説明

面状体と潅水構造体

【課題】目詰まりなどで生じる保水ブロック表面の水分蒸発量の減少を抑制することで、長期間にわたり冷却能力の低下を防止することができる面状体と潅水構造体を提供すること。
【解決手段】道路や建築物などの人工の地表面に敷設される面状体において、保水性を有する表層と、該表層の地表面側に所定の間隔で形成された複数個の開口部と、前記開口部の地表面を覆うように形成された頭部と、該頭部から下方に延伸され、該開口部に挿入される軸部とを備えた栓部材と、該頭部と該表層の地表面側とが断熱されるように、該頭部と該軸部の間に配置された断熱部材と、を備え、該軸部と該開口部の内面との間、および該頭部と該表層の地表面側との間に通気部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路や建築物などの人工の地表面被覆に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、都市部の歩道等の道路やビルの屋上、あるいは公園内の一部は、通常、アスファ
ルトやコンクリートで固められている。そのため、照り返しのきつい夏季の日中、そのよ
うな場所の温度上昇は周囲と比較して一段と激しい。このような環境下において歩道を歩
いたり、ビルの屋上等で過ごしたりすることはとても厳しい状況下にある。更に、日中の
みならず夜間においても、この熱がアスファルトやビルの屋上から放熱されて、熱帯夜を
引き起こし、いわゆるヒートアイランド現象を引き起こす大きな要因になっている。
【0003】
このヒートアイランド現象を緩和するために、道路の脇に植樹したり、ビルの屋上に芝
生や木を植えたり、あるいは種々の草花を植える試みも成されている。しかしながらそれ
だけでは十分でなく、さらなる工夫が求められている。
【0004】
この一環として、特許文献1や特許文献2にあるように保水性を有する保水性舗装ブロ
ック本体(以下単に保水性ブロックという)の下に容器状の保水タンクや保水トレーを設
置した潅水構造体が提案されている。この潅水構造体の機能は、保水性ブロックを浸透し
て下降してきた雨水や打ち水(以下単に雨水等という)を保水タンクや保水トレーに溜め
ておき、外気温が高温になった時には、この雨水等を給水手段、具体的には不織布等の導
水性部材を介して毛細管力により揚水し、これを保水性ブロック表面から蒸発させて、そ
の蒸発潜熱により保水性ブロックを冷やす、というものである。すなわち、降雨時に雨水
等を保水タンクや保水トレーに貯え、気温が上昇した折にはこの水で保水性ブロックを冷
やしてヒートアイランド現象を緩和させよう、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2885085号公報(特開平8−85907号)
【特許文献2】特開2006−124980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1や特許文献2に開示されている舗装用の潅水構造体を実際に使
用してみると、保水性ブロックに対する冷却能力が徐々に低下する、という問題が明らか
になってきた。すなわち、外気が高温になった時、雨水等が保水タンクや保水トレーの貯
水空間に貯えられていたとしても、保水性ブロック表面の温度が、日を追うごとに高温に
なっていく、ということがわかってきた。この原因は、保水性ブロックの目詰まりなどに
よって、保水性ブロック表面の蒸発量が減少する。この目詰まりは、水溜りなどに含まれ
る砂やゴミが保水ブロックの微小な隙間に入り込むことによって生じると推測されている

【0007】
前述の問題に鑑み本発明の目的は、目詰まりなどで生じる保水ブロック表面の水分蒸発
量の減少を抑制することで、長期間にわたり冷却能力の低下を防止することができる面状
体と潅水構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく本発明の請求項1記載の面状体は、道路や建築物などの人工の地
表面に敷設される面状体において、保水性を有する表層と、該表層の地表面側に所定の間
隔で形成された複数個の開口部と、該開口部の地表面の外周を覆うように該表層に形成さ
れた防砂処理部と、を有することを特徴とする。
【0009】
このようにしてなる本発明の請求項1に記載の面状体によれば、雨水等が降った時には
、保水性を有する面状体に十分な水を保水することができると共に、外気温が高温になっ
た時には、面状体の地表面に加えて、面状体の地表面側に形成された開口部の内面からも
、面状体内部に保水した水を蒸発させることで、面状体を地表面に加えて内側からも冷却
することができる。また、雨水等と共に砂塵が面状体の地表面部分に接触した時には、開
口部の内部への砂塵の侵入を防砂処理部にて防ぐことで、開口部の目詰まりに伴う蒸発面
積の低下を防ぐことができる。その結果、安定して面状体の地表面を冷却することが可能
となる。
【0010】
本発明の請求項2に記載の面状体は、前記防砂処理部は、さらに地表面から上方に伸び
る凸部有していることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3に記載の面状体は、前記防砂処理部は、撥水部材で形成されているこ
とを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項2および請求項3に記載の面状体によれば、防砂処理部が凸部を有した
り、防砂処理部を撥水部材で形成することで、さらに効率よく、開口部の内部への砂塵の
侵入を防ぐこと可能となり、開口部の目詰まりに伴う蒸発面積の低下を防ぐことができる

【0013】
本発明の請求項4に記載の面状体は、前記開口部には、軸部材が挿入され、該軸部材の
外面と該開口部の内面との間には通気部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項4に記載の面状体によれば、軸部材を介して、面状体の下部に配置され
ている路盤は地面の熱を効率よく大気に逃がすことが可能となるため、保水ブロック表面
の水分蒸発量の減少を抑制することが可能となる。
【0015】
本発明の請求項5に記載の面状体は、道路や建築物などの人工の地表面に敷設される面
状体において、保水性を有する表層と、該表層の地表面側に所定の間隔で形成された複数
個の開口部と、前記開口部の地表面を覆うように形成された頭部と、該頭部から下方に延
伸され、該開口部に挿入される軸部とを備えた栓部材と、該頭部と該表層の地表面側とが
断熱されるように、該頭部と該軸部の間に配置された断熱部材と、を備え、該軸部と該開
口部の内面との間、および該頭部と該表層の地表面側との間に通気部が形成されているこ
とを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項5に記載の面状体によれば、面状体の表面に着水した雨水などの水は、
栓部材によって開口部内に侵入することを阻害されるために、雨水などに混ざっている砂
塵は、開口部の内部に侵入できないため、開口部の目詰まりを防止できる。更に、栓部材
と面状体の間の熱伝導を断熱するように、地表面付近において栓部材の頭部と面状体の間
に断熱部材を設置して、かつ、栓部材の軸部と面状体の内面との間には通気部を設けてク
リアランスをとることで、地表面付近における栓部材と面状体の間の熱伝導による熱の流
れを低減できる。これに加えて、通気部を設けることで開口部の内部で蒸発した水蒸気を
大気中に放出することが可能となる。以上の結果、安定して面状体の地表面を冷却するこ
とが可能となる。
【0017】
本発明の請求項6記載の面状体は、該開口部の地表面の外周を覆うように該表層に形成
された防砂処理部を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項6に記載の面状体によれば、防砂処理部を開口部の地表面の外周を覆う
ように形成することで、さらに効率よく、開口部の内部への砂塵の侵入を防ぐこと可能と
なり、開口部の目詰まりに伴う蒸発面積の低下を防ぐことができる。
【0019】
本発明の請求項7記載の潅水構造体は、請求項1から請求項6いずれかに記載の面状体
と、該面状体に給水する給水手段と、を有することを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項7に記載の潅水構造体によれば、夏季の日照りが続く状況で面状体が乾
燥して冷却能力が低下もしくは消失した場合であっても、給水手段により面状体に水を給
水することで、再び面状体の冷却能力を回復させることが可能である。
【発明の効果】
【0021】
以上のように本発明によれば、雨水等が降った時には、保水性を有する表層に十分な水
を保水することができると共に、外気温が高温になった時には、面状体表面に加えて、面
状体内部に形成した開口部の内面からも面状体に保水した水を蒸発することができる。従
って、この蒸発冷却効果で面状体を冷却する十分な面積の蒸発面積を確保できる。また、
雨水等と共に砂塵が面状体の地表面側に接近した時には、防砂処理部や栓部材により、開
口部への砂塵の侵入を防ぐことで開口部の目詰まりを防止して蒸発面積の低下を防ぐこと
ができる。その結果、安定して地表面を冷却する機能を備えた面状体を提供することがで
き、更に、この面状体と給水手段を組み合わせることにより、長期間安定して面状体の地
表面を冷却する潅水構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の面状体の第一の実施形態例を示す平面図である。
【図2】本発明の面状体の第一の実施形態例を示す概略縦断面図である。
【図3】本発明の面状体の第一の実施形態例の変形例を示す概略縦断面図である。
【図4】本発明の面状体の第一の実施形態例の変形例において、軸部材6の固定方法を説明した図である
【図5】本発明の面状体の第二の実施形態例を示す平面図である。
【図6】本発明の面状体の第二の実施形態例を示す概略縦断面図である。
【図7】本発明の面状体の第二の実施形態例で用いる栓部材7の拡大概略縦断面図である。
【図8】本発明の面状体の第二の実施形態例において、栓部材7の固定方法を説明した図である
【図9】本発明の面状体の第二の実施形態例に給水手段を取り付けた潅水構造体の模式図である。
【図10】保水性ブロックの開口部有無によるライト照射実験回数とブロック上面温度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に図を用いて本発明の面状体の実施形態例を詳細に説明する。図1、図2は、本発
明の面状体の第一実施形態例を示すものであり、図1は平面図であり、図2はそのA−A
面で切断した概略縦断面図である。
【0024】
これら図1、図2に示すように、この面状体1は、保水性を有する表層2に開口部4を
形成して、開口部4の地表面部の外周を覆うように表層2に撥水部材からなる防砂処理部
5が形成されている。表層2は、具体的には、保水性アスファルト舗装や、保水性コンク
リート舗装などが使用可能である。表層2の下方には、路盤20があり、図示していない
が、表層2と路盤20との間に基層舗装などが敷設されてもよい。開口部4は、所定の間
隔で表層2を穿つように形成する。開口部4の大きさと間隔と深さにより面状体1が保水
した水分の蒸発面積が設計され、面状体1の冷却効果を制御することが可能となる。
【0025】
例えば、表層2の厚さが50mmの場合には、表層2を貫通する直径5mm、深さ50
mmの開口部4を縦横各々50mm間隔であけたとき、地表面1mに対する開口部4の
地表面内断面積の総和の割合は約0.8%の約0.008m、開口部4の内面の面積の
総和の割合は約31%の約0.31mとなる。すなわち、この開口部4を地表面に形成
することで、地表面と開口部4の内面を合計することにより、地表面1mに対して、約
1.31mの蒸発面積を表層2に確保することとなり、安定して表層2を冷却できる。
【0026】
開口部4は、直径が大きいと、ハイヒールがささるなどの不具合があるため、開口部4
の直径の上限は、5mm程度にするとよい。また、開口部4の直径が小さいと、毛細管力
が強くなって雨水を吸い込みやすくなり、これに伴って砂塵が侵入しやすくなって目詰ま
りしやすくなるため、開口部4の直径の下限は、1mm程度にするとよい。なお、開口部
4の直径は、防砂処理部5を撥水材料で形成した場合には、この撥水性の強さも影響する
ため、これを考慮して決める必要がある。開口部4の深さは、蒸発面積を考慮して適切に
設定すればよく、表層2を貫通してもよいし、貫通しなくてもよい。
【0027】
防砂処理部5は、撥水材料で形成することにより、雨水と共に砂塵が面状体の地表面側
に接近した時には、この防砂処理部5が雨水を撥水して開口部4から遠ざけることにより
、開口部4への砂塵の侵入を防ぐことができる。これにより、開口部4の目詰まりを防止
するため、面状体1の蒸発面積の低下を防ぐことができる。ここで防砂処理部5の素材と
しては、フッ素系樹脂などが適用できる。
【0028】
なお本例において、防砂処理部5は、開口部4の外周を覆うように設置した撥水材料と
したが、これに限定する必要はなく、開口部4の地表面付近に撥水塗料を塗布して形成し
てもよく、あるいは、撥水性素材によりなるテープを貼付するものや部材を取り付けて形
成してもよく、あるいは、撥水シートを表層2上に敷設及び貼付して形成してもよく、あ
るいは、開口部周辺に微細構造により撥水性を発現する微細加工として形成してもよい。
更に、防砂処理部5は、撥水性以外の構成でもよく、例えば、開口部周辺にリング状の凸
型隆起部を設けることで、雨水や砂塵の侵入を防止してもよい。
【0029】
図3、4は第一実施形態例の変形例を示すものであり、図3は図2の面状体1の開口部
4に軸部材6を挿入したものの概略縦断面図であり、図4(a)〜(c)は、軸部材6の
固定方法を説明した図である。
【0030】
図3に示すように、開口部4の内面と接触しないように軸部材6が開口部4に挿入され、
面状体1の下部にある路盤20に突き刺すことで軸部材6が固定されている。さらに、軸
部材6の外面と開口部4の内面との間に水分を蒸発させるための通気部10が形成されて
いる。このように、軸部材6を開口部4に挿入し、軸部材6の外面と開口部4の内面との
間に通気部10を形成することで、軸部材6を介して、面状体1の下部に配置されている
路盤等の熱を効率よく大気に逃がすことが可能となるため、路盤等の温度が下がることに
よって、保水ブロック表面の水分蒸発量の減少を抑制することが可能となる。なお、軸部
材6の材質としては、熱を伝導させるものならば何でも適用可能であるが、特に高強度特
性、高熱伝導率特性を有する金属材質が好ましい。
【0031】
図4を用いて、その他の軸部材6の固定方法について説明する。図4(a)の固定方法
は、面状体1に形成された開口部4が面状体1を貫通せずに底面付近で塞がっている場合
の固定方法であり、軸部材6を、開口部4の底面にあたる面状体1の底面に突き刺するこ
とで軸部材6を固定している。図4(b)の固定方法は、面状体1の底面に、軸部材6の
固定部材11aを設置して、この固定部材11aに軸部材6を突き刺したり、あるいは、
固定部材11aと軸部材6を嵌合させることによって、軸部材6を固定している。この場
合、固定部材11aを面状体1を同じ平面断面積を有する板状の部材とし、面状体1の下
面全体に接着剤などにより取り付けてもよい。図4(c)の固定方法は、面状体1の底面
付近で、開口部4に取り付けるカラー状の固定部材11bを開口部4に嵌合し、軸部材6
を固定している。
【0032】
図5、図6は、本発明の面状体の第二実施形態例を示すものであり、図5はこの面状体
1を平面状に敷き並べた平面図であり、図6は図5のB−B面で切断した概略縦断面図で
ある。また、図7は、本発明の面状体1の第二実施形態例で用いられる栓部材7の拡大概
略縦断面図である。また、図8は栓部材7の固定方法を説明した図である。
【0033】
図5〜図7に示すように、所定の間隔で複数個の開口部4が形成されている面状体1が
平面状に敷き並べられており、それぞれの開口部4には、ピン形状の栓部材7が挿入され
ている。栓部材7は開口部4の地表面を覆うように形成された頭部7aと、頭部7aから
下方に延伸され、開口部4に挿入される軸部7bとで構成されている。さらに、頭部7a
の上面には撥水機構部9が形成される。また、断熱板8は栓部材7の頭部7aの直下に栓
部材7の軸部7bを通してワッシャのような形態で取り付けられ、栓部材7と面状体1と
の間の断熱材として機能する。
【0034】
そして、頭部7aは少なくとも開口部4の開口面積以上の面積を有している。このよう
に頭部7aが開口部4の開口面積以上の面積を有していることで、雨が降った際に、直接
雨水が開口部に入ることがなくなる。さらに、頭部7aの上面には撥水機構部9が形成さ
れているため、雨水を撥水して開口部4から遠ざけることにより、開口部4への砂塵の侵
入を防ぐことができる。これにより、開口部4の目詰まりを防止するため、面状体1の蒸
発面積の低下を防ぐことができる。
【0035】
また、栓部材7の軸部7bは円柱形状であり、その直径は、開口部4の内径よりも小さ
くすることで軸部7bと開口部の内面との間に通気部10が形成され、軸部7bと開口部
の内面が接触することがなくなる。このような構成とすることで、開口部の内面から大気
中に水分を蒸発させることが可能となると共に、開口部4の内面と軸部7bとの間で断熱
される。
【0036】
断熱板8は、開口部4の内面で蒸発した水蒸気が通気部10を通って大気中に放出され
るように、大気との間で通気性を有する多孔質材とすることが好ましい。また、面状体1
の地表面と頭部7aとの間に通気部10aをさらに設ける場合には、開口部4の内面で蒸
発した水蒸気が通気部10および10aを通って大気中に放出されるので、通気性が確保
される場合には、多孔質材とする必要はない。
【0037】
また、栓部材7の軸部7bの先端は、図6に示すように、面状体1の開口部4を貫通し
て路盤20もしくはサンドクッションへ固定されている。このように、路盤20やサンド
クッションの熱を軸部7b、および頭部7aを介して大気に逃がすことが可能となるため
、路盤等の温度が下がることによって、保水ブロック表面の水分蒸発量の減少を抑制する
ことが可能となる。なお、軸部7bは通気部10で、頭部7aは断熱板8でそれぞれ断熱
されているため、十分な地表面の冷却効果が得られる。
【0038】
なお、面状体1としては保水性ブロックを適用することができ、具体的には、インター
ロッキングブロック舗装などに用いるコンクリート製ブロックやセラミックス製ブロック
が使用可能である。あるいは、保水性を有するブロック状のものであれば、木質製ブロッ
ク、ゴム製ブロックなどを用いてもよい。面状体1の下方には、路盤20があり、図示し
ていないが、面状体1と路盤20との間にサンドクッションが敷設されてもよい。開口部
4の形成方法、面状体1の冷却効果は、前述の第一実施形態例と同じである。
【0039】
栓部材7の固定方法については、軸部7bの先端を、面状体1の開口部4を貫通して路
盤20もしくはサンドクッションに突き刺して固定する方法を示したが、地表面付近の断
熱、および通気部10aが形成されていれば他の方法でもよい。図8(a)〜(d)を用
いて他の栓部材7の固定方法を説明する。
【0040】
図8(a)の固定方法は、面状体1に形成された開口部4が面状体1を貫通せずに底面
付近で塞がっている場合の固定方法であり、軸部7bを、開口部4の底面にあたる面状体
1の底面に突き刺することで栓部材7を固定している。図8(b)の固定方法は、面状体
1の底面に、栓部材7の固定部材11cを設置して、この固定部材11cに軸部7bを突
き刺したり、あるいは、固定部材11cと栓部材7を嵌合させることによって、栓部材7
を固定している。この場合、固定部材11cを面状体1を同じ平面断面積を有する板状の
部材とし、面状体1の下面全体に接着剤などにより取り付けてもよい。図8(c)の固定
方法は、面状体1の底面付近で、開口部4に取り付けるカラー状の固定部材11dを開口
部4に嵌合し、栓部材7を固定している。図8(d)の固定方法は、断熱板8の下面から
延伸させられ、通気部10に挿入されるフランジ部12を設け、フランジ部12の断熱板
8側部分に通気用嵩上げ部13を設け、栓部材7を固定している。なお、フランジ部12
は軸部7bの円周に亘り少なくとも対角線上に2本設ければ良い。
【0041】
図8(a)〜(d)の場合も、栓部材7は、地表面付近において、栓部材7と面状体1
との間が断熱されており、且つ通気部10、10aを確保できているため、十分な地表面
の冷却効果が得られる。
【0042】
次に、図9を用いて、本発明の面状体1を用いた潅水構造体100を説明する。図9に
示すように、この潅水構造体100は、平面状に敷き並べた面状体1に対する給水手段と
して、面状体1の下に、導水シート14が敷設されており、更に、この導水シート14に
は、雨水貯留槽15、ポンプ16、ホース17、とがつながっている。雨水貯留槽15に
は、雨水などの水18を貯留することができる。導水シート14は、面状体1の直下に位
置しているが、図示を省略した面状体1と路盤20の間に敷設した図示しないサンドクッ
ションがあり、このサンドクッションが保水性に優れる素材である場合には、サンドクッ
ションの下に敷設してもよい。
【0043】
また、潅水構造体100の給水手段として、面状体1に下方から接して水を供給する導
水シート14を示したが、地下に設置した潅水点滴パイプを使用してもよい。あるいは、
面状体1の下に貯水ユニットを設置して、貯水ユニットから毛細管力を有する導水部材に
よって水を毛細管力で吸い上げて面状体1に給水してもよく、あるいは、地表面にスプリ
ンクラーを設置して面状体1の上から散水してもよい。
【0044】
表1、図10は、本発明の潅水構造体100の机上模型による実験結果を示すものであ
り、表1は面状体1として保水性ブロックを用い、保水性ブロックの開口部有無によるラ
イト照射実験回数とブロック上面温度の関係を示す表であり、図10は表1の結果をグラ
フにしたものである。
【0045】
ライト照射実験では、保水性ブロックは、縦300mm×横150mm×厚さ50mm
のものを用いて、開口部有りの保水性ブロックには、開口部として、保水性ブロックを貫
通する深さ50mm、直径5mmの穴を、縦横各々50mm間隔でドリルによる穴あけ加
工を施して形成した。給水手段は、保水性ブロック下に設置した貯水ユニットから、導水
部材により、毛細管力を利用して、保水性ブロックに下方から水を給水するようにした。
保水性ブロックの側面部には目地砂を充填した。以上の状態で、潅水構造体の実験装置を
製作してライト照射実験を行った。
【0046】
ライト照射実験は、ライト点灯開始から1時間後のブロック上面温度を記録して、これ
を表1における“1回目:乾燥”の行に記した。続いて、ブロック上面に水を注いで、十
分にブロックが湿潤状態になるようにした後に、ライトを消灯した。その後、適宜間隔を
おいて、ブロック上面が十分冷却された状態とした。この時点より後は、ブロックへの水
の給水は、ブロック下の貯水ユニットからの給水のみとして、ブロック上面には給水しな
いこととした。
【0047】
次に、2回目のライト点灯を行い、1時間後のブロック上面温度を記録して、これを表
1における“2回目:打水2”の行に記した。その後、ライトを消灯して、適宜間隔をお
いて、ブロック上面が十分冷却された状態とした。以下2回目のライト点灯実験と同様に
、繰り返してライト照射実験を行った。実験回数は、開口部無しにおいては、 “1回目
:乾燥”のブロック上面温度を超えた4回目まで行った。開口部有りにおいては、“1回
目:乾燥”からスタートして、11回目までライト照射実験を繰り返して実施した。ライ
ト照射実験の結果は、打ち水後のブロック上面温度が何回で乾燥時の温度を超えるかを観
察して、この実験回数で地表面冷却効果の持続性を比較した。
【0048】
ライト照射実験の結果、表1に示す通り、開口部無しの実験では、1回目の乾燥状態の
ブロック表面温度85.9℃に対して、打ち水後4回目のライト照射実験である打水4で
、ブロック表面温度は91.5℃に上昇して乾燥状態を上回った。これに対して、開口部
有りの実験では、乾燥状態のブロック表面温度72.8℃に対して、打ち水後4回目のラ
イト照射実験である打水4で、ブロック表面温度は59.1℃、更に、打ち水後11回目
のライト照射実験である打水11で、ブロック表面温度は61.7℃であり、乾燥状態を
上回ることはなかった。
【0049】
【表1】

【0050】
すなわち、このライト照射実験から、開口部無しでは、打ち水効果が4回目のライト照
射実験でほぼ消失して乾燥状態よりもブロック上面温度が上昇するのに対して、開口部有
りでは、地表面冷却効果が持続して、11回目のライト照射実験後においてもまだ乾燥状
態よりもブロック上面温度が低いことに注目して、安定した地表面冷却機能を備えた潅水
構造体を提供できることを確認した。
【符号の説明】
【0051】
1 面状体
100 潅水構造体
2 表層
4 開口部
5 防砂処理部
6 軸部材
7 栓部材
7a 栓部材の頭部
7b 栓部材の軸部
8 断熱板
9 撥水機構部
10、10a 通気部
11a、11b、11c、11d 固定部材
12 フランジ部
13 嵩上げ部
14 導水シート
15 雨水貯留槽
16 ポンプ
17 ホース
18 水
20 路盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路や建築物などの人工の地表面に敷設される面状体において、
保水性を有する表層と、
該表層の地表面側に所定の間隔で形成された複数個の開口部と、
該開口部の地表面の外周を覆うように該表層に形成された防砂処理部と、
を有することを特徴とする面状体。
【請求項2】
前記防砂処理部は、さらに地表面から上方に伸びる凸型隆起部を有していることを特徴と
する請求項1に記載の面状体。
【請求項3】
前記防砂処理部は、撥水部材で形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2
に記載の面状体。
【請求項4】
前記開口部には、軸部材が挿入され、
該軸部材の外面と該開口部の内面との間には通気部が形成されていることを特徴とする請
求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の面状体。
【請求項5】
道路や建築物などの人工の地表面に敷設される面状体において、
保水性を有する表層と、
該表層の地表面側に所定の間隔で形成された複数個の開口部と、
前記開口部の地表面を覆うように形成された頭部と、該頭部から下方に延伸され、該開口
部に挿入される軸部とを備えた栓部材と、
該頭部と該表層の地表面側とが断熱されるように、該頭部と該軸部の間に配置された断熱
部材と、を備え、
該軸部と該開口部の内面との間、および該頭部と該表層の地表面側との間に通気部が形成
されていることを特徴とする面状体。
【請求項6】
該開口部の地表面の外周を覆うように該表層に形成された防砂処理部を備えることを特徴
とする請求項5に記載の面状体。
【請求項7】
請求項1〜請求項6いずれかに記載の面状体と、該面状体に給水する給水手段と、
を有することを特徴とする潅水構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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