説明

面内スイッチング方式液晶表示装置

【課題】面内スイッチング方式の液晶表示装置を提供する。
【解決手段】液晶表示装置は、第1の偏光板、第2の偏光板、及び液晶セルを備える。ポアンカレ球により液晶配向方向の偏光状態の変化を確認して補償フィルムの光学特性を設計し、第1の偏光板の補償フィルムの遅相軸方向、液晶配向方向、及び偏光子の吸収軸方向を互いに平行するように構成することで傾斜面でのコントラスト比を改善して広視野角の確保が可能である。補償フィルムを第1及び第2の偏光板にそれぞれ1枚ずつのみ使用しても広視野角を確保することができ、薄型液晶表示装置を高い歩留まりで大量生産することができ、偏光フィルムの広幅化が容易で大型液晶表示装置を設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜面でのコントラスト比を改善することにより広視野角の確保が可能な面内スイッチング方式(in-plane switching mode)の液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)は、最も一般的な画像表示装置として広く使用されている。しかしながら、その多くの優れた特性にもかかわらず、視野角の狭さが短所として指摘されてきた。
【0003】
液晶表示装置の方式は、液晶セルの初期配列、電極構造、及び液晶の物性によって分類することができ、現在最も多く使用されている液晶表示装置の方式は、ツイステッド・ネマティック(twisted nematic;TN)、垂直配向(vertical arrangement;VA)、及び面内スイッチング(in-plane switching;IPS)が挙げられる。
【0004】
また、電圧無印加時に光の透過可否によりノーマルブラック方式またはノーマルホワイト方式に分類され、ドメイン及び液晶の初期配列によって、VA方式は、PVA(Patterned VA)、SPVA(Super PVA)、及びMVA(Multidomain VA)に、IPS方式は、S−IPS(Super In-plane Switching)またはFFS(Fringe-Field Switching)に分類される。
【0005】
面内スイッチング方式は、液晶分子が非駆動状態において均等かつ基板面にほぼ水平な配列を有している。下方偏光板の透過軸と液晶分子の進相軸とが同一方向であるとき、液晶の光学特性により傾斜面においても透過軸と液晶の進相軸とが同一方向であるため、光が下方偏光板を通過した後に液晶を通過しても、偏光状態に変化が生じることなく本来の状態のまま液晶層を通過することができる。その結果、基板の上部面及び下部面上の偏光板の配置によって、非駆動状態における程度の暗状態を表示することができる。
【0006】
このような面内スイッチング方式の液晶表示装置は、一般的に光学フィルムを使用せずに広い視野角を得ることができ、透過率が必然的に確保されると同時に画面全体において画質及び視野角が均一となるように提供されるといった長所を有する。従って、面内スイッチング方式の液晶表示装置は、18インチ級以上の上位機種で主に用いられている。
【0007】
従来技術における面内スイッチング方式を適用した液晶表示装置は、光を偏光させるために液晶を含む液晶セルの外側に偏光板を必要とし、偏光子を保護するためにトリアセチルセルロース(TAC)フィルムからなる保護フィルムが前記偏光板の一面または両面に適用されている。この場合、液晶が暗状態を表現するとき、下方板に備えられた偏光子により偏光された光は正面でなく、TACフィルムにより傾斜面視方向に楕円偏光される。楕円偏光された光は、液晶セルで偏光が変化されることによって表示装置上の色彩に変化が生じてしまうといった問題を引き起こす。
【0008】
さらに、近年、面内スイッチング方式を適用した大型テレビなどの大型画像表示装置を製造するため、広い視野角特性が要求されている。そこで、面内スイッチング方式の液晶表示装置(IPS−LCD)においては、広い視野角を確保するために、液晶セルと前記液晶セルの2枚の偏光板のうち一方の偏光板の偏光子(ポリビニルアルコール)との間に、TACフィルムの代わりに等方性保護フィルムを配置させ、かつ液晶セルと前記2枚の偏光板のうち他方の偏光板の偏光子(ポリビニルアルコール)との間に、光学特性の異なる2つ以上の位相差層、または1枚のZ軸配向(厚み方向に配向)フィルムを積層させて液晶表示装置が製造されてきた。
【0009】
このように面内スイッチング方式の液晶表示装置は、液晶層の一側面に光学特性の異なる2つの層を配置することによって形成される補償フィルム3枚型複合形成偏光板(下方等方性フィルム1枚と上方補償層2枚)を用いるか、或いは、製造工程上収縮フィルムを用いると経済性が低く、不可欠な収縮工程を含むことで大面積フィルムに製造が容易でないZ軸配向フィルムを用いている。
【0010】
従って、3枚の補償フィルムが積層された複合偏光板を用いて薄型製品を製造するのは困難であり、液晶セルの両側の厚さが異なることから温度または湿度の変化による屈曲が生じる可能性が高く、高価な補償フィルムの使用により価格競争力が低下して高価な面内スイッチング方式の液晶表示装置にのみ限定的に使用されてきた。さらに、偏光子と補償フィルムとを備える広幅化複合偏光板の生産が容易ではないため、大型液晶表示装置の開発に困難性を期している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、第1の偏光板、第2の偏光板、及び液晶セルを備える面内スイッチング方式の液晶表示装置を提供するものであって、ポアンカレ球により液晶配向の偏光状態の変化を確認して補償フィルムの光学特性を設計し、第1の偏光板の補償フィルムの遅相軸が液晶配向方向及び偏光子の吸収軸方向に対して平行となるように構成して傾斜面におけるコントラスト比を改善することで広視野角の確保が可能となり、幅延伸工程により特定の光学特性を有する補償フィルムを製造することができ、大型複合構成の偏光板を製造するのが容易であり、これによって大型で安価な薄型面内スイッチング方式の液晶表示装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、保護フィルム、偏光子、及び第1の補償フィルムを上からこの順に配置した第1の偏光板と、液晶セルと、第2の補償フィルム、偏光子、及び保護フィルムを上からこの順に配置した第2の偏光板とを備える面内スイッチング方式の液晶表示装置であって、前記第1の偏光板の偏光子の吸収軸は前記第2の偏光板の偏光子の吸収軸に垂直であり、前記第1の補償フィルムは、面内位相差値R0が40〜80nm、厚み方向位相差値Rthが−150〜−60nm、かつ屈折率比NZが−2〜−1であり、その遅相軸は液晶配向方向及び前記第1の偏光板の偏光子の吸収軸と平行であり、前記第2の補償フィルムは、面内位相差値R0が150〜270nm、かつ屈折率比NZが−1〜0であり、その遅相軸は前記第2の偏光板の偏光子の吸収軸と平行となるように構成された面内スイッチング方式の液晶表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る面内スイッチング方式の液晶表示装置は、従来の3枚の補償フィルムを用いることにより達成される水準で広視野角の確保が可能となる。さらには、補償フィルムを第1の偏光板及び第2の偏光板に各々1枚ずつのみ使用しても広視野角を確保することができるため、薄型液晶表示装置を高い歩留まり(異物、不純物による不良率の低減)で大量生産することができ、より大きな、複合構成の偏光板を製造することが可能であり、故に超大型液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る面内スイッチング液晶表示装置(S−IPS方式)の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る面内スイッチング液晶表示装置(FFS方式)の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る補償フィルムの屈折率を説明するための概略図である。
【図4】本発明に係る補償フィルム及び偏光板の延伸方向を説明するための製造過程上の機械方向(MD、machine direction)を示す概略図である。
【図5】本発明の座標系におけるΦ及びθの表現を説明するための概略図である。
【図6】本発明の実施例1によるΦ=45゜及びθ=60°の視方向における偏光状態の変化をポアンカレ球上に示す図である。
【図7】本発明の実施例1による全視方向からの透過率のシミュレーション結果を示す図である。
【図8】本発明の実施例2による全視方向からの透過率のシミュレーション結果を示す図である。
【図9】本発明の実施例3によるΦ=45゜及びθ=60°の視方向における偏光状態の変化をポアンカレ球上に示す図である。
【図10】本発明の実施例3による全視方向からの透過率のシミュレーション結果を示す図である。
【図11】本発明の実施例4による全視方向からの透過率のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、第1の偏光板、第2の偏光板、及び液晶セルを備える面内スイッチング方式の液晶表示装置に関するものであって、ポアンカレ球により液晶配向の偏光状態の変化を確認して補償フィルムの光学特性を設計し、第1の偏光板の補償フィルムの遅相軸が液晶配向方向及び偏光子の吸収軸方向に対して平行となるように構成して傾斜面におけるコントラスト比を改善することで、安価でありかつ広視野角の確保が可能となるように設計された薄型面内スイッチング方式の液晶表示装置に関するものである。
【0016】
以下、本発明に係る面内スイッチング方式の液晶表示装置の実施形態を説明する。
【0017】
面内スイッチング方式の液晶表示装置は、第1の偏光板、液晶セル、及び第2の偏光板を備える。
【0018】
第1の偏光板は、液晶セル側から、第1の補償フィルム、偏光子、及び保護フィルムの順に配置され、第2の偏光板は、液晶セル側から、第2の補償フィルム、偏光子、及び保護フィルムの順に配置される。第1の偏光板の偏光子の吸収軸は第2の偏光板の偏光子の吸収軸に垂直である。
【0019】
第1の偏光板及び第2の偏光板の配置は液晶セルの液晶配向方向に依存する。
【0020】
視認側の右側水平方向を基準として液晶配向方向が反時計方向に測定されるとき、液晶セルが90°の液晶配向方向(S−IPS)を有するのであれば、図1に示すように、第1の偏光板は下方偏光板として、第2の偏光板は上方偏光板として配置される。このとき、下記式1によって算出される液晶セルのパネル位相差値は、波長589nmで300〜330nmである。
【0021】
【数1】


(式中、nは液晶の異常光線屈折率、nは常光線屈折率、dはセルギャップを示す。但し、△n、dはベクトルではなくスカラーである。)
【0022】
また、視認側の右側水平方向を基準として液晶配向方向が反時計方向に測定されるとき、液晶セルが0゜の液晶配向方向(FFS)を有するのであれば、図2に示すように、第1の偏光板は上方偏光板として、第2の偏光板は下方偏光板としてに配置される。このとき、液晶セルのパネル位相差値は、波長589nmで370〜400nmである。
【0023】
第1の偏光板の第1の補償フィルムは、面内位相差値R0が40〜80nmであり、厚み方向位相差値Rthが−150〜−60nmであり、かつ屈折率比NZが−2〜−1である。
【0024】
補償フィルムの面内位相差値R0が小さいほどフィルムを製造する際にフィルムの遅相軸方向が不均一になることによって正面コントラスト比を低下させてしまうといった問題が生じるので、補償フィルムの面内位相差値R0の適当な下限値を設定する必要がある。本発明において、面内位相差値R0は、好ましくは40nmである。また、補償フィルムの面内位相差値が120nmを超過すると、波長分散性の増加に起因して視方向によって色歪みが生じ得る。屈折率比NZの範囲は、本発明に係る液晶表示装置の構造を提供することができる数値範囲であり、屈折率比NZが前記範囲のときは延伸により補償フィルムを安定して製造することができる。
【0025】
第1の補償フィルムの遅相軸は、液晶の配向方向及び第1の偏光板の偏光子の吸収軸と平行になるように構成される。
【0026】
第2の偏光板の第2の補償フィルムは、面内位相差値R0が150〜270nm、屈折率比NZが−1〜0であり、好ましくは屈折率比NZが−1〜−0.3であるものを用いることができる。
【0027】
前記面内位相差値R0について、150nmが液晶の面内位相差を補償することができる最小値であり、270nmが延伸タイプにより補償フィルムを製造することができる最大値である。また、屈折率比NZは、液晶及び第1の補償フィルムの光学特性を考慮して決定される。
【0028】
かかる第2の補償フィルムの遅相軸は、第2の偏光板の偏光子の吸収軸と平行になるように構成される。
【0029】
図1に示すように、視認側の右側水平方向を基準として液晶配向方向が反時計方向に測定されるとき、液晶セルが90°の液晶配向方向を有するのであれば、第1の偏光板は下方偏光板として配置され、第1の補償フィルム及び第1の偏光板の偏光子は、90°の液晶配向方向に対して平行である。
【0030】
また、図2に示すように、視認側の右側水平方向を基準として液晶配向方向が反時計方向に測定されるとき、液晶セルが0゜の液晶配向方向を有するのであれば、第1の偏光板は上方偏光板として配置され、第1の補償フィルム及び第1の偏光板の偏光子は、0°の液晶配向方向に対して平行である。
【0031】
本発明において、第1の補償フィルム及び第2の補償フィルムの光学特性は、可視光領域内の全波長について下記式2〜4により定義される。
【0032】
光源の波長についての言及がない場合には、589nmにおける光学特性について記載されており、ここで、Nxは面内方向において屈折率が最も大きい軸の屈折率であり、Nyは面内方向のNxに対して垂直方向の屈折率であり、Nzは厚み方向の屈折率であって、下記式2のように定義される。
【0033】
【数2】


(式中、Nx及びNyは面内屈折率であってかつNx≧Nyであり、Nzはフィルムの厚み方向に振動する光の屈折率であり、dはフィルムの厚さである。)
【0034】
【数3】


(式中、Nx及びNyは補償フィルムの面内屈折率であり、dはフィルムの厚さであり、かつNx≧Nyである。)
【0035】
【数4】


(式中、Nx及びNyは面内屈折率であってかつNx≧Nyであり、Nzはフィルムの厚み方向に振動する光の屈折率である。)
【0036】
ここで、式2のRthは、面内平均屈折率に対する厚み方向の屈折率の差を示す厚み方向位相差値であり、式3のR0は、面内位相差値であって、法線方向(垂直方向)に光がフィルムを透過したときの位相差である。
【0037】
また、式4のNZは、屈折率比であって、これにより補償フィルムのプレートの種類を識別することができる。
【0038】
補償フィルムのプレートの種類は、1)フィルムの面内方向に光軸を有するAプレート、2)フィルム面に対し垂直方向に光軸を有するCプレート、及び3)2つの光軸が存在する二軸性プレートといった分類に属する。具体的には、1)NZ=1のとき、屈折率がNx>Ny=Nzの関係を満たす場合、「ポジティブAプレート(positive A-plate)」と称し、2)1<NZのとき、屈折率がNx>Ny>Nzの関係を満たす場合、「ネガティブ二軸性Aプレート(negative biaxial A-plate)」と称し、3)0<NZ<1のとき、屈折率がNx>Nz>Nyの関係を満たす場合、「Z軸配向フィルム(Z-axis alignment film)」と称し、4)NZ=0のとき、屈折率がNx=Nz>Nyの関係を満たす場合、「ネガティブAプレート(negative A-plate)」と称し、5)NZ<0のとき、屈折率がNz>Nx>Nyの関係を満たす場合、「ポジティブ二軸性Aプレート(positive biaxial A-plate)」と称し、6)NZ=∞のとき、屈折率がNx=Ny>Nzの関係を満たす場合、「ネガティブCプレート(negative C-plate)」と称し、7)NZ=−∞のとき、屈折率がNz>Nx=Nyの関係を満たす場合、「ポジティブCプレート(positive C-plate)」と称する。
【0039】
しかしながら、実際工程上、このような理論的定義に完璧に基づいてAプレート及びCプレートを製造することは不可能である。そこで、一般的な工程において、Aプレートは屈折率比の概算範囲(approximate range)を、Cプレートは面内位相差の範囲内で所定値をそれぞれ設定することで識別する。しかしながら、所定の値を設定することは、延伸による異なる屈折率を有する他のすべての材料に適用するには限界がある。従って、本発明の上方偏光板及び下方偏光板に含まれる補償フィルムは、屈折率等方性によるものではなく、プレートの光学特性であるNZ、R0、及びRthなどを数値で表している。
【0040】
本発明に係る第1の偏光板及び第2の偏光板の補償フィルムは、延伸法で製造される。
【0041】
これらの補償フィルムは、延伸法により位相差が付与され、延伸方向に屈折率が大きくなるフィルムは正(+)の屈折率特性を有し、延伸方向に屈折率が小くなるフィルムは負(−)の屈折率特性を有する。正(+)の屈折率特性を有する補償フィルムは、TAC(トリアセチルセルロース)、COP(シクロオレフィンポリマー)、COC(シクロオレフィンコポリマー)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)、PSF(ポリスルホン)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)からなる群より選択される一種で製造することができ、負(−)の屈折率を有する補償フィルムは、具体的には、変性PS(変性ポリスチレン)若しくは変性PC(変性ポリカーボネート)で製造することができる。
【0042】
光学特性を有する補償フィルムを提供するため延伸方法は、固定端延伸(fixed-end extension)及び自由端延伸(free-end extension)に分けられる。前記固定端延伸は、フィルムの延伸工程において延伸する方向以外の他の方向の長さを固定させる方法であり、自由端延伸は、フィルムの延伸工程において延伸する方向以外の他の方向に自由度を付与する方法である。一般的に、フィルムは延伸すると延伸方向以外の他の方向は収縮するようになるが、Z軸配向フィルムの場合、延伸以外に別の収縮工程が必要となることもある。
【0043】
圧延フィルムの非圧延方向をMD方向(machine direction、機械方向)と称し、MDに垂直な方向をTD方向(transverse direction、横断方向)と称する。自由端延伸はフィルムをMD方向に延伸するものであり、固定端延伸はフィルムをTD方向に延伸するものである。
【0044】
NZ及びプレートの種類は、延伸方法(但し、第一次工程のみ適用したとき)に応じて決定される。具体的には、1)ポジティブAプレートは、正(+)の屈折率特性を有するフィルムを自由端延伸することで、2)ネガティブ二軸性Aプレートは、正(+)の屈折率特性を有するフィルムを固定端延伸することで、3)Z軸配向フィルムは、正(+)の屈折率特性または負(−)の屈折率特性を有するフィルムを自由端延伸した後、固定端収縮させることで、4)ネガティブAプレートは、負(−)の屈折率特性を有するフィルムを自由端延伸することで、5)ポジティブ二軸性Aプレートは、負(−)の屈折率特性を有するフィルムを固定端延伸することで製造することができる。
【0045】
上記の第1次の延伸方法に加えて、第2次の延伸などの追加工程を適用すること、または添加物を添加することで遅相軸の方向、位相差値、及びNZ値を制御することができる。このような追加工程は、当技術分野において一般的に適用される工程であって、本発明においては特に限定されるものではない。
【0046】
第1及び第2の補償フィルムは、負(−)の屈折率特性を有するフィルムを1回以上固定端延伸を適用して製造するのが好ましい。この場合、MD方向に対する延伸よりはTD方向に対する延伸を適用すべきであり、それにより遅相軸がMD方向になるようにする。これは、本発明の複合構成の偏光板を製造する際にロール・トゥ・ロール工程(roll-to-roll process)を容易に適用するためである。
【0047】
第1及び第2の補償フィルムは、本発明の光学特性を満たすものであれば、その材料に限定されずに適用可能であり、具体的には、PC(ポリカーボネート)、変性PS(変性ポリスチレン)、及びPMMA(ポリメチルメタクリレート)からなる群より選択される1種を使用することができる。
【0048】
PVA(ポリビニルアルコール)層は、延伸及び染色により偏光機能が付与された偏光子であり、第1及び第2の偏光板の各偏光子に配置される。第1の偏光板の吸収軸は、第2の偏光板の吸収軸に垂直である。
【0049】
保護フィルムは、第1の偏光板のPVA層及び第2の偏光板のPVA層のそれぞれにおいて液晶セルと反対側の面に配置される。
【0050】
第1の偏光板及び第2の偏光板の保護フィルムの屈折率については、屈折率差による光学的特性が視野角に影響を及ぼさないため、本発明において特に限定するものではない。当技術分野において一般的に用いられる材料は第1及び第2の偏光板の保護フィルムの材料として使用することができ、具体的には、TAC(トリアセチルセルロース)、COP(シクロオレフィンポリマー)、COC(シクロオレフィンコポリマー)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)、PSF(ポリスルホン)、及びPMMA(ポリメチルメタクリレート)からなる群より選択される一種を使用することができる。
【0051】
第1及び第2の偏光板は、当技術分野において一般的に適用される方法で製造することができ、具体的には、ロール・トゥ・ロール工程またはシート・トゥ・シート工程(sheet-to-sheet process)を適用することができる。製造工程における歩留まり及び効率性を考慮すると、ロール・トゥ・ロール工程を適用することが好ましい。
【0052】
本発明において、第1の偏光板は、PVA偏光子の吸収軸がMD方向に固定され、補償フィルムの遅相軸が偏光板の吸収軸に対して垂直であるため、ロール・トゥ・ロール工程を適用して製造することができる。補償フィルムの遅相軸が偏光板の吸収軸と垂直になるようにするためには、偏光板と補償フィルムとを一体化させるときにロール・トゥ・ロール方式を用いることが生産コストを低減できるので好ましい。
【0053】
図1には、本発明に係る面内スイッチング方式の液晶表示装置の構成を示す。
【0054】
図1に示す面内スイッチング方式の液晶表示装置は、バックライトユニット40側から、第1の偏光板10、液晶セル30、及び第2の偏光板20の順に配置される。図2では、面内スイッチング方式の液晶表示装置は、バックライトユニット40側から、第2の偏光板20、液晶セル30、及び第1の偏光板10の順に配置される。図1に示す液晶セルはS−IPS液晶セルである一方、図2の液晶セルはFFS液晶セルである。
【0055】
第1の偏光板10は、液晶セル側から、第1の補償フィルム14、偏光子11、及び保護フィルム13の順に配置される。第2の偏光板20は、液晶セル側から、第2の補償フィルム24、偏光子21、及び保護フィルム23の順に配置される。
【0056】
偏光子11の吸収軸12は、偏光子21の吸収軸22に垂直であり、第1の補償フィルム14の遅相軸15は、偏光子11の吸収軸12及び液晶セルの配向方向31と平行である。
【0057】
第1の補償フィルム14は、面内位相差値R0が40〜80nm、厚み方向位相差値Rthが−150〜−60nmで、屈折率比NZが−2〜−1であり、第2の補償フィルム24は、面内位相差値R0が150〜270nm、屈折率比NZが−1〜0である。
【0058】
本発明において、下方偏光板の偏光子の吸収軸は視認側からみて垂直に位置しなければならない。具体的には、バックライトユニットに近接する下方偏光板の吸収軸が垂直方向であれば、下方偏光板を通過した光は水平方向に偏光される。パネルの電圧が印加された液晶セルを通過して明の状態となったとき、光は垂直方向に進行し、吸収軸が水平方向である視認側の上方偏光板を通過する。視認側から吸収軸が水平方向である偏光サングラス(通常、偏光サングラスの吸収軸は水平方向に配置される)をかけた人でさえ、液晶表示装置から発せられる光を認識することができる。しかしながら、バックライトユニットに近接する下方偏光板の吸収軸が水平方向である場合には、偏光サングラスをかけた人には画像は見えない。
【0059】
本発明の視野角補償の効果は、光がポアンカレ球上において各光学層を通過するときの偏光状態の変化で説明することができる。
【0060】
ポアンカレ球は、特定の視野角における偏光状態の変化を示すのに有用であるため、偏光を利用して画像を表示する液晶表示装置において特定の視野角で進行する光が液晶表示装置内部の各々の光学素子を通過するとき、偏光状態の変化を表すことができる。
【0061】
本発明における具体的な視野角は、図5に示した半円座標系においてΦ=45゜及びθ=60゜の方向であり、この方向に出射される光の偏光状態の変化を全波長についてポアンカレ球上に表現することにより、波長分散性を確認することができる。
【0062】
図6には、Φ=45゜及びθ=60゜の視野角における本発明に係る液晶表示装置の偏光状態を示す。具体的には、正面からΦ+90゜方向を軸としてΦ方向の面を視認側にθだけ回転させたとき、正面方向から出射される光に対する偏光状態の変化をポアンカレ球上に表現したものである。ポアンカレ球上でS3軸の座標が正(+)であるとき、右円偏光を示す。このとき、右円偏光は、任意の偏光水平成分をEx、偏光垂直成分をEyとするとき、Ex成分の光がEy成分の光に比べて位相の遅れが0より大きく半波長より小さい光を意味する。
【0063】
本発明の液晶表示装置は、全視方向からの光の最大透過率が0.2%以下であるといった光学条件を満たす。
【0064】
以下、前記構成による広視野角改善の効果を実施例及び比較例を互いに比較し説明する。本発明は下記の実施形態を通してより詳しく理解できるが、下記実施例は単に本発明の例示のためのものであって、添付された特許請求の範囲により権利範囲を限定しようとするものではない。
【0065】
[実施例]
下記の実施例は、LCDシミュレーションシステムであるTECH WIZ LCD 1D(SANAYI SYSTEM社製、韓国)を用いたシミュレーションを通じて広視野角効果を比較した。
【0066】
[実施例1]
本発明に係る光学フィルム、液晶セル、及びバックライトぞれぞれの実測データを、図1に示した構成でTECH WIZ LCD 1D(SANAYI SYSTEM社製、韓国)上に積層した。図1の構成を以下に説明する。
【0067】
バックライトユニット40側から、第1の偏光板10と、液晶配向方向が電圧無印加の状態で視認側の右側水平方向を基準として反時計方向に測定されるとき、液晶配向方向が90°である面内スイッチング方式の液晶セル30(S−IPS)と、第2の偏光板20とを配置し、ここで前記第1の偏光板10は、液晶セル30側から、第1の補償フィルム14と、偏光子11と、保護フィルム13とを積層して形成し、前記第2の偏光板20は、液晶セル30側から、第2の補償フィルム24と、偏光子21と、保護フィルム23とを順に積層して形成した。
【0068】
液晶セルは、LG Display社によって製造されたLC420WU5型の42インチパネルに適用されたものを使用し、カラーフィルタの吸収は考慮しなかった。バックライトユニット40には、32インチTV LC320WX4型(LG.PHILIPS LCD社製、韓国)に搭載された実測データを用いた。
【0069】
一方で、本発明の実施例に使用した各々の光学フィルム及びバックライトユニットは、以下のような光学特性を有する。
【0070】
第一に、第1の偏光板10及び第2の偏光板20の偏光子11及び21は、延伸されたPVAにヨードで染色させて偏光機能を付与し、これら偏光子の偏光性能は、370〜780nm可視光領域内において視感偏光度(luminance degree of polarization)が99.9%以上、視感単体透過率(luminance group transmittance)が41%以上である。視感偏光度及び視感単体透過率は、波長における透過軸の透過率をTD(λ)とし、波長における吸収軸の透過率をMD(λ)とし、JIS Z 8701:1999に基づく視感補償値を
【数5】


とすると、下記式5〜9で定義される。ここで、S(λ)は光源スペクトルであり、光源はC光源である。
【0071】
【数6】

【0072】
【数7】

【0073】
【数8】

【0074】
【数9】

【0075】
【数10】

【0076】
各フィルムの方向における内部屈折率の差によって生じる光学特性によると、光源589.3nmにおいて、面内位相差値R0が180nmであり、屈折率比NZが−0.5である第2の補償フィルム24と、面内位相差値R0が52nmであり、厚み方向位相差値Rthが−130nmであり、屈折率比NZが−2である第1の補償フィルム14とを使用した。第1及び第2の補償フィルムは1回以上の固定端延伸を適用して製造した。第1の補償フィルムは、固定端延伸及び自由端延伸の両方を適用するか(但し、固定端延伸の延伸比は自由端延伸の延伸比より大きい)、或いは固定端延伸のみを適用して製造することができ、第2の補償フィルムは、固定端延伸のみを適用して製造した。
【0077】
このとき、偏光子11の吸収軸12は、第1の補償フィルム14の遅相軸15及び液晶配向方向31と平行である。
【0078】
さらに、入射光589.3nmに対しRthが50nmである光学特性を有するTAC(トリアセチルセルロース)を、第1及び第2の偏光板10及び20の保護層の役割を果たす外側保護フィルム13及び23に使用した。
【0079】
図6は、Φ=45゜及びθ=60゜の視野角における面内スイッチング方式の液晶表示装置のポアンカレ球による偏光状態の変化を示す。具体的には、出発点の偏光状態は、ポアンカレ球上で波長550nmの光が第1の偏光板10の偏光子11を通過したときの偏光状態であり、第1の補償フィルム14、液晶セル30、及び第2の補償フィルム24の順に通過した後、偏光状態は終点に到逹する。
【0080】
図7は、面内スイッチング方式の液晶表示装置の視感全方位の透過率分布を示すものであって、スケール上の範囲は透過率0〜1%であり、暗表示の際、透過率1%を超過する部位は赤色で示し、透過率の低い部位は青色で示す。このとき、中央の青色部分が広いほど、広視野角の確保が可能ということであり、図7より、中央の青色部分が広いことから広視野角の確保が可能であることを確認することができた。
【0081】
[実施例2]
前記実施例1と同様に実施したが、面内位相差値R0が200nmであり、屈折率比NZが−0.5である第2の補償フィルム24と、面内位相差値R0が78nmであり、屈折率比NZが−1.1である第1の補償フィルム14とを使用して面内スイッチング方式の液晶表示装置を製造した。
【0082】
前記面内スイッチング方式の液晶表示装置の波長によるポアンカレ球上の偏光状態の変化は図6と類似し、視感全方位透過率のシミュレーション結果は図8の通りである。図8の結果より、中央の青色部分が広いことから広視野角の確保が可能であることを確認することができた。
【0083】
[実施例3]
前記実施例1と同様に実施したが、図2に示す積層構造を有し、面内位相差値R0が270nmであり、屈折率比NZが−0.5である第2の補償フィルム24と、面内位相差値R0が60nmであり、厚み方向位相差値Rthが−150nmであり、屈折率比NZが−2である第1の補償フィルム14とを使用して面内スイッチング方式の液晶表示装置を製造した。このとき、液晶セルは、液晶配向方向が電圧無印加の状態で視認側の右側水平方向を基準として反時計方向に測定されるとき、0゜の液晶配向方向を有する面内スイッチング方式の液晶セル30(FFS)を使用した。
【0084】
図9は、Φ=45゜及びθ=60゜の視野角における面内スイッチング方式の液晶表示装置のポアンカレ球による偏光状態の変化を示し、図10は、視感全方位透過率のシミュレーション結果を示す。
【0085】
図9に示すように、出発点の偏光状態は、ポアンカレ球上で波長550nmの光が第2の偏光板20の偏光子21を通過したときの偏光状態であり、第2の補償フィルム24、液晶セル30、及び第1の補償フィルム14の順に通過した後、偏光状態は終点に到逹する。
【0086】
図10の結果より、中央の青色部分が広いことから広視野角の確保が可能であることを確認することができた。
【0087】
[実施例4]
前記実施例3と同様に実施したが、面内位相差値R0が270nmであり、屈折率比NZが−0.3である第2の補償フィルム24と、面内位相差値R0が45nmであり、厚み方向位相差値Rthが−112.5nmであり、屈折率比NZが−2である第1の補償フィルム14とを使用して面内スイッチング方式の液晶表示装置を製造した。
【0088】
前記面内スイッチング方式の液晶表示装置の波長によるポアンカレ球上の偏光状態の変化は図9と類似し、視感全方位透過率のシミュレーション結果は図11の通りである。図11の結果より、中央の青色部分が広いことから広視野角の確保が可能であることを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0089】
上述したように、本発明に係る面内スイッチング方式の液晶表示装置は、全視方向に対して優れた画像品質を提供することができることから、高度な視野角特性が要求される超大型液晶表示装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
10 第1の偏光板
11 偏光子
12 吸収軸
13 保護フィルム
14 第1の補償フィルム
15 遅相軸
20 第2の偏光板
21 偏光子
22 吸収軸
23 保護フィルム
24 第2の補償フィルム
30 液晶セル
31 液晶配向方向
40 バックライトユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護フィルム、偏光子、及び第1の補償フィルムを上からこの順に配置した第1の偏光板と、
液晶セルと、
第2の補償フィルム、偏光子、及び保護フィルムを上からこの順に配置した第2の偏光板と
を備える面内スイッチング方式の液晶表示装置であって、
前記第1の偏光板の偏光子の吸収軸は、前記第2の偏光板の偏光子の吸収軸に垂直であり、
前記第1の補償フィルムは、面内位相差値R0が40〜80nm、厚み方向位相差値Rthが−150〜−60nm、かつ屈折率比NZが−2〜−1であって、その遅相軸は液晶配向方向及び前記第1の偏光板の偏光子の吸収軸と平行であり、
前記第2の補償フィルムは、面内位相差値R0が150〜270nm、かつ屈折率比NZが−1〜0であり、その遅相軸は前記第2の偏光板の偏光子の吸収軸と平行である、面内スイッチング方式の液晶表示装置。
【請求項2】
前記第2の補償フィルムの屈折率比NZは−1〜−0.3である、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記第1の偏光板は下方偏光板であり、前記第2の偏光板は上方偏光板であり、かつ前記液晶セルは、視認側の右側水平方向を基準として反時計方向に測定したとき、90°の液晶配向方向を有する、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記液晶セルは、波長589nmにおけるパネル位相差値が300〜330nmである、請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第1の偏光板は上方偏光板であり、前記第2の偏光板は下方偏光板であり、かつ前記液晶セルは、視認側の右側水平方向を基準として反時計方向に測定したとき、0゜の液晶配向方向を有する、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記液晶セルは、波長589nmにおけるパネル位相差値が370〜400nmである、請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第1の補償フィルム及び前記第2の補償フィルムはそれぞれ1回以上固定端延伸を適用して製造される、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記第1の補償フィルムは1回以上の自由端延伸により製造される、請求項1に記載の液晶表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−509611(P2013−509611A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536702(P2012−536702)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【国際出願番号】PCT/KR2010/007625
【国際公開番号】WO2011/053081
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(506171277)ドンウー ファイン−ケム カンパニー リミテッド (15)
【Fターム(参考)】