説明

面材に固定される被固定物の固定構造

【課題】面材や面材の表面側に固定される被固定物への振動の伝達を低減することができる面材に固定される被固定物の固定構造を提供することを課題とする。
【解決手段】建物の床根太2と天井面材3と床根太2と天井面材3との間に介設された面材用下地部材4とを有し、面材に固定される被固定物の固定構造であって、天井面材3のうち床根太2側の面に配設された基板12と、天井面材3のうち基板12とは反対側の面に配設された照明器具(被固定物)Sと、床根太2と基板12との間に介設された基板用下地部材11と、を有し、照明器具Sは、ビス(固定部材)Bを介して基板12に固定されており、基板用下地部材11は、制振機能を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に用いられる面材に固定される被固定物の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅における天井構造として、天井面材が梁などの構造躯体から吊り下げられている吊り天井構造や、天井面材が上部の構造躯体に直接固定される直天井構造が知られている。例えば特許文献1には、吊り天井構造の一例が記載されている。吊り天井構造によれば、天井面材が吊り下げられているため、上階の振動が階下に伝達するのを防ぐことができる。
【0003】
一方、直天井構造では、天井構造の高さを小さくすることができるが、例えば2階の床根太に1階の天井面材が直接取り付けられているため、2階で生じた振動が床根太を介して階下に伝達してしまう。従来、これを防ぐために、2階の床根太と1階の天井面材との間に振動を吸収する面材用下地部材を設けることが知られている。図4の(a)は従来の面材用下地部材を示した斜視図であり、(b)は従来の面材用下地部材の使用例を示した断面図である。
【0004】
図4の(a)及び(b)に示すように、従来の面材用下地部材4は鋼製の薄い板状部材であって、2階の床根太2にビスBで固定される第三固定板部41と、天井面材3にビスBで固定される第四固定板部42と、第三固定板部41と第四固定板部42とを連結する連結板部43とを有している。
【0005】
図4の(b)に示すように、面材用下地部材4は、天井面材3を片持ちで支持しており、連結板部43が弾性変形することにより振動を吸収することができるため、床根太2から天井面材3に伝達する振動を低減することができる。
【0006】
一方、図4の(b)に示すように、天井面材3に照明器具Sを固定する場合、天井面材3の裏側に補強下地100を設置することが知られている。補強下地100の上面は床根太2に当接しており、下面は天井面材3に当接している。補強下地100と床根太2、及び、照明器具Sの引掛けシーリング21と補強下地100とはそれぞれビスBで固定されている。補強下地100を備えることで、照明器具Sの重量が大きい場合にも照明器具Sの落下や天井面材3の変形を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−242251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の構造であると、床根太2の振動が補強下地100を介して天井面材3や照明器具Sに伝達してしまうという問題があった。つまり、面材用下地部材4を用いているにもかかわらず、補強下地100を介して天井面材3や照明器具Sに振動が伝達してしまうため、制振性能を発揮することができないという問題があった。また、振動が照明器具Sに伝達することで、照明器具Sの寿命が短くなったり、故障の原因になったりしていた。
【0009】
本発明は、前記した問題に鑑みて創案されたものであり、面材や面材の表面側に固定される被固定物への振動の伝達を低減することができる面材に固定される被固定物の固定構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、建物の支持部材と面材と前記支持部材と前記面材との間に介設された面材用下地部材とを有し、前記面材に固定される被固定物の固定構造であって、前記面材のうち前記支持部材側の面に配設された基板と、前記面材のうち前記基板とは反対側の面に配設された被固定物と、前記支持部材と前記基板との間に介設された基板用下地部材と、を有し、前記被固定物は、固定部材を介して前記基板に固定されており、前記基板用下地部材は、制振機能を備えていることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、面材の表面側に固定される照明器具等の被固定物が、面材の裏側に配設された基板に固定されており、この基板は制振機能を備えた基板用下地部材を介して支持部材に固定されている。したがって、床根太の振動は、基板用下地部材で吸収されるため、面材や面材に固定された被固定物への振動の伝達を低減することができる。なお、被固定物としては、照明器具、ファン、装飾品、報知器等が挙げられる。
【0012】
また、前記基板用下地部材は板状を呈し、前記支持部材に固定される第一固定板部と、前記第一固定板部に対して略平行に形成され前記基板が固定される第二固定板部と、前記第一固定板部と前記第二固定板部とを連結し弾性変形可能に形成された連結板部と、を有することが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、連結板部が弾性変形することにより、振動が吸収されるため、面材や面材に固定された被固定物への振動の伝達を低減することができる。
【0014】
また、前記基板は、前記第二固定板部の前記支持部材側の面に固定されていることが好ましい。かかる構成によれば、基板用下地部材と基板の全体の高さを小さくすることができるため、支持部材と面材の間を小さくすることができる。これにより、建物の室内空間を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る面材に固定される被固定物の固定構造によれば、面材や面材に固定された被固定物への振動の伝達を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る面材に固定される被固定物の固定構造を示した側断面図である。
【図2】(a)は本実施形態に係る下地ユニットを示した斜視図であり、(b)は変形例に係る下地ユニットを示した斜視図である。
【図3】図1のA−A矢視図である。
【図4】(a)は従来の面材用下地部材を示した斜視図であり、(b)は従来の面材用下地部材の使用例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態に係る被固定物の固定構造1は、木造2階建て住宅の1階の天井に、被固定物として照明器具Sを設置する場合を例示する。なお、説明における上下左右は図1の矢印に従う。
【0018】
被固定物の固定構造1は、床根太2と、天井面材3と、面材用下地部材4と、下地ユニット5と、照明器具Sで主に構成されている。
【0019】
床根太(支持部材)2は、図1及び図3に示すように、所定の間隔をあけて平行に複数本配設されている木製部材である。床根太2は、隣接する床根太2間を例えば455mmあけて配設されている。
【0020】
天井面材(面材)3は、天井を構成する面材であって、例えば石膏ボード等の平板を用いる。天井面材3は、一定の厚みで形成されている。本実施形態では1枚設置しているが、上下に重ね合わせて2枚以上設置してもよい。
【0021】
面材用下地部材4は、図4で説明した従来の形態と同等の部材である。面材下地部材4は、図1に示すように、鋼製の薄い板状部材であって、2階の床根太2にビスB等の固定部材で固定される第三固定板部41と、天井面材3にビスBで固定される第四固定板部42と、第三固定板部41と第四固定板部42とを連結する連結板部43とを有している。連結板43には、図4の(a)で示すように、その開口の大きさによって振動のしやすさを調整することができる長孔43aが複数個所に形成されている。
【0022】
下地ユニット5は、図1及び図2に示すように、照明器具Sを固定するためのユニットである。下地ユニット5は、同形状からなる一対の基板用下地部材11と、基板12とで構成されている。
【0023】
基板用下地部材11は、床根太2に固定される第一固定板部13と、第一固定板部13に対して略平行に形成され基板12が固定される第二固定板部14と、第一固定板部13と第二固定板部14とを連結する連結板部15と、を有する。
【0024】
第一固定板部13は、板状を呈し一定の幅で床根太2に直交する方向に延設されている。第一固定板部13は、床根太(支持部材)2に固定される部位である。第一固定板部13には、一対の孔13aが形成されている。なお、第一固定板部13の長手方向及び短手方向に沿ってリブを設けたり、端部を折り返したりして第一固定板部13の剛性を高めてもよい。
【0025】
第二固定板部14は、板状を呈し一定の幅で第一固定板部13と同等の長さで延設されている。また、第二固定板部14は、第一固定板部13と略平行になっている。第二固定板部14は、基板12が固定される部位である。第二固定板部14の下面は本実施形態では平坦になっているが、例えば、第二固定板部14の下面に下方に突出する小さな凸を設けて基板12に対する滑り止め部を形成してもよい。また、第二固定板部14の長手方向及び短手方向に沿ってリブを設けたり、端部を折り返したりして第二固定板部14の剛性を高めてもよい。
【0026】
連結板部15は、板状を呈し、一定の幅で第一固定板部13と同等の長さで延設されている。また、連結板部15は、下方向に傾斜し、第一固定板部13の端部と第二固定板部14の端部とを連結している。連結板部15は、弾性変形することにより床根太の振動を吸収する部位である。
【0027】
連結板部15には、等間隔で複数の長孔15aが形成されている。長孔15aの大きさによって連結板部15の開口率を変えることができ、連結板部15の変形のしやすさを調整することができる。なお、連結板部15が弾性変形するのであれば、長孔15aは設けなくてもよい。
【0028】
基板12は、照明器具Sを支持する部材である。基板12は、例えば木製や樹脂製の板状部材である。基板12の中央には、配線Lを逃すための貫通孔12aが形成されている。基板12の両端部には、互いに対向する基板用下地部材11,11がビスBを介して固定されている。図1に示すように、基板12は、天井面材3の裏面側に配設される。
【0029】
照明器具Sは、図1に示すように、引掛シーリング21と、照明本体22とで構成されている。引掛シーリング21は、照明本体22を引掛けて保持することができる給電器具である。引掛シーリング21は、例えば円柱状を呈し、その底面には電極刃が挿入される一対の円弧状の孔部(図示省略)が形成されている。引掛シーリング21は、ビスB等の固定部材を介して天井面材3及び基板12に固定されている。引掛シーリング21には、電気を供給するための配線Lが連結されている。配線Lは、天井面材3の貫通孔3aと、基板12の貫通孔12aを通って電源まで引き回されている。
【0030】
照明本体22は、板状を呈する受け部22aと受け部22aを覆うグローブ22bとで構成されている。受け部22aの中央には、鉤状を呈し、上方に向けて突出された一対の電極刃(図示省略)が形成されている。
【0031】
次に、本実施形態に係る被固定物の固定構造1の施工方法について説明する。
まず、図2の(a)に示すように、下地ユニット5を形成する。具体的には、基板12の上面の両端に、基板用下地部材11,11を固定する。
【0032】
次に、図2の(a)及び図3に示すように、第一固定板部13の孔13a,13aと隣り合う床根太2,2とを対応させて、床根太2に下地ユニット5をビスBで固定する。
【0033】
次に、図3に示すように、複数の床根太2に直交する方向に複数の面材用下地部材4を配設し、床根太2と第三固定板部41をビスBで固定する。
【0034】
次に、図1に示すように、天井面材3を第四固定板部42に当接させ、第四固定板部42に対応する位置において、複数のビスBで固定する。天井面材3を配置する際には、天井面材3の貫通孔3aと基板12の貫通孔12aとが連通するようにする。
【0035】
次に、貫通孔3a及び貫通孔12aから配線Lを室内側に引き出して、配線Lと引掛シーリング21とを電気的に接続する。そして、引掛シーリング21をビスBで天井面材3及び基板12に固定する。
【0036】
最後に、照明本体22の受け部22aから天井面材3側に突出した一対の電極刃(図示省略)を引掛シーリング21に挿入し、円周方向に照明本体22を回転させることにより、引掛シーリング21に対して照明器具Sが支持される。
【0037】
被固定物の固定構造1の施工方法については前記した方法に限定されるものではない。例えば、基板用下地部材11,11を床根太2に固定した後に、基板用下地部材11に基板12を固定してもよい。また、引掛シーリング21と照明本体22との着脱構造は他の公知の方法から適宜採用すればよい。
【0038】
以上説明した被固定物の固定構造1によれば、天井面材3の表面側に固定される照明器具(被固定物)Sが、天井面材3の裏側に配設された基板12に固定されており、この基板12は制振機能を備えた基板用下地部材11を介して支持部材2に固定されている。したがって、床根太2の振動は、基板用下地部材11の連結板部15で吸収されるため、天井面材11や天井面材3に固定された照明器具Sへの振動の伝達を低減することができる。
【0039】
また、天井面材3と床根太2との間に配設された面材用下地部材4でも振動を吸収することができるため、天井面材11や天井面材3に固定された照明器具Sへの振動の伝達を相乗的に低減することができる。また、本実施形態によれば、基板用下地部材11及び面材用下地部材4で制振することにより床の遮音性能の向上を図ることができる。
【0040】
以上本発明の実施形態について説明したが本発明趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、本実施形態では天井を構築する場合について説明したが、壁を構築する場合に用いてもよい。この場合、支持部材として柱やスタッドを採用し、面材として壁面材を採用すればよい。
【0041】
また、制振機能を備えた基板用下地部材は、本実施形態では薄板の鋼製部材を用いたが、例えば弾性機能を備えたゴムや樹脂を採用してもよい。つまり、基板用下地部材は、振動を吸収する材料及び構造であればどのようなものであってもよい。
【0042】
また、本実施形態では天井面材3に固定する被固定物として照明器具Sを用いたが、例えば、ファンや装飾品等であってもよい。また、本実施形態では、基板用下地部材11を一対設けたが、例えば照明器具Sが大きい場合などは、三本以上用いてもよい。また、本実施形態では、隣り合う二本の床根太2に跨って基板用下地部材11を設置しているが、三本以上に跨って設置してもよい。
【0043】
図2の(b)は、変形例に係る下地ユニットを示した斜視図である。下地ユニット5Aは、基板12が、基板用振動部材11の第二固定板部14の上面(床根太2側の面)に固定されている点で前記した実施形態の下地ユニット5と相違する。変形例に係る下地ユニット5Aによれば、第二固定板部14の上に基板12が固定されるので、下地ユニット5の全体の高さを小さくすることができ、ひいては、建物の室内空間を大きくすることができる。また、面材用下地部材4は、本実施形態では、前記した形態にしたが他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 被固定物の固定構造
2 根太(支持部材)
3 天井面材(面材)
3a 貫通孔
4 面材用下地部材
5 下地ユニット
11 基板用下地部材
12 基板
12a 貫通孔
13 第一固定板部
14 第二固定板部
15 連結板部
21 引掛シーリング
22 照明本体
41 第三固定板部
42 第四固定板部
43 連結板部
100 補強下地
S 照明器具(被固定物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の支持部材と面材と前記支持部材と前記面材との間に介設された面材用下地部材とを有し、前記面材に固定される被固定物の固定構造であって、
前記面材のうち前記支持部材側の面に配設された基板と、
前記面材のうち前記基板とは反対側の面に配設された被固定物と、
前記支持部材と前記基板との間に介設された基板用下地部材と、を有し、
前記被固定物は、固定部材を介して前記基板に固定されており、
前記基板用下地部材は、制振機能を備えていることを特徴とする面材に固定される被固定物の固定構造。
【請求項2】
前記基板用下地部材は板状を呈し、
前記支持部材に固定される第一固定板部と、
前記第一固定板部に対して略平行に形成され前記基板が固定される第二固定板部と、
前記第一固定板部と前記第二固定板部とを連結し弾性変形可能に形成された連結板部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の面材に固定される被固定物の固定構造。
【請求項3】
前記基板は、前記第二固定板部の前記支持部材側の面に固定されていることを特徴とする請求項2に記載の面材に固定される被固定物の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−14895(P2013−14895A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147066(P2011−147066)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000174884)三井ホーム株式会社 (87)