説明

面光源装置用導光体、その製造方法及び面光源装置

【課題】白色発光LEDからなる一次光源と組み合わせて使用される、導光距離が長い、メタクリル樹脂製の面光源装置用導光体であって、透過率低下が少なく、光出射面における部分的な出射光黄変の発生が抑制された面光源装置用導光体を提供する。
【解決手段】光入射端面41、光出射面43、光反射面44、及び反対端面42を有し、反対端面と光入射端面との間の距離が350mm以上である。導光体は、ブルーイング剤を含むメタクリル樹脂からなり、このメタクリル樹脂は、光入射端面から反対端面までの距離での、波長440nm〜460nmの第1波長帯域の平均分光透過率T1[%]と、波長510nm〜550nmの第2波長帯域の平均分光透過率T2[%]と、波長620nm〜660nmの第3波長帯域の平均分光透過率T3[%]との関係において、T2及びT3の平均値とT1との差が4[%]以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッジライト方式の面光源装置および該面光源装置を構成するのに用いられる導光体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、基本的にバックライトと液晶表示素子とから構成されている。バックライトとしては、液晶表示装置のコンパクト化の観点からエッジライト方式の面光源装置が多用されている。エッジライト方式の面光源装置においては、矩形板状の導光体の少なくとも1つの端面を光入射端面として用いて、該光入射端面に沿って直管型冷陰極管(CCFL)などの線状または棒状の一次光源を配置し、該一次光源から発せられた光を導光体の光入射端面から導光体内部へと導入し、該導光体の2つの主面のうちの一方である光出射面から出射させるようにしている。エッジライト方式の面光源装置には、導光体の1つの端面のみを光入射端面として用いる片端入力式のものと、導光体の互いに反対側に位置する2つの端面の双方を光入射端面として用いる両端入力式のものとがある。導光体の光出射面上には、導光体出射光に対して拡散作用をなす光拡散素子及び偏向作用をなす光偏向素子等を、適宜配置することができる。
【0003】
近年、液晶表示装置に対する軽量化、薄型化及び低消費電力化の需要が高まるに従って、面光源装置に対して輝度性能の向上、薄型化及び低消費電力化が求められている。このような需要に応えるために、面光源装置においては、次第に、一次光源としてCCFLに代わってLEDなどの点状光源が用いられるようになっている。そのような点状光源のなかでも、とくに白色発光LEDが広く使用されている。白色発光LEDは、波長450nm前後の青色発光するLEDチップを、YAG蛍光体等を含有する樹脂で封止した構造を有する。白色発光LEDは、LEDチップから発せられる450nm前後の青色波長域の光に加えて、青色波長域の光による励起に基づきYAG蛍光体等から発せられる緑色波長域の光及び赤色波長域の光を含む、非常に特徴的な波長分布を有する。
【0004】
一方、導光体は合成樹脂から構成される。このような合成樹脂としては、光透過率が高く、耐熱性、力学的特性及び成形加工性に優れるメタクリル樹脂が最適である。このようなメタクリル樹脂としては、メタクリル酸メチルを主成分とする樹脂であり、メタクリル酸メチルが80重量%以上であるものが好ましい。
【0005】
とくに、メタクリル樹脂は、400nm〜700nmの可視光の波長域において、透過率の変化が少ないという特徴を持つ。しかし、導光体を製造するに際して、重合により得られたメタクリル樹脂を一旦ペレット化し、これにより得られたメタクリル樹脂ペレットを素材として用いて射出或いは押出により成形する方法を採用した場合には、次のような問題がある。すなわち、導光体製造に際しての
(1)重合及びペレット化によりメタクリル樹脂を得る際の熱履歴;
(2)射出成形或いは押出成形の際の熱履歴;
(3)重合禁止剤、重合開始剤、その他の低分子量物の残存
等に起因して、導光体内において400nm〜500nmの波長域の光が減衰し、導光体出射光が黄変することが知られている。このような黄変の現象は、片端入力式面光源装置では光入射端面とそれと反対側の反対端面との距離が350mm以上の導光体(すなわち導光距離が350mm以上の導光体)を使用した場合に導光距離が長い領域において顕著であり、両端入力式面光源装置では2つの光入射端面間の距離が500mm以上の導光体(すなわち片端からの導光距離が少なくとも250mmの導光体)を使用した場合に双方の光入射端面からの導光距離が長い領域において顕著である。
【0006】
すなわち、導光体出射光の黄変は、導光体光出射面において、全面均一に発生するのではなく、導光距離が長い領域において部分的に発生する。このため、そのような導光体を用いて構成された面光源装置を液晶表示装置のバックライトとして使用した場合には、面光源装置の面発光及び液晶表示装置の表示画像において、部分的な輝度低下または部分的な色ずれが発生することがある。
【0007】
ところで、特開平8−231808号公報(特許文献1)には、導光板用メタクリル樹脂に蛍光漂白剤を0.1ppm〜10ppm含有させることで、適度に色調を改良して色ムラが少なく、光利用効率が低下しない、優れたサイドライト式面照明装置を得ることができるとの記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−231808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載されている技術において使用される蛍光漂白剤は、通常、300nm〜400nmの波長域の光を吸収し、400nm〜500nmの波長域の光を発光するものである。しかるに、上記の白色発光LEDの場合には、発光域に300nm〜400nmの波長域が実質上含まれておらず、このため導光体用メタクリル樹脂に蛍光漂白剤を含有させても蛍光発光が起こらない。
【0010】
また、従来、ポリカーボネート樹脂からなる小型の導光体(すなわち導光距離の短い導光体)では、ポリカーボネート樹脂における400nm〜500nmの波長域での透過率減衰による黄変を防止するために、ポリカーボネート樹脂にブルーイング剤を含有させる手法がとられてきた。しかし、そのような手法を導光距離が長く(例えば導光距離が250mm以上で)、メタクリル樹脂製で、しかも白色発光LEDからなる一次光源と組み合わせて使用される面光源装置用導光体(例えばモニタまたはテレビジョン受信機等の液晶表示装置の面光源装置用の導光体)に適用することについては、提案されていない。その1つの理由は、導光距離が長いメタクリル樹脂製の面光源装置用導光体において同様な効果を得ようとすると、ブルーイング剤の使用量が多くなり平均透過率が非常に低くなると考えられたからであると推測される。
【0011】
また、一般に、メタクリル樹脂においても、紫外線吸収剤を添加した品種の場合には、透過色が黄色くなりやすいので、30ppb〜80ppb程度のブルーイング剤を含有させることが普通であるが、そのようなメタクリル樹脂は導光体用途とくに白色発光LEDからなる一次光源と組み合わせて使用される導光体の用途では使用されていない。
【0012】
本発明の1つの目的は、白色発光LEDからなる一次光源と組み合わせて使用される、導光距離が長い、メタクリル樹脂製の面光源装置用導光体であって、透過率低下が少なく、光出射面における部分的な出射光黄変の発生が抑制された面光源装置用導光体を提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は、以上のような面光源装置用導光体の製造方法を提供することにある。
【0014】
また、本発明の更に別の目的は、以上のような面光源装置用導光体を用いて構成される面光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、上記の課題を解決するために、
一次光源から発せられる光を導光し、且つ前記一次光源から発せられる光が入射する1つの光入射端面、導光された光の一部が出射する光出射面、及び該光出射面の反対側の光反射面を有する、板状のエッジライト方式面光源装置用導光体であって、
該導光体は前記光入射端面の反対側の反対端面を有し、該反対端面と前記光入射端面との間の距離が350mm以上であり、
前記導光体は、ブルーイング剤を含むメタクリル樹脂からなり、
前記メタクリル樹脂は、前記光入射端面から前記反対端面までの距離での、波長440nm〜460nmの第1波長帯域の平均分光透過率T1[%]と、波長510nm〜550nmの第2波長帯域の平均分光透過率T2[%]と、波長620nm〜660nmの第3波長帯域の平均分光透過率T3[%]との関係において、前記T2及びT3の平均値と前記T1との差が4[%]以下であることを特徴とするエッジライト方式面光源装置用導光体、
が提供される。
【0016】
また、本発明によれば、上記の課題を解決するために、以上のようなエッジライト方式面光源装置用導光体と、前記光入射端面に隣接して配置された白色発光LEDからなる前記一次光源と、を備えるエッジライト方式面光源装置、が提供される。
【0017】
更に、本発明によれば、上記の課題を解決するために、
第1及び第2の一次光源から発せられる光を導光し、且つ前記第1及び第2の一次光源から発せられる光がそれぞれ入射し互いに反対側に位置する第1及び第2の光入射端面、導光された光の一部が出射する光出射面、及び該光出射面の反対側の光反射面を有する、板状のエッジライト方式面光源装置用導光体であって、
前記第1の光入射端面と前記第2の光入射端面との間の距離が500mm以上であり、
前記導光体は、ブルーイング剤を含むメタクリル樹脂からなり、
前記メタクリル樹脂は、前記第1の光入射端面から前記第2の光入射端面までの距離の半分の距離での、波長440nm〜460nmの第1波長帯域の平均分光透過率T1’[%]と、波長510nm〜550nmの第2波長帯域の平均分光透過率T2’[%]と、波長620nm〜660nmの第3波長帯域の平均分光透過率T3’[%]との関係において、前記T2’及びT3’の平均値と前記T1’との差が4[%]以下であることを特徴とするエッジライト方式面光源装置用導光体、
が提供される。
【0018】
また、本発明によれば、上記の課題を解決するために、以上のようなエッジライト方式面光源装置用導光体と、前記第1の光入射端面に隣接して配置された白色発光LEDからなる前記第1の一次光源と、前記第2の光入射端面に隣接して配置された白色発光LEDからなる前記第2の一次光源と、を備えるエッジライト方式面光源装置、が提供される。
【0019】
また更に、本発明によれば、上記の課題を解決するために、
以上のようなエッジライト型面光源装置用導光体を製造する方法であって、
前記ブルーイング剤を含むメタクリル樹脂ペレットを作製し、
該メタクリル樹脂ペレットを成形用素材として用いて成形することで前記エッジライト方式面光源装置用導光体を得ることを特徴とする、エッジライト方式面光源装置用導光体の製造方法、
が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、白色発光LEDからなる一次光源と組み合わせて使用され、導光距離が長く、透過率低下が少なく、光出射面における部分的な出射光黄変の発生が抑制された、メタクリル樹脂製の面光源装置用導光体が提供される。また、本発明によれば、以上のような面光源装置用導光体の製造方法が提供される。更に、本発明によれば、以上のような面光源装置用導光体を用いて構成される面光源装置が提供され、該面光源装置の面発光ひいては該面光源装置を用いて構成される液晶表示装置などの表示装置の表示画像における部分的な輝度低下または部分的な色ずれの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明によるエッジライト方式面光源装置の第1の実施形態を示す模式的斜視図である。
【図2】本発明によるエッジライト方式面光源装置の第1の実施形態における導光体を一次光源とともに示す模式的断面図である。
【図3】本発明によるエッジライト方式面光源装置の第1の実施形態における導光体を示す模式的断面図である。
【図4】本発明によるエッジライト方式面光源装置の第1の実施形態における導光体を光偏向素子とともに示す模式的断面図である。
【図5】本発明によるエッジライト方式面光源装置の第2の実施形態における導光体を第1及び第2の一次光源とともに示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
[第1の実施形態]
図1は本発明によるエッジライト方式面光源装置の第1の実施形態を示す模式的斜視図であり、図2は本実施形態における導光体(即ち本発明による面光源装置用導光体の第1の実施形態)を一次光源とともに示す模式的断面図であり、図3は本実施形態における導光体を示す模式的断面図であり、図4は本実施形態における導光体を光偏向素子とともに示す模式的断面図である。図2は図1のXZ断面に対応し、図3は図1のYZ断面に対応し、図4は図1のXZ断面に対応する。
【0024】
これらの図に示されているように、本実施形態の面光源装置は、1つの端面を光入射端面41とし、これと略直交する一つの表面を光出射面43とする導光体4と、この導光体4の光入射端面41に対向して配置された一次光源2と、導光体4の光出射面43上に配置された光偏向素子6と、導光体4の光出射面43とは反対側の光反射面44に対向して配置された光反射素子8とを含んで構成されている。
【0025】
(一次光源)
一次光源2としては、略点状の白色発光LED光源が用いられる。ここで、一次光源につき「略点状」とは、冷陰極管等におけるような線状または棒状に比べて点状と見なし得る程度のものである。複数の一次光源2がY方向に配列されている。
【0026】
白色発光LED光源は、波長450nm前後の青色発光するLEDチップを黄色の蛍光体(YAG蛍光体)を含有する樹脂で封止した構造を有する。白色発光LED光源の発する光の波長分布は、LEDチップから発せられる450nm前後の青色波長域の光に加えて、青色波長域の光による励起に基づき黄色の蛍光体から発せられる緑色波長域の光及び赤色波長域の光を含む。また、赤色の蛍光体と緑色の蛍光体を含有する樹脂で封止したり、赤色、緑色及び黄色の蛍光体を含有する樹脂で封止することにより、より演色性を良くすることが可能である。複数の一次光源2は、それらから発せられる光の最大強度光の方向が互いに平行となるように配置するのが好ましい。一次光源2から発せられる光の最大強度光の方向は、たとえばX方向とすることができる。
【0027】
図1では、一次光源2は、簡単のために2つのみ示されているが、これに限定されるものでないことはもちろんである。一次光源2の数は、当該一次光源の構造及び性能、導光体4のY方向寸法、更には要求される輝度等の光学特性の程度などに応じて、適宜増加することができる。これに伴い、一次光源2の配列ピッチも適宜変更することができる。具体例(32インチ)を挙げれば、導光体4のY方向寸法が710mmの場合には、一次光源2の数を96個とし、一次光源2の配列ピッチを7.3mmとすることができる。
【0028】
(導光体)
導光体4は、XY面と平行に配置され、全体として矩形板状をなしている。導光体4は、4つの端面を有しており、そのうちのYZ面と略平行な1対の端面のうちの一方が光入射端面41とされ、該光入射端面41と対向するように一次光源2が隣接配置されている。導光体4のYZ面と略平行な1対の端面のうちの他方の端面は、光入射端面と反対側の反対端面42とされている。導光体4の光入射端面41に略直交する2つの主面(表面及び裏面)は、いずれもZ方向と略直交するように配置されており、一方の主面である上面(表面)が光出射面43とされ、他方の主面である下面(裏面)が光反射面44とされている。
【0029】
図1において、符号Fは有効表示領域を示す。有効表示領域とは、面光源装置の発光面上に透過型液晶表示素子等の表示素子を配置して液晶表示装置等の表示装置を構成した場合に、面光源装置において実際に表示装置の有効表示のための照明に利用される光が発せられる領域(すなわち、表示装置の有効な表示領域に対応する面光源装置の領域)のことである。この有効表示領域Fは、たとえば導光体光出射面43内の領域についてもいうことができる。この有効表示領域Fは、面光源装置の発光領域に対して対角で2〜20mmほど小さい領域となることが多い。また、導光体光出射面43において、導光体4の光入射端面41に隣接する端縁から有効表示領域Fまでの距離は、面光源装置の形状及びサイズにもよるが、一般的に4〜15mm程度である。
【0030】
光出射面43は、光出射制御機能構造としての微細凹凸構造を有する粗面からなるものとすることができる。この粗面により、光出射面43の法線方向(Z方向)及び光入射端面41と直交するX方向の双方を含むXZ面内の分布において指向性のある光を出射させる。この出射光分布のピークの方向が光出射面となす角度は例えば10°〜40°であり、出射光分布の半値全幅は例えば10°〜40°である。
【0031】
導光体4の光出射面43に形成される光出射制御機能構造としての微細凹凸構造を有する粗面の平均傾斜角θaは、ISO4287/1−1984に従って、触針式表面粗さ計を用いて粗面形状を測定し、測定方向の座標をxとして、得られた傾斜関数f(x)から次の(1)式および(2)式
Δa=(1/L)∫|(d/dx)f(x)|dx ・・・ (1)
θa=tan−1(Δa) ・・・ (2)
を用いて求めることができる。ここで、Lは測定長さであり、Δaは平均傾斜角θaの正接である。粗面は、ISO4287/1−1984による平均傾斜角θaが0.1〜10度の範囲のものとすることが、光出射面43内での輝度の均斉度の向上を図る点から好ましい。平均傾斜角θaは、さらに好ましくは0.2〜8度の範囲であり、より好ましくは0.3〜5度の範囲である。また、光出射制御機能構造としては、高さ2μm以上で、X方向に延び、高さや傾斜角度が変化する多数の突起構造列を設けることもできる。
【0032】
なお、導光体の光出射面の構成は、上述のものに限定されるものではなく、一部のみが粗面化された構成、光の出射率向上、光の直進性向上、視野角の制御のためのレンズ列を形成した構成、これらを組み合わせた構成とされてもよい。特に、光反射面44に光出射制御機能構造が形成される場合には、光出射面に光出射制御機能構造を形成することなく、該光出射面を鏡面にしてもよい。
【0033】
導光体4の光出射面43と反対側の主面(すなわち、光反射面44)には、光出射面43からの出射光のYZ面(白色発光LEDの配列方向と平行)内での指向性を制御するために、光入射端面41を横切る方向例えば光入射端面41に対して略垂直の方向(すなわち、光出射面43に沿った面内での導光体4に入射した光の指向性の方向であるX方向)にほぼ沿って互いに平行に延びる多数のレンズ列(光反射面レンズ列)44aが形成されていることが好ましい。即ち、互いに略平行に配列された光反射面レンズ列のそれぞれは、光反射面44と光入射端面41との境界に垂直の方向即ちX方向にほぼ沿って延びている。尚、ここでいう「光反射面44と光入射端面41との境界」における「光反射面44」は、レンズ列44aの形状を除外したものを指すものとし、具体的にはXY面と平行である。すなわち、ここでいう「光反射面44と光入射端面41との境界」は、大略Y方向に沿って延びている。
【0034】
光反射面レンズ列44aとしては、先端がR形状のプリズム列またはレンチキュラーレンズ列を用いるのが好ましい。本発明においては、光反射面レンズ列の延びる方向と直交する断面の形状において、当該レンズ列のアスペクト比、即ちレンズ列の配列ピッチ(P1)と高さ(H1)との比(P1/H1)、が2〜100、好ましくは2〜50、より好ましくは2〜20であり、断面形状が円弧であるか或いは先端が曲線である光反射面レンズ列が好ましく用いられる。これは、光反射面レンズ列44aのアスペクト比をこの範囲とすることで、光出射面43からの出射光を十分に集光させることができ、さらにレンズ列の破損や潰れ、光反射素子8との擦れに起因する白点の発生を防止することができるからである。即ち、光反射面レンズ列44aの形状をこの範囲内とすることで、出射光分布におけるピーク光方向を含みXZ面に垂直な面において出射光分布の半値全幅が30°〜65°である集光された出射光を出射させることができる。さらに、このレンズ列は、画面全体の輝度を上昇させるための光出射率向上やローカルディミングのための光の直進性向上等の役割も果たす場合がある。
【0035】
光反射面レンズ列44aの配列ピッチP1は、例えば10μm〜300μm、好ましくは10μm〜150μm、より好ましくは20μm〜100μmである。また、光反射面レンズ列44aの先端部の断面形状は、曲率半径Rが25〜300μmの円弧形状或いは先端が円弧形状であって裾野の部分が直線であることが好ましいが、特に先端が円弧形状に限定されず、それに近似できる形状であってもよい。また、光反射面レンズ列44aの断面形状は、先端部以外の部分も曲線形状とされてもよく、例えばサインカーブなどにより表わされる波形状であってもよい。
【0036】
特に、光出射面43に光出射制御機能構造が形成されない場合には、光反射面44に光出射制御機能構造を形成してもよい。この光出射制御機能構造は、光反射面44に光反射面レンズ列44aが形成されている場合には、光反射面レンズ列44aの表面を粗面化したり、レンズ列の上に突起構造を重畳させたものとすることができる。
【0037】
なお、導光体4の光出射機能構造としては、上記の様な光出射面43及び/または光反射面44に形成したレンズ列、粗面或いは突起構造列と併用して、導光体4の内部に光拡散性微粒子を混入分散することで形成したものを用いることができる。また、導光体4としては、図1に示される様な全体として一様な厚さ(光出射面43の粗面の微細凹凸形状及びレンズ列形状並びに光反射面44のレンズ列形状等を無視した場合の厚さ)の板状のものの他に、X方向に関して光入射端面41から反対端面42の方へと次第に厚さが小さくなる様なくさび状のもの等の、種々の断面形状のものを使用することができる。さらに、導光体4の光出射面43の有効表示領域Fを鏡面とし、光反射面レンズ列44aの表面を粗面としたり、レンズ列の上または底の部分に突起構造を重畳させたものとしても構わない。粗面の場合、光反射面レンズ列44aの表面は、当該光反射面レンズ列の斜面を基準面として、平均傾斜角θaが0.1〜10度の範囲のものとすることが、光出射面43内での輝度の均斉度の向上を図る点から好ましい。平均傾斜角θaは、さらに好ましくは0.2〜8度の範囲であり、より好ましくは0.3〜5度の範囲である。突起構造列は高さが2μm以上であって、斜面の傾斜角度が2〜8度の範囲が好ましい。
【0038】
導光体4の厚さは例えば0.3〜10mmである。また、導光体4の反対端面42と光入射端面41との間の距離(導光距離)は350mm以上である。
【0039】
導光体4は、ブルーイング剤を含むメタクリル樹脂からなる。メタクリル樹脂は、光透過率が高く、耐熱性、力学的特性及び成形加工性に優れている。このようなメタクリル樹脂としては、メタクリル酸メチルを主成分とする樹脂であり、メタクリル酸メチルが80重量%以上であるものが好ましい。
【0040】
導光体4に含まれるブルーイング剤としては、特に制限はなく、一般に知られるキナクリドン系化合物、アントラキノン系化合物等の有機色素を挙げることができる。特に、一般的にはアントラキノン系染料が入手容易であり好ましい。市販されているブルーイング剤としては、例えば、「Solvent Violet13」〔商品名:「マクロレックスバイオレットB」(バイエル社製)、商品名:「ダイアレジンブルーG」(三菱化学製)、商品名:「スミプラストバイオレットB」(住友化学工業製)など〕、「Solvent Violet31」〔商品名:「ダイアレジンバイオレットD」(三菱化学製)〕、「Solvent Violet33」〔商品名:「ダイアレジンブルーJ」(三菱化学製)〕、「Solvent Blue94」〔商品名:「ダイアレジンブルーN」(三菱化学製)〕、「Solvent Violet36」〔商品名:「マクロレックスバイオレット3R」(バイエル社製)〕、「Solvent Blue97」〔商品名:「マクロレックスバイオレットRR」(バイエル社製)〕、「Solvent Blue45」〔商品名:「テトラゾールブルーRLS」(サンド社製)〕等を使用することができる。
【0041】
導光体4のメタクリル樹脂へのブルーイング剤の添加は、次のようにして行うことができる。すなわち、導光体4の製造は、次のようにして行うことができる。
【0042】
先ず、ブルーイング剤を含むメタクリル樹脂ペレットを作製する第1工程を行う。この第1工程では、公知の方法によりメタクリル酸エステルを含む重合用組成物を重合反応させることでメタクリル樹脂を得るに際して、重合性組成物中にブルーイング剤を充分均等に分散するように含有させてもよいし、重合工程後のペレット化工程におけるスクリュータイプの押出機の混練過程でブルーイング剤を充分均等に分散するように含有させてもよい。得られた重合体すなわちメタクリル樹脂はペレットの形態とされる。該メタクリル樹脂ペレット中において、ブルーイング剤は充分均等に分散されている。
【0043】
次に、該メタクリル樹脂ペレットを成形用素材として用いて、公知の射出成形または押し出し成形により、導光体を得る第2工程を行う。この第2工程で得られた導光体においては、ブルーイング剤は充分均等に分散されて含有されている。
【0044】
メタクリル樹脂中のブルーイング剤の含有量は、次のような光学的条件が満たされるように、適宜設定される。
【0045】
すなわち、光入射端面41から反対端面42までの距離での、波長440nm〜460nmの第1波長帯域の平均分光透過率T1[%]と、波長510nm〜550nmの第2波長帯域の平均分光透過率T2[%]と、波長620nm〜660nmの第3波長帯域の平均分光透過率T3[%]との関係において、T2及びT3の平均値とT1との差が4[%]以下であるようにする。
【0046】
ここで、平均分光透過率T1〜T3の測定は、光出射制御機能構造を付与した導光体で行うのではなく、たとえば、光出射制御機能構造等の表面構造を形成する前の平板状導光板(光入射端面41及び反対端面42は形成されている)と同様な平板状導光板からなる試料を用いて行うことができる。測定に際しては、平行光を入射し、その透過光量を測定することによって行うことができる。具体的には、T1〜T3の測定は、分光光度計(例えば日立社製の分光光度計U−4100)を用いて行うことができる。実際には、測定対象である平板状導光板(光出射制御機能構造なし、側面は鏡面化)の光入射端面対応の端面に断面四角形の平行光を入射し、その反対端面を積分球に挿入して、光の透過減衰量を測定する。
【0047】
メタクリル樹脂中のブルーイング剤の含有量が少な過ぎると、黄変発生(イエローシフト)を十分に解消することができなくなる傾向にある。また、メタクリル樹脂中のブルーイング剤の含有量が多過ぎると、ブルーイング剤による光吸収が強くなり、透過率が低下する傾向にある。透過率が低下した場合、LEDの数を増やす方法、LED駆動電流を増加させ、1個のLEDからの光量を増やす方法が考えられるが、ブルーイング剤の含有量の上限は、所望の距離において、T1〜T3の値が70%未満とならないことである。現状では、LEDの光量アップ及びLED個数のアップにより総光量を上げ、均斉度を保つことが必要であるが、均斉度を確保するために行う光出射制御機能構造のグラデーションは、T1〜T3が70%未満では非常に難しくなる。
【0048】
導光体4の粗面の表面構造やレンズ列等の表面構造を形成するに際しては、透明メタクリル樹脂板を所望の表面構造を有する型部材を用いて熱プレスすることで形成してもよいし、射出成形等によって成形と同時に形状付与してもよい。また、熱あるいは光硬化性樹脂等を用いて構造面を形成することもできる。更に、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリメタクリルイミド系樹脂等からなる透明フィルムあるいはシート等の透明基材上に、活性エネルギー線硬化型樹脂からなる粗面構造またレンズ列配列構造を表面に形成し、このようなシートを接着、融着等の方法によって別個のメタクリル樹脂からなる透明基材上に接合一体化させてもよい。活性エネルギー線硬化型樹脂としては、多官能(メタ)アクリル化合物、ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル類、アリル化合物、(メタ)アクリル酸の金属塩等を使用することができる。
【0049】
(光偏向素子)
光偏向素子6は、導光体4の光出射面43上に配置されている。光偏向素子6の2つの主面は、それぞれ全体としてXY面と略平行に位置する。2つの主面のうちの一方(導光体の光出射面43と対向する主面)は入光面61とされており、他方が出光面62とされている。出光面62は、導光体4の光出射面43と平行な平坦面または粗面とされている。入光面61は、多数のプリズム列65が互いに平行に配列されたプリズム列形成面とされている。
【0050】
入光面61のプリズム列65は、LEDの配列方向と略平行のY方向に延び、互いに平行に形成されている(すなわち、入光面61には導光体光入射端面41に沿って互いに平行に配列された複数のプリズム列65が形成されている)。プリズム列65の配列ピッチP2は、10μm〜100μmの範囲とすることが好ましく、より好ましくは10μm〜80μm、さらに好ましくは20μm〜70μmの範囲である。また、プリズム列65の頂角は、30°〜80°の範囲とすることが好ましく、より好ましくは40°〜70°の範囲である。
【0051】
光偏向素子6においては、所望の形状のプリズム列を精確に作製し、安定した光学性能を得るとともに、組立作業時や光源装置としての使用時におけるプリズム列頂部の摩耗や変形を抑止する目的で、プリズム列の頂部に頂部平坦部あるいは頂部曲面部を形成してもよい。この場合、頂部平坦部あるいは頂部曲面部の幅は、3μm以下とすることが、面光源装置としての輝度の低下やスティッキングによる輝度の不均一パターンの発生を抑止する観点から好ましく、より好ましくは頂部平坦部あるいは頂部曲面部の幅は2μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。
【0052】
光偏向素子6の厚さは、例えば30〜350μmである。
【0053】
図4には、光偏向素子6による光偏向の様子が示されている。この図は、XZ面内での導光体4からのピーク出射光(出射光分布のピークに対応する光)の進行方向を示すものである。導光体4の光出射面43の特に有効表示領域Fから斜めに出射される光は、光偏向素子6のプリズム列65の第1面へ入射し第2面により全反射されて、導光体4からの出射光の指向性をほぼ維持したまま出光面62の略法線の方向に出射する。これにより、XZ面内では、出光面62の法線の方向において高い輝度を得ることができる。
【0054】
光偏向素子6は、導光体4からの出射光を目的の方向に偏向(変角)させる機能を果たすものであり、上記の様な指向性の高い光を出射する導光体4と組み合わせる場合には、少なくとも一方の面に多数のレンズ単位が並列して形成されたレンズ面を有するレンズシートを使用することが好ましい。レンズシートに形成されるレンズ形状は、目的に応じて種々のものが使用され、例えば、プリズム形状、レンチキュラーレンズ形状、フライアイレンズ形状、波型形状等が挙げられる。中でも断面略三角形状の多数のプリズム列が並列に配置されたプリズムシートが特に好ましい。但し、プリズム列を構成する2つのプリズム面の少なくとも一方は、断面形状が複数の直線からなるものまたは1つ以上の曲線からなるもの或いは1つ以上の直線と1つ以上の曲線との組合せからなるものであっても良い。
【0055】
光偏向素子6は、光透過率の高い合成樹脂から構成することができる。このような合成樹脂としては、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂が例示できる。特に、メタクリル樹脂が、光透過率が高く、耐熱性、力学的特性及び成形加工性に優れており、最適である。このようなメタクリル樹脂としては、メタクリル酸メチルを主成分とする樹脂であり、メタクリル酸メチルが80重量%以上であるものが好ましい。光偏光素子6の粗面の表面構造やプリズム列等の表面構造を形成するに際しては、透明合成樹脂板を所望の表面構造を有する型部材を用いて熱プレスすることで形成してもよいし、スクリーン印刷、押出成形や射出成形等によって成形と同時に形状付与してもよい。また、熱あるいは光硬化性樹脂等を用いて構造面を形成することもできる。更に、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリメタクリルイミド系樹脂等からなる透明フィルムあるいはシート等の透明基材上に、活性エネルギー線硬化型樹脂からなる粗面構造またレンズ列配列構造を表面に形成してもよいし、このようなシートを接着、融着等の方法によって別個の透明基材上に接合一体化させてもよい。活性エネルギー線硬化型樹脂としては、多官能(メタ)アクリル化合物、ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル類、アリル化合物、(メタ)アクリル酸の金属塩等を使用することができる。
【0056】
(光反射素子)
光反射素子8としては、例えば表面に金属蒸着反射層を有するプラスチックシートを用いることができる。本発明においては、光反射素子8として光反射素子に代えて、導光体4の光反射面44に金属蒸着等により形成された光反射層等を用いることも可能である。尚、導光体4の光入射端面として利用される端面以外の端面にも反射部材を付することが好ましい。
【0057】
(液晶表示装置)
以上のような白色発光LED光源からなる一次光源2、導光体4、光偏向素子6及び光反射素子8からなる面光源装置の発光面(光偏向素子6の出光面62)上に、透過型液晶表示素子等の表示素子を配置することにより液晶表示装置等の表示装置が構成される。図1において、符号Fは、面光源装置と組み合わせて使用される表示素子の有効表示の領域に対応する当該面光源装置の上記有効表示領域を示す。
【0058】
液晶表示装置等の表示装置は、図1における上方から観察者により観察される。十分にコリメートされた狭い分布の光を面光源装置から液晶表示素子に入射させることができるため、液晶表示素子での階調反転等がなく明るさ、色相の均一性の良好な画像表示が得られるとともに、所望の方向に集中した光照射が得られ、この方向の照明に対する一次光源の発光光量の利用効率を高めることができる。また、入射端面近傍の輝度ムラの発生が防止されることから、額縁部分を小さくし、より大画面・高品質・低消費電力な液晶表示装置を提供することができる。
【0059】
なお、図4に示されるように、光偏向素子6の出光面62上に、光拡散素子7を隣接配置することができる。この光拡散素子7により、画像表示の品位低下の原因となるぎらつきや輝度斑などを抑止し、画像表示の品質を向上させることができる。光拡散素子7は、光拡散材を混入したシート状のものとすることができ、光偏向素子6の出光面62側にて該光偏向素子6に接合などにより一体化させてもよいし、光偏向素子6上に載置してもよい。光偏向素子6上に載置する場合には、光偏向素子6とのスティッキング防止のために、光拡散素子の光偏向素子6と対向する側の面(光入射側の面)に凹凸構造を付与することが好ましい。更に、光拡散素子7の光出射側の面にも、その上に配置される液晶表示素子との間でのスティッキング防止のために、凹凸構造を付与することが好ましい。この凹凸構造は、十点平均粗さが好ましくは0.7°以上、更に好ましくは1.0°以上、より好ましくは1.5°以上となるような構造とすることができる。
【0060】
以上の第1の実施形態においては、導光体4は、ブルーイング剤を含むメタクリル樹脂からなり、該メタクリル樹脂が上記特定の分光透過率分布を持つようにしている。このため、導光距離が長く、透過率低下が少なく、光出射面における部分的な出射光黄変の発生が抑制された片端入力式面光源装置用の導光体が提供される。また、本実施形態によれば、以上のような面光源装置用導光体を用いて構成される面光源装置の面発光ひいては該面光源装置を用いて構成される液晶表示装置などの表示装置の表示画像における部分的な輝度低下または部分的な色ずれの発生を抑制することができる。
【0061】
第1の実施形態では、光偏向素子として入光面側をプリズム列形成面としたものを用いた光学系を選択したが、光偏向素子の出光面側をプリズム列形成面としたものを用いた光学系を選択しても良い。その場合の導光体は、光出射面は光の出射率向上、光の直進性向上、視野角の制御のためのレンズ列、光反射面は白色の印刷ドット或いは、レーザー等で凹凸加工したドットが光出射制御機能構造として用いられる。この場合は、光偏向素子としてプリズム列を形成したシートと導光体との間に位置する拡散シートも用いられる。
【0062】
[第2の実施形態]
図5は本発明によるエッジライト方式面光源装置の第2の実施形態における導光体(即ち本発明による面光源装置用導光体の第2の実施形態)を一次光源とともに示す模式的断面図である。図5は、上記第1の実施形態の図2に対応する断面を示す。
【0063】
第1の実施形態が片端入力式であるのに対して、本第2の実施形態は両端入力式である点で第1の実施形態と異なる。以下、主として第1の実施形態と異なる事項について説明し、第1の実施形態と共通の事項については説明を省略する。
【0064】
本実施形態では、白色発光LED光源からなる一次光源として、第1の一次光源2A及び第2の一次光源2Bが用いられている。また、導光体4は、互いに反対側に位置する第1の光入射端面41A及び第2の光入射端面41Bを有する。第1の光入射端面41Aには、隣接配置された第1の一次光源2Aから発せられる光が入射する。第2の光入射端面41Bには、隣接配置された第2の一次光源2Bから発せられる光が入射する。
【0065】
第1の光入射端面41Aと第2の光入射端面41Bとの間の距離(導光距離の2倍の距離)は、500mm以上である。
【0066】
導光体において、メタクリル樹脂中のブルーイング剤の含有量は、次のような光学的条件が満たされるように、適宜設定される。すなわち、第1の光入射端面41Aから第2の光入射端面41Bまでの距離の半分の距離での、波長440nm〜460nmの第1波長帯域の平均分光透過率T1’[%]と、波長510nm〜550nmの第2波長帯域の平均分光透過率T2’[%]と、波長620nm〜660nmの第3波長帯域の平均分光透過率T3’[%]との関係において、T2’及びT3’の平均値とT1’との差が4[%]以下であるようにする。
【0067】
ここで、平均分光透過率T1’〜T3’の測定は、光出射制御機能構造を付与した導光体で行うのではなく、たとえば、光出射制御機能構造等の表面構造を形成する前の平板状導光板(第1の光入射端面41A及び第2の光入射端面41Bは形成されている)と同様な導光板を第1の光入射端面41A側と第2の光入射端面41B側とに2分割して得られる何れかの分割部分からなる試料を用いて行うことができる。測定に際しては、平行光を入射し、その透過光量を測定することによって行うことができる。具体的には、T1’〜T3’の測定は、T1〜T3の測定と同様にして、分光光度計(例えば日立社製の分光光度計U−4100)を用いて行うことができる。
【0068】
尚、上記第1の実施形態では、導光体の形状につき、X方向に関して光入射端面41から反対端面42の方へと次第に厚さが小さくなる様なくさび状のものが例示されている。これに対応して、本第2の実施形態では、導光体の形状につき、X方向に関して第1及び第2の光入射端面41A,41Bからそれぞれ導光体中央の方へと次第に厚さが小さくなる様な形状を例示することができる。
【0069】
その他は、実質上、上記第1の実施形態と同様である。
【0070】
以上の第2の実施形態においては、導光体4は、ブルーイング剤を含むメタクリル樹脂からなり、該メタクリル樹脂が上記特定の分光透過率分布を持つようにしている。このため、導光距離が長く、透過率低下が少なく、光出射面における部分的な出射光黄変の発生が抑制された両端入力式面光源装置用導光体が提供される。また、本実施形態によれば、以上のような面光源装置用導光体を用いて構成される面光源装置の面発光ひいては該面光源装置を用いて構成される液晶表示装置などの表示装置の表示画像における部分的な輝度低下または部分的な色ずれの発生を抑制することができる。
【0071】
上記の説明により、本発明の実施形態について詳細な説明を行ったが、本発明は上述の説明に限定されるものではなく、種々の変更が加えられても構わない。例えば、導光体の光出射面の光入射端面近傍に、光出射面のその他の部分とは異なる形状のレンズ列が併設されても構わない。
【実施例】
【0072】
以下、実施例及び比較例によって本発明を説明する。
【0073】
[実施例1]
ブルーイング剤「ダイアレジンブルーN」(三菱化学製商品名)20ppbを含むメタクリル樹脂ペレットを作製する第1工程を行った。この第1工程では、公知の方法によりメタクリル酸エステルを含む重合用組成物を重合反応させることでメタクリル樹脂「VH#001」(三菱レイヨン製商品名)を得るに際して、重合性組成物中にブルーイング剤を充分均等に分散するように含有させた。得られた重合体すなわちメタクリル樹脂は、ペレットの形態とされた。該メタクリル樹脂ペレット中において、ブルーイング剤は充分均等に分散されて含有されていた。
【0074】
ブルーイング剤の不均一分散の影響は、全体の光透過率、特に短波長での光透過率の減衰という形で現れる。さらにブルーイング剤の凝集が起こると、導光体の輝点として観察される。同じ条件で測定したT1の値に3%以上の開きがある場合には、分散の度合いが悪いものと想像される。
【0075】
以上のようにして得られたメタクリル樹脂ペレットを成形用素材として用いて、公知の射出成形により、上記第1の実施形態に属する導光体を得る第2工程を行った。成形は、シリンダ温度250℃で、型部材温度50℃の条件で実施した。導光体の寸法は、X方向600mm×Y方向50mm×Z方向5mmであった。この第2工程で得られた導光体においては、ブルーイング剤は充分均等に分散されて含有されていた。
【0076】
実際の導光体の光入射端面から各距離の位置における出射光の色度は、光出射制御機能構造等の表面構造を付与しない場合(即ち光出射制御機能構造等の表面構造を形成する前の平板状導光板)における、その位置での透過光の色度と同じと考えられるので、実際の導光体とは別に、同様にして、透過光の強度及び色度の測定のための試料用の平板状導光板を得た。平板状導光板のすべての表面は鏡面とした。
【0077】
得られた平板状導光板の光入射端面対応の端面に断面4×6mmの四角形状の平行光を垂直入射させ、反対端面対応の端面から出射する光について、波長440nm〜460nmの第1波長帯域における平均分光透過率T1[%]、波長510nm〜550nmの第2波長帯域における平均分光透過率T2[%]、及び波長620nm〜660nmの第3波長帯域における平均分光透過率T3[%]を測定した。T1は71.2[%]であり、T2は74.9[%]であり、T3は75.0[%]であり、T2及びT3の平均値75.0[%]とT1との差は3.8[%]であった。
【0078】
光入射端面対応端面から200mmの位置での透過光の色座標xおよびyと600mmの位置での色座標xおよびyとの差Δx,Δyは、Δx=0.001、Δy=0.005であり、部分的な輝度低下または部分的な色ずれの発生は視認されなかった。
【0079】
[比較例1]
導光体の製造に際してブルーイング剤を含有させなかったこと以外は実施例1と同様にして実施した。
【0080】
実施例1と同様にして平均分光透過率T1[%]〜T3[%]を測定した。T1は74.3[%]であり、T2は78.6[%]であり、T3は78.8[%]であり、T2及びT3の平均値78.7[%]とT1との差は4.4[%]であった。
【0081】
光入射端面対応端面から200mmの位置の透過光の色座標xおよびyと600mmの位置の色座標xおよびyとの差Δx,Δyは、Δx=0.001、Δy=0.006であり、部分的な輝度低下及び部分的な色ずれが視認された。
【0082】
[実施例2]
実施例1と同様にして、ブルーイング剤「ダイアレジンブルーN」(三菱化学製商品名)20ppbを含む実施例1とは重合開始剤量の異なるメタクリル樹脂ペレットを作製する第1工程を行った。
【0083】
以上のようにして得られたメタクリル樹脂ペレットを成形用素材として用いて、公知の射出成形により、上記第2の実施形態に属する導光体を得る第2工程を行った。成形は、シリンダ温度250℃で、型部材温度50℃の条件で実施した。導光体の寸法は、X方向800mm×Y方向50mm×Z方向5mmであった。この第2工程で得られた導光体においては、ブルーイング剤は充分均等に分散されて含有されていた。
【0084】
実際の導光体の第1又は第2の光入射端面から各距離の位置における出射光の色度は、光出射制御機能構造等の表面構造を付与しない場合(即ち光出射制御機能構造等の表面構造を形成する前の平板状導光板)における、その位置での透過光の色度と同じと考えられるので、実際の導光体とは別に、同様にして、透過光の強度及び色度の測定のための試料用の平板状導光板を得た。平板状導光板のすべての表面は鏡面とした。
【0085】
得られた平板状導光板を第1の光入射端面対応端面の側と第2の光入射端面対応端面の側とに2分割し、第1の光入射端面対応端面の側の分割部分からなる試料の第1の光入射端面対応の端面に断面4×6mmの四角形状の平行光を垂直入射させ、分割端面から出射する光について、波長440nm〜460nmの第1波長帯域における平均分光透過率T1’[%]、波長510nm〜550nmの第2波長帯域における平均分光透過率T2’[%]、及び波長620nm〜660nmの第3波長帯域における平均分光透過率T3’[%]を測定した。T1’は76.9[%]であり、T2’は80.0[%]であり、T3’は81.7[%]であり、T2’及びT3’の平均値80.9[%]とT1’との差は4.0[%]であった。
【0086】
第1の光入射端面対応端面から200mmの位置での透過光の色座標xおよびyと400mmの位置での色座標xおよびyとの差Δx,Δyは、Δx=0.002、Δy=0.003であり、部分的な輝度低下または部分的な色ずれの発生は視認されなかった。
【0087】
[比較例2]
導光体の製造に際してブルーイング剤を含有させなかったこと以外は実施例2と同様にして実施した。
【0088】
実施例2と同様にして平均分光透過率T1’[%]〜T3’[%]を測定した。T1’は78.2[%]であり、T2’は81.9[%]であり、T3’は83.8[%]であり、T2’及びT3’の平均値82.9[%]とT1’との差は4.7[%]であった。
【0089】
第1の光入射端面対応端面から400mmの位置の透過光の色座標xおよびyと200mmの位置の色座標xおよびyとの差Δx,Δyは、Δx=0.004、Δy=0.006であり、部分的な輝度低下及び部分的な色ずれが視認された。
【符号の説明】
【0090】
2 一次光源
2A 第1の一次光源
2B 第2の一次光源
4 導光体
41 光入射端面
41A 第1の光入射端面
41B 第2の光入射端面
42 反対端面
43 光出射面
44 光反射面
44a レンズ列
6 光偏向素子
61 入光面
61a プリズム列
62 出光面
65 プリズム列
7 光拡散素子
8 光反射素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次光源から発せられる光を導光し、且つ前記一次光源から発せられる光が入射する1つの光入射端面、導光された光の一部が出射する光出射面、及び該光出射面の反対側の光反射面を有する、板状のエッジライト方式面光源装置用導光体であって、
該導光体は前記光入射端面の反対側の反対端面を有し、該反対端面と前記光入射端面との間の距離が350mm以上であり、
前記導光体は、ブルーイング剤を含むメタクリル樹脂からなり、
前記メタクリル樹脂は、前記光入射端面から前記反対端面までの距離での、波長440nm〜460nmの第1波長帯域の平均分光透過率T1[%]と、波長510nm〜550nmの第2波長帯域の平均分光透過率T2[%]と、波長620nm〜660nmの第3波長帯域の平均分光透過率T3[%]との関係において、前記T2及びT3の平均値と前記T1との差が4[%]以下であることを特徴とするエッジライト方式面光源装置用導光体。
【請求項2】
第1及び第2の一次光源から発せられる光を導光し、且つ前記第1及び第2の一次光源から発せられる光がそれぞれ入射し互いに反対側に位置する第1及び第2の光入射端面、導光された光の一部が出射する光出射面、及び該光出射面の反対側の光反射面を有する、板状のエッジライト方式面光源装置用導光体であって、
前記第1の光入射端面と前記第2の光入射端面との間の距離が500mm以上であり、
前記導光体は、ブルーイング剤を含むメタクリル樹脂からなり、
前記メタクリル樹脂は、前記第1の光入射端面から前記第2の光入射端面までの距離の半分の距離での、波長440nm〜460nmの第1波長帯域の平均分光透過率T1’[%]と、波長510nm〜550nmの第2波長帯域の平均分光透過率T2’[%]と、波長620nm〜660nmの第3波長帯域の平均分光透過率T3’[%]との関係において、前記T2’及びT3’の平均値と前記T1’との差が4[%]以下であることを特徴とするエッジライト方式面光源装置用導光体。
【請求項3】
請求項1に記載のエッジライト方式面光源装置用導光体と、前記光入射端面に隣接して配置された白色発光LEDからなる前記一次光源と、を備えるエッジライト方式面光源装置。
【請求項4】
請求項2に記載のエッジライト方式面光源装置用導光体と、前記第1の光入射端面に隣接して配置された白色発光LEDからなる前記第1の一次光源と、前記第2の光入射端面に隣接して配置された白色発光LEDからなる前記第2の一次光源と、を備えるエッジライト方式面光源装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載のエッジライト方式面光源装置用導光体を製造する方法であって、
前記ブルーイング剤を含むメタクリル樹脂ペレットを作製し、
該メタクリル樹脂ペレットを成形用素材として用いて成形することで前記エッジライト方式面光源装置用導光体を得ることを特徴とする、エッジライト方式面光源装置用導光体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−58334(P2013−58334A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194949(P2011−194949)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】