説明

靴用ローラ

【課題】靴の踵側の部分の両側に回転自在構造の一対の遊転輪を装着できるようにした靴用ローラにおいて、遊転輪による走行時に不安定な姿勢を長時間とり続ける必要が無いようにする。
【解決手段】靴1に装着可能なフレーム11と、靴1よりも右側および左側の位置においてフレーム11に回転自在に支持された一対の遊転輪19、20と、フレーム11において遊転輪19、20から靴1の前後方向に位置をずらせて設けられた回転自在構造の補助輪24とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は靴用ローラに関する。本発明の靴用ローラは、普通の靴に装着することでこの靴をローラスケートとして使用することができる装着具の形態を有するものである。
【背景技術】
【0002】
靴の踵側の部分の両側に回転自在構造の一対の車輪を設けたローラスケートが、たとえば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−518259
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このようなローラスケートでは、靴の前後方向に沿った一箇所に設けられたローラのみによって靴およびこの靴を履いた使用者を支えることになるため、バランスをとりにくいという問題点がある。すなわち、特許文献1に記載されたローラスケートでは、踵側の部分にのみローラが設けられているため、そのローラを用いた走行時に、使用者は、靴の爪先と、靴におけるローラよりも後側の部分とを同時に走行面から離さなければならず、爪先や踵の部分が一瞬でも走行面に接地すると、大きなブレーキが掛かってしまう。このため、使用者は、ローラによる走行時に、不安定な姿勢を維持し続けなければならず、疲れやすいという問題点がある。
【0005】
そこで本発明は、このような問題点を解決して、ローラによる走行時に不安定な姿勢を長時間とり続ける必要が無いようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため本発明の靴用ローラは、靴に装着可能なフレームと、靴よりも右側および左側の位置において前記フレームに回転自在に支持された一対の遊転輪と、前記フレームにおいて前記遊転輪から靴の前後方向に位置をずらせて設けられた回転自在構造の補助輪とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明の靴用ローラによれば、補助輪は、靴の前後方向に沿った遊転輪と同じ軸線上に配置されていることが好適である。
【0008】
また本発明の靴用ローラによれば、補助輪は、靴の左右のうちの小指側に設けられていることが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、靴よりも右側および左側の位置においてフレームに回転自在に支持された一対の遊転輪と、フレームにおいて遊転輪から靴の前後方向に位置をずらせて設けられた回転自在構造の補助輪とを有するため、補助輪を走行面から浮かせることで、靴の左右両側に配置された一対の遊転輪のみによって、抵抗の少ない状態で走行することができる。補助輪を走行面に接地させた場合には、靴の前後方向に沿った2箇所で使用者を支えることになるため、使用者は、安定な姿勢で走行を行うことができる。
【0010】
本発明によれば、補助輪が靴の前後方向に沿った遊転輪と同じ軸線上に配置されていることで、あるいは、補助輪が靴の左右のうちの小指側に設けられていることで、異なる軸線上に配置されている場合や親指側に設けられている場合に比べて、靴用ローラの旋回性能すなわちコーナリング性能を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態の靴用ローラを示す図である。
【図2】同靴用ローラの立体図である。
【図3】同靴用ローラにおける補助輪の装着構造を示す図である。
【図4】同補助輪の立体図である。
【図5】同補助輪のための軸受の立体図である。
【図6】同補助輪の軸を軸受に装着するときの様子を示す図である。
【図7】同補助輪を走行面に接地させたときの状態を示す図である。
【図8】本発明の他の実施の形態の靴用ローラを示す図である。
【図9】本発明のさらに他の実施の形態の靴用ローラを示す図である。
【図10】本発明のさらに他の実施の形態の靴用ローラを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1において、1は左足用の靴である。靴1としては、スニーカーなどが好適である。図1、図2において、10は本発明の実施の形態の靴用ローラである。この靴用ローラ10において、11はフレームで、合成樹脂などによって形成されており、靴底を支持するベース部12と、靴1をベース部12に乗せたときにこの靴1の右側および左側に沿って位置する一対の側壁部13、14とを有している。また側壁部13、14に連続して、靴1の踵2の部分の側部に沿ってこの踵2の部分の側部を包み込むように配置されるカバー部15、15が形成されている。側壁部13、14どうしの間には、ゴム弾性を有するベルト16がわたされている。このベルト16により靴1の甲の部分を締付けることによって、フレーム11を靴1に固定可能である。
【0013】
側壁部13、14に対して外枠17、18が一体に形成されており、側壁部13、14と外枠17、18との間に、それぞれ遊転輪19、20が配置されている。21、21は軸で、右側の側壁部13と外枠17とに取り付けられることで、右側の遊転輪19を回転自在に支持可能であるとともに、左側の側壁部14と外枠18とに取り付けられることで、左側の遊転輪20を回転自在に支持可能である。遊転輪19、20は、フレーム11に固定された靴1の前後の方向に走行可能とされている。
【0014】
靴1をベース部12に乗せ、その踵2の部分をカバー部15、15に沿わせ、そしてベルト16によってフレーム11を靴1に固定したときに、遊転輪19、20は、靴1における踵2の部分よりもやや爪先側に位置するように構成されている。
【0015】
外枠17、18の後部には、それぞれ、一対の板材22、22にて構成されたブラケット23、23が一体に形成されている。そして、靴1の左右のうちの小指側に対応するブラケット23には、回転自在構造の補助輪24が装着されている。すなわち、ブラケット23、23はフレーム11の左右両側に形成されているが、補助輪24は、靴1の左右のうちの小指側に対応するブラケット23にのみ装着されている。つまり、図示のような左足用の靴1のために用いられる靴用ローラ10の場合はその左側のブラケット23にのみ補助輪24が装着され、図示は省略するが右足用の靴のために用いられる靴用ローラの場合はその右側のブラケットにのみ補助輪が装着される。それぞれ、反対側のブラケットには補助輪は装着されない。
【0016】
図3は、ブラケット23における補助輪24の装着部を下側から見た図である。図4に示すように、補助輪24は、輪体26と、輪体26からその両側へそれぞれ突出した車軸27とを有した構成であり、車軸27は円柱状に形成されている。図3、5、6に示すように、ブラケット23を構成するそれぞれの板材22、22には、車軸27を収容可能な軸受穴28が形成されている。軸受穴28は、板材22、22の下辺側において下向きに開口している。29は、その開口部である。この開口部29を通して車軸27を軸受穴28にはめ込むことによって、車軸27を軸受穴28に収容して支持可能である。
【0017】
開口部29および軸受穴28の内面には、開口部29から軸受穴28への車軸27のはめ込みは容易であるが、軸受穴26からの車軸27の抜け出しは困難であるような突起状のストッパ30が形成されている。ストッパ30は、たとえば、車軸27のはめ込み方向の傾斜はゆるく形成されているが抜け出し方向の傾斜はきつく形成されている突起にて形成することができる。この場合に、ブラケット23の板材22、22は、上記のようなストッパ30を機能させたはめ込み動作を良好に行わせるために、合成樹脂にて形成されていることが好適である。
【0018】
図1において、32は、遊転輪20の走行方向を表す軸線である。補助輪24は、同様に軸線32上に配置されて、遊転輪20と同方向に走行するように構成されている。
【0019】
このような構成において、図1に示すように靴1に本発明の靴用ローラ10を装着して走行面33の上を走行する場合には、使用者は、靴1の爪先3と補助輪24とを走行面33から浮かせた状態で、遊転輪19、20のみを走行面33に接地させる。これにより、靴1の爪先3や補助輪24が走行面33からの抵抗を受けずに、円滑に走行することができる。ただし、靴1の前後方向に沿った1箇所の位置のみが遊転輪19、20によって接地した状態で走行するので、安定性は良好であるとはいい難い。安定な状態で走行したい場合には、図7に示すように、遊転輪19、20のみならず補助輪24をも接地させる。すると、靴1の前後方向に沿った2箇所の位置で接地することになるとともに、両方の遊転輪19、20と補助輪24との3点で接地することになるため、接地安定性を格段に向上させることができる。
【0020】
走行時には、直進のほかに、旋回を行うことが多い。このとき、図1に示すように、補助輪24は、その走行方向の軸線32が遊転輪20の走行方向の軸線32と一致するため、すなわち、補助輪24は、フレーム11の幅方向に沿って遊転輪20と同じ位置に配置されているため、異なる位置に配置されている場合に比べて、旋回状態の走行すなわちコーナリングを、良好に行うことができる。また、補助輪24が、靴1の左右のうちの小指側に対応する片側のブラケット23にのみ装着されていることによっても、両側のブラケット23、23に共に装着されていることで4輪が接地する場合に比べて、旋回性能すなわちコーナリング性能を良好にすることができる。
【0021】
なお、補助輪24は一般的には上述のように靴1の左右のうちの小指側に対応するブラケット23にのみ装着されることが好ましいが、反対に親指側のブラケット23にのみ装着することもできる。
【0022】
反対に、旋回性よりはむしろ安定性を重視する場合には、図8に示すように両方のブラケット23、23に補助輪24、24を装着することも可能である。
【0023】
上述のようにフレーム11の両側にブラケット23、23を形成したものであると、いずれのブラケットに補助輪24を装着するかによって、その靴用ローラ10を右足用と左足用とのいずれにも使用することができる。反対に右足と左足とにそれぞれ特化した靴用ローラ10を構成する場合には、図9に示すように、フレームにおける補助輪24を設置する側にのみブラケット23を形成することもできる。
【0024】
図10は、フレーム11の中心部に補助輪24を配置した例を示す。ここでは、たとえばフレームに11における両方のカバー部15、15から後方に延長するようにブラケット23Aを一体に形成して、補助輪24を支持することができる。この場合は、補助輪24がフレーム11の中心部に位置することから、一対の遊転輪19、20と補助輪24とによる3点の接地点を二等辺三角形の頂点の位置に配置することができるため、より安定性を向上させることができる。ただし、図1〜7、9に示されるものの方が旋回性能にすぐれている。
【0025】
上記においては、補助輪24が遊転輪19、20よりも後側に位置したものについて説明したが、前側に位置した構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0026】
11 フレーム
19 遊転輪
20 遊転輪
24 補助輪
32 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴に装着可能なフレームと、
靴よりも右側および左側の位置において前記フレームに回転自在に支持された一対の遊転輪と、
前記フレームにおいて前記遊転輪から靴の前後方向に位置をずらせて設けられた回転自在構造の補助輪と、
を有することを特徴とする靴用ローラ。
【請求項2】
補助輪は、靴の前後方向に沿った遊転輪と同じ軸線上に配置されていることを特徴とする請求項1記載の靴用ローラ。
【請求項3】
補助輪は、靴の左右のうちの小指側に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の靴用ローラ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−100951(P2012−100951A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253333(P2010−253333)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(500514579)ジェイディジャパン株式会社 (20)