説明

非結晶および結晶二水和物形態のアジスロマイシンの調製

【課題】アジスロマイシンの新規調製方法を提供する。
【解決手段】次の方法および技法により特徴ずけられ、かつ明瞭に差別化される非結晶および結晶二水和物形態のマクロライドアジスロマイシンの新規調製方法:
1.IR分光分析
2.示差走査熱量測定(DSC)
3.X線回折
4.吸湿性
5.結晶度試験(偏向顕微鏡)

【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は、非結晶および結晶二水和物形態のアジスロマイシンの調製に関する。
アジスロマイシン(Azithromycin)は、アザリド(azalide)9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンAのUSAN一般名であり、その系統的名称は 1−オキサ−6 −アザシクロペンタデカン−15−オン,13−((2,6 −ジデオキシ−3 −C−メチル−1 −3 −O−メチル−α−L−リボ−ヘキソピラノシル)−オキシ)−2 −エチル−3,4,10−トリヒドロキシ−3,5,6,8,10,12,14−ヘプタメチル−11−((3,4,6 −トリデオキシ−3 −(ジメチルアミノ)−β−D−キシロ(xylo)−ヘキソピラノシル)オキシ)である。このものはグラム陽性菌および、ある場合にはグラム陰性菌に対して優れた抗菌活性を示す半合成マクロライドである(H.A. Kirst, G.D. Sides, Antimicrob. Agents. Chemother. 1989, 33, 1419-1422) 。このマクロライドの臨床的使用は日和見感染の治療へとその応用分野を広げつつある(F. Lecomte, Rev. Med. Interne 1998, 19 (4), 255-61; S. Alvarez-Elcoro, Mayo Clin. Proc. 1999, 74 (6), 613-34; J. Schater, Lancet, 1999, 354 (9179), 630-35) 。
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
【0002】
図1はアジスロマイシンの異なった合成経路を示す。図1に示す中間体の名称を次表に集約する。
中間体 名称
アジスロマイシン
エリスロマイシンAオキシム
6,9 −イミノエーテル
9,11−イミノエーテル
アザエリスロマイシンA
アザエリスロマイシン 11,12−水素オルトホウ酸
(hydrogenorthoborate)
アジスロマイシン 11,12−水素オルトホウ酸
【0003】
次表に、アジスロマイシンに対する異なった合成経路(A、B、C、D、E)を記載した特許、論文、著者および出願人を集約する。
経路 特許 論文 著者 出願人
A a) US4,328,334 ・J. Chem. Soc. Perkin Trans
・ US4,517,359 I, 1986, 1881 S. Djokic PLIVA
・J. Chem. Res., 1988, 132
・同上縮小版, 1988,1239
B b) US 4,474,768 G.M.Bright PFIZER
C c) US 5,686,587
d) EP 0,699,207 B.V. Yang PFIZER
e) ES 2,104,386
D f) US 5,869,629 ・J. Org. Chem,1997,62,(21),
g) EP 0,827,965 7479-7481
h) ES 2,122,905 ・Magn. Reson. Chem, 1998, M. Bayod ASTUR-
36, 217-225 PHARMA
E i) EP 0,879,823 W. Heggie HOVIONE
アジスロマイシンについて実施した構造解明研究によれば、二つの異なった結晶形態の存在を示す:吸湿性一水和物および非吸湿性二水和物であり、EP 0,298,650号公報に記載があるように、治療処置に使用する処方物の製造には後者が好ましい。
【0004】
次の鑑別アッセイにより、アジスロマイシン二水和物は吸湿性アジスロマイシンから容易に区別できる:
a)上記二水和物形態は、その百分位数水分含有量を理論値4.6%に極めて接近している一定値(4.5 〜 5%)に保つ。
b)アジスロマイシン二水和物の示差熱量測定分析(DSC)では、115 〜135 ℃間で変わり得る単一吸熱の存在を示し、この工程の間に吸収されるエネルギーは27〜34 cal/g の範囲である。
c)各結晶形態は、それ自体の特徴あるX線回折スペクトルを表す。
d)両結晶形態のKBrでの赤外スペクトルは明瞭な差異を示す:
アジスロマイシン二水和物 アジスロマイシン一水和物
ν(cm -1) ν(cm -1
3560 および 3496 ( 二つの鋭いバンド) 3500 (広いバンド)
1344 存在なし
1282 および 1268 (二つの鋭いバンド) 1280
1083 存在なし
【0005】
上記の結晶形態とは異なった形態のアジスロマイシンを与える、二つの他の合成経路も開示されている。これらの場合、アジスロマイシンは単なる蒸発、乾燥により得られる。しかし、これらの文献等では、得られたアジスロマイシンの結晶状態に関する言及はない。
【0006】

特許 出願人 優先権 方法
(著者)
・WO 94/26758 PFIZER May 19, 1993 塩化メチレン蒸発
a) US 5,686,587 (B.V. Yang)
b) EP 0,699,207
c) ES 2,104,386
・BE 892,357 PLIVA Mar. 3, 1981 クロロホルム蒸発
・US 4,517,359 (S. Djokic)
【0007】
次表に、アジスロマイシンの両結晶形態の調製のための異なった方法を要約する。
【表1】

【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の内容に関する。
次の方法および技法により特徴ずけられ、かつ明瞭に差別化される非結晶および結晶二水和物形態のマクロライドアジスロマイシンの新規調製方法:
1.IR分光分析
2.示差走査熱量測定(DSC)
3.X線回折
4.吸湿性
5.結晶度試験(偏向顕微鏡)
更に詳しくは以下の内容に関する。
(1) 結晶アジスロマイシンの脂肪族アルコール溶液または環状エーテル溶液を凍結乾燥することを特徴とする、非結晶形態の 9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA(アジスロマイシン)の調製方法。
(2) 凍結乾燥に用いる溶剤がtert−ブタノールである、上記(1)記載の方法。
(3) 凍結乾燥に用いる溶剤が1,4−ジオキサンである、上記(1)記載の方法。
(4) 結晶アジスロマイシンの脂肪族アルコール溶液、好ましくはエタノール溶液またはイソプロパノール溶液を蒸発、乾燥することを特徴とする、非結晶形態の 9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA(アジスロマイシン)の調製方法。
(5) アジスロマイシンの tert−ブタノール溶液に水を添加した後、結晶化させることを特徴とする、結晶二水和物形態の 9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA(アジスロマイシン)の調製方法。
(6) 石油エーテルと水との混合物にアジスロマイシンのtert−ブタノール溶液を添加することによりその溶液から結晶化することを特徴とする、結晶二水和物形態の 9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA(アジスロマイシン)の調製方法。
(7) 結晶二水和物形態の 9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA(アジスロマイシン)の調製方法であって、次の工程を特徴とする調製方法:
・室温およびpH2〜4の範囲で希酸(例えば硫酸、塩酸、シュウ酸)を作用させることによる、有機溶剤(例えば酢酸エチル、アセトニトリル、メタノールまたはエタノール)中での 9−デオキソ−9a−アザ−11,12 −デスオキシ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA 11,12 −水素オルトホウ酸(hydrogenorthoborate)の加水分解。
・tert−ブタノール中でのアジスロマイシンの溶解。
・水の添加による結晶化。
(8) 結晶二水和物形態の 9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA(アジスロマイシン)の調製方法であって、次の工程を特徴とする調製方法:
・室温およびpH2〜4の範囲で希酸(例えば硫酸、塩酸、シュウ酸)を作用させることによる、有機溶剤(例えば酢酸エチル、アセトニトリル、メタノールまたはエタノール)中での 9−デオキソ−9a−アザ−11,12 −デスオキシ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA 11,12 −水素オルトホウ酸の加水分解。
・tert−ブタノール中でのアジスロマイシンの溶解。
・石油エーテルと水との混合物への添加による結晶化。
(9) 非結晶形態の 9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA(アジスロマイシン)の調製方法であって、次の工程を特徴とする調製方法:
・室温およびpH2〜4の範囲で希酸(例えば硫酸、塩酸、シュウ酸)を作用させることによる、有機溶剤(例えば酢酸エチル、アセトニトリル、メタノールまたはエタノール)中での 9−デオキソ−9a−アザ−11,12 −デスオキシ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA 11,12 −水素オルトホウ酸の加水分解。
・アジスロマイシンのtert −ブタノール溶液の凍結乾燥。
(10) 非結晶形態の 9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA(アジスロマイシン)の調製方法であって、次の工程を特徴とする、調製方法:
・室温およびpH2〜4の範囲で希酸(例えば硫酸、塩酸、シュウ酸)を作用させることによる、有機溶剤(酢酸エチル、アセトニトリル、メタノールまたはエタノール)中での 9−デオキソ−9a−アザ−11,12 −デスオキシ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA 11,12 −水素オルトホウ酸の加水分解。
・アジスロマイシンの脂肪族アルコール溶液、好ましくはエタノール溶液またはイソプロパノール溶液の蒸発、乾燥。
(発明の具体的な説明)
まず本発明は、アジスロマイシンを調製するための一連の新規方法を提供する:
・ その結晶二水和物形態を調製するための方法であって、tert-ブタノール/水の混合物からアジスロマイシンを結晶化させることを特徴とする方法。この方法では結晶アジスロマイシン一水和物を tert- ブタノール中に溶解し、水の添加後に48〜72時間結晶化させる。
・ その結晶二水和物形態を調製するための方法であって、 tert-ブタノール/石油エーテル/水の混合物からアジスロマイシンを結晶化することを特徴とする方法。この方法では結晶性アジスロマイシン一水和物を tert- ブタノール中に溶解し、石油エーテルと水との混合物中に添加する。この溶液を48〜72時間結晶化させる。
・ アジスロマイシンの tert- ブタノール(2 −メチル−2 −プロパノール)溶液を凍結乾燥させる手段による非結晶アジスロマイシンの調製方法。
・ アジスロマイシンの脂肪族アルコール(好ましくはエタノールまたはイソプロパノール)溶液を蒸発させる手段による非結晶アジスロマイシンの調製方法。
【0009】
第二に本発明は、次の技法を使用した非結晶アジスロマイシンの特徴付けおよび結晶形態(二水和物および一水和物)からの、その明白な差異を記載する:
−赤外分光分析
−示差走査熱量測定(DSC)
−X線回折
−吸湿性
−偏光顕微鏡による結晶度試験
【0010】
本発明の目的である諸方法は、特に工業的スケールにおいて既知方法より有利である:
−凍結乾燥は、均一性、純度、および異なったバッチ間の分析データの整合性に関して優れた結果が保証される手法である。
−この結晶化方法は緩慢な結晶成長を特徴とし、異なったバッチ間の均一性および粒子分布を著しく改善する。これによれば、文献記載の方法および上記方法により得られる結晶アジスロマイシン二水和物中に常に存在する非結晶画分(X線およびDSCで検出される)の存在が最少化される。
【0011】
上記技法を用いて結晶アジスロマイシン二水和物とその非結晶形態間に観察される差異を次に示す:
1.FT−IR NicoletR(商品名)Impact 410 Instrument 中に記録された両アジスロマイシン形態の赤外スペクトル(KBr)は明瞭に異なっている。殆どの有意なバンドが次表に集約されているスペクトルを図2に再現する:
結晶アジスロマイシン二水和物 非結晶アジスロマイシン
ν(cm -1 ) ν(cm -1
3561 および 3496 ( 二つの鋭いバンド) 3500 (広いバンド)
1344 存在なし
1282、1269 および1251(三つの鋭いバンド) 1280および1257
(二つの鋭いバンド)
1083 存在なし
【0012】
DSC。図3に、窒素下に加熱速度5 ℃/分で、20〜300℃で走査して得られたサーモグラム(万能V2,3C TA 機器(UNIVERSAL V2,3C TA INSTRUMENTS))を示す。非結晶形態のサーモグラムは、なんらの溶融ピークを示さず、結晶アジスロマイシン二水和物に対応するものとは明瞭に区別される。
X線回折スペクトルを、Philips R PW 1710 回折計を用いて記録した。非結晶アジスロマイシンに対応するスペクトル(図4)が明確な最高点に欠けることにより特徴付けられるように、この固体は無定形であると考えられる。
吸湿性。水分3 %を含む非結晶アジスロマイシンの二つの異なった試料を相対湿度75%をこえる大気下に保持した。8 時間後、第1試料の水分含有量が5.3%であったのに対して、第2試料は72時間後に9.9 %の水分を含んでいた。このように非結晶アジスロマイシンは、適度に吸湿性である。これらの粒子は複屈折を示さないので、非結晶アジスロマイシンを用いて実施した結晶度試験(偏光顕微鏡)はネガテイブであった。
【実施例】
【0013】
・ 9 −デオキソ−9a−アザ−11,12 −デスオキシ−9a−ホモエリスロマイシンA 11,12−水素オルトホウ塩の調製
89gの 9 −デオキソ−6 −デスオキシ−6,9 −エポキシ−9,9a−ジヒドロ−9a−アザ−ホモエリスロマイシンAを 450mlのメタノール中に溶解し、−5°〜−10℃に冷却する。所定の間この温度を維持しながら、各2.2gの水素化ホウ素ナトリウム(sodiumborohydride)16部を添加する。温度および撹拌条件をさらに2 時間維持し、反応物の大部分を20℃にする。20時間後、メタノールを蒸発、乾燥する。残渣を500ml の塩化メチレンおよび750ml の水中に溶解し、30分間振とうする。有機相を分離し、水性相を250ml の塩化メチレンで抽出する。有機相を併合しセライト上で濾過し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥するまで濃縮すると、85gの9 −デオキソ−9a−アザ−11,12 −デスオキシ−9a−ホモエリスロマイシンA 11,12−水素オルトホウ酸が得られる。
IR (KBr) νmax = 3500,2980,2960,1730,1470,1390,1170,1090,1060 cm -1
1 H-NMR (CDCl3) δ = 2.21 (NMe2), 3.27 (OMe) ppm
(部分)
13C-NMR (CDCl3) δ = 180.0 (C=O), 79.63 (C11), 76.46 (C12),
(部分) 58.7(C10), 57.1(C9), 49.4(OMe), 40.2(NMe2)ppm
11B-NMR (CDCl3) δ = 9.9 ppm ω 1/2 = 200 Hz
TLC rf= 0.28 (石油エーテル:酢酸エチル:ジエチルアミン
75:25:10)
展開液:エタノール/バニリン(硫酸)
【0014】
・ 9 −デオキソ−9a−アザ−11,12 −デスオキシ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA 11,12−水素オルトホウ酸の調製
50gの 9−デオキソ−9a−アザ−11,12 −デスオキシ−9a−ホモエリスロマイシンA 11,12−水素オルトホウ酸を500ml のクロロホルム中に溶解し、次いで5.5ml のギ酸と11.75ml の水性35〜40%ホルムアルデヒドとの混合物を添加する。
加圧下、この反応混合物を14時間加熱し、次いで15〜20℃に冷却する。500ml の水を加え、20%硫酸を加えて混合物をpH = 4 にする。混合物を15分間振とうし、下部有機相を分離する。アルカリ水性相を 2 × 100mlの塩化メチレンで抽出する。有機相を併合しセライト上で濾過し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し蒸発、乾燥する。得られる残渣を250ml のエチルエーテルで2回洗浄すると、29gの乾燥残渣の 9−デオキソ−9a−アザ−11,12 −デスオキシ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA 11,12−水素オルトホウ酸が得られる。
IR (KBr) νmax = 3500,1730,1470,1390,1090,1070 cm -1
1 H-NMR (CDCl3 ) δ = 2.00 (NMe2), 2.30 (NMe), 3.37 (OMe) ppm
(部分)
13C-NMR (CDCl3) δ = 179.9 (C=O), 79.40 (C11), 77.09 (C12), 68.84
(部分) (C9), 64.08 (C10), 49.36 (OMe),40.18 (NMe2),
34.39 (NMe) ppm
11B-NMR (CDCl3) δ = 10.1 ppm ω 1/2 = 180 Hz
m/e M+ = 775.5
TLC rf =0.38 (石油エーテル:酢酸エチル:ジエチルアミン
75:25:10)
展開液:エタノール/バニリン(硫酸)
【0015】
・9−デオキソ−9a−アザ−11,12 −デスオキシ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA 11,12−水素オルトホウ酸の加水分解。 9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA(アジスロマイシン)の合成
22gの 9−デオキソ−9a−アザ−11,12 −デスオキシ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA 11,12−水素オルトホウ酸を250ml のアセトニトリル中に溶解し、次いでこれに125ml の水を加える。この混合物に20%硫酸を添加してpH=2 とし、30分間撹拌を維持する。350ml の塩化メチレンと350ml の水との混合物中に上記酸性溶液を注ぎ、直ちに48%石灰を加えてpH= 9 にする。混合物を15分間振とうし、下部有機相を分離する。アルカリ水性相を 2×100 mlの塩化メチレンで抽出する。併合した有機相をセライト上で濾過し、蒸発、乾燥する。
残渣を50mlのエタノール中に溶解し、60ml の水を30分にわたり添加する。2 時間沈殿させ、濾過により固形分を補集し、40℃で減圧乾燥すると15gの 9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA(アジスロマイシン)が得られる。
IR (KBr) νmax = 3500,3000,2970,1740,1470,1380,1280,1060 cm -1
1 H-NMR (CDCl3) δ = 2.31 (NMe2), 2.34 (NMe), 3.38 (OMe) ppm
(部分)
13C-NMR (CDCl3) δ = 178.9 (C=O), 73.08 (C12), 72.32 (C11), 69.88
(部分) (C9), 62.43 (C10), 49.37 (OMe), 40.23 (NMe2),
35.92 (NMe) ppm
m/e M+ = 749.5
HPLC USP XXIII に準拠対応
TLC rf = 0.62 (石油エーテル:酢酸エチル:ジエチルアミン
75:25:10)
展開液:エタノール/バニリン(硫酸)
【0016】
・ 9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA二水和物の調製。方法A。
25gの結晶アジスロマイシン一水和物を130ml のtert −ブタノール中に30℃に加熱して溶解する。この溶液を濾過し、130ml の水を6 時間に亙って加える。
2N-NaOH を加えて生成混合物をpH = 11 にし、10℃未満に冷却し、次いで48〜72時間撹拌する。濾過により結晶を補集し、乾燥(80mmHg/25 ℃)すると15g のアジスロマイシン二水和物が得られる。
IR (KBr)νmax = 3560,3496,1740,1470,1380,1344,1282,1268,1251,1093 cm-11
H-NMR (CDCl3)、13C-NMR (CDCl3) 、m/e 、 TLC および HPLC は上記実施例のものと同じ。
【0017】
・ 9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA二水和物の調製。方法B。
25gの結晶アジスロマイシン一水和物を50mlのtert −ブタノール中に30℃に加熱しながら溶解する。この溶液を濾過し、500ml の石油エーテルと20mlの水との混合物上に注ぐ。生成混合物を10℃未満に冷却し、次いで48〜72時間撹拌する。濾過により結晶を補集し、乾燥(80mmHg/25 ℃)すると、12gのアジスロマイシン二水和物が得られる。
IR (KBr)、1 H-NMR (CDCl3 )、13C-NMR (CDCl3) 、 m/e、 TLC および HPLC は上記実施例のそれらと同じ。
【0018】
・ 非結晶 9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンAの調製。方法A。
5 gの結晶アジスロマイシン一水和物を25mlのtert −ブタノール中に30℃に加熱しながら溶解する。この溶液を濾過し、冷却浴中で固化させる。溶剤を室温および10-2 mmHg で昇華させる。得られる固形物を乾燥(80mmHg/40℃)させると、5 gの非結晶アジスロマイシンが得られる。
IR (KBr) νmax = 3500,1740,1470,1280,1268,1257 cm-1 (図2参照)
1H-NMR (CDCl3 )、13C-NMR (CDCl3) 、m/e 、 TLC および HPLC は上記実施例のものと同じ。
H2O %(K.F.) = 3.0 %
DSC = 図3参照
X線回折 = 図4参照
【0019】
・ 非結晶 9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンAの調製。方法B。
5 gの結晶アジスロマイシン一水和物を25mlのエタノール中に溶解する。この溶液を濾過し、溶剤を室温および150mmHg で蒸発させる。得られる固形物を乾燥(80mmHg/40℃)させると、5 gの非結晶アジスロマイシンが得られ、分析データは上記実施例のものと同じである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】アジスロマイシンの異なった合成経路図。
【図2】結晶アジスロマイシン二水和物と非結晶アジスロマイシンの赤外スペクトル。
【図3】結晶アジスロマイシン二水和物と非結晶アジスロマイシンのサーモグラム。
【図4】結晶アジスロマイシン二水和物と非結晶アジスロマイシンのX線回折データ。
【図5】結晶アジスロマイシン二水和物と非結晶アジスロマイシンの調製経路図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジスロマイシンの tert−ブタノール溶液に水を添加した後、結晶化させることを特徴とする、結晶二水和物形態の 9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA(アジスロマイシン)の調製方法。
【請求項2】
石油エーテルと水との混合物にアジスロマイシンのtert−ブタノール溶液を添加することによりその溶液から結晶化することを特徴とする、結晶二水和物形態の 9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA(アジスロマイシン)の調製方法。
【請求項3】
結晶二水和物形態の 9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA(アジスロマイシン)の調製方法であって、次の工程を特徴とする調製方法:
a)室温およびpH2〜4の範囲で硫酸、塩酸およびシュウ酸等の希酸を作用させることによる、酢酸エチル、アセトニトリル、メタノールまたはエタノールから選択される有機溶剤中での 9−デオキソ−9a−アザ−11,12 −デスオキシ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA 11,12 −水素オルトホウ酸の加水分解、
b)tert−ブタノール中でのアジスロマイシンの溶解、および
c)水の添加による結晶化。
【請求項4】
結晶二水和物形態の 9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA(アジスロマイシン)の調製方法であって、次の工程を特徴とする調製方法:
a)室温およびpH2〜4の範囲で硫酸、塩酸およびシュウ酸等の希酸を作用させることによる、酢酸エチル、アセトニトリル、メタノールまたはエタノールから選択される有機溶剤中での 9−デオキソ−9a−アザ−11,12 −デスオキシ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA 11,12 −水素オルトホウ酸の加水分解、
b)tert−ブタノール中でのアジスロマイシンの溶解、および
c)石油エーテルと水との混合物への添加による結晶化。
【請求項5】
結晶アジスロマイシンの脂肪族アルコール溶液、好ましくはエタノール溶液またはイソプロパノール溶液を蒸発、乾燥することを特徴とする、非結晶形態の 9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA(アジスロマイシン)の調製方法。
【請求項6】
非結晶形態の 9−デオキソ−9a−アザ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA(アジスロマイシン)の調製方法であって、次の工程を特徴とする、調製方法:
a)室温およびpH2〜4の範囲で硫酸、塩酸およびシュウ酸等の希酸を作用させることによる、酢酸エチル、アセトニトリル、メタノールまたはエタノールから選択される有機溶剤中での 9−デオキソ−9a−アザ−11,12 −デスオキシ−9a−メチル−9a−ホモエリスロマイシンA 11,12 −水素オルトホウ酸の加水分解、および
b)アジスロマイシンの脂肪族アルコール溶液、好ましくはエタノール溶液またはイソプロパノール溶液の蒸発、乾燥。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−7376(P2009−7376A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217072(P2008−217072)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【分割の表示】特願2000−359948(P2000−359948)の分割
【原出願日】平成12年11月27日(2000.11.27)
【出願人】(500543890)アストゥール、ファルマ、ソシエダッド、アノニマ (1)
【氏名又は名称原語表記】ASTUR PHARMA S.A.
【Fターム(参考)】