説明

非相溶性硬質ブロックからなる相分離型ブロックコポリマーと高剛性の成形材料

a)95〜100重量%のビニル芳香族モノマーと0〜5重量%のジエンとからなる少なくとも一種のブロックSと、
b)63〜80重量%のビニル芳香族モノマーと20〜37重量%のジエンとからなり、
ガラス転移温度TgAが5〜30℃の範囲にある少なくとも一種のコポリマーブロック(S/B)Aと、
c)20〜60重量%のビニル芳香族モノマーと40〜80重量%のジエンからなり、ガラス転移温度TgBが0〜−80℃の範囲にある少なくとも一種のコポリマーブロック(S/B)Bとからなる、重量平均モル質量Mwが少なくとも100000g/molであるブロックコポリマーであって、
ブロックコポリマーAに対して、すべてのブロックSの全体の重量比が50〜70重量%の範囲にあり、すべてのブロック(S/B)Aと(S/B)Bの全体の重量比が30〜50重量%の範囲にあることを特徴とするブロックコポリマー、およびそれらの混合物と、それらの用途。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
a)95〜100重量%のビニル芳香族モノマーと0〜5重量%のジエンとからなる少なくとも一種のブロックSと、
b)63〜80重量%のビニル芳香族モノマーと20〜37重量%のジエンとからなり、ガラス転移温度TgAが5〜30℃の範囲にある少なくとも一種のコポリマーブロック(S/B)Aと、
c)20〜60重量%のビニル芳香族モノマーと40〜80重量%のジエンからなり、ガラス転移温度TgBが0〜−80℃の範囲にある少なくとも一種のコポリマーブロック(S/B)Bとからなる重量平均モル質量Mwが少なくとも100000g/molであるブロックコポリマーで、
すべてのブロックS全体の重量比が、ブロックコポリマーAに対して
50〜70重量%の範囲にあり、すべてのブロック(S/B)Aと(S/B)Bの全体の重量比が30〜50重量%の範囲にあるブロックコポリマー、
さらにはこれらの混合物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
US3,639,517には、75〜95重量%のビニル芳香族モノマーからなる末端ブロックと5〜30重量%の主として共役ジエン単位からなる弾性ブロックとからなる星型の分岐状のスチレン−ブタジエンブロックコポリマーが記載されている。これらは、標準的なポリスチレンとブレンド可能であり、透明性の高い混合物を与える。ポリスチレンの比率が増加すると、弾性率が上がり、それに伴って靱性が低下する。40重量%しかポリスチレンを含まない混合物は、多くの用途に脆すぎる。好ましい延性を保持するには、混合可能なポリスチレンの量は、多くても20重量%であり、最大でも30重量%である。
【0003】
40重量%のビニル芳香族モノマーからなる硬質ブロックとビニル芳香族モノマーとジエンからなるランダム構造の軟質ブロックとを含む星型のブロックコポリマーが、WO00/58380に記載されている。これらは、剛性をあげるために標準的なポリスチレンと混合されるが、その際透明性が低下する。60重量%のポリスチレンでも、これらは依然として延性をもつ混合物である。これらのブレンドの欠点は、容易に認められるヘーズであり、これは要求の厳しい用途や厚い部品では許容されない。
【0004】
WO2006/074819には、シュリンクフォイルの製造用の、それぞれ65〜95重量%のビニル芳香族モノマーと35〜5重量%のジエンからなり、ガラス転移温度TgAが40℃〜90℃の範囲である一種以上のコポリマーブロック(B/S)を含む5〜50重量%のブロックコポリマーAと、ビニル芳香族モノマー類からなる少なくとも一種の硬質ブロックSとそれぞれ20〜60重量%のビニル芳香族モノマーと80〜40重量%のジエンからなり、ガラス転移温度TgBが−70℃〜0℃の範囲にある一種以上のコポリマーブロック(B/S)Bを含む95〜50重量%のブロックコポリマーBからなる混合物が記載されている。これらの混合の剛性は、700MPaから、最大で1300MPaである。
【0005】
EP−A1669407には、ビニル芳香族モノマーとジエンからなり、構造(I)S1−B1−S2と構造(II)B2−S3をもつ線状のブロックコポリマーからなる混合物が開示されている。ブロックB1とB2は、ジエンのみからなっていても、ジエンとビニル芳香族モノマーとからなっていてもよい。ブロックB1とB2のビニル芳香族モノマーのジエンに対する重量比は、0.3〜1.5の範囲であることが好ましい。
【0006】
未公開のPCT/EP2008/061635には、特に、それぞれ65〜95重量%のビニル芳香族モノマーと35〜5重量%のジエンとからなり、ガラス転移温度TgAが40〜90℃の範囲にある少なくとも一種のコポリマーブロック(B/S)Aと、それぞれ1〜60重量%のビニル芳香族モノマーと99〜40重量%のジエンとからなり、ガラス転移温度TgBが−100〜0℃の範囲にある少なくとも一種のコポリマーブロック(B/S)Bを含む0〜30重量%のブロックコポリマーを含むスチレン−ブタジエンブロックコポリマー混合物系の透明で強靭で堅い成型組成物が記載されている。
【0007】
3000MPaまでの所望の弾性率なら、スチロラックス(R)などの既存のスチレン−ブタジエンブロックコポリマーをポリスチレンと配合することで、混合率の関数として得ることができる。しかしながら、経験より、弾性率が1900MPaを超える場合は有用な延性が得られないことがわかっている。このような場合、これら混合物の機械的挙動が、ポリスチレン自体のものと似てきて、ポリスチレンに対する利点がなくなってくる。
【0008】
ブリスターパックや熱成形容器、ポット、集積回路輸送用チューブとして用いられる押出中空製品などの電子部品用包装材料には、高剛性、高延性、高透明性の組み合わせが要求され、また信頼性高く所要降伏応力値を超えていることが求められる。これらは、ポリスチレンや、ポリスチレンとスチレン−ブタジエンブロックコポリマーの混合物が、好適でないあるいはあまり好適でない用途である。これまで、この市場はポリ塩化ビニル(PVC)で占められおり、ある程度はポリエチレンテレフタレート(PET)で、あるいは非常に高価な特殊ポリマーで占められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ポリスチレンと共に加工可能で、強靭で堅い透明成型組成物を与えるブロックコポリマーを見出すことである。これらの混合物は、加工により、高剛性の成型組成物を、特に弾性率が1900〜2500MPaより大きく、引張り試験で特定の延性を示す成型組成物を与える必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この結果、上記のブロックコポリマーが、またそのスチレンポリマーとの混合物が見出された。
【0011】
驚くべきことに、ガラス転移温度が5〜30℃の範囲にある一種以上のブロックS/Bを含み、ポリスチレンまたはポリスチレンブロックを含むポリマーからなる成型組成物中に軟質相を形成し、従来の成型組成物と比べてブタジエンの多いブロックを持つブロックコポリマーを含む本発明のブロックコポリマーが、極めて大きな降伏応力と高い弾性率、また優れた延性を示すことが明らかとなった。
【0012】
本発明のブロックコポリマーは、少なくとも100000g/molの重量平均モル質量Mwを有し、
a)95〜100重量%のビニル芳香族モノマーと0〜5重量%のジエンとからなる少なくとも一種のブロックSと、
b)63〜80重量%のビニル芳香族モノマーと20〜37重量%のジエンとからなり、ガラス転移温度TgAが5〜30℃の範囲にある少なくとも一種のコポリマーブロック(S/B)Aと、
c)20〜60重量%のビニル芳香族モノマーと40〜80重量%のジエンからなり、ガラス転移温度TgBが0〜−80℃の範囲にある少なくとも一種のコポリマーブロック(S/B)Bとからなり、
すべてのブロックS全体の重量比が、ブロックコポリマーAに対して50〜70重量%の範囲にあり、すべてのブロック(S/B)Aと(S/B)Bの全体の重量比が30〜50重量%の範囲にある。
【0013】
使用可能なビニル芳香族モノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレンやp−メチルスチレン、tert−ブチルスチレンなどの環アルキル化スチレン、1,1−ジフェニルエチレン、またはこれらの混合物があげられる。スチレンの使用が好ましい。
【0014】
好ましいジエンは、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、ピペリレン、またはこれらの混合物である。特に好ましいのは、ブタジエンとイソプレンである。
【0015】
このブロックコポリマーの重量平均モル質量Mは、好ましくは250000〜350000g/molの範囲である。
【0016】
ブロックSは、好ましくはスチレン単位からなる。アニオン重合で製造されるポリマーの場合、モノマー量と開始剤量の比率でモル質量がコントロールされる。しかしながら、モノマーの供給の終了後に開始剤を何度も添加可能であり、その場合は生成物が二峰性または多峰性の分布となる。フリーラジカル経路で製造されるポリマーの場合、その重量平均分子量Mwは、重合温度及び/又は調整剤の添加により決まる。
【0017】
コポリマーブロック(S/B)Aのガラス転移温度は、好ましくは5〜20℃の範囲である。このガラス転移温度は、コモノマーの組成とコモノマーの分布により影響を受け、示差走査熱量分析(DSC)または示差熱分析(DTA)で測定でき、あるいはフォックス式から計算可能である。ガラス転移温度は、通常DSCを用い、ISO11357−2に準じて20K/分の加熱速度で測定される。
【0018】
コポリマーブロック(S/B)Aは、好ましくは65〜75重量%のスチレンと25〜35重量%のブタジエンからなる。
【0019】
ビニル芳香族モノマーとジエンがランダムに分布した一種以上のコポリマーブロック(S/B)Aからなるブロックコポリマーが好ましい。これらは、例えばテトラヒドロフランやカリウム塩のようなランダマイザーの存在下でのアルキルリチウム化合物を用いるアニオン重合により得ることができる。25:1〜60:1の範囲のアニオン性開始剤:カリウム塩比でで、カリウム塩を使用することが好ましい。特に好ましいのは、カリウムtert−ブチルアミルアルコラートなどのシクロヘキサンに可溶のアルコラートであり、これらは、好ましくは30:1〜40:1のリチウム−カリウム比で用いられる。同時にこの方法によりブタジエン単位の1,2−結合の比率を小さくすることができる。
【0020】
ブタジエン単位の1,2−結合の比率は、1,2−と1,4−シス−と1,4−トランス結合の合計に対して、好ましくは8〜15%の範囲である。
【0021】
コポリマーブロック(S/B)Aの重量平均モル質量Mwは、一般的には30000〜200000g/molの範囲であり、好ましくは50000〜100000g/molの範囲である。
【0022】
しかしながら、ランダムコポリマー(S/B)Aをフリーラジカル重合で製造してもよい。
【0023】
室温で、ブロック(S/B)Aは、成型組成物中に半硬質相を形成し、この相が、高い延性と破断時の高引張ひずみ値、即ち低ひずみ率での高伸度をもたらす。コポリマーブロック(S/B)Bのガラス転移温度は、好ましくは−60〜−20℃の範囲である。このガラス転移温度は、コモノマー組成とコモノマー分布により影響を受け、示差走査熱量分析(DSC)または示差熱分析(DTA)で測定可能であり、あるいはフォックス式から計算可能である。ガラス転移温度は、通常DSCを用い、ISO11357−2に準じて加熱速度が20K/分で測定される。
【0024】
コポリマーブロック(S/B)Bは、好ましくは30〜50重量%のスチレンと50〜70重量%のブタジエンとからなる。
【0025】
ビニル芳香族モノマーとジエンとがランダムに分布した一種以上のコポリマーブロック(S/B)Bからなるブロックコポリマーが好ましい。これらは、例えばテトラヒドロフランやカリウム塩のようなランダマイザーの存在下でアルキルリチウム化合物を用いるアニオン重合により得ることができる。25:1〜60:1の範囲にあるアニオン性開始剤:カリウム塩比率で、カリウム塩を使用することが好ましい。この方法はまた、ブタジエン単位の1,2−結合の比率を低くすることができる。
【0026】
ブタジエン単位の1,2−結合の比率は、1,2−と1,4−シス−と1,4−トランス結合の合計に対して、好ましくは8〜15%の範囲である。
【0027】
しかしながら、ランダムコポリマー(S/B)Bを、フリーラジカル重合で生産してもよい。
【0028】
これらの軟質相を形成するブロックB及び/又は(S/B)Bは、全長にわたって均一であっても、異なる組成の部分に分割されていてもよい。いろいろな配列で混合可能なジエン(B)と(S/B)Bを有する部分が好ましい。連続的にモノマー比率が変わる濃度勾配があってもよく、この勾配は、純粋なジエンから始まっても、高いジエン比率から始まってもよく、スチレンの比率は最大で60%にまで達する。2種以上の勾配部分がある配列もまた可能である。勾配を、ランダマイザーの添加量の増減により作ってもよい。リチウム−カリウム比を40:1とすることが好ましく、また、もしテトラヒドロフラン(THF)をランダマイザーとして用いる場合は、THFを重合溶媒に対して0.25体積%未満の量で使用することが好ましい。あるいは、軟質ブロックに沿っての所望組成分布に応じてモノマー比率をコントロールしながら、重合速度にあわせてジエンとビニル芳香族化合物をゆっくりと同時供給することである。コポリマーブロック(S/B)Bの重量平均モル質量Mwは、一般的には50000〜100000g/molの範囲であり、好ましくは10000〜70000g/molの範囲である。
【0029】
すべてのブロックSの合計の重量比は、ブロックコポリマーに対して50〜70重量%の範囲であり、すべてのブロック(S/B)Aと(S/B)Bの合計の重量比は30〜50重量%の範囲である。
【0030】
ブロック(S/B)Aと(S/B)Bとを相互に分離するブロックSがあることが好ましい。
【0031】
コポリマーブロック(S/B)Aのコポリマーブロック(S/B)Bに対する重量比は、好ましくは80:20〜50:50の範囲である。
【0032】
線状構造を持つブロックコポリマーが、特にS1−(S/B)A−S2−(S/B)B−S3のブロック配列をもつブロックコポリマー(テトラブロックコポリマー)が好ましい。なお、S1とS2はそれぞれブロックSである。
【0033】
80重量%を超える比率でポリスチレンを用いる混合物では、これらのブロックポリマーは、1500〜2000MPaの高弾性率や、35〜42MPaの範囲の高降伏応力、30%を超える破断時引張ひずみの特徴をもつ。比較のために記すと、この比率のポリスチレンを含む市販のSBSブロックコポリマーの破断時引張ひずみ値は3〜30%に過ぎない。70〜75重量%のスチレン単位と5〜30重量%のブタジエンとからなるブロック(S/B)Aと、30〜50重量%のスチレン単位と50〜70重量%のブタジエン単位とからなるブロック(S/B)Bを含むS1−(S/B)A−(S/B)B−S3構造のテトラブロックコポリマーが特に好ましい。ガラス転移温度は、DSCを用いて決定でき、あるいはゴードン・テイラー式から計算できる。この組成では、ガラス転移温度が1〜10℃の範囲となる。テトラブロックコポリマーに対するブロックS1とS2の合計の重量比は、50〜67重量%が好ましい。この合計モル質量は、好ましくは150000〜350000g/molの範囲であり、特に好ましくは200000〜300000g/molの範囲である。分子構造のため、スチレンの比率が85%を超えると最大で300%の破断時引張ひずみ値が得られる。
【0034】
ブロックの(S/B)Aと(S/B)Bとからなるブロックコポリマー、例えばS1−(S/B)A−(S/B)B−S3構造のテトラブロックコポリマーは、共連続的な形態を形成する。ここでは、一つのポリマー分子中に3つの異なる相が組み合わされている。
【0035】
(S/B)Bブロックから形成される軟質相は、その成型組成物に耐衝撃性を与え亀裂(ひび割れ)の伝播を防ぐことができる。ブロック(S/B)Aから形成される半硬質相は、高延性と高破断時引張ひずみ値をもたらす。弾性率と降伏応力は、ブロックSからなる硬質相と必要に応じて混合されるポリスチレンの比率により調整可能である。
【0036】
本発明のブロックコポリマーは、一般的には、標準的なポリスチレンとともに透明度の高いナノ分散多相混合物を形成する。
【0037】
本発明のブロックコポリマーは、強靭で堅い透明な成型組成物中の適当な成分K1)であり、ポリスチレンを成分K2)として用い、必要に応じてK1)とは異なるブロックコポリマーK3)を用いるものである。
【0038】
好ましい混合物は、以下の成分からなる。
【0039】
K1)20〜95重量%の上述のようのブロックコポリマーA、
K2)5〜80重量%の標準的なポリスチレン(GPPS)または耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、および
K3)0〜50重量%の、好ましくは10〜30重量%の、K1とは異なる、ビニル芳香族モノマーとジエンとからなるブロックコポリマーB。
【0040】
この混合物を用いる成型組成物では、ガラス転移温度が−30℃未満の成分K3)からなるブロックが軟質相を形成し、ポリスチレンからなる、あるいはそれぞれポリスチレンブロックと成分K1)のブロックコポリマーからなるブロック(S/B)Aとからなる少なくとも2種の異なるドメインにより硬質相が形成される。
【0041】
成分K1)
本発明のブロックコポリマーは、成分K1)として用いられる。
【0042】
成分K2)
スチレンポリマー、好ましくは標準的なポリスチレン(GPPS)または耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)が、成分K2)として用いられる。透明性を維持するためには、油非含有または含油の標準ポリスチレンが特に好ましい。好適な標準ポリスチレンの例としては、BASF社のポリスチレン158Kやポリスチレン168N、または相当する含油製品であるのポリスチレン143Eやポリスチレン165Hがあげられる。重量平均モル質量Mwが220000〜500000g/molの範囲にある比較的高分子量のポリスチレンを10〜70重量%の量で用いることが好ましく、特にこれらを20〜40重量%の量で用いることが好ましい。
【0043】
成分K3)
用いる成分K3)は、ビニル芳香族モノマーとジエンとからなるブロックコポリマーであって、K1)とは異なるものである。ガラス転移温度が−30℃未満であり軟質ブロックとして働くブロックBをもつスチレン−ブタジエンブロックコポリマーを、成分K3)として用いることが好ましい。
【0044】
本発明の混合物は、好ましくは5〜45重量%の、特に好ましくは20〜40重量%のブロックコポリマーK3を含んでいる。
【0045】
好適なブロックコポリマーK3)は、特に全体のブロックポリマーに対して60〜90重量%のビニル芳香族モノマーと10〜40重量%のジエンとからなる硬質ブロックコポリマーであって、その構造が、主としてビニル芳香族モノマー、特にスチレンからなる硬質ブロックSと、ブタジエンやイソプレン等のジエンからなる軟質ブロックBまたはS/Bとからなるものである。特に好ましいのは、65〜85重量%の、特に好ましくは70〜80重量%のスチレンと15〜35重量%、特に好ましくは20〜30重量%のジエンとからなるブロックコポリマーである。
【0046】
ブロックコポリマーK3)のコポリマーブロック(S/B)Bは、ランダム分布のビニル芳香族モノマーとジエンを有していることが好ましい。
【0047】
好ましいブロックコポリマーK3)は、分子量が異なるビニル芳香族モノマーからなる少なくとも2種の末端硬質ブロックS1とS2をもつ星型の構造を有しており、硬質ブロックSの合計の比率は、全体のブロックコポリマーBに対して少なくとも40重量%である。線状の構造も可能であり、例えば、(S/B)B−S2、あるいはS1−(S/B)B−S2、あるいはS1−(B−>S)nがあげられる。
【0048】
末端ブロックS1の数平均モル質量Mnは、好ましくは5000〜30000g/molの範囲であり、これらのブロックS2の数平均モル質量Mnは、好ましくは35000〜150000g/molの範囲である。
【0049】
末端スチレンブロックをもつ多峰性スチレン−ブタジエンブロックコポリマーが、例えばDE−A2550227またはEP−A0654488に記載のものが好ましい。
【0050】
ビニル芳香族モノマーからなる少なくとも2種のブロックS1とS2とこれらの間に、ビニル芳香族モノマーとジエンとからなる少なくとも一種のランダムなブロック(S/B)BをもつブロックコポリマーK3)で、硬質ブロックの比率が全体のブロックコポリマーに対して40重量%を超え、軟質ブロックS/B中の1,2−ビニル含量が20%未満であるもの、例えばWO00/58380に記載のものが特に好ましい。
【0051】
これらのブロックコポリマーK3)は、例えば、スチロラックス(R)3G33/スチロクリア(R)GH62、スチロラックス(R)693D、スチロラックス(R)684、スチロラックス(R)656C、スチロラックス(R)3G55、K−樹脂(R)03、K−樹脂(R)04、K−樹脂(R)05、K−樹脂(R)10、K−樹脂(R)KK38、K−樹脂(R)01、K−樹脂(R)XK40、クラトン(R)D1401P、フィナクリア520、530、540、550;アサフレックス(R)805、810、825、835、840、845;アサフレックス(R)プロダクトライン、クリアレン(R)530Lや730Lなどの商標で市販されている。
【0052】
可塑剤
均一に混合可能な油または油混合物、白色油、植物油、またはジオクチルアジペートなどの脂肪酸エステル類、またはこれらの混合物を、可塑剤Eとして、0〜6重量%の量で、好ましくは2〜4重量%の量で使用できる。医薬用白色油を使用することが好ましい。
【0053】
本発明の混合物は、透明度が高く、特にフォイルの、特にブリスターパック用の熱成形フォイルの製造に、電子部品包装用の容器または成型物の製造に、また特に集積回路(IC)用の押出中空製品の製造に好適である。これらは、強靭で堅い射出成形物の製造にも好適である。
【実施例】
【0054】
試験方法
ガラス転移温度は、示差走査熱量分析(DSC)を用い、ISO11357−2に準じて加熱速度を20K/分として求めた。
【0055】
分子量は、テトラヒドロフラン(THF)中でのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により23℃でUV検出器を用いて決定し、ポリスチレンを標準として評価した。
【0056】
弾性率と降伏応力と破断時引張ひずみはISO527に準じて決定した。
【0057】
実施例1〜5
ブロックコポリマーK1−1〜K1−5
線状のスチレン−ブタジエンブロックコポリマーを製造するために、攪拌翼を備えた10リットルの二重壁の攪拌ステンレス製オートクレーブ中に5385mlのシクロヘキサンを投入し、1.6mlのsec−ブチルリチウム(BuLi)で60℃で、終点まで、即ち1,1−ジフェニルエチレンを指示薬として使用して黄色の着色が認められるまで滴定した。次いで、3.33mlの1.4Mのsec−ブチルリチウム溶液を混合して反応を開始させ、0.55mlの0.282Mカリウムtert−アミルアルコラート(PTAA)溶液をランダマイザーとして添加した。第一のSブロックの製造に必要な量のスチレン(420gのスチレン)を添加し、最後まで重合させた。他のブロックは、表1に示す構造と組成で、適当量のスチレンまたはスチレンとブタジエンを逐次添加して、いずれの場合も完全に変換させて結合させた。これらのコポリマーブロックの製造のために、スチレンとブタジエンを同時に数回に分けて投入した。向流型での冷却により最高温度を77℃に抑えた。ブロックコポリマーK1−1には、84gのブタジエンと196gのスチレン2をブロック(S/B)Aに用い、196gのブタジエンB2と84gのスチレン4をブロック(S/B)Aに用い、420gのスチレン5をブロックS3に用いた。
【0058】
0.83mlのイソプロパノールを添加してリビングポリマー鎖を停止させ、固体に対して1.0%のCO2/0.5%の水を用いて酸性化させ、安定剤溶液(いずれの場合も、固体総量に対して0.2%のスミライザーGSと0.2%のイルガノックス1010)を添加した。シクロヘキサンを真空オーブン中で蒸発させて除いた。
【0059】
ブロックコポリマーK1−1〜K1−7の重量平均モル質量Mwは、いずれの場合も300000g/molであった。
【0060】
混合物M1〜M8
表2に示すブロックコポリマーK1−3〜K1−4と成分K2(ポリスチレン158K)とを、16mm二軸押出機中で200〜230℃で混合し、プレスしてシートを得た。これらのシートの混合比と機械的性質を表2にまとめる。特記しない場合は、最上行に示す成分を用いた。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)95〜100重量%のビニル芳香族モノマーと0〜5重量%のジエンとからなる少なくとも一種のブロックSと、
b)63〜80重量%のビニル芳香族モノマーと20〜37重量%のジエンとからなり、
ガラス転移温度TgAが5〜30℃の範囲にある少なくとも一種のコポリマーブロック(S/B)Aと、
c)20〜60重量%のビニル芳香族モノマーと40〜80重量%のジエンからなり、ガラス転移温度TgBが0〜−80℃の範囲にある少なくとも一種のコポリマーブロック(S/B)Bとからなる、重量平均モル質量Mwが少なくとも100000g/molであるブロックコポリマーであって、
ブロックコポリマーAに対して、すべてのブロックSの全体の重量比が50〜70重量%の範囲にあり、すべてのブロック(S/B)Aと(S/B)Bの全体の重量比が30〜50重量%の範囲にあることを特徴とするブロックコポリマー。
【請求項2】
コポリマーブロック(S/B)Aのコポリマーブロック(S/B)Bに対する重量比が80:20〜50:50の範囲である請求項1に記載のブロックコポリマー。
【請求項3】
前記ブロックコポリマーの重量平均モル質量Mwが250000〜350000g/molの範囲である請求項1または2に記載のブロックコポリマー。
【請求項4】
ブロック配列S1−(S/B)A−(S/B)B−S2(式中、S1とS2はそれぞれブロックSである)を有する線状構造をもつ請求項1〜3のいずれか一項に記載のブロックコポリマー。
【請求項5】
K1)20〜95重量%の請求項1〜4のいずれか一項に記載のブロックコポリマーAと、
K2)5〜80重量%の標準的なポリスチレン(GPPS)または耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)と、
K3)ビニル芳香族モノマーとジエンとからなる0〜50重量%の、上記K1とは異なるブロックコポリマーBと、
からなる混合物。
【請求項6】
20〜50重量%の前記ブロックポリマーAと50〜80重量%の標準的なポリスチレンとを含む請求項5に記載の混合物。
【請求項7】
請求項5または6記載の混合物を、電子部品包装用のフォイル、特にブリスターパック用の熱成形フォイル、ポット、または容器、または成型物、特に押出中空製品の製造に使用する方法。

【公表番号】特表2012−513512(P2012−513512A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542759(P2011−542759)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067012
【国際公開番号】WO2010/072595
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】