポキシ樹脂/ポリエチレングリコール溶液を調製した。そしてこの溶液を前記ステンレス容器内に加えた。その後、4,4−ジシクロヘキシルジアミン(DKSH社製、PACM−20)371.8gを前記容器内に加えた。
【0129】
スリーワンモーターを用いて、撹拌翼で300rpmにて30分撹拌した。撹拌に伴って上記溶液の温度は上昇し、撹拌直後には28.0℃に達した。その後、真空盤(AZONE VZ型)を用いて、室温にて約0.1MPaにて泡がなくなるまで真空脱泡した。約1.5時間放置後、再度スリーワンモーターを用いてアンカー翼で200rpmにて約30分撹拌し、再度真空脱泡した。その後、25℃で約3日放置して硬化させた。
【0130】
次に、80℃に設定した熱風循環乾燥機で24時間二次硬化を行った。その後、自然冷却させ、ステンレス容器からエポキシ樹脂ブロックを取り出し、切削旋盤装置を用いて30μmの厚みで連続的にスライスしてエポキシ樹脂シートを得た。該エポキシ樹脂シートをRO水/DMF=1/1(v/v)混合液中で10分間超音波洗浄した後、RO水のみで10分間超音波洗浄し、RO水中12時間浸漬させてポリエチレングリコールを除去した。その後、80℃での乾燥を2時間行って、エポキシ樹脂多孔質膜を得た。
【0131】
(比較例2)
φ120mm×150mmの円筒形のステンレス容器の内側に離型剤(ナガセケムテックス製、QZ−13)を薄く塗布し、この容器を80℃に設定した乾燥機中で乾燥させた。
【0132】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学製、jER828)668.8gをポリプロピレングリコール(三洋化成製サンニックスPP−400)980.0gに溶解させ、エポキシ樹脂/ポリプロピレングリコール溶液を調製した。そしてこの溶液を前記ステンレス容器内に加えた。その後、1,6−ジアミノヘキサン(特級、東京化成製)101.2gを前記容器内に加えた。
【0133】
スリーワンモーターを用いて、撹拌翼で150rpmにて15分撹拌した。撹拌に伴って上記溶液の温度は上昇し、撹拌直後には65.0℃に達した。その後、減圧乾燥器を用いて、50℃で約0.1MPaにて泡がなくなるまで真空脱泡した。その後、50℃で約1日放置して硬化させた。
【0134】
次に、ステンレス容器からエポキシ樹脂ブロックを取り出し、切削旋盤装置を用いて30μmの厚みで連続的にスライスしてエポキシ樹脂シートを得た。該エポキシ樹脂シートをRO水/DMF=1/1(v/v)混合液中で10分間超音波洗浄した後、RO水のみで10分間超音波洗浄し、RO水中12時間浸漬させてポリプロピレングリコールを除去した。その後、80℃での乾燥を2時間行って、エポキシ樹脂多孔質膜を得た。
【0135】
(比較例3)
3Lの円筒形のポリ容器にビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学製、jER828)1146.5gとジアミノヘキサン(1級、和光純薬製)94.2gをポリプロピレングリコール(三洋化成製サンニックスPP−400)1680gに溶解させ、エポキシ樹脂/アミン/ポリプロピレングリコール溶液を調製した。その後、前記ジアミノヘキサン380gを前記ポリ容器に添加し、遊星撹拌装置を用い、約0.7kPaで真空脱泡すると同時に自/公転比率3/4の条件下、公転800rpmの比率で10分間撹拌する手順を2回繰り返した。前記溶液の温度は、ジアミノヘキサンを追加してからの撹拌に伴って調製後の溶液温度から上昇し、撹拌直後には70.0℃に達した。
【0136】
その後、数日間自然冷却させ、ポリ容器からエポキシ樹脂ブロックを取出し、切削旋盤装置を用いて30μmの厚みで連続的にスライスしてエポキシ樹脂シートを得た。該エポキシ樹脂シートをRO水/DMF=1/1(v/v)混合液中で10分間超音波洗浄した後、RO水のみで10分間超音波洗浄し、RO水中12時間浸漬させてポリプロピレングリコールを除去した。その後、80℃での乾燥を2時間行って、エポキシ樹脂多孔質膜を得た。
【0137】
(参照例)
セルガード社製ポリプロピレン多孔質膜CG2400を用いた。
【0138】
評価結果を表1及び表2にまとめて示す。
【0139】
【表1】

【0140】
【表2】

【0141】
また、溶液温度Tとエポキシ樹脂多孔質膜の比表面積との関係を調べるため、実施例1、4、7及び比較例2から得たエポキシ樹脂多孔質膜について、比表面積を測定した。比表面積は、以下の方法により測定した。
【0142】
[比表面積]
島津マイクロメリテックス(ASAP−2400、島津製作所製)を用いて測定した。測定は、窒素ガス吸着法を用い、BET比表面積を求めた。測定分析方法は、試料約0.4gを短冊状に裁断し、折りたたんで大容量セルに採取した。この試料を装置の前処理部において温度約80℃で約15時間脱ガス処理(減圧処理)を行い、その後、比表面積を測定した。
【0143】
結果を表3に示す。
【0144】
【表3】

【0145】
表1に示すように、I/Ioが1.0〜2.4の範囲にある各実施例のエポキシ樹脂多孔質膜は、リチウムイオン二次電池の充放電特性、特に3rd/1st放電効率において、比較例のエポキシ樹脂多孔質膜から得られる特性を改善するものとなった。また、比表面積に影響を与えるωがほぼ同じ範囲にある表3の4つのサンプルを対比すると、エポキシ樹脂組成物を調製するときの溶液温度が低いほどエポキシ樹脂多孔質膜の比表面積が小さくなり、I/Ioも小さくなる傾向にあることが理解できる。
【0146】
比較例2,3では、溶液撹拌終了後の温度Tがやや高くなっているが、この程度の温度域であれば製造自体に支障は生じない。これらの比較例のように短時間で撹拌が終了するように溶液を調製することは、製造効率の観点からはむしろ望ましいことでもあり、通常採用される調製手法でもある。しかし、このような従来型の製造方法を適用して得たエポキシ樹脂多孔質膜をセパレータとして用いたリチウムイオン二次電池の充放電特性(3rd/1st放電効率)を、ポリオレフィン系の多孔質膜を用いた同電池の充放電特性を上回る程度にまで引き上げることは難しい(表1)。
【0147】
比較例1においては、溶液撹拌終了後の温度Tが十分に低いにもかかわらず、充放電特性が改良されたセパレータが得られなかった。比較例1における温度Tの低さの主な要因は、用いた硬化剤の反応性が低かったことにある。比較例1における温度Tの低さは、エポキシ樹脂の硬化反応が十分に進行しなかったことを意味している。このため、比較例1のエポキシ樹脂多孔質膜は、架橋密度が低く、そのために多くの水酸基が露出して、活性水酸基の比率が高くなったと考えられる。IRスペクトルの分析により、比較例1のエポキシ樹脂多孔質膜には多くの2級アミンが残存していること、これ以外の各エポキシ樹脂多孔質膜には2級アミンはほとんど残っていないこと、も確認された。比較例1において比I/Ioが大きくなったことには、2級アミンから生成したカルボン酸アミド結合も寄与していると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明によって提供されるセパレータは、リチウムイオン二次電池等の非水電解質蓄電デバイスに好適に使用でき、特に、車両、オートバイ、船舶、建設機械、産業機械、住宅用蓄電システム等に必要とされる大容量の二次電池に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0149】
2 カソード
3 アノード
4 セパレータ
100 非水電解質電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂多孔質膜を備えた非水電解質蓄電デバイス用セパレータであって、
前記エポキシ樹脂多孔質膜の赤外吸収スペクトルの1240cm-1に存在する吸収ピークのピーク強度Ioに対する、無水酢酸処理を施した後の当該エポキシ樹脂多孔質膜の赤外吸収スペクトルの1240cm-1に存在するピークのピーク強度Iの比I/Ioが、1.0以上2.4以下である、非水電解質蓄電デバイス用セパレータ。
ただし、無水酢酸処理とは、エポキシ樹脂多孔質膜を、20℃の無水酢酸に10分間浸漬させた後、23℃のチャンバー内で風乾させ、さらに70℃のオーブン内で10分間加熱することにより実施する処理である。
【請求項2】
前記比I/Ioが1.0以上1.6以下である、請求項1に記載の非水電解質蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項3】
カソードと、
アノードと、
前記カソードと前記アノードとの間に配置された、請求項1に記載のセパレータと、
イオン伝導性を有する電解質と、
を備えた、非水電解質蓄電デバイス。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate


【公開番号】特開2013−20959(P2013−20959A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−133211(P2012−133211)
【出願日】平成24年6月12日(2012.6.12)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】