説明

面間距離測定装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金型合せ面の測定やシム調整等に使用され、キャビティの深さなど比較的小さい面間距離を測定する面間距離測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、金型のキャビティの深さや合せ面の測定をする場合、従来では、キャビティ内に粘土を入れ、型締めして粘土を成形した後、その成形粘土の寸法をノギス等で計測して、キャビティの深さや合せ面の測定を行っている。
【0003】しかし、このような金型の測定は手間がかかり、その測定精度も低いことから、差動変圧器等の変位センサを使用して電気的に測定することが検討された。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、一般に使用される差動変圧器は、円筒形に巻装した一次コイル、二次コイルの中に、円柱状の磁性体コアを軸方向に移動可能に挿入した構造を持つ直線変位センサであるため、その構造上、測定方向の全長が例えば約50〜60mmと長くなり、例えば10〜20mmの金型キャビティ等の小間隙寸法は測定することができない問題があった。
【0005】本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、金型キャビティの深さなど小面間距離を容易に且つ高精度に測定することができる面間距離測定装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の面間距離測定装置は、ケースに設けた基準面と並行に配設された磁歪軸を有し、磁歪軸の捩り角に応じた検出電圧を出力する捩り角検出器と、磁歪軸の一部に略直角に固定され、先端部をケースから突出して配設され測定子と、を備え、捩り角検出器から出力される検出電圧値に基づいて、ケースの基準面から測定子の先端までの距離を面間距離の測定値として出力する面間距離測定装置であって捩り角検出器は、ケース内に磁歪軸が所定の角度捩りを加えた状態で両端を固定して取付けられ、磁歪軸の中点位置に測定子の末端が固定され、磁歪軸の中点の両側外周位置に各々一次コイルと二次コイルが巻装されて構成され、一次コイルには交流電源が接続され、二次コイルには整流回路が接続され、整流回路から出力された検出電圧値に基づき面間距離を求める演算処理回路が設けられたことを特徴とする。
【0007】
【0008】
【0009】
【作用・効果】このような構成の面間距離測定装置は、例えば、金型内の寸法測定などを行う際、定盤上に伏せて載置された金型のキャビティ内に、その基準面を下にして、測定子の先端をキャビティの上面に当接させるように、挿入される。そして、交流電源から一次コイルに交流電力を供給して、励磁すると、二次コイルには測定子の先端の位置に応じて捩られる磁歪軸の捩り角に応じて誘導電圧が発生し、これが整流回路に送られる。
【0010】二次コイルで発生した交流電圧は整流回路で直流電圧に変換され、演算処理回路に送られる。演算処理回路は、検出電圧値とそれに対応した面間距離データとをデータテーブルとして予め記憶し、整流回路を通して入力された検出電圧値に基づき、データテーブルを検索して面間距離を求める。
【0011】このように、ケースに設けた基準面と並行に配設した磁歪軸を有し、磁歪軸の捩り角に応じた検出電圧を出力する捩り角検出器を使用して、基準面と測定子間を面間距離を測定値として求めるため、測定部の厚さを従来の差動変圧器のものより大幅に薄くすることができり、狭い間隙の面間距離を測定することができる。また、捩り角検出器により測定値を出力するため、高精度に面間距離を測定することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】図1は面間距離測定装置における測定部の正面図を示し、図2はその平面図を示し、図3、図4はその断面図を示している。1は厚さの薄い金属製のケースであり、このケース1の底面が面間距離測定の際の基準面となる。
【0014】ケース1には基準面となる底面と並行に、磁歪特性を有する磁歪軸2が、例えば90度捩った状態で両端部を固定して配設される。捩る範囲は軸材料の許容応力の1/2以内である。磁歪軸2には、磁歪特性に優れた磁性材料の線材、例えば、ニッケル・鉄合金、パーマロイ、ニッケルクロム鋼からなる例えば約1mm程度の線材が使用される。そして、その磁歪軸2の中点位置(中央)に、測定子3がその末端を軸に対し直角に固定され、測定子3の先端はケース1から45度の傾斜角度で上方に突出される。
【0015】磁性材料は、一般に、応力を加えると、その磁化特性が変化し、応力の方向の透磁率が変化する磁歪特性を有している。このため、磁歪特性を有する軸の周囲に一次コイルと二次コイルを巻装し、一次コイルに交流電圧を印加した状態で、軸に応力つまり捩りを加えると、その捩りに応じて軸の透磁率が変化するため、捩りに応じて変化する出力電圧を、二次コイルから得ることができる。本測定装置では、このような磁歪軸の磁歪特性を利用して面間距離を測定する。
【0016】磁歪軸2は、例えば90度捩った状態で両端を固定部材9によりケース1に対し固定される。固定部材9はビス13でケース1に固定される。この両端の90度の捩りにより、測定子3が固定される軸2の中点位置には、45度の捩りが生じていることになる。
【0017】磁歪軸2の中央部には円板11が固定され、その円板11を介して測定子3の末端が軸2に強固に固定される。また、ケース中央には二又状の軸支部10がビス14により取付けられ、円板11の両側の軸部分がこの軸支部10により捩り自在に水平に支持される。
【0018】したがって、図7に示すように、軸2の中点に固定した測定子3により磁歪軸2を例えば+側に捩ると、軸2のJ1部分では捩りが増大し、軸2のJ2部分では逆に捩りが低減される。このため、軸2のJ1部とJ2部の両方に一次コイル、二次コイルを各々巻装し、両側のコイルを直列に接続して出力を差動的に取り出せば、測定子3の回動角度に応じた出力を、より大きく安定して取り出すことができる。また、磁歪軸2に予め捩り応力を加えて取付けることにより、測定子3を回動させた際、磁歪軸2に弾性ヒステリシスを生じにくくし、安定した正確な出力が得られるようにしている。
【0019】測定子3は、上記のように45度の傾斜角度で配設されるため、この角度から水平位置までの45度(回動角度範囲)が測定可能な面間距離の測定範囲である。なお、磁歪軸2を予め捩る角度の90度は一例であり、勿論、90度以外の角度で軸2を予め捩っておくこともできる。
【0020】ケース1の底面には、この装置を使用する際、測定部を定盤に容易に固定できるように、永久磁石4が取付けられる。 ケース1内には、上記磁歪軸2の捩り角を電圧に変換する、つまり捩り角に応じて電圧を出力する電磁誘導式の捩り角検出器5が設けられる。
【0021】この捩り角検出器5は、磁歪軸2の周囲における中点位置の両側に、ボビンに巻装した一次コイル7aと7b、及び二次コイル8aと8bを各々配設して構成される。一次コイル7aは測定子3に向って軸2の左側に、一次コイル7bはその右側に巻装され、二次コイル8aは一次コイル7aの上に、二次コイル8bは一次コイル7bの上に巻装される。
【0022】一次コイル7a,7bと二次コイル8a,8bに接続されたリード線12は、ケース1の端部に穿設した孔から外部に引出され、測定回路に接続される。
【0023】測定回路は、図5に示すように、直列接続された一次コイル7a,7bに接続される交流電源23、直列接続された二次コイル8a,8bとその中点に接続される整流回路20、整流された直流検出電圧を入力し測定値を演算する演算処理回路21、及び表示器22から構成される。
【0024】交流電源23は例えば5kHz,5v程度の交流電力を一次コイル7a,7bに供給する。整流回路20は、図6に示す如く、二次コイル8a,8bの一端に整流用のダイオードD1、D2を接続し、ダイオードD1、D2のカソード側と二次コイル8a,8bの中点との間にコンデンサC1、C2及び抵抗R1、R2を接続して構成される。
【0025】この測定回路の出力電圧は、図6に示すように、軸2の両側に配設された二次コイル8aと8bの電圧を加えた値となるが、両二次コイル8a,8bを相互に逆極性に接続することにより、測定子3の自由位置(45度の位置)で両二次コイルに等しい逆方向の電圧を発生させ、そのときの出力電圧をゼロにするようにしている。
【0026】また、上述のように、この磁歪軸2は、図7R>7の如く、軸2を+方向に捩ると、軸2の右側部分では捩りが増大し、軸2の左側部分では逆に捩りが低減される。このため、図8に示すように、磁歪軸2の右側に配置された二次コイル8aからの出力電圧Vaは、軸2のねじり角が増すほど低下し、逆に、左側に配置された二次コイル8bからの出力電圧Vbは、軸2のねじり角が増すほど増加する。したがって、両出力電圧Va,Vbを差動的に取り出すことにより、磁歪軸2の捩り量に応じた出力電圧(Va−Vb)を、大きな変化幅で略直線的に取り出すことができる。なお、この測定装置では、図8におけるねじり角0〜45度(磁歪軸の角度)の範囲で使用する。
【0027】演算処理回路21は、ROM、RAM等を有するCPUなどから構成され、直流検出電圧をデジタル値にA/D変換して入力し、その値から距離の測定値を演算する。この測定値の演算は、予めROM等の固定メモリに、磁歪軸2の捩り角(検出電圧値)と、それに対応した測定値、つまりケース1の底面から測定子3の先端までの距離Sをデータテーブルとして記憶しておき、検出電圧値が入力されたとき、それに対応した距離Sのデータを、そのデータテーブルを検索して求めることができる。
【0028】また、測定値であるケース1の底面から測定子3の先端までの距離Sは、図1に示すように、S=A+B+Cであるから、この式から算出することもできる。即ち、測定子3の長さをL、測定子3の角度(磁歪軸2の捩り角)をαとしたとき、測定子3の長さに対応した高さAは、A=Lsinαであるから、検出された測定値Sは、S=Lsinα+B+Cとなる。Bは磁歪軸2の中心から底面までの距離、Cは測定子3の先端部の半径である。
【0029】次に、上記構成の面間距離測定装置の動作を説明する。このような構成の面間距離測定装置の測定部は、例えば金型の寸法測定に使用する場合、図9に示すように、定盤Jの上に伏せて載置された金型K内に、金型Kの開口部からそのキャビティ内に挿入する。或は、測定部を先ず定盤Jに載置し、その上から金型Kを被せるように定盤J上に載置する。
【0030】この測定部は、上述のように捩り角検出器5を主要部として構成され、この検出器5は、軸とコイルの簡単な構造から非常に薄く形成することができるため、ケース1の厚さも薄型にすることができる。このため、金型の狭いキャビティ内でも測定部を挿入して、そのキャビティの深さ等を測定することができる。
【0031】金型Kのキャビティ内に測定部を挿入すると、測定子3の先端が、キャビティの上面に当接して測定子3がその初期角度45度より低く回動され、磁歪軸2が捩られる。このとき、軸2の右側部分(測定子から向って)では捩りが増大し、軸2の左側部分では逆に捩りが低減されるが、捩り角検出器5の一次コイル7a,7bには、交流電源23により交流電力が供給され、励磁されているため、その二次コイル8a,8bに誘導電圧Va,Vbが発生し、その差電圧(Va−Vb)が出力電圧として検出器5から出力され、この検出電圧は磁歪軸2の捩り角に応じて発生する。
【0032】捩り角検出器5から出力された検出電圧は、整流回路20で整流され、直流検出電圧として演算処理回路21に入力される。演算処理回路21では、検出電圧値と、それに対応した測定値(ケース1の底面から測定子3の先端までの距離S)がデータテーブルとして記憶している場合、その検出電圧値に対応した距離Sのデータを、そのデータテーブルを検索して求める。
【0033】或は、演算式から測定値を求める場合、測定値であるケース1の底面から測定子3の先端までの距離Sは、図1に示すように、S=A+B+Cであるから、演算処理回路21は、この式から算出する。ここで、AはLsinα、Lは測定子の長さ、αは捩り角(検出電圧)、Bは磁歪軸2の中心から底面までの距離、Cは測定子3の先端部の半径である。
【0034】このようにして金型キャビティの合せ面からの深さが、ケース1の底面から測定子3の先端までの距離Sとして測定され、その測定値が表示器22に数値表示される。また、上記のような測定を行いながら、定盤J上で金型Kを移動し、複数位置で測定を行えば、金型キャビティの深さの変位を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す面間距離測定装置の測定部の正面図である。
【図2】同測定部の平面図である。
【図3】同測定部の断面図である。
【図4】同測定部の縦断面図である。
【図5】測定回路のブロック図である。
【図6】捩り角検出器5と整流回路20の接続図である。
【図7】磁歪軸2の捩り状態を示す説明図である。
【図8】捩り角検出器5の出力電圧と捩り角の関係を示すグラフである。
【図9】測定装置の使用状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1−ケース、
2−磁歪軸、
3−測定子、
5−捩り角検出器、
7a,7b−一次コイル、
8a,8b−二次コイル、
20−整流回路、
21−演算処理回路、
22−表示器、
23−交流電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ケースに設けた基準面と並行に配設された磁歪軸を有し、該磁歪軸の捩り角に応じた検出電圧を出力する捩り角検出器と、該磁歪軸の一部に略直角に固定され、先端部を該ケースから突出して配設され測定子と、を備え、該捩り角検出器から出力される検出電圧値に基づいて、該ケースの基準面から該測定子の先端までの距離を面間距離の測定値として出力する面間距離測定装置であって前記捩り角検出器は、前記ケース内に前記磁歪軸が所定の角度捩りを加えた状態で両端を固定して取付けられ、該磁歪軸の中点位置に前記測定子の末端が固定され、該磁歪軸の中点の両側外周位置に各々一次コイルと二次コイルが巻装されて構成され、前記一次コイルには交流電源が接続され、前記二次コイルには整流回路が接続され、該整流回路から出力された検出電圧値に基づき面間距離を求める演算処理回路が設けられたことを特徴とする面間距離測定装置。
【請求項2】 前記演算処理回路は、検出電圧値とそれに対応した面間距離データとをデータテーブルとして予め記憶し、前記整流回路を通して入力された検出電圧値に基づき、該データテーブルを検索して面間距離を求めることを特徴とする請求項1記載の面間距離測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図6】
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【図9】
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【特許番号】特許第3527990号(P3527990)
【登録日】平成16年3月5日(2004.3.5)
【発行日】平成16年5月17日(2004.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−329020
【出願日】平成7年12月18日(1995.12.18)
【公開番号】特開平9−166408
【公開日】平成9年6月24日(1997.6.24)
【審査請求日】平成14年3月25日(2002.3.25)
【出願人】(000176958)三明電機株式会社 (37)
【参考文献】
【文献】特開 平5−187993(JP,A)
【文献】特開 昭47−16152(JP,A)
【文献】実開 昭62−3009(JP,U)
【文献】特公 昭37−3994(JP,B1)
【文献】実公 昭37−7066(JP,Y1)