説明

鞍乗り型車両の外装カバー

【課題】鞍乗り型車両の外装カバーにおいて、外装カバーの外観面のヒケの発生を防止し、外観性を向上する。
【解決手段】複数の樹脂部材を一体化して形成される鞍乗り型車両の外装カバーにおいて、シュラウド37は、複数の樹脂部材の内、前カバー部60及び後カバー部70が重なる重なり部83を有してインサート成形され、シュラウド37は、重なり部83において外観面側を構成する前カバー部60と、重なり部83において前カバー部60に重ねられて非外観面側を構成する後カバー部70とを有し、後カバー部70には、非外観面側で延びるリブ82が設けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両の外装カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鞍乗り型車両において、樹脂製の外装カバーであるラジエーターシュラウドによって、ラジエーターを側方から覆うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のラジエーターシュラウドでは、ラジエーターシュラウドの内側面に当て座としてリブを設け、このリブをラジエーターの外側面に当接させることでラジエーターシュラウドを係止することが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−190141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の鞍乗り型車両のラジエーターシュラウドでは、上記リブを補強部材や当て座として利用するためには、リブの高さや肉厚をある程度大きくする必要があり、リブの根元の肉厚は厚くなる傾向がある。しかし、リブの根元の肉厚が大きくなることで、外装カバーであるラジエーターシュラウドの外観面にヒケが発生し、外観性が低下してしまうという課題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、鞍乗り型車両の外装カバーにおいて、外装カバーの外観面のヒケの発生を防止し、外観性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、複数の樹脂部材(60,70)を一体化して形成される鞍乗り型車両の外装カバーにおいて、前記外装カバー(37)は、複数の樹脂部材の内、少なくとも2つの樹脂部材(60,70)が重なる重なり部(83)を有してインサート成形または多色成形され、前記外装カバー(37)は、前記重なり部(83)において外観面側を構成する第1樹脂部材(60)と、前記重なり部(83)において第1樹脂部材(60)に重ねられて非外観面側を構成する第2樹脂部材(70)とを有し、前記第2樹脂部材(70)には、前記非外観面側で延びるリブ(82)が設けられたことを特徴とする。
この構成によれば、外装カバーは、複数の樹脂部材の内、少なくとも2つの樹脂部材が重なる重なり部を有してインサート成形または多色成形され、重なり部において外観面側を構成する第1樹脂部材と、重なり部において第1樹脂部材に重ねられて非外観面側を構成する第2樹脂部材とを有し、第2樹脂部材には、非外観面側で延びるリブが設けられ、非外観面側を構成する第2樹脂部材のリブのヒケは、外観面側を構成する第1樹脂部材に重なって隠されるため、外観面にヒケが発生することを防止でき、外観性を向上できる。また、リブのヒケが隠れることで、リブを大きくして外装カバーの剛性を向上でき、外装カバーの板厚を薄くできるため、軽量化を図ることができる。
【0006】
また、上記構成において、前記第1樹脂部材(60)の前記重なり部(83)には、非外観面側に向かって突出する突起(88)を備えた構成としても良い。
この場合、第1樹脂部材の重なり部には、非外観面側に向かって突出する突起を備え、インサート成形または多色成形によって突起が第2樹脂部材に埋め込まれ、重なり部での第1樹脂部材と第2樹脂部材との接触面積が増加するため、第1樹脂部材と第2樹脂部材とを強固に結合できる。
【0007】
また、前記外装カバー(37)はラジエーター(5)を覆うラジエーターシュラウドであって、前記リブ(82)は前記ラジエーター(5)と当接する当接部である構成としても良い。
この場合、第1樹脂部材に重なってリブのヒケが隠されるため、ラジエーターの当接部として使用可能な大きさにリブを大きくできる。このため、ラジエーターシュラウドのリブをラジエーターに当接させてラジエーターシュラウドを係止することができる。
さらに、前記重なり部(83)は、側面視において前記ラジエーター(5)の外側面(5C)に重ねて設けられた構成としても良い。
この場合、重なり部が側面視において前記ラジエーターの外側面に重ねられるため、リブをラジエーターに当接させてラジエーターシュラウドを係止できる。
また、前記外装カバー(37)は、インサート成形または多色成形によって複数の前記樹脂部材(60,70)の色を異ならせて構成されても良い。
この場合、インサート成形または多色成形によって複数の樹脂部材の色を異ならせて構成するため、外観の設定の自由度を向上できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る鞍乗り型車両の外装カバーでは、外装カバーは、少なくとも2つの樹脂部材が重なる重なり部において外観面側を構成する第1樹脂部材と、重なり部において第1樹脂部材に重ねられて非外観面側を構成する第2樹脂部材とを有し、第2樹脂部材には、非外観面側で延びるリブが設けられ、第2樹脂部材のリブのヒケは、第1樹脂部材に重なって隠されるため、外観面にヒケが発生することを防止でき、外観性を向上できる。また、リブのヒケが隠れることで、リブを大きくして外装カバーの剛性を向上でき、外装カバーの板厚を薄くできるため、軽量化を図ることができる。
また、第1樹脂部材の重なり部に設けられた突起によって、重なり部での第1樹脂部材と第2樹脂部材との接触面積が増加するため、第1樹脂部材と第2樹脂部材とを強固に結合できる。
【0009】
また、リブのヒケが隠されるため、ラジエーターの当接部として使用可能な大きさにリブを大きくでき、ラジエーターシュラウドのリブをラジエーターに当接させてラジエーターシュラウドを係止することができる。
さらに、重なり部が側面視において前記ラジエーターの外側面に重ねられるため、リブをラジエーターに当接させてラジエーターシュラウドを係止できる。
また、インサート成形または多色成形によって複数の樹脂部材の色を異ならせて構成せるため、外観の設定の自由度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動二輪車の左側面図である。
【図2】自動二輪車の前部を上方から見た平面図である。
【図3】自動二輪車の右側面図であり、シュラウド及びシートを取り外した状態を示す図である。
【図4】自動二輪車の右側面図であり、シュラウドの近傍を示す図である。
【図5】右側のシュラウドを側方から見た平面図である。
【図6】右側のシュラウドを上方から見た図である。
【図7】前カバー部の側面図である。
【図8】シュラウドを裏側から見た図である。
【図9】図5におけるIX−IX断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る自動二輪車について図面を参照して説明する。なお、以下の説明で、上下、前後、左右の方向は、車両の運転者から見た方向をいう。
図1は、本発明の実施の形態に係る自動二輪車の左側面図である。図2は、自動二輪車の前部を上方から見た平面図である。
自動二輪車1(鞍乗り型車両)は、車体フレーム10の前後の中央にエンジン11が配置され、前輪2を支持するフロントフォーク12が車体フレーム10の前端に操舵可能に支持され、後輪3を支持するスイングアーム13が車体フレーム10の後部の下部に設けられたオフロードタイプの鞍乗り型車両である。
【0012】
車体フレーム10は、左右一対のフロントフォーク12を支持するヘッドパイプ14と、ヘッドパイプ14から後下方に延びる左右一対のメインフレーム15と、メインフレーム15の後端から後下方に延びた後、前下方へ湾曲して下方に延びる左右一対のピボットプレート16と、ヘッドパイプ14から下方に延び、エンジン11の前方で左右に分岐してエンジン11の下方を延び、ピボットプレート16の下端に連結されるダウンフレーム17と、ピボットプレート16の上部から後方へ略水平に延びる左右一対のシートレール18と、ピボットプレート16の上下の中間部とシートレール18の後部との間に渡される左右一対のリヤパイプ19とを備えて構成される。ダウンフレーム17とメインフレーム15とは、エンジン11の上方を延びる左右一対の補強パイプ9によって連結される。
【0013】
ピボットプレート16には、左右のピボットプレート16を車幅方向に貫通するピボット軸20が設けられ、スイングアーム13は、ピボット軸20に揺動可能に軸支されている。後輪3は、スイングアーム13の後端に軸支される。ピボットプレート16の下部には、左右一対のステップ8が設けられている。
ヘッドパイプ14には、ステアリングシャフト(不図示)が軸支され、フロントフォーク12は、上記ステアリングシャフトの上端及び下端に連結されるトップブリッジ21及びボトムブリッジ22に連結される。操行ハンドル23(図2では不図示)はトップブリッジ21に取り付けられる。
燃料タンク50は、メインフレーム15に沿うようにヘッドパイプ14の上方に固定され、運転者が着座するシート25は、燃料タンク50の後部に連続し、シートレール18に支持されて後方に延びている。
【0014】
エンジン11は、水冷の4サイクル式単気筒エンジンであり、車幅方向に延びるクランク軸(不図示)が収容されるクランクケース26と、クランクケース26の前部から僅かに前傾して上方に延びるシリンダ27とを備え、メインフレーム15とダウンフレーム17との間に支持されている。クランクケース26の後部には変速機28が一体的に設けられている。
シリンダ27 の前部には、排気管29が接続され、排気管29は右側方に屈曲して後方に延びて2又に分岐し、リヤパイプ19の下方に設けられる左右一対のマフラー30に接続される。
【0015】
シリンダ27の後方には、エンジン11に燃料及び空気を供給する吸気装置31が配置されている。吸気装置31の外気の取り込み口となるエアクリーナボックス32は、左右のシートレール18及びリヤパイプ19で囲まれた空間に配置され、エアクリーナボックス32の前部には、シリンダ27側へ延びるコネクティングチューブ33が接続される。
シリンダ27の前方には、上下に延びる板状のラジエーター5が設けられている。ラジエーター5はダウンフレーム17の左右に分割されて一対で設けられ、ダウンフレーム17に固定される。
【0016】
自動二輪車1は、樹脂製の車体カバー35を有し、車体カバー35は、ヘッドパイプ14の前方を覆うフロントカバー36と、ダウンフレーム17の上部及びメインフレーム15の側方を覆う左右一対のシュラウド37(外装カバー、ラジエーターシュラウド)と、シート25の下方でエアクリーナボックス32及びマフラー30等を側方から覆う左右一対のサイドカバー38とを有している。
ボトムブリッジ22には、フロントフェンダー39が固定され、シート25の後方には、リヤフェンダ40が設けられている。
【0017】
図3は、自動二輪車1の右側面図であり、シュラウド37及びシート25を取り外した状態を示す図である。
左右のメインフレーム15は、直線状に後下方に延び、燃料タンク50は、左右のメインフレーム15間に跨って配置されている。燃料タンク50は、左右のメインフレーム15の間に挟まれるように配置されるタンク下部51と、左右のメインフレーム15の上方に位置するタンク上部52とを有している。燃料タンク50は樹脂製である。
タンク上部52の前部の上面には、給油口55に着脱自在なキャップ55Aが取り付けられている。タンク上部52の側面52Aには、シュラウド37を燃料タンク50に固定するボルト41,42(図4参照)が締結される前固定部53、及び、後固定部54が設けられている。前固定部53は給油口55の下方に位置し、後固定部54はタンク上部52の後部に位置している。
【0018】
タンク上部52の側面52Aの下縁部56は、メインフレーム15の上面15Aに沿って直線的に延びており、この下縁部56には、燃料タンク50の内面側に窪んだ凹部57が形成されている。凹部57は、燃料タンク50の前後の中間部に形成され、前固定部53と後固定部54との間に位置している。
燃料タンク50は、タンク上部52の前部に設けられたステー58、及び、不図示の複数の固定部を介して車体フレーム10に締結されている。
【0019】
ラジエーター5の上部には、冷却水の補充口を塞ぐラジエーターキャップ5Aが設けられている。また、ラジエーター5の上部の後面部には、ラジエーター5とエンジン11とを繋ぐ冷却水ホース5Bが接続されている。ラジエーター5の外側面部には、上下に延びる側板部5C(外側面)が設けられている。また、ラジエーター5の前面には、ラジエーター5に風を導くとともに前面をガードするラジエーターグリル4が設けられている。
【0020】
図4は、自動二輪車1の右側面図であり、シュラウド37の近傍を示す図である。図5は、右側のシュラウド37を側方から見た平面図である。図6は、右側のシュラウド37を上方から見た図である。左右の各シュラウド37は略左右対称に構成されているため、ここでは右側のシュラウド37について詳細に説明する。
シュラウド37は、前方から流れ込む走行風をラジエーター5に導入するための板状のカバーであり、図2及び図4〜図6に示すように、燃料タンク50の側面から前側へ斜め外側に張り出すように突出し、ラジエーター5の外側面を通ってラジエーター5よりも前方に延びている。
【0021】
シュラウド37は、ラジエーター5の側方を覆って上下に延びる前カバー部60(第1樹脂部材、樹脂部材)と、前カバー部60の下部から後方へ燃料タンク50の後部まで延びる後カバー部70(第2樹脂部材、樹脂部材)とを有している。
前カバー部60は、タンク上部52の前固定部53から前下方に延びつつ車幅方向に広がるように前側に斜め外側へ延びる上部61と、上部61の下部から下方に延びてラジエーター5の側板部5Cを覆う下部62とを有している。上部61はメインフレーム15の上部及びラジエーター5の上部を覆ってラジエーター5の前方の頂点部60Aで下部62に合流する。この頂点部60Aはラジエーター5の前面よりも前方に張り出した部分である。下部62には、上下に延びるリブ82が形成されている。リブ82は、ラジエーター5の側板部5Cに当接し、シュラウド37をラジエーター5に係止する。
上部61の上端部には、ボルト41(図4)によってタンク上部52の前固定部53に締結される固定孔部63が形成されている。下部62の下端部には、ラジエーター5の下部の側面にボルト43(図4)によって締結される固定孔部64が形成されている。
【0022】
後カバー部70は、前カバー部60の下部62の後縁に連続してラジエーター5の側板部5C及び冷却水ホース5Bを覆う中央部71と、中央部71の上部から後方へ延び、メインフレーム15及びタンク上部52の後部を覆う後部延在部72とを有している。後部延在部72は、車幅方向の幅が後方ほど狭くなるように傾斜して設けられる。
後部延在部72の前部の上縁と前カバー部60の上部61の下縁との間には開口37Aが形成されており、この開口37Aから走行風が後方に抜けることで、ラジエーター5に効率良く導風できる。
【0023】
後部延在部72の後端部には、上方に突出する突出壁73が形成されており、突出壁73は、シート25の底面に当接する。後部延在部72の後部において突出壁73の前方には、タンク上部52の後固定部54にボルト42(図4)によって締結される固定孔部74が形成されている。後部延在部72の内側面70Aにおいて前後の中間部には、メインフレーム15に引っ掛けられるフック部75が形成されている。本実施の形態では、フック部75をメインフレーム15に引っ掛けることでシュラウド37を車体に固定できるため、簡単な構造でシュラウド37を自動二輪車1に固定できる。
【0024】
本実施の形態では、シュラウド37は、鋳型を用いたインサート成形により製造され、具体的には、先に樹脂成形される第1樹脂部材としての前カバー部60に、前カバー部60の後に樹脂成形される第2樹脂部材としての後カバー部70をインサート成形によって結合させることで製造される。
【0025】
図7は、前カバー部60の側面図である。図8は、シュラウド37を裏側から見た図である。図9は、図5におけるIX−IX断面図である。
図5及び図7〜図9に示すように、シュラウド37は、前カバー部60の後部と後カバー部70の前部とが重なる重なり部83を有し、この重なり部83がインサート成形の際に結合される。詳細には、重なり部83では、前カバー部60の下部62の後部に形成された第1樹脂部材側結合部85に、後カバー部70の中央部71の前部に形成された第2樹脂部材側結合部86が、車幅方向の内側側から、すなわち第1樹脂部材側結合部85の裏面側から重なって結合されている。
重なり部83では、車両の外側面に露出する第1樹脂部材側結合部85が外観面を構成し、第1樹脂部材側結合部85の裏面側に重なる第2樹脂部材側結合部86は、外側から視認されない非外観面を構成している。
【0026】
第1樹脂部材側結合部85は、図7及び図9に示すように、前カバー部60の下部62の後縁部62Aから所定の距離だけ車両前方側の位置で後縁部62Aに沿うように延びる区画リブ87を有している。第1樹脂部材側結合部85は、後縁部62Aと区画リブ87とで囲われた領域に形成されている。区画リブ87の上記所定の距離は、側面視において、重なり部83がラジエーター5の側板部5Cに重なるように設定される。重なり部83の面積は、第1樹脂部材側結合部85の面積に対応している。
また、前カバー部60の裏面には、剛性を向上させる複数のリブ部60Bが形成されている。
【0027】
第1樹脂部材側結合部85には、第2樹脂部材側結合部86側、すなわち非外観面側に向かって延びる複数の突起88が立設されている。
突起88は、互いに所定間隔をあけて配置される円柱状の突起であり、インサート成形の際に第2樹脂部材側結合部86内に埋め込まれ、突起88の先端と第2樹脂部材側結合部86の内側面とは面一に形成される。これにより、重なり部83での第1樹脂部材側結合部85と第2樹脂部材側結合部86との接触面積が、全ての突起88の外周面の面積の分だけ増加するとともに、突起88によって第2樹脂部材側結合部86が係止されるため、前カバー部60と後カバー部70とを強固に結合できる。
【0028】
第2樹脂部材側結合部86は、非外観面側においてラジエーター5側に向かって立設されたリブ82を有し、このリブ82の先端部がラジエーター5の側板部5Cに当接する。リブ82は、第1樹脂部材側結合部85の区画リブ87に沿って上下に延びる前壁部91と、前壁部91の後側で前壁部91と略平行に延びる後壁部92とを有して構成され、前壁部91と後壁部92との間には、肉抜き部93が形成されている。リブ82は、後カバー部70の中央部71の上下方向の長さの略全体に亘って設けられており、前壁部91及び後壁部92の上下の端は、円弧状の曲面部94で連結されている。
前壁部91の基端部91A(図9)は、前壁部91の全長の大部分において区画リブ87の側面に当接しており、前壁部91は、区画リブ87に係止されている。このため、前カバー部60と後カバー部70とを強固に結合できる。
【0029】
シュラウド37において、外側から視認される前カバー部60と後カバー部70との分割の境界部95(図9)は、前カバー部60の下部62の後縁部62Aに略一致しており、境界部95では、後カバー部70の中央部71に、非外観面側へ窪んだ凹溝部96が形成されている。詳細には、前カバー部60の後縁部62Aは、境界部95において凹溝部96に嵌まり、これにより、境界部95での前カバー部60と後カバー部70との段差が小さくなり、外観性を向上できる。
【0030】
リブ82は、ラジエーター5の側板部5Cに対する受け座として使用され、比較的大きな高さ及び板厚を有しているため、ヒケが発生する可能性があり、ヒケは、図9に示すように、リブ82の基端部において第2樹脂部材側結合部86の表面側のヒケ発生部82Aに発生する。しかし、重なり部83では、ヒケ発生部82Aは第1樹脂部材側結合部85の裏面側に接合され、第1樹脂部材側結合部85によって覆われているため、外側からヒケ発生部82Aが視認されることは無い。
図4、図5及び図8に示すように、リブ82は、その上端部を除く大部分が重なり部83に形成されており、ヒケ発生部82Aの大部分は第1樹脂部材側結合部85に隠れて視認されない。このため、シュラウド37の外観面にヒケが発生することを防止できる。
【0031】
図4に示すように、重なり部83は、側面視において、重なり部83がラジエーター5の側板部5Cに重なる位置に設けられている。このように、重なり部83をラジエーター5の側板部5Cに重なる位置に設け、この重なり部83にリブ82を設けたため、リブ82をラジエーター5に当接させてシュラウド37を支持できるとともに、リブ82のヒケ発生部82Aが外観面に発生することを防止できる。
【0032】
シュラウド37の製造の際には、まず、金型を用いて、前カバー部60が1次成形品として樹脂成形される。この状態では、突起88は、第1樹脂部材側結合部85に複数立設されている。その後、離型された前カバー部60がインサート成形用の金型にセットされ、この金型に樹脂が注入されることで、リブ82を含む後カバー部70が成形されるとともに、後カバー部70と前カバー部60とが一体化され、シュラウド37が完成する。複数の突起88は、インサート成形によって第2樹脂部材側結合部86に埋め込まれる。ここで、前カバー部60及び後カバー部70は、ポリプロピレン製である。
本実施の形態では、インサート成形で前カバー部60と後カバー部70とを結合させるため、前カバー部60及び後カバー部70をそれぞれ異なる色の樹脂で構成することで、シュラウド37に複数の色を容易に付すことができ、外観の設定の自由度を向上できる。ここでは、前カバー部60は赤色の樹脂であり、後カバー部70は白色の樹脂である。
【0033】
以上説明したように、本発明を適用した実施の形態によれば、シュラウド37は、2つの樹脂部材である前カバー部60及び後カバー部70が重なる重なり部83を有してインサート成形され、重なり部83において外観面側を構成する前カバー部60と、重なり部83において前カバー部60に重ねられて非外観面側を構成する後カバー部70とを有し、後カバー部70には、非外観面側で延びるリブ82が設けられ、非外観面側を構成する後カバー部70のリブ82のヒケ発生部82Aは、外観面側を構成する前カバー部60に重なって隠されるため、外観面にヒケが発生することを防止でき、外観性を向上できる。また、リブ82のヒケが隠れることで、リブ82を大きくしてシュラウド37の剛性を向上でき、シュラウド37の板厚を全体的に薄くできるため、軽量化を図ることができる。
【0034】
また、前カバー部60の重なり部83には、非外観面側に向かって突出する突起88を備え、インサート成形によって突起88が後カバー部70に埋め込まれ、重なり部83での前カバー部60と後カバー部70との接触面積が増加するため、前カバー部60と後カバー部70とを強固に結合できる。
また、前カバー部60に重なってリブ82のヒケ発生部82Aが隠されるため、ラジエーター5の当接部として使用可能な大きさにリブ82を大きくできる。このため、シュラウド37のリブをリブ82に当接させてシュラウド37を係止することができる。
【0035】
さらに、重なり部83が側面視においてラジエーター5の側板部5Cに重ねられるため、リブ82をラジエーター5に当接させてシュラウド37を係止できる。
また、インサート成形によってシュラウド37の前カバー部60及び後カバー部70の色を異ならせるため、外観の設定の自由度を向上できる。
【0036】
なお、上記実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
上記の実施の形態では、外装カバーとして、ラジエーター5を覆うシュラウド37を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、外装カバーは、鞍乗り型車両の他の部分を覆うカバーであっても良い。例えば、外装カバーは、ラジエーター5が設けられていない鞍乗り型車両においてメインフレームやダウンフレームを側方から覆うとともに燃料タンクに取り付けられるカバーであっても良く、このカバーの重なり部の非外観面にリブを形成し、このリブを燃料タンクの側面に当接させても良い。
また、上記の実施の形態では、シュラウド37は、2つの樹脂部材である前カバー部60及び後カバー部70が重なる重なり部83を有するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。重なり部は、少なくとも2つの樹脂部材が重なる部分であれば良く、例えば、シュラウドが3つの樹脂部材を一体化して形成される場合、重なり部で3つの樹脂部材が重なる構成としても良い。この場合、3つの樹脂部材の内、重なり部で非外観面を構成する樹脂部材に、リブを設ければ良い。
【0037】
また、上記の実施の形態では、シュラウド37は、インサート成形により製造されるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、シュラウド37は、鋳型を用いた多色成形により製造されても良い。上記実施の形態のシュラウド37に多色成形を適用する場合、シュラウド37は2分割であることから、シュラウド37は2色成形で製造される。この場合、まず、2色成形用の金型を用いて、前カバー部60が1次成形品として成形され、次いで、前カバー部60を離型せずに、後カバー部70に対応する部分のみ金型が組み替えられ、その後、樹脂が金型に注入されることで、前カバー部60と後カバー部70とが一体化されたシュラウド37が製造される。2色成形においても、前カバー部60及び後カバー部70で異なる色の樹脂を用いることで、シュラウド37に複数の色を付すことができる。
さらに、上記の実施の形態では、リブ82は、その上端部を除く大部分が重なり部83に形成されているものとして説明したが、これに限らず、上記上端部まで重なり部83を延長し、リブ82をその全長に亘って重なり部83に設けても良い。
【符号の説明】
【0038】
1 自動二輪車(鞍乗り型車両)
5 ラジエーター
5C 側板部(外側面)
37 シュラウド(外装カバー、ラジエーターシュラウド)
60 前カバー部(第1樹脂部材、樹脂部材)
70 後カバー部(第2樹脂部材、樹脂部材)
82 リブ
83 重なり部
88 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の樹脂部材(60,70)を一体化して形成される鞍乗り型車両の外装カバーにおいて、
前記外装カバー(37)は、複数の樹脂部材の内、少なくとも2つの樹脂部材(60,70)が重なる重なり部(83)を有してインサート成形または多色成形され、
前記外装カバー(37)は、前記重なり部(83)において外観面側を構成する第1樹脂部材(60)と、前記重なり部(83)において第1樹脂部材(60)に重ねられて非外観面側を構成する第2樹脂部材(70)とを有し、前記第2樹脂部材(70)には、前記非外観面側で延びるリブ(82)が設けられたことを特徴とする鞍乗り型車両の外装カバー。
【請求項2】
前記第1樹脂部材(60)の前記重なり部(83)には、非外観面側に向かって突出する突起(88)を備えたことを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両の外装カバー。
【請求項3】
前記外装カバー(37)はラジエーター(5)を覆うラジエーターシュラウドであって、前記リブ(82)は前記ラジエーター(5)と当接する当接部であることを特徴とする請求項1または2記載の鞍乗り型車両の外装カバー。
【請求項4】
前記重なり部(83)は、側面視において前記ラジエーター(5)の外側面(5C)に重ねて設けられたことを特徴とする請求項3記載の鞍乗り型車両の外装カバー。
【請求項5】
前記外装カバー(37)は、インサート成形または多色成形によって複数の前記樹脂部材(60,70)の色を異ならせて構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の鞍乗り型車両の外装カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−18358(P2013−18358A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153053(P2011−153053)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)