説明

【課題】面ファスナで着脱できる靴底を有する靴において、交換用靴底と面ファスナの取り付け状態が維持できる靴を提供する。
【解決手段】本発明に係る靴は、面ファスナ8,51によって靴底50が靴本体5に対して着脱可能に構成されている。靴底50は、取り付けベース53に面ファスナ51を有するシート部材51bを縫着し、取り付けベース53に底部55を取り付けた構造となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴本体に面ファスナで靴底が着脱可能な靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、面ファスナで靴底を着脱し、靴底がすり減った場合など、これを交換可能にした靴が知られている。このようなタイプの靴は、例えば、釣りなどアウトドア用に適した構造にする場合、交換用の靴底をフエルトなどの部材で形成し、これを靴本体の底面に対して面ファスナによって着脱可能にしている。
【0003】
例えば、特許文献1には、靴本体の底面と交換用の靴底の上面に、互いに着脱可能に係合する面ファスナを設けた靴が開示されている。この靴では、互いに係合する雄、雌の面ファスナは、靴本体の底面と交換用の靴底の上面に夫々接着剤で貼り付けられている。
【特許文献1】実開平4−81501号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したフエルトなどによって形成される交換用の靴底は、地面に応じて適度に歪んで滑りを防止するが、面ファスナを接着する接着剤が硬化すると、靴底の歪みの繰り返しで徐々に曲げ癖が付き、接着強度が低下するという問題がある。しかも、靴底の内、歪みの大きい靴底周辺から靴底がすり減って薄くなってくると靴底周辺の面ファスナが靴底から浮き上がったりめくれたりして歩行が不快になってしまう。
【0005】
このため、面ファスナで着脱できる靴底を有する靴では、これらの浮き上がりやめくれを防止し、交換用靴底と面ファスナの取り付け状態が維持できる構造であることが望ましい。
【0006】
本発明は、上記した問題に基づいてなされたものであり、面ファスナで着脱できる靴底を有する靴において、交換用靴底と面ファスナの取り付け状態が維持できる靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る靴は、面ファスナで靴底が着脱可能に構成されており、前記靴底は、取り付けベースに面ファスナを有するシート部材を縫着し、前記取り付けベースに底部を取り付けたことを特徴とする。
【0008】
上記した構成の靴では、靴本体に対して交換可能な靴底は、取り付けベースに面ファスナを有するシート部材を縫着している。このように、面ファスナを縫着によって固定することで、接合強度の向上が図れて面ファスナの取り付け状態が長期に亘って維持できると共に、ある程度の靴底の歪みが許容されるようになり、履き心地が低下することもない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、面ファスナによって着脱できる靴底を有する靴において、靴底と面ファスナの取り付け状態が維持できる靴が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る靴の実施形態について説明する。
図1から図4は、本発明に係る靴の一実施形態を示す図であり、図1は断面図、図2は図1に示す靴において、靴底を取り外した状態を示す断面図、図3はつま先部分における拡大断面図、そして、図4は靴底の構成を示す斜視図である。
【0011】
本実施形態に係る靴1は、靴本体5と、この靴本体5に対して着脱可能な靴底50とを備えている。
前記靴本体5は、差込み口6aから差し入れられた足を囲繞する胴部6と、その底部側に取り付けられた中底7とを有しており、中底7は、その底部側が着脱可能な靴底50の取り付け部となっている。前記中底7の裏面には、面ファスナ(雄)8が設けられており、かつその周囲には、靴底50の取り付け部を囲むように周壁7aが垂下するように形成されている。
【0012】
前記中底7の裏面に設けられる靴本体側の面ファスナ(雄)8は、多数のフック状係止部を有するファスナ部(雄)8aが、中底7と略同形状に形成されたシート部材8bに形成された構成となっており、このシート部材8bは、中底7の裏面側に、例えば接着剤等によって接着されている。図3では、接着剤による接着層を符号10で示してある。
【0013】
一方、靴本体5に対して着脱可能な靴底50は、前記面ファスナ(雄)8と係合される面ファスナ(雌)51を備えている。面ファスナ(雌)51は、多数のループ状係止部を有するファスナ部(雌)51aが、前記中底7および取り付けベース53と略同形状に形成されたシート部材51bに形成された構成となっており、このシート部材51bは、靴底に略合致する形状の板状の取り付けベース53の上面側に、縫着かつ接着によって貼着されている。図3では、接着剤による接着層を符号60で示してある。
【0014】
そして、面ファスナ(雌)51を具備するシート部材51bは、つま先側と踵側において、図4に示すように、取り付けベース53の周辺に沿ってナイロン等の合成樹脂繊維の糸(縫着糸)Sによって縫着されている。
【0015】
本実施形態では、前記取り付けベース53は、フエルトで形成されており(ただし、合成樹脂やゴムで形成しても良い)、面ファスナ(雌)51を取り付けた縫着糸Sは、取り付けベース53を貫通して取り付けベース53の底部側に露出するように縫着されている。
【0016】
フエルトの底部に接着剤のみで面ファスナを貼着した場合に比べ、このように、面ファスナ(雌)51を縫着によって固定することで、接着層60による接合に加えて接合強度の向上が図れる。また、面ファスナ51と取り付けベース53の周辺が縫着されると、すり減って薄くなり大きく歪むようになった靴底50においても縫着糸Sがその歪みに応じて緊張状態が変化して接合を維持するため、靴底50周辺の面ファスナ(雌)51のめくれはこの縫着した部分で阻止されて面ファスナの取り付け状態が長期に亘って維持でき、ある程度の靴底の歪みが許容されるようになり、履き心地の低下が防止できるようになる。また、縫着糸Sを、取り付けベース53に貫通するように取り付けることで、取り付け強度を向上することが可能となる。なお、取り付けベース53には、縫着糸Sが現れる部分に、予め凹部53aを形成しておくか、縫着による縫着糸Sの緊張により取り付けベース53が変形して凹部53aが形成されることが好ましく、縫着糸Sは、縫着された状態で凹部53a内に納まっている。このように、凹部53aを形成して縫着糸Sを位置させることで、縫着糸Sの表面側が露出することが無くなって、切れることを防止することができ、更には、凹部53a内から縫着糸Sによる挿通孔53b内に、後述するゴム弾性材料が流入し易くなって、縫着状態を強固にすることが可能になる。
【0017】
そして、上記したように、面ファスナ(雌)51が取り付けられた取り付けベース53は、底部55の上面側に取り付けられている。
【0018】
本実施形態の底部55は、合成樹脂の繊維や天然繊維などの繊維の集合体を加圧して繊維がランダムに絡み合って板状に形成したフエルトで構成されている。もちろん、底部55は、それ以外の材料、例えば、ゴム・合成樹脂によって形成されていても良いし、さらに滑り止めの効果が向上するように、スパイクなどが取着されていても良い。
【0019】
また、本実施形態では、底部55の上面側にゴム弾性層57を介在させて前記取り付けベース53が貼着されている。この場合、ゴム弾性層57は、天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性エラストマーなどのゴム弾性を示す高分子化合物で形成されており、その上面側及び底面側において、前記フエルトで形成された取り付けベース53と底部55の繊維間に含浸された状態とされている(繊維間に含浸した部分を符号Aで示す)。このように、ゴム弾性層57の取り付けベース53と底部55の繊維間に含浸された部分は、図3に示すように不規則な凹凸状となり、その凹凸内部にフエルトの繊維を取込んで保持しているため、ゴム弾性層57と、取り付けベース53及び底部55とは、その境界部分において剥がれが効果的に防止された状態となる。
【0020】
そして、ゴム弾性層57を介して取り付けベース53と底部55が貼着されると、取り付けベース53の底面側に現れた縫着糸Sが底部55によって覆われるため、底部55の設地面55aに縫着糸が現れることはなく、ほつれが防止された状態で取り付けベース53に面ファスナ(雌)51が確実に保持される。また、面ファスナ(雌)51は、縫着糸Sで取り付けベース53に縫着されているほかに、接着剤による接着層60を有しているため、取り付けベース53と面ファスナ(雌)51の対向する面同士が効果的に貼着されている。従って、靴底50の周辺がすり減って歪みが大きくなり、取り付けベース53と面ファスナ(雌)51の接合強度が低下しても、縫着した部分によって靴底50の中央側に及ぶことが防止される。
【0021】
取り付けベース53がフエルトで構成されていると縫着糸Sの緊張状態に応じて変形するため、縫着糸Sの切断が防止でき、また、取り付けベース53と底部55が同種の材料(フエルト)であるため、互いの柔軟性が損なわれることなく、靴底の歪みが維持される。さらに、取り付けベース53の底部側に現れた縫着糸Sがゴム弾性層57で覆われ、このゴム弾性層は、取り付けベース53の底部側の凹部53a内や挿通孔53b内にも侵入しているため、縫着糸が保護され、糸切れが防止される。
【0022】
上記した面ファスナ(雌)51が取り付けられた取り付けベース53が底部55に貼着されるときは、例えば、両者間にシート状に形成したゴム、合成樹脂からなるゴム弾性層形成用材料を介在し、加熱及び押圧して溶融させて両者間に含浸せしめた後、常温に放置するか冷却することで固化される。このように、取り付けベース53と底部55は、ゴム弾性層57を介して取り付けられているため、従来の接着剤で接着した構成と比較して、靴底の歪みを規制するようなことはない。また、硬化した接着剤と異なってゴム弾性を有しているため、接合部が長持ちするようになる。
【0023】
以上のように構成された中底7の(靴本体側の)面ファスナ(雄)8に対し、靴底側の面ファスナ(雌)51が着脱可能に係合することで、交換可能な靴底50は中底7の周囲に垂下した周壁7aで囲まれた取り付け部分に納まる。そして、底部55がすり減ったときなどに、靴底50の交換が行われる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。例えば、取り付けベース53と底部55は、ゴム弾性層ではなく、接着剤によって取着されていても良いし、一体形成されていても良い。また、面ファスナ(雌)51のシート部材51bは、縫着糸Sによって取り付けベース53に貼着され、両者の間には、接着剤による接着層60が設けられているが、この接着層60を形成する接着剤は溶剤の揮発で硬化するものや熱で溶かして接着し常温で固化するものなど、その他様々なものを用いることができる。さらに、面ファスナ8,51については、靴本体側を雌型とし、靴底側を雄型にしても良い。また、面ファスナ(雌)51と取り付けベース53は、少なくともつま先や踵の周辺を縫着するが、靴底50の周辺を全周にわたって縫着しても良いし、周辺のみではなく、中央側も縫着すると、更に両者の接合状態を確実に維持できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る靴の一実施形態を示す断面図。
【図2】図1に示す靴において、靴底を取り外した状態を示す断面図。
【図3】つま先部分における拡大断面図。
【図4】靴底の構成を示す斜視図。
【符号の説明】
【0026】
1 靴
5 靴本体
7 中底
8 面ファスナ(雄)
50 靴底
51 面ファスナ(雌)
51b シート部材
53 取り付けベース
55 底部
57 ゴム弾性層
S 縫着糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面ファスナで靴底が着脱可能な靴において、
前記靴底は、取り付けベースに面ファスナを有するシート部材を縫着し、前記取り付けベースに底部を取り付けたことを特徴とする靴。
【請求項2】
前記取り付けベースに面ファスナを有するシート部材を縫着した糸は、前記取り付けベースを貫通していることを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項3】
前記取り付けベースと底部は、ゴム弾性層を介して取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の靴。
【請求項4】
前記取り付けベースの糸を挿通させる挿通孔に、前記ゴム弾性層の一部が入り込んでいることを特徴とする請求項3に記載の靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−161276(P2008−161276A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351509(P2006−351509)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】