説明

鞄用車輪

【課題】構造が非常に簡単で、しかも鞄の重量が車輪にかかったときの衝撃の吸収を二段階的に行うものとすることにより、衝撃吸収性に優れ、車輪を転動させたときにも大きな音が発生することなく、静粛性に優れた鞄用車輪を提供する。
【解決手段】硬質の材料からなる環状の主体1と、この主体1に装着される軟質の材料からなるリング部2とを備えたものとし、前記主体1の中央に軸穴3を有すると共にこの主体1の外側部の両端に内側部を取り囲むように垂直な周壁4を設けたものとし、前記リング部2の内周中央部を凸状に隆起させた第一緩衝部2aとし、リング部2の外側部の両端を第二緩衝部2bとし、前記主体1とリング部2とを結合したとき、前記リング部2の第一緩衝部2aが主体1の外側部の両周壁4間に保持され、前記リング部2の第二緩衝部2bが主体1の外側部の両周壁4の頂部4aとの間に隙間Sを開けて、前記両周壁2に外方に配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手に持ったり、あるいはショルダーベルトで肩に掛けたりするには重たい鞄などに使用される鞄用車輪に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の鞄用車輪としては、例えば図6、7に示したように、硬質の材料からなる環状の主体11と、軟質の材料からなるリング部12とからなるものとしている。主体11の中央には軸穴13を有しており、この主体11の外環は平らでなくでこぼこな面14を有し、主体11を型に入れたあと軟質のプラスチックを注入して主体11の外縁を覆わせて軟質のリング部12が形成されるようにしている。そして、前記リング部12が形成されるときに、でこぼこな面14と結び合わされるために、リング部12と主体11との結合状態の安定性が増大するとしている。
【0003】
さらに、この種の鞄用車輪としては、例えば図8〜10に示したように、硬質の材料からなる環状の主体21と、この主体21の外縁部に軟質のリング部22とを備えたものとしている。主体21は、外縁部の両側の近傍または両端に対し垂直な所定の高さの支柱23を複数有しており、これら支柱23の間には所定の幅のリング溝24および所定の幅の間隔溝25が設けられている。そして、前記主体21の外縁部とリング部22とが結合されるとき、前記リング部22のプラスチック部は、前記リング溝24にはめ込まれ、前記支柱23と結合するとしている。そのため、前記支柱23は前記リング部22が圧迫されるとき、すなわち鞄の重量がリング部22にかかったとき、このリング部22が両側に広がることを防止するとしている。また、主体21の外縁の車輪が地面に接触する位置と対応するリング溝24は、所定の厚さで所定の弾力性を有するように前記プラスチック部が充填されているものとしている(特許文献1)。
【特許文献1】登録実用新案第3072344号公報(図1〜3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図6、7に示した従来の車輪では、軟質のリング部12は車輪が動くときに優れた弾性を有しているが、主体11からリング部12が外れるのを防止するためにリング部12はかなり薄くなっており、主体11はでこぼこな面14だけでリング部12と接合しているため、このような薄いリング部12は車輪が動くときの弾性および静粛性に乏しいという問題点を有していた。
【0005】
さらに、図8〜10に示した従来の車輪では、主体21の外縁の車輪が地面に接触する位置と対応するリング溝24は、軟質のプラスチック部で満たされているために、車輪は優れた弾性を有し、静かに車輪が動き、車輪を鞄に付けたとき比較的大きい騒音を出さないものとなる。しかし、前記主体21は、外縁部の両側の近傍または両端に対し垂直な所定の高さの支柱23を有し、前記支柱23の間には所定の幅のリング溝24および所定の幅の間隔溝25が設けられているため、構造が非常に複雑なものとなるという問題点を有していた。さらに、軟質のリング部22による車輪が地面に接触するときの衝撃の吸収は、一段階的にしか行われないので、衝撃の吸収が不充分であり、弾性および静粛性に欠ける場合もあるという問題点を有していた。
【0006】
そこで、この発明は、上記従来の問題点を解決するものであり、構造が非常に簡単で、しかも鞄の重量が車輪にかかったときの衝撃の吸収を二段階的に行うものとすることにより、衝撃吸収性に優れ、車輪を転動させたときにも大きな音が発生することなく、静粛性に優れた鞄用車輪を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため、この発明の鞄用車輪は、硬質の材料からなる環状の主体1と、この主体1に装着される軟質の材料からなるリング部2とを備えたものとし、前記主体1の中央に軸穴3を有すると共にこの主体1の外側部の両端に内側部を取り囲むように垂直な周壁4を設けたものとし、前記リング部2の内周中央部を凸状に隆起させた第一緩衝部2aとし、リング部2の外側部の両端を第二緩衝部2bとし、前記主体1とリング部2とを結合したとき、前記リング部2の第一緩衝部2aが主体1の外側部の両周壁4間に保持され、前記リング部2の第二緩衝部2bが主体1の外側部の両周壁4の頂部4aとの間に隙間Sを開けて、前記両周壁2に外方に配置したものとしている。
【0008】
さらに、この発明の鞄用車輪は、前記主体1を合成樹脂からなるものとし、リング部2をゴム弾性を有するものとしている。
【0009】
また、この発明の鞄用車輪は、前記主体1にリング部2を嵌め込むことにより、主体1とリング部2とを結合したものとしている。
【0010】
さらに、この発明の鞄用車輪は、前記主体1の上からリング部2を樹脂成形することにより、主体1とリング部2とを結合したものとしている。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、以上に述べたように構成されているため、構造が非常に簡単なものとなり、しかも鞄の重量が車輪にかかったときの衝撃の吸収が、前記リング部2の第一緩衝部2aと第二緩衝部2bによって、二段階的に行われるので、衝撃吸収性に優れたものとなると共に、車輪を転動させたときにも大きな音が発生することなく、静粛性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
この発明の鞄用車輪は、図1に示したような、硬質の材料からなる環状の主体1と、図2に示したように、この主体1に装着される軟質の材料からなるリング部2とを備えたものとしている。
【0014】
前記主体1は、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ナイロン等の合成樹脂などの硬質の材料からなるものとしており、主体1の中央には軸穴3を有するものとしている。さらに、主体1の外側部の両端には、内側部を取り囲むように垂直な周壁4を設けたものとしている。
【0015】
前記リング部2は、例えば、天然ゴム、ウレタンゴムなどの各種合成ゴム、再生ゴム等のゴム弾性を有する軟質の材料からなるものとしており、内周中央部を凸状に隆起させた第一緩衝部2aとし、外側部の両端を第二緩衝部2bとしている。
【0016】
そして、この発明の鞄用車輪は、前記主体1とリング部2とを結合したとき、前記リング部2の第一緩衝部2aが主体1の外側部の両周壁4間に保持され、前記リング部2の第二緩衝部2bが主体1の外側部の両周壁4の頂部4aとの間に隙間Sを開けて、前記両周壁2の外方に配置したものとしている。
【0017】
前記主体1とリング部2とを結合するには、主体1にリング部2を嵌め込んだり、主体1を成形型に入れたあと、溶融した合成樹脂を注入して、主体1の上からリング部2を樹脂成形したものとすればよい。なお、主体1の上からリング部2を樹脂成形する場合には、主体1の両周壁4の側面に適宜間隔を開けて複数個の通孔5を設けておき、これら通孔5に合成樹脂を流れ込ませて固めれば、この固まった部分が止着部となって、主体1からリング部2が外れ難いものとなり好ましい。
【0018】
前記隙間Sは、リング部2の材質や、リング部2の第一緩衝部2aの厚さtなどによっても相違するが、鞄の重量が車輪にかかったとき、前記厚みtが1/2以下に圧迫される前に閉じるように設定されたものとするのが好ましい。
【0019】
このように構成されたこの発明の鞄用車輪は、鞄の底部などに取り付けられ、車輪が圧迫されるとき、すなわち鞄の重量が車輪にかかったとき、リング部2の第一緩衝部2aと第二緩衝部2bが、次のように作用することになる。
【0020】
先ず、鞄の重量が車輪にかかったとき、リング部2の第一緩衝部2aが接地面Pに圧迫され、縮小して衝撃を吸収する。
【0021】
さらに、前記リング部2の第一緩衝部2aが縮小することにより、図5に示したように、接地面P側の隙間Sが閉じて第二緩衝部2bが主体1の周壁4の頂部4aに圧迫され、さらに縮小して衝撃を吸収する。この場合、リング部2の第一緩衝部2aの厚みtが1/2以下に圧迫される前に前記隙間Sが閉じ、第二緩衝部2bが作用するので、この第二緩衝部2bでも充分に衝撃が吸収されることになる。
【0022】
したがって、この発明の鞄用車輪は、鞄の重量が車輪にかかったときの衝撃の吸収が、前記リング部2の第一緩衝部2aと第二緩衝部2bによって、二段階的に行われるので、衝撃吸収性に優れたものとなると共に、車輪を転動させたときにも大きな音が発生することなく静粛性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の鞄用車輪の主体を示す斜視図である。
【図2】この発明の鞄用車輪の主体にリング部を結合させた状態を示す斜視図である。
【図3】図2中のA−A線で切断した断面図である。
【図4】図2中のB−B線で切断した断面図である。
【図5】鞄の重量が車輪にかかったときの車輪が圧迫されている状態を示す断面図である。
【図6】従来の鞄用車輪の主体の一例を示す斜視図である。
【図7】図6に示す鞄用車輪の主体にリング部を結合させた状態を示す断面図である。
【図8】従来の鞄用車輪の主体の他の例を示す斜視図である。
【図9】図8に示す鞄用車輪の主体にリング部を結合させた状態を示す斜視図である。
【図10】図9中のC−C線で切断した断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 主体
2 リング部
2a 第一緩衝部
2b 第二緩衝部
3 軸穴
4 周壁
4a 頂部
S 隙間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質の材料からなる環状の主体(1)と、この主体(1)に装着される軟質の材料からなるリング部(2)とを備えたものとし、前記主体(1)の中央に軸穴(3)を有すると共にこの主体(1)の外側部の両端に内側部を取り囲むように垂直な周壁(4)を設けたものとし、前記リング部(2)の内周中央部を凸状に隆起させた第一緩衝部(2a)とし、リング部(2)の外側部の両端を第二緩衝部(2b)とし、前記主体(1)とリング部(2)とを結合したとき、前記リング部(2)の第一緩衝部(2a)が主体(1)の外側部の両周壁(4)間に保持され、前記リング部(2)の第二緩衝部(2b)が主体(1)の外側部の両周壁(4)の頂部(4a)との間に隙間(S)を開けて、前記両周壁(2)に外方に配置したことを特徴とする鞄用車輪。
【請求項2】
前記主体(1)を合成樹脂からなるものとし、リング部(2)をゴム弾性を有するものとしたことを特徴とする請求項1記載の鞄用車輪。
【請求項3】
前記主体(1)にリング部(2)を嵌め込むことにより、主体(1)とリング部(2)とを結合したものとしたことを特徴とする請求項1または2記載の鞄用車輪。
【請求項4】
前記主体(1)の上からリング部(2)を樹脂成形することにより、主体(1)とリング部(2)とを結合したものとしたことを特徴とする請求項1または2記載の鞄用車輪。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate