靴及び靴の製造方法
【課題】 靴におけるアウトソールの耐久性を高める。
【解決手段】 アウトソール接地面1aを形成する接地側皮革層5の上面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層7を設けた靴において、アウトソール1の周縁部で補強層7の厚みをアウトソール接地面1aの側へ拡大して、その補強層拡厚部7Aの下面をアウトソール接地面1aの周縁部で露出させる。また、補強層7との間に接地側皮革層5を挟んだ状態でアウトソール接地面1aに露出してアウトソール接地面1aの一部でアウトソール接地面1aの面方向に拡がる合成樹脂又はゴムを主材とする接地側外部補強層7Gを設け、接地側皮革層5に形成した連結用孔12を通じて補強層7と接地側外部補強層7Gとを一体化する。
【解決手段】 アウトソール接地面1aを形成する接地側皮革層5の上面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層7を設けた靴において、アウトソール1の周縁部で補強層7の厚みをアウトソール接地面1aの側へ拡大して、その補強層拡厚部7Aの下面をアウトソール接地面1aの周縁部で露出させる。また、補強層7との間に接地側皮革層5を挟んだ状態でアウトソール接地面1aに露出してアウトソール接地面1aの一部でアウトソール接地面1aの面方向に拡がる合成樹脂又はゴムを主材とする接地側外部補強層7Gを設け、接地側皮革層5に形成した連結用孔12を通じて補強層7と接地側外部補強層7Gとを一体化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層の上面、又は、アウトソール上面を形成する上面側皮革層の下面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴、及び、その製造方法に関し、特に野球用やサッカー用などのスポーツ用として好適な靴、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の靴は、アウトソール接地面やアウトソール上面を皮革層で形成することから、皮革ならではの高級感と履き心地を得ることができ、また、合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を接地側皮革層の上面や上面側皮革層の下面に設けることで、アウトソール(換言すれば、本底あるいは下底)の耐久性を高めるとともに、アウトソールの反りなど塑性変形や靴底からの突き上げ感なども効果的に抑止することができる。
【0003】
ところで従来、この種の靴としては、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層とアウトソール上面を形成する上面側皮革層との間に補強層を設ける構造において、その補強層の下面全体を接地側皮革層により覆い隠し、かつ、補強層の上面全体を上面側皮革層により覆い隠す状態で、それら接地側皮革層と上面側皮革層との間に補強層(例えばナイロン網など)を設けるものが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、補強層の上面全体を覆い隠す上面側皮革層と中央領域に透孔を形成した接地側皮革層との間に補強層を介在させるとともに、接地側皮革層の透孔に補強層の形成材(すなわち合成樹脂やゴム)を充填し、これにより、接地側皮革層の透孔形成部において補強層の厚みをアウトソール接地面の側に拡大して、その補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面の中央領域に露出させるものも提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】実公昭33−11451号公報
【特許文献2】実公昭55−3843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記いずれの従来構造にしても、補強層を設けて耐久性の向上を図っているものの未だ耐久性については改善の余地があり、特に大きな摩擦力や衝撃力を受けるスポーツ用の靴では更なる耐久性向上が強く望まれていた。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、合理的な改良により、この種の靴の耐久性を効果的に向上させる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔1〕本発明の第1特徴構成は、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層の上面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設ける靴に係り、その特徴は、
アウトソールの周縁部で前記補強層の厚みをアウトソール接地面の側へ拡大して、その補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面の周縁部で露出させてある点にある。
【0009】
つまり、アウトソール接地面の周縁部は地面に対して接する角部であるため摩耗が早く、殊にスポーツ用の靴では、例えばアウトソール接地面を地面に対し傾斜させた状態で地面を強く踏み付けたりスライディングしたりするなどのことで、アウトソール接地面の周縁部における摩耗が特に激しく、また、摩耗に止まらずアウトソール接地面の周縁部に亀
裂や破断などの損傷を生じることも多い。
【0010】
これに対し、上記第1特徴構成によれば、アウトソールの周縁部に設けた補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面の周縁部で露出させてあるから、補強層の一部として補強層拡厚部が備える高い機械的強度(すなわち、接地側皮革層よりも高い機械的強度、特に剛性や耐摩耗性)をもって、上記の如きアウトソール接地面の周縁部における摩耗や損傷を効果的に抑止することができる。
【0011】
また、この補強層拡厚部は接地側皮革層の上面に設けた補強層と一体のものであるから、アウトソール周縁部の補強層拡厚部自体がアウトソールから剥離することも確実に防止でき、これらの点で、先述した従来構造の靴に比べアウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0012】
なお、第1特徴構成の実施において、補強層拡厚部はアウトソールの全周縁部(すなわち、アウトソールの全周)に設ける形態、あるいは、アウトソールにおける一部の周縁部にのみ設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0013】
また、補強層拡厚部はアウトソール周方向で連続的に設ける形態、あるいは、アウトソール周方向で断続的に設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0014】
補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面の周縁部で露出させるのに、補強層拡厚部の下面は無被覆の状態で露出させる形態に限らず、摩耗や損傷などに対する機械的強度の高い被覆処理を施した状態で露出させる形態を採ってもよい。
【0015】
上記第1特徴構成によれば、補強層拡厚部の外側面がアウトソールの側面(周面)となることで、アウトソール側面の摩耗や損傷も効果的に抑止でき、この点でもアウトソールの耐久性を一層効果的に高めることができるが、補強層拡厚部の外側面は無被覆の状態で露出させる形態、あるいは、摩耗や損傷などに対する機械的強度の高い被覆処理を施した状態で露出させる形態のいずれを採ってもよい。
【0016】
また、補強層拡厚部の外側面に対し被覆処理を施す形態を採れば、アウトソールを皮革層のみで形成したような外観を得ることもできるなど、外観上の工夫を容易にすることもできる。
【0017】
〔2〕本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
アウトソールの上面を形成する上面側皮革層と前記接地側皮革層との間に前記補強層を設けてある点にある。
【0018】
つまり、この第2特徴構成によれば、アウトソール上面を形成する上面側皮革層を補強層の上面に設ける形態となることから、接地側皮革層によりアウトソール接地面を形成することとも相俟って、皮革ならではの高級感と履き心地を一層高めることができる。
【0019】
また、補強層拡厚部は接地側皮革層と上面側皮革層との間の補強層と一体のものとなることから、アウトソール周縁部の補強層拡厚部自体がアウトソールから剥離することを一層確実に防止でき、この点で、アウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性をさらに効果的に高めることができる。
【0020】
〔3〕本発明の第3特徴構成は、第1又は第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記補強層拡厚部をアウトソール周縁部のうち少なくともソール足先部に設けてある点にある。
【0021】
つまり、アウトソール接地面の周縁部の中でもアウトソール接地面の足先部は、歩行において地面に擦れる頻度が高く、殊にスポーツ用の靴では走行時やスタートダッシュ時に地面に強く擦り付けられることが多いことから、この部分の摩耗が一段と早く亀裂や破断などの損傷も特に生じ易い。
【0022】
これに対し、上記第3特徴構成によれば、下面をアウトソール接地面の周縁部で露出させる補強層拡厚部をアウトソール周縁部のうち少なくともソール足先部に設けるから、上記の如きアウトソール接地面の足先部における摩耗や損傷を効果的に抑止することができ、これにより、所期のアウトソール耐久性の向上を効果的に達成することができる。
【0023】
そして、このようにアウトソールの耐久性向上を効果的に達成しながらも、上記第3特
徴構成の実施において、アウトソール周縁部のうちソール足先部以外の周縁部(例えば、アウトソールにおける土踏まず部の周縁部など地面に擦り付けられる頻度が比較的低い周縁部)に対する補強層拡厚部の配設を可能な範囲で省略する構成、特に、アウトソール周縁部のうち足親指(第1足指)の付け根部と足小指(第5足指)の付け根部とにわたるソール前側周縁部にのみ補強層拡厚部を設ける構成や、そのソール前側周縁部の中でもさらにソール足先部にのみ補強層拡厚部を設ける構成を採れば、皮革層に比べ一般に比重が大きいものとなる補強層(補強層拡厚部を含む)の全容積を小さくし得る分、靴を軽量化することもできる。
【0024】
なお、第3特徴構成の実施において、補強層拡厚部をアウトソール周縁部のうち少なくともソール足先部に設けるのに、その補強層拡厚部はアウトソール周方向に連続的に設ける形態、あるいは、断続的に設ける形態のいずれを採ってよい。
【0025】
〔4〕本発明の第4特徴構成は、第1〜第3特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記補強層拡厚部と前記接地側皮革層との境界をアウトソール接地面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてある点にある。
【0026】
つまり、補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面の周縁部で露出させる構造では、前述の如くアウトソール接地面の周縁部における摩耗や損傷を効果的に抑止し得る反面、アウトソールが地面から受ける大きな曲げ力により補強層拡厚部とそれに隣接する接地側皮革層とがそれらの境界部で剥離(具体的には、補強層拡厚部の下部内側面とそれに接する接地側皮革層の側面とが剥離)し、それが口火となって補強層本体と接地側皮革層との剥離を招き易くなる虞が生じる。
【0027】
これに対し、上記第4特徴構成によれば、補強層拡厚部とそれに隣接する接地側皮革層との境界をアウトソール接地面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてあるから、その境界をアウトソール接地面視で単調な直線状ないし曲線状のものにするに比べ、その境界部に対する曲げ力の集中を緩和し得るとともに、補強層拡厚部とそれに隣接する接地側皮革層との境界部における接着面積も大きく確保することができ、これにより、上記の如き補強層拡厚部と接地側皮革層との境界部での剥離、及び、それが口火となる補強層本体と接地側皮革層との剥離を効果的に防止して、アウトソールの耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0028】
〔5〕本発明の第5特徴構成は、第1〜第4特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記補強層の厚みをアウトソール接地面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、前記接地側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール接地面に露出させてある点にある。
【0029】
つまり、この第5特徴構成によれば、補強層と接地側皮革層とを単純な面接触の状態で接着するのに比べ、接地側皮革層に対し貫通させる形態となる上記補強層突起の分散群により、補強層拡厚部と接地側皮革層との境界部に対する曲げ力の集中を緩和し得るとともに、接地側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する隣接部分と補強層との接着面積(すなわち、補強層本体と接地側皮革層との剥離が開始される部分の接着面積)も大きく確保することができ、これにより、補強層拡厚部と接地側皮革層との境界部での剥離が口火となる補強層本体と接地側皮革層との剥離を効果的に防止して、アウトソールの耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0030】
〔6〕本発明の第6特徴構成は、第1〜第5特徴構成のいずれか実施に好適な実施形態
を特定するものであり、その特徴は、
前記接地側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する端縁部を、前記補強層拡厚部の下端部に形成した鍔状部と前記補強層拡厚部周りの補強層部分との間に入り込ませてある点にある。
【0031】
つまり、この第6特徴構成によれば、補強層拡厚部とそれに隣接する接地側皮革層とをそれらの境界部において単純な面接触の状態で接着する(具体的には補強層拡厚部の下部内側面とそれに接する接地側皮革層の側面とを単純な面接触の状態で接着する)のに比べ、接地側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する端縁部を補強層拡厚部の下端部に形成した鍔状部と補強層拡厚部周りの補強層部分(すなわち、補強層拡厚部周りの非拡厚部)との間に入り込ませる分だけ、補強層拡厚部と接地側皮革層との境界部に対する曲げ力の集中を緩和し得るとともに、補強層拡厚部とそれに隣接する接地側皮革層との境界部における接着面積も大きく確保することができ、これにより、前述の如き補強層拡厚部と接地側皮革層との境界部での剥離、及び、それが口火となる補強層本体と接地側皮革層との剥離を効果的に防止して、アウトソールの耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0032】
〔7〕本発明の第7特徴構成は、アウトソール上面を形成する上面側皮革層の下面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設ける靴に係り、その特徴は、
アウトソールの周縁部で前記補強層の厚みをアウトソール上面の側へ拡大して、その補強層拡厚部の上面をアウトソールのコバ上面にしてある点にある。
【0033】
つまり、アウトソールにおけるコバ(すなわち、外側への出っ張り部)の上面は角部である為、石等の他物に対する接触で損傷し易く、殊にスポーツ用の靴では、例えばボールを投げ終わる際に後方の足を甲が下向きの状態で地面に擦り付けたり、ボールを蹴り出す際に甲が下向きの状態で足が地面に接触してしまうなどのことで、コバ上面の摩耗が特に激しく、また、摩耗に止まらずコバ上面に亀裂や破断などの損傷を生じることも多い。
【0034】
これに対し、上記第7特徴構成によれば、アウトソールの周縁部に設けた補強層拡厚部の上面をアウトソールのコバ上面にしてあるから、補強層の一部として補強層拡厚部が備える高い機械的強度(すなわち、上面側皮革層よりも高い機械的強度、特に剛性や耐摩耗性)をもって、上記の如きアウトソールのコバ上面における摩耗や損傷を効果的に抑止することができる。
【0035】
また、この補強層拡厚部は上面側皮革層の下面に設けた補強層と一体のものであるから、アウトソール周縁部の補強層拡厚部自体がアウトソールから剥離することも確実に防止でき、これらの点で、先述した従来構造の靴に比べアウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0036】
なお、第1特徴構成と同様、第7特徴構成の実施において、補強層拡厚部はアウトソールの全周縁部(すなわち、アウトソールの全周)に設ける形態、あるいは、アウトソールにおける一部の周縁部にのみ設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0037】
また、補強層拡厚部はアウトソール周方向で連続的に設ける形態、あるいは、アウトソール周方向で断続的に設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0038】
補強層拡厚部の上面をアウトソールのコバ上面とするのに、補強層拡厚部の上面は無被覆の状態でコバ上面とする形態に限らず、摩耗や損傷などに対する機械的強度の高い被覆処理を施した状態でコバ上面とする形態を採ってもよい。
【0039】
上記第7特徴構成によれば、補強層拡厚部の外側面がアウトソールのコバ側面(コバ周面)となることで、コバ側面の摩耗や損傷も効果的に抑止でき、この点でもアウトソールの耐久性を一層効果的に高めることができるが、補強層拡厚部の外側面は無被覆の状態でコバ側面とする形態、あるいは、摩耗や損傷などに対する機械的強度の高い被覆処理を施した状態でコバ側面とする形態のいずれを採ってもよい。
【0040】
また、補強層拡厚部の外側面に対し被覆処理を施す形態を採れば、アウトソールを皮革層のみで形成したような外観を得ることもできるなど、外観上の工夫を容易にすることもできる。
【0041】
〔8〕本発明の第8特徴構成は、第7特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
アウトソール接地面を形成する接地側皮革層と前記上面側皮革層との間に前記補強層を設けてある点にある。
【0042】
つまり、この第8特徴構成によれば、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層を補強層の下面に設ける形態となることから、上面側皮革層によりアウトソール上面を形成することとも相俟って、皮革ならではの高級感と履き心地を一層高めることができる。
【0043】
また、補強層拡厚部は接地側皮革層と上面側皮革層との間の補強層と一体のものとなることから、アウトソール周縁部の補強層拡厚部自体がアウトソールから剥離することを一層確実に防止でき、この点で、アウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性をさらに効果的に高めることができる。
【0044】
〔9〕本発明の第9特徴構成は、第7又は第8特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記補強層拡厚部をアウトソール周縁部のうち少なくともソール足先部に設けてある点にある。
【0045】
つまり、アウトソールのコバ上面の中でもソール足先部のコバ上面は、石等の他物に接触する頻度が高く、殊にスポーツ用の靴では、前述の如くボールを投げ終わる際に後方の足を甲が下向きの状態で地面に擦り付けたり、ボールを蹴り出す際に甲が下向きの状態で足が地面に接触してしまうなどのことで、この部分の摩耗が一段と早く亀裂や破断などの損傷も特に生じ易い。
【0046】
これに対し、上記第9特徴構成によれば、上面をアウトソールのコバ上面とする補強層拡厚部をアウトソール周縁部のうち少なくともソール足先部に設けるから、上記の如きソール足先部におけるコバ上面の摩耗や損傷を効果的に抑止することができ、これにより、所期のアウトソール耐久性の向上を効果的に達成することができる。
【0047】
そして、このようにアウトソールの耐久性向上を効果的に達成しながらも、上記第9特徴構成の実施において、アウトソール周縁部のうちソール足先部以外の周縁部(例えば、アウトソールにおける土踏まず部の周縁部など)に対する補強層拡厚部の配設を可能な範囲で省略する構成、特に、アウトソール周縁部のうち足親指の付け根部と足小指の付け根部とにわたるソール前側周縁部にのみ補強層拡厚部を設ける構成や、そのソール前側周縁部の中でもさらにソール足先部にのみ補強層拡厚部を設ける構成を採れば、前記した第3特徴構成と同様、皮革層に比べ一般に比重が大きいものとなる補強層(補強層拡厚部を含む)の全容積を小さくし得る分、靴を軽量化することもできる。
【0048】
なお、第9特徴構成の実施において、補強層拡厚部をアウトソール周縁部のうち少なくともソール足先部に設けるのに、その補強層拡厚部はアウトソール周方向に連続的に設ける形態、あるいは、断続的に設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0049】
〔10〕本発明の第10特徴構成は、第7〜第9特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記補強層拡厚部と前記上面側皮革層との境界をアウトソール上面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてある点にある。
【0050】
つまり、補強層拡厚部の上面をアウトソールのコバ上面とする構造では、前述の如くアウトソールのコバ上面における摩耗や損傷を効果的に抑止し得る反面、石などの他物に対するコバ上面の接触により補強層拡厚部とそれに隣接する上面側皮革層とがそれらの境界部で剥離(具体的には、補強層拡厚部の上部内側面とそれに接する上面側皮革層の側面とが剥離)し、それが口火となって補強層本体と上面側皮革層との剥離を招き易くなる虞が生じる。
【0051】
これに対し、上記第10特徴構成によれば、補強層拡厚部とそれに隣接する上面側皮革層との境界をアウトソール上面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてあるから、前記第4特徴構成と同様、その境界をアウトソール上面視で単調な直線状ないし曲線状のものにするに比べ、その境界部に対する曲げ力の集中を緩和し得るとともに、補強層拡厚部とそれに隣接する上面側皮革層との境界部における接着面積を大きく確保することができ、これにより、上記の如き補強層拡厚部と上面側皮革層との境界部での剥離、及び、それが口火となる補強層本体と上面側皮革層との剥離を効果的に防止して、アウトソールの耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0052】
〔11〕本発明の第11特徴構成は、第7〜第10特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記補強層の厚みをアウトソール上面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、前記上面側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール上面に露出させてある点にある。
【0053】
つまり、この第11特徴構成によれば、前記第5特徴構成の同様、補強層と上面側皮革層とを単純な面接触の状態で接着するのに比べ、上面側皮革層に対し貫通させる形態となる上記補強層突起の分散群により、補強層拡厚部と上面側皮革層との境界部に対する曲げ力の集中を緩和し得るとともに、上面側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する隣接部分と補強層との接着面積(すなわち、補強層本体と上面側皮革層との剥離が開始される部分の接着面積)も大きく確保することができ、これにより、補強層拡厚部と上面側皮革層との境界部での剥離が口火となる補強層本体と上面側皮革層との剥離を効果的に防止して、アウトソールの耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0054】
〔12〕本発明の第12特徴構成は、第7〜第11特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記上面側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する端縁部を、前記補強層拡厚部の上端部に形成した鍔状部と前記補強層拡厚部周りの補強層部分との間に入り込ませてある点にある。
【0055】
つまり、この第12特徴構成によれば、前記第6特徴構成と同様、補強層拡厚部とそれに隣接する上面側皮革層とをそれらの境界部において単純な面接触の状態で接着する(具体的には補強層拡厚部の上部内側面とそれに接する上面側皮革層の側面とを単純な面接触の状態で接着する)のに比べ、上面側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する端縁部を補強層拡厚部の上端部に形成した鍔状部と補強層拡厚部周りの補強層部分(すなわち、補強層拡厚部周りの非拡厚部)との間に入り込ませる分だけ、補強層拡厚部と上面側皮革層との境界部に対する曲げ力の集中を緩和し得るとともに、補強層拡厚部とそれに隣接する上面側皮革層との境界部における接着面積も大きく確保することができ、これにより、前述の如き補強層拡厚部と上面側皮革層との境界部での剥離、及び、それが口火となる補強層本体と上面側皮革層との剥離を効果的に防止して、アウトソールの耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0056】
〔13〕本発明の第13特徴構成は、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層とアウトソール上面を形成する上面側皮革層との間に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設ける靴に係り、その特徴は、
アウトソールの周縁部で前記補強層の厚みをアウトソール接地面の側及びアウトソール上面の側へ拡大して、その補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面の周縁部で露出させるとともに、その補強層拡厚部の上面をアウトソールのコバ上面にしてある点にある。
【0057】
つまり、この第13特徴構成は前記した第1特徴構成と第7特徴構成とを組み合わせたものであり、したがって、この第13特徴構成によれば、前述した第1特徴構成による機能と第7特徴構成による機能とを併せて得ることができ、これにより、アウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性をさらに一層効果的に高めることができる。
【0058】
なお、第1又は第7特徴構成と同様、第13特徴構成の実施において、補強層拡厚部はアウトソールの全周縁部(すなわち、アウトソールの全周)に設ける形態、あるいは、アウトソールにおける一部の周縁部にのみ設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0059】
また、補強層拡厚部はアウトソール周方向で連続的に設ける形態、あるいは、アウトソール周方向で断続的に設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0060】
補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面の周縁部で露出させる(換言すれば、この第13特徴構成では補強層拡厚部の下面をアウトソールのコバ下面とする)のに、補強層拡厚部の下面は無被覆の状態で露出させる形態に限らず、摩耗や損傷などに対する機械的強度の高い被覆処理を施した状態で露出させる形態を採ってもよい。
【0061】
また同様に、補強層拡厚部の上面をアウトソールのコバ上面とするのに、補強層拡厚部の上面は無被覆の状態でコバ上面とする形態に限らず、摩耗や損傷などに対する機械的強度の高い被覆処理を施した状態でコバ上面とする形態を採ってもよい。
【0062】
上記第13特徴構成によれば、補強層拡厚部の外側面がアウトソールのコバ側面となることで、コバ側面の摩耗や損傷も効果的に抑止でき、この点でもアウトソールの耐久性を一層効果的に高めることができるが、補強層拡厚部の外側面は無被覆の状態で露出させてコバ側面とする形態、あるいは、摩耗や損傷などに対する機械的強度の高い被覆処理を施した状態で露出させてコバ側面とする形態のいずれを採ってもよい。
【0063】
また、補強層拡厚部の外側面に対し被覆処理を施す形態を採れば、アウトソールを皮革層のみで形成したような外観を得ることもできるなど、外観上の工夫を容易にすることもできる。
【0064】
第13特徴構成の実施において、補強層拡厚部と接地側皮革層との境界をアウトソール接地面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてある構成や、補強層の厚みをアウトソール接地面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、接地側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール接地面に露出させる構成、あるいは、接地側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する端縁部を、補強層拡厚部の下端部に形成した鍔状部と補強層拡厚部周りの補強層部分との間に入り込ませる構成を採れば、第4,第5、第6特徴構成と同様、補強層本体と接地側皮革層との剥離を効果的に防止できる。
【0065】
また、補強層拡厚部と上面側皮革層との境界をアウトソール上面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてある構成や、補強層の厚みをアウトソール上面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、上面側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール上面に露出させる構成、あるいは、上面側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する端縁部を、補強層拡厚部の上端部に形成した鍔状部と補強層拡厚部周りの補強層部分との間に入り込ませる構成を採れば、第10,第11、第12特徴構成と同様、補強層本体と上面側皮革層との剥離も効果的に防止できる。
【0066】
〔14〕本発明の第14特徴構成は、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層の上面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設ける靴に係り、その特徴は、
アウトソール接地面視におけるアウトソール内方部で前記補強層の厚みをアウトソール接地面の側へ拡大して、その補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面の内方部に露出させ、この構造において、
その補強層拡厚部と前記接地側皮革層との境界をアウトソール接地面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてある、
又は、前記補強層の厚みをアウトソール接地面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、前記接地側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール接地面に露出させてある、
又は、前記接地側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する端縁部を、前記補強層拡厚部の下端部に形成した鍔状部と前記補強層拡厚部周りの補強層部分との間に入り込ませてある点にある。
【0067】
つまり、歩行や走行においてはアウトソール接地面視におけるアウトソール内方部にも大きな曲げ力が作用し、殊にスポーツ用の靴ではジャンプやスタートダッシュの際にアウトソール接地面視におけるアウトソール内方部(特に内方部のうちでも前底部や土踏まず部あるいは後底部)にも大きな曲げ力が作用し、この為、アウトソール接地面視におけるアウトソール内方部が早期に疲労劣化する。
【0068】
これに対し、上記第14特徴構成によれば、補強層の厚みをアウトソール接地面の側へ大きして下面をアウトソール接地面で露出させる補強層拡厚部をアウトソール接地面視におけるアウトソール内方部に設けるから、上記の如きアウトソール接地面視におけるアウトソール内方部の疲労劣化を効果的に抑止することができる。
【0069】
また、補強層は皮革層に比べ一般に比重が大きなものとなるが、補強層拡厚部以外の部分については補強層の厚みを小さくするから、靴にとって重要(特にスポーツ用の靴にとって重要)な軽量化も可能になり、さらに、この補強層拡厚部は接地側皮革層の上面に設けた補強層と一体のものであるから、アウトソール全体としての一体化強度も大きく確保することができる。
【0070】
しかも、このように補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面視におけるアウトソール内方部で露出させる構造において、その補強層拡厚部と接地側皮革層との境界をアウトソール接地面視で櫛歯状又は波状に蛇行させるから、又は、補強層の厚みをアウトソール接地面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、接地側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール接地面に露出させるから、又は、接地側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する端縁部を、補強層拡厚部の下端部に形成した鍔状部と補強層拡厚部周りの補強層部分(すなわち、補強層拡厚部周りの非拡厚部)との間に入り込ませるから、前記した第4、第5又は第6特徴構成と同様にして、補強層拡厚部と接地側皮革層との境界部での剥離が口火となる補強層本体と接地側皮革層との剥離も効果的に防止することができ、これにより、アウトソール全体としての一体化強度を更に効果的に増大させることができる。
【0071】
すなわち、これらのことから上記第14特徴構成によれば、靴の軽量化を可能にしながらも、先述した従来構造の靴に比べアウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0072】
なお、第14特徴構成の実施において、補強層拡厚部はアウトソール接地面視におけるアウトソール内方部に一塊状態で設ける形態、あるいは、分散状態で複数設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0073】
また、補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面視におけるアウトソール内方部で露出させるのに、補強層拡厚部の下面は無被覆の状態で露出させる形態に限らず、適当な被覆処理を施した状態で露出させる形態を採ってもよい。
【0074】
〔15〕本発明の第15特徴構成は、第14特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
アウトソール上面を形成する上面側皮革層と前記接地側皮革層との間に前記補強層を設けてある点にある。
【0075】
つまり、この第15特徴構成によれば、アウトソール上面を形成する上面側皮革層を補強層の上面に設ける形態となることから、接地側皮革層によりアウトソール接地面を形成することとも相俟って、皮革ならではの高級感と履き心地を一層高めることができる。
【0076】
また、補強層拡厚部は接地側皮革層と上面側皮革層との間の補強層と一体のものとなるから、アウトソール全体としての一体化強度も一層大きく確保することができ、この点で、アウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性をさらに効果的に高めることができる。
【0077】
〔16〕本発明の第16特徴構成は、第14又は第15特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記アウトソール接地面の前底部又は後底部で露出させた補強層拡厚部の下面をスパイク金具の取り付け面にしてある点にある。
【0078】
つまり、この第16特徴構成によれば、スパイク金具からアウトソールを介して足裏に伝わる突き上げ感を補強層拡厚部により効果的に軽減することができる。
【0079】
また、接地側皮革層の下面を取り付け面としてスパイク金具をアウトソールの前底部又は後底部に取り付けるのに比べ、補強層拡厚部が備える大きな機械的強度(特に剛性)によりスパイク金具を一層強固にアウトソールの前底部又は後底部に取り付けることができ、これにより、第14特徴構成によるアウトソール全体としての一体化強度の効果的な向上とも相俟って、スパイクシューズとしての耐久性を効果的に高めることができる。
【0080】
〔17〕本発明の第17特徴構成は、アウトソール上面を形成する上面側皮革層の下面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設ける靴に係り、その特徴は、
アウトソール上面視におけるアウトソール内方部で前記補強層の厚みをアウトソール上面の側へ拡大して、その補強層拡厚部の上面をアウトソール上面の内方部に露出させ、この構造において、
その補強層拡厚部と前記上面側皮革層との境界をアウトソール上面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてある、
又は、前記補強層の厚みをアウトソール上面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、前記上面側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール上面に露出させてある、
又は、前記上面側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する端縁部を、前記補強層拡厚部の上端部に形成した鍔状部と前記補強層拡厚部周りの補強層部分との間に入り込ませてある点にある。
【0081】
つまり、アウトソール上面視(換言すれば、アウトソール接地面視)におけるアウトソール内方部(特に前底部や土踏まず部あるいは後底部)は前述の如く疲労による劣化が早いが、この第17特徴構成によれば、補強層の厚みをアウトソール上面の側へ大きして上面をアウトソール上面で露出させる補強層拡厚部をアウトソール上面視におけるアウトソール内方部に設けるから、前記した第14特徴構成と同様、アウトソール上面視におけるアウトソール内方部の疲労劣化を効果的に抑止することができる。
【0082】
また、第14特徴構成と同様、補強層拡厚部以外の部分については補強層の厚みを小さくするから、靴にとって重要(特にスポーツ用の靴にとって重要)な軽量化も可能になり、さらに、この補強層拡厚部は上面側皮革層の下面に設けた補強層と一体のものであるから、アウトソール全体としての一体化強度も大きく確保することができる。
【0083】
しかも、このように補強層拡厚部の上面をアウトソール上面視におけるアウトソール内方部で露出させる構造において、その補強層拡厚部と上面側皮革層との境界をアウトソール上面視で櫛歯状又は波状に蛇行させるから、又は、補強層の厚みをアウトソール上面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、上面側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール上面に露出させるから、又は、上面側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する端縁部を、補強層拡厚部の上端部に形成した鍔状部と補強層拡厚部周りの補強層部分(すなわち、補強層拡厚部周りの非拡厚部)との間に入り込ませるから、前記した第10、第11又は第12特徴構成と同様にして、補強層拡厚部と上面側皮革層との境界部での剥離が口火となる補強層本体と上面側皮革層との剥離も効果的に防止することができ、これにより、アウトソール全体としての一体化強度を更に効果的に増大させることができる。
【0084】
すなわち、これらのことから上記第17特徴構成によれば、靴の軽量化を可能にしながらも、先述した従来構造の靴に比べアウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0085】
なお、第17特徴構成の実施において、補強層拡厚部はアウトソール上面視におけるアウトソール内方部に一塊状態で設ける形態、あるいは、分散状態で複数設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0086】
また、補強層拡厚部の上面をアウトソール上面視におけるアウトソール内方部で露出させるのに、補強層拡厚部の上面は無被覆の状態で露出させる形態に限らず、適当な被覆処理を施した状態で露出させる形態を採ってもよい。
【0087】
〔18〕本発明の第18特徴構成は、第17特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
アウトソール接地面を形成する接地側皮革層と前記上面側皮革層との間に前記補強層を設けてある点にある。
【0088】
つまり、この第18特徴構成によれば、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層を補強層の下面に設ける形態となることから、上面側皮革層によりアウトソール上面を形成することとも相俟って、皮革ならではの高級感と履き心地を一層高めることができる。
【0089】
また、補強層拡厚部は接地側皮革層と上面側皮革層との間の補強層と一体のものとなるから、アウトソール全体としての一体化強度も一層大きく確保することができ、この点で、アウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性をさらに効果的に高めることができる。
【0090】
〔19〕本発明の第19特徴構成は、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層の上面又はアウトソール上面を形成する上面側皮革層の下面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設ける靴に係り、その特徴は、
アウトソールの周縁部のうち少なくとも足親指の近傍部分で前記補強層をアッパーの上面に沿わせる湾曲状態で上方側へ延設して、その延設部をアッパーに対する保護カバーにしてある点にある。
【0091】
つまり、この第19特徴構成によれば、例えば、ボールを投げ終わる際に後方の足を甲が下向きの状態で地面に擦り付けるなどのことで、アッパーの前部が早期に摩耗したり亀裂や破断などの損傷を受けることを、保護カバーとしての上記補強層延設部(すなわち、野球用の靴で言えば、いわゆるPカバー)により防止することができる。
【0092】
また、この補強層延設部は接地側皮革層の上面又は上面側皮革層の下面に設けた補強層と一体のものであるから、その保護カバーとしての補強層延設部自体がアウトソールから離脱することも確実に防止でき、これらの点で、靴の耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0093】
なお、第19特徴構成の実施において、補強層を接地側皮革層と上面側皮革層との間に設ける形態を採れば、保護カバーとしての補強層延設部は接地側皮革層と上面側皮革層との間の補強層と一体のものとなるから、補強層延設部自体がアウトソールから離脱することをさらに確実に防止することができて、靴の耐久性をさらに効果的に高めることができる。
【0094】
〔20〕本発明の第20特徴構成は、第6又は第14特徴構成の靴の製造方法に係り、その特徴は、
前記補強層拡厚部の形成箇所に拡厚用開口部を形成した前記接地側皮革層を型内に設置し、
この型内において前記接地側皮革層の上面が臨む補強層形成用の型内空間部に補強層形成材を注入することにより、その補強層形成材を前記型内空間部及び前記拡厚用開口部に充填するとともに、前記拡厚用開口部を通じて前記鍔状部の形成箇所に充填し、
その後、注入した補強層形成材を硬化させることで、前記補強層と前記補強層拡厚部と前記鍔状部とを一体形成する点にある。
【0095】
つまり、この第20特徴構成によれば、補強層形成用の型内空間部に対する補強層形成材の注入だけで、接地側皮革層の上面における補強層と、アウトソール接地面の側に補強層の厚みを拡大して下面をアウトソール接地面に露出させた補強層拡厚部と、その補強層拡厚部の下端部における鍔状部とを、その鍔状部と補強層拡厚部周りの補強層部分との間に補強層拡厚部に対する接地側皮革層の端縁部を入り込ませた状態にして一体形成できるから、第6又は第14特徴構成の靴を容易に能率良く製作することができる。
【0096】
〔21〕本発明の第21特徴構成は、第12又は第17特徴構成の靴の製造方法に係り、その特徴は、
前記補強層拡厚部の形成箇所に拡厚用開口部を形成した前記上面側皮革層を型内に設置し、
この型内において前記上面側皮革層の下面が臨む補強層形成用の型内空間部に補強層形成材を注入することにより、その補強層形成材を前記型内空間部及び前記拡厚用開口部に充填するとともに、前記拡厚用開口部を通じて前記鍔状部の形成箇所に充填し、
その後、注入した補強層形成材を硬化させることで、前記補強層と前記補強層拡厚部と前記鍔状部とを一体形成する点にある。
【0097】
つまり、この第21特徴構成によれば、補強層形成用の型内空間部に対する補強層形成材の注入だけで、上面側皮革層の下面における補強層と、アウトソール上面の側に補強層の厚みを拡大して上面をアウトソール上面に露出させた補強層拡厚部と、その補強層拡厚部の上端部における鍔状部とを、その鍔状部と補強層拡厚部周りの補強層部分との間に補強層拡厚部に対する上面側皮革層の端縁部を入り込ませた状態にして一体形成できるから、第12又は第17特徴構成の靴を容易に能率良く製作することができる。
【0098】
〔22〕本発明の第22特徴構成は、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層の上面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴に係り、その特徴は、
前記補強層との間に前記接地側皮革層を挟んだ状態でアウトソール接地面に露出してアウトソール接地面の一部でアウトソール接地面の面方向に拡がる合成樹脂又はゴムを主材とする接地側外部補強層を設け、
前記接地側皮革層に形成した連結用孔を通じて前記補強層と前記接地側外部補強層とを一体化してある点にある。
【0099】
つまり、この第22特徴構成によれば、接地側皮革層の上面に設ける補強層、及び、その補強層との間に接地側皮革層を挟む状態でアウトソール接地面の側に設ける接地側外部補強層の夫々が備える高い機械的強度(すなわち、接地側皮革層よりも高い機械的強度、特に剛性や対摩耗性)をもって、アウトソールの耐久性を効果的に高めることができる。
【0100】
また、接地側皮革層を挟む補強層と接地側外部補強層とを接地側皮革層に形成の連結用孔を通じて一体化するから、アウトソール全体としての一体化強度も大きく確保することができ、このことからも先述した従来構造の靴に比べアウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0101】
なお、第22特徴構成の実施において、接地側外部補強層はアウトソール接地面に一塊状態で設ける形態、あるいは、分散状態で複数設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0102】
また、接地側外部補強層は無被覆の状態でアウトソール接地面に露出させる形態に限らず、適当な被覆処理を施した状態でアウトソール接地面に露出させる形態を採ってもよい。
【0103】
接地側皮革層に形成の連結用孔を通じて一体化する補強層と接地側外部補強層とは必ずしも同じ材質の層に限られるものではなく、異なる材質の層にしてもよい。
【0104】
また、第22特徴構成の実施においては、アウトソール上面を形成する上面側皮革層と接地側皮革層との間に補強層を設ける形態を採ってもよい。
【0105】
〔23〕本発明の第23特徴構成は、アウトソール上面を形成する上面側皮革層の下面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴であって、
前記補強層との間に前記上面側皮革層を挟んだ状態でアウトソール上面に露出してアウトソール上面の一部でアウトソール上面の面方向に拡がる合成樹脂又はゴムを主材とする上面側外部補強層を設け、
前記上面側皮革層に形成した連結用孔を通じて前記補強層と前記上面側外部補強層とを一体化してある点にある。
【0106】
つまり、この第23特徴構成によれば、上面側皮革層の下面に設ける補強層、及び、その補強層との間に上面側皮革層を挟む状態でアウトソール上面の側に設ける上面側外部補強層の夫々が備える高い機械的強度(すなわち、上面側皮革層よりも高い機械的強度、特に剛性や対摩耗性)をもって、アウトソールの耐久性を効果的に高めることができる。
【0107】
また、上面側皮革層を挟む補強層と上面側外部補強層とを上面側皮革層に形成の連結用孔を通じて一体化するから、アウトソール全体としての一体化強度も大きく確保することができ、このことからも先述した従来構造の靴に比べアウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0108】
なお、第23特徴構成の実施において、上面側外部補強層はアウトソール上面に一塊状態で設ける形態、あるいは、分散状態で複数設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0109】
また、上面側外部補強層は無被覆の状態でアウトソール上面に露出させる形態に限らず、適当な被覆処理を施した状態でアウトソール上面に露出させる形態を採ってもよい。
【0110】
上面側皮革層に形成の連結用孔を通じて一体化する補強層と上面側外部補強層とは必ずしも同じ材質の層に限られるものではなく、異なる材質の層にしてもよい。
【0111】
また、第23特徴構成の実施においては、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層と上面側皮革層との間に補強層を設ける形態を採ってもよい。
【0112】
〔24〕本発明の第24特徴構成は、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層とアウトソール上面を形成する上面側皮革層との間に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設ける靴に係り、その特徴は、
前記補強層との間に前記接地側皮革層を挟んだ状態でアウトソール接地面に露出してアウトソール接地面の一部でアウトソール接地面の面方向に拡がる合成樹脂又はゴムを主材とする接地側外部補強層、
及び、前記補強層との間に前記上面側皮革層を挟んだ状態でアウトソール上面に露出してアウトソール上面の一部でアウトソール上面の面方向に拡がる合成樹脂又はゴムを主材とする上面側外部補強層を設け、
前記接地側皮革層に形成した連結用孔を通じて前記補強層と前記接地側外部補強層とを一体化するとともに、前記上面側皮革層に形成した連結用孔を通じて前記補強層と前記上面側外部補強層とを一体化してある点にある。
【0113】
つまり、この第24特徴構成は、前記の第22特徴構成と第23特徴構成とを組み合わせたものであり、この第24特徴構成によれば、接地側皮革層と上面側皮革層との間に設ける補強層、その補強層との間に接地側皮革層を挟む状態でアウトソール接地面の側に設ける接地側外部補強層、並びに、補強層との間に上面側皮革層を挟む状態でアウトソール上面の側に設ける上面側外部補強層の夫々が備える高い機械的強度(すなわち、接地側皮革層や上面側皮革層よりも高い機械的強度、特に剛性や対摩耗性)をもって、アウトソールの耐久性を効果的に高めることができる。
【0114】
また、接地側皮革層を挟む補強層と接地側外部補強層とを接地側皮革層に形成の連結用孔を通じて一体化するとともに、上面側皮革層を挟む補強層と上面側外部補強層とを上面側皮革層に形成の連結用孔を通じて一体化するから、略言すれば、補強層と接地側外部補強層と上面側外部補強層の三者を夫々の間に皮革層を挟んだ状態で一体化するから、アウトソール全体としての一体化強度も大きく確保することができ、このことからも先述した従来構造の靴に比べアウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0115】
なお、第24特徴構成の実施において、接地側外部補強層はアウトソール接地面に一塊状態で設ける形態、あるいは、分散状態で複数設ける形態のいずれを採ってもよく、同様に、上面側皮革層もアウトソール上面に一塊状態で設ける形態、あるいは、分散状態で複数設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0116】
また、接地側外部補強層は無被覆の状態でアウトソール接地面に露出させる形態に限らず、適当な被覆処理を施した状態でアウトソール接地面に露出させる形態を採ってもよく、同様に、上面側外部補強層も無被覆の状態でアウトソール上面に露出させる形態に限らず、適当な被覆処理を施した状態でアウトソール上面に露出させる形態を採ってもよい。
【0117】
補強層と接地側外部補強層と上面側外部補強層の三者は必ずしも同じ材質の層に限られるものではなく、異なる材質の層にしてもよい。
【0118】
〔25〕本発明の第25特徴構成は、第22〜第24特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
1つの前記接地側外部補強層又は1つの前記上面側外部補強層に対して前記連結用孔を分散配置状態で複数設けてある点にある。
【0119】
つまり、この第25特徴構成によれば、1つの接地側外部補強層又は1つの上面側外部補強層を分散配置状態の複数の連結用孔を通じて補強層に一体化する形態となるから、1つの接地側外部補強層又は1つの上面側外部補強層を単一の連結用孔のみを通じて補強層に一体化するのに比べ、接地側皮革層を挟む接地側外部補強層と補強層とを、又は、上面側皮革層を挟む上面側外部補強層と補強層とを一層強固に一体化することができ、これにより、アウトソール全体としての一体化強度をさらに効果的に高めることができて、アウトソールの耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0120】
〔26〕本発明の第26特徴構成は、第22特徴構成の靴の製造方法に係り、その特徴は、
前記連結用孔を形成した前記接地側皮革層を型内に設置し、
この型内において前記接地側皮革層の上面が臨む補強層形成用の型内空間部に補強層形成材を注入することにより、その補強層形成材を前記型内空間部に充填するとともに、前記連結用孔を通じて前記接地側外部補強層の形成箇所に充填し、
その後、注入した補強層形成材を硬化させることで、前記補強層と前記接地側外部補強層とを一体形成する点にある。
【0121】
つまり、この第26特徴構成によれば、補強層形成用の型内空間部に対する補強層形成材の注入だけで、接地側皮革層の上面における補強層と、アウトソール接地面の側の接地側外部補強層とを、それら補強層と接地側外部補強層との間に接地側皮革層を挟んだ状態にして一体形成できるから、第22特徴構成の靴を容易に能率良く製作することができる。
【0122】
なお、第26特徴構成の実施において、1つの接地側外部補強層に対する連結用孔を分散配置状態で複数形成しておけば、その接地側外部補強層の形成箇所に対する連結用孔を通じての補強層形成材の充填を円滑かつ迅速に行うことができて、靴の製作を一層容易かつ能率良く行うことができる。
【0123】
〔27〕本発明の第27特徴構成は、第23特徴構成の靴の製造方法に係り、その特徴は、
前記連結用孔を形成した前記上面側皮革層を型内に設置し、
この型内において前記上面側皮革層の下面が臨む補強層形成用の型内空間部に補強層形成材を注入することにより、その補強層形成材を前記型内空間部に充填するとともに、前記連結用孔を通じて前記上面側外部補強層の形成箇所に充填し、
その後、注入した補強層形成材を硬化させることで、前記補強層と前記上面側外部補強層とを一体形成する点にある。
【0124】
つまり、この第27特徴構成によれば、補強層形成用の型内空間部に対する補強層形成材の注入だけで、上面側皮革層の下面における補強層と、アウトソール上面の側の上面側外部補強層とを、それら補強層と上面側外部補強層との間に上面側皮革層を挟んだ状態にして一体形成できるから、第23特徴構成の靴を容易に能率良く製作することができる。
【0125】
なお、第27特徴構成の実施において、1つの上面側外部補強層に対する連結用孔を分散配置状態で複数形成しておけば、その上面側外部補強層の形成箇所に対する連結用孔を通じての補強層形成材の充填を円滑かつ迅速に行うことができて、靴の製作を一層容易かつ能率良く行うことができる。
【0126】
〔28〕本発明の第28特徴構成は、第24特徴構成の靴の製造方法に係り、その特徴は、
前記連結用孔を形成した前記接地側皮革層、及び、前記連結用孔を形成した前記上面側皮革層を型内に設置し、
この型内において前記接地側皮革層と前記上面側皮革層との間に設けた補強層形成用の型内空間部に補強層形成材を注入することにより、その補強層形成材を前記型内空間部に充填するとともに、それら接地側皮革層及び上面側皮革層の夫々に形成の前記連結用孔を通じて前記接地側外部補強層及び前記上面側外部補強層の形成箇所に充填し、
その後、注入した補強層形成材を硬化させることで、前記補強層と前記接地側外部補強層と前記上面側外部補強層とを一体形成する点にある。
【0127】
つまり、この第28特徴構成によれば、補強層形成用の型内空間部に対する補強層形成材の注入だけで、接地側皮革層と上面側皮革層との間の補強層と、アウトソール接地面の側の接地側外部補強層と、アウトソール上面の側の上面側外部補強層とを、それら補強層と接地側外部補強層との間に接地側皮革層を挟み、かつ、補強層と上面側外部補強層との間に上面側皮革層を挟んだ状態にして一体形成できるから、第24特徴構成の靴を容易に能率良く製作することができる。
【0128】
なお、第28特徴構成の実施において、1つの接地側外部補強層又は1つの上面側外部補強層に対する連結用孔を分散配置状態で複数形成しておけば、それら接地側外部補強層や上面側外部補強層の形成箇所に対する連結用孔を通じての補強層形成材の充填を円滑かつ迅速に行うことができて、靴の製作を一層容易かつ能率良く行うことができる。
【0129】
以上の第1〜第28特徴構成のいずれかの実施において、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層やアウトソール上面を形成する上面側皮革層の材質は、夫々、本革あるいは合成皮革(人工皮革を含む)のいずれであってもよい。
【0130】
合成樹脂又はゴムを主材とする補強層は、合成樹脂やゴムだけからなる単純層に限られるものではなく、合成樹脂やゴム以外の適当な材質の芯材や骨材を補助的に含む複合層であってもよい。
【0131】
また、合成樹脂を主材として補強層を形成する場合、その合成樹脂としては種々のものを使用でき、また、ゴムを主材として補強層を形成する場合、そのゴムは天然ゴム又は合成ゴムのいずれであってもよい。
【0132】
補強層(接地側外部補強層や上面側外部補強層を設ける場合はそれら外部補強層も含む)は機械的強度を示す種々の物性値の全てについて接地側皮革層や上面側皮革層よりも高い機械的強度を有するものである必要はなく、少なくとも補強層を設けない皮革層だけからなるアウトソールに比べアウトソールの耐久性を向上し得る機械的強度を有するものであればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0133】
〔第1実施形態〕
図1〜図3は野球用やソフトボール用などとして好適なスパイクシューズを示し、1は靴の接地面を形成するアウトソール(換言すれば本底あるいは下底)、2はアウトソール1に連結するアッパー(足の甲を覆う部分)、3はミッドソール(換言すれば中底)であり、アッパー2の下縁部はアウトソール1とミッドソール3との間に挟み込んだ状態で両ソール1,3に対し縫製や接着により連結してある。
【0134】
また、このスパイクシューズは、ミッドソール3の上面に中敷4を敷いた状態で使用する。
【0135】
アウトソール1は基本的に、その接地面1aを形成する接地側皮革層5と、アウトソール上面1bを形成する上面側皮革層6と、それら皮革層5,6の間に配設した合成樹脂又はゴムを主材とする補強層7とからなる三層構造にしてあり、本革や合成皮革(人工皮革を含む)からなる接地側皮革層5及び上面側皮革層6によりアウトソール接地面1a及びアウトソール上面1bを形成することで、皮革ならではの高級感と履き心地を得られるようにしてある。
【0136】
また、補強層7を接地側皮革層5と上面側皮革層6との間に設けることで、その補強層7が備える高い機械的強度(特に剛性及び耐摩耗性)をもってアウトソール1の耐久性を高めるとともに、アウトソール1の反りなどの塑性変形やスパイク金具8からソール1,3を介して足裏に伝わる突き上げ感などを抑止する。
【0137】
アウトソール1の周縁部については、アウトソール1の全周縁部で補強層7の厚みをアウトソール接地面1aの側へ拡大(すなわち、下向きに拡大)し、その下向き補強層拡厚部7Aの下面をアウトソール接地面1aの全周縁部でコバ下面として露出させてあり、これにより、アウトソール接地面1aを地面に対し傾斜させた状態で地面を強く踏み付けたりスライディングしたりする等のことで、コバ下面であるアウトソール接地面1aの周縁部が早期に摩耗したり亀裂や破断などの損傷を受けることを極力防止する。
【0138】
また、アウトソール1の周縁部のうち足親指(第1足指)の付け根部と足小指(第5足指)の付け根部とにわたるソール前側周縁部で補強層7の厚みをアウトソール上面1bの側へ拡大(すなわち、上向きに拡大)し、その上向き補強層拡厚部7Bの上面をアウトソール上面1bのソール前側周縁部でコバ上面として露出させてあり、これにより、ボールを投げ終わる際に後方の足を甲が下向きの状態で地面に擦り付けたりする等のことで、アウトソール1の前側周縁部におけるコバ上面が早期に摩耗したり亀裂や破断などの損傷を受けることを極力防止する。
【0139】
一方、アウトソール接地面1aの中ほど(すなわち、内方部)については、アウトソール1の前底部及び後底部の夫々で補強層7の厚みをアウトソール接地面1aの側へ拡大(下向きに拡大)して、それら下向き補強層拡厚部7Cの下面をアウトソール接地面1aの前底部及び後底部で露出させ、これら前底部及び後底部における下向き補強層拡厚部7Cの下面をスパイク金具8の取り付け面にしてある。
【0140】
つまり、これら前底部及び後底部における下向き補強層拡厚部7Cの下面をスパイク金具8の取り付け面とすることで、補強層拡厚部7Cが備える大きな機械的強度をもってスパイク金具8を強固にアウトソール1の前底部及び後底部に取り付け得るようにし、また、スパイク金具8からソール1,3を介して足裏に伝わる突き上げ感を一層軽減する。
【0141】
なお、前底部の下向き補強層拡厚部7Cは、ジャンプやスタートダッシュの際にアウトソール1の前底部に大きな曲げ力が作用することでアウトソール1の前底部が早期に疲労劣化することも抑止する。
【0142】
アウトソール1の前底部及び後底部における下向き補強層拡厚部7Cについては、図4に示す如く、接地側皮革層5のうちの補強層拡厚部7Cに対する端縁部5aを、補強層拡厚部7Cの下端部に形成した鍔状部7aと補強層拡厚部7Cの周りの補強層7部分との間に入り込ませてあり、これにより、補強層拡厚部7Cと接地側皮革層5との境界部に対する曲げ力の集中を緩和するとともに、それら補強層拡厚部7Cとそれに隣接する接地側皮革層5との境界部における接着面積も大きく確保して、補強層拡厚部7Cと接地側皮革層5との境界部での剥離、及び、それが口火となる補強層7の本体と接地側皮革層5との剥離を防止し、また、そのことでスパイク金具8に対する支持強度も一層高める。
【0143】
このスパイクシューズにおけるアウトソール1の製法については、補強層拡厚部7A〜7Cを形成した補強層7を射出成形等により予め作成し、この補強層7に接地側皮革層5及び上面側皮革層6の夫々を接着する方法(製法1)や、接地側皮革層5と上面側皮革層6とのいずれか一方を射出成形用の金型にセットした状態で、その金型に樹脂を注入することにより、接地側皮革層5と上面側皮革層6とのいずれか一方が接着されるとともに補強層拡厚部7A〜7Cが形成された補強層7を作成し、この補強層7に接地側皮革層5と上面側皮革層6とのうちの他方を接着する方法(製法2)、あるいは、接地側皮革層5と上面側皮革層6との両方を射出成形用の金型にセットした状態で、その金型に樹脂を注入することにより、接地側皮革層5と上面側皮革層6との両方が接着されるとともに補強層拡厚部7A〜7Cが形成された補強層7(すなわち、上記三層構造のアウトソール1)を作成する方法(製法3)などを採る。
【0144】
そして特に、アウトソール1の前底部及び後底部における下向き補強層拡厚部7Cの如く拡厚側の端部に鍔状部7aを設ける場合の製法としては、アウトソール周縁部の下向き補強層拡厚部7Aと前底部及び後底部における下向き補強層拡厚部7Cとの夫々の形成箇所に拡厚用開口部を形成した接地側皮革層5、及び、アウトソール周縁部の上向き補強層拡厚部7Bの形成箇所に拡厚用開口部を形成した上面側皮革層6を金型内に設置した状態で、この型内において接地側皮革層5と上面側皮革層6との間の補強層形成用の型内空間部に補強層形成材としての樹脂を注入することにより、その樹脂を補強層形成用の型内空間部及び上記の各拡厚用開口部に充填するとともに、前底部及び後底部の下向き補強層拡厚部7Cについては、その樹脂を拡厚用開口部を通じて鍔状部7aの形成箇所にも充填し、その後、注入した樹脂を硬化させることで補強層7及び各補強層拡厚部7A〜7Cとともに、前底部及び後底部の下向き補強層拡厚部7Cにおける下端部の鍔状部7aを一体形成するようにする。
【0145】
スパイク金具8は、同図4に示す如く、上面側皮革層6と下向き補強層拡厚部7Cとにわたって貫通させた取付孔9に対しミッドソール3の側から打込ナット10を装着し、この打込ナット10に対しスパイク金具8のボルト孔8aに挿通した取付ボルト11を螺合することで、その取付ボルト11のボルト頭と下向き補強層拡厚部7Cの下面との間にスパイク金具8の基板部8bを挟み込む形態でスパイク金具8をアウトソール接地面1aに取り付ける方法(取付法1)を採る。
【0146】
又は、図5に示す如く、前底部及び後底部の下向き補強層拡厚部7Cに貫通させた取付孔9に埋込ナット10を装着し、この埋込ナット10に対しスパイク金具8のボルト孔8aに挿通した取付ボルト11を螺合することで、その取付ボルト11のボルト頭と下向き補強層拡厚部7Cの下面との間にスパイク金具8の基板部8bを挟み込む形態でスパイク金具8をアウトソール接地面1aに取り付ける方法(取付法2)を採る。
【0147】
なお、取付法2によれば取付法1に比べ、取付ボルト11を短いもので済ませることができて、その分、スパイクシューズを軽量化することができ、また、取付法2の場合、補強層7を射出成形する際に金型内に埋込ナット10を予めセットしておくことで、補強層7の成形と埋込ナット10の装着とを一挙に行うことができて、スパイクシューズの製作を容易にすることができる。
【0148】
本第1実施形態では、基本的に接地側皮革層5と上面側皮革層6とそれら皮革層5,6の間の補強層7とからなる三層構造のアウトソール1を示したが、場合によっては、本第1実施形態で示した構造において上面側皮革層6及び上向き補強層拡厚部7Bを省略した二層構造のアウトソール(換言すれば、補強層7の上面をアウトソール上面とするアウトソール)にしてもよい。
【0149】
〔第2実施形態〕
図6、図7は第1実施形態と同様、接地側皮革層5と上面側皮革層6とそれら皮革層5,6の間の合成樹脂又はゴムを主材とする補強層7とからなる三層構造のアウトソール1を備えるスパイクシューズを示し、このスパイクシューズでは、第1実施形態のスパイクシューズにおけるアウトソール周縁部の下向き及び上向き補強層拡厚部7A,7Bやアウトソール前底部及び後底部の下向き補強層拡厚部7Cに代え、アウトソール接地面視におけるアウトソール内方部のうち土踏まず部で補強層7の厚みをアウトソール接地面1aの側へ拡大して、この下向き補強層拡厚部7Dの下面をアウトソール接地面1aの土踏まず部で露出させてある。
【0150】
すなわち、アウトソール1の土踏まず部に上記補強層拡厚部7Dを設けることにより、歩行時や走行時にアウトソール1が土踏まず部において折れるように曲がることで生じる履き心地の悪さを無くようにしてある。また、この土踏まず部の下向き補強層拡厚部7Dは、ジャンプやスタートダッシュの際にアウトソール1の土踏まず部に大きな曲げ力が作用することでアウトソール1の土踏まず部が早期に疲労劣化することも抑止する。
【0151】
この土踏まず部の下向き補強層拡厚部7Dについては、その下向き補強層拡厚部7Dとそれに隣接する接地側皮革層5との境界を接地側皮革層5の全厚み範囲についてアウトソール接地面視で櫛歯状に蛇行させてあり、これにより、その境界部に対する曲げ力の集中を緩和するとともに、その下向き補強層拡厚部7Dとそれに隣接する接地側皮革層5との境界部における接着面積も大きく確保して、補強層拡厚部7Dと接地側皮革層5との境界部での剥離、及び、それが口火となる補強層7の本体と接地側皮革層5との剥離を防止する。
【0152】
スパイク金具8は、図8に示す如く前底部及び後底部において補強層7及び接地側皮革層5にわたって貫通させた取付孔9に短尺の打込ナット10を装着し、この埋込ナット10に対しスパイク金具8のボルト孔8aに挿通した取付ボルト11を螺合することで、その取付ボルト11のボルト頭と接地側皮革層5の下面との間にスパイク金具8の基板部8bを挟み込む形態でスパイク金具8をアウトソール接地面1aに取り付けてある。
【0153】
なお、この第2実施形態のスパイクシューズでは、図9に示す如く、取付孔9の形成箇所に対応させて上面側皮革層6及びミッドソール3に比較的大きな穴12を形成し、この穴12にクッション部材13を装着することで、スパイク金具8からの突き上げ感を軽減するとともに、クッション性を高めて履き心地を一層良くする構造を採用してもよい。
【0154】
本第2実施形態でも、基本的に接地側皮革層5と上面側皮革層6とそれら皮革層5,6の間の補強層7とからなる三層構造のアウトソール1を示したが、場合によっては、本第2実施形態で示した構造において上面側皮革層6を省略した二層構造のアウトソール(換言すれば、補強層7の上面をアウトソール上面とするアウトソール)にしてもよい。
【0155】
〔第3実施形態〕
図10、図11は第1、第2実施形態と同様、接地側皮革層5と上面側皮革層6とそれら皮革層5,6の間の合成樹脂又はゴムを主材とする補強層7とからなる三層構造のアウトソール1を備えるスパイクシューズを示し、このスパイクシューズでは、第2実施形態のスパイクシューズにおけるアウトソール土踏まず部の下向き補強層拡厚部7Dに代え、アウトソール上面視におけるアウトソール内方部のうち土踏まず部で補強層7の厚みをアウトソール上面1bの側へ拡大して、この上向き補強層拡厚部7Eの上面をアウトソール上面1bの土踏まず部で露出させてある。
【0156】
すなわち、第2実施形態のスパイクシューズと同様、アウトソール1の土踏まず部に上記補強層拡厚部7Eを設けることにより、歩行時や走行時にアウトソール1が土踏まず部において折れるように曲がることで生じる履き心地の悪さを無くようにしてある。また、この土踏まず部の上向き補強層拡厚部7Eは、ジャンプやスタートダッシュの際にアウトソール1の土踏まず部に大きな曲げ力が作用することでアウトソール1の土踏まず部が早
期に疲労劣化することも抑止する。
【0157】
この土踏まず部の上向き補強層拡厚部7Eについては、補強層7の厚みをアウトソール上面1bの側へ拡大して形成した補強層突起7bの分散群を、上面側皮革層6のうちの補強層拡厚部7Eに対する隣接部分でアウトソール上面1bに露出させてあり、これにより、補強層拡厚部7Eと上面側側皮革層6との境界部に対する曲げ力の集中を緩和するとともに、上面側皮革層6のうちの補強層拡厚部7Eに対する隣接部分と補強層7との接着面積も大きく確保して、上向き補強層拡厚部7Eと上面側皮革層6との境界部での剥離が口火となる補強層7の本体と上面側皮革層6との剥離を防止する。
【0158】
また、このスパイクシューズでは、アウトソール1の周縁部のうち足親指の近傍部分で補強層7をアッパー2の上面に沿わせる湾曲状態で上方側へ延設して、その延設部7Fをアッパー2に対する保護カバーにしてあり、これにより、ボールを投げ終わる際に後方の足を甲が下向きの状態で地面に擦り付けるなどのことで、アッパー2の前部が早期に摩耗したり亀裂や破断などの損傷を受けることを防止する。
【0159】
本第3実施形態でも、基本的に接地側皮革層5と上面側皮革層6とそれら皮革層5,6の間の補強層7とからなる三層構造のアウトソール1を示したが、場合によっては、本第3実施形態で示す構造において接地側皮革層5を省略した二層構造のアウトソール(換言すれば、補強層7の下面をアウトソール接地面とするアウトソール)にしてもよい。
【0160】
〔第4実施形態〕
図12〜図15は第1〜第3実施形態と同様、接地側皮革層5と上面側皮革層6とそれら皮革層5,6の間の補強層7とからなる三層構造のアウトソール1を備えるスパイクシューズを示し、このスパイクシューズでは、アウトソール1の周縁部のうち足親指(第1足指)の付け根部と足小指(第5足指)の付け根部とにわたるソール前側周縁部、及び、踵周りのソール後側周縁部の夫々で補強層7の厚みをアウトソール接地面1aの側へ拡大(すなわち、下向きに拡大)し、それら下向き補強層拡厚部7Aの下面をアウトソール接地面1aのソール前側周縁部及びソール後側周縁部の夫々でコバ下面として露出させてある。
【0161】
また、アウトソール1の周縁部のうち足親指(第1足指)の付け根部と足小指(第5足指)の付け根部とにわたるソール前側周縁部で補強層7の厚みをアウトソール上面1bの側へ拡大(すなわち、上向きに拡大)し、その上向き補強層拡厚部7Bの上面をアウトソール上面1bのソール前側周縁部でコバ上面として露出させてある。
【0162】
一方、アウトソール上面視におけるアウトソール内方部については、補強層7との間に接地側皮革層5を挟んだ状態でアウトソール接地面1aに露出してアウトソール接地面1aにおける前底部と土踏まず部から後底部にかけての部分との夫々でアウトソール接地面1aの面方向に拡がる接地側外部補強層7Gを設け、これら接地側外部補強層7Gの夫々を接地側皮革層5に形成の連結用孔12を通じて補強層7と一体化し、そして、これら接地側外部補強層7Gの下面をスパイク金具8の取り付け面にしてある。
【0163】
また同様に、アウトソール接地面視におけるアウトソール内方部については、補強層7との間に上面側皮革層6を挟んだ状態でアウトソール上面1bに露出してアウトソール上面1bにおける前底部と土踏まず部と後底部とにかけての部分でアウトソール上面1bの面方向に拡がる上面側外部補強層7Hを設け、この上面側外部補強層7Hを上面側皮革層6に形成の連結用孔13を通じて補強層7と一体化してある。
【0164】
すなわち、補強層7に加えて、補強層7との間に接地側皮革層5を挟む接地側外部補強層7G、及び、補強層7との間に上面側皮革層6を挟む上面側外部補強層7Hを設けることで、アウトソール1の耐久性を高く確保するようにしてあり、また、接地側外部補強層7Gの下面をスパイク金具8の取り付け面とすることで、スパイク金具8からアウトソール1及びミッドソール3を介して足裏に伝わる突き上げ感を軽減するようにしてある。
【0165】
接地側外部補強層7Gと補強層7とを一体化するための連結用孔12は、前側と後側の2つの接地側外部補強層7Gの各々について分散配置状態で複数設けてあり、また、上面側外部補強層7Hと補強層7とを一体化するための連結用孔13も、前底部と土踏まず部と後底部とにかけての上面側外部補強層7Hについて分散配置状態で複数設けてあり、このように1つの接地側外部補強層7Gや1つの上面側外部補強層7Hに対して複数の連結用孔12,13を分散配置状態で設けることにより、アウトソール全体としての一体化強度をさらに効果的に高めるようにしてある。
【0166】
このスパイクシューズにおけるアウトソール1の製法については、図16に示す如く、アウトソール周縁部における下向き補強層拡厚部7Aの形成箇所に拡厚用開口部14を形成するとともに2つの接地側外部補強層7Gの各々に対する複数の連結用孔12を形成した接地側皮革層5、及び、アウトソール周縁部における上向き補強層拡厚部7Bの形成箇所に拡厚用開口部15を形成するとともに前底部と土踏まず部と後底部とにかけての上面側外部補強層7Hに対する複数の連結用孔13を形成した上面側皮革層6を金型16内に設置する。
【0167】
そして、この型内において接地側皮革層5と上面側皮革層6との間の補強層形成用の型内空間部17に補強層形成材としての樹脂を注入することにより、その樹脂を補強層形成用の型内空間部17及び上記の各拡厚用開口部14,15に充填するとともに、その樹脂を接地側皮革層5及び上面側皮革層6夫々の連結用孔12,13を通じて接地側外部補強層7G及び上面側外部補強層7Hの形成箇所18,19にも充填し、その後、注入した樹脂を硬化させることで、補強層7及び各補強層拡厚部7A,7Bとともに接地側外部補強層7G及び上面側外部補強層7Hを一体形成するようにする。
【0168】
なお、この製法においては、前記の如く1つの接地側外部補強層7Gや1つの上面側外部補強層7Hに対して複数の連結用孔12,13を分散配置状態で設けてあることにより、それら接地側外部補強層7Gや上面側外部補強層7Hの形成箇所18,19に対する連結用孔12,13を通じての樹脂充填を円滑かつ能率良く行うことができる。
【0169】
上記製法においては、接地側皮革層5及び上面側皮革層6夫々の周縁に形成した支持用舌部5j,6jを上型16aと中型16bの間や下型16cと中型16bとの間に挟み込むことにより、接地側皮革層5及び上面側皮革層6の夫々を型内の所定位置に支持固定する。そして、これら支持用舌部5j、6jは製作したアウトソール1を金型16から取り出した後に切除する。
【0170】
また、これら支持用舌部5j,6jの挟み込みによる支持固定とともに、上記製法では、補強層形成用の型内空間部17への樹脂注入に対して、接地側皮革層5及び上面側皮革層6の夫々を接地側外部補強層7G及び上面側外部補強層7Hの形成箇所18,19で型内面に立脚させた支持ピン20,21によっても支えるようにしてある。
【0171】
そして、このスパイクシューズでは、アウトソール1の製作後において接地側外部補強層7G及び上面側外部補強層7Hの夫々に残る支持ピン20,21の抜取孔22,23のうち、接地側皮革層5に残る抜取孔22をスパイク金具取付用の釘やボルトの装着孔に利用してスパイク金具8を接地側外部補強層7Gの下面に取り付けるようにしてある。
【0172】
なお、本第4実施形態では、第1〜第3実施形態と同様、基本的に接地側皮革層5と上面側皮革層6とそれら皮革層5,6の間の補強層7とからなる三層構造のアウトソール1を示したが、場合によっては、本第4実施形態で示した構造において上面側皮革層6、上向き補強層拡厚部7B、及び、上面側外部補強層7Hを省略した二層構造のアウトソール(換言すれば、補強層7の上面をアウトソール上面とするアウトソール)にしてもよく、また、本第4実施形態で示した構造において接地側皮革層5、下向き補強層拡厚部7A、及び、接地側外部補強層7Gを省略した二層構造のアウトソール(換言すれば、補強層7の下面をアウトソール接地面とするアウトソール)にしてもよい。
【0173】
これら二層構造のアウトソールとする場合、その製法としては、アウトソール周縁部における下向き補強層拡厚部7Aの形成箇所に拡厚用開口部14を形成するとともに2つの接地側外部補強層7Gの各々に対する複数の連結用孔12を形成した接地側皮革層5を金型内に設置した状態で、この型内において接地側皮革層5の上面が臨む補強層形成用の型内空間部17に補強層形成材としての樹脂を注入することにより、その樹脂を補強層形成用の型内空間部17及び上記の拡厚用開口部14に充填するとともに、その樹脂を接地側皮革層5の連結用孔12を通じて接地側外部補強層7Gの形成箇所18にも充填し、その後、注入した樹脂を硬化させることで、補強層7と下向き補強層拡厚部7Aと接地側外部補強層7Gとを一体形成すればよい。
【0174】
また、アウトソール周縁部における上向き補強層拡厚部7Bの形成箇所に拡厚用開口部15を形成するとともに前底部と土踏まず部と後底部とにかけての上面側外部補強層7Hに対する複数の連結用孔13を形成した上面側皮革層6を金型内に設置した状態で、この型内において上面側皮革層6の下面が臨む補強層形成用の型内空間部17に補強層形成材としての樹脂を注入することにより、その樹脂を補強層形成用の型内空間部17及び拡厚用開口部15に充填するとともに、その樹脂を上面側皮革層6の連結用孔13を通じて上面側外部補強層7Hの形成箇所19にも充填し、その後、注入した樹脂を硬化させることで、補強層7と上向き補強層拡厚部7Bと上面側外部補強層7Hとを一体形成するようにすればよい。
【0175】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を列記する。
前述の第1実施形態では、下面をアウトソール接地面1aの周縁部で露出させる下向き補強層拡厚部7Aをアウトソール1の全周縁部に設ける例を示したが、この下向き補強層拡厚部7Aを、例えばアウトソール周縁部のうち足親指の付け根部と足小指の付け根部とにわたるソール前側周縁部のみに設けたり、そのソール前側周縁部の中でもさらにソール足先部のみに設けるなど、アウトソール周縁部の一部のみに設けるようにしてもよい。
【0176】
また、第1実施形態では、上面をアウトソール1のコバ上面とする上向き補強層拡厚部7Bをアウトソール1の周縁部のうち足親指の付け根部と足小指の付け根部とにわたるソール前側周縁部のみに設ける例を示したが、この上向き補強層拡厚部7Bをアウトソール1の全周縁部に設けたり、ソール前側周縁部の中でもソール足先部のみに設けるようにしてもよい。
【0177】
第1実施形態ではアウトソール1の周縁部に設ける下向き補強層拡厚部7A及び上向き補強層拡厚部7Bの夫々をアウトソール周方向に連続的に設ける例を示したが、これら下向き補強層拡厚部7Aや上向き補強層拡厚部7Bをアウトソール周方向で断続的に設けるようにしてもよい。
【0178】
第1実施形態では、アウトソール1の周縁部に設ける下向き補強層拡厚部7Aとそれに隣接する接地側皮革層5との境界をアウトソール接地面視で単調な曲線状のものにし、また、アウトソール1の周縁部に設ける上向き補強層拡厚部7Bとそれに隣接する上面側皮革層6との境界もアウトソール上面視で単調な曲線状のものにしたが、これら下向き補強層拡厚部7Aと接地側皮革層5との境界、及び、上向き補強層拡厚部7Bと上面側皮革層6との境界の夫々をアウトソール接地面視やアウトソール上面視で先述の図7に示す如き櫛歯状のものや波状のものにして、それら境界部に対する曲げ力の集中を緩和するとともに、それら下向き補強層拡厚部7Aと接地側皮革層5との境界部における接着面積、及び、上向き補強層拡厚部7Bと上面側皮革層6との境界部における接着面積を大きく確保するようにしてもよい。
【0179】
また、アウトソール1の周縁部に設ける下向き補強層拡厚部7Aについて、先述の図11に示したのと同様の構造、すなわち、補強層7の厚みをアウトソール接地面1aの側に拡大して形成した補強層突起7bの分散群を、接地側皮革層5のうちの補強層拡厚部7Aに対する隣接部分でアウトソール接地面1aに露出させる構造や、先述の図4に示したの
と同様の構造、すなわち、接地側皮革層5のうちの補強層拡厚部7Aに対する端縁部5aを、補強層拡厚部7Aの下端部に形成した鍔状部7aと補強層拡厚部7Aの周りの補強層部分との間に入り込ませる構造を採るようにしてもよい。
【0180】
同じく、アウトソール1の周縁部に設ける上向き補強層拡厚部7Bについて、先述の図11に示したのと同様の構造、すなわち、補強層7の厚みをアウトソール上面1bの側に拡大して形成した補強層突起7bの分散群を、上面側皮革層6のうちの補強層拡厚部7Bに対する隣接部分でアウトソール上面1bに露出させる構造や、先述の図4に示したのと同様の構造、すなわち、上面側皮革層6のうちの補強層拡厚部7Bに対する端縁部を、補強層拡厚部7Bの上端部に形成した鍔状部7aと補強層拡厚部7Bの周りの補強層部分との間に入り込ませる構造を採るようにしてもよい。
【0181】
合成樹脂を主材として補強層7を形成する場合、その合成樹脂としては、ウレタン、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、PVCなど、種々のものを使用でき、また、ゴムを主材として補強層7を形成する場合、そのゴムは天然ゴム又は合成ゴムのいずれであってもよい。
【0182】
本発明は、スパイクシューズに限らず、種々のスポーツ用靴や各種用途の靴に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】第1実施形態を示すスパイクシューズの一部破断側面図
【図2】第1実施形態を示すアウトソールの接地面(底面)図
【図3】第1実施形態を示すアウトソールの上面図
【図4】第1実施形態を示すA−A線断面図
【図5】第1実施形態の変形例を示すA−A線断面図
【図6】第2実施形態を示すスパイクシューズの一部破断側面部
【図7】第2実施形態を示すアウトソールの接地面(底面)図
【図8】第2実施形態を示すアウトソール要部の拡大断面部
【図9】第2実施形態の変形例を示すアウトソール要部の拡大断面図
【図10】第3実施形態を示すスパイクシューズの一部破断断面図
【図11】第3実施形態を示すアウトソールの接地面(底面)図
【図12】第4実施形態を示すスパイクシューズの一部破断側面図
【図13】第4実施形態を示すアウトソールの接地面(底面)図
【図14】第4実施形態を示すアウトソールの上面図
【図15】第4実施形態を示すB−B線断面図(a)及びC−C線断面図(b)
【図16】第4実施形態を示すアウトソール製造用金型の縦断面図(a)及び横断面図(b)
【符号の説明】
【0184】
1a アウトソール接地面
5 接地側皮革層
1b アウトソール上面
6 上面側皮革層
7 補強層
1 アウトソール
7A〜7E 補強層拡厚部
7b 補強層突起
5a 皮革層端縁部
7a 補強層鍔状部
8 スパイク金具
2 アッパー
7F 補強層延設部(保護カバー)
7G 接地側外部補強層
7H 上面側外部補強層
12,13 連結用孔
14,15 拡厚用開口部
16 型
17 補強層形成用の型内空間部
18 接地側外部補強層の形成箇所
19 上面側外部補強層の形成箇所
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層の上面、又は、アウトソール上面を形成する上面側皮革層の下面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴、及び、その製造方法に関し、特に野球用やサッカー用などのスポーツ用として好適な靴、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の靴は、アウトソール接地面やアウトソール上面を皮革層で形成することから、皮革ならではの高級感と履き心地を得ることができ、また、合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を接地側皮革層の上面や上面側皮革層の下面に設けることで、アウトソール(換言すれば、本底あるいは下底)の耐久性を高めるとともに、アウトソールの反りなど塑性変形や靴底からの突き上げ感なども効果的に抑止することができる。
【0003】
ところで従来、この種の靴としては、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層とアウトソール上面を形成する上面側皮革層との間に補強層を設ける構造において、その補強層の下面全体を接地側皮革層により覆い隠し、かつ、補強層の上面全体を上面側皮革層により覆い隠す状態で、それら接地側皮革層と上面側皮革層との間に補強層(例えばナイロン網など)を設けるものが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、補強層の上面全体を覆い隠す上面側皮革層と中央領域に透孔を形成した接地側皮革層との間に補強層を介在させるとともに、接地側皮革層の透孔に補強層の形成材(すなわち合成樹脂やゴム)を充填し、これにより、接地側皮革層の透孔形成部において補強層の厚みをアウトソール接地面の側に拡大して、その補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面の中央領域に露出させるものも提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】実公昭33−11451号公報
【特許文献2】実公昭55−3843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記いずれの従来構造にしても、補強層を設けて耐久性の向上を図っているものの未だ耐久性については改善の余地があり、特に大きな摩擦力や衝撃力を受けるスポーツ用の靴では更なる耐久性向上が強く望まれていた。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、合理的な改良により、この種の靴の耐久性を効果的に向上させる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔1〕本発明の第1特徴構成は、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層の上面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設ける靴に係り、その特徴は、
アウトソールの周縁部で前記補強層の厚みをアウトソール接地面の側へ拡大して、その補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面の周縁部で露出させてある点にある。
【0009】
つまり、アウトソール接地面の周縁部は地面に対して接する角部であるため摩耗が早く、殊にスポーツ用の靴では、例えばアウトソール接地面を地面に対し傾斜させた状態で地面を強く踏み付けたりスライディングしたりするなどのことで、アウトソール接地面の周縁部における摩耗が特に激しく、また、摩耗に止まらずアウトソール接地面の周縁部に亀
裂や破断などの損傷を生じることも多い。
【0010】
これに対し、上記第1特徴構成によれば、アウトソールの周縁部に設けた補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面の周縁部で露出させてあるから、補強層の一部として補強層拡厚部が備える高い機械的強度(すなわち、接地側皮革層よりも高い機械的強度、特に剛性や耐摩耗性)をもって、上記の如きアウトソール接地面の周縁部における摩耗や損傷を効果的に抑止することができる。
【0011】
また、この補強層拡厚部は接地側皮革層の上面に設けた補強層と一体のものであるから、アウトソール周縁部の補強層拡厚部自体がアウトソールから剥離することも確実に防止でき、これらの点で、先述した従来構造の靴に比べアウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0012】
なお、第1特徴構成の実施において、補強層拡厚部はアウトソールの全周縁部(すなわち、アウトソールの全周)に設ける形態、あるいは、アウトソールにおける一部の周縁部にのみ設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0013】
また、補強層拡厚部はアウトソール周方向で連続的に設ける形態、あるいは、アウトソール周方向で断続的に設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0014】
補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面の周縁部で露出させるのに、補強層拡厚部の下面は無被覆の状態で露出させる形態に限らず、摩耗や損傷などに対する機械的強度の高い被覆処理を施した状態で露出させる形態を採ってもよい。
【0015】
上記第1特徴構成によれば、補強層拡厚部の外側面がアウトソールの側面(周面)となることで、アウトソール側面の摩耗や損傷も効果的に抑止でき、この点でもアウトソールの耐久性を一層効果的に高めることができるが、補強層拡厚部の外側面は無被覆の状態で露出させる形態、あるいは、摩耗や損傷などに対する機械的強度の高い被覆処理を施した状態で露出させる形態のいずれを採ってもよい。
【0016】
また、補強層拡厚部の外側面に対し被覆処理を施す形態を採れば、アウトソールを皮革層のみで形成したような外観を得ることもできるなど、外観上の工夫を容易にすることもできる。
【0017】
〔2〕本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
アウトソールの上面を形成する上面側皮革層と前記接地側皮革層との間に前記補強層を設けてある点にある。
【0018】
つまり、この第2特徴構成によれば、アウトソール上面を形成する上面側皮革層を補強層の上面に設ける形態となることから、接地側皮革層によりアウトソール接地面を形成することとも相俟って、皮革ならではの高級感と履き心地を一層高めることができる。
【0019】
また、補強層拡厚部は接地側皮革層と上面側皮革層との間の補強層と一体のものとなることから、アウトソール周縁部の補強層拡厚部自体がアウトソールから剥離することを一層確実に防止でき、この点で、アウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性をさらに効果的に高めることができる。
【0020】
〔3〕本発明の第3特徴構成は、第1又は第2特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記補強層拡厚部をアウトソール周縁部のうち少なくともソール足先部に設けてある点にある。
【0021】
つまり、アウトソール接地面の周縁部の中でもアウトソール接地面の足先部は、歩行において地面に擦れる頻度が高く、殊にスポーツ用の靴では走行時やスタートダッシュ時に地面に強く擦り付けられることが多いことから、この部分の摩耗が一段と早く亀裂や破断などの損傷も特に生じ易い。
【0022】
これに対し、上記第3特徴構成によれば、下面をアウトソール接地面の周縁部で露出させる補強層拡厚部をアウトソール周縁部のうち少なくともソール足先部に設けるから、上記の如きアウトソール接地面の足先部における摩耗や損傷を効果的に抑止することができ、これにより、所期のアウトソール耐久性の向上を効果的に達成することができる。
【0023】
そして、このようにアウトソールの耐久性向上を効果的に達成しながらも、上記第3特
徴構成の実施において、アウトソール周縁部のうちソール足先部以外の周縁部(例えば、アウトソールにおける土踏まず部の周縁部など地面に擦り付けられる頻度が比較的低い周縁部)に対する補強層拡厚部の配設を可能な範囲で省略する構成、特に、アウトソール周縁部のうち足親指(第1足指)の付け根部と足小指(第5足指)の付け根部とにわたるソール前側周縁部にのみ補強層拡厚部を設ける構成や、そのソール前側周縁部の中でもさらにソール足先部にのみ補強層拡厚部を設ける構成を採れば、皮革層に比べ一般に比重が大きいものとなる補強層(補強層拡厚部を含む)の全容積を小さくし得る分、靴を軽量化することもできる。
【0024】
なお、第3特徴構成の実施において、補強層拡厚部をアウトソール周縁部のうち少なくともソール足先部に設けるのに、その補強層拡厚部はアウトソール周方向に連続的に設ける形態、あるいは、断続的に設ける形態のいずれを採ってよい。
【0025】
〔4〕本発明の第4特徴構成は、第1〜第3特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記補強層拡厚部と前記接地側皮革層との境界をアウトソール接地面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてある点にある。
【0026】
つまり、補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面の周縁部で露出させる構造では、前述の如くアウトソール接地面の周縁部における摩耗や損傷を効果的に抑止し得る反面、アウトソールが地面から受ける大きな曲げ力により補強層拡厚部とそれに隣接する接地側皮革層とがそれらの境界部で剥離(具体的には、補強層拡厚部の下部内側面とそれに接する接地側皮革層の側面とが剥離)し、それが口火となって補強層本体と接地側皮革層との剥離を招き易くなる虞が生じる。
【0027】
これに対し、上記第4特徴構成によれば、補強層拡厚部とそれに隣接する接地側皮革層との境界をアウトソール接地面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてあるから、その境界をアウトソール接地面視で単調な直線状ないし曲線状のものにするに比べ、その境界部に対する曲げ力の集中を緩和し得るとともに、補強層拡厚部とそれに隣接する接地側皮革層との境界部における接着面積も大きく確保することができ、これにより、上記の如き補強層拡厚部と接地側皮革層との境界部での剥離、及び、それが口火となる補強層本体と接地側皮革層との剥離を効果的に防止して、アウトソールの耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0028】
〔5〕本発明の第5特徴構成は、第1〜第4特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記補強層の厚みをアウトソール接地面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、前記接地側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール接地面に露出させてある点にある。
【0029】
つまり、この第5特徴構成によれば、補強層と接地側皮革層とを単純な面接触の状態で接着するのに比べ、接地側皮革層に対し貫通させる形態となる上記補強層突起の分散群により、補強層拡厚部と接地側皮革層との境界部に対する曲げ力の集中を緩和し得るとともに、接地側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する隣接部分と補強層との接着面積(すなわち、補強層本体と接地側皮革層との剥離が開始される部分の接着面積)も大きく確保することができ、これにより、補強層拡厚部と接地側皮革層との境界部での剥離が口火となる補強層本体と接地側皮革層との剥離を効果的に防止して、アウトソールの耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0030】
〔6〕本発明の第6特徴構成は、第1〜第5特徴構成のいずれか実施に好適な実施形態
を特定するものであり、その特徴は、
前記接地側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する端縁部を、前記補強層拡厚部の下端部に形成した鍔状部と前記補強層拡厚部周りの補強層部分との間に入り込ませてある点にある。
【0031】
つまり、この第6特徴構成によれば、補強層拡厚部とそれに隣接する接地側皮革層とをそれらの境界部において単純な面接触の状態で接着する(具体的には補強層拡厚部の下部内側面とそれに接する接地側皮革層の側面とを単純な面接触の状態で接着する)のに比べ、接地側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する端縁部を補強層拡厚部の下端部に形成した鍔状部と補強層拡厚部周りの補強層部分(すなわち、補強層拡厚部周りの非拡厚部)との間に入り込ませる分だけ、補強層拡厚部と接地側皮革層との境界部に対する曲げ力の集中を緩和し得るとともに、補強層拡厚部とそれに隣接する接地側皮革層との境界部における接着面積も大きく確保することができ、これにより、前述の如き補強層拡厚部と接地側皮革層との境界部での剥離、及び、それが口火となる補強層本体と接地側皮革層との剥離を効果的に防止して、アウトソールの耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0032】
〔7〕本発明の第7特徴構成は、アウトソール上面を形成する上面側皮革層の下面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設ける靴に係り、その特徴は、
アウトソールの周縁部で前記補強層の厚みをアウトソール上面の側へ拡大して、その補強層拡厚部の上面をアウトソールのコバ上面にしてある点にある。
【0033】
つまり、アウトソールにおけるコバ(すなわち、外側への出っ張り部)の上面は角部である為、石等の他物に対する接触で損傷し易く、殊にスポーツ用の靴では、例えばボールを投げ終わる際に後方の足を甲が下向きの状態で地面に擦り付けたり、ボールを蹴り出す際に甲が下向きの状態で足が地面に接触してしまうなどのことで、コバ上面の摩耗が特に激しく、また、摩耗に止まらずコバ上面に亀裂や破断などの損傷を生じることも多い。
【0034】
これに対し、上記第7特徴構成によれば、アウトソールの周縁部に設けた補強層拡厚部の上面をアウトソールのコバ上面にしてあるから、補強層の一部として補強層拡厚部が備える高い機械的強度(すなわち、上面側皮革層よりも高い機械的強度、特に剛性や耐摩耗性)をもって、上記の如きアウトソールのコバ上面における摩耗や損傷を効果的に抑止することができる。
【0035】
また、この補強層拡厚部は上面側皮革層の下面に設けた補強層と一体のものであるから、アウトソール周縁部の補強層拡厚部自体がアウトソールから剥離することも確実に防止でき、これらの点で、先述した従来構造の靴に比べアウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0036】
なお、第1特徴構成と同様、第7特徴構成の実施において、補強層拡厚部はアウトソールの全周縁部(すなわち、アウトソールの全周)に設ける形態、あるいは、アウトソールにおける一部の周縁部にのみ設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0037】
また、補強層拡厚部はアウトソール周方向で連続的に設ける形態、あるいは、アウトソール周方向で断続的に設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0038】
補強層拡厚部の上面をアウトソールのコバ上面とするのに、補強層拡厚部の上面は無被覆の状態でコバ上面とする形態に限らず、摩耗や損傷などに対する機械的強度の高い被覆処理を施した状態でコバ上面とする形態を採ってもよい。
【0039】
上記第7特徴構成によれば、補強層拡厚部の外側面がアウトソールのコバ側面(コバ周面)となることで、コバ側面の摩耗や損傷も効果的に抑止でき、この点でもアウトソールの耐久性を一層効果的に高めることができるが、補強層拡厚部の外側面は無被覆の状態でコバ側面とする形態、あるいは、摩耗や損傷などに対する機械的強度の高い被覆処理を施した状態でコバ側面とする形態のいずれを採ってもよい。
【0040】
また、補強層拡厚部の外側面に対し被覆処理を施す形態を採れば、アウトソールを皮革層のみで形成したような外観を得ることもできるなど、外観上の工夫を容易にすることもできる。
【0041】
〔8〕本発明の第8特徴構成は、第7特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
アウトソール接地面を形成する接地側皮革層と前記上面側皮革層との間に前記補強層を設けてある点にある。
【0042】
つまり、この第8特徴構成によれば、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層を補強層の下面に設ける形態となることから、上面側皮革層によりアウトソール上面を形成することとも相俟って、皮革ならではの高級感と履き心地を一層高めることができる。
【0043】
また、補強層拡厚部は接地側皮革層と上面側皮革層との間の補強層と一体のものとなることから、アウトソール周縁部の補強層拡厚部自体がアウトソールから剥離することを一層確実に防止でき、この点で、アウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性をさらに効果的に高めることができる。
【0044】
〔9〕本発明の第9特徴構成は、第7又は第8特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記補強層拡厚部をアウトソール周縁部のうち少なくともソール足先部に設けてある点にある。
【0045】
つまり、アウトソールのコバ上面の中でもソール足先部のコバ上面は、石等の他物に接触する頻度が高く、殊にスポーツ用の靴では、前述の如くボールを投げ終わる際に後方の足を甲が下向きの状態で地面に擦り付けたり、ボールを蹴り出す際に甲が下向きの状態で足が地面に接触してしまうなどのことで、この部分の摩耗が一段と早く亀裂や破断などの損傷も特に生じ易い。
【0046】
これに対し、上記第9特徴構成によれば、上面をアウトソールのコバ上面とする補強層拡厚部をアウトソール周縁部のうち少なくともソール足先部に設けるから、上記の如きソール足先部におけるコバ上面の摩耗や損傷を効果的に抑止することができ、これにより、所期のアウトソール耐久性の向上を効果的に達成することができる。
【0047】
そして、このようにアウトソールの耐久性向上を効果的に達成しながらも、上記第9特徴構成の実施において、アウトソール周縁部のうちソール足先部以外の周縁部(例えば、アウトソールにおける土踏まず部の周縁部など)に対する補強層拡厚部の配設を可能な範囲で省略する構成、特に、アウトソール周縁部のうち足親指の付け根部と足小指の付け根部とにわたるソール前側周縁部にのみ補強層拡厚部を設ける構成や、そのソール前側周縁部の中でもさらにソール足先部にのみ補強層拡厚部を設ける構成を採れば、前記した第3特徴構成と同様、皮革層に比べ一般に比重が大きいものとなる補強層(補強層拡厚部を含む)の全容積を小さくし得る分、靴を軽量化することもできる。
【0048】
なお、第9特徴構成の実施において、補強層拡厚部をアウトソール周縁部のうち少なくともソール足先部に設けるのに、その補強層拡厚部はアウトソール周方向に連続的に設ける形態、あるいは、断続的に設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0049】
〔10〕本発明の第10特徴構成は、第7〜第9特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記補強層拡厚部と前記上面側皮革層との境界をアウトソール上面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてある点にある。
【0050】
つまり、補強層拡厚部の上面をアウトソールのコバ上面とする構造では、前述の如くアウトソールのコバ上面における摩耗や損傷を効果的に抑止し得る反面、石などの他物に対するコバ上面の接触により補強層拡厚部とそれに隣接する上面側皮革層とがそれらの境界部で剥離(具体的には、補強層拡厚部の上部内側面とそれに接する上面側皮革層の側面とが剥離)し、それが口火となって補強層本体と上面側皮革層との剥離を招き易くなる虞が生じる。
【0051】
これに対し、上記第10特徴構成によれば、補強層拡厚部とそれに隣接する上面側皮革層との境界をアウトソール上面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてあるから、前記第4特徴構成と同様、その境界をアウトソール上面視で単調な直線状ないし曲線状のものにするに比べ、その境界部に対する曲げ力の集中を緩和し得るとともに、補強層拡厚部とそれに隣接する上面側皮革層との境界部における接着面積を大きく確保することができ、これにより、上記の如き補強層拡厚部と上面側皮革層との境界部での剥離、及び、それが口火となる補強層本体と上面側皮革層との剥離を効果的に防止して、アウトソールの耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0052】
〔11〕本発明の第11特徴構成は、第7〜第10特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記補強層の厚みをアウトソール上面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、前記上面側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール上面に露出させてある点にある。
【0053】
つまり、この第11特徴構成によれば、前記第5特徴構成の同様、補強層と上面側皮革層とを単純な面接触の状態で接着するのに比べ、上面側皮革層に対し貫通させる形態となる上記補強層突起の分散群により、補強層拡厚部と上面側皮革層との境界部に対する曲げ力の集中を緩和し得るとともに、上面側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する隣接部分と補強層との接着面積(すなわち、補強層本体と上面側皮革層との剥離が開始される部分の接着面積)も大きく確保することができ、これにより、補強層拡厚部と上面側皮革層との境界部での剥離が口火となる補強層本体と上面側皮革層との剥離を効果的に防止して、アウトソールの耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0054】
〔12〕本発明の第12特徴構成は、第7〜第11特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記上面側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する端縁部を、前記補強層拡厚部の上端部に形成した鍔状部と前記補強層拡厚部周りの補強層部分との間に入り込ませてある点にある。
【0055】
つまり、この第12特徴構成によれば、前記第6特徴構成と同様、補強層拡厚部とそれに隣接する上面側皮革層とをそれらの境界部において単純な面接触の状態で接着する(具体的には補強層拡厚部の上部内側面とそれに接する上面側皮革層の側面とを単純な面接触の状態で接着する)のに比べ、上面側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する端縁部を補強層拡厚部の上端部に形成した鍔状部と補強層拡厚部周りの補強層部分(すなわち、補強層拡厚部周りの非拡厚部)との間に入り込ませる分だけ、補強層拡厚部と上面側皮革層との境界部に対する曲げ力の集中を緩和し得るとともに、補強層拡厚部とそれに隣接する上面側皮革層との境界部における接着面積も大きく確保することができ、これにより、前述の如き補強層拡厚部と上面側皮革層との境界部での剥離、及び、それが口火となる補強層本体と上面側皮革層との剥離を効果的に防止して、アウトソールの耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0056】
〔13〕本発明の第13特徴構成は、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層とアウトソール上面を形成する上面側皮革層との間に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設ける靴に係り、その特徴は、
アウトソールの周縁部で前記補強層の厚みをアウトソール接地面の側及びアウトソール上面の側へ拡大して、その補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面の周縁部で露出させるとともに、その補強層拡厚部の上面をアウトソールのコバ上面にしてある点にある。
【0057】
つまり、この第13特徴構成は前記した第1特徴構成と第7特徴構成とを組み合わせたものであり、したがって、この第13特徴構成によれば、前述した第1特徴構成による機能と第7特徴構成による機能とを併せて得ることができ、これにより、アウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性をさらに一層効果的に高めることができる。
【0058】
なお、第1又は第7特徴構成と同様、第13特徴構成の実施において、補強層拡厚部はアウトソールの全周縁部(すなわち、アウトソールの全周)に設ける形態、あるいは、アウトソールにおける一部の周縁部にのみ設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0059】
また、補強層拡厚部はアウトソール周方向で連続的に設ける形態、あるいは、アウトソール周方向で断続的に設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0060】
補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面の周縁部で露出させる(換言すれば、この第13特徴構成では補強層拡厚部の下面をアウトソールのコバ下面とする)のに、補強層拡厚部の下面は無被覆の状態で露出させる形態に限らず、摩耗や損傷などに対する機械的強度の高い被覆処理を施した状態で露出させる形態を採ってもよい。
【0061】
また同様に、補強層拡厚部の上面をアウトソールのコバ上面とするのに、補強層拡厚部の上面は無被覆の状態でコバ上面とする形態に限らず、摩耗や損傷などに対する機械的強度の高い被覆処理を施した状態でコバ上面とする形態を採ってもよい。
【0062】
上記第13特徴構成によれば、補強層拡厚部の外側面がアウトソールのコバ側面となることで、コバ側面の摩耗や損傷も効果的に抑止でき、この点でもアウトソールの耐久性を一層効果的に高めることができるが、補強層拡厚部の外側面は無被覆の状態で露出させてコバ側面とする形態、あるいは、摩耗や損傷などに対する機械的強度の高い被覆処理を施した状態で露出させてコバ側面とする形態のいずれを採ってもよい。
【0063】
また、補強層拡厚部の外側面に対し被覆処理を施す形態を採れば、アウトソールを皮革層のみで形成したような外観を得ることもできるなど、外観上の工夫を容易にすることもできる。
【0064】
第13特徴構成の実施において、補強層拡厚部と接地側皮革層との境界をアウトソール接地面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてある構成や、補強層の厚みをアウトソール接地面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、接地側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール接地面に露出させる構成、あるいは、接地側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する端縁部を、補強層拡厚部の下端部に形成した鍔状部と補強層拡厚部周りの補強層部分との間に入り込ませる構成を採れば、第4,第5、第6特徴構成と同様、補強層本体と接地側皮革層との剥離を効果的に防止できる。
【0065】
また、補強層拡厚部と上面側皮革層との境界をアウトソール上面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてある構成や、補強層の厚みをアウトソール上面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、上面側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール上面に露出させる構成、あるいは、上面側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する端縁部を、補強層拡厚部の上端部に形成した鍔状部と補強層拡厚部周りの補強層部分との間に入り込ませる構成を採れば、第10,第11、第12特徴構成と同様、補強層本体と上面側皮革層との剥離も効果的に防止できる。
【0066】
〔14〕本発明の第14特徴構成は、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層の上面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設ける靴に係り、その特徴は、
アウトソール接地面視におけるアウトソール内方部で前記補強層の厚みをアウトソール接地面の側へ拡大して、その補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面の内方部に露出させ、この構造において、
その補強層拡厚部と前記接地側皮革層との境界をアウトソール接地面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてある、
又は、前記補強層の厚みをアウトソール接地面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、前記接地側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール接地面に露出させてある、
又は、前記接地側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する端縁部を、前記補強層拡厚部の下端部に形成した鍔状部と前記補強層拡厚部周りの補強層部分との間に入り込ませてある点にある。
【0067】
つまり、歩行や走行においてはアウトソール接地面視におけるアウトソール内方部にも大きな曲げ力が作用し、殊にスポーツ用の靴ではジャンプやスタートダッシュの際にアウトソール接地面視におけるアウトソール内方部(特に内方部のうちでも前底部や土踏まず部あるいは後底部)にも大きな曲げ力が作用し、この為、アウトソール接地面視におけるアウトソール内方部が早期に疲労劣化する。
【0068】
これに対し、上記第14特徴構成によれば、補強層の厚みをアウトソール接地面の側へ大きして下面をアウトソール接地面で露出させる補強層拡厚部をアウトソール接地面視におけるアウトソール内方部に設けるから、上記の如きアウトソール接地面視におけるアウトソール内方部の疲労劣化を効果的に抑止することができる。
【0069】
また、補強層は皮革層に比べ一般に比重が大きなものとなるが、補強層拡厚部以外の部分については補強層の厚みを小さくするから、靴にとって重要(特にスポーツ用の靴にとって重要)な軽量化も可能になり、さらに、この補強層拡厚部は接地側皮革層の上面に設けた補強層と一体のものであるから、アウトソール全体としての一体化強度も大きく確保することができる。
【0070】
しかも、このように補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面視におけるアウトソール内方部で露出させる構造において、その補強層拡厚部と接地側皮革層との境界をアウトソール接地面視で櫛歯状又は波状に蛇行させるから、又は、補強層の厚みをアウトソール接地面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、接地側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール接地面に露出させるから、又は、接地側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する端縁部を、補強層拡厚部の下端部に形成した鍔状部と補強層拡厚部周りの補強層部分(すなわち、補強層拡厚部周りの非拡厚部)との間に入り込ませるから、前記した第4、第5又は第6特徴構成と同様にして、補強層拡厚部と接地側皮革層との境界部での剥離が口火となる補強層本体と接地側皮革層との剥離も効果的に防止することができ、これにより、アウトソール全体としての一体化強度を更に効果的に増大させることができる。
【0071】
すなわち、これらのことから上記第14特徴構成によれば、靴の軽量化を可能にしながらも、先述した従来構造の靴に比べアウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0072】
なお、第14特徴構成の実施において、補強層拡厚部はアウトソール接地面視におけるアウトソール内方部に一塊状態で設ける形態、あるいは、分散状態で複数設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0073】
また、補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面視におけるアウトソール内方部で露出させるのに、補強層拡厚部の下面は無被覆の状態で露出させる形態に限らず、適当な被覆処理を施した状態で露出させる形態を採ってもよい。
【0074】
〔15〕本発明の第15特徴構成は、第14特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
アウトソール上面を形成する上面側皮革層と前記接地側皮革層との間に前記補強層を設けてある点にある。
【0075】
つまり、この第15特徴構成によれば、アウトソール上面を形成する上面側皮革層を補強層の上面に設ける形態となることから、接地側皮革層によりアウトソール接地面を形成することとも相俟って、皮革ならではの高級感と履き心地を一層高めることができる。
【0076】
また、補強層拡厚部は接地側皮革層と上面側皮革層との間の補強層と一体のものとなるから、アウトソール全体としての一体化強度も一層大きく確保することができ、この点で、アウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性をさらに効果的に高めることができる。
【0077】
〔16〕本発明の第16特徴構成は、第14又は第15特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記アウトソール接地面の前底部又は後底部で露出させた補強層拡厚部の下面をスパイク金具の取り付け面にしてある点にある。
【0078】
つまり、この第16特徴構成によれば、スパイク金具からアウトソールを介して足裏に伝わる突き上げ感を補強層拡厚部により効果的に軽減することができる。
【0079】
また、接地側皮革層の下面を取り付け面としてスパイク金具をアウトソールの前底部又は後底部に取り付けるのに比べ、補強層拡厚部が備える大きな機械的強度(特に剛性)によりスパイク金具を一層強固にアウトソールの前底部又は後底部に取り付けることができ、これにより、第14特徴構成によるアウトソール全体としての一体化強度の効果的な向上とも相俟って、スパイクシューズとしての耐久性を効果的に高めることができる。
【0080】
〔17〕本発明の第17特徴構成は、アウトソール上面を形成する上面側皮革層の下面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設ける靴に係り、その特徴は、
アウトソール上面視におけるアウトソール内方部で前記補強層の厚みをアウトソール上面の側へ拡大して、その補強層拡厚部の上面をアウトソール上面の内方部に露出させ、この構造において、
その補強層拡厚部と前記上面側皮革層との境界をアウトソール上面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてある、
又は、前記補強層の厚みをアウトソール上面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、前記上面側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール上面に露出させてある、
又は、前記上面側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する端縁部を、前記補強層拡厚部の上端部に形成した鍔状部と前記補強層拡厚部周りの補強層部分との間に入り込ませてある点にある。
【0081】
つまり、アウトソール上面視(換言すれば、アウトソール接地面視)におけるアウトソール内方部(特に前底部や土踏まず部あるいは後底部)は前述の如く疲労による劣化が早いが、この第17特徴構成によれば、補強層の厚みをアウトソール上面の側へ大きして上面をアウトソール上面で露出させる補強層拡厚部をアウトソール上面視におけるアウトソール内方部に設けるから、前記した第14特徴構成と同様、アウトソール上面視におけるアウトソール内方部の疲労劣化を効果的に抑止することができる。
【0082】
また、第14特徴構成と同様、補強層拡厚部以外の部分については補強層の厚みを小さくするから、靴にとって重要(特にスポーツ用の靴にとって重要)な軽量化も可能になり、さらに、この補強層拡厚部は上面側皮革層の下面に設けた補強層と一体のものであるから、アウトソール全体としての一体化強度も大きく確保することができる。
【0083】
しかも、このように補強層拡厚部の上面をアウトソール上面視におけるアウトソール内方部で露出させる構造において、その補強層拡厚部と上面側皮革層との境界をアウトソール上面視で櫛歯状又は波状に蛇行させるから、又は、補強層の厚みをアウトソール上面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、上面側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール上面に露出させるから、又は、上面側皮革層のうちの補強層拡厚部に対する端縁部を、補強層拡厚部の上端部に形成した鍔状部と補強層拡厚部周りの補強層部分(すなわち、補強層拡厚部周りの非拡厚部)との間に入り込ませるから、前記した第10、第11又は第12特徴構成と同様にして、補強層拡厚部と上面側皮革層との境界部での剥離が口火となる補強層本体と上面側皮革層との剥離も効果的に防止することができ、これにより、アウトソール全体としての一体化強度を更に効果的に増大させることができる。
【0084】
すなわち、これらのことから上記第17特徴構成によれば、靴の軽量化を可能にしながらも、先述した従来構造の靴に比べアウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0085】
なお、第17特徴構成の実施において、補強層拡厚部はアウトソール上面視におけるアウトソール内方部に一塊状態で設ける形態、あるいは、分散状態で複数設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0086】
また、補強層拡厚部の上面をアウトソール上面視におけるアウトソール内方部で露出させるのに、補強層拡厚部の上面は無被覆の状態で露出させる形態に限らず、適当な被覆処理を施した状態で露出させる形態を採ってもよい。
【0087】
〔18〕本発明の第18特徴構成は、第17特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
アウトソール接地面を形成する接地側皮革層と前記上面側皮革層との間に前記補強層を設けてある点にある。
【0088】
つまり、この第18特徴構成によれば、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層を補強層の下面に設ける形態となることから、上面側皮革層によりアウトソール上面を形成することとも相俟って、皮革ならではの高級感と履き心地を一層高めることができる。
【0089】
また、補強層拡厚部は接地側皮革層と上面側皮革層との間の補強層と一体のものとなるから、アウトソール全体としての一体化強度も一層大きく確保することができ、この点で、アウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性をさらに効果的に高めることができる。
【0090】
〔19〕本発明の第19特徴構成は、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層の上面又はアウトソール上面を形成する上面側皮革層の下面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設ける靴に係り、その特徴は、
アウトソールの周縁部のうち少なくとも足親指の近傍部分で前記補強層をアッパーの上面に沿わせる湾曲状態で上方側へ延設して、その延設部をアッパーに対する保護カバーにしてある点にある。
【0091】
つまり、この第19特徴構成によれば、例えば、ボールを投げ終わる際に後方の足を甲が下向きの状態で地面に擦り付けるなどのことで、アッパーの前部が早期に摩耗したり亀裂や破断などの損傷を受けることを、保護カバーとしての上記補強層延設部(すなわち、野球用の靴で言えば、いわゆるPカバー)により防止することができる。
【0092】
また、この補強層延設部は接地側皮革層の上面又は上面側皮革層の下面に設けた補強層と一体のものであるから、その保護カバーとしての補強層延設部自体がアウトソールから離脱することも確実に防止でき、これらの点で、靴の耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0093】
なお、第19特徴構成の実施において、補強層を接地側皮革層と上面側皮革層との間に設ける形態を採れば、保護カバーとしての補強層延設部は接地側皮革層と上面側皮革層との間の補強層と一体のものとなるから、補強層延設部自体がアウトソールから離脱することをさらに確実に防止することができて、靴の耐久性をさらに効果的に高めることができる。
【0094】
〔20〕本発明の第20特徴構成は、第6又は第14特徴構成の靴の製造方法に係り、その特徴は、
前記補強層拡厚部の形成箇所に拡厚用開口部を形成した前記接地側皮革層を型内に設置し、
この型内において前記接地側皮革層の上面が臨む補強層形成用の型内空間部に補強層形成材を注入することにより、その補強層形成材を前記型内空間部及び前記拡厚用開口部に充填するとともに、前記拡厚用開口部を通じて前記鍔状部の形成箇所に充填し、
その後、注入した補強層形成材を硬化させることで、前記補強層と前記補強層拡厚部と前記鍔状部とを一体形成する点にある。
【0095】
つまり、この第20特徴構成によれば、補強層形成用の型内空間部に対する補強層形成材の注入だけで、接地側皮革層の上面における補強層と、アウトソール接地面の側に補強層の厚みを拡大して下面をアウトソール接地面に露出させた補強層拡厚部と、その補強層拡厚部の下端部における鍔状部とを、その鍔状部と補強層拡厚部周りの補強層部分との間に補強層拡厚部に対する接地側皮革層の端縁部を入り込ませた状態にして一体形成できるから、第6又は第14特徴構成の靴を容易に能率良く製作することができる。
【0096】
〔21〕本発明の第21特徴構成は、第12又は第17特徴構成の靴の製造方法に係り、その特徴は、
前記補強層拡厚部の形成箇所に拡厚用開口部を形成した前記上面側皮革層を型内に設置し、
この型内において前記上面側皮革層の下面が臨む補強層形成用の型内空間部に補強層形成材を注入することにより、その補強層形成材を前記型内空間部及び前記拡厚用開口部に充填するとともに、前記拡厚用開口部を通じて前記鍔状部の形成箇所に充填し、
その後、注入した補強層形成材を硬化させることで、前記補強層と前記補強層拡厚部と前記鍔状部とを一体形成する点にある。
【0097】
つまり、この第21特徴構成によれば、補強層形成用の型内空間部に対する補強層形成材の注入だけで、上面側皮革層の下面における補強層と、アウトソール上面の側に補強層の厚みを拡大して上面をアウトソール上面に露出させた補強層拡厚部と、その補強層拡厚部の上端部における鍔状部とを、その鍔状部と補強層拡厚部周りの補強層部分との間に補強層拡厚部に対する上面側皮革層の端縁部を入り込ませた状態にして一体形成できるから、第12又は第17特徴構成の靴を容易に能率良く製作することができる。
【0098】
〔22〕本発明の第22特徴構成は、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層の上面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴に係り、その特徴は、
前記補強層との間に前記接地側皮革層を挟んだ状態でアウトソール接地面に露出してアウトソール接地面の一部でアウトソール接地面の面方向に拡がる合成樹脂又はゴムを主材とする接地側外部補強層を設け、
前記接地側皮革層に形成した連結用孔を通じて前記補強層と前記接地側外部補強層とを一体化してある点にある。
【0099】
つまり、この第22特徴構成によれば、接地側皮革層の上面に設ける補強層、及び、その補強層との間に接地側皮革層を挟む状態でアウトソール接地面の側に設ける接地側外部補強層の夫々が備える高い機械的強度(すなわち、接地側皮革層よりも高い機械的強度、特に剛性や対摩耗性)をもって、アウトソールの耐久性を効果的に高めることができる。
【0100】
また、接地側皮革層を挟む補強層と接地側外部補強層とを接地側皮革層に形成の連結用孔を通じて一体化するから、アウトソール全体としての一体化強度も大きく確保することができ、このことからも先述した従来構造の靴に比べアウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0101】
なお、第22特徴構成の実施において、接地側外部補強層はアウトソール接地面に一塊状態で設ける形態、あるいは、分散状態で複数設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0102】
また、接地側外部補強層は無被覆の状態でアウトソール接地面に露出させる形態に限らず、適当な被覆処理を施した状態でアウトソール接地面に露出させる形態を採ってもよい。
【0103】
接地側皮革層に形成の連結用孔を通じて一体化する補強層と接地側外部補強層とは必ずしも同じ材質の層に限られるものではなく、異なる材質の層にしてもよい。
【0104】
また、第22特徴構成の実施においては、アウトソール上面を形成する上面側皮革層と接地側皮革層との間に補強層を設ける形態を採ってもよい。
【0105】
〔23〕本発明の第23特徴構成は、アウトソール上面を形成する上面側皮革層の下面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴であって、
前記補強層との間に前記上面側皮革層を挟んだ状態でアウトソール上面に露出してアウトソール上面の一部でアウトソール上面の面方向に拡がる合成樹脂又はゴムを主材とする上面側外部補強層を設け、
前記上面側皮革層に形成した連結用孔を通じて前記補強層と前記上面側外部補強層とを一体化してある点にある。
【0106】
つまり、この第23特徴構成によれば、上面側皮革層の下面に設ける補強層、及び、その補強層との間に上面側皮革層を挟む状態でアウトソール上面の側に設ける上面側外部補強層の夫々が備える高い機械的強度(すなわち、上面側皮革層よりも高い機械的強度、特に剛性や対摩耗性)をもって、アウトソールの耐久性を効果的に高めることができる。
【0107】
また、上面側皮革層を挟む補強層と上面側外部補強層とを上面側皮革層に形成の連結用孔を通じて一体化するから、アウトソール全体としての一体化強度も大きく確保することができ、このことからも先述した従来構造の靴に比べアウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0108】
なお、第23特徴構成の実施において、上面側外部補強層はアウトソール上面に一塊状態で設ける形態、あるいは、分散状態で複数設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0109】
また、上面側外部補強層は無被覆の状態でアウトソール上面に露出させる形態に限らず、適当な被覆処理を施した状態でアウトソール上面に露出させる形態を採ってもよい。
【0110】
上面側皮革層に形成の連結用孔を通じて一体化する補強層と上面側外部補強層とは必ずしも同じ材質の層に限られるものではなく、異なる材質の層にしてもよい。
【0111】
また、第23特徴構成の実施においては、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層と上面側皮革層との間に補強層を設ける形態を採ってもよい。
【0112】
〔24〕本発明の第24特徴構成は、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層とアウトソール上面を形成する上面側皮革層との間に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設ける靴に係り、その特徴は、
前記補強層との間に前記接地側皮革層を挟んだ状態でアウトソール接地面に露出してアウトソール接地面の一部でアウトソール接地面の面方向に拡がる合成樹脂又はゴムを主材とする接地側外部補強層、
及び、前記補強層との間に前記上面側皮革層を挟んだ状態でアウトソール上面に露出してアウトソール上面の一部でアウトソール上面の面方向に拡がる合成樹脂又はゴムを主材とする上面側外部補強層を設け、
前記接地側皮革層に形成した連結用孔を通じて前記補強層と前記接地側外部補強層とを一体化するとともに、前記上面側皮革層に形成した連結用孔を通じて前記補強層と前記上面側外部補強層とを一体化してある点にある。
【0113】
つまり、この第24特徴構成は、前記の第22特徴構成と第23特徴構成とを組み合わせたものであり、この第24特徴構成によれば、接地側皮革層と上面側皮革層との間に設ける補強層、その補強層との間に接地側皮革層を挟む状態でアウトソール接地面の側に設ける接地側外部補強層、並びに、補強層との間に上面側皮革層を挟む状態でアウトソール上面の側に設ける上面側外部補強層の夫々が備える高い機械的強度(すなわち、接地側皮革層や上面側皮革層よりも高い機械的強度、特に剛性や対摩耗性)をもって、アウトソールの耐久性を効果的に高めることができる。
【0114】
また、接地側皮革層を挟む補強層と接地側外部補強層とを接地側皮革層に形成の連結用孔を通じて一体化するとともに、上面側皮革層を挟む補強層と上面側外部補強層とを上面側皮革層に形成の連結用孔を通じて一体化するから、略言すれば、補強層と接地側外部補強層と上面側外部補強層の三者を夫々の間に皮革層を挟んだ状態で一体化するから、アウトソール全体としての一体化強度も大きく確保することができ、このことからも先述した従来構造の靴に比べアウトソールの耐久性、ひいては靴の耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0115】
なお、第24特徴構成の実施において、接地側外部補強層はアウトソール接地面に一塊状態で設ける形態、あるいは、分散状態で複数設ける形態のいずれを採ってもよく、同様に、上面側皮革層もアウトソール上面に一塊状態で設ける形態、あるいは、分散状態で複数設ける形態のいずれを採ってもよい。
【0116】
また、接地側外部補強層は無被覆の状態でアウトソール接地面に露出させる形態に限らず、適当な被覆処理を施した状態でアウトソール接地面に露出させる形態を採ってもよく、同様に、上面側外部補強層も無被覆の状態でアウトソール上面に露出させる形態に限らず、適当な被覆処理を施した状態でアウトソール上面に露出させる形態を採ってもよい。
【0117】
補強層と接地側外部補強層と上面側外部補強層の三者は必ずしも同じ材質の層に限られるものではなく、異なる材質の層にしてもよい。
【0118】
〔25〕本発明の第25特徴構成は、第22〜第24特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
1つの前記接地側外部補強層又は1つの前記上面側外部補強層に対して前記連結用孔を分散配置状態で複数設けてある点にある。
【0119】
つまり、この第25特徴構成によれば、1つの接地側外部補強層又は1つの上面側外部補強層を分散配置状態の複数の連結用孔を通じて補強層に一体化する形態となるから、1つの接地側外部補強層又は1つの上面側外部補強層を単一の連結用孔のみを通じて補強層に一体化するのに比べ、接地側皮革層を挟む接地側外部補強層と補強層とを、又は、上面側皮革層を挟む上面側外部補強層と補強層とを一層強固に一体化することができ、これにより、アウトソール全体としての一体化強度をさらに効果的に高めることができて、アウトソールの耐久性を一層効果的に高めることができる。
【0120】
〔26〕本発明の第26特徴構成は、第22特徴構成の靴の製造方法に係り、その特徴は、
前記連結用孔を形成した前記接地側皮革層を型内に設置し、
この型内において前記接地側皮革層の上面が臨む補強層形成用の型内空間部に補強層形成材を注入することにより、その補強層形成材を前記型内空間部に充填するとともに、前記連結用孔を通じて前記接地側外部補強層の形成箇所に充填し、
その後、注入した補強層形成材を硬化させることで、前記補強層と前記接地側外部補強層とを一体形成する点にある。
【0121】
つまり、この第26特徴構成によれば、補強層形成用の型内空間部に対する補強層形成材の注入だけで、接地側皮革層の上面における補強層と、アウトソール接地面の側の接地側外部補強層とを、それら補強層と接地側外部補強層との間に接地側皮革層を挟んだ状態にして一体形成できるから、第22特徴構成の靴を容易に能率良く製作することができる。
【0122】
なお、第26特徴構成の実施において、1つの接地側外部補強層に対する連結用孔を分散配置状態で複数形成しておけば、その接地側外部補強層の形成箇所に対する連結用孔を通じての補強層形成材の充填を円滑かつ迅速に行うことができて、靴の製作を一層容易かつ能率良く行うことができる。
【0123】
〔27〕本発明の第27特徴構成は、第23特徴構成の靴の製造方法に係り、その特徴は、
前記連結用孔を形成した前記上面側皮革層を型内に設置し、
この型内において前記上面側皮革層の下面が臨む補強層形成用の型内空間部に補強層形成材を注入することにより、その補強層形成材を前記型内空間部に充填するとともに、前記連結用孔を通じて前記上面側外部補強層の形成箇所に充填し、
その後、注入した補強層形成材を硬化させることで、前記補強層と前記上面側外部補強層とを一体形成する点にある。
【0124】
つまり、この第27特徴構成によれば、補強層形成用の型内空間部に対する補強層形成材の注入だけで、上面側皮革層の下面における補強層と、アウトソール上面の側の上面側外部補強層とを、それら補強層と上面側外部補強層との間に上面側皮革層を挟んだ状態にして一体形成できるから、第23特徴構成の靴を容易に能率良く製作することができる。
【0125】
なお、第27特徴構成の実施において、1つの上面側外部補強層に対する連結用孔を分散配置状態で複数形成しておけば、その上面側外部補強層の形成箇所に対する連結用孔を通じての補強層形成材の充填を円滑かつ迅速に行うことができて、靴の製作を一層容易かつ能率良く行うことができる。
【0126】
〔28〕本発明の第28特徴構成は、第24特徴構成の靴の製造方法に係り、その特徴は、
前記連結用孔を形成した前記接地側皮革層、及び、前記連結用孔を形成した前記上面側皮革層を型内に設置し、
この型内において前記接地側皮革層と前記上面側皮革層との間に設けた補強層形成用の型内空間部に補強層形成材を注入することにより、その補強層形成材を前記型内空間部に充填するとともに、それら接地側皮革層及び上面側皮革層の夫々に形成の前記連結用孔を通じて前記接地側外部補強層及び前記上面側外部補強層の形成箇所に充填し、
その後、注入した補強層形成材を硬化させることで、前記補強層と前記接地側外部補強層と前記上面側外部補強層とを一体形成する点にある。
【0127】
つまり、この第28特徴構成によれば、補強層形成用の型内空間部に対する補強層形成材の注入だけで、接地側皮革層と上面側皮革層との間の補強層と、アウトソール接地面の側の接地側外部補強層と、アウトソール上面の側の上面側外部補強層とを、それら補強層と接地側外部補強層との間に接地側皮革層を挟み、かつ、補強層と上面側外部補強層との間に上面側皮革層を挟んだ状態にして一体形成できるから、第24特徴構成の靴を容易に能率良く製作することができる。
【0128】
なお、第28特徴構成の実施において、1つの接地側外部補強層又は1つの上面側外部補強層に対する連結用孔を分散配置状態で複数形成しておけば、それら接地側外部補強層や上面側外部補強層の形成箇所に対する連結用孔を通じての補強層形成材の充填を円滑かつ迅速に行うことができて、靴の製作を一層容易かつ能率良く行うことができる。
【0129】
以上の第1〜第28特徴構成のいずれかの実施において、アウトソール接地面を形成する接地側皮革層やアウトソール上面を形成する上面側皮革層の材質は、夫々、本革あるいは合成皮革(人工皮革を含む)のいずれであってもよい。
【0130】
合成樹脂又はゴムを主材とする補強層は、合成樹脂やゴムだけからなる単純層に限られるものではなく、合成樹脂やゴム以外の適当な材質の芯材や骨材を補助的に含む複合層であってもよい。
【0131】
また、合成樹脂を主材として補強層を形成する場合、その合成樹脂としては種々のものを使用でき、また、ゴムを主材として補強層を形成する場合、そのゴムは天然ゴム又は合成ゴムのいずれであってもよい。
【0132】
補強層(接地側外部補強層や上面側外部補強層を設ける場合はそれら外部補強層も含む)は機械的強度を示す種々の物性値の全てについて接地側皮革層や上面側皮革層よりも高い機械的強度を有するものである必要はなく、少なくとも補強層を設けない皮革層だけからなるアウトソールに比べアウトソールの耐久性を向上し得る機械的強度を有するものであればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0133】
〔第1実施形態〕
図1〜図3は野球用やソフトボール用などとして好適なスパイクシューズを示し、1は靴の接地面を形成するアウトソール(換言すれば本底あるいは下底)、2はアウトソール1に連結するアッパー(足の甲を覆う部分)、3はミッドソール(換言すれば中底)であり、アッパー2の下縁部はアウトソール1とミッドソール3との間に挟み込んだ状態で両ソール1,3に対し縫製や接着により連結してある。
【0134】
また、このスパイクシューズは、ミッドソール3の上面に中敷4を敷いた状態で使用する。
【0135】
アウトソール1は基本的に、その接地面1aを形成する接地側皮革層5と、アウトソール上面1bを形成する上面側皮革層6と、それら皮革層5,6の間に配設した合成樹脂又はゴムを主材とする補強層7とからなる三層構造にしてあり、本革や合成皮革(人工皮革を含む)からなる接地側皮革層5及び上面側皮革層6によりアウトソール接地面1a及びアウトソール上面1bを形成することで、皮革ならではの高級感と履き心地を得られるようにしてある。
【0136】
また、補強層7を接地側皮革層5と上面側皮革層6との間に設けることで、その補強層7が備える高い機械的強度(特に剛性及び耐摩耗性)をもってアウトソール1の耐久性を高めるとともに、アウトソール1の反りなどの塑性変形やスパイク金具8からソール1,3を介して足裏に伝わる突き上げ感などを抑止する。
【0137】
アウトソール1の周縁部については、アウトソール1の全周縁部で補強層7の厚みをアウトソール接地面1aの側へ拡大(すなわち、下向きに拡大)し、その下向き補強層拡厚部7Aの下面をアウトソール接地面1aの全周縁部でコバ下面として露出させてあり、これにより、アウトソール接地面1aを地面に対し傾斜させた状態で地面を強く踏み付けたりスライディングしたりする等のことで、コバ下面であるアウトソール接地面1aの周縁部が早期に摩耗したり亀裂や破断などの損傷を受けることを極力防止する。
【0138】
また、アウトソール1の周縁部のうち足親指(第1足指)の付け根部と足小指(第5足指)の付け根部とにわたるソール前側周縁部で補強層7の厚みをアウトソール上面1bの側へ拡大(すなわち、上向きに拡大)し、その上向き補強層拡厚部7Bの上面をアウトソール上面1bのソール前側周縁部でコバ上面として露出させてあり、これにより、ボールを投げ終わる際に後方の足を甲が下向きの状態で地面に擦り付けたりする等のことで、アウトソール1の前側周縁部におけるコバ上面が早期に摩耗したり亀裂や破断などの損傷を受けることを極力防止する。
【0139】
一方、アウトソール接地面1aの中ほど(すなわち、内方部)については、アウトソール1の前底部及び後底部の夫々で補強層7の厚みをアウトソール接地面1aの側へ拡大(下向きに拡大)して、それら下向き補強層拡厚部7Cの下面をアウトソール接地面1aの前底部及び後底部で露出させ、これら前底部及び後底部における下向き補強層拡厚部7Cの下面をスパイク金具8の取り付け面にしてある。
【0140】
つまり、これら前底部及び後底部における下向き補強層拡厚部7Cの下面をスパイク金具8の取り付け面とすることで、補強層拡厚部7Cが備える大きな機械的強度をもってスパイク金具8を強固にアウトソール1の前底部及び後底部に取り付け得るようにし、また、スパイク金具8からソール1,3を介して足裏に伝わる突き上げ感を一層軽減する。
【0141】
なお、前底部の下向き補強層拡厚部7Cは、ジャンプやスタートダッシュの際にアウトソール1の前底部に大きな曲げ力が作用することでアウトソール1の前底部が早期に疲労劣化することも抑止する。
【0142】
アウトソール1の前底部及び後底部における下向き補強層拡厚部7Cについては、図4に示す如く、接地側皮革層5のうちの補強層拡厚部7Cに対する端縁部5aを、補強層拡厚部7Cの下端部に形成した鍔状部7aと補強層拡厚部7Cの周りの補強層7部分との間に入り込ませてあり、これにより、補強層拡厚部7Cと接地側皮革層5との境界部に対する曲げ力の集中を緩和するとともに、それら補強層拡厚部7Cとそれに隣接する接地側皮革層5との境界部における接着面積も大きく確保して、補強層拡厚部7Cと接地側皮革層5との境界部での剥離、及び、それが口火となる補強層7の本体と接地側皮革層5との剥離を防止し、また、そのことでスパイク金具8に対する支持強度も一層高める。
【0143】
このスパイクシューズにおけるアウトソール1の製法については、補強層拡厚部7A〜7Cを形成した補強層7を射出成形等により予め作成し、この補強層7に接地側皮革層5及び上面側皮革層6の夫々を接着する方法(製法1)や、接地側皮革層5と上面側皮革層6とのいずれか一方を射出成形用の金型にセットした状態で、その金型に樹脂を注入することにより、接地側皮革層5と上面側皮革層6とのいずれか一方が接着されるとともに補強層拡厚部7A〜7Cが形成された補強層7を作成し、この補強層7に接地側皮革層5と上面側皮革層6とのうちの他方を接着する方法(製法2)、あるいは、接地側皮革層5と上面側皮革層6との両方を射出成形用の金型にセットした状態で、その金型に樹脂を注入することにより、接地側皮革層5と上面側皮革層6との両方が接着されるとともに補強層拡厚部7A〜7Cが形成された補強層7(すなわち、上記三層構造のアウトソール1)を作成する方法(製法3)などを採る。
【0144】
そして特に、アウトソール1の前底部及び後底部における下向き補強層拡厚部7Cの如く拡厚側の端部に鍔状部7aを設ける場合の製法としては、アウトソール周縁部の下向き補強層拡厚部7Aと前底部及び後底部における下向き補強層拡厚部7Cとの夫々の形成箇所に拡厚用開口部を形成した接地側皮革層5、及び、アウトソール周縁部の上向き補強層拡厚部7Bの形成箇所に拡厚用開口部を形成した上面側皮革層6を金型内に設置した状態で、この型内において接地側皮革層5と上面側皮革層6との間の補強層形成用の型内空間部に補強層形成材としての樹脂を注入することにより、その樹脂を補強層形成用の型内空間部及び上記の各拡厚用開口部に充填するとともに、前底部及び後底部の下向き補強層拡厚部7Cについては、その樹脂を拡厚用開口部を通じて鍔状部7aの形成箇所にも充填し、その後、注入した樹脂を硬化させることで補強層7及び各補強層拡厚部7A〜7Cとともに、前底部及び後底部の下向き補強層拡厚部7Cにおける下端部の鍔状部7aを一体形成するようにする。
【0145】
スパイク金具8は、同図4に示す如く、上面側皮革層6と下向き補強層拡厚部7Cとにわたって貫通させた取付孔9に対しミッドソール3の側から打込ナット10を装着し、この打込ナット10に対しスパイク金具8のボルト孔8aに挿通した取付ボルト11を螺合することで、その取付ボルト11のボルト頭と下向き補強層拡厚部7Cの下面との間にスパイク金具8の基板部8bを挟み込む形態でスパイク金具8をアウトソール接地面1aに取り付ける方法(取付法1)を採る。
【0146】
又は、図5に示す如く、前底部及び後底部の下向き補強層拡厚部7Cに貫通させた取付孔9に埋込ナット10を装着し、この埋込ナット10に対しスパイク金具8のボルト孔8aに挿通した取付ボルト11を螺合することで、その取付ボルト11のボルト頭と下向き補強層拡厚部7Cの下面との間にスパイク金具8の基板部8bを挟み込む形態でスパイク金具8をアウトソール接地面1aに取り付ける方法(取付法2)を採る。
【0147】
なお、取付法2によれば取付法1に比べ、取付ボルト11を短いもので済ませることができて、その分、スパイクシューズを軽量化することができ、また、取付法2の場合、補強層7を射出成形する際に金型内に埋込ナット10を予めセットしておくことで、補強層7の成形と埋込ナット10の装着とを一挙に行うことができて、スパイクシューズの製作を容易にすることができる。
【0148】
本第1実施形態では、基本的に接地側皮革層5と上面側皮革層6とそれら皮革層5,6の間の補強層7とからなる三層構造のアウトソール1を示したが、場合によっては、本第1実施形態で示した構造において上面側皮革層6及び上向き補強層拡厚部7Bを省略した二層構造のアウトソール(換言すれば、補強層7の上面をアウトソール上面とするアウトソール)にしてもよい。
【0149】
〔第2実施形態〕
図6、図7は第1実施形態と同様、接地側皮革層5と上面側皮革層6とそれら皮革層5,6の間の合成樹脂又はゴムを主材とする補強層7とからなる三層構造のアウトソール1を備えるスパイクシューズを示し、このスパイクシューズでは、第1実施形態のスパイクシューズにおけるアウトソール周縁部の下向き及び上向き補強層拡厚部7A,7Bやアウトソール前底部及び後底部の下向き補強層拡厚部7Cに代え、アウトソール接地面視におけるアウトソール内方部のうち土踏まず部で補強層7の厚みをアウトソール接地面1aの側へ拡大して、この下向き補強層拡厚部7Dの下面をアウトソール接地面1aの土踏まず部で露出させてある。
【0150】
すなわち、アウトソール1の土踏まず部に上記補強層拡厚部7Dを設けることにより、歩行時や走行時にアウトソール1が土踏まず部において折れるように曲がることで生じる履き心地の悪さを無くようにしてある。また、この土踏まず部の下向き補強層拡厚部7Dは、ジャンプやスタートダッシュの際にアウトソール1の土踏まず部に大きな曲げ力が作用することでアウトソール1の土踏まず部が早期に疲労劣化することも抑止する。
【0151】
この土踏まず部の下向き補強層拡厚部7Dについては、その下向き補強層拡厚部7Dとそれに隣接する接地側皮革層5との境界を接地側皮革層5の全厚み範囲についてアウトソール接地面視で櫛歯状に蛇行させてあり、これにより、その境界部に対する曲げ力の集中を緩和するとともに、その下向き補強層拡厚部7Dとそれに隣接する接地側皮革層5との境界部における接着面積も大きく確保して、補強層拡厚部7Dと接地側皮革層5との境界部での剥離、及び、それが口火となる補強層7の本体と接地側皮革層5との剥離を防止する。
【0152】
スパイク金具8は、図8に示す如く前底部及び後底部において補強層7及び接地側皮革層5にわたって貫通させた取付孔9に短尺の打込ナット10を装着し、この埋込ナット10に対しスパイク金具8のボルト孔8aに挿通した取付ボルト11を螺合することで、その取付ボルト11のボルト頭と接地側皮革層5の下面との間にスパイク金具8の基板部8bを挟み込む形態でスパイク金具8をアウトソール接地面1aに取り付けてある。
【0153】
なお、この第2実施形態のスパイクシューズでは、図9に示す如く、取付孔9の形成箇所に対応させて上面側皮革層6及びミッドソール3に比較的大きな穴12を形成し、この穴12にクッション部材13を装着することで、スパイク金具8からの突き上げ感を軽減するとともに、クッション性を高めて履き心地を一層良くする構造を採用してもよい。
【0154】
本第2実施形態でも、基本的に接地側皮革層5と上面側皮革層6とそれら皮革層5,6の間の補強層7とからなる三層構造のアウトソール1を示したが、場合によっては、本第2実施形態で示した構造において上面側皮革層6を省略した二層構造のアウトソール(換言すれば、補強層7の上面をアウトソール上面とするアウトソール)にしてもよい。
【0155】
〔第3実施形態〕
図10、図11は第1、第2実施形態と同様、接地側皮革層5と上面側皮革層6とそれら皮革層5,6の間の合成樹脂又はゴムを主材とする補強層7とからなる三層構造のアウトソール1を備えるスパイクシューズを示し、このスパイクシューズでは、第2実施形態のスパイクシューズにおけるアウトソール土踏まず部の下向き補強層拡厚部7Dに代え、アウトソール上面視におけるアウトソール内方部のうち土踏まず部で補強層7の厚みをアウトソール上面1bの側へ拡大して、この上向き補強層拡厚部7Eの上面をアウトソール上面1bの土踏まず部で露出させてある。
【0156】
すなわち、第2実施形態のスパイクシューズと同様、アウトソール1の土踏まず部に上記補強層拡厚部7Eを設けることにより、歩行時や走行時にアウトソール1が土踏まず部において折れるように曲がることで生じる履き心地の悪さを無くようにしてある。また、この土踏まず部の上向き補強層拡厚部7Eは、ジャンプやスタートダッシュの際にアウトソール1の土踏まず部に大きな曲げ力が作用することでアウトソール1の土踏まず部が早
期に疲労劣化することも抑止する。
【0157】
この土踏まず部の上向き補強層拡厚部7Eについては、補強層7の厚みをアウトソール上面1bの側へ拡大して形成した補強層突起7bの分散群を、上面側皮革層6のうちの補強層拡厚部7Eに対する隣接部分でアウトソール上面1bに露出させてあり、これにより、補強層拡厚部7Eと上面側側皮革層6との境界部に対する曲げ力の集中を緩和するとともに、上面側皮革層6のうちの補強層拡厚部7Eに対する隣接部分と補強層7との接着面積も大きく確保して、上向き補強層拡厚部7Eと上面側皮革層6との境界部での剥離が口火となる補強層7の本体と上面側皮革層6との剥離を防止する。
【0158】
また、このスパイクシューズでは、アウトソール1の周縁部のうち足親指の近傍部分で補強層7をアッパー2の上面に沿わせる湾曲状態で上方側へ延設して、その延設部7Fをアッパー2に対する保護カバーにしてあり、これにより、ボールを投げ終わる際に後方の足を甲が下向きの状態で地面に擦り付けるなどのことで、アッパー2の前部が早期に摩耗したり亀裂や破断などの損傷を受けることを防止する。
【0159】
本第3実施形態でも、基本的に接地側皮革層5と上面側皮革層6とそれら皮革層5,6の間の補強層7とからなる三層構造のアウトソール1を示したが、場合によっては、本第3実施形態で示す構造において接地側皮革層5を省略した二層構造のアウトソール(換言すれば、補強層7の下面をアウトソール接地面とするアウトソール)にしてもよい。
【0160】
〔第4実施形態〕
図12〜図15は第1〜第3実施形態と同様、接地側皮革層5と上面側皮革層6とそれら皮革層5,6の間の補強層7とからなる三層構造のアウトソール1を備えるスパイクシューズを示し、このスパイクシューズでは、アウトソール1の周縁部のうち足親指(第1足指)の付け根部と足小指(第5足指)の付け根部とにわたるソール前側周縁部、及び、踵周りのソール後側周縁部の夫々で補強層7の厚みをアウトソール接地面1aの側へ拡大(すなわち、下向きに拡大)し、それら下向き補強層拡厚部7Aの下面をアウトソール接地面1aのソール前側周縁部及びソール後側周縁部の夫々でコバ下面として露出させてある。
【0161】
また、アウトソール1の周縁部のうち足親指(第1足指)の付け根部と足小指(第5足指)の付け根部とにわたるソール前側周縁部で補強層7の厚みをアウトソール上面1bの側へ拡大(すなわち、上向きに拡大)し、その上向き補強層拡厚部7Bの上面をアウトソール上面1bのソール前側周縁部でコバ上面として露出させてある。
【0162】
一方、アウトソール上面視におけるアウトソール内方部については、補強層7との間に接地側皮革層5を挟んだ状態でアウトソール接地面1aに露出してアウトソール接地面1aにおける前底部と土踏まず部から後底部にかけての部分との夫々でアウトソール接地面1aの面方向に拡がる接地側外部補強層7Gを設け、これら接地側外部補強層7Gの夫々を接地側皮革層5に形成の連結用孔12を通じて補強層7と一体化し、そして、これら接地側外部補強層7Gの下面をスパイク金具8の取り付け面にしてある。
【0163】
また同様に、アウトソール接地面視におけるアウトソール内方部については、補強層7との間に上面側皮革層6を挟んだ状態でアウトソール上面1bに露出してアウトソール上面1bにおける前底部と土踏まず部と後底部とにかけての部分でアウトソール上面1bの面方向に拡がる上面側外部補強層7Hを設け、この上面側外部補強層7Hを上面側皮革層6に形成の連結用孔13を通じて補強層7と一体化してある。
【0164】
すなわち、補強層7に加えて、補強層7との間に接地側皮革層5を挟む接地側外部補強層7G、及び、補強層7との間に上面側皮革層6を挟む上面側外部補強層7Hを設けることで、アウトソール1の耐久性を高く確保するようにしてあり、また、接地側外部補強層7Gの下面をスパイク金具8の取り付け面とすることで、スパイク金具8からアウトソール1及びミッドソール3を介して足裏に伝わる突き上げ感を軽減するようにしてある。
【0165】
接地側外部補強層7Gと補強層7とを一体化するための連結用孔12は、前側と後側の2つの接地側外部補強層7Gの各々について分散配置状態で複数設けてあり、また、上面側外部補強層7Hと補強層7とを一体化するための連結用孔13も、前底部と土踏まず部と後底部とにかけての上面側外部補強層7Hについて分散配置状態で複数設けてあり、このように1つの接地側外部補強層7Gや1つの上面側外部補強層7Hに対して複数の連結用孔12,13を分散配置状態で設けることにより、アウトソール全体としての一体化強度をさらに効果的に高めるようにしてある。
【0166】
このスパイクシューズにおけるアウトソール1の製法については、図16に示す如く、アウトソール周縁部における下向き補強層拡厚部7Aの形成箇所に拡厚用開口部14を形成するとともに2つの接地側外部補強層7Gの各々に対する複数の連結用孔12を形成した接地側皮革層5、及び、アウトソール周縁部における上向き補強層拡厚部7Bの形成箇所に拡厚用開口部15を形成するとともに前底部と土踏まず部と後底部とにかけての上面側外部補強層7Hに対する複数の連結用孔13を形成した上面側皮革層6を金型16内に設置する。
【0167】
そして、この型内において接地側皮革層5と上面側皮革層6との間の補強層形成用の型内空間部17に補強層形成材としての樹脂を注入することにより、その樹脂を補強層形成用の型内空間部17及び上記の各拡厚用開口部14,15に充填するとともに、その樹脂を接地側皮革層5及び上面側皮革層6夫々の連結用孔12,13を通じて接地側外部補強層7G及び上面側外部補強層7Hの形成箇所18,19にも充填し、その後、注入した樹脂を硬化させることで、補強層7及び各補強層拡厚部7A,7Bとともに接地側外部補強層7G及び上面側外部補強層7Hを一体形成するようにする。
【0168】
なお、この製法においては、前記の如く1つの接地側外部補強層7Gや1つの上面側外部補強層7Hに対して複数の連結用孔12,13を分散配置状態で設けてあることにより、それら接地側外部補強層7Gや上面側外部補強層7Hの形成箇所18,19に対する連結用孔12,13を通じての樹脂充填を円滑かつ能率良く行うことができる。
【0169】
上記製法においては、接地側皮革層5及び上面側皮革層6夫々の周縁に形成した支持用舌部5j,6jを上型16aと中型16bの間や下型16cと中型16bとの間に挟み込むことにより、接地側皮革層5及び上面側皮革層6の夫々を型内の所定位置に支持固定する。そして、これら支持用舌部5j、6jは製作したアウトソール1を金型16から取り出した後に切除する。
【0170】
また、これら支持用舌部5j,6jの挟み込みによる支持固定とともに、上記製法では、補強層形成用の型内空間部17への樹脂注入に対して、接地側皮革層5及び上面側皮革層6の夫々を接地側外部補強層7G及び上面側外部補強層7Hの形成箇所18,19で型内面に立脚させた支持ピン20,21によっても支えるようにしてある。
【0171】
そして、このスパイクシューズでは、アウトソール1の製作後において接地側外部補強層7G及び上面側外部補強層7Hの夫々に残る支持ピン20,21の抜取孔22,23のうち、接地側皮革層5に残る抜取孔22をスパイク金具取付用の釘やボルトの装着孔に利用してスパイク金具8を接地側外部補強層7Gの下面に取り付けるようにしてある。
【0172】
なお、本第4実施形態では、第1〜第3実施形態と同様、基本的に接地側皮革層5と上面側皮革層6とそれら皮革層5,6の間の補強層7とからなる三層構造のアウトソール1を示したが、場合によっては、本第4実施形態で示した構造において上面側皮革層6、上向き補強層拡厚部7B、及び、上面側外部補強層7Hを省略した二層構造のアウトソール(換言すれば、補強層7の上面をアウトソール上面とするアウトソール)にしてもよく、また、本第4実施形態で示した構造において接地側皮革層5、下向き補強層拡厚部7A、及び、接地側外部補強層7Gを省略した二層構造のアウトソール(換言すれば、補強層7の下面をアウトソール接地面とするアウトソール)にしてもよい。
【0173】
これら二層構造のアウトソールとする場合、その製法としては、アウトソール周縁部における下向き補強層拡厚部7Aの形成箇所に拡厚用開口部14を形成するとともに2つの接地側外部補強層7Gの各々に対する複数の連結用孔12を形成した接地側皮革層5を金型内に設置した状態で、この型内において接地側皮革層5の上面が臨む補強層形成用の型内空間部17に補強層形成材としての樹脂を注入することにより、その樹脂を補強層形成用の型内空間部17及び上記の拡厚用開口部14に充填するとともに、その樹脂を接地側皮革層5の連結用孔12を通じて接地側外部補強層7Gの形成箇所18にも充填し、その後、注入した樹脂を硬化させることで、補強層7と下向き補強層拡厚部7Aと接地側外部補強層7Gとを一体形成すればよい。
【0174】
また、アウトソール周縁部における上向き補強層拡厚部7Bの形成箇所に拡厚用開口部15を形成するとともに前底部と土踏まず部と後底部とにかけての上面側外部補強層7Hに対する複数の連結用孔13を形成した上面側皮革層6を金型内に設置した状態で、この型内において上面側皮革層6の下面が臨む補強層形成用の型内空間部17に補強層形成材としての樹脂を注入することにより、その樹脂を補強層形成用の型内空間部17及び拡厚用開口部15に充填するとともに、その樹脂を上面側皮革層6の連結用孔13を通じて上面側外部補強層7Hの形成箇所19にも充填し、その後、注入した樹脂を硬化させることで、補強層7と上向き補強層拡厚部7Bと上面側外部補強層7Hとを一体形成するようにすればよい。
【0175】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を列記する。
前述の第1実施形態では、下面をアウトソール接地面1aの周縁部で露出させる下向き補強層拡厚部7Aをアウトソール1の全周縁部に設ける例を示したが、この下向き補強層拡厚部7Aを、例えばアウトソール周縁部のうち足親指の付け根部と足小指の付け根部とにわたるソール前側周縁部のみに設けたり、そのソール前側周縁部の中でもさらにソール足先部のみに設けるなど、アウトソール周縁部の一部のみに設けるようにしてもよい。
【0176】
また、第1実施形態では、上面をアウトソール1のコバ上面とする上向き補強層拡厚部7Bをアウトソール1の周縁部のうち足親指の付け根部と足小指の付け根部とにわたるソール前側周縁部のみに設ける例を示したが、この上向き補強層拡厚部7Bをアウトソール1の全周縁部に設けたり、ソール前側周縁部の中でもソール足先部のみに設けるようにしてもよい。
【0177】
第1実施形態ではアウトソール1の周縁部に設ける下向き補強層拡厚部7A及び上向き補強層拡厚部7Bの夫々をアウトソール周方向に連続的に設ける例を示したが、これら下向き補強層拡厚部7Aや上向き補強層拡厚部7Bをアウトソール周方向で断続的に設けるようにしてもよい。
【0178】
第1実施形態では、アウトソール1の周縁部に設ける下向き補強層拡厚部7Aとそれに隣接する接地側皮革層5との境界をアウトソール接地面視で単調な曲線状のものにし、また、アウトソール1の周縁部に設ける上向き補強層拡厚部7Bとそれに隣接する上面側皮革層6との境界もアウトソール上面視で単調な曲線状のものにしたが、これら下向き補強層拡厚部7Aと接地側皮革層5との境界、及び、上向き補強層拡厚部7Bと上面側皮革層6との境界の夫々をアウトソール接地面視やアウトソール上面視で先述の図7に示す如き櫛歯状のものや波状のものにして、それら境界部に対する曲げ力の集中を緩和するとともに、それら下向き補強層拡厚部7Aと接地側皮革層5との境界部における接着面積、及び、上向き補強層拡厚部7Bと上面側皮革層6との境界部における接着面積を大きく確保するようにしてもよい。
【0179】
また、アウトソール1の周縁部に設ける下向き補強層拡厚部7Aについて、先述の図11に示したのと同様の構造、すなわち、補強層7の厚みをアウトソール接地面1aの側に拡大して形成した補強層突起7bの分散群を、接地側皮革層5のうちの補強層拡厚部7Aに対する隣接部分でアウトソール接地面1aに露出させる構造や、先述の図4に示したの
と同様の構造、すなわち、接地側皮革層5のうちの補強層拡厚部7Aに対する端縁部5aを、補強層拡厚部7Aの下端部に形成した鍔状部7aと補強層拡厚部7Aの周りの補強層部分との間に入り込ませる構造を採るようにしてもよい。
【0180】
同じく、アウトソール1の周縁部に設ける上向き補強層拡厚部7Bについて、先述の図11に示したのと同様の構造、すなわち、補強層7の厚みをアウトソール上面1bの側に拡大して形成した補強層突起7bの分散群を、上面側皮革層6のうちの補強層拡厚部7Bに対する隣接部分でアウトソール上面1bに露出させる構造や、先述の図4に示したのと同様の構造、すなわち、上面側皮革層6のうちの補強層拡厚部7Bに対する端縁部を、補強層拡厚部7Bの上端部に形成した鍔状部7aと補強層拡厚部7Bの周りの補強層部分との間に入り込ませる構造を採るようにしてもよい。
【0181】
合成樹脂を主材として補強層7を形成する場合、その合成樹脂としては、ウレタン、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、PVCなど、種々のものを使用でき、また、ゴムを主材として補強層7を形成する場合、そのゴムは天然ゴム又は合成ゴムのいずれであってもよい。
【0182】
本発明は、スパイクシューズに限らず、種々のスポーツ用靴や各種用途の靴に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】第1実施形態を示すスパイクシューズの一部破断側面図
【図2】第1実施形態を示すアウトソールの接地面(底面)図
【図3】第1実施形態を示すアウトソールの上面図
【図4】第1実施形態を示すA−A線断面図
【図5】第1実施形態の変形例を示すA−A線断面図
【図6】第2実施形態を示すスパイクシューズの一部破断側面部
【図7】第2実施形態を示すアウトソールの接地面(底面)図
【図8】第2実施形態を示すアウトソール要部の拡大断面部
【図9】第2実施形態の変形例を示すアウトソール要部の拡大断面図
【図10】第3実施形態を示すスパイクシューズの一部破断断面図
【図11】第3実施形態を示すアウトソールの接地面(底面)図
【図12】第4実施形態を示すスパイクシューズの一部破断側面図
【図13】第4実施形態を示すアウトソールの接地面(底面)図
【図14】第4実施形態を示すアウトソールの上面図
【図15】第4実施形態を示すB−B線断面図(a)及びC−C線断面図(b)
【図16】第4実施形態を示すアウトソール製造用金型の縦断面図(a)及び横断面図(b)
【符号の説明】
【0184】
1a アウトソール接地面
5 接地側皮革層
1b アウトソール上面
6 上面側皮革層
7 補強層
1 アウトソール
7A〜7E 補強層拡厚部
7b 補強層突起
5a 皮革層端縁部
7a 補強層鍔状部
8 スパイク金具
2 アッパー
7F 補強層延設部(保護カバー)
7G 接地側外部補強層
7H 上面側外部補強層
12,13 連結用孔
14,15 拡厚用開口部
16 型
17 補強層形成用の型内空間部
18 接地側外部補強層の形成箇所
19 上面側外部補強層の形成箇所
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウトソール接地面を形成する接地側皮革層の上面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴であって、
アウトソールの周縁部で前記補強層の厚みをアウトソール接地面の側へ拡大して、その補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面の周縁部で露出させてある靴。
【請求項2】
アウトソールの上面を形成する上面側皮革層と前記接地側皮革層との間に前記補強層を設けてある請求項1記載の靴。
【請求項3】
前記補強層拡厚部をアウトソール周縁部のうち少なくともソール足先部に設けてある請求項1又は2記載の靴。
【請求項4】
前記補強層拡厚部と前記接地側皮革層との境界をアウトソール接地面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてある請求項1〜3のいずれか1項に記載の靴。
【請求項5】
前記補強層の厚みをアウトソール接地面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、前記接地側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール接地面に露出させてある請求項1〜4のいずれか1項に記載の靴。
【請求項6】
前記接地側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する端縁部を、前記補強層拡厚部の下端部に形成した鍔状部と前記補強層拡厚部周りの補強層部分との間に入り込ませてある請求項1〜5のいずれか1項に記載の靴。
【請求項7】
アウトソール上面を形成する上面側皮革層の下面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴であって、
アウトソールの周縁部で前記補強層の厚みをアウトソール上面の側へ拡大して、その補強層拡厚部の上面をアウトソールのコバ上面にしてある靴。
【請求項8】
アウトソール接地面を形成する接地側皮革層と前記上面側皮革層との間に前記補強層を設けてある請求項7記載の靴。
【請求項9】
前記補強層拡厚部をアウトソール周縁部のうち少なくともソール足先部に設けてある請求項7又は8記載の靴。
【請求項10】
前記補強層拡厚部と前記上面側皮革層との境界をアウトソール上面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてある請求項7〜9のいずれか1項に記載の靴。
【請求項11】
前記補強層の厚みをアウトソール上面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、前記上面側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール上面に露出させてある請求項7〜10のいずれか1項に記載の靴。
【請求項12】
前記上面側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する端縁部を、前記補強層拡厚部の上端部に形成した鍔状部と前記補強層拡厚部周りの補強層部分との間に入り込ませてある請求項7〜11のいずれか1項に記載の靴。
【請求項13】
アウトソール接地面を形成する接地側皮革層とアウトソール上面を形成する上面側皮革層との間に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴であって、
アウトソールの周縁部で前記補強層の厚みをアウトソール接地面の側及びアウトソール上面の側へ拡大して、その補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面の周縁部で露出させるとともに、その補強層拡厚部の上面をアウトソールのコバ上面にしてある靴。
【請求項14】
アウトソール接地面を形成する接地側皮革層の上面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴であって、
アウトソール接地面視におけるアウトソール内方部で前記補強層の厚みをアウトソール接地面の側へ拡大して、その補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面の内方部に露出させ、この構造において、
その補強層拡厚部と前記接地側皮革層との境界をアウトソール接地面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてある、
又は、前記補強層の厚みをアウトソール接地面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、前記接地側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール接地面に露出させてある、
又は、前記接地側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する端縁部を、前記補強層拡厚部の下端部に形成した鍔状部と前記補強層拡厚部周りの補強層部分との間に入り込ませてある靴。
【請求項15】
アウトソール上面を形成する上面側皮革層と前記接地側皮革層との間に前記補強層を設けてある請求項14記載の靴。
【請求項16】
前記アウトソール接地面の前底部又は後底部で露出させた前記補強層拡厚部の下面をスパイク金具の取り付け面にしてある請求項14又は15記載の靴。
【請求項17】
アウトソール上面を形成する上面側皮革層の下面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴であって、
アウトソール上面視におけるアウトソール内方部で前記補強層の厚みをアウトソール上面の側へ拡大して、その補強層拡厚部の上面をアウトソール上面の内方部に露出させ、この構造において、
その補強層拡厚部と前記上面側皮革層との境界をアウトソール上面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてある、
又は、前記補強層の厚みをアウトソール上面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、前記上面側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール上面に露出させてある、
又は、前記上面側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する端縁部を、前記補強層拡厚部の上端部に形成した鍔状部と前記補強層拡厚部周りの補強層部分との間に入り込ませてある靴。
【請求項18】
アウトソール接地面を形成する接地側皮革層と前記上面側皮革層との間に前記補強層を設けてある請求項17記載の靴。
【請求項19】
アウトソール接地面を形成する接地側皮革層の上面又はアウトソール上面を形成する上面側皮革層の下面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴であって、
アウトソールの周縁部のうち少なくとも足親指の近傍部分で前記補強層をアッパーの上面に沿わせる湾曲状態で上方側へ延設して、その延設部をアッパーに対する保護カバーにしてある靴。
【請求項20】
請求項6又は14記載の靴の製造方法であって、
前記補強層拡厚部の形成箇所に拡厚用開口部を形成した前記接地側皮革層を型内に設置し、
この型内において前記接地側皮革層の上面が臨む補強層形成用の型内空間部に補強層形成材を注入することにより、その補強層形成材を前記型内空間部及び前記拡厚用開口部に充填するとともに、前記拡厚用開口部を通じて前記鍔状部の形成箇所に充填し、
その後、注入した補強層形成材を硬化させることで、前記補強層と前記補強層拡厚部と前記鍔状部とを一体形成する靴の製造方法。
【請求項21】
請求項12又は17記載の靴の製造方法であって、
前記補強層拡厚部の形成箇所に拡厚用開口部を形成した前記上面側皮革層を型内に設置し、
この型内において前記上面側皮革層の下面が臨む補強層形成用の型内空間部に補強層形成材を注入することにより、その補強層形成材を前記型内空間部及び前記拡厚用開口部に充填するとともに、前記拡厚用開口部を通じて前記鍔状部の形成箇所に充填し、
その後、注入した補強層形成材を硬化させることで、前記補強層と前記補強層拡厚部と前記鍔状部とを一体形成する靴の製造方法。
【請求項22】
アウトソール接地面を形成する接地側皮革層の上面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴であって、
前記補強層との間に前記接地側皮革層を挟んだ状態でアウトソール接地面に露出してアウトソール接地面の一部でアウトソール接地面の面方向に拡がる合成樹脂又はゴムを主材とする接地側外部補強層を設け、
前記接地側皮革層に形成した連結用孔を通じて前記補強層と前記接地側外部補強層とを一体化してある靴。
【請求項23】
アウトソール上面を形成する上面側皮革層の下面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴であって、
前記補強層との間に前記上面側皮革層を挟んだ状態でアウトソール上面に露出してアウトソール上面の一部でアウトソール上面の面方向に拡がる合成樹脂又はゴムを主材とする上面側外部補強層を設け、
前記上面側皮革層に形成した連結用孔を通じて前記補強層と前記上面側外部補強層とを一体化してある靴。
【請求項24】
アウトソール接地面を形成する接地側皮革層とアウトソール上面を形成する上面側皮革層との間に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴であって、
前記補強層との間に前記接地側皮革層を挟んだ状態でアウトソール接地面に露出してアウトソール接地面の一部でアウトソール接地面の面方向に拡がる合成樹脂又はゴムを主材とする接地側外部補強層、
及び、前記補強層との間に前記上面側皮革層を挟んだ状態でアウトソール上面に露出してアウトソール上面の一部でアウトソール上面の面方向に拡がる合成樹脂又はゴムを主材とする上面側外部補強層を設け、
前記接地側皮革層に形成した連結用孔を通じて前記補強層と前記接地側外部補強層とを一体化するとともに、前記上面側皮革層に形成した連結用孔を通じて前記補強層と前記上面側外部補強層とを一体化してある靴。
【請求項25】
1つの前記接地側外部補強層又は1つの前記上面側外部補強層に対して前記連結用孔を分散配置状態で複数設けてある請求項22〜24のいずれか1項に記載の靴。
【請求項26】
請求項22記載の靴の製造方法であって、
前記連結用孔を形成した前記接地側皮革層を型内に設置し、
この型内において前記接地側皮革層の上面が臨む補強層形成用の型内空間部に補強層形成材を注入することにより、その補強層形成材を前記型内空間部に充填するとともに、前記連結用孔を通じて前記接地側外部補強層の形成箇所に充填し、
その後、注入した補強層形成材を硬化させることで、前記補強層と前記接地側外部補強層とを一体形成する靴の製造方法。
【請求項27】
請求項23記載の靴の製造方法であって、
前記連結用孔を形成した前記上面側皮革層を型内に設置し、
この型内において前記上面側皮革層の下面が臨む補強層形成用の型内空間部に補強層形成材を注入することにより、その補強層形成材を前記型内空間部に充填するとともに、前記連結用孔を通じて前記上面側外部補強層の形成箇所に充填し、
その後、注入した補強層形成材を硬化させることで、前記補強層と前記上面側外部補強層とを一体形成する靴の製造方法。
【請求項28】
請求項24記載の靴の製造方法であって、
前記連結用孔を形成した前記接地側皮革層、及び、前記連結用孔を形成した前記上面側皮革層を型内に設置し、
この型内において前記接地側皮革層と前記上面側皮革層との間に設けた補強層形成用の型内空間部に補強層形成材を注入することにより、その補強層形成材を前記型内空間部に充填するとともに、それら接地側皮革層及び上面側皮革層の夫々に形成の前記連結用孔を通じて前記接地側外部補強層及び前記上面側外部補強層の形成箇所に充填し、
その後、注入した補強層形成材を硬化させることで、前記補強層と前記接地側外部補強層と前記上面側外部補強層とを一体形成する靴の製造方法。
【請求項1】
アウトソール接地面を形成する接地側皮革層の上面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴であって、
アウトソールの周縁部で前記補強層の厚みをアウトソール接地面の側へ拡大して、その補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面の周縁部で露出させてある靴。
【請求項2】
アウトソールの上面を形成する上面側皮革層と前記接地側皮革層との間に前記補強層を設けてある請求項1記載の靴。
【請求項3】
前記補強層拡厚部をアウトソール周縁部のうち少なくともソール足先部に設けてある請求項1又は2記載の靴。
【請求項4】
前記補強層拡厚部と前記接地側皮革層との境界をアウトソール接地面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてある請求項1〜3のいずれか1項に記載の靴。
【請求項5】
前記補強層の厚みをアウトソール接地面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、前記接地側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール接地面に露出させてある請求項1〜4のいずれか1項に記載の靴。
【請求項6】
前記接地側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する端縁部を、前記補強層拡厚部の下端部に形成した鍔状部と前記補強層拡厚部周りの補強層部分との間に入り込ませてある請求項1〜5のいずれか1項に記載の靴。
【請求項7】
アウトソール上面を形成する上面側皮革層の下面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴であって、
アウトソールの周縁部で前記補強層の厚みをアウトソール上面の側へ拡大して、その補強層拡厚部の上面をアウトソールのコバ上面にしてある靴。
【請求項8】
アウトソール接地面を形成する接地側皮革層と前記上面側皮革層との間に前記補強層を設けてある請求項7記載の靴。
【請求項9】
前記補強層拡厚部をアウトソール周縁部のうち少なくともソール足先部に設けてある請求項7又は8記載の靴。
【請求項10】
前記補強層拡厚部と前記上面側皮革層との境界をアウトソール上面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてある請求項7〜9のいずれか1項に記載の靴。
【請求項11】
前記補強層の厚みをアウトソール上面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、前記上面側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール上面に露出させてある請求項7〜10のいずれか1項に記載の靴。
【請求項12】
前記上面側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する端縁部を、前記補強層拡厚部の上端部に形成した鍔状部と前記補強層拡厚部周りの補強層部分との間に入り込ませてある請求項7〜11のいずれか1項に記載の靴。
【請求項13】
アウトソール接地面を形成する接地側皮革層とアウトソール上面を形成する上面側皮革層との間に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴であって、
アウトソールの周縁部で前記補強層の厚みをアウトソール接地面の側及びアウトソール上面の側へ拡大して、その補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面の周縁部で露出させるとともに、その補強層拡厚部の上面をアウトソールのコバ上面にしてある靴。
【請求項14】
アウトソール接地面を形成する接地側皮革層の上面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴であって、
アウトソール接地面視におけるアウトソール内方部で前記補強層の厚みをアウトソール接地面の側へ拡大して、その補強層拡厚部の下面をアウトソール接地面の内方部に露出させ、この構造において、
その補強層拡厚部と前記接地側皮革層との境界をアウトソール接地面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてある、
又は、前記補強層の厚みをアウトソール接地面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、前記接地側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール接地面に露出させてある、
又は、前記接地側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する端縁部を、前記補強層拡厚部の下端部に形成した鍔状部と前記補強層拡厚部周りの補強層部分との間に入り込ませてある靴。
【請求項15】
アウトソール上面を形成する上面側皮革層と前記接地側皮革層との間に前記補強層を設けてある請求項14記載の靴。
【請求項16】
前記アウトソール接地面の前底部又は後底部で露出させた前記補強層拡厚部の下面をスパイク金具の取り付け面にしてある請求項14又は15記載の靴。
【請求項17】
アウトソール上面を形成する上面側皮革層の下面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴であって、
アウトソール上面視におけるアウトソール内方部で前記補強層の厚みをアウトソール上面の側へ拡大して、その補強層拡厚部の上面をアウトソール上面の内方部に露出させ、この構造において、
その補強層拡厚部と前記上面側皮革層との境界をアウトソール上面視で櫛歯状又は波状に蛇行させてある、
又は、前記補強層の厚みをアウトソール上面の側に拡大して形成した補強層突起の分散群を、前記上面側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する隣接部分でアウトソール上面に露出させてある、
又は、前記上面側皮革層のうちの前記補強層拡厚部に対する端縁部を、前記補強層拡厚部の上端部に形成した鍔状部と前記補強層拡厚部周りの補強層部分との間に入り込ませてある靴。
【請求項18】
アウトソール接地面を形成する接地側皮革層と前記上面側皮革層との間に前記補強層を設けてある請求項17記載の靴。
【請求項19】
アウトソール接地面を形成する接地側皮革層の上面又はアウトソール上面を形成する上面側皮革層の下面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴であって、
アウトソールの周縁部のうち少なくとも足親指の近傍部分で前記補強層をアッパーの上面に沿わせる湾曲状態で上方側へ延設して、その延設部をアッパーに対する保護カバーにしてある靴。
【請求項20】
請求項6又は14記載の靴の製造方法であって、
前記補強層拡厚部の形成箇所に拡厚用開口部を形成した前記接地側皮革層を型内に設置し、
この型内において前記接地側皮革層の上面が臨む補強層形成用の型内空間部に補強層形成材を注入することにより、その補強層形成材を前記型内空間部及び前記拡厚用開口部に充填するとともに、前記拡厚用開口部を通じて前記鍔状部の形成箇所に充填し、
その後、注入した補強層形成材を硬化させることで、前記補強層と前記補強層拡厚部と前記鍔状部とを一体形成する靴の製造方法。
【請求項21】
請求項12又は17記載の靴の製造方法であって、
前記補強層拡厚部の形成箇所に拡厚用開口部を形成した前記上面側皮革層を型内に設置し、
この型内において前記上面側皮革層の下面が臨む補強層形成用の型内空間部に補強層形成材を注入することにより、その補強層形成材を前記型内空間部及び前記拡厚用開口部に充填するとともに、前記拡厚用開口部を通じて前記鍔状部の形成箇所に充填し、
その後、注入した補強層形成材を硬化させることで、前記補強層と前記補強層拡厚部と前記鍔状部とを一体形成する靴の製造方法。
【請求項22】
アウトソール接地面を形成する接地側皮革層の上面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴であって、
前記補強層との間に前記接地側皮革層を挟んだ状態でアウトソール接地面に露出してアウトソール接地面の一部でアウトソール接地面の面方向に拡がる合成樹脂又はゴムを主材とする接地側外部補強層を設け、
前記接地側皮革層に形成した連結用孔を通じて前記補強層と前記接地側外部補強層とを一体化してある靴。
【請求項23】
アウトソール上面を形成する上面側皮革層の下面に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴であって、
前記補強層との間に前記上面側皮革層を挟んだ状態でアウトソール上面に露出してアウトソール上面の一部でアウトソール上面の面方向に拡がる合成樹脂又はゴムを主材とする上面側外部補強層を設け、
前記上面側皮革層に形成した連結用孔を通じて前記補強層と前記上面側外部補強層とを一体化してある靴。
【請求項24】
アウトソール接地面を形成する接地側皮革層とアウトソール上面を形成する上面側皮革層との間に合成樹脂又はゴムを主材とする補強層を設けた靴であって、
前記補強層との間に前記接地側皮革層を挟んだ状態でアウトソール接地面に露出してアウトソール接地面の一部でアウトソール接地面の面方向に拡がる合成樹脂又はゴムを主材とする接地側外部補強層、
及び、前記補強層との間に前記上面側皮革層を挟んだ状態でアウトソール上面に露出してアウトソール上面の一部でアウトソール上面の面方向に拡がる合成樹脂又はゴムを主材とする上面側外部補強層を設け、
前記接地側皮革層に形成した連結用孔を通じて前記補強層と前記接地側外部補強層とを一体化するとともに、前記上面側皮革層に形成した連結用孔を通じて前記補強層と前記上面側外部補強層とを一体化してある靴。
【請求項25】
1つの前記接地側外部補強層又は1つの前記上面側外部補強層に対して前記連結用孔を分散配置状態で複数設けてある請求項22〜24のいずれか1項に記載の靴。
【請求項26】
請求項22記載の靴の製造方法であって、
前記連結用孔を形成した前記接地側皮革層を型内に設置し、
この型内において前記接地側皮革層の上面が臨む補強層形成用の型内空間部に補強層形成材を注入することにより、その補強層形成材を前記型内空間部に充填するとともに、前記連結用孔を通じて前記接地側外部補強層の形成箇所に充填し、
その後、注入した補強層形成材を硬化させることで、前記補強層と前記接地側外部補強層とを一体形成する靴の製造方法。
【請求項27】
請求項23記載の靴の製造方法であって、
前記連結用孔を形成した前記上面側皮革層を型内に設置し、
この型内において前記上面側皮革層の下面が臨む補強層形成用の型内空間部に補強層形成材を注入することにより、その補強層形成材を前記型内空間部に充填するとともに、前記連結用孔を通じて前記上面側外部補強層の形成箇所に充填し、
その後、注入した補強層形成材を硬化させることで、前記補強層と前記上面側外部補強層とを一体形成する靴の製造方法。
【請求項28】
請求項24記載の靴の製造方法であって、
前記連結用孔を形成した前記接地側皮革層、及び、前記連結用孔を形成した前記上面側皮革層を型内に設置し、
この型内において前記接地側皮革層と前記上面側皮革層との間に設けた補強層形成用の型内空間部に補強層形成材を注入することにより、その補強層形成材を前記型内空間部に充填するとともに、それら接地側皮革層及び上面側皮革層の夫々に形成の前記連結用孔を通じて前記接地側外部補強層及び前記上面側外部補強層の形成箇所に充填し、
その後、注入した補強層形成材を硬化させることで、前記補強層と前記接地側外部補強層と前記上面側外部補強層とを一体形成する靴の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−229434(P2007−229434A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140401(P2006−140401)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000108258)ゼット株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000108258)ゼット株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
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