説明

靴底構造

【課題】 製造の複雑化やコスト高を招来することなく、足の姿勢の歪みを正しい姿勢に矯正できるようにした靴底構造を提供する。
【解決手段】 断面が下向きの凹状をなすインナーソウル(21)と断面が上向きの凹状をなすアウターソール(22)とから靴底(20)を構成する。インナーソール内にはアウターソールを嵌め込み、前後方向又は幅方向の一側方を固着し、他側方を上下動可能に設け、インナーソールとアウターソールの間には容積可変な密閉した圧力空間を形成し、圧力空間内に圧力流体を注入して保持するための注入弁(23)を設け、アウターソールの底面を流体の圧力に応じた角度に傾斜させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製造の複雑化やコスト高を招来することなく、足の姿勢の歪みを正しい姿勢に矯正できるようにした靴底構造に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の足は非常に複雑な構造をしており、足の姿勢はO脚やX脚、側湾等の人体の姿勢に大きく影響することが知られている。しかし、実際に人間の足を見てみると、筋力のバランス等に起因して足の姿勢が歪んでいる人が多い。
【0003】
そこで、前後方向又は幅方向の一側方が他側方に比して薄くなった中敷を用い、あるいは靴底の前後方向又は幅方向の一側方を他側方に比して薄く形成することにより、足の姿勢を矯正する方法が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【特許文献1】特開平05−154007号公報
【特許文献2】実開平03−73121号公報
【特許文献3】実開昭63−138107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、足の姿勢の歪みは人によって異なり、使用する人の足の姿勢の歪みに対応した中敷や靴底を製造するようにすると、製造が複雑になり、コスト高を招来する。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑み、製造の複雑化やコスト高を招来することなく、足の姿勢の歪みを正しい姿勢に矯正できるようにした靴底構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明に係る靴底構造は、足の姿勢を矯正するようにした靴底構造であって、断面が下向きの凹状をなすインナーソウルと断面が上向きの凹状をなすアウターソールとから構成され、上記インナーソール内にはアウターソールが嵌め込まれて前後方向又は幅方向の一側方が固着され、他側方が上下動可能に設けられ、上記インナーソールとアウターソールの間には容積可変な密閉した圧力空間が形成され、該圧力空間内に圧力流体を注入して保持するための注入弁が設けられており、上記アウターソールの底面が流体の圧力に応じた角度に傾斜されるようになしたことを特徴とする。
【0007】
本発明の特徴の1つは靴底を断面下向き凹状のインナーソールと断面上向き凹状のアウターソールとが構成し、両者を嵌め合わせて内部に圧力空間を構成し、圧力空間内に圧力流体を注入してアウターソールの底面を傾斜させるようにした点にある。
【0008】
これにより、足の姿勢の歪みに応じた大きさの傾斜が得られるので、足の姿勢を正しく矯正することができ、又歪みに応じた靴底を製作する必要がないので、製造の複雑化やコスト高を招来することもない。
【0009】
圧力空間は容積可変な密閉空間であればよく、例えばインナーソールとアウターソールの外周壁面の重なり合う部位をシールして密閉してもよく、又インナーソールとアウターソールの間にバルーンを内蔵するようにしてもよい。
【0010】
注入弁は圧力空間に圧力流体、例えばエアーや不活性ガス等の気体、あるいはオイル等の液体を注入して保持できるものであればどのような構造や形式のものでもよい。例えば、自転車のタイヤにエアーを注入して保持する注入弁と同様の構造のものを採用することができる。
【0011】
また、上記では足の姿勢を矯正するようにしたが、本発明の考え方を応用すると、左右の足の長さが異なる場合にこれを矯正することができる。即ち、本発明に係る靴底構造は、足の長さを矯正するようにした靴底構造であって、断面下向きの凹状をなすインナーソウルと断面が上向きの凹状をなすアウターソールとから構成され、上記インナーソール内にはアウターソールが上下動可能に嵌め込まれ、上記インナーソールとアウターソールの間には容積可変な密閉した圧力空間が形成され、該圧力空間内に圧力流体を注入し保持するための注入弁が設けられており、上記アウターソール及びインナーソールが流体の圧力に応じた高さになるようになしたことを特徴とする。
【0012】
本発明の靴底構造は足の長さの矯正に用いると効果が大きいが、身長を高く見せるために用いることもできる。
【0013】
また、上記2つの靴底構造ではインナーソールとアウターソールを直接的に嵌め合わせるようにしたが、インナーソールの外周壁面とアウターソールの外周壁面との間には外周壁面からなる少なくとも1つの中間ソールを介設するようにしてもよい。この場合にはアウターソールの底面をより一層大きな角度に傾斜させ、アウターソールとインナーソールをより一層高くすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図3は本発明に係る靴底構造の好ましい実施形態を示す。図において、靴本体10の底方には本例の構造の靴底20が固着され、靴底20はインナーソール21とアウターソール22とから構成されている。
【0015】
インナーソール21及びアウターソール22はゴム又は合成樹脂材料を用いて製作され、インナーソール21は断面下向き凹状に形成され、アウターソール22は断面上向き凹状に形成され、インナーソール21内にはアウターソール22が嵌め込まれ、両者の空間内にはゴム製のバルーン24が装着され、バルーン24内は密閉された圧力空間25となっている。
【0016】
このインナーソール21及びアウターソール22の外周壁面の幅方向の内側方の部分は相互に固着され、幅方向の外側方の部分は上下動可能、即ち相互に上下方向に摺動可能に設けられ、又インナーソール21には踵の部位に注入弁23が取付けられ、注入弁23はバルーン24内にエアーを注入し保持できる構造、例えば注入口の内方に弁体を設け、弁体が内部圧力を受けて注入口を閉鎖し、外方から押されて注入口を開放するような構造となっている。
【0017】
足の姿勢を矯正する場合、注入弁23から例えばエアーを注入する。すると、インナーソール21とアウターソール22の間のバルーン24が膨張するが、アウターソール22の内側はインナーソール21に固着されているので、図3に示されるようにアウターソール22の外側がインナーソール21から押し出され、図1及び図2に示されるようにアウターソール22の底面は注入したエアーの圧力に応じた角度に傾斜される。
【0018】
その結果、アウターソール22の底面を足の姿勢の歪みに応じた角度に傾斜させることができるので、足の姿勢を正しく矯正することができ、又足の姿勢の歪みに応じた靴底を製作する必要がないので、製造の複雑化やコスト高を招来することもない。
【0019】
図4は第2の実施形態を示す。図において図1ないし図3と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例ではインナーソール21及びアウターソール22の外周壁面の幅方向の外側方の部分を相互に固着し、幅方向の内側方の部分を上下動可能、即ち相互に上下方向に摺動可能に設け、エアーの注入によってアウターソール22の内側をインナーソール21から押し出すようにしている。
【0020】
図5は第3の実施形態を示す。図において図1ないし図3と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例ではインナーソール21及びアウターソール22の外周壁面の最後方の一部分を相互に固着し、前方部分を含む大部分を上下動可能、即ち相互に上下方向に摺動可能に設け、エアーの注入によってインナーソール21及びアウターソール22の前端が高くなるようにアウターソール22をインナーソール21から押し出すようにしている。
【0021】
図6は第4の実施形態を示す。図において図1ないし図3と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例ではインナーソール21及びアウターソール22の外周壁面の最前方の一部分を相互に固着し、後方部分を含む大部分を上下動可能、即ち相互に上下方向に摺動可能に設け、エアーの注入によってインナーソール21及びアウターソール22の後端が高くなるようにアウターソール22をインナーソール21から押し出すようにしている。
【0022】
図7ないし図9は第5の実施形態を示す.図において図1ないし図3と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例は足の長さを矯正するための靴底構造であって、アウターソール22の外周壁面全体をインナーソール21に対して上下動可能に嵌め合わせる一方、インナーソール21とアウターソール22の外周壁面の間に外周壁面からなる中間ソール26、27を介設している。
【0023】
足の長さを矯正する場合、注入弁23から例えばエアーを注入する。すると、インナーソール21とアウターソール22の間のバルーン24が膨張し、図9に示されるようにアウターソール22及び中間ソール26、27がインナーソール21から押し出され、図7及び図8に示されるようにインナーソール21及びアウターソール22、即ち靴底を注入したエアーの圧力に応じた高さにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る靴底構造の好ましい実施形態を示す正面図である。
【図2】上記実施形態における側面図である。
【図3】上記実施形態における断面図である。
【図4】第2の実施形態を示す正面図である。
【図5】第3の実施形態を示す側面図である。
【図6】第4の実施形態を示す側面図である。
【図7】第5の実施形態を示す正面図である。
【図8】上記実施形態における側面図である。
【図9】上記実施形態における断面図である。
【符号の説明】
【0025】
20 靴底
21 インナーソール
22 アウターソール
23 注入弁
24 バルーン
25 圧力空間
26、27 中間ソール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足の姿勢を矯正するようにした靴底構造であって、
断面が下向きの凹状をなすインナーソウルと断面が上向きの凹状をなすアウターソールとから構成され、
上記インナーソール内にはアウターソールが嵌め込まれて前後方向又は幅方向の一側方が固着され、他側方が上下動可能に設けられ、上記インナーソールとアウターソールの間には容積可変な密閉した圧力空間が形成され、該圧力空間内に圧力流体を注入して保持するための注入弁が設けられており、
上記アウターソールの底面が流体の圧力に応じた角度に傾斜されるようになしたことを特徴とする靴底構造。
【請求項2】
足の長さを矯正するようにした靴底構造であって、
断面が下向きの凹状をなすインナーソウルと断面が上向きの凹状をなすアウターソールとから構成され、
上記インナーソール内にはアウターソールが上下動可能に嵌め込まれ、上記インナーソールとアウターソールの間には容積可変な密閉した圧力空間が形成され、該圧力空間内に圧力流体を注入して保持するための注入弁が設けられており、
上記アウターソール及びインナーソールが流体の圧力に応じた高さになるようになしたことを特徴とする靴底構造。
【請求項3】
上記インナーソールの外周壁面とアウターソールの外周壁面との間には外周壁面からなる少なくとも1つの中間ソールが介設されている請求項1又は2記載の靴底構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−102043(P2006−102043A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291347(P2004−291347)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(593213401)
【出願人】(504371583)
【Fターム(参考)】