説明

靴泥落とし具

【課題】靴の底面ばかりでなく、左右の下部側面及び靴の前部周囲面に付着した多量の泥でも取り除き易く、取り除いた泥を用具上に付着し難くして、手による運搬等の取り扱いを簡単に行えるようにする。
【解決手段】網状の泥落とし用基部5と、その基部5の左右に夫々配設し、一体に結合して立ち上げた網状の左右泥落とし用側部6とを有する靴乗せ部2を、泥落とし本体にする。そして、その靴乗せ部2に脚部7を設けて台状に支持する。又、その靴乗せ部2の前端部に泥落とし用ブラシ5を固着し、その泥落とし用ブラシ5として、靴乗せ部2に乗せた靴の前部が抜き差し自在に嵌まる中央穴18を有するリング状のブラシを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長靴等に付着した泥を、履いたまま靴をこすって落とすのに好適な靴泥落とし具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工事現場での作業や農作業等をする際、雨天が続いたりすると、地面がぬかるみとなって履いている長靴等に泥が多量に付着し易い。しかし、靴に付着した泥をそのままにしておくと足が重くなって作業し難いばかりでなく、危険でもある。そこで、作業中に時々近くに生えている草等に履いたまま靴をこすり付けて泥を落とし、作業を続行している。
【0003】
又、靴の泥を建物に持ち込まないようにするため、通常は建物の入口等にマットを敷いて、そこに靴の底面に付着した泥をこすり付けて取り除いている。
【特許文献1】特開平6−167039
【特許文献2】特開平9−285438
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、マットは平面状であり靴の底面に付着した泥はこすって取り除けても、靴の左右の下部側面に付着した泥は取り除き難い。しかも、マットでは多量に付着した泥を取り除き難く、取り除いた泥がマット上に残ってしまう。又、マットは平面状であるため、全体に泥が付着し易く、手が汚れるので運搬し難く取り扱い難い。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、靴の底面ばかりでなく、左右の下部側面及び靴の前部周囲面に付着した多量の泥でも取り除き易く、取り除いた泥が用具上に付着し難くて、手による運搬等の取り扱いが簡単な靴泥落とし具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による靴泥落とし具は、網状の泥落とし用基部と、その基部の左右に夫々配設し、一体に結合して立ち上げた網状の左右泥落とし用側部とを有する靴乗せ部を、泥落とし本体にし、その靴乗せ部に脚部を設けて台状に支持する。そして、その靴乗せ部の前端部に泥落とし用ブラシを固着し、その泥落とし用ブラシとして、靴乗せ部に乗せた靴の前部が抜き差し自在に嵌まる中央穴を有するリング状のブラシを用いる。
【0007】
又、上記靴乗せ部の左右の各泥落とし用側部付近に脚部を夫々設け、その脚部をいずれも靴乗せ部に上部が結合する立ち上がり部と、その立ち上がり部の下端部と一体に結合し、大略水平方向に突出する踏み部とから構成し、その靴乗せ部より左脚部の踏み部を左方向に突設し、右脚部の踏み部を右方向に突設すると好ましくなる。
【0008】
又、上記各踏み部を夫々網状にして泥落とし用踏み部にするとよい。
又、上記網状の各泥落とし部に靴に向って突出する泥落とし用突部を夫々設けるとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明による靴泥落とし具は、靴乗せ部を網状の基部と左右側部とから構成し、その靴乗せ部に脚部を設けて台状に支持することにより、その泥落とし具を使用時に地面等に置くと、靴乗せ部を地面より高く支持できる。そして、靴乗せ部上に片方の靴を履いたまま乗せて、靴を前後動させると、網状の基部と左右側部からなる各泥落とし部に適宜こすり付けて靴の底面や左右の下部側面に付着した泥を順次こすり取り、各網目を通して落下させることができる。それ故、靴に付着した泥が多量でも取り除き易く、取り除いた泥が靴乗せ部上に付着し難く、使用後に手で持って運搬する等の取り扱いを簡単に行える。
【0010】
又、靴乗せ部の前端部に、その靴乗せ部上に乗せた靴の前部が抜き差し自在に嵌まる中央穴を有するリング状の泥落とし用ブラシを固着することにより、靴を前後動させる際に、靴の前部の周囲面を適宜ブラシ全体に配置されている対応位置にある多数の毛にこすり付けて、靴の底面、左右の下部側面、上面等に付着した泥を順次こすり取って、落下させることができる。それ故、靴の前部に付着した泥を特に良好に取り除くことができる。又、靴の方向を反対に向けて靴乗せ部上に乗せ、ブラシにこすり付けると、靴の後部に付着した泥をこすり取って、良好に取り除くことができる。
【0011】
又、靴乗せ部の左右の各泥落とし側部付近に脚部を夫々設け、その靴乗せ部より左脚部の立ち上がり部の下端部に結合した踏み部を左方向に突設し、右脚部の立ち上がり部の下端部に結合した踏み部を右方向に突設することにより、使用時に片方の靴例えば右側の靴で右踏み部を踏んで泥落とし具を強固に固定できる。そして、左側の靴を靴乗せ部上に乗せて前後動させると、泥を良好に取り除くことができる。又、左側の靴で左踏み部を踏んで泥落とし具を強固に固定した後、右側の靴を靴乗せ部上に乗せて同様にして泥を良好に取り除くことができる。
【0012】
又、左右の各踏み部を夫々網状にして泥落とし用踏み部にすることにより、その各踏み部を泥落としに使用でき、そこに夫々こすり付けると、簡単な泥落としを行える。
【0013】
又、網状の各泥落とし部に、靴に向って突出する泥落とし用突部を夫々設けることにより、靴を各泥落とし部にこすり付けた時、そこに設けられている各泥落とし用突部によって泥を簡単にこすり取ることができる。それ故、靴に付着している泥の付着力が大きくても、その泥を良好に取り除くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付の図1〜8を参照して、本発明の実施の最良形態を説明する。
図1は本発明を適用した第1実施形態による靴泥落とし具の斜視図、図2はその正面図、図3は背面図、及び図4は平面図である。この靴泥落とし具1は、泥の付着した靴を履いたまま乗せる靴乗せ部2を泥落とし本体にする。そこで、靴乗せ部2の部材として、例えば9本の縦線3と5本の横線4とが直交した長方形状の金属網を用い、その長方形金属網の中央部を基部5とし、その基部5に対し左右の各長方形状側部6(6a、6b)を夫々屈曲させて立ち上げる。すると、網状の泥落とし用基部5と、その基部5の左右に夫々配設し、一体に結合して立ち上げた網状の左右の各泥落とし用側部6とを有する靴乗せ部2を製作できる。その際、長方形状の泥落とし用基部5の寸法を、例えばその長さが大型長靴の底の長さの3分の2程で、その幅が靴底の幅より少し広くなるように設定する。なお、左右の泥落とし用側部は上部に行く程両者の間隔を若干広くして夫々傾斜させる。
【0015】
このような靴乗せ部2に左右の各脚部7(7a、7b)を夫々設け、泥落とし用基部5を水平に配置して靴乗せ部を台状に支持する。その際、左右の各脚部7を製作するため、靴乗せ部2を構成する縦横線3、4より太くて強度の大きな金属線を1本用いる。すると、その金属線を図5に示すように屈曲させて両端を結合し、靴乗せ部2を支持する支持用屈曲体8を形成できる。そこで、靴乗せ部2の前後端部を支持用屈曲体8の前後線のU字状に屈曲した広い中央部9(9a、9b)に夫々固着する。
【0016】
このようにして、靴乗せ部2の左右の各泥落とし用側部付近に脚部7を夫々設けると、その脚部7をいずれも靴乗せ部2に上部が結合し、大略垂直方向に突出する立ち上がり部10(10a、10b)と、その立ち上がり部10の下端部と一体に結合し、大略水平方向に突出する踏み部11(11a、11b)とから構成し、その靴乗せ部2より左脚部7aの踏み部11aを左方向に突設し、右脚部7bの踏み部11bを右方向に突設することができる。その際、左右の各踏み部11の左右端部12(12a、12b)を屈曲させて上方に少し立ち上げる。なお、13(13a、13b)は靴乗せ部2の左右の各泥落とし用側部6と左右の脚部7を補強するため、結合した2本の線が十文字状に交差結合する補強線である。又、14(14a、14b)は運搬時等に泥落とし具1をつまんで持ち上げるため、支持用屈曲体8の後線中央部9bの左右端最上部に夫々設けたつまみ部である。
【0017】
又、このような左右脚部7付きの靴乗せ部2に対し、その靴乗せ部2の前端部と、その前端部に結合した支持用屈曲体8の前線中央部9aとに泥落とし用ブラシ15を固着する。その際、泥落とし用ブラシ15を製作するため、例えば1本の金属製芯線16を順々に捩って多数のプラスチック製剛毛17を均等に挟んで植え付けブラシ状に形成した後、全体をリング状に屈曲させて両端を結合し、中央穴18を有するブラシにする。しかも、そのリング状ブラシ15の中央穴18を靴の前部(足の爪先側を覆う部分)がその穴内に抜き差し自在に嵌まる大きさにする。すると、靴乗せ部2の前端部等に対し、泥落とし用ブラシ15の下側部を靴乗せ部2に乗せた長靴の前部が抜き差し自在に嵌まるように、中央穴18の軸線を水平に位置決めして固着でき、靴泥落とし具1が完成する。
【0018】
使用時、靴に付着した泥を取り除くため、泥落とし具1を地面等に置く。すると、靴乗せ部2を地面より高く例えば5cm程の高さに支持できる。そこで、片方の靴、例えば図6に示すような左側の右足で履いた長靴19aで左踏み部11aを踏んで泥落とし具1を強固に固定した後、右側の左足で履いた長靴19bを靴乗せ部2上に乗せて前後動させる。すると、網状の基部5と左右側部6からなる各泥落とし部に配設した各横線4等に適宜こすり付けて長靴19bの底面や左右の下部側面に付着した泥を順次こすり取り、その泥を例えば1辺が3cmの大きな正方形状の対応位置にある各網目20を通して落下させることができる。それ故、長靴19bに付着した泥が多量でも取り除き易い。しかも、取り除いた泥が靴乗せ部2上に付着し難く、使用後につまみ部14を持って運搬する等の取り扱いを簡単に行える。
【0019】
そして、靴乗せ部2の前端部等に、泥落とし用ブラシ15が固着されているので、長靴19bを前後動させると、長靴19bの前部21の周囲面を適宜ブラシ全体に配置された対応位置にある多数の毛17にこすり付けて、長靴19bの底面、左右の下部側面、上面等に付着した泥を順次擦り取って、落下させることができる。それ故、長靴19bの前部に付着した泥を特に良好に取り除くことができる。又、右側の長靴19bで右踏み部11bを踏んで泥落とし具1を強固に固定した後、左側の長靴19aを靴乗せ部2上に乗せ、同様にして付着した泥を良好に取り除くことができる。なお、長靴19の方向を反対に向けて靴乗せ部2上に乗せ、ブラシ15にこすり付けると、長靴19の後部(足のかかと側を覆う部分)に付着した泥をこすり取って、良好に取り除くことができる。
【0020】
図7は本発明を適用した第2実施形態による靴泥落とし具の斜視図である。この靴泥落とし具22では、靴泥落とし具1に設けた左右の各踏み部11の上に、例えば4本の縦線23と3本の横線24とが直交した各長方形状の金属網25(25a、25b)を夫々追加して固着する。すると、左右の金属網25を固着した各踏み部11を夫々泥落とし用踏み部26(26a、26b)として使用でき、そこに長靴の底等を夫々こすり付けると簡単な泥落としを行える。
【0021】
図8は本発明を適用した第3実施形態による靴泥落とし具の背面図である。この泥落とし具27では、靴泥落とし具1の靴乗せ部2を構成する泥落とし用基部5と左右の各泥落とし用側部6に長靴の底面、左右の各下部側面に向って突出する泥落とし用突部28、29(29a、29b)を夫々設ける。その際、泥落とし用基部5と左右の各泥落とし用側部6の例えば各一部ずつを夫々屈曲させ、或いはほぼ全部を夫々屈曲させて、その基部5と左右の各側部6の中央に靴の前後移動方向とほぼ直交する横方向に最突出箇所を線状に夫々設けるとよい。すると、例えば長靴を靴乗せ部2に乗せて前後動させた時、泥落とし用基部5と左右の各泥落とし用側部6に設けられた各泥落とし用突部28、29によって付着した泥を一層簡単にこすり取ることができる。それ故、長靴に付着している泥の付着力が大きくても、その泥を良好に取り除くことができる。なお、靴泥落とし具22の各泥落とし用踏み部26にも靴の底面に向って突出する泥落とし用突部30(30a、30b)を夫々同様に設けることができる。
【0022】
上記実施の形態では、靴泥落とし具1、22、27に設けた靴乗せ部2と脚部11とを別部材から製作する場合について説明したが、一枚の連続した長方形状金網を用い、その金網を屈曲等させることによって靴乗せ部と脚部とを同時に一体成形することもできる。なお、この場合はつまみ部を形成後に所定箇所に固着する。
【0023】
又、上記実施の形態では長靴用の靴泥落とし具1、22、27について説明したが、短靴等の他種の靴に対しても、その靴の大きさ、形状等に対応する同様の構造を備えた靴泥落とし具を製作することができ、それを使用すると、各靴の種類に対応した良好な泥落としを行える。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用した第1実施形態による靴泥落とし具の斜視図である。
【図2】同靴泥落とし具の正面図である。
【図3】同靴泥落とし具の背面図である。
【図4】同靴泥落とし具の平面図である。
【図5】同靴泥落とし具に用いる支持用屈曲体の斜視図である。
【図6】同靴泥落とし具の使用状態を示す斜視図である。
【図7】本発明を適用した第2実施形態による靴泥落とし具の斜視図である。
【図8】本発明を適用した第3実施形態による靴泥落とし具の背面図である。
【符号の説明】
【0025】
1、22、27…靴泥落とし具 2…靴乗せ部 3、23…縦線 4、24…横線 5…泥落とし用基部 6…泥落とし用側部 7…脚部 8…支持用屈曲体 9…前後線中央部 10…立ち上がり部 11…踏み部 13…補強線 14…つまみ部 15…ブラシ 16…芯線 17…毛 18…中央穴 19…長靴 20…網目 21…長靴の前部 25…金属網 26…泥落とし用踏み部 28、29、30…泥落とし用突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
網状の泥落とし用基部と、その基部の左右に夫々配設し、一体に結合して立ち上げた網状の左右泥落とし用側部とを有する靴乗せ部を、泥落とし本体にし、その靴乗せ部に脚部を設けて台状に支持し、その靴乗せ部の前端部に泥落とし用ブラシを固着し、その泥落とし用ブラシとして、靴乗せ部に乗せた靴の前部が抜き差し自在に嵌まる中央穴を有するリング状のブラシを用いることを特徴とする靴泥落とし具。
【請求項2】
靴乗せ部の左右の各泥落とし用側部付近に脚部を夫々設け、その脚部をいずれも靴乗せ部に上部が結合する立ち上がり部と、その立ち上がり部の下端部と一体に結合し、大略水平方向に突出する踏み部とから構成し、その靴乗せ部より左脚部の踏み部を左方向に突設し、右脚部の踏み部を右方向に突設することを特徴とする請求項1記載の靴泥落とし具。
【請求項3】
左右の各踏み部を夫々網状にして泥落とし用踏み部にすることを特徴とする請求項2記載の靴泥落とし具。
【請求項4】
網状の各泥落とし部に靴に向って突出する泥落とし用突部を夫々設けることを特徴とする請求項1、2又は3記載の靴泥落とし具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−272281(P2008−272281A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−120653(P2007−120653)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【出願人】(599031238)
【Fターム(参考)】