面状光源
【課題】 強度を維持しつつ、軽量な面状光源を提供する。
【解決手段】
本発明の面状光源は、ガラス基板11と変形ガラス基板12が対向配置され、内部が気密に保たれた放電容器1と、放電容器1に配置された外部電極51、52とを具備している。変形ガラス基板12は、波状部121と周辺部122とからなり、波状部121のガラス基板の厚みをd、周辺部122のガラス基板の厚みをDとしたとき、d<Dを満たしている。なお、周辺部122の厚みDは、D≧0.7mmであるのが望ましい。
【解決手段】
本発明の面状光源は、ガラス基板11と変形ガラス基板12が対向配置され、内部が気密に保たれた放電容器1と、放電容器1に配置された外部電極51、52とを具備している。変形ガラス基板12は、波状部121と周辺部122とからなり、波状部121のガラス基板の厚みをd、周辺部122のガラス基板の厚みをDとしたとき、d<Dを満たしている。なお、周辺部122の厚みDは、D≧0.7mmであるのが望ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイのバックライトや一般照明などに用いられる平面型蛍光ランプ等の面状光源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
面状光源の一例として、平面型蛍光ランプがある。平面型蛍光ランプは、特開2005−340199号公報(以下、特許文献1)に開示されているようなランプである。この種の平面蛍光ランプは、平面状の放電容器を有している。この発明では、放電容器は平板のガラス基板と凹凸部を有するガラス基板(以下、変形ガラス基板)を張り合わせることにより構成されている。また、この変形ガラス基板の端辺には、他のガラス基板と接合するための接合材が形成される周辺部が一体的に設けられている。
【0003】
一方、近年の液晶ディスプレイ等の用途では、大型、軽量の光源が求められている。特許文献1のような平面型蛍光ランプでは、大型化を実現しようとした場合、ガラスの使用量が著しく増加してしまうため、軽量化の条件も同時に満たすことは困難である。その一例として、使用するガラス基板の厚みを薄くすることで、大型かつ軽量を満たす試みがされている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−340199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、大型かつ軽量を満たすために厚みが薄いガラス基板で平面型蛍光ランプを構成した場合、ガラス基板の強度低下のため、衝撃が加わると割れが生じるという問題が発生している。また、ガラス基板の厚みが薄い場合、製造過程においてもランプが割れやすく、生産効率が低下している。
【0006】
軽量で、かつ強度が高い面状光源の実現のために、発明者による試験の結果、上述の割れは変形ガラス基板の周辺部で発生すること、および凹凸部のガラス厚みがその割れの発生にほとんど依存しないことを発見した。この発見により凹凸部の厚みを周辺部の厚みよりも薄くしても、強度を維持したまま、軽量化することができることを見出したため、本発明を提案するに至った。
【0007】
本発明は上記のような従来の課題に鑑みたもので、その目的は、強度を維持しつつ、軽量な面状光源を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の面状光源は、ガラス基板が対向配置され、内部が気密に保たれた放電容器と、前記放電容器に配置された電極とを具備し、前記ガラス基板の少なくとも一は、凹凸部と周辺部とを有する変形ガラス基板であり、前記凹凸部のガラス基板の厚みをd、前記周辺部のガラス基板の厚みをDとしたとき、d<Dであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、強度を維持したまま、軽量化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の第1の実施の形態の平面型蛍光ランプについて図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態の平面型蛍光ランプを前面側の全体図、図2は、図1を背面側の全体図である。図3は、図2のX−X’の断面を矢印方向から見た図、図4は、図2のY−Y’の断面を矢印方向から見た図、図5は、図2のZ−Z’の断面を矢印方向から見た図である。
【0011】
平面型蛍光ランプの主要部を構成する放電容器1は、透光性のガラス、例えばソーダガラスからなるガラス基板11と変形ガラス基板12とで構成されている。これらのガラス基板の接合は、ガラス基板11と変形ガラス基板12の端縁に接合材として、例えばフリットガラス21を形成し、張り合わせることによって行われている。
【0012】
ガラス基板11は平板状であって、本実施の形態において発光面となる基板である。そのガラス基板11の端部には、排気・ガス導入を行うための穴部111がその厚さ部分に貫通形成されている。この穴部111の発光面側には、その穴を囲繞するように排気チップ3が形成されている。排気チップ3は、例えばフリットガラス22を排気チップ3とガラス基板11との接触部分に形成することにより、放電容器1に接合されている。なお、この排気チップ3は、形成当初は筒状であるが、放電容器1内部の排気・ガス導入後に一部をバーナー等で熱し、シュリンクシールされて、図のような形状で残存している。
【0013】
変形ガラス基板12は、凹凸状の波状部121と周辺部122とで構成されている。ここで、「変形ガラス基板」とは、平板状のガラス基板を熱加工等によって変形させたガラス基板であることを意味している。波状部121は波型の形状をしており、放電容器1の前面側に山部分、背面側に谷部分が複数交互に連続した形状になっている。すなわち、波状部121は変形ガラス基板12にガラス基板11を配置した場合に、放電容器1内部の放電空間を複数の放電セル13を形成するとともに、ガラス基板11を支持する機能を有している。なお、凹凸部の他の形状としては、X−X’断面において矩形状、多角形状等でもよいが、本実施の形態のように図3〜図5の断面においてR面で構成されているのが望ましい。ここで、「R面」とは、曲面で構成されることにより、応力が集中するような部分が存在しないことを意味している。好適にはRは可能な限り大きい方が望ましい。周辺部122は、波状部121を囲うように変形ガラス基板12の外縁を形成している部分であり、本実施の形態では他方のガラス基板と接合するためにフリットガラス22が塗布される。
【0014】
このような変形ガラス基板12は、例えば、平板であるガラス基板を加熱成型することによって得ることができる。詳細には、平板のガラス基板を600℃から1000℃まで加熱して軟化させた後、所望の成形型により熱プレスし、型の表面形状をガラスに転写することで所望の形状の変形ガラス基板12を得ることができる。すなわち、この成形型の設計によって、変形ガラス基板12の厚み、形状を自由に変更することができる。
【0015】
本実施の形態では、この成形型によって、波状部121の厚みdよりも、周辺部122の厚みDの方が厚くなるように変形ガラス基板12を形成している。例えば、dは0.5mm〜1.0mm、Dは0.70mm〜1.3mmの範囲になるように設定している。また、波状部121は、その全域において連続した曲面で形成しており、R面で構成されている。
【0016】
放電容器1の内部には、水銀と希ガスとを含む放電媒体が封入されている。希ガスとしては、キセノン、クリプトン、アルゴン、ネオン、ヘリウムから選択された少なくとも一種のガス、または2種以上の混合ガスとして封入することができる。なお、希ガスを2種以上混合して封入する場合、希ガス特有の特性を考慮して封入するのが望ましい。例えば、ネオンとアルゴンからなる混合ガスの場合、ネオン:アルゴン=50:50〜99:1とすれば、発光効率及びランプの低電圧始動性の特性を向上させることができ、ネオン:アルゴン=1:99〜50:50とすれば、発光の立ち上がり特性を向上させることができる。なお、ガス圧に関しては、発光効率、低電圧始動性、寿命の特性を考慮して、1〜700torr、好適には20〜100torrであるのが良い。
【0017】
放電容器1の内面、すなわち、ガラス基板11と変形ガラス基板12の放電空間側の面には、蛍光体層41、42が形成されている。蛍光体層41、42は、放電によって水銀から放射される紫外線を可視光に変換するものであればよく、例えば、一般照明や冷陰極蛍光ランプに使用されている単色の蛍光体やRGBの複数種の蛍光体を使用することができる。なお、異なる発光色の蛍光体を縞状に又はドット状に塗布して形成することもできる。
【0018】
ここで、本実施の形態ではガラス基板11側は出光面、変形ガラス基板12側は反射面となるので、前面側は光の透過効率を高め、背面側は光の反射効率を高める構成とするのが望ましい。例えば、蛍光体層41は平均粒径を約2.5μm以上、厚さを5〜15μm、蛍光体層42は、平均粒径を約2.5μm以下、厚さを30〜200μmとするのがよい。また、背面側の反射効率をさらに高めるために、変形ガラス基板12と蛍光体層42との間に酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化イットリウムなどからなる微粒子の金属酸化物層を形成するのが良い。また、ガラス基板11および変形ガラス基板12表面への水銀の移動を防止するために、蛍光体層41、42の間に酸化アルミニウム、酸化イットリウムの保護層を形成しても良い。
【0019】
ガラス基板11の外表面の両端部には、波状部121を横断する方向に、高圧電圧と低圧電圧が印加される帯状の一対の外部電極51、52が形成されている。この外部電極51、52は、スズ、インジウム、ビスマス、鉛、亜鉛、アンチモン、銀を少なくとも一種類以上含む半田を、超音波振動を加えながらディスペンサーや浸漬により形成したものである。なお、外部電極51、52の形成に関して限定はなく、導電性の接着剤によってアルミニウムなどの導電性テープを貼り付けたり、銀などの金属粉と溶剤とバインダーを混合させてなる導電性ペーストをスクリーン印刷によって形成したりして、電極を形成しても良い。
【0020】
図6は、本発明の平面型蛍光ランプの寸法、材料等の一仕様を示す図である。以下、試験は特に指定しない限り、この仕様に基づいて行っている。
【0021】
放電容器1:730mm×405mm×4.4mm、各放電空間の幅W:6.0mm、高さH:2.4mm、
ガラス基板11:ソーダガラス製、730mm×405mm×0.7mm、
変形ガラス基板12:ソーダガラス製、730mm×405mm、波状部121の厚さd=0.5mm、周辺部122の厚さD=0.7mm、
放電媒体 水銀:100mg、ネオン:アルゴン=9:1、60torr、
蛍光体層41 粒径:5.0μm、層の厚さ:150μm、
蛍光体層42 粒径:2.4μm、層の厚さ:10μm、
図7は、変形ガラス基板の波状部および周辺部の厚さを変えて引っ張り強度試験を行ったときの相対強度を示す図、つまり、ランプに割れ等が発生した時の強度を示す図である。図8は、図7をグラフ化した図である。なお、相対強度は、波状部121および周辺部122の厚みが1.10mmのときの引っ張り強度を基準(100)としたものである。
【0022】
この結果から、波状部121および周辺部122の厚みが厚くなるほど、強度が高くなっているのがわかる。ただし、波状部121については、図8から明確なように、厚みdが増しても、相対強度はほとんど変化していない。これはつまり、周辺部122の厚みdはランプの割れにほとんど依存していないということが言える。
【0023】
上記のような結果となった理由としては、ランプの割れのメカニズムが大きく関係しており。発明者の検証の結果、割れの原因は、ガラス表面に生じた小さなキズであることを突き止めた。そして、このキズはガラス表面の状態を調べた結果、周辺部122の端部に最も発生している傾向があった。このように、周辺部122の端部にキズが生じている場合、ランプに応力が集中するため、そのキズを起点として、図9に示しているような割れが発生したと考えられる。なお、このようなキズは、ガラス基板を所定の大きさに切断する工程等で発生したと考えられ、キズが生じないようにするのは極めて困難である。しかし、このようなキズが生じても、周辺部122の厚みDを厚くし、ランプにかかる応力を小さくすることにより、周辺部122に生じる割れを防止できることがわかった。
【0024】
なお、波状部121の厚みdにランプの割れがほとんど依存しない理由しては、波状部121には割れの原因となるようなキズが生じにくいためであると考えられる。ちなみに、ランプがR面で構成されていれば、キズはさらに発生しにくい。また、キズが生じたとしても、波状部121には割れの原因となるような大きな応力が加わりにくいと考えられる。したがって、周辺部122の厚みDが所要の厚みであれば、波状部121の厚みdを薄くしても問題がないことを見出した。そこで、D=0.7mm、d=0.5mmとした本発明のランプと、d=D=0.7mmとした従来のランプを製作したところ、30%程度軽量であった。また、ガラスの使用量が減り、熱容量が減少したことにより、始動直後からのランプの温度立ち上がりが早くなり、ランプの立ち上がりが早くなる傾向があった。
【0025】
ここで、周辺部122の厚みDは、0.70mm以上であれば、通常の使用において割れを防止でき、0.85mm以上であれば強い衝撃等が加わっても割れを防止できることを確認した。したがって、周辺部122の厚みDは0.70mm以上、好ましくは、0.85mm以上であるのが良い。なお、周辺部122の厚みDは、厚くなりすぎると変形ガラスの作成が困難になるため、1.3mm以下であるのが望ましい。また、本発明によれば、波状部121の厚みdは、0.5mm〜1.0mm程度まで薄くすることが可能であることが確認されている。
【0026】
したがって、本実施の形態では、変形ガラス基板12の波状部121のガラス基板の厚みをd、周辺部122のガラス基板の厚みをDとしたとき、d<Dであるため、従来と同程度の強度を維持しつつ、軽量化を図ることができる。
【0027】
また、周辺部122のガラス基板の厚みDが、D≧0.7mmであることにより、通常の使用において周辺部122の割れの発生を防止できるだけの強度を維持することができる。
【0028】
さらに、変形ガラス基板12がR面によって構成されているため、割れの原因となるキズが波状部121に生じにくくなる。したがって、波状部121の厚みdをさらに薄くすることができる。
【0029】
(第2の実施の形態)
図10は、本発明の第2の実施の形態の平面型蛍光ランプの断面図である。この第2の実施の形態の各部について、第1の実施の形態の平面型蛍光ランプの各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0030】
第2の実施の形態は、2枚の変形ガラス基板12a、12bとで構成している。そして、第1の実施の形態と同様に波状部12a1、12b1の厚さdよりも、周辺部12a2、12b2の厚さDの方が厚くなっている。この実施の形態においても、図9のような割れを抑制することができることが実験的に確認された。
【0031】
したがって、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様、軽量で、かつ変形ガラス基板12の割れを抑制することができる。
【0032】
なお、本発明の実施の形態は上記に限られるわけではなく、例えば次のように変更してもよい。
【0033】
変形ガラス基板12の波状部121の厚みdは、一様な厚さの場合に限定されず、例えば、図11のように、ガラス基板11を支持する部分を厚くしたような形状のガラス基板であってもよい。この際、その部分の厚みをd1、その他の部分の厚みをd2としたとき、d1>D、d2<Dであったとしても、変形ガラス基板12の厚みをDで形成したときと比較して、軽量であれば本発明に含まれるものとする。
【0034】
また、周辺部122の厚みDも、一様な厚さの場合に限定されない。例えば、図12のように端部のみが厚くなっていても良い。この際、その部分の厚みをD2、周辺部122において最も薄い部分の厚みをD1としたとき、D1<d、D2>dであったとしても、本発明の割れを防止する上で重要なのはD2の厚みであるため、本発明に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施の形態の平面型蛍光ランプを前面側の全体図。
【図2】図1の背面側の全体図。
【図3】図2のX−X’の断面を矢印方向から見た図。
【図4】図2のY−Y’の断面を矢印方向から見た図。
【図5】図2のZ−Z’の断面を矢印方向から見た図。
【図6】本発明の平面型蛍光ランプの寸法、材料等の一仕様を示す図。
【図7】変形ガラス基板の波状部および周辺部の厚さを変えて引っ張り強度試験を行ったときの相対強度を示す図。
【図8】図7をグラフ化した図。
【図9】割れが生じた平面型蛍光ランプの図。
【図10】第2の実施の形態の平面型蛍光ランプの断面図。
【図11】凹凸部の変形例。
【図12】周辺部の変形例。
【符号の説明】
【0036】
1 放電容器
11ガラス基板
111 穴部
12 変形ガラス基板
121 波状部
122 周辺部
13 放電セル
21、22 フリットガラス
3 排気チップ
41、42 蛍光体層
51、52 外部電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイのバックライトや一般照明などに用いられる平面型蛍光ランプ等の面状光源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
面状光源の一例として、平面型蛍光ランプがある。平面型蛍光ランプは、特開2005−340199号公報(以下、特許文献1)に開示されているようなランプである。この種の平面蛍光ランプは、平面状の放電容器を有している。この発明では、放電容器は平板のガラス基板と凹凸部を有するガラス基板(以下、変形ガラス基板)を張り合わせることにより構成されている。また、この変形ガラス基板の端辺には、他のガラス基板と接合するための接合材が形成される周辺部が一体的に設けられている。
【0003】
一方、近年の液晶ディスプレイ等の用途では、大型、軽量の光源が求められている。特許文献1のような平面型蛍光ランプでは、大型化を実現しようとした場合、ガラスの使用量が著しく増加してしまうため、軽量化の条件も同時に満たすことは困難である。その一例として、使用するガラス基板の厚みを薄くすることで、大型かつ軽量を満たす試みがされている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−340199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、大型かつ軽量を満たすために厚みが薄いガラス基板で平面型蛍光ランプを構成した場合、ガラス基板の強度低下のため、衝撃が加わると割れが生じるという問題が発生している。また、ガラス基板の厚みが薄い場合、製造過程においてもランプが割れやすく、生産効率が低下している。
【0006】
軽量で、かつ強度が高い面状光源の実現のために、発明者による試験の結果、上述の割れは変形ガラス基板の周辺部で発生すること、および凹凸部のガラス厚みがその割れの発生にほとんど依存しないことを発見した。この発見により凹凸部の厚みを周辺部の厚みよりも薄くしても、強度を維持したまま、軽量化することができることを見出したため、本発明を提案するに至った。
【0007】
本発明は上記のような従来の課題に鑑みたもので、その目的は、強度を維持しつつ、軽量な面状光源を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の面状光源は、ガラス基板が対向配置され、内部が気密に保たれた放電容器と、前記放電容器に配置された電極とを具備し、前記ガラス基板の少なくとも一は、凹凸部と周辺部とを有する変形ガラス基板であり、前記凹凸部のガラス基板の厚みをd、前記周辺部のガラス基板の厚みをDとしたとき、d<Dであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、強度を維持したまま、軽量化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の第1の実施の形態の平面型蛍光ランプについて図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態の平面型蛍光ランプを前面側の全体図、図2は、図1を背面側の全体図である。図3は、図2のX−X’の断面を矢印方向から見た図、図4は、図2のY−Y’の断面を矢印方向から見た図、図5は、図2のZ−Z’の断面を矢印方向から見た図である。
【0011】
平面型蛍光ランプの主要部を構成する放電容器1は、透光性のガラス、例えばソーダガラスからなるガラス基板11と変形ガラス基板12とで構成されている。これらのガラス基板の接合は、ガラス基板11と変形ガラス基板12の端縁に接合材として、例えばフリットガラス21を形成し、張り合わせることによって行われている。
【0012】
ガラス基板11は平板状であって、本実施の形態において発光面となる基板である。そのガラス基板11の端部には、排気・ガス導入を行うための穴部111がその厚さ部分に貫通形成されている。この穴部111の発光面側には、その穴を囲繞するように排気チップ3が形成されている。排気チップ3は、例えばフリットガラス22を排気チップ3とガラス基板11との接触部分に形成することにより、放電容器1に接合されている。なお、この排気チップ3は、形成当初は筒状であるが、放電容器1内部の排気・ガス導入後に一部をバーナー等で熱し、シュリンクシールされて、図のような形状で残存している。
【0013】
変形ガラス基板12は、凹凸状の波状部121と周辺部122とで構成されている。ここで、「変形ガラス基板」とは、平板状のガラス基板を熱加工等によって変形させたガラス基板であることを意味している。波状部121は波型の形状をしており、放電容器1の前面側に山部分、背面側に谷部分が複数交互に連続した形状になっている。すなわち、波状部121は変形ガラス基板12にガラス基板11を配置した場合に、放電容器1内部の放電空間を複数の放電セル13を形成するとともに、ガラス基板11を支持する機能を有している。なお、凹凸部の他の形状としては、X−X’断面において矩形状、多角形状等でもよいが、本実施の形態のように図3〜図5の断面においてR面で構成されているのが望ましい。ここで、「R面」とは、曲面で構成されることにより、応力が集中するような部分が存在しないことを意味している。好適にはRは可能な限り大きい方が望ましい。周辺部122は、波状部121を囲うように変形ガラス基板12の外縁を形成している部分であり、本実施の形態では他方のガラス基板と接合するためにフリットガラス22が塗布される。
【0014】
このような変形ガラス基板12は、例えば、平板であるガラス基板を加熱成型することによって得ることができる。詳細には、平板のガラス基板を600℃から1000℃まで加熱して軟化させた後、所望の成形型により熱プレスし、型の表面形状をガラスに転写することで所望の形状の変形ガラス基板12を得ることができる。すなわち、この成形型の設計によって、変形ガラス基板12の厚み、形状を自由に変更することができる。
【0015】
本実施の形態では、この成形型によって、波状部121の厚みdよりも、周辺部122の厚みDの方が厚くなるように変形ガラス基板12を形成している。例えば、dは0.5mm〜1.0mm、Dは0.70mm〜1.3mmの範囲になるように設定している。また、波状部121は、その全域において連続した曲面で形成しており、R面で構成されている。
【0016】
放電容器1の内部には、水銀と希ガスとを含む放電媒体が封入されている。希ガスとしては、キセノン、クリプトン、アルゴン、ネオン、ヘリウムから選択された少なくとも一種のガス、または2種以上の混合ガスとして封入することができる。なお、希ガスを2種以上混合して封入する場合、希ガス特有の特性を考慮して封入するのが望ましい。例えば、ネオンとアルゴンからなる混合ガスの場合、ネオン:アルゴン=50:50〜99:1とすれば、発光効率及びランプの低電圧始動性の特性を向上させることができ、ネオン:アルゴン=1:99〜50:50とすれば、発光の立ち上がり特性を向上させることができる。なお、ガス圧に関しては、発光効率、低電圧始動性、寿命の特性を考慮して、1〜700torr、好適には20〜100torrであるのが良い。
【0017】
放電容器1の内面、すなわち、ガラス基板11と変形ガラス基板12の放電空間側の面には、蛍光体層41、42が形成されている。蛍光体層41、42は、放電によって水銀から放射される紫外線を可視光に変換するものであればよく、例えば、一般照明や冷陰極蛍光ランプに使用されている単色の蛍光体やRGBの複数種の蛍光体を使用することができる。なお、異なる発光色の蛍光体を縞状に又はドット状に塗布して形成することもできる。
【0018】
ここで、本実施の形態ではガラス基板11側は出光面、変形ガラス基板12側は反射面となるので、前面側は光の透過効率を高め、背面側は光の反射効率を高める構成とするのが望ましい。例えば、蛍光体層41は平均粒径を約2.5μm以上、厚さを5〜15μm、蛍光体層42は、平均粒径を約2.5μm以下、厚さを30〜200μmとするのがよい。また、背面側の反射効率をさらに高めるために、変形ガラス基板12と蛍光体層42との間に酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化イットリウムなどからなる微粒子の金属酸化物層を形成するのが良い。また、ガラス基板11および変形ガラス基板12表面への水銀の移動を防止するために、蛍光体層41、42の間に酸化アルミニウム、酸化イットリウムの保護層を形成しても良い。
【0019】
ガラス基板11の外表面の両端部には、波状部121を横断する方向に、高圧電圧と低圧電圧が印加される帯状の一対の外部電極51、52が形成されている。この外部電極51、52は、スズ、インジウム、ビスマス、鉛、亜鉛、アンチモン、銀を少なくとも一種類以上含む半田を、超音波振動を加えながらディスペンサーや浸漬により形成したものである。なお、外部電極51、52の形成に関して限定はなく、導電性の接着剤によってアルミニウムなどの導電性テープを貼り付けたり、銀などの金属粉と溶剤とバインダーを混合させてなる導電性ペーストをスクリーン印刷によって形成したりして、電極を形成しても良い。
【0020】
図6は、本発明の平面型蛍光ランプの寸法、材料等の一仕様を示す図である。以下、試験は特に指定しない限り、この仕様に基づいて行っている。
【0021】
放電容器1:730mm×405mm×4.4mm、各放電空間の幅W:6.0mm、高さH:2.4mm、
ガラス基板11:ソーダガラス製、730mm×405mm×0.7mm、
変形ガラス基板12:ソーダガラス製、730mm×405mm、波状部121の厚さd=0.5mm、周辺部122の厚さD=0.7mm、
放電媒体 水銀:100mg、ネオン:アルゴン=9:1、60torr、
蛍光体層41 粒径:5.0μm、層の厚さ:150μm、
蛍光体層42 粒径:2.4μm、層の厚さ:10μm、
図7は、変形ガラス基板の波状部および周辺部の厚さを変えて引っ張り強度試験を行ったときの相対強度を示す図、つまり、ランプに割れ等が発生した時の強度を示す図である。図8は、図7をグラフ化した図である。なお、相対強度は、波状部121および周辺部122の厚みが1.10mmのときの引っ張り強度を基準(100)としたものである。
【0022】
この結果から、波状部121および周辺部122の厚みが厚くなるほど、強度が高くなっているのがわかる。ただし、波状部121については、図8から明確なように、厚みdが増しても、相対強度はほとんど変化していない。これはつまり、周辺部122の厚みdはランプの割れにほとんど依存していないということが言える。
【0023】
上記のような結果となった理由としては、ランプの割れのメカニズムが大きく関係しており。発明者の検証の結果、割れの原因は、ガラス表面に生じた小さなキズであることを突き止めた。そして、このキズはガラス表面の状態を調べた結果、周辺部122の端部に最も発生している傾向があった。このように、周辺部122の端部にキズが生じている場合、ランプに応力が集中するため、そのキズを起点として、図9に示しているような割れが発生したと考えられる。なお、このようなキズは、ガラス基板を所定の大きさに切断する工程等で発生したと考えられ、キズが生じないようにするのは極めて困難である。しかし、このようなキズが生じても、周辺部122の厚みDを厚くし、ランプにかかる応力を小さくすることにより、周辺部122に生じる割れを防止できることがわかった。
【0024】
なお、波状部121の厚みdにランプの割れがほとんど依存しない理由しては、波状部121には割れの原因となるようなキズが生じにくいためであると考えられる。ちなみに、ランプがR面で構成されていれば、キズはさらに発生しにくい。また、キズが生じたとしても、波状部121には割れの原因となるような大きな応力が加わりにくいと考えられる。したがって、周辺部122の厚みDが所要の厚みであれば、波状部121の厚みdを薄くしても問題がないことを見出した。そこで、D=0.7mm、d=0.5mmとした本発明のランプと、d=D=0.7mmとした従来のランプを製作したところ、30%程度軽量であった。また、ガラスの使用量が減り、熱容量が減少したことにより、始動直後からのランプの温度立ち上がりが早くなり、ランプの立ち上がりが早くなる傾向があった。
【0025】
ここで、周辺部122の厚みDは、0.70mm以上であれば、通常の使用において割れを防止でき、0.85mm以上であれば強い衝撃等が加わっても割れを防止できることを確認した。したがって、周辺部122の厚みDは0.70mm以上、好ましくは、0.85mm以上であるのが良い。なお、周辺部122の厚みDは、厚くなりすぎると変形ガラスの作成が困難になるため、1.3mm以下であるのが望ましい。また、本発明によれば、波状部121の厚みdは、0.5mm〜1.0mm程度まで薄くすることが可能であることが確認されている。
【0026】
したがって、本実施の形態では、変形ガラス基板12の波状部121のガラス基板の厚みをd、周辺部122のガラス基板の厚みをDとしたとき、d<Dであるため、従来と同程度の強度を維持しつつ、軽量化を図ることができる。
【0027】
また、周辺部122のガラス基板の厚みDが、D≧0.7mmであることにより、通常の使用において周辺部122の割れの発生を防止できるだけの強度を維持することができる。
【0028】
さらに、変形ガラス基板12がR面によって構成されているため、割れの原因となるキズが波状部121に生じにくくなる。したがって、波状部121の厚みdをさらに薄くすることができる。
【0029】
(第2の実施の形態)
図10は、本発明の第2の実施の形態の平面型蛍光ランプの断面図である。この第2の実施の形態の各部について、第1の実施の形態の平面型蛍光ランプの各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0030】
第2の実施の形態は、2枚の変形ガラス基板12a、12bとで構成している。そして、第1の実施の形態と同様に波状部12a1、12b1の厚さdよりも、周辺部12a2、12b2の厚さDの方が厚くなっている。この実施の形態においても、図9のような割れを抑制することができることが実験的に確認された。
【0031】
したがって、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様、軽量で、かつ変形ガラス基板12の割れを抑制することができる。
【0032】
なお、本発明の実施の形態は上記に限られるわけではなく、例えば次のように変更してもよい。
【0033】
変形ガラス基板12の波状部121の厚みdは、一様な厚さの場合に限定されず、例えば、図11のように、ガラス基板11を支持する部分を厚くしたような形状のガラス基板であってもよい。この際、その部分の厚みをd1、その他の部分の厚みをd2としたとき、d1>D、d2<Dであったとしても、変形ガラス基板12の厚みをDで形成したときと比較して、軽量であれば本発明に含まれるものとする。
【0034】
また、周辺部122の厚みDも、一様な厚さの場合に限定されない。例えば、図12のように端部のみが厚くなっていても良い。この際、その部分の厚みをD2、周辺部122において最も薄い部分の厚みをD1としたとき、D1<d、D2>dであったとしても、本発明の割れを防止する上で重要なのはD2の厚みであるため、本発明に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施の形態の平面型蛍光ランプを前面側の全体図。
【図2】図1の背面側の全体図。
【図3】図2のX−X’の断面を矢印方向から見た図。
【図4】図2のY−Y’の断面を矢印方向から見た図。
【図5】図2のZ−Z’の断面を矢印方向から見た図。
【図6】本発明の平面型蛍光ランプの寸法、材料等の一仕様を示す図。
【図7】変形ガラス基板の波状部および周辺部の厚さを変えて引っ張り強度試験を行ったときの相対強度を示す図。
【図8】図7をグラフ化した図。
【図9】割れが生じた平面型蛍光ランプの図。
【図10】第2の実施の形態の平面型蛍光ランプの断面図。
【図11】凹凸部の変形例。
【図12】周辺部の変形例。
【符号の説明】
【0036】
1 放電容器
11ガラス基板
111 穴部
12 変形ガラス基板
121 波状部
122 周辺部
13 放電セル
21、22 フリットガラス
3 排気チップ
41、42 蛍光体層
51、52 外部電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板が対向配置され、内部が気密に保たれた放電容器と、前記放電容器に配置された電極とを具備し、
前記ガラス基板の少なくとも一は、凹凸部と周辺部とを有する変形ガラス基板であり、前記凹凸部のガラス基板の厚みをd、前記周辺部のガラス基板の厚みをDとしたとき、d<Dであることを特徴とする面状光源。
【請求項2】
前記周辺部のガラス基板の厚みDが、D≧0.7mmであることを特徴とする請求項1に記載の面状光源。
【請求項3】
前記変形ガラス基板は、R面によって構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の面状光源。
【請求項1】
ガラス基板が対向配置され、内部が気密に保たれた放電容器と、前記放電容器に配置された電極とを具備し、
前記ガラス基板の少なくとも一は、凹凸部と周辺部とを有する変形ガラス基板であり、前記凹凸部のガラス基板の厚みをd、前記周辺部のガラス基板の厚みをDとしたとき、d<Dであることを特徴とする面状光源。
【請求項2】
前記周辺部のガラス基板の厚みDが、D≧0.7mmであることを特徴とする請求項1に記載の面状光源。
【請求項3】
前記変形ガラス基板は、R面によって構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の面状光源。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−59775(P2008−59775A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231770(P2006−231770)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】
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