靴下
【課題】 靴下は体重を受けた足裏よりその荷重を受ける状態であることから、直接肌に触れる部分に吸湿性のある糸を編み込んだとしても、その糸と肌との密着性により湿度を感じる不快感は充分に除去し得ない。
【解決手段】足裏面の肌の触れる靴下部分に、布帛を介して、高吸放湿性繊維の混用された中綿又は不織布が配置された靴下により解決され、発汗による靴内の湿度の上昇速度を抑制するとともに、充分に靴内湿度を低く抑え、さらさら感を持続し得る。
【解決手段】足裏面の肌の触れる靴下部分に、布帛を介して、高吸放湿性繊維の混用された中綿又は不織布が配置された靴下により解決され、発汗による靴内の湿度の上昇速度を抑制するとともに、充分に靴内湿度を低く抑え、さらさら感を持続し得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸放湿性に優れる底部を有する靴下に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人間はじっとしていても不感蒸泄により一日あたり850gの汗をかくと言われている。特に足の裏は、運動のみでなくストレスからも発汗が促進されることから、発汗による不快感で悩んでいる人は多い。
【0003】
革靴、運動靴、長靴、ブーツ等足がスッポリと入る履物は、中の空気と外の空気が入れ替わり難いことから閉鎖型の履物と言え、発汗による不快感は非常に高いものである。一方、スリッパ、サンダル、つっかけ、ミュール等は、足と外気がふれやすいことから開放型の履物と言える。しかしながら、開放型の履物であっても、あるいは履物を着用していない場合であっても、足部の裏面の発汗による不快感は存在するものである。
【0004】
いままで、発汗による不快感を解消すべく、吸湿効果を有する薬剤を入れた容器を靴のつま先部分の間隙にいれる靴中置脱臭、吸湿具や、吸湿性の布シート等を備えている靴の中敷が開示されている(例えば、特許文献1、或は特許文献2参照)。しかしながら、靴を着用しているときの靴中の吸湿具であるものの、発汗量の多い足の裏に密接するものでは無い。また、閉鎖型の履物に適用されており、吸湿性を有するものが湿度過飽和となった時点で吸湿限界となる。
【0005】
また、汗取り紙や不織布を足にあうような形状に裁断し、足の指と指の間がくっつかないように保持し吸湿を行うことにより、肌と靴下のべたつきを防止する足裏及び指間汗取り紙が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、肌と靴下とのべたつきを防止するものでしかなく、肌と履物とのべたつきを直接防止するものではない。また、靴下とは別に着用する必要があり煩雑である。
【0006】
さらに、靴下において、熱融着繊維を含有する不織繊維層が伸縮性繊維を含む編み糸によってステッチ縫合されさらに吸湿性加工された靴下や、靴下の底部に、吸湿性のアクリル系編み糸を使用して、足の裏に接する内側方面にループを形成したパイル編みし、靴底に接する外側は平編みし、内側と外側の地編みの中に、収縮性フィットヤーンを編み込み、当該底部にメッシュ編み部を適宜の感覚で設けた靴下が開示されている(例えば、特許文献4、或は特許文献5参照)。しかしながら、靴下は体重を受けた足裏よりその荷重を受ける状態であることから、直接肌に触れる部分に吸湿性のある糸を編み込んだとしても、その糸と肌との密着性により湿度を感じる不快感は充分に除去し得ない。
【特許文献1】特開平10−113202号公報、特許請求の範囲の請求項1及び段落「0004」に記載。
【特許文献2】特開2003−88405号公報、特許請求の範囲の請求項4及び段落「0010」に記載。
【特許文献3】特開2002−58701号公報、特許請求の範囲の請求項1及び段落「0005」等に記載。
【特許文献4】特開2000−355802号公報、特許請求の範囲の請求項7、段落「0038」及び段落「0011」に記載。
【特許文献5】特開2002−88512号公報、段落「0007」及び段落「0057」に記載。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
足裏の発汗による不快感を軽減し上述した様な問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、靴下において、直接肌に触れないように高吸放湿性繊維の混用された不織布を設置することで課題を解決するものである。すなわち、
(1)足裏面の肌の触れる靴下部分に、布帛を介して、高吸放湿性繊維の混用された中綿又は不織布が配置された靴下により解決される。さらには、
(2)靴下の底面部が指骨先端から中足骨までである(1)に記載の靴下により、或は
(3)靴下つま先部分が開口している(1)又は(2)に記載の靴下により、或は
(4)靴下上面部分に、布帛を介して、高吸放湿性繊維の混用された中綿又は不織布を配置した(1)に記載の靴下により解決される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の靴下は、運動靴の様な閉鎖型の靴を着用した場合でも、発汗による靴内の湿度の上昇速度を抑制するとともに、充分に靴内湿度を低く抑え、さらさら感を持続し得る効果を有する。
【0010】
さらには本発明の靴下は、サンダルやミュールの様な開放型の靴を着用した場合でも、足の裏面の発汗にもかかわらず靴下底面の表面はさらさら感を持続し得る効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の靴下は、足裏面の肌の触れる靴下部分に、布帛を介して、高吸放湿性繊維の混用された不織布を配置したものである。
【0012】
高吸放湿性繊維は、例えば周囲の湿度環境に応じて吸湿・放湿を行なう繊維である。好ましくは20℃、95%RHにおける吸湿率と20℃、40%RHにおける吸湿率の差が40重量%以上のものである。吸湿率の差が40重量%以上の場合は湿った靴下の湿気をよく吸収し、吸収した湿気を天日乾燥により容易に放湿することができる。
【0013】
なお、上記「吸湿率」とは、各条件下で繊維を24時間放置して吸湿させた時の重量とその繊維の絶乾質量との差をその繊維の絶乾質量で除したときの値である。また、「RH」とは「相対湿度」の意味である。
【0014】
上記特性を備えた吸放湿性繊維の例としては、架橋ポリアクリル酸ナトリウム塩系繊維、アクリル繊維の表面を後加工により加水分解した繊維などがあげられる。これらの繊維は単独でまたは2種以上を併用してもよい。
【0015】
吸放湿性繊維の市販品としては、例えばカネボウ合繊(株)製、商品名「ベルオアシス」や東洋紡績(株)製、商品名「N−38」等が挙げられる。特にベルオアシスは20℃、95%RHにおける吸湿率が140重量%、40%RHにおける吸湿率が22重量%で、その差が100重量%を超え、さらに該繊維は吸湿速度と放湿速度がほぼ同じであり、吸湿した湿気を短時間で放湿させることが可能である。
【0016】
高吸放湿性繊維の混用された中綿は、高吸放湿性繊維とその他の繊維とからなり、高吸放湿性繊維の含有率は任意であるが、好ましくは20〜90重量%である。この範囲内で
あれば優れた高吸放湿性能を発揮することができる。さらに好ましくは30〜70重量%である。
【0017】
中綿に使用するその他の繊維の種類は特に限定しない。合成繊維、天然繊維、再生繊維等、全ての繊維を使用することができる。また、中空繊維、難燃繊維、消臭繊維、防カビ繊維等の機能性繊維を使用することにより、それぞれの機能を付与することもできる。これらの繊維は2種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
中綿に使用する繊維の繊度は特に限定しないが、好ましくは3〜15dtexである。この範囲内であれば繊維の絡みがよく、また、繊維のへたりが少ないため中綿内の空間を保持でき吸湿・乾燥が効率よく行なわれる。さらに好ましい範囲は6〜12dtexである。
【0019】
中綿の形状としては吸放湿性繊維とその他の繊維を混綿したものをそのまま使用することもできるが、不織布状が好ましい。
【0020】
中綿には必要に応じて、例えば粉末あるいは粒状の難燃剤、消臭剤、抗菌剤、防カビ剤等の各種の添加剤を添加することもできる。
【0021】
高吸放湿性繊維の混用された中綿を靴下に配置する場合は、中綿が崩壊しにくい状態とするのが良く、例えば足裏面の肌の触れる靴下部分を3層以上の構造としその中層に配置したりするのが好ましい。
【0022】
高吸放湿性繊維の混用された不織布は構成として中綿と同じであり、ニードルパンチ及び圧縮ロールにて不織布としたものである。高吸放湿性繊維の混用された不織布を靴下に配置する場合は、例えば足裏面の肌の触れる靴下部分の布帛に直接接着或は縫製したり、又は足裏面の肌の触れる靴下部分を3層以上の構造としその中層に配置したりするのが好ましい。
【0023】
足裏面の肌の触れる靴下部分の布帛は、素材として通気性のあるものであればよく、例えば、合成繊維、天然繊維、再生繊維等からなる織物、編物などがあげられ、通常の靴下に用いられる素材であっても良い。
【0024】
布帛を介してとは、足裏面の肌と高吸放湿性繊維とが直接触れることはなく、足裏面に対し布帛を挟んで高吸放湿性繊維が配置されるということである。従って、通常の靴下において、その足裏面の肌の触れる部分とは反対側に高吸放湿性繊維の混用された不織布或は中綿が配置されてもよい。
【0025】
靴下の素材としては、通常に用いられる素材であればよく、例えば、合成繊維、天然繊維、再生繊維等からなる織物や編物、布帛等があげられる。
【0026】
靴下の形状としては、タイツ或はパンスト、ストッキング、オーバーザニー、ハイソックス、スリーコーター、ブーツソックス、クルーソックス、ソックス、アンクレット、フートカバー等の形状があげられる。さらには、図2に示すような足の甲の部分のみカバーするスリッパ型の靴下であっても良く、さらには、図18に示すようなスリッパ型の靴下であってその底面部が指骨先端から中足骨までである靴下であっても良い。
【0027】
靴下のつま先部分は、靴下の素材で覆われても良く、また開口した状態でも良い。
【0028】
靴下の底面部以外の部分は、適度のデザインや刺繍が成されていても良く、特にスリッ
パ型の靴下の足の甲をカバーする部分は適度のデザインや刺繍が成されていても良い。さらに、靴下の足の甲をカバーする部分の素材としては、レースが施されていても良い。特に、本願発明の靴下を開放型の履物と同時に着用した場合、視覚的に効果的である。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例を図1〜20を用いて詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
高吸放湿性繊維の混用された不織布を用いて、本発明のスリッパ形状の靴下を作製した。
【0031】
図1〜3は、本発明のスリッパ形状の靴下を表す図であり、図1は正面図、図2は左側面図、図3は上面図である。靴下の底面は2層で構成されている。足の裏面に接する表層は目付150g/m2のポリエステル布であり、下層はレギュラーポリエステル6.7dtex、51mmとカネボウ合繊(株)製高吸放湿性繊維「ベルオアシス」10dtex、51mmが60:40の混合比で混用された目付200g/m2の不織布である。
【0032】
図4は、靴下の断面を表す図であり、ポリエステル布でなる表層1と高吸放湿性繊維を混用された不織布でなる下層2を示す。
【0033】
この2層は、ポリエチレンを用いたホットメルトで互いに接着されている。足を掛ける部分はポリエステル布で形成されている。
【0034】
(比較例1)
高吸放湿性繊維を全く混用しない不織布を下層2に設置する以外は、実施例1と同じ構成であるスリッパ形状の靴下を作製した。
【0035】
(比較例2)
表層1を使用しない以外は、実施例1と同じ構成であるスリッパ形状の靴下を作製した。
【0036】
本発明の靴下の効果を調べるために、次の方法にて評価を行った。
【0037】
〔靴内温湿度変化(静止時、運動時)〕
女性3名を被験者とし、被験者の足のサイズに合わせた靴を準備し、片方の靴にベルオアシス混スリッパ形状の靴下、もう片方に通常のスリッパ形状の靴下(ベルオアシスを混用していないもの)を、その上から靴を着用してもらい、土踏まず部分の靴下と靴の間に靴内温湿度測定用センサを挿入し、室温約25℃、湿度35〜45%の恒温恒湿度下、靴着用直後からの靴内の温湿度を測定した。
【0038】
「静止時」の評価の場合は靴着用後、静止状態での靴内の温湿度変化を測定した。
【0039】
「運動時」の評価の場合は靴着用後、40分間静止した後、5km/hrの速度で10分間の歩行を行なった。次いで35分間静止した後、7km/hrの速度で10分間のジョギングを行ない、最後に25分間静止し、靴着用後から最後の静止状態までの靴内の温湿度変化を測定した。
【0040】
〔官能量評価〕
女性3名を被験者とし、被験者の足のサイズに合わせた靴を準備し、片方の靴にベルオ
アシス混不織布で構成されるスリッパ形状の靴下、もう片方に通常の不織布で構成されるスリッパ形状の靴下(ベルオアシスを混用していないもの)を入れ、着用快適性評価を行なった。評価は官能量を5項目で表現し、5段階でその良否を判断した。
【0041】
靴着用後、30分間静止した後、5km/hrの速度で歩行10分、静止30分を2回繰返し行ない、静止後、歩行後および靴を脱いだ直後の官能量を評価した。
【0042】
評価としては、靴下が「湿っている」状態、「汗ばんでいる」状態、「あたたかい」状態、及び「靴の中がさらさらしている」状態の各項目について、状態の小さい方から大きい方へ1〜5の5段階とした。
【0043】
〔靴内温湿度変化(静止時、運動時)結果〕
静止時における靴内の温湿度経時変化の測定結果を図5に示す。
【0044】
実施例1のスリッパ形状の靴下を着用した場合、靴内湿度の初期上昇率が約0.8%/min、120分後の靴内湿度が65%であった。それに対し、比較例1のスリッパ形状の靴下を着用した場合、初期上昇率が約2.2%/min、120分後の靴内湿度が93%であった。この様に、下層に高吸放湿性繊維が混用されている不織布を装備した靴下は、靴内の湿度の上昇速度を抑制するとともに、120分後においても充分に靴内湿度を低く抑え得るものである。
【0045】
運動時における靴内の温湿度経時変化の測定結果を図6に示す。
【0046】
実施例1のスリッパ形状の靴下を着用した場合、運動開始とともに靴内湿度の上昇が見られたものの、比較例1のスリッパ形状の靴下を着用した場合の靴内湿度と比較し、常に低い値を示し、その差は20%となる時もあった。この様に、下層に高吸放湿性繊維が混用されている不織布を装備した靴下は、発汗量が増大する運動時においても靴内の湿度の上昇を低く抑え得るものである。
【0047】
〔官能量評価〕
被験者の官能量評価結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
運動時においては、実施例1の下層に高吸放湿性繊維を混用された不織布を配置した靴下で、特に運動後「湿っている」「汗ばんでいる」においてそれらを軽減する評価が、「靴の中がさらさらしている」において良好な評価が得られた。
【0050】
(実施例2)
高吸放湿性繊維の混用された不織布を用いて、本発明の一例であるフットカバータイプの靴下を作製した。
【0051】
図7〜9は、本発明のフットカバータイプの靴下を表す図であり、図7は正面図、図8は左側面図、図9は上面図である。靴下の底面は3層で構成されている。足の裏面に接する表層と最下層は目付150g/m2のポリエステル布であり、中層はレギュラーポリエステル6.7dtex、51mmとカネボウ合繊(株)製高吸放湿性繊維「ベルオアシス」10dtex、51mmが60:40の混合比で混用された目付200g/m2の中綿である。
【0052】
図10は、靴下の断面を表す図であり、ポリエステル布でなる表層*、高吸放湿性繊維を混用された中綿でなる中層及びポリエステル布でなる最下層を示す。それらは辺縁部がお互いに縫製され一体化されている。
【0053】
(実施例3)
高吸放湿性繊維の混用された中綿を用いて、本発明の一例であるクルーソックスタイプの靴下を作製した。3層構造の中層に中綿を配置し周辺が縫合されていることと、靴下部が踝より上方まである以外は、実施例2の靴下と同じ構成である。
【0054】
図11〜13は、本発明の一例の靴下を表す図であり、図11は正面図、図12は右側面図、図13は上面図である。靴下の底面は3層で構成されている。
【0055】
(実施例4)
高吸放湿性繊維の混用された不織布を用いて、本発明の一例である足の半分をカバーするタイプの靴下を作製した。靴下の底面部が指骨先端から中足骨程度までであること、靴下つま先部分が開口していること以外は、実施例2の靴下と同じ構成である。
【0056】
図14〜19は、本発明の一例の靴下を表す図であり、図14は正面図、図15は右側面図、図16は上面図、図17は底面図である。靴下の底面は3層で構成されている。
【0057】
図18は、着用したときの状態を示す図であり、実線部分が本発明の靴下部分、破線部分が足の形状を示す。
【0058】
このタイプの靴下は、足を掛ける部分(図18における符号5)が伸縮性を有する布帛を用いて、図19の様に平面形状とすることができる。
【0059】
(実施例5)
高吸放湿性繊維の混用された不織布を用いて、本発明の一例である足の半分をカバーするタイプの靴下を3種作製した。靴下の足を掛ける部分(図18における符号5)がレースであるもの(図20(a))、メッシュであるもの(図20(b))、メッシュでありつま先まで覆っているもの(図20(c))である以外は、実施例2の靴下と同じ構成である。
【0060】
(比較例3)
高吸放湿性繊維を全く混用しない不織布を中層に設置する以外は、実施例4と同じ構成である、足の半分をカバーするタイプの靴下を作製した。
【0061】
(比較例4)
上層を使用せず中層*が足裏面と直接接するようにした以外は実施例4と同じ構成である、足の半分をカバーするタイプの靴下を作製した。
【0062】
〔試着試験〕
女性を被験者とし、被験者の足のサイズに合わせたミュールを準備し、右足に実施例4の靴下を、左足に比較例3の靴下を素足に着用してもらい、それぞれ実際に汗による湿り感触を調べた。
【0063】
天候晴れ、気温約29℃、屋内通常作業環境下、着用時間午前8時から午後3時まで着用した。足の裏は、被験者が思っている以上に汗の出る状況であった。その後、それぞれの靴下を調べてみたところ、実施例4の靴下は、汗を吸収しているはずにも係わらず表面はさらさらしていて使用前の状態と変わらなかった。一方、比較例3の靴下は、かなり湿っており蒸れた状態にあった。また、被験者自身も実際試着して実施例4の靴下のさらさら感を実感した。
【0064】
また、日を変えて、比較例3の靴下の代わりに比較例4の靴下を着用した場合の、実施例4の靴下との比較を行った。その結果、比較例4の靴下は、足裏面が体重もかかることから、足裏面の直接当たる部分が若干湿った様相を示した。
【0065】
これらの効果は、実施例4の靴下と、比較例3や比較例4の靴下との構造の違いのために生じると考えられる。比較例3の靴下はポリエステルのみでできているため、吸汗性が
なく汗が肌に直接接するためべとつき感が残る。
【0066】
これに対し、高吸放湿性繊維を混用された不織布を用いた実施例4の靴下は不織布をさらにポリエステルの布で覆って使用されている。したがって、ポリエステルの布を介して高吸放湿性繊維が汗を吸収し、汗が肌と直接接しないため市販品と比べるとべとつき感が少なくなるものと推測される。
【0067】
そして、体重のかかる足裏面においては、高吸放湿性繊維を混用された不織布を直接足裏面に接することの無いように配置することで、さらに靴下のさらさら感を増大させることができる。
【0068】
(実施例6)
高吸放湿性繊維の混用された不織布を用いて、本発明の一例である足の半分をカバーするタイプの靴下を作製した。靴下の足を掛ける部分(図18における符号5)の上面部分に、織物又は布帛を介して、高吸放湿性繊維の混用された中綿又は不織布を配置した以外は、実施例2の靴下と同じ構成である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の靴下は、主に一般家庭で着用される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明のスリッパタイプの靴下の正面図。
【図2】本発明のスリッパタイプの靴下の左側面図。
【図3】本発明のスリッパタイプの靴下の上面図。
【図4】本発明のスリッパタイプの靴下の図3のA−Bを切断した時の断面図。
【図5】静止時の靴内温湿度経時変化。
【図6】運動時の靴内温湿度経時変化。
【図7】本発明のフットカバータイプの靴下の正面図。
【図8】本発明のフットカバータイプの靴下の左側面図。
【図9】本発明のフットカバータイプの靴下の上面図。
【図10】本発明のフットカバータイプの靴下の図9のC−Dを切断した時の断面図。
【図11】本発明のクルーソックスタイプの靴下の正面図。
【図12】本発明のクルーソックスタイプの靴下の左側面図。
【図13】本発明のクルーソックスタイプの靴下の上面図。
【図14】本発明の足の半分をカバーするタイプの靴下の正面図。
【図15】本発明の足の半分をカバーするタイプの靴下の右側面図。
【図16】本発明の足の半分をカバーするタイプの靴下の上面図。
【図17】本発明の足の半分をカバーするタイプの靴下の底面図。
【図18】本発明の足の半分をカバーするタイプの着用したときの状態を示す図。実線部分は本発明の靴下部分。破線部分は足の形状。
【図19】本発明の足の半分をカバーするタイプの靴下が平面形状態であるときの正面図。
【図20】本発明の足の半分をカバーするタイプの靴下の靴下の足を掛ける部分がレースであるもの(図20(a))、メッシュであるもの(図20(b))、メッシュでありつま先まで覆っているもの(図20(c))の平面図。
【符号の説明】
【0071】
1 足裏面の肌の触れる靴下部分の布帛。
2 高吸放湿性繊維の混用された不織布。
3 高吸放湿性繊維の混用された中綿。
4 最下層の布帛。
5 足を掛ける部分。
6 実施例1の靴下を着用した時の靴内湿度。
7 比較例1の靴下を着用した時の靴内湿度
8 実施例1の靴下を着用した時の靴内温度。
9 比較例1の靴下を着用した時の靴内温度。
10 被験者が静止状態。
11 被験者が5km/hrで歩行状態。
12 被験者が7km/hrでジョギング状態。
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸放湿性に優れる底部を有する靴下に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人間はじっとしていても不感蒸泄により一日あたり850gの汗をかくと言われている。特に足の裏は、運動のみでなくストレスからも発汗が促進されることから、発汗による不快感で悩んでいる人は多い。
【0003】
革靴、運動靴、長靴、ブーツ等足がスッポリと入る履物は、中の空気と外の空気が入れ替わり難いことから閉鎖型の履物と言え、発汗による不快感は非常に高いものである。一方、スリッパ、サンダル、つっかけ、ミュール等は、足と外気がふれやすいことから開放型の履物と言える。しかしながら、開放型の履物であっても、あるいは履物を着用していない場合であっても、足部の裏面の発汗による不快感は存在するものである。
【0004】
いままで、発汗による不快感を解消すべく、吸湿効果を有する薬剤を入れた容器を靴のつま先部分の間隙にいれる靴中置脱臭、吸湿具や、吸湿性の布シート等を備えている靴の中敷が開示されている(例えば、特許文献1、或は特許文献2参照)。しかしながら、靴を着用しているときの靴中の吸湿具であるものの、発汗量の多い足の裏に密接するものでは無い。また、閉鎖型の履物に適用されており、吸湿性を有するものが湿度過飽和となった時点で吸湿限界となる。
【0005】
また、汗取り紙や不織布を足にあうような形状に裁断し、足の指と指の間がくっつかないように保持し吸湿を行うことにより、肌と靴下のべたつきを防止する足裏及び指間汗取り紙が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、肌と靴下とのべたつきを防止するものでしかなく、肌と履物とのべたつきを直接防止するものではない。また、靴下とは別に着用する必要があり煩雑である。
【0006】
さらに、靴下において、熱融着繊維を含有する不織繊維層が伸縮性繊維を含む編み糸によってステッチ縫合されさらに吸湿性加工された靴下や、靴下の底部に、吸湿性のアクリル系編み糸を使用して、足の裏に接する内側方面にループを形成したパイル編みし、靴底に接する外側は平編みし、内側と外側の地編みの中に、収縮性フィットヤーンを編み込み、当該底部にメッシュ編み部を適宜の感覚で設けた靴下が開示されている(例えば、特許文献4、或は特許文献5参照)。しかしながら、靴下は体重を受けた足裏よりその荷重を受ける状態であることから、直接肌に触れる部分に吸湿性のある糸を編み込んだとしても、その糸と肌との密着性により湿度を感じる不快感は充分に除去し得ない。
【特許文献1】特開平10−113202号公報、特許請求の範囲の請求項1及び段落「0004」に記載。
【特許文献2】特開2003−88405号公報、特許請求の範囲の請求項4及び段落「0010」に記載。
【特許文献3】特開2002−58701号公報、特許請求の範囲の請求項1及び段落「0005」等に記載。
【特許文献4】特開2000−355802号公報、特許請求の範囲の請求項7、段落「0038」及び段落「0011」に記載。
【特許文献5】特開2002−88512号公報、段落「0007」及び段落「0057」に記載。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
足裏の発汗による不快感を軽減し上述した様な問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、靴下において、直接肌に触れないように高吸放湿性繊維の混用された不織布を設置することで課題を解決するものである。すなわち、
(1)足裏面の肌の触れる靴下部分に、布帛を介して、高吸放湿性繊維の混用された中綿又は不織布が配置された靴下により解決される。さらには、
(2)靴下の底面部が指骨先端から中足骨までである(1)に記載の靴下により、或は
(3)靴下つま先部分が開口している(1)又は(2)に記載の靴下により、或は
(4)靴下上面部分に、布帛を介して、高吸放湿性繊維の混用された中綿又は不織布を配置した(1)に記載の靴下により解決される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の靴下は、運動靴の様な閉鎖型の靴を着用した場合でも、発汗による靴内の湿度の上昇速度を抑制するとともに、充分に靴内湿度を低く抑え、さらさら感を持続し得る効果を有する。
【0010】
さらには本発明の靴下は、サンダルやミュールの様な開放型の靴を着用した場合でも、足の裏面の発汗にもかかわらず靴下底面の表面はさらさら感を持続し得る効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の靴下は、足裏面の肌の触れる靴下部分に、布帛を介して、高吸放湿性繊維の混用された不織布を配置したものである。
【0012】
高吸放湿性繊維は、例えば周囲の湿度環境に応じて吸湿・放湿を行なう繊維である。好ましくは20℃、95%RHにおける吸湿率と20℃、40%RHにおける吸湿率の差が40重量%以上のものである。吸湿率の差が40重量%以上の場合は湿った靴下の湿気をよく吸収し、吸収した湿気を天日乾燥により容易に放湿することができる。
【0013】
なお、上記「吸湿率」とは、各条件下で繊維を24時間放置して吸湿させた時の重量とその繊維の絶乾質量との差をその繊維の絶乾質量で除したときの値である。また、「RH」とは「相対湿度」の意味である。
【0014】
上記特性を備えた吸放湿性繊維の例としては、架橋ポリアクリル酸ナトリウム塩系繊維、アクリル繊維の表面を後加工により加水分解した繊維などがあげられる。これらの繊維は単独でまたは2種以上を併用してもよい。
【0015】
吸放湿性繊維の市販品としては、例えばカネボウ合繊(株)製、商品名「ベルオアシス」や東洋紡績(株)製、商品名「N−38」等が挙げられる。特にベルオアシスは20℃、95%RHにおける吸湿率が140重量%、40%RHにおける吸湿率が22重量%で、その差が100重量%を超え、さらに該繊維は吸湿速度と放湿速度がほぼ同じであり、吸湿した湿気を短時間で放湿させることが可能である。
【0016】
高吸放湿性繊維の混用された中綿は、高吸放湿性繊維とその他の繊維とからなり、高吸放湿性繊維の含有率は任意であるが、好ましくは20〜90重量%である。この範囲内で
あれば優れた高吸放湿性能を発揮することができる。さらに好ましくは30〜70重量%である。
【0017】
中綿に使用するその他の繊維の種類は特に限定しない。合成繊維、天然繊維、再生繊維等、全ての繊維を使用することができる。また、中空繊維、難燃繊維、消臭繊維、防カビ繊維等の機能性繊維を使用することにより、それぞれの機能を付与することもできる。これらの繊維は2種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
中綿に使用する繊維の繊度は特に限定しないが、好ましくは3〜15dtexである。この範囲内であれば繊維の絡みがよく、また、繊維のへたりが少ないため中綿内の空間を保持でき吸湿・乾燥が効率よく行なわれる。さらに好ましい範囲は6〜12dtexである。
【0019】
中綿の形状としては吸放湿性繊維とその他の繊維を混綿したものをそのまま使用することもできるが、不織布状が好ましい。
【0020】
中綿には必要に応じて、例えば粉末あるいは粒状の難燃剤、消臭剤、抗菌剤、防カビ剤等の各種の添加剤を添加することもできる。
【0021】
高吸放湿性繊維の混用された中綿を靴下に配置する場合は、中綿が崩壊しにくい状態とするのが良く、例えば足裏面の肌の触れる靴下部分を3層以上の構造としその中層に配置したりするのが好ましい。
【0022】
高吸放湿性繊維の混用された不織布は構成として中綿と同じであり、ニードルパンチ及び圧縮ロールにて不織布としたものである。高吸放湿性繊維の混用された不織布を靴下に配置する場合は、例えば足裏面の肌の触れる靴下部分の布帛に直接接着或は縫製したり、又は足裏面の肌の触れる靴下部分を3層以上の構造としその中層に配置したりするのが好ましい。
【0023】
足裏面の肌の触れる靴下部分の布帛は、素材として通気性のあるものであればよく、例えば、合成繊維、天然繊維、再生繊維等からなる織物、編物などがあげられ、通常の靴下に用いられる素材であっても良い。
【0024】
布帛を介してとは、足裏面の肌と高吸放湿性繊維とが直接触れることはなく、足裏面に対し布帛を挟んで高吸放湿性繊維が配置されるということである。従って、通常の靴下において、その足裏面の肌の触れる部分とは反対側に高吸放湿性繊維の混用された不織布或は中綿が配置されてもよい。
【0025】
靴下の素材としては、通常に用いられる素材であればよく、例えば、合成繊維、天然繊維、再生繊維等からなる織物や編物、布帛等があげられる。
【0026】
靴下の形状としては、タイツ或はパンスト、ストッキング、オーバーザニー、ハイソックス、スリーコーター、ブーツソックス、クルーソックス、ソックス、アンクレット、フートカバー等の形状があげられる。さらには、図2に示すような足の甲の部分のみカバーするスリッパ型の靴下であっても良く、さらには、図18に示すようなスリッパ型の靴下であってその底面部が指骨先端から中足骨までである靴下であっても良い。
【0027】
靴下のつま先部分は、靴下の素材で覆われても良く、また開口した状態でも良い。
【0028】
靴下の底面部以外の部分は、適度のデザインや刺繍が成されていても良く、特にスリッ
パ型の靴下の足の甲をカバーする部分は適度のデザインや刺繍が成されていても良い。さらに、靴下の足の甲をカバーする部分の素材としては、レースが施されていても良い。特に、本願発明の靴下を開放型の履物と同時に着用した場合、視覚的に効果的である。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例を図1〜20を用いて詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
高吸放湿性繊維の混用された不織布を用いて、本発明のスリッパ形状の靴下を作製した。
【0031】
図1〜3は、本発明のスリッパ形状の靴下を表す図であり、図1は正面図、図2は左側面図、図3は上面図である。靴下の底面は2層で構成されている。足の裏面に接する表層は目付150g/m2のポリエステル布であり、下層はレギュラーポリエステル6.7dtex、51mmとカネボウ合繊(株)製高吸放湿性繊維「ベルオアシス」10dtex、51mmが60:40の混合比で混用された目付200g/m2の不織布である。
【0032】
図4は、靴下の断面を表す図であり、ポリエステル布でなる表層1と高吸放湿性繊維を混用された不織布でなる下層2を示す。
【0033】
この2層は、ポリエチレンを用いたホットメルトで互いに接着されている。足を掛ける部分はポリエステル布で形成されている。
【0034】
(比較例1)
高吸放湿性繊維を全く混用しない不織布を下層2に設置する以外は、実施例1と同じ構成であるスリッパ形状の靴下を作製した。
【0035】
(比較例2)
表層1を使用しない以外は、実施例1と同じ構成であるスリッパ形状の靴下を作製した。
【0036】
本発明の靴下の効果を調べるために、次の方法にて評価を行った。
【0037】
〔靴内温湿度変化(静止時、運動時)〕
女性3名を被験者とし、被験者の足のサイズに合わせた靴を準備し、片方の靴にベルオアシス混スリッパ形状の靴下、もう片方に通常のスリッパ形状の靴下(ベルオアシスを混用していないもの)を、その上から靴を着用してもらい、土踏まず部分の靴下と靴の間に靴内温湿度測定用センサを挿入し、室温約25℃、湿度35〜45%の恒温恒湿度下、靴着用直後からの靴内の温湿度を測定した。
【0038】
「静止時」の評価の場合は靴着用後、静止状態での靴内の温湿度変化を測定した。
【0039】
「運動時」の評価の場合は靴着用後、40分間静止した後、5km/hrの速度で10分間の歩行を行なった。次いで35分間静止した後、7km/hrの速度で10分間のジョギングを行ない、最後に25分間静止し、靴着用後から最後の静止状態までの靴内の温湿度変化を測定した。
【0040】
〔官能量評価〕
女性3名を被験者とし、被験者の足のサイズに合わせた靴を準備し、片方の靴にベルオ
アシス混不織布で構成されるスリッパ形状の靴下、もう片方に通常の不織布で構成されるスリッパ形状の靴下(ベルオアシスを混用していないもの)を入れ、着用快適性評価を行なった。評価は官能量を5項目で表現し、5段階でその良否を判断した。
【0041】
靴着用後、30分間静止した後、5km/hrの速度で歩行10分、静止30分を2回繰返し行ない、静止後、歩行後および靴を脱いだ直後の官能量を評価した。
【0042】
評価としては、靴下が「湿っている」状態、「汗ばんでいる」状態、「あたたかい」状態、及び「靴の中がさらさらしている」状態の各項目について、状態の小さい方から大きい方へ1〜5の5段階とした。
【0043】
〔靴内温湿度変化(静止時、運動時)結果〕
静止時における靴内の温湿度経時変化の測定結果を図5に示す。
【0044】
実施例1のスリッパ形状の靴下を着用した場合、靴内湿度の初期上昇率が約0.8%/min、120分後の靴内湿度が65%であった。それに対し、比較例1のスリッパ形状の靴下を着用した場合、初期上昇率が約2.2%/min、120分後の靴内湿度が93%であった。この様に、下層に高吸放湿性繊維が混用されている不織布を装備した靴下は、靴内の湿度の上昇速度を抑制するとともに、120分後においても充分に靴内湿度を低く抑え得るものである。
【0045】
運動時における靴内の温湿度経時変化の測定結果を図6に示す。
【0046】
実施例1のスリッパ形状の靴下を着用した場合、運動開始とともに靴内湿度の上昇が見られたものの、比較例1のスリッパ形状の靴下を着用した場合の靴内湿度と比較し、常に低い値を示し、その差は20%となる時もあった。この様に、下層に高吸放湿性繊維が混用されている不織布を装備した靴下は、発汗量が増大する運動時においても靴内の湿度の上昇を低く抑え得るものである。
【0047】
〔官能量評価〕
被験者の官能量評価結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
運動時においては、実施例1の下層に高吸放湿性繊維を混用された不織布を配置した靴下で、特に運動後「湿っている」「汗ばんでいる」においてそれらを軽減する評価が、「靴の中がさらさらしている」において良好な評価が得られた。
【0050】
(実施例2)
高吸放湿性繊維の混用された不織布を用いて、本発明の一例であるフットカバータイプの靴下を作製した。
【0051】
図7〜9は、本発明のフットカバータイプの靴下を表す図であり、図7は正面図、図8は左側面図、図9は上面図である。靴下の底面は3層で構成されている。足の裏面に接する表層と最下層は目付150g/m2のポリエステル布であり、中層はレギュラーポリエステル6.7dtex、51mmとカネボウ合繊(株)製高吸放湿性繊維「ベルオアシス」10dtex、51mmが60:40の混合比で混用された目付200g/m2の中綿である。
【0052】
図10は、靴下の断面を表す図であり、ポリエステル布でなる表層*、高吸放湿性繊維を混用された中綿でなる中層及びポリエステル布でなる最下層を示す。それらは辺縁部がお互いに縫製され一体化されている。
【0053】
(実施例3)
高吸放湿性繊維の混用された中綿を用いて、本発明の一例であるクルーソックスタイプの靴下を作製した。3層構造の中層に中綿を配置し周辺が縫合されていることと、靴下部が踝より上方まである以外は、実施例2の靴下と同じ構成である。
【0054】
図11〜13は、本発明の一例の靴下を表す図であり、図11は正面図、図12は右側面図、図13は上面図である。靴下の底面は3層で構成されている。
【0055】
(実施例4)
高吸放湿性繊維の混用された不織布を用いて、本発明の一例である足の半分をカバーするタイプの靴下を作製した。靴下の底面部が指骨先端から中足骨程度までであること、靴下つま先部分が開口していること以外は、実施例2の靴下と同じ構成である。
【0056】
図14〜19は、本発明の一例の靴下を表す図であり、図14は正面図、図15は右側面図、図16は上面図、図17は底面図である。靴下の底面は3層で構成されている。
【0057】
図18は、着用したときの状態を示す図であり、実線部分が本発明の靴下部分、破線部分が足の形状を示す。
【0058】
このタイプの靴下は、足を掛ける部分(図18における符号5)が伸縮性を有する布帛を用いて、図19の様に平面形状とすることができる。
【0059】
(実施例5)
高吸放湿性繊維の混用された不織布を用いて、本発明の一例である足の半分をカバーするタイプの靴下を3種作製した。靴下の足を掛ける部分(図18における符号5)がレースであるもの(図20(a))、メッシュであるもの(図20(b))、メッシュでありつま先まで覆っているもの(図20(c))である以外は、実施例2の靴下と同じ構成である。
【0060】
(比較例3)
高吸放湿性繊維を全く混用しない不織布を中層に設置する以外は、実施例4と同じ構成である、足の半分をカバーするタイプの靴下を作製した。
【0061】
(比較例4)
上層を使用せず中層*が足裏面と直接接するようにした以外は実施例4と同じ構成である、足の半分をカバーするタイプの靴下を作製した。
【0062】
〔試着試験〕
女性を被験者とし、被験者の足のサイズに合わせたミュールを準備し、右足に実施例4の靴下を、左足に比較例3の靴下を素足に着用してもらい、それぞれ実際に汗による湿り感触を調べた。
【0063】
天候晴れ、気温約29℃、屋内通常作業環境下、着用時間午前8時から午後3時まで着用した。足の裏は、被験者が思っている以上に汗の出る状況であった。その後、それぞれの靴下を調べてみたところ、実施例4の靴下は、汗を吸収しているはずにも係わらず表面はさらさらしていて使用前の状態と変わらなかった。一方、比較例3の靴下は、かなり湿っており蒸れた状態にあった。また、被験者自身も実際試着して実施例4の靴下のさらさら感を実感した。
【0064】
また、日を変えて、比較例3の靴下の代わりに比較例4の靴下を着用した場合の、実施例4の靴下との比較を行った。その結果、比較例4の靴下は、足裏面が体重もかかることから、足裏面の直接当たる部分が若干湿った様相を示した。
【0065】
これらの効果は、実施例4の靴下と、比較例3や比較例4の靴下との構造の違いのために生じると考えられる。比較例3の靴下はポリエステルのみでできているため、吸汗性が
なく汗が肌に直接接するためべとつき感が残る。
【0066】
これに対し、高吸放湿性繊維を混用された不織布を用いた実施例4の靴下は不織布をさらにポリエステルの布で覆って使用されている。したがって、ポリエステルの布を介して高吸放湿性繊維が汗を吸収し、汗が肌と直接接しないため市販品と比べるとべとつき感が少なくなるものと推測される。
【0067】
そして、体重のかかる足裏面においては、高吸放湿性繊維を混用された不織布を直接足裏面に接することの無いように配置することで、さらに靴下のさらさら感を増大させることができる。
【0068】
(実施例6)
高吸放湿性繊維の混用された不織布を用いて、本発明の一例である足の半分をカバーするタイプの靴下を作製した。靴下の足を掛ける部分(図18における符号5)の上面部分に、織物又は布帛を介して、高吸放湿性繊維の混用された中綿又は不織布を配置した以外は、実施例2の靴下と同じ構成である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の靴下は、主に一般家庭で着用される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明のスリッパタイプの靴下の正面図。
【図2】本発明のスリッパタイプの靴下の左側面図。
【図3】本発明のスリッパタイプの靴下の上面図。
【図4】本発明のスリッパタイプの靴下の図3のA−Bを切断した時の断面図。
【図5】静止時の靴内温湿度経時変化。
【図6】運動時の靴内温湿度経時変化。
【図7】本発明のフットカバータイプの靴下の正面図。
【図8】本発明のフットカバータイプの靴下の左側面図。
【図9】本発明のフットカバータイプの靴下の上面図。
【図10】本発明のフットカバータイプの靴下の図9のC−Dを切断した時の断面図。
【図11】本発明のクルーソックスタイプの靴下の正面図。
【図12】本発明のクルーソックスタイプの靴下の左側面図。
【図13】本発明のクルーソックスタイプの靴下の上面図。
【図14】本発明の足の半分をカバーするタイプの靴下の正面図。
【図15】本発明の足の半分をカバーするタイプの靴下の右側面図。
【図16】本発明の足の半分をカバーするタイプの靴下の上面図。
【図17】本発明の足の半分をカバーするタイプの靴下の底面図。
【図18】本発明の足の半分をカバーするタイプの着用したときの状態を示す図。実線部分は本発明の靴下部分。破線部分は足の形状。
【図19】本発明の足の半分をカバーするタイプの靴下が平面形状態であるときの正面図。
【図20】本発明の足の半分をカバーするタイプの靴下の靴下の足を掛ける部分がレースであるもの(図20(a))、メッシュであるもの(図20(b))、メッシュでありつま先まで覆っているもの(図20(c))の平面図。
【符号の説明】
【0071】
1 足裏面の肌の触れる靴下部分の布帛。
2 高吸放湿性繊維の混用された不織布。
3 高吸放湿性繊維の混用された中綿。
4 最下層の布帛。
5 足を掛ける部分。
6 実施例1の靴下を着用した時の靴内湿度。
7 比較例1の靴下を着用した時の靴内湿度
8 実施例1の靴下を着用した時の靴内温度。
9 比較例1の靴下を着用した時の靴内温度。
10 被験者が静止状態。
11 被験者が5km/hrで歩行状態。
12 被験者が7km/hrでジョギング状態。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足裏面の肌の触れる靴下部分に、布帛を介して、高吸放湿性繊維の混用された中綿又は不織布を配置した靴下。
【請求項2】
靴下の底面部が指骨先端から中足骨までである請求項1に記載の靴下。
【請求項3】
靴下つま先部分が開口している請求項1又は2に記載の靴下。
【請求項4】
靴下上面部分に、布帛を介して、高吸放湿性繊維の混用された中綿又は不織布を配置した請求項1に記載の靴下。
【請求項1】
足裏面の肌の触れる靴下部分に、布帛を介して、高吸放湿性繊維の混用された中綿又は不織布を配置した靴下。
【請求項2】
靴下の底面部が指骨先端から中足骨までである請求項1に記載の靴下。
【請求項3】
靴下つま先部分が開口している請求項1又は2に記載の靴下。
【請求項4】
靴下上面部分に、布帛を介して、高吸放湿性繊維の混用された中綿又は不織布を配置した請求項1に記載の靴下。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2006−144155(P2006−144155A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334078(P2004−334078)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000000952)カネボウ株式会社 (120)
【出願人】(596154239)カネボウ合繊株式会社 (29)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000000952)カネボウ株式会社 (120)
【出願人】(596154239)カネボウ合繊株式会社 (29)
【Fターム(参考)】
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