説明

鞍乗型車両のラジエータ構造

【課題】ラジエータ本体を効果的に保護することのできる鞍乗型車両のラジエータ構造を提供する。
【解決手段】放熱用のフィン41t、冷却水を通すチューブ41fが交互に積層されて成るコア部49を有し、コア部49の一端側に配置されるブラケット50を有するラジエータ本体40が、ブラケット50を介して車体フレームに固定されるラジエータ構造。ブラケット50は、コア部49の車幅方向の内側端部に配置されて車両前後方向に沿って延出する延出部51を備え、延出部51の延出先端側の固定部52が車体フレームの取付け部に固定されており、コア部49の前端部とブラケット50の対向側壁とが車両を側面方向から見て重なる位置で且つ固定部52と少なくとも車両前後方向で重なる位置の対向側壁に、対向側壁が前端部から離れる方向に曲がる凹み部55が設けられ、凹み部55と前端部との間に隙間を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラジエータ構造に関し、特に、自動二輪車などの鞍乗型車両のラジエータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から鞍乗型車両のラジエータでは、放熱用のフィンおよび流体流通用のチューブが交互に積層されたコア部と、コア部の上下両端のタンクとからなるラジエータ本体が、一対のブラケットを介して車体のフレームおよびカウルに固定されている(例えば、特許文献1参照)。
前掲のラジエータの支持構造においては、コア部とブラケットとの間に、所定の間隙が設けられており、この間隙をクラッシャブルゾーンとして利用して、ラジエータ本体を外力から保護するべく対策が取られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4333521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このラジエータの支持構造のように、ブラケットとコア部とに隙間を設ける構造の場合は、隙間の分だけ空間が必要となることから、ラジエータ本体の大きさがその分小さくなるというスペース的な問題を抱えている。また、ブラケットによる保持力を強くするためにブラケットの板素材を複数枚重ね合わせて剛性を高めた構造もあるが、このような構造にあっては、重量が大幅にアップするだけでなくコスト面からも問題があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来のスペース的な問題、重量ならびにコスト等の問題を解決できて、ラジエータ本体を効果的に保護することのできる鞍乗型車両のラジエータ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、放熱用のフィンおよび冷却水用のチューブが交互に積層されて成るコア部と、
前記チューブの長手方向両端部に接続されて前記冷却水を溜めることのできる上部タンクおよび下部タンクと、
前記コア部の一端側に配置されるブラケットと、
を有するラジエータ本体を備え、
前記ラジエータ本体が前記ブラケットを介して車体フレームに固定される鞍乗型車両のラジエータ構造において、
前記ブラケットの対向側壁には、車両の側面方向から見て前記コア部の前端部と重なる位置で、且つ、少なくとも前記固定部の後方に位置する部分を、前記前端部から離れる方向に曲げる凹み部が設けられており、
前記凹み部と前記前端部との間には、車体幅方向の隙間が形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記車体フレームは、ヘッドパイプから車体幅方向中央で下方に延びるダウンチューブを備え、
前記ラジエータ本体は、前記ダウンチューブを車幅方向で挟む位置に左右一対に分れて配置されたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の構成に加えて、前記フィンと前記ブラケットとが直接固着されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の構成に加えて、前記延出部の先端側の固定部は、取付け孔を備える板状に形成され、且つ、
前記取付け孔には、その周縁を前記延出部の厚み方向の両側から挟み込み、締結ネジが貫通可能な貫通孔を備える弾性部材が設けられており、
前記車体フレームの取付け部と前記固定部は前記弾性部材を介して締結されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の構成に加えて、前記ラジエータ本体は、エンジンの前方に配置されており、
前記ラジエータ本体は、車幅方向外側からシュラウドにて覆われており、
前記シュラウドと前記ラジエータ本体とが連結されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5の何れか1項に記載の構成に加えて、前記凹み部を備える前記延出部が、前記ブラケットに複数設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、前端部が対向側壁に固定されていると前端部に応力が集中しやすいが、前端部と延出部に対応する対向側壁とが離れるように凹み部が設けられていることによって、応力が集中しやすい領域を無くすことができる。しかも、この凹み部の曲がり形状によってブラケットの剛性を高めることができる。また、隙間の形成は、延出部の基部に限られた僅かな凹み部の構造であるので、ラジエータ支持構造が車幅方向に広がることもなく、重量の増大も発生しない。
【0013】
請求項2の発明によれば、車体フレームの剛性の高いダウンチューブにラジエータ本体を固定することができ、ラジエータ本体をしっかりと保持でき、また、ラジエータ本体が車両幅方向中央に対して左右に分れて配置されているので、車両の左右重量バランスを良好に維持できる。
【0014】
請求項3の発明によれば、コア部のフィンとブラケットとが直接固着されているので、ラジエータ本体の固定構造の省スペース化が図れて隙間が確保し易いだけでなく、隙間のサイズを設定するときには実際の寸法を設定すれば良く、隙間サイズが管理し易い。
【0015】
請求項4の発明によれば、延出部と車体フレームの固定部の間に弾性部材が設けられているので、車体フレームとラジエータ本体との間において弾性部材による緩衝作用を発揮でき、車体振動や衝撃を吸収することができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、シュラウドとラジエータ本体とが連結されていることで、シュラウドの外力が作用した場合に、シュラウドを固定しているラジエータ本体にて外力を受けるが、フレームとの固定部分が凹み部からなる隙間が設けられているので、応力の集中を避けることができる。
【0017】
請求項6の発明によれば、凹み部を備える延出部が複数に分れて設けられているので、応力の分散をより効果的にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る第1実施形態である自動二輪車の左側面図である。
【図2】図1のB−B線断面矢視図である。
【図3】図1のA−A線断面矢視図である。
【図4】本発明の第2実施形態において車体への配置状態で車体左斜め前方から見たラジエータ本体の斜視図である。
【図5】図4における矢印D方向から見た側面図である。
【図6】図5におけるE−E線断面矢視図である。
【図7】図5におけるF−F線断面矢視図である。
【図8】本発明の第1実施形態のラジエータ本体における右ラジエータを車両内側方向から見た側面図である。
【図9】本発明の第1実施形態のラジエータ本体における左ラジエータを車両内側方向から見た側面図である。
【図10】図9におけるH−H線断面矢視図である。
【図11】本発明に係るラジエータ本体、車体フレームならびに排気管の配置を示すための要部概略側面図である。
【図12】本発明に係る第1実施形態におけるラジエータ本体の固定構造を示す要部断面図である。
【図13】本発明の第2実施形態において車体左斜め前方から見たラジエータ本体の斜視図である。
【図14】本発明の第2実施形態のラジエータ本体における右ラジエータを車両内側方向から見た側面図である。
【図15】本発明の第2実施形態のラジエータ本体における左ラジエータを車両内側方向から見た側面図である。
【図16】図14におけるG−G線断面矢視図である。
【図17】本発明の変形例の要部を示したラジエータ本体の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態について、図1〜図12を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態の鞍乗型車両である自動二輪車について具体的に説明する。
なお、添付図面は符号の向きに見るものとし、また、本明細書における向きに関する記載については、運転者を基準として、前方を「Fr」、後方を「Rr」、左側を「L」、右側を「R」、上方側を「Up」、下側を「Dw」と表記する。また、本明細書および図面における符号の後の「L」又は「R」は、左側又は右側を意味する。
【0020】
図1は本発明に係る自動二輪車10の左側面図である。この自動二輪車10は、車体フレーム11と、この車体フレーム11の前端のヘッドパイプ12に操向自在に取付けたハンドル13及びフロントフォーク14と、このフロントフォーク14に取付けた前輪15と、車体フレーム11の中央下部に配置したエンジン16と、車体フレーム11の上部に配置した燃料タンク17及びシート18と、車体フレーム11の中央下部から上下動可能に延ばしたスイングアーム21と、このスイングアーム21の後部に取付けた後輪22と、後輪22に取付けたリヤスプロケット23と、このリヤスプロケット23に駆動力を伝達するチェーン24と、を有している。
【0021】
車体フレーム11は、ヘッドパイプ12と、このヘッドパイプ12から後方へ延ばした左右一対のメインフレーム31と、ヘッドパイプ12から垂下して後方へ延ばした一本のダウンチューブ32と、メインフレーム31の後部から後方へ延ばした左右一対のシートレール33等を有して構成されている。
【0022】
エンジン16は、2サイクル・水冷エンジンであり、シリンダブロック35と、このシリンダブロック35の下に取付けたクランクケース36と、シリンダブロック35の上に取付けたシリンダヘッド37と、このシリンダヘッド37に取り付けたサーモスタットキャップ38と、クランクケース36の例えば右下部に設けたウォータポンプ39(図2参照)とを有する。
また、ラジエータ本体40は、エンジン16のシリンダヘッド37の前方側に配置されてエンジン16を冷却する熱交換機である。このラジエータ本体40は、図11に示すように、ダウンチューブ32に沿うように固定されている。
【0023】
本実施形態におけるラジエータ本体40について、図2、図3、図4および図5を参照して詳細に説明する。なお、図2は図1のB−B線断面矢視図であってラジエータ本体40を車両後方側から見た図であって、図3は図1のA−A線断面矢視図であってラジエータ本体40を車両正面側から見た図であり、両図ともエンジン16および周辺構造は適宜省略してある。また、図4はラジエータ本体40の車体への配置状態において車体左斜め前方から見た斜視図である。図5は図4における左側面方向から見た(矢印D方向から見た)側面図である。
【0024】
ラジエータ本体40は、図2に示すように、車体中心のダウンチューブ32の左に配置した左ラジエータ41と、ダウンチューブ32の右に配置した右ラジエータ42とを備えた左右一対の熱交換器である。ラジエータ本体40の左ラジエータ41と右ラジエータ42は、図2および図3に示すように、ブラケット50(50L,50R)がダウンチューブ32の取付け部32a,32a,32b,32bに固定されている。また、ラジエータ本体40は、図5に示すように、車両側方から見て上方側が車両前方側へ若干傾斜しており、更に、車両上方から見た場合、左ラジエータ41と右ラジエータ42の車両外側が車両前方へ若干傾斜(図6参照)する状態で固定されている。
【0025】
このように、本実施形態におけるラジエータ本体40は、ダウンチューブ32を車幅方向で挟む位置に配置され固定されていることで、左ラジエータ41と右ラジエータ42が車両幅方向中央に対して左右に分れて配置されていることから、車両の左右重量バランスを良好に維持される。また、左右に分割された縦長の左右ラジエータ41,42を剛性の高いダウンチューブ32によってしっかりと保持することができる。
【0026】
このラジエータ本体40における冷却水Wの循環を可能にする配管構造について説明する。
先ず、サーモスタットキャップ38の冷却水出口(図示せず)には第1ラジエータホース43(図2参照)が接続されており、この第1ラジエータホース43から2つに分岐した第2ラジエータホース44(44L,44R)を介して高温の冷却水が左右ラジエータ41,42へ供給される。そして、左ラジエータ41の下部から右ラジエータ42へ低温の冷却水を循環させる第3ラジエータホース45と、右ラジエータ42の下部からウォータポンプ39へ低温の冷却水を循環させる第4ラジエータホース46と、右ラジエータ42の上部に設けたサイフォンチューブ48aとを備える。
【0027】
なお、排気管25は、図2および図3に示すように、ラジエータ本体40の下側に配管されており、エンジン16の排気ポート(図示しない)に接続端部25aが接続されており、その接続端部25aからエンジン16の左前方かつ下方側に延出され、さらにダウンチューブ32の下側から右側に湾曲されてから車体後方に延出されてマフラー25m(図11参照)へと延びている。
【0028】
左右ラジエータ41,42の構造についてさらに詳しく説明する。
図4において、左ラジエータ41は、上部に設けた上部タンク41uと、中央部に設けたコア部49と、下部に設けた下部タンク41dと、ブラケット50(50L)からなる縦長の形状である。また、上部タンク41uは、車体中心側上隅部55に上部凹部56が設けられ、背面58(図2および図5参照)に入口パイプ継手59を取り付けたものであり、冷却水Wをコア部49に導くものである。
【0029】
コア部49は、図6および図7の断面に示すように、冷却水Wを通す多数の平板状のチューブ41tとこの各チューブ41tに接するように設けられた多数の横断面波形のフィン41fとから構成されている。そして、チューブ41tが上部タンク41uと下部タンク41dに連通されている。したがって、チューブ41t内を通過する冷却液Wを効果的に冷却することができる。また、コア部49の下側に配置された下部タンク41dには、外側下隅部63(図4参照)に下部凹部64が設けられ、背面65(図2および図5参照)に出口パイプ継手66が取り付けられた構成であり、冷却水Wを右ラジエータ42の下部タンク42d側へ導く。
【0030】
一方、右ラジエータ42は、上部に設けた上部タンク42uと、中央部に設けたコア部49と、下部に設けた下部タンク42dと、ブラケット50Rからなる縦長の形状で左ラジエータ41よりも若干長く構成されている。また、上部タンク42uは、車体中心側上隅部75に上部凹部76が設けられ、背面79(図2参照)に入口パイプ継手59が取り付けられており、冷却水Wをコア部49に導くことができる。
ここで、コア部49は、前掲の左ラジエータ41のコア部49と同様に図6および図7に示すように、冷却水Wを通す多数のチューブ42tとこのチューブ42t間に設けられた多数の横断面波形のフィン42fとからなる。
【0031】
また、下部タンク42dは、外側下隅部81に下部凹部82が設けられ、下部パイプ継手84が背面83(図2および図5参照)に取り付けられており、下面85(図5参照)に出口パイプ継手86が取り付けられており、この出口パイプ継手86を介して冷却水Wを出口へ導くように構成されている。
なお、左右のコア部49,49の前面には、車両走行時における空気流をコア部49,49に案内するルーバー構造が設けられているが、図示を省略してある。
【0032】
次に、冷却水の順路を説明する。
冷却水Wの温度が所定温度に達すると、サーモスタットキャップ38内のサーモスタットが開き、冷却水Wは冷却水出口から第1ラジエータホース43、分岐管20,第2ラジエータホース44L,44Rを介して、左ラジエータ41の上部タンク41uおよび右ラジエータ42の上部タンク42uに流入し、左右のコア部49,49から下方に流れて下部タンク41dおよび下部タンク42dに流入する。ここで、下部タンク41dの冷却水Wは、第3ラジエータホース45を介して下部タンク42dに流れる。下部タンク42dの冷却水Wは、第4ラジエータホース46からウォータポンプ39に流れ、冷却された冷却水Wが再びエンジン16に供給されて循環する。
【0033】
本実施形態におけるブラケット50(50L,50R)について、図8〜図10を参照して詳細に説明する。
本実施形態におけるブラケット50(50L,50R)は、図8および図9に示すように、ブラケット50(50L,50R)は、左右のコア部49,49の車幅方向内側に配置されており、車両前後方向(本実施形態では車両前方)に延出する延出部51(51L,51R)が設けられている。この延出部51(51L,51R)は、側面から見て延出先端側(車両前方側)に向って上下方向の幅が徐々に狭くなるように形成されており、さらに、延出先端側には取付け孔53を備える固定部52(52L,52R)が設けられている。
この固定部52(52L,52R)が、車体フレーム11のダウンチューブ32に固定されている。また、この延出部51(51L,51R)は、ブラケット50(50L,50R)上下方向に複数箇所(本実施形態では2つ)設けられ、その延出長さは上方側が大きく構成されている。
【0034】
このように複数の延出部51(51L,51R)で車両上下方向においてその延出長さが異なっていることで、ラジエータ本体40の車体フレーム11に対する固定位置や向きを自在に設定できる。
【0035】
本実施形態では、上下2つの延出部51(51L,51R)において下側の延出部51(51L,51R)の基部には、コア部側から見てコア部49,49(図9および図10参照)から逃げるように凹んだ形状の凹み部55(55L,55R)がブラケット長手方向に沿って形成されている。すなわち、この凹み部55(55L,55R)は、固定部52(52L,52R)に対して少なくとも車両前後方向(本実施形態では後方)の位置で且つ車両を側面方向(図8および図9に示す方向)から見て、コア部49,49の前端部49eと重なる対向側壁50eに設けられている。したがって、凹み部55(55L,55R)は、図10に示すように、前端部49eから対向側壁50eが離間する方向に曲がる構造であり、対向側壁50eと前端部49eとの間に隙間2が形成される。
【0036】
また、本実施形態においては、ブラケット50(50L,50R)は、その対向側壁50eがコア部49,49のフィン42fにロウ付けにより直接固着されている。このように、コア部49,49のフィン42fとブラケットとが直接固着されていることで、ラジエータ本体40の固定構造の省スペース化が図れる。したがって、隙間2が確保し易いだけでなく、隙間2のサイズ設定は容易にできる。
また、フィン42fは比較的柔軟な部材であることから、車両振動が生じた際には、コア部49,49は、図10に示すように、ブラケット50(50L,50R)に対して車両外側を揺らすような動き(例えば矢印X方向の動き)が起きやすい。
【0037】
このような場合に、前端部49eが対向側壁50eに固定されていると前端部49eに応力が集中しやすいが、本実施形態においては、前端部49eと延出部51(51L,51R)に対応する対向側壁50eとが離れるように凹み部55(55L,55R)が設けられていることによって、応力が集中しやすい領域を無くすことができる。
しかも、この凹み部55(55L,55R)の曲がり形状によってブラケット50(50L,50R)の剛性を高めることができる。また、凹み部55(55L,55R)により対向側壁50eと前端部49eとの間に隙間2が形成されるので、前端部49eの接触による負荷が回避できる。また、本実施形態による隙間2の形成は、延出部51(51L,51R)の基部に限られた僅かな凹み部55(55L,55R)の構造であるので、ラジエータ支持構造が車幅方向に広がることもなく、重量の増大も発生しない。
【0038】
本実施形態において、右ラジエータ42のブラケット50Rは、図8に示すように、その上端が側面視三角形状の突出角部50tに形成されている。この突出角部50tは、その最上端が上部タンク42uの上端の高さ位置まで延出している。そして、メインフレーム31の右側を通るスロットルリターンケーブル101、スロットルケーブル102、クラッチケーブル103などのケーブル100が、車幅方向でブラケット50Rとダウンチューブ32の間を通るように配設されている(図3参照)。
このようにブラケット50Rの上端に突出角部50tが延出されていることで、ケーブル100をブラケット50Rとダウンチューブ32とで形成する空間に位置規制することができる。したがって、ブラケット50Rは、ケーブル100が車幅方向外側にずれることを防止するガード部材としても機能する。
【0039】
本実施形態におけるラジエータ本体40の固定構造について、図12を参照して説明する。
ラジエータ本体40の左右ラジエータ41,42は、車幅方向内側において、前掲のダウンチューブ32の4カ所の取付け部32a,32a,32b,32bに延出部51(51L,51R)の固定部52(52L,52R)が締結される構造である。
この延出部51(51L,51R)の固定に際しては、取付け孔53には貫通孔52bを有する弾性部材52aを予め嵌め込んでおき、貫通孔52bを取付け部32bの孔33bに対応させて押え板52eを貫通した締結ネジ52cを貫通孔52bに挿入してナット52dを装着して締め付け固定する。この固定構造は4カ所全て同じである。
なお、締結ネジ52cの締め付け及び固定において、取付け部32bの孔33bが雌ねじ構造であれば、ナット52dは不要である。
【0040】
このように、延出部51(51L,51R)と車体フレーム11のダウンチューブ32との締結部分において、弾性部材52aが設けられていることで、車体フレーム11とラジエータ本体40との間において緩衝作用を発揮することができ、車体振動や衝撃を効果的に吸収することができる。
【0041】
また、左右ラジエータ41,42は、車幅方向外側において車体に適宜固定されたシュラウド90に覆われている(図1および図11参照)。そして、このシュラウド90と左右ラジエータ41,42とは、左右ラジエータ41,42の外側固定部91に締結ネジ92を取付けることで固定されている。
このように左右ラジエータ41,42がシュラウド90と連結されていると、シュラウド90に対して外力が作用した場合において、シュラウド90を固定している左右ラジエータ41,42にて外力を受けるが、ブラケット50(50L,50R)において凹み部55(55L,55R)が設けられ隙間2が形成されているので、従来において応力が集中し易かった前端部49eへの応力の集中を避けることができる。
【0042】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
(第2実施形態)
まず、本発明の第2実施形態について、図13〜図16を参照しながら説明する。
第2実施形態において図示した図13から図16においては、第1実施形態と同じ構成には同符号を付して説明を省略する。また、第2実施形態において説明を省略した構成は前掲の第1実施形態と同じ構成である。なお、図16は、図14におけるG−G線断面矢視図である。また、図14におけるH−H線断面矢視図は図10と同じ構造であるので省略する。
第2実施形態における構成は、図13,図14および図15に示すように、ブラケット50(50L,50R)に設けられた凹み部55(55L,55R)が、第1実施形態における下側に加えて上側の延出部51(51L,51R)にも設けられている。
【0043】
本実施形態においては、上下2つの延出部51(51L,51R)の基部に、コア部側から見てコア部49,49から逃げるように凹んだ形状の凹み部55(55L,55R)がブラケット長手方向に沿って形成されている。この凹み部55(55L,55R)は、第1実施形態の場合と同様に、固定部52(52L,52R)に対して少なくとも車両前後方向(本実施形態では後方)の位置で且つ車両を側面方向(図14および図15に示す方向)から見て、コア部49,49の前端部49eと重なる対向側壁50eに設けられている。
【0044】
また、図16に示す断面図では、図10に示す構造とほぼ同様であるが、延出部51が図10における延出部51よりも大きく構成され、この延出部51の基部に、凹み部55(55L,55R)が設けられている。この凹み部55(55L,55R)の構造は、前端部49eから対向側壁50eが離間する方向に曲がり、対向側壁50eと前端部49eとの間に隙間2が形成されている。
【0045】
このように本実施形態においてはブラケット50(50L,50R)の上下方向において二個設けられた延出部51(51L,51R)にそれぞれ凹み部55(55L,55R)が設けられているので、第1実施形態の一カ所の場合に比べて応力の分散をより効果的にすることができる。
【0046】
以下、前掲の実施形態の変形例について図17を参照して説明する。
本実施形態においては図2に示すように、ラジエータ本体40は、前掲のごとく左右ラジエータ41,42に分れた構成で、冷却水Wは第1ラジエータホース43、分岐管20,第2ラジエータホース44(44L,44R)を介して、左ラジエータ41の上部タンク41uおよび右ラジエータ42の上部タンク42uに流入するように構成されているが、本発明においては、例えば図17に示すような連結構造であっても良い。
【0047】
すなわち、左ラジエータ41の上部タンク41uと右ラジエータ42の上部タンク42uとが、第5ラジエータホース45aによって接続された構成である。したがって、右ラジエータ42の上部タンク42uに流入した冷却水Wが左ラジエータ41の上部タンク41uにも流れるように構成されている。
この場合、分岐管20が必要なくなり部品点数を削減することができる。また、比較的大きな部品である分岐管20を使用することなく冷却水Wの所望の流れを確保できラジエータ本体40の小型化に寄与することができる。
【0048】
以上、本発明は、前掲の各実施形態に何ら制限されるものではなく、種々変更することができる。前掲の実施形態では、例えば、延出部51においては車両前方に延出した構成であるが、延出向きは車両後方向きでも良い。また、前傾の実施形態では延出部51は一つのブラケット50に2個形成する構成であるが、一つで良く又3個以上の構成でもよい。さらに、延出部51の形状、凹み部55の形状や大きさについても適宜変更することができる。また、凹み部55の形成位置については、前傾の実施形態においては、延出部51の基部のほぼ全域にわたって形成されているが、凹み部55は固定部52と少なくとも車両前後方向で重なる位置の対向側壁50aに形成されていれば良く、全ての延出部51の基部に形成されなくても、また、その大きさも基部の全域にわたっていなくても、その効果を発揮することができる。
また、前掲の実施形態は自動二輪車について説明したが、本発明は自動二輪車に限るものではなく、ラジエータ本体を備える種々の鞍乗型車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
2 隙間
10 鞍乗型車両
11 車体フレーム
32a,32b 取付け部
40 ラジエータ本体
41d,42d 下部タンク
41u,42u 上部タンク
41t チューブ
41f フィン
49 コア部
49e 前端部
50 ブラケット
50a 対向側壁
51 延出部
52 固定部
55 凹み部
90 シュラウド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱用のフィン(41f)および冷却水(W)を通すチューブ(41t)が交互に積層されて成るコア部(49)と、
前記チューブ(41t)の長手方向両端部に接続されて前記冷却水(W)を溜めることのできる上部タンク(41u,42u)および下部タンク(41d,42d)と、
前記コア部(49)の一端側に配置されるブラケット(50)と、
を有するラジエータ本体(40)を備え、
前記ラジエータ本体(40)が前記ブラケット(50)を介して車体フレーム(11)に固定される鞍乗型車両(10)のラジエータ構造において、
前記ブラケット(50)は、前記コア部(49)の車幅方向の内側端部に配置されて車両前後方向に沿って延出する延出部(51)を備え、前記延出部(51)の延出先端側の固定部(52)が前記車体フレーム(11)の取付け部(32a,32b)に固定されており、
前記ブラケットの対向側壁(50a)には、車両の側面方向から見て前記コア部(49)の前端部(49e)と重なる位置で、且つ、少なくとも前記固定部(52)の後方に位置する部分を、前記前端部(49e)から離れる方向に曲げる凹み部(55)が設けられており、
前記凹み部(55)と前記前端部(49e)との間には、車体幅方向の隙間が形成されていることを特徴とする鞍乗型車両(10)のラジエータ構造。
【請求項2】
前記車体フレーム(11)は、ヘッドパイプ(12)から車体幅方向中央で下方に延びるダウンチューブ(32)を備え、
前記ラジエータ本体(40)は、前記ダウンチューブ(32)を車幅方向で挟む位置に左右一対に分れて配置されたことを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両(10)のラジエータ構造。
【請求項3】
前記フィン(49)と前記ブラケット(50)とが直接固着されていることを特徴とする請求項1または2に記載の鞍乗型車両(10)のラジエータ構造。
【請求項4】
前記延出部(51)の先端側の前記固定部(52)は、前記取付け孔(53)を備える板状に形成され、且つ、
前記取付け孔(53)には、その周縁を前記延出部(51)の厚み方向の両側から挟み込み、締結ネジ(52a)が貫通可能な貫通孔(52b)を備える弾性部材(52a)が設けられており、
前記車体フレーム(11)の取付け部(32b,32a)と前記固定部(52)は前記弾性部材(52a)を介して締結されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の鞍乗型車両(10)のラジエータ構造。
【請求項5】
前記ラジエータ本体(40)は、エンジン(16)の前方に配置されており、
前記ラジエータ本体(40)は、車幅方向外側からシュラウド(90)にて覆われており、
前記シュラウド(90)と前記ラジエータ本体(40)とが連結されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の鞍乗型車両(10)のラジエータ構造。
【請求項6】
前記凹み部(55)を備える前記延出部(51)が、前記ブラケット(50)に複数設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の鞍乗型車両(10)のラジエータ構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2013−103695(P2013−103695A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250936(P2011−250936)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)