説明

非空気圧タイヤ

【課題】キャンバーを付けてコーナリングする車両用であって、スポークの応力集中を緩和して耐久性を向上させた非空気圧タイヤを提供する。
【解決手段】内側環状部1と、その内側環状部1の外側に同心円状に設けられ、かつタイヤ幅方向の中央部から両側部へ向かって外径が徐々に小さくなるような曲率を有するトレッド面6を備える外側環状部3と、内側環状部1と外側環状部3とを連結する複数の連結部4,5とを備える非空気圧タイヤTであって、タイヤ子午線断面において、外側環状部3の内周面7は、タイヤ幅方向の中央部7aが両側部7bよりもタイヤ径方向内側に突出した凸形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられ、かつタイヤ幅方向の中央部から両側部へ向かって外径が徐々に小さくなるような曲率を有するトレッド面を備える外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結する複数の連結部とを備える非空気圧タイヤ(non−pneumatic tire)に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、荷重の支持機能、接地面からの衝撃吸収能、および動力等の伝達能(加速、停止、方向転換)を有し、このため、多くの車両、特に自転車、オートバイ、自動車、トラックに採用されている。
【0003】
特に、これらの能力は自動車、その他のモーター車両の発展に大きく貢献した。更に、空気入りタイヤの衝撃吸収能力は、医療機器や電子機器の運搬用カート、その他の用途でも有用である。
【0004】
従来の非空気圧タイヤとしては、例えばソリッドタイヤ、スプリングタイヤ、クッションタイヤ等が存在するが、空気入りタイヤの優れた性能を有していない。例えば、ソリッドタイヤおよびクッションタイヤは、接地部分の圧縮によって荷重を支持するが、この種のタイヤは重くて、堅く、空気入りタイヤのような衝撃吸収能力はない。また、非空気圧タイヤでは、弾性を高めてクッション性を改善することも可能であるが、空気入りタイヤが有するような荷重支持能または耐久性が悪くなるという問題がある。
【0005】
そこで、下記の特許文献1には、空気入りタイヤと同様な動作特性を有する非空気圧タイヤを開発する目的で、タイヤに加わる荷重を支持する補強された環状バンドと、この補強された環状バンドとホイールまたはハブとの間で張力によって荷重力を伝達する複数のスポークとを有する非空気圧タイヤが提案されている。特許文献1の非空気圧タイヤは、空気入りタイヤのような空気漏れの心配はなく、また、ソリッドタイヤなどのような重量の問題もない。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された非空気圧タイヤは、接地するトレッド面がほぼ平坦になっており、キャンバーを付けてコーナリングする車両には不向きである。すなわち、トレッド面が平坦な非空気圧タイヤでは、キャンバーが付いた状態の接地面積は限りなくゼロに近付き、グリップ力が大幅に低下して滑りを起こす。
【0007】
そこで、キャンバーを付けてコーナリングする車両用として、タイヤ幅方向の中央部から両側部へ向かって外径が徐々に小さくなるような曲率を有するトレッド面を備える非空気圧タイヤが開発されている。しかし、本発明者が研究を重ねたところ、トレッド面が曲率を有する場合、スポークのタイヤ径方向及び幅方向の中央部に応力が集中し、この応力集中部を起点として早期にタイヤの破損に至り耐久性が低下することが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2005−500932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、キャンバーを付けてコーナリングする車両用であって、スポークの応力集中を緩和して耐久性を向上させた非空気圧タイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明の非空気圧タイヤは、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられ、タイヤ幅方向の中央部から両側部へ向かって外径が徐々に小さくなるような曲率を有するトレッド面を備える外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結する複数の連結部とを備える非空気圧タイヤであって、タイヤ子午線断面において、前記外側環状部の内周面は、タイヤ幅方向の中央部が両側部よりもタイヤ径方向内側に突出した凸形状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
タイヤ幅方向の中央部から両側部へ向かって外径が徐々に小さくなるような曲率を有するトレッド面の場合、連結部(スポーク)のタイヤ径方向及び幅方向の中央部に応力が集中する。本発明によれば、連結部のタイヤ径方向長さは、タイヤ幅方向の中央部が両側部よりも短くなるので、連結部のタイヤ径方向及び幅方向の中央部の応力集中を緩和することができる。これにより、応力集中部を基点とした早期のタイヤ破損を防止し、非空気圧タイヤの耐久性を向上させることができる。
【0012】
本発明にかかる非空気圧タイヤにおいて、前記外側環状部の内周面は、円弧状の凸形状に形成されていることが好ましい。外側環状部の内周面を円弧状の凸形状とすることで、外側環状部と連結部の連結界面が滑らかとなり両者の接着性がよく、非空気圧タイヤの耐久性をさらに向上させることができる。
【0013】
本発明にかかる非空気圧タイヤにおいて、前記外側環状部の内周面は、前記両側部を基準とした前記中央部の突出高さがタイヤ幅の5〜20%となるように形成されていることが好ましい。中央部の突出高さがこの範囲であれば、連結部の応力集中を緩和する効果を奏しつつ、連結部のタイヤ径方向長さが短くなることによる乗り心地の悪化や外側環状部の重量増加による燃費性能の悪化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の非空気圧タイヤの一例を示す正面図
【図2】本発明の非空気圧タイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図
【図3A】別実施形態に係る非空気圧タイヤを示すタイヤ子午線断面図
【図3B】別実施形態に係る非空気圧タイヤを示すタイヤ子午線断面図
【図4】評価試験方法を説明するための模式図
【図5】比較例1の非空気圧タイヤを示すタイヤ子午線断面図
【図6】比較例2〜6の非空気圧タイヤを示すタイヤ子午線断面図
【図7】実施例1〜5の非空気圧タイヤを示すタイヤ子午線断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の非空気圧タイヤの一例を示す正面図である。図2は、本発明の非空気圧タイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図であって、図1のI−I断面図である。ここで、Oは軸芯を、Wはタイヤ幅を、Hはタイヤ断面高さを、それぞれ示している。
【0016】
本発明の非空気圧タイヤTは、キャンバーを付けてコーナリングする車両に用いられるのが好ましい。本実施形態の非空気圧タイヤTは、内側環状部1と、その外側に同心円状に設けられた中間環状部2と、その外側に同心円状に設けられ、タイヤ幅方向の中央部から両側部へ向かって外径が徐々に小さくなるような曲率を有するトレッド面6を備える外側環状部3と、内側環状部1と中間環状部2とを連結する複数の内側連結部4と、外側環状部3と中間環状部2とを連結する複数の外側連結部5とを備えている。本実施形態の非空気圧タイヤTは中間環状部2を備えているが、中間環状部2は必ずしも必要ではなく、中間環状部2を設けず、内側連結部4と外側連結部5とが連続して1本の連結部を構成してもよい。この場合、非空気圧タイヤTは、内側環状部1と、その内側環状部1の外側に同心円状に設けられ、かつタイヤ幅方向の中央部から両側部へ向かって外径が徐々に小さくなるような曲率を有するトレッド面6を備える外側環状部3と、内側環状部1と外側環状部3とを連結する複数の連結部とを備える構成となる。
【0017】
内側環状部1は、ユニフォミティを向上させる観点から、厚みが一定の円筒形状であることが好ましい。また、内側環状部1の内周面には、車軸やリムとの装着のために、嵌合性を保持するための凹凸等を設けるのが好ましい。
【0018】
内側環状部1の厚みは、内側連結部4に力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの6〜30%が好ましく、10〜20%がより好ましい。
【0019】
内側環状部1の内径は、非空気圧タイヤTを装着するリムや車軸の寸法などに併せて適宜決定されるが、本実施形態では中間環状部2を備えるために、内側環状部1の内径をより小さくすることが可能である。内側環状部1の内径は、50〜560mmが好ましく、80〜200mmがより好ましい。
【0020】
内側環状部1のタイヤ幅方向の幅は、用途、車軸の長さ等に応じて適宜決定されるが、30〜100mmが好ましく、40〜80mmがより好ましい。
【0021】
内側環状部1の引張モジュラスは、内側連結部4に力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、装着性を図る観点から、1〜180000MPaが好ましく、1〜50000MPaがより好ましい。なお、本発明における引張モジュラスは、JIS K7312に準じて引張試験を行い、10%伸び時の引張応力の値である。
【0022】
中間環状部2は、ユニフォミティを向上させる観点から、厚みが一定の円筒形状であることが好ましいが、多角形筒状などでもよい。
【0023】
中間環状部2の厚みは、内側連結部4と外側連結部5とを十分補強しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの3〜10%が好ましく、4〜9%がより好ましい。
【0024】
中間環状部2の内径は、内側環状部1の内径を超えて、外側環状部3の内径未満となる。但し、中間環状部2の内径としては、内側連結部4と外側連結部5との補強効果を向上させる観点から、外側環状部3の内径から内側環状部1の内径を差し引いた値の20〜80%の値を、内側環状部1の内径に加えた内径とすることが好ましく、30〜60%の値を、内側環状部1の内径に加えた内径とすることがより好ましい。
【0025】
中間環状部2のタイヤ幅方向の幅は、用途等に応じて適宜決定されるが、30〜100mmが好ましく、40〜80mmがより好ましい。
【0026】
中間環状部2の引張モジュラスは、1〜180000MPaが好ましく、1〜50000MPaがより好ましい。
【0027】
外側環状部3は、タイヤ幅方向に厚みが変化する円筒形状である。外側環状部3の外周面はトレッド面6となっている。トレッド面6は、図2に示されるように、タイヤ子午線断面において、タイヤ幅方向の中央部から両側部へ向かって外径が徐々に小さくなるような曲率を有する円弧状となっている。トレッド面6が、曲率を有することで、キャンバーを付けてコーナリングする際にも接地面積が小さくなりすぎず、直進走行時とコーナリング時との間の接地面積の変動が少なくなる。トレッド面6の曲率半径Rは、40〜100mmが好ましく、40〜65mmがより好ましい。曲率半径Rが40mmより小さい場合、キャンバー時の接地面積が過大となり、グリップ性能が急激に増加するため、急停止に近い状況となってしまう。また、曲率半径Rが100mmよりも大きい場合、キャンバー時の接地面積が過小となり、グリップ性能が急激に低下するため、滑りが発生してしまう。トレッド面6には、トレッドパターンとして、従来の空気入りタイヤと同様のパターンを設けることが可能である。
【0028】
外側環状部3の内周面7は、タイヤ子午線断面において、タイヤ幅方向の中央部7aが両側部7bよりもタイヤ径方向内側に突出した円弧状の凸形状に形成されている。内周面7は、両側部7bを基準とした中央部7aの突出高さhがタイヤ幅Wの5〜20%となるように形成されていることが好ましく、5〜10%となるように形成されていることがより好ましい。突出高さhがタイヤ幅Wの5%以下の場合、外側連結部5の応力集中を緩和する効果が得られにくい。また、突出高さhがタイヤ幅Wの20%以上の場合、外側環状部3の重量が増加して燃費性能の悪化に繋がったり、外側連結部5が短くなって変形しにくくなり乗り心地が悪化したりする。
【0029】
外側環状部3の内径は、その用途等に応じて適宜決定されるが、例えば、100〜600mmが好ましく、120〜300mmがより好ましい。
【0030】
外側環状部3のタイヤ幅方向の幅は、用途等に応じて適宜決定されるが、30〜100mmが好ましく、40〜80mmがより好ましい。
【0031】
外側環状部3の引張モジュラスは、1〜180000MPaが好ましく、1〜50000MPaがより好ましい。
【0032】
内側連結部4は、内側環状部1と中間環状部2とを連結するものであり、両者の間に適当な間隔を開けるなどして、タイヤ周方向に各々が独立するように複数設けられる。内側連結部4は、ユニフォミティを向上させる観点から、タイヤ周方向に規則的に設けることが好ましい。
【0033】
内側連結部4を全周に渡って設ける際の数(軸方向に複数設ける場合は1個として数える)としては、車両からの荷重を十分支持しつつ、軽量化、動力伝達の向上、耐久性の向上を図る観点から、20〜60個が好ましく、20〜50個がより好ましい。図1には、内側連結部4を30個設けた例を示す。
【0034】
個々の内側連結部4の形状としては、板状体、柱状体などが挙げられるが、本実施形態では板状体の例を示す。これらの内側連結部4は、正面視断面において、タイヤ径方向又はタイヤ径方向から傾斜した方向に延びている。本発明では、ブレークポイントを高くして剛性変動を生じにくくすると共に、耐久性を向上させる観点から、正面視断面において、内側連結部4の延設方向が、タイヤ径方向±30°以内が好ましく、タイヤ径方向±15°以内がより好ましい。図1では、内側連結部4が、タイヤ径方向に延設されている例を示す。
【0035】
内側連結部4の厚みは、内側環状部1からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、横剛性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの3〜12%が好ましく、4〜10%がより好ましい。
【0036】
内側連結部4の引張モジュラスは、内側環状部1からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、横剛性の向上を図る観点から、1〜50MPaが好ましく、1〜30MPaがより好ましい。
【0037】
外側連結部5は、外側環状部3と中間環状部2とを連結するものであり、両者の間に適当な間隔を開けるなどして、タイヤ周方向に各々が独立するように複数設けられる。外側連結部5は、ユニフォミティを向上させる観点から、タイヤ周方向に規則的に設けることが好ましい。
【0038】
なお、外側連結部5と内側連結部4とは全周の同じ位置に設けてもよく、異なる位置に設けてもよい。すなわち、外側連結部5と内側連結部4は、必ずしも図1のように同じ方向に連続するように延設する必要はない。
【0039】
外側連結部5を全周に渡って設ける際の数(軸方向に複数設ける場合は1個として数える)としては、車両からの荷重を十分支持しつつ、軽量化、動力伝達の向上、耐久性の向上を図る観点から、20〜60個が好ましく、20〜50個がより好ましい。図1には、外側連結部5を内側連結部4と同じく30個設けた例を示す。なお、外側連結部5の数と内側連結部4の数は、必ずしも同じとする必要はなく、外側連結部5を内側連結部4よりも多く設けてもよい。
【0040】
個々の外側連結部5の形状としては、板状体、柱状体などが挙げられるが、本実施形態では板状体の例を示す。これらの外側連結部5は、正面視断面において、タイヤ径方向又はタイヤ径方向から傾斜した方向に延びている。本発明では、ブレークポイントを高くして剛性変動を生じにくくすると共に、耐久性を向上させる観点から、正面視断面において、外側連結部5の延設方向が、タイヤ径方向±30°以内が好ましく、タイヤ径方向±15°以内がより好ましい。図1では、外側連結部5が、タイヤ径方向に延設されている例を示す。
【0041】
外側連結部5の厚みは、内側環状部1からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、横剛性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さHの3〜12%が好ましく、4〜10%がより好ましい。
【0042】
外側連結部5の引張モジュラスは、内側環状部1からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、横剛性の向上を図る観点から、1〜50MPaが好ましく、1〜30MPaがより好ましい。
【0043】
非空気圧タイヤTは、弾性材料で成形される。本発明における弾性材料とは、JIS K7312に準じて引張試験を行い、10%伸び時の引張応力から算出した引張モジュラスが、100MPa以下のものを指す。本発明の弾性材料としては、十分な耐久性を得ながら、適度な剛性を付与する観点から、好ましくは引張モジュラスが0.1〜100MPaであり、より好ましくは0.1〜50MPaである。母材として用いられる弾性材料としては、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂が挙げられる。
【0044】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、ポリ塩化ビニルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等が例示される。架橋ゴム材料を構成するゴム材料としては、天然ゴムの他、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(水添NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等の合成ゴムが例示される。これらのゴム材料は必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0045】
その他の樹脂としては、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられ、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0046】
上記の弾性材料のうち、成形・加工性やコストの観点から、好ましくは、ポリウレタン樹脂が用いられる。なお、弾性材料としては、発泡材料を使用してもよく、上記の熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂を発泡させたもの使用可能である。
【0047】
弾性材料で成形された内側環状部1、中間環状部2、外側環状部3、内側連結部4、及び外側連結部5は、補強繊維により補強されていることが好ましい。
【0048】
補強繊維としては、長繊維、短繊維、織布、不織布などの補強繊維が挙げられるが、長繊維を使用する形態として、タイヤ軸方向に配列される繊維とタイヤ周方向に配列される繊維とから構成されるネット状繊維集合体を使用するのが好ましい。
【0049】
補強繊維の種類としては、例えば、レーヨンコード、ナイロン−6,6等のポリアミドコード、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルコード、アラミドコード、ガラス繊維コード、カーボンファイバー、スチールコード等が挙げられる。
【0050】
本発明では、補強繊維を用いる補強の他、粒状フィラーによる補強や、金属リング等による補強を行うことが可能である。粒状フィラーとしては、カーボンブラック、シリカ、アルミナ等のセラミックス、その他の無機フィラーなどが挙げられる。
【0051】
本発明における非空気圧タイヤTは弾性材料で成形されるが、非空気圧タイヤTを製造する際に、一体成形が可能となる観点から、内側環状部1、中間環状部2、外側環状部3、内側連結部4、及び外側連結部5は、補強構造を除いて基本的に同じ材質とすることが好ましい。
【0052】
<別実施形態>
外側環状部3の内周面7は、タイヤ子午線断面において、タイヤ幅方向の中央部7aが両側部7bよりもタイヤ径方向内側に突出した凸形状に形成されていればよく、この凸形状は前述した円弧状でなくともよい。例えば、図3Aに示すような三角形状、図3Bに示すような台形状などでもよい。この場合、三角形状および台形状の角部は、応力集中を防ぐために丸みを持たせるのがよい。なお、凸形状に角張った部分があると応力が集中して、外側環状部3と外側連結部5との連結界面で破断や剥離が生じやすくなるため、凸形状を円弧状にするのが特に好ましい。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。尚、実施例等における評価項目は、下記のようにして測定を行った。初めに、非空気圧タイヤに縦荷重500Nを負荷した状態での、連結部に生じる応力集中部の最大応力値を求めた。次いで、非空気圧タイヤの耐久性を、時速6kmの条件下で、タイヤ破損確認までの走行距離にて評価した。図4の模式図に示すように、評価対象のタイヤに500Nを負荷し、ドラム上を回転させた。表1に、各非空気圧タイヤについて、外側環状部の寸法、応力集中部の最大応力値、タイヤの破損に至るまでの走行距離を示す。
【0054】
比較例1
タイヤ最大外径が156mm、タイヤ幅が57mm、タイヤ断面高さHが33mmである非空気圧タイヤを作製した。トレッド面の曲率半径は55mmとした。タイヤ幅方向中央部でのトレッド面6の最大外径位置から内周面7までのタイヤ径方向の距離αはタイヤ幅Wの20%とし、タイヤ幅方向両側部でのトレッド面6の最大外径位置から内周面7までの距離βはタイヤ幅Wの20%とした。すなわち、図5に示すように、外側環状部3の内周面7は、内径がタイヤ幅方向に一定となるように形成した。
【0055】
比較例2〜6
図6に示すように、上記距離α及び距離βをそれぞれ同じ距離だけ大きくしたこと以外は比較例1と同じとしたものを比較例2とした。α/W及びβ/Wを比較例2では25%、比較例3では27.5%、比較例4では30%、比較例5では35%、比較例6では37.5%とした。これにより、比較例2〜6の外側連結部5のタイヤ径方向長さは、比較例1に比べてタイヤ幅方向に一様に短くなっている。
【0056】
実施例1〜5
図7に示すように、外側環状部3の内周面7を、タイヤ幅方向の中央部7aが両側部7bよりもタイヤ径方向内側に突出した円弧状の凸形状に形成したこと以外は比較例1と同じとしたものを実施例1〜5とした。突出高さhは、距離αから距離βを引いた値となる。α/Wを実施例1では25%、実施例2では27.5%、実施例3では30%、実施例4では35%、実施例5では37.5%とした。これにより、h/Wは実施例1では5%、実施例2では7.5%、実施例3では10%、実施例4では15%、実施例5では17.5%となっている。
【0057】
【表1】

【0058】
表1のように、実施例1〜5では、比較例1に比べ、連結部の応力集中部の最大応力値は小さくなり、タイヤの破損に至るまでの走行距離が長くなって耐久性を向上できることが分かる。比較例2〜6でも比較例1に比べ、応力集中部の最大応力値は減少し、耐久性も向上しているが、外側連結部のタイヤ径方向長さはタイヤ幅方向に一定であるため、実施例1〜5に比べると外側連結部のタイヤ幅方向中央部の応力集中を緩和する効果が少ない。さらに、比較例2〜6は外側環状部の重量増加が大きくなるため、実施例1〜5に比べ燃費性能が悪化するおそれがある。
【符号の説明】
【0059】
1 内側環状部
2 中間環状部
3 外側環状部
4 内側連結部
5 外側連結部
6 トレッド面
7 外側環状部の内周面
7a タイヤ幅方向の中央部
7b タイヤ幅方向の両側部
T 非空気圧タイヤ
h 突出高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられ、かつタイヤ幅方向の中央部から両側部へ向かって外径が徐々に小さくなるような曲率を有するトレッド面を備える外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結する複数の連結部とを備える非空気圧タイヤであって、
タイヤ子午線断面において、前記外側環状部の内周面は、タイヤ幅方向の中央部が両側部よりもタイヤ径方向内側に突出した凸形状に形成されていることを特徴とする非空気圧タイヤ。
【請求項2】
前記外側環状部の内周面は、円弧状の凸形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の非空気圧タイヤ。
【請求項3】
前記外側環状部の内周面は、前記両側部を基準とした前記中央部の突出高さがタイヤ幅の5〜20%となるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の非空気圧タイヤ。




【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−18462(P2013−18462A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155813(P2011−155813)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)