説明

面材の固定構造、面材の固定方法及び下地部材

【課題】面材への振動の伝達を低減するとともに施工精度を高めることができる面材の固定構造、面材の固定方法及び下地部材を提供することを課題とする。
【解決手段】面材の固定構造であって、下地部材1は、ビスBを介して床根太111に固定された第一固定板部2と、第一固定板部2に対して略平行に形成されビスBを介して天井面材112が固定された第二固定板部3と、第一固定板部2と第二固定板部3の一端側とを連結する連結板部4と、第二固定板部3の他端側から床根太111側に立ち上がる立上り部5と、を有し、立上り部5は、床根太111に近接する位置まで延設されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物における面材の固定構造、面材の固定方法及び下地部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅における天井構造として、天井面材が梁などの構造躯体から吊り下げられている吊り天井構造や、天井面材が上部の構造躯体に直接固定される直天井構造が知られている。例えば特許文献1には、吊り天井構造の一例が記載されている。吊り天井構造によれば、天井面材が吊り下げられているため、上階の振動が階下に伝達するのを防ぐことができる。
【0003】
一方、直天井構造では、天井構造の高さを小さくすることができるが、例えば2階の床根太に1階の天井面材を直接取り付けるため、2階で生じた振動が床根太を介して階下に伝達してしまう。従来、これを防ぐために、2階の床根太と1階の天井面材との間に振動を吸収する下地部材を設けることが知られている。図5の(a)は従来の下地部材を示した斜視図であり、(b)は従来の下地部材の使用例を示した断面図である。
【0004】
図5の(a)及び(b)に示すように、従来の下地部材100は鋼製の薄い板状部材であって、2階の床根太111にビスBで固定される第一固定板部101と、天井面材112にビスBで固定される第二固定板部102と、第一固定板部101と第二固定板部102とを連結する連結板部103とを有している。
【0005】
下地部材100は、天井面材112を片持ちで支持している。下地部材100は、連結板部103が弾性変形することにより振動を吸収することができるため、天井面材112に伝達する振動を低減することができる。なお、下地部材100の用途は天井だけでなく、壁面材を柱に固定する場合に、壁面材と柱との間に下地部材100を設けて振動低減効果を備えた壁を構築することも知られている。
【0006】
近年、面材をビスで留め付ける際には、エアーコンプレッサーから供給される圧縮空気を動力源とするインパクトドライバーが多く採用されている。インパクトドライバーの軸は、インパクト(衝撃)を受けながら回転するため、大きなトルクを付与することができ、留め付け作業を省力化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−242251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、天井面材112と従来の下地部材100の第二固定板部102とをインパクトドライバーを用いてビスBで固定する場合、ビスBが天井面材112の所望の位置に留め付けることができないという問題があった。
【0009】
図6は、従来の下地部材の施工工程を示した図であって、(a)は打ち込み開始時、(b)は打ち込み中、(c)は打ち込み後を示す。図6の(a)及び(b)に示すように、下地部材100は、片持ち構造であるため、ビスBが打ち込まれるとその衝撃によって第二固定板部102が瞬間的に上方に跳ね上がってしまう。第二固定板部102が跳ね上がった分、所望の位置から数ミリ程度根元側にずれた位置にビスが留め付けられ、図6の(c)に示すように、第二固定板部102が元の状態に戻る際の変形に伴って、天井面材112の位置が所望の位置から左側に数ミリ程度変位してしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、前記した問題に鑑みて創案されたものであり、面材への振動の伝達を低減するとともに施工精度を高めることができる面材の固定構造、面材の固定方法及び下地部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は、支持部材と、面材と、前記支持部材と前記面材との間に介設される下地部材と、を有する面材の固定構造であって、前記下地部材は、固定部材を介して前記支持部材に固定された第一固定板部と、前記第一固定板部に対して略平行に形成され固定部材を介して前記面材が固定された第二固定板部と、前記第一固定板部と前記第二固定板部の一端側とを連結する連結板部と、前記第二固定板部の他端側から前記支持部材側に立ち上がる立上り部と、を有し、前記立上り部は、前記支持部材に近接する位置まで延設されていることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、立上り部は、支持部材に近接する位置まで延設されているため、ビス等の固定部材を面材に留め付ける際の入力によって連結板部が弾性変形し、立上り部の先端が支持部材に当接する。これにより、第二固定板部の変位を小さくすることができるため、第二固定板部の所望の位置に固定部材を留め付けることができる。また、下地部材が元の状態に復元するため、面材を固定した後は立上り部と支持部材とが離間し、支持部材の振動が面材に伝達するのを低減することができる。
【0013】
また、前記立上り部には、立ち上り方向に沿って切り欠かれたスリットが形成されていることが好ましい。かかる構成によれば、下地部材のねじり剛性が低下するため、下地部材が撓みやすくなる。これにより、連結板部が弾性変形しやすくなるため、より振動を吸収することができる。
【0014】
また、本発明は、下地部材を介して支持部材に面材を固定する面材の固定方法であって、前記下地部材は、第一固定板部と、前記第一固定板部に対して略平行に形成された第二固定板部と、前記第一固定板部と前記第二固定板部の一端側とを連結する連結板部と、前記第二固定板部の他端側から立ち上がる立上り部と、を有し、前記第一固定板部と前記支持部材とを固定部材で固定する第一固定工程と、前記面材と前記第二固定板部とを固定部材で固定する第二固定工程と、を含み、前記第二固定工程では、前記固定部材を留め付ける際の入力によって、前記立上り部を前記支持部材に当接させつつ固定することを特徴とする。
【0015】
かかる方法によれば、ビス等の固定部材を面材に留め付ける際の入力よって連結板部が弾性変形し、立上り部の先端が支持部材に当接する。これにより、第二固定板部の変位を抑制することができるため、第二固定板部の所望の位置に固定部材を留め付けることができる。また、下地部材が元の状態に復元するため、面材を固定した後は立上り部と支持部材とが離間し、支持部材の振動が面材に伝達するのを低減することができる。
【0016】
また、前記第二固定工程では、圧縮空気を動力源とする留付機具を用いて固定することが好ましい。かかる方法によれば、面材に大きな衝撃が作用する留付器具を用いても、面材の位置ずれを抑制でき、さらには、飛躍的に作業効率を高めることができる。
【0017】
また、本発明は、支持部材に面材を固定するための下地部材であって、前記支持部材に固定される第一固定板部と、前記第一固定板部に対して略平行に形成され前記面材が固定される第二固定板部と、前記固定板部と前記第二固定板部の一端側とを連結する連結板部と、前記第二固定板部の他端側から前記支持部材側に立ち上がる立上り部と、を有し、前記立上り部は、前記支持部材に近接する位置まで延設されていることを特徴とする。
【0018】
かかる構成によれば、立上り部は、支持部材に近接する位置まで延設されているため、ビス等の固定部材を面材に留め付ける際の入力によって連結板部が弾性変形し、立上り部の先端が支持部材に当接する。これにより、第二固定板部の変位を抑制することができるため、第二固定板部の所望の位置に固定部材を留め付けることができる。また、弾性変形によって下地部材が元の状態に復元するため、面材を固定した後は立上り部と支持部材とが離間し、支持部材の振動が面材に伝達するのを低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る面材の固定構造、面材の固定方法及び下地部材によれば、面材への振動の伝達を低減するとともに施工精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る下地部材を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る下地部材を示す断面図である。
【図3】本実施形態に係る面材の固定方法を示す断面図であって(a)は第一固定工程を示し、(b)は第二固定工程を示す。
【図4】本実施形態に係る面材の固定構造を示す断面図である。
【図5】(a)は従来の下地部材を示した斜視図であり、(b)は従来の下地部材の使用例を示した断面図である。
【図6】従来の下地部材の施工工程を示した図であって、(a)は打ち込み開始時、(b)は打ち込み中、(c)は打ち込み後を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態に係る下地部材1は、鋼製の長尺板状部材である。本実施形態では、下地部材1を木造2階建て住宅の1階の天井に用いる場合を例示する。なお、説明における上下左右前後は図1の矢印に従う。
【0022】
下地部材1は、図1及び図2に示すように、第一固定板部2と、第二固定板部3と、連結板部4と、立上り部5とで構成されている。
【0023】
第一固定板部2は、板状を呈し一定の幅で前後方向に水平に延設されている。第一固定板部2は、床根太(支持部材)に固定される部位である。第一固定板部2には、等間隔で複数のネジ孔2aが形成されている。なお、第一固定板部2にリブを設けたり、端部を折り返したりして剛性を高めてもよい。
【0024】
第二固定板部3は、板状を呈し一定の幅で第一固定板部2と同等の長さで延設されている。また、第二固定板部3は、第一固定板部2と略平行になっている。第二固定板部3は、天井面材(面材)を固定する部位である。第二固定板部3の下面は本実施形態では平坦になっているが、例えば、第二固定板部3の下面に下方に突出する小さな凸を設けて天井面材に対する滑り止め部を形成してもよい。また、第二固定板部3の前後方向又は左右方向にリブを設けて剛性を高めてもよい。
【0025】
連結板部4は、板状を呈し、一定の幅で第一固定板部2と同等の長さで延設されている。また、連結板部4は、図2に示すように、右下方向に傾斜し、第一固定板部2の右端部と第二固定板部3の左端部とを連結している。連結板部4は、弾性変形することにより床根太の振動を吸収する部位である。
【0026】
連結板部4には、等間隔で複数の長孔4aが形成されている。長孔4aの大きさによって連結板部4の開口率を変えることができ、連結板部4の変形のしやすさを調整することができる。長孔4aは、本実施形態では、連結板部4の上部に設けられているが、他の高さ位置に形成されていてもよい。なお、連結板部4が弾性変形するのであれば、長孔4aは設けなくてもよい。
【0027】
立上り部5は、第二固定板部3の右端部から立ち上がっている。また、立上り部5は、一定の高さで第二固定板部3と同等の長さで前後方向に延設されている。図2に示すように、立上り部5は、第一固定板部2の上面に接する仮想水平線Lに近接する位置まで延設されている。上り部5は、本実施形態では第一固定板部2から離間する方向に若干傾斜して立ち上がっている。立上り部5をこのように傾斜させることで、複数の下地部材1を上下方向に積み重ねることができ、積み重ねた下地部材1の全体の高さを小さくすることができる。
【0028】
また、立上り部5には、基端から先端まで立ち上り方向に沿って切り欠かれた複数のスリット5aが形成されている。スリット5aは、前後方向の隙間が2mm程度になっている。隣り合うスリット5aは、例えば250mm間隔になっている。スリット5aの隙間寸法や間隔は適宜設定すればよい。また、スリット5aは、立上り部5、第二固定板部3及び連結板部4に連続して設けられていてもよい。
【0029】
なお、立上り部5は、本実施形態では第一固定板部2と同等の長さで設けているが、部分的に切り欠くなどして断続的に設けてもよい。また、立上り部5は、第一固定板部2に対して垂直に立ち上がっていてもよい。
【0030】
下地部材1は、本実施形態では、一定の板厚の鋼板を曲げ加工や穴あけ加工して形成されているが、他の製造方法で形成してもよい。
【0031】
次に、本実施形態に係る面材の固定方法について説明する。本実施形態に係る面材の固定方法では、図3の(a)及び(b)に示すように、第一固定板部2と床根太111とをビスBで固定する第一固定工程と、天井面材112と第二固定板部3とをビスBで固定する第二固定工程と、を行う。
【0032】
具体的な図示は省略するが、床根太111は、平行に所定の間隔をあけて複数本配設されている。下地部材1は、この床根太111に直交し複数の床根太111に跨るように配設される。床根太111の上には床面材111aが設置されている。
【0033】
第一固定工程では、図1及び図3の(a)に示すように、第一固定板部2のネジ孔2aと床根太111とが対応する位置にビスBを打ち込み、床根太111に対して第一固定板部2を固定する。ビスBを留め付ける留付機具は特に制限されないが、ここではエアーコンプレッサーに接続され圧縮空気を動力源とするインパクトドライバーRを用いる。
【0034】
図3の(a)に示すように、第一固定工程を終えた状態では、床根太111の下面から立上り部5の先端までは隙間Dが形成されている。隙間Dは、適宜設定すればよいが、例えば2mm〜4mm、より好ましくは3mmに設定する。
【0035】
第二固定工程では、図3の(b)に示すように、天井面材112の下面側から第二固定板部3に対応する位置にビスBを留め付け、第二固定板部3に対して天井面材112を固定する。天井面材112の材料は特に制限されないが、例えば石膏ボードを用いる。
【0036】
図3の(b)は、第二固定工程のビスBを打ち込む途中の状態を描画している。ビスBを打ち込んでいる間は、インパクトドライバーRの衝撃によって、天井面材112及び第二固定板部3が上向きの力を受ける。これにより、連結板部4が弾性変形し、立上り部5の先端が床根太111の下面に当接する。よって、第二固定板部3の変位を小さくすることができるため、所望の位置にビスBを打ち込むことができる。
【0037】
図4は、本実施形態に係る面材の固定構造を示す断面図である。図4では、第二固定工程と同じ要領で天井面材112をさらに一枚固定した状態を示している。図4に示すように、天井面材112,112を固定した後は、下地部材1の形状が元の状態に復元するため、床根太111と立上り部5の先端の間に隙間Dを確保することができる。
立上り部5の高さは、立上り部5の材料やビスBを留め付ける際の衝撃に応じて適宜設定すればよいが、ビスBを留め付ける際に床根太111と当接し、かつ、天井面材112を固定した後は立上り部5の先端と床根太111が離間する位置まで延設されていることが好ましい。
【0038】
以上説明した面材の固定構造によれば、立上り部5は、床根太111(支持部材)に近接する位置まで延設されているため、ビスB(固定部材)を面材に留め付ける際の入力によって連結板部4が弾性変形し、立上り部5の先端が床根太111に当接する。これにより、立上り部5がつっかいとして機能するため第二固定板部3の変位を小さくすることができる。よって、第二固定板部3の所望の位置にビスBを打ち込むことができるため施工精度を高めることができる。
【0039】
また、下地部材1の連結板部4が元の状態に復元するため、天井面材112を固定した後は立上り部5と床根太111とが離間し、床根太111の振動が天井面材112に伝達するのを低減することができる。また、スリット5aを設けることにより、下地部材1のねじり剛性が低下するため、下地部材1が撓みやすくなる。これにより、連結板部4が弾性変形しやすくなるため、より振動を吸収することで振動の伝達を低減することができる。また、本実施形態によれば、下地部材1で制振することにより床の遮音性能の向上を図ることができる。
【0040】
また、ビスBを留め付ける際の留付機具として、本実施形態のようにエアーコンプレッサー等に接続されたインパクトドライバーを用いることで施工精度を高めつつ、作業効率を飛躍的に高めることができる。
【0041】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、本実施形態では天井面材を固定する場合を例示したが、下地部材1は、壁面材を固定する場合に用いてもよい。この場合は、柱やスタッド等の支持部材と壁面材等の面材との間に下地部材1を設置する。固定構造や施工方法については天井の場合と略同等であるため詳細な説明は省略する。
【0042】
また、前記した実施形態では固定部材としてビス(ネジ)を用いたが、釘等他の固定部材であってもよい。また、固定部材を留め付ける際の留付機具として、手動のドライバーを用いてもよいし、釘を打ち込む場合はハンマーや電動衝打機具を用いてもよい。
【実施例】
【0043】
次に、本発明の実施例について説明する。実施例では、比較例(従来品)、実施例1、実施例2の三本の下地部材を用意して、それぞれの施工性について比較検討を行った。
【0044】
比較例は、図5に示す下地部材100と同等の形態の部材を用いた。比較例では、図5の(b)を参照するように、高さhを12mm、第二固定板部102の幅wを35mm、板厚を0.6mmに設定した。比較例では、本実施形態に係る立上り部5は形成されていない。
【0045】
実施例1は、図2に示す下地部材1と同等の形態の部材を用いた。実施例1では、図2を参照するように、高さhを20mm、第二固定板部3の幅wを35mm、板厚を0.6mmに設定した。隙間寸法dについては後記する。
【0046】
実施例2は、図2に示す下地部材1と同等の形態の部材を用いた。実施例1では、図2を参照するように、高さhを21mm、第二固定板部3の幅wを50mm、板厚を0.6mmに設定した。隙間寸法dについては後記する。
【0047】
取り付ける天井面材は、いずれの例においても、板厚が9.5mmの石膏ボードを用いた。第一固定板部と床根太とは長さ25mmの連結ビスを用いて接合した。第二固定板部と石膏ボードとは長さ28mmの連結ビスを用いて接合した。固定するビス打ち機具として、日立工機社製及びマックス社製の二種類のインパクトドライバーを用いた。
【0048】
比較例を用いて石膏ボードを固定すると、隣り合う石膏ボードに2〜3mmの隙間が発生した。これは、従来技術でも説明したように、ビスを打ち込むとその衝撃によって第二固定板部が瞬間的に上方(床根太側)に大きく跳ね上がってしまい、第二固定板部が跳ね上がった分、所望の位置とは数ミリ程度ずれた位置にビスが留め付けられることに起因すると考えられる。また、数ミリ程度石膏ボードの位置がずれる(逃げる)ため、隣接する一方の石膏ボードが他方の石膏ボードを押し上げて、隣り合う石膏ボードに段差が発生する箇所も見られた。
【0049】
実施例1では、図2を参照するように、隙間寸法dを0mmに設定した場合(「実施例1−1」とする)と、隙間寸法dを1mmに設定した場合(「実施例1−2」とする)と、隙間寸法dを2mmに設定した場合(「実施例1−3」とする)とについて施工を行った。
【0050】
実施例1−1では、ビスを打ち込む際に、立上り部がつっかいとして機能するため、下地部材に対する石膏ボードの位置ずれは解消することができた。しかし、石膏ボードを固定した後において、下地部材と床根太とが大部分の箇所で接触しているため、振動低減効果を奏することはできないと考えられる。
【0051】
実施例1−2では、ビスを打ち込む際に、立上り部がつっかいとして機能するため、下地部材に対する石膏ボードの位置ずれは解消することができた。しかし、石膏ボードを固定した後において、下地部材と床根太とが一部接触しているため、振動低減効果がやや低下すると考えられる。
【0052】
実施例1−3では、ビスを打ち込む際に、立上り部がつっかいとして機能するため、下地部材に対する石膏ボードの位置ずれは解消することができた。また、石膏ボードを固定した後において、下地部材と床根太とが離間するため、振動低減効果を奏することができる。
【0053】
実施例2では、図2を参照するように、隙間寸法dを3mmに設定した場合(「実施例2−1」とする)と、隙間寸法dを4mmに設定した場合(「実施例2−2」)とについて施工を行った。実施例2−1及び実施例2−2では、ビスを打ち込む際に、立上り部がつっかいとして機能するため、下地部材に対する石膏ボードの位置ずれは解消することができた。また、石膏ボードを固定した後において、下地部材と床根太とが離間するため、振動低減効果を奏することができる。
【0054】
また、実施例2では、実施例1に比べて第二固定板部の幅が大きいため、石膏ボードとの重ね代を大きく確保することができる。これにより、作業性を高めることができる。また、実施例2では、実施例1に比べて高さh(第二固定板部の下面から第一固定板部の下面までの距離)が高いので、立上り部と床根太とを確実に離間させることができる。
【0055】
以上の実施例に鑑みると、隙間寸法dは、2〜4mmに設定することが好ましく、3mmに設定するとより好ましいことがわかった。隙間寸法dが2mm未満であると、床根太と下地部材とを確実に離間させることができなくなる。また、隙間寸法dが4mmを超えると立上り部がつっかいとして機能しなくなるため、下地部材に対する石膏ボードの位置ずれを発生すると考えられる。
【符号の説明】
【0056】
1 下地部材
2 第一固定板部
2a ネジ孔
3 第二固定板部
4 連結板部
4a 長孔
5 立上り部
100 下地部材
102 第一固定板部
103 第二固定板部
104 連結板部
111 床根太
112 天井面材
D 隙間
R インパクトドライバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と、面材と、前記支持部材と前記面材との間に介設される下地部材と、を有する面材の固定構造であって、
前記下地部材は、
固定部材を介して前記支持部材に固定された第一固定板部と、
前記第一固定板部に対して略平行に形成され固定部材を介して前記面材が固定された第二固定板部と、
前記第一固定板部と前記第二固定板部の一端側とを連結する連結板部と、
前記第二固定板部の他端側から前記支持部材側に立ち上がる立上り部と、を有し、
前記立上り部は、前記支持部材に近接する位置まで延設されていることを特徴とする面材の固定構造。
【請求項2】
前記立上り部には、立ち上り方向に沿って切り欠かれたスリットが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の面材の固定構造。
【請求項3】
下地部材を介して支持部材に面材を固定する面材の固定方法であって、
前記下地部材は、
第一固定板部と、前記第一固定板部に対して略平行に形成された第二固定板部と、前記第一固定板部と前記第二固定板部の一端側とを連結する連結板部と、前記第二固定板部の他端側から立ち上がる立上り部と、を有し、
前記第一固定板部と前記支持部材とを固定部材で固定する第一固定工程と、
前記面材と前記第二固定板部とを固定部材で固定する第二固定工程と、を含み、
前記第二固定工程では、前記固定部材を留め付ける際の入力によって、前記立上り部を前記支持部材に当接させつつ固定することを特徴とする面材の固定方法。
【請求項4】
前記第二固定工程では、圧縮空気を動力源とする留付機具を用いて固定することを特徴とする請求項3に記載の面材の固定方法。
【請求項5】
支持部材に面材を固定するための下地部材であって、
前記支持部材に固定される第一固定板部と、
前記第一固定板部に対して略平行に形成され前記面材が固定される第二固定板部と、
前記固定板部と前記第二固定板部の一端側とを連結する連結板部と、
前記第二固定板部の他端側から前記支持部材側に立ち上がる立上り部と、を有し、
前記立上り部は、前記支持部材に近接する位置まで延設されていることを特徴とする下地部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−32660(P2013−32660A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169823(P2011−169823)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000174884)三井ホーム株式会社 (87)