説明

鞄及び鞄生地の補強方法

【課題】織物生地を解けにくくし、鞄生地を補強した鞄を提供する。
【解決手段】本発明の鞄1は、第一織物生地2の面上に、経糸を、第一織物生地2の経糸方向に対して斜め方向に重ね合わせて縫製した第二織物生地3を備えたことを特徴とし、例えば、第一織物生地2からなる、収納部を有する本体部4を形成し、第二織物生地3からなる、本体部4の面上に縫製した補強部材5を備えたものとすることができる。鞄1は、第一織物生地2又は第二織物生地3のどちらかの経糸又は緯糸には斜め方向に力が作用するため、織物生地が解けにくくなり、鞄生地が補強されたものになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞄に関し、より詳しくは、織物生地を補強した鞄に関する。
【背景技術】
【0002】
綿等の織物などから形成した鞄がある。織物9は、図5に示すように、経糸91と緯糸92とを織り込んで形成するものであるが、解けやすいという問題があった。特に、持ち手の縫い目などには力が作用するため、この部分から解けることが多く、その部分が裂け目になったり、孔が空いたりして使用できなくなることがあった。そこで、生地の強度を持たせるために、表裏両面を構成する織物生地を相互に接着した鞄の生地が開発されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−52307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のように織物生地を二重にして接着することにより、強度を増すことはできるが、コスト的には高くなるものである。
織物9は、図5に示すように、例えば、緯糸92に対して垂直方向(矢印Xの方向)に力が作用すると解けやすいものであるが、斜め方向(矢印Yの方向)に力が作用しても、比較的解けにくいものである。経糸91も同様である。本発明者は、この点から知見を得て、簡便な方法で織物生地を解けにくくし、補強する方法を見出した。
【0005】
そこで、本発明の目的は、織物生地を解けにくくし、補強した鞄を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の鞄は、第一織物生地の面上に、経糸を、第一織物生地の経糸方向に対して斜め方向に重ね合わせて縫製した第二織物生地を備えたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明の鞄は、第二織物生地を、第一織物生地の面上に、それらの経糸が相違する方向になるように重ね合わせることにより、第一織物生地又は第二織物生地のどちらかの経糸又は緯糸には斜め方向に力が作用するため、織物生地が解けにくくなり、鞄生地が補強される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態の鞄を示した部分拡大斜視図である。
【図2】本発明の第一織物生地と第二織物生地とを重ね合わせる方法の一例を模式的に示した斜視図である。
【図3】本発明の第一織物生地と第二織物生地との重ね合わせ部分に力が作用した場合を説明するための図である。
【図4】本発明の他の実施形態の鞄を示した背面図である。
【図5】従来の織物生地の一例を示した部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の鞄を、一実施形態に基づいて説明する。
【0010】
本発明の一実施形態の鞄1は、第一織物生地2の面上に、経糸が、第一織物生地2の経糸方向に対して斜め方向になるように重ね合わせて縫製した第二織物生地3を備えたことを特徴とするものであり、例えば、図1に示すように、第一織物生地2からなる本体部4と、本体部4の面上に縫製した、第二織物生地3からなる補強部材5とを、備えたものとすることができる。
鞄1は、手提げ鞄や肩掛け鞄(ショルダーバッグ)などとして用いることができる。
本体部4は、身頃や襠から形成した袋状の収納部を有してなり、上襠部分にファスナー41により開閉可能な開口部42を設けてある。
補強部材5は、本体部4の身頃と略同高さの縦長矩形状に形成してあり、身頃の左右に配し、身頃の面上に重ね合わせ、周囲を縫い糸6で縫製して取り付けてある。重ね合わせる際には、図2に模式的に示すように、第一織物生地2(本体部4)の経糸に対して第二織物生地3(補強部材5)の経糸が斜め方向になるように重ね合わせる。この角度は40°〜50°、特に45°程度が好適である。
【0011】
生地2,生地3は、特に限定するものではないが、綿、絹、ウール、麻、ナイロン等からなる化学繊維などを原料糸とすることができ、平織り、綾織り、しゅす織りなどの織り方とすることができる。
【0012】
生地2と生地3とに用いる織物は、同じものでも相違するものでもよい。
【0013】
補強部材5の上方寄りの面上には、ロの字状の金具を備えた取付部7が設けてある。取付部7は、金具の一辺に縦長長方形状の生地を二つ折りにして巻き付け、その端部を下方に向けて補強部材5の面上に配し、横方向に上下二列に縫い糸8で縫製して取り付けてある。この縫製は、縫い糸8が、第二織物生地3及び第一織物生地2を貫通するように縫製するのが好適である。取付部7には、持ち手や肩紐を取付けることができる。
【0014】
鞄1は、第一織物生地2(本体部4)と第二織物生地3(補強部材5)とを、図1の拡大部分で示すように、生地2の経糸に対して生地3の経糸が斜め方向になり、縫い糸6で縫製してある。このため、図3に模式的に示すように、縫い糸6が、矢印Aの方向に牽かれた場合、第一織物生地2の経糸に対しては垂直方向に力が作用するが、第二織物生地3の経糸又は緯糸に対しては、斜め方向に力が作用する。このため、第二織物生地3が解けにくく作用するため、第一織物生地2も解けにくくなる。
また、縫い糸6が、矢印Bの方向に牽かれた場合、第二織物生地3の経糸に対しては垂直方向に力が作用するが、第一織物生地2の経糸又は緯糸に対しては、斜め方向に力が作用する。このため、第一織物生地2が解けにくく作用するため、第二織物生地3も解けにくくなり、この部分の鞄生地が解けにくくなる。
【0015】
また、鞄1は、取付部7の縫い糸8も、第一織物生地2(本体部4)と第二織物生地3(補強部材5)とを貫通するように縫製してあるので、縫い糸8に力が作用しても、上記と同様に、第一織物生地2又は第二織物生地3のどちらかが解けにくく作用し、この部分の鞄生地が解けにくくなる。
【0016】
このように鞄1は、第一織物生地2の面上に、経糸が、第一織物生地2の経糸方向に対して斜め方向になるように重ね合わせて第二織物生地3を縫製したことにより、第一織物生地2又は第二織物生地3のどちらかの経糸又は緯糸には斜め方向に力が作用するため、織物生地が解けにくくなり、鞄生地が補強されたものとなる。
【0017】
上記実施形態の鞄1では、取付部7を設け、持ち手又は肩紐を取付可能にしてあるが、補強部材5を上方に延長し、それを持ち手又は肩紐に形成した形態とすることもできる。
【0018】
また、上記実施形態の鞄1では、手持ち鞄、肩掛け鞄などに適用できるが、本発明は、他の鞄にも応用することができる。例えば、図4に示すように、背負い鞄の持ち手91の取付部分や肩ベルト92の取付部分、金具等の取付部93など力が作用する部分に適用することができ、その他にも、鞄の纏め部分などにも応用することができる。
【0019】
上記実施形態の構成態様は、本発明を限定するものとして挙げたものではなく、技術目的を共通にするかぎり変更は可能であり、本発明はそのような変更を含むものである。
【符号の説明】
【0020】
1鞄 2第一織物生地 3第二織物生地 4本体部 5補強部材 6縫い糸 7取付部 8縫い糸 91持ち手 92肩ベルト 93取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一織物生地の面上に、経糸を、第一織物生地の経糸方向に対して斜め方向に重ね合わせて縫製した第二織物生地を備えた鞄。
【請求項2】
第一織物生地からなる、収納部を有する本体部と、第二織物生地からなる、本体部の面上に縫製した補強部材とを、備えた請求項1に記載の鞄。
【請求項3】
第一織物生地の経糸方向に対して第二織物生地の経糸方向を40°〜50°とした請求項1又は2に記載の鞄。
【請求項4】
補強部材の面上に、持ち手又は肩紐の取付部を、第一織物生地及び第二織物生地を貫通するように縫製した請求項2に記載の鞄。
【請求項5】
第一織物生地の面上に、第二織物生地を、その経糸が、第一織物生地の経糸方向に対して斜め方向に重ね合わせて縫製する鞄生地の補強方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−165917(P2012−165917A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30051(P2011−30051)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(500067330)株式会社マルヨシ (16)
【Fターム(参考)】