鞍乗型車両用トランク装置の取付構造および該構造を備えた鞍乗型車両並びに鞍乗型車両用トランク装置
【課題】トランクに要求される剛性を低減させて、トランクの薄肉化・軽量化を図る。
【解決手段】鞍乗型車両(10)に設けられたキャリア(12)と、キャリア(12)に着脱自在に取り付けられるトランク装置(20)と、車両前後方向に関し、トランク装置(20)におけるキャリア(12)に対する取付面(21)の前後においてキャリア(12)側に突出する前部係止部(31)および後部係止部(41)と、操作者の操作に従って作動し、キャリア(12)に係合することにより、トランク装置(20)をキャリア(12)に固定する係合フック(51)とを備え、前部係止部(31)および後部係止部(41)は、前方/後方のうち同一方向に屈曲させた前部係止フック(31)および後部係止フック(41)で構成し、係合フック(51)は、両係止フック(31,41)の屈曲方向とは反対方向に屈曲し、操作者による固定操作時に、両係止フック(31,41)の屈曲方向とは反対方向に移動してキャリア(12)と係合する。
【解決手段】鞍乗型車両(10)に設けられたキャリア(12)と、キャリア(12)に着脱自在に取り付けられるトランク装置(20)と、車両前後方向に関し、トランク装置(20)におけるキャリア(12)に対する取付面(21)の前後においてキャリア(12)側に突出する前部係止部(31)および後部係止部(41)と、操作者の操作に従って作動し、キャリア(12)に係合することにより、トランク装置(20)をキャリア(12)に固定する係合フック(51)とを備え、前部係止部(31)および後部係止部(41)は、前方/後方のうち同一方向に屈曲させた前部係止フック(31)および後部係止フック(41)で構成し、係合フック(51)は、両係止フック(31,41)の屈曲方向とは反対方向に屈曲し、操作者による固定操作時に、両係止フック(31,41)の屈曲方向とは反対方向に移動してキャリア(12)と係合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両用トランク装置の取付構造および該構造を備えた鞍乗型車両並びに鞍乗型車両用トランク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鞍乗型車両用トランク装置として、例えば特許文献1に見られるようなものが知られている。同文献の符号を借りて説明すると、この鞍乗型車両用トランク装置は、鞍乗型車両に設けられたキャリア(C)と、このキャリア(C)に着脱自在に取り付けられるトランク(T)と、車両前後方向に関し、前記トランク(T)におけるキャリア(C)に対する取付面の前後においてキャリア(C)側に突出する前部係止部(28)および後部係止部(29)と、操作者の操作に従って作動し、前記キャリア(C)に係合することにより、前記トランク(T)をキャリア(C)に固定する係合フック(46)とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4344680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、トランクに要求される剛性を低減させて、トランクの薄肉化・軽量化を図ることができる鞍乗型車両用トランク装置の取付構造を提供することである。また、該構造を備えた鞍乗型車両並びに鞍乗型車両用トランク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明の鞍乗型車両用トランク装置の取付構造は、
鞍乗型車両に設けられたキャリアと、
物品を収納するトランクを有し、前記キャリアに着脱自在に取り付けられるトランク装置と、
車両前後方向に関し、前記トランク装置における前記キャリアに対する取付面の前後においてキャリア側に突出する前部係止部および後部係止部と、
操作者の操作に従って作動し、前記キャリアに係合することにより、前記トランク装置をキャリアに固定する係合フックと、
を備えたトランク装置の取付構造であって、
前記前部係止部および後部係止部は、前方/後方のうち同一方向に屈曲させた前部係止フックおよび後部係止フックで構成するとともに、
前記係合フックは、前記両係止フックの屈曲方向とは反対方向に屈曲し、前記操作者による固定操作時に、前記両係止フックの屈曲方向とは反対方向に移動して前記キャリアと係合する係合フックで構成したことを特徴とする。
【0006】
この鞍乗型車両用トランク装置の取付構造によれば、前部係止部および後部係止部が、前方/後方のうち同一方向に屈曲させた前部係止フックおよび後部係止フックで構成されており、前記係合フックは、前記両係止フックの屈曲方向とは反対方向に屈曲していて、操作者による固定操作時に、前記両係止フックの屈曲方向とは反対方向に移動して前記キャリアと係合するので、トランク装置を鞍乗型車両のキャリアに対して、効率的に固定することができる。
すなわち、前部係止部および後部係止部がいずれもフックで構成されているので、キャリアに対するトランク装置の固定部は全てフックによってなされる。このため、トランクに作用する力を各フック部に分散でき、トランクに要求される剛性を低減させて、トランクの薄肉化・軽量化を図ることができる。なお、前部係止フックおよび後部係止フックは同方向に屈曲しているので、トランク装置のキャリアに対する着脱操作には支障はない。
【0007】
前記前部係止フックおよび後部係止フックは、それぞれ、前記トランク装置が備えるトランクとは別部材で構成されて前記トランクに結合され、
前記係合フックは、前記前部係止フックまたは後部係止フックを構成する部材に取り付けられ、
前記トランクは、前記前部係止フック、後部係止フックを構成するそれぞれの部材間において前後方向に延び、該トランクと一体に形成された1本以上のリブを有している構成とすることができる。
このように構成すると、係合フックを取り付ける部材の剛性を確保することで、トランクに必要とされる剛性を低くでき、トランクの薄肉化、軽量化を一層図ることができる。
【0008】
前記両係止フックを構成する前後の部材のうち、前記係合フックが取り付けられている側と反対側の部材で構成される係止フックは、その屈曲部がその屈曲方向へ2段に延びている構成とすることができる。
このように構成すると、第1段目の屈曲部がキャリアから外れたとしても、第2段目の屈曲部で、キャリアに対する係止を保持することが可能なる。屈曲部を1段で構成して、単純にその長さを長くした場合には、トランク装置のキャリアに対する着脱操作が行いにくくなるおそれがあるが、2段とすることによって、そのような不具合も回避することができる。
【0009】
前記前部係止フックおよび後部係止フックは、いずれも後方に屈曲しているとともに、これら前部係止フックと後部係止フックとの間に前記係合フックが配置され、後部係止フックは前記トランク装置が備えるトランクとは別部材で構成されて前記トランクに結合され、該別部材に、前記係合フックと、この係合フックを作動させるための操作レバーと、この操作レバーと前記係合フックとを連動させる連動部材とが組み込まれている構成とすることができる。
このように構成すると、係合フックを取り付ける部材の剛性を確保することで、トランクに必要とされる剛性を低くでき、トランクの薄肉化、軽量化を図ることができるとともに、係合フックを作動させる機構をトランク後方に集めて、トランクの内容量を確保しやすくなる。
【0010】
前記キャリアは車両後部に設けられているとともに、前記トランクの後部にはトランクを吊り下げるための吊り下げハンドルが設けられ、
前記前部係止フックおよび後部係止フックは、いずれも後方に屈曲しているとともに、前記係合フックを作動させるための操作レバーは、前記後部係止フックの後方に設けられ、かつ操作レバーの操作部を後方へ移動させることで、前記係合フックによる前記キャリアへの係合が解除される構成とすることができる。
このように構成すると、車両後方からキャリアに対してトランク装置の着脱操作を行いやすくなり、操作レバーによる解除操作時、すなわち係合フックがキャリアから外れる際には、前記前部係止フックおよび後部係止フックに対してキャリアへの係合方向への力が作用するので、解除操作を円滑に行うことができる。
【0011】
本発明に係る鞍乗型車両ないし鞍乗型車両用トランク装置は、上記鞍乗型車両用トランク装置の取付構造を備えているので、上記の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る鞍乗型車両用トランク装置の取付構造および該構造を備えた鞍乗型車両並びに鞍乗型車両用トランク装置の一実施の形態を示す部分断面図。
【図2】本発明に係る鞍乗型車両用トランク装置の一実施の形態を示す断面図(図3における2−2断面図)。
【図3】同じく部分底面図。
【図4】同じく部分背面図。
【図5】図2における部分省略5矢視図。
【図6】図5における6−6断面図。
【図7】後部係止部材40および係合操作機構50の平面図。
【図8】図7における8−8断面図。
【図9】図8における9−9断面図。
【図10】図8における10−10断面図。
【図11】上記実施の形態の底面側を示す部分省略斜視図。
【図12】上記実施の形態の取り付け操作を示す斜視図。
【図13】上記実施の形態におけるリッドを開いた状態の斜視図。
【図14】上記実施の形態におけるリッドを開いた別の状態の斜視図。。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る鞍乗型車両用トランク装置の取付構造および該構造を備えた鞍乗型車両並びに鞍乗型車両用トランク装置の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、同一部分ないし相当する部分には、同一の符号を付してある。
【0014】
図1、図2に示すように、この実施の形態の鞍乗型車両用トランク装置の取付構造は、鞍乗型車両10(図12参照)に設けられたキャリア12と、このキャリア12に着脱自在に取り付けられるトランク装置20と、車両前後方向(図1において左右方向)に関し、トランク装置20における、キャリア12に対する取付面21の前後においてキャリア12側に突出する前部係止部31および後部係止部41と、トランク装置20をキャリア12に固定する係合フック51とを備えている。
【0015】
鞍乗型車両10としては、例えば、自動二輪車、自動三輪車、鞍乗型四輪車等を挙げることができ、そのシート10s後方にキャリア12を設けることができる。
トランク装置20は、物品を収納するトランク60を有している。
係合フック51は、操作者の操作に従って作動し、キャリア12に係合することにより、トランク装置20をキャリア12に固定する。
【0016】
前部係止部31および後部係止部41は、前方/後方のうち同一方向に屈曲させた前部係止フックおよび後部係止フックで構成する。図示のものは、いずれも、後方に屈曲させた前部係止フック(31)および後部係止フック(41)で構成されているが、前部係止部31および後部係止部41は、いずれも、前方に屈曲させた前部係止フックおよび後部係止フックで構成することもできる。
【0017】
係合フック51は、前記両係止フック31,41の屈曲方向とは反対方向(図示のものは前方)に屈曲し、操作者による固定操作時に、前記両係止フック31,41の屈曲方向とは反対方向(図示のものは前方)に移動してキャリア12と係合する係合フックで構成する。
【0018】
この鞍乗型車両用トランク装置の取付構造によれば、前部係止部31および後部係止部41が、いずれも後方に屈曲させた前部係止フック(31)および後部係止フック(41)で構成されており、係合フック51は、両係止フック31,41の屈曲方向とは反対方向である前方に屈曲していて、操作者による固定操作時に、前方に移動してキャリア12と係合するので、トランク装置20を鞍乗型車両10のキャリア12に対して、効率的に固定することができる。
すなわち、前部係止部31および後部係止部41がいずれもフックで構成されているので、キャリア12に対するトランク装置20の固定部は全てフック(31,41,51)によってなされる。このため、トランク60に作用する力を各フック部に分散でき、トランク60に要求される剛性を低減させて、トランク60の薄肉化・軽量化を図ることができる。しかも、係合フック51は、両係止フック31,41の屈曲方向とは反対方向に屈曲し、操作者による固定操作時には、両係止フック31,41の屈曲方向とは反対方向に移動してキャリア12と係合する、別言すれば、両係止フック31,41をキャリア12に対して係合させる方向(図示のものではキャリア12に対してトランク装置20を後方に移動させる方向)に移動してキャリア12と係合するので、トランク装置20をキャリア12に対して、スムーズに固定することができる。しかも、前部係止フック31および後部係止フック41は同方向に屈曲しているので、トランク装置20のキャリア12に対する着脱操作には支障はない。
なお、図示はしないが、前部係止部31および後部係止部41を、いずれも、前方に屈曲させた前部係止フックおよび後部係止フックで構成し、係合フック51を、後方に屈曲していて、操作者による固定操作時に、後方に移動してキャリア12と係合する係合フックで構成した場合にも、同様の作用効果が得られる。
【0019】
図2はトランク装置20の断面図(図3における2−2断面図)、図3はトランク装置20の部分省略底面図である。
これらの図に示すように、前部係止フック31および後部係止フック41は、それぞれ、トランク装置20が備えるトランク60とは別部材30,40で構成されてトランク60に結合されている。なお、部材30を前部係止部材、部材40を後部係止部材とも言う。
係合フック51は、前部係止フック31または後部係止フック41を構成する部材30または40に取り付けることができるが、図示のものは、後部係止部41を構成する後部係止部材40に取り付けてある。
トランク60は、前部係止フック31、後部係止フック41を構成するそれぞれの部材間、すなわち前部係止部材30と後部係止部材40との間において前後方向に延び、トランク60と一体に形成されたリブ60rを有している。リブ60rは、1本以上であれば適宜の本数を設けることができ、図示のものは、左右対称に計5本(図3において3本のみ図示)設けられている。図示のリブ60rは、トランク60の外面(底面)から内方に向かって凹む凹溝状に形成されている(図11参照)。
このように構成すると、係合フック51を取り付ける部材40の剛性を確保することで、トランク60に必要とされる剛性を低くでき、トランク60の薄肉化、軽量化を一層図ることができる。
【0020】
この点についてさらに説明する。
仮に、係合フック51を後部係止部材40に対してではなくトランク60に対して直接取り付ける、あるいは係合フック51および後部係止フック41を直接トランク60に設けたとすると、キャリア12への係合フック51による固定時に、係合フック51と後部係止部41との間に作用する力はトランク60に直接作用することとなる。したがって、トランク60における、少なくとも係合フック51と後部係止部41との間の部位の強度を増大させる必要が生じ、トランク60を構成する上での材質上、構造上の自由度が低下し、結果として、トランク60の厚肉化や、重量増加を招くおそれがある。
【0021】
これに対し、この実施の形態では、係合フック51は、後部係止フック41を構成する後部係止部材40に取り付けられているので、キャリア12への係合フック51による固定時に、係合フック51と後部係止部41との間に作用する力はトランク60には直接作用せず、後部係止部材40に作用することとなる。したがって、後部係止部材40の剛性を確保することで、トランク60を構成する上での材質上、構造上の自由度が向上し、トランク60に必要とされる剛性を低くして、トランクの薄肉化、軽量化を図ることができる。なお、係合フック51を前部係止部材30に取り付ける場合にも、同様の作用効果が得られる。
【0022】
係合フック51は、前部係止フック31と後部係止フック41との間に配置され、後部係止部材40に、係合フック51と、この係合フック51を作動させるための操作レバー52と、この操作レバー52と係合フック51とを連動させる連動部材53とが組み込まれている。
このように構成すると、係合フック51を取り付ける後部係止部材40の剛性を確保することで、トランクに必要とされる剛性を低くでき、トランクの薄肉化、軽量化を図ることができるとともに、係合フック51を作動させる機構(係合操作機構)50をトランク後方に集めて、トランク60の内容量を確保しやすくなる。
【0023】
図1に示すように、キャリア12は車両後部に設けられているとともに、トランク60の後部にはトランク60を吊り下げるための吊り下げハンドル63が設けられている。
前述したように、前部係止フック31および後部係止フック41は、いずれも後方に屈曲しているとともに、係合フック51を作動させるための操作レバー52は、後部係止フック41の後方に設けられ、後述するように、操作レバー52の操作部52cを後方へ移動させることで、係合フック51によるキャリア12への係合が解除される構成となっている。
このように構成すると、車両後方からキャリア12に対してトランク装置20の着脱操作を行いやすくなる(図12参照)。また、操作レバー52による解除操作時、すなわち係合フック51がキャリア12から外れる際には、操作レバー52の後方への移動操作に起因して、前部係止フック31および後部係止フック41に対してキャリア12への係合方向への力が作用するので、解除操作を円滑に行うことができる。
【0024】
後部係止部材40および係合操作機構50についてさらに説明する。
図4〜図10にも示すように、後部係止部材40は一体成型品であり、第1開口42を有する底板43と、この底板43の後部に立設された後板44と、底板43後部から後板44下部に亘って設けられた第2開口45と、第1開口42および第2開口45の左右両側において底板43と後板44とを連結するように立設された側板46,46と、この側板46,46を補強すべく側板46と底板43および後板44との間に設けられた複数枚のリブ46r(図6,図7)と、トランク本体61への複数(図示のものは4個)の取付部47とを有している。
【0025】
係合操作機構50は、後部係止部材40の側板46、46の間に以下のように組み込まれる。
係合フック51は、第1開口42に設けられており、基部51bが、軸51aによって、側板46,46間に回動可能に支持されている。軸51aは側板46、46に固定されている。
操作レバー52は、第2開口45に設けられており、基部52bが、軸52aによって、側板46,46間に回動可能に支持されている。軸52aは側板46、46に固定されている。
連動部材53は、側板46、46間に配置されたリンクで構成され、ピン51pで係合フック51に回動可能に連結され、ピン52pで操作レバー52に回動可能に連結されている。
図8において、操作レバー52の操作部52cを後方へ引くようにして操作レバー52を仮想線で示すように回動させると、連動部材53による連動作用で係合フック51が仮想線で示すように後方へ回動し、フック部51fによるキャリア12(図1)に対する係合が解除される。
【0026】
図9に示すように、係合フック51と連動部材53とを連結するピン51pは、その端部(左端または右端)51bが、側板46の内面46bに当接することによって、係合フック51および連動部材53からの抜けが防止される。
このように構成すると、ピン51pに留め具(サークリップ等)を設ける必要がなくなるとともに、ピン51pへの留め具用の加工も不要となる。
これと同様、図10に示すように、操作レバー52と連動部材53とを連結するピン52pは、その端部(左端または右端)52bが、側板46の内面46bに当接することによって、操作レバー52および連動部材53からの抜けが防止される。
このように構成すると、ピン52pに留め具(サークリップ等)を設ける必要がなくなるとともに、ピン52pへの留め具用の加工も不要となる。
【0027】
以上のような後部係止部材40および係合操作機構50はユニットとして構成され、トランク60に組み付けられる。
図1〜図6に示すように、トランク本体61には、後部係止部材40および係合操作機構50を受け入れる凹部61hが設けられている。
係合操作機構50が組み込まれた後部係止部材40は、トランク本体61の凹部61hに嵌め込まれ、ボルト61bで固定される。図6に示すように、後部係止部材40の取付部47にはナット47nが埋め込まれており、このナット47nにボルト61bを結合させることで、係合操作機構50が組み込まれた後部係止部材40がトランク本体61に固定される。
【0028】
図2に示すように、前部係止部31は、その屈曲部がその屈曲方向へ2段に延びている。すなわち、前部係止部31は第1フック部31f1と、第2フック部31f2とを有している。
このように構成すると、何らかの理由(例えばキャリア12および/またはトランク本体61の瞬間的な変形)により第1段目の屈曲部(31f1)がキャリア12から外れたとしても、第2段目の屈曲部(31f2)で、キャリア12に対する係止を保持することが可能なる。屈曲部を1段で構成して、単純にその長さを長くした場合には、トランク装置のキャリアに対する着脱操作が行いにくくなるおそれがあるが、2段とすることによって、そのような不具合も回避することができる。
【0029】
図11にも示すように、前部係止部材30は左右一対の前部係止フック31が形成された、プレート状の一体成型品であり、リベット33によってトランク本体61に固定されている。
図1および図12に示すように、トランク装置20は、左右の前部係止フック31をキャリア12の前部係止部12fに係止し、後部係止部41をキャリア12の後部係止部12rに係止し、その後、操作レバー52の操作部52cを前方へ回動させて係合フック51をキャリア12の中央係止部12cに係合させることでキャリア12に装着される。
【0030】
図2および図12〜図14に示すように、トランク60は、トランク本体61と、このトランク本体61に対して開閉可能に設けられたリッド62とを備えている。
このトランク60は、金属フレーム64とファスナー65とを備えており、そのいずれかを開閉操作することにより、リッド62を開閉することができる。
すなわち、図13に示すように、留め具60d、60dを外して金属フレーム64を開くことでリッド62を開くことができる。
また、図14に示すように、ファスナー65を開くことでリッド62を広げてトランク容量を増大させることができる。図2および図14において、66は、ファスナー65を開いてリッド62を広げた際の、リッド62の開度を規制するとともに、広げたリッド62で容量が増大されたトランク60の内外を区画するエキスパンダーシートである。
このように構成すると、ハードケースでありながら、ファスナー65およびエキスパンダーシート66による開閉によって、トランク容量の調整を行うことができる。
【0031】
図14に示すように、ファスナー65は、トランク60の3辺に設けられていて、3辺のみが開閉される構造となっている。
これにより、トランクとしての剛性が確保される。
一般に、ファスナーおよびエキスパンダーシートによる開閉構造は、全周にファスナーが設けられていてリッドが平行移動する構造であるが、そのような構造では、リッドが不安定になり、特に二輪車等の鞍乗型車両には不向きである。
これに対し、この実施の形態に構造によれば、ファスナー65がトランク60の3辺に設けられていて、3辺のみが開閉される構造となっているので、トランクとしての剛性が確保される。
【0032】
図2および図13に示すように、金属フレーム64は、トランク本体61の上縁に設けられた本体側フレーム64bと、リッド62の下縁に設けられたリッド側フレーム64cと、これら両フレーム64b、64cを前部にて回動可能に連結するヒンジ64h(図14参照)とを備え、このヒンジ64h回りに、リッド62を開閉することができる。図中、67は、両フレーム64b、64cの回動角を規制すべく、両フレームを連結する回動規制ベルト、69(図13)はインナーバッグである。
図2に示すように、本体側フレーム64bは、その口縁内側に沿ってリッド62側に突出する突条64pを有している一方、リッド側フレーム64cは、その口縁内側に沿って前記突条64pを受け入れる凹溝64gと、この凹溝64g内に収容されたチューブ状シール64sとを有している。リッド62が閉じられると、突条64pの先端部分が凹溝64gに入り込んでチューブ状シール64sに食い込むようにして当接する。このような構成によると、シール性が向上する。
【0033】
ヒンジ64hは、両フレーム64b、64cにリベット64rで固定される。
この実施の形態では、リッド側フレーム64cに対する両端のリベットでそれぞれ脚部材64dを固定するとともに、前部係止部材30にも第1脚部34,34(図3,図11)を設けて、吊り下げハンドル63を上にしてトランク60を床置きした場合にも、トランク60が略水平に保たれるようにしてある。
また、図2および図11に示すように、前部係止部材30の底部に第2脚部35,35を設けるとともに、後部係止部材40にも脚部48,48を設け、リッド62を上にしてトランク60を床置きした場合にも、トランク60が略水平に保たれるようにしてある。第2脚部35,35、脚部48,48の高さは、係合フック51が接地しない高さとしてある。
【0034】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変形実施可能である。
【符号の説明】
【0035】
10:鞍乗型車両、12:キャリア、20:トランク装置、21:取付面、30:部材(前部係止部材)、31:前部係止フック(前部係止部)、40:部材(後部係止部材)、41:後部係止フック(後部係止部)、51:係合フック、52:操作レバー、53:連動部材、60:トランク、60r:リブ、63:吊り下げハンドル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両用トランク装置の取付構造および該構造を備えた鞍乗型車両並びに鞍乗型車両用トランク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鞍乗型車両用トランク装置として、例えば特許文献1に見られるようなものが知られている。同文献の符号を借りて説明すると、この鞍乗型車両用トランク装置は、鞍乗型車両に設けられたキャリア(C)と、このキャリア(C)に着脱自在に取り付けられるトランク(T)と、車両前後方向に関し、前記トランク(T)におけるキャリア(C)に対する取付面の前後においてキャリア(C)側に突出する前部係止部(28)および後部係止部(29)と、操作者の操作に従って作動し、前記キャリア(C)に係合することにより、前記トランク(T)をキャリア(C)に固定する係合フック(46)とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4344680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、トランクに要求される剛性を低減させて、トランクの薄肉化・軽量化を図ることができる鞍乗型車両用トランク装置の取付構造を提供することである。また、該構造を備えた鞍乗型車両並びに鞍乗型車両用トランク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明の鞍乗型車両用トランク装置の取付構造は、
鞍乗型車両に設けられたキャリアと、
物品を収納するトランクを有し、前記キャリアに着脱自在に取り付けられるトランク装置と、
車両前後方向に関し、前記トランク装置における前記キャリアに対する取付面の前後においてキャリア側に突出する前部係止部および後部係止部と、
操作者の操作に従って作動し、前記キャリアに係合することにより、前記トランク装置をキャリアに固定する係合フックと、
を備えたトランク装置の取付構造であって、
前記前部係止部および後部係止部は、前方/後方のうち同一方向に屈曲させた前部係止フックおよび後部係止フックで構成するとともに、
前記係合フックは、前記両係止フックの屈曲方向とは反対方向に屈曲し、前記操作者による固定操作時に、前記両係止フックの屈曲方向とは反対方向に移動して前記キャリアと係合する係合フックで構成したことを特徴とする。
【0006】
この鞍乗型車両用トランク装置の取付構造によれば、前部係止部および後部係止部が、前方/後方のうち同一方向に屈曲させた前部係止フックおよび後部係止フックで構成されており、前記係合フックは、前記両係止フックの屈曲方向とは反対方向に屈曲していて、操作者による固定操作時に、前記両係止フックの屈曲方向とは反対方向に移動して前記キャリアと係合するので、トランク装置を鞍乗型車両のキャリアに対して、効率的に固定することができる。
すなわち、前部係止部および後部係止部がいずれもフックで構成されているので、キャリアに対するトランク装置の固定部は全てフックによってなされる。このため、トランクに作用する力を各フック部に分散でき、トランクに要求される剛性を低減させて、トランクの薄肉化・軽量化を図ることができる。なお、前部係止フックおよび後部係止フックは同方向に屈曲しているので、トランク装置のキャリアに対する着脱操作には支障はない。
【0007】
前記前部係止フックおよび後部係止フックは、それぞれ、前記トランク装置が備えるトランクとは別部材で構成されて前記トランクに結合され、
前記係合フックは、前記前部係止フックまたは後部係止フックを構成する部材に取り付けられ、
前記トランクは、前記前部係止フック、後部係止フックを構成するそれぞれの部材間において前後方向に延び、該トランクと一体に形成された1本以上のリブを有している構成とすることができる。
このように構成すると、係合フックを取り付ける部材の剛性を確保することで、トランクに必要とされる剛性を低くでき、トランクの薄肉化、軽量化を一層図ることができる。
【0008】
前記両係止フックを構成する前後の部材のうち、前記係合フックが取り付けられている側と反対側の部材で構成される係止フックは、その屈曲部がその屈曲方向へ2段に延びている構成とすることができる。
このように構成すると、第1段目の屈曲部がキャリアから外れたとしても、第2段目の屈曲部で、キャリアに対する係止を保持することが可能なる。屈曲部を1段で構成して、単純にその長さを長くした場合には、トランク装置のキャリアに対する着脱操作が行いにくくなるおそれがあるが、2段とすることによって、そのような不具合も回避することができる。
【0009】
前記前部係止フックおよび後部係止フックは、いずれも後方に屈曲しているとともに、これら前部係止フックと後部係止フックとの間に前記係合フックが配置され、後部係止フックは前記トランク装置が備えるトランクとは別部材で構成されて前記トランクに結合され、該別部材に、前記係合フックと、この係合フックを作動させるための操作レバーと、この操作レバーと前記係合フックとを連動させる連動部材とが組み込まれている構成とすることができる。
このように構成すると、係合フックを取り付ける部材の剛性を確保することで、トランクに必要とされる剛性を低くでき、トランクの薄肉化、軽量化を図ることができるとともに、係合フックを作動させる機構をトランク後方に集めて、トランクの内容量を確保しやすくなる。
【0010】
前記キャリアは車両後部に設けられているとともに、前記トランクの後部にはトランクを吊り下げるための吊り下げハンドルが設けられ、
前記前部係止フックおよび後部係止フックは、いずれも後方に屈曲しているとともに、前記係合フックを作動させるための操作レバーは、前記後部係止フックの後方に設けられ、かつ操作レバーの操作部を後方へ移動させることで、前記係合フックによる前記キャリアへの係合が解除される構成とすることができる。
このように構成すると、車両後方からキャリアに対してトランク装置の着脱操作を行いやすくなり、操作レバーによる解除操作時、すなわち係合フックがキャリアから外れる際には、前記前部係止フックおよび後部係止フックに対してキャリアへの係合方向への力が作用するので、解除操作を円滑に行うことができる。
【0011】
本発明に係る鞍乗型車両ないし鞍乗型車両用トランク装置は、上記鞍乗型車両用トランク装置の取付構造を備えているので、上記の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る鞍乗型車両用トランク装置の取付構造および該構造を備えた鞍乗型車両並びに鞍乗型車両用トランク装置の一実施の形態を示す部分断面図。
【図2】本発明に係る鞍乗型車両用トランク装置の一実施の形態を示す断面図(図3における2−2断面図)。
【図3】同じく部分底面図。
【図4】同じく部分背面図。
【図5】図2における部分省略5矢視図。
【図6】図5における6−6断面図。
【図7】後部係止部材40および係合操作機構50の平面図。
【図8】図7における8−8断面図。
【図9】図8における9−9断面図。
【図10】図8における10−10断面図。
【図11】上記実施の形態の底面側を示す部分省略斜視図。
【図12】上記実施の形態の取り付け操作を示す斜視図。
【図13】上記実施の形態におけるリッドを開いた状態の斜視図。
【図14】上記実施の形態におけるリッドを開いた別の状態の斜視図。。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る鞍乗型車両用トランク装置の取付構造および該構造を備えた鞍乗型車両並びに鞍乗型車両用トランク装置の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、同一部分ないし相当する部分には、同一の符号を付してある。
【0014】
図1、図2に示すように、この実施の形態の鞍乗型車両用トランク装置の取付構造は、鞍乗型車両10(図12参照)に設けられたキャリア12と、このキャリア12に着脱自在に取り付けられるトランク装置20と、車両前後方向(図1において左右方向)に関し、トランク装置20における、キャリア12に対する取付面21の前後においてキャリア12側に突出する前部係止部31および後部係止部41と、トランク装置20をキャリア12に固定する係合フック51とを備えている。
【0015】
鞍乗型車両10としては、例えば、自動二輪車、自動三輪車、鞍乗型四輪車等を挙げることができ、そのシート10s後方にキャリア12を設けることができる。
トランク装置20は、物品を収納するトランク60を有している。
係合フック51は、操作者の操作に従って作動し、キャリア12に係合することにより、トランク装置20をキャリア12に固定する。
【0016】
前部係止部31および後部係止部41は、前方/後方のうち同一方向に屈曲させた前部係止フックおよび後部係止フックで構成する。図示のものは、いずれも、後方に屈曲させた前部係止フック(31)および後部係止フック(41)で構成されているが、前部係止部31および後部係止部41は、いずれも、前方に屈曲させた前部係止フックおよび後部係止フックで構成することもできる。
【0017】
係合フック51は、前記両係止フック31,41の屈曲方向とは反対方向(図示のものは前方)に屈曲し、操作者による固定操作時に、前記両係止フック31,41の屈曲方向とは反対方向(図示のものは前方)に移動してキャリア12と係合する係合フックで構成する。
【0018】
この鞍乗型車両用トランク装置の取付構造によれば、前部係止部31および後部係止部41が、いずれも後方に屈曲させた前部係止フック(31)および後部係止フック(41)で構成されており、係合フック51は、両係止フック31,41の屈曲方向とは反対方向である前方に屈曲していて、操作者による固定操作時に、前方に移動してキャリア12と係合するので、トランク装置20を鞍乗型車両10のキャリア12に対して、効率的に固定することができる。
すなわち、前部係止部31および後部係止部41がいずれもフックで構成されているので、キャリア12に対するトランク装置20の固定部は全てフック(31,41,51)によってなされる。このため、トランク60に作用する力を各フック部に分散でき、トランク60に要求される剛性を低減させて、トランク60の薄肉化・軽量化を図ることができる。しかも、係合フック51は、両係止フック31,41の屈曲方向とは反対方向に屈曲し、操作者による固定操作時には、両係止フック31,41の屈曲方向とは反対方向に移動してキャリア12と係合する、別言すれば、両係止フック31,41をキャリア12に対して係合させる方向(図示のものではキャリア12に対してトランク装置20を後方に移動させる方向)に移動してキャリア12と係合するので、トランク装置20をキャリア12に対して、スムーズに固定することができる。しかも、前部係止フック31および後部係止フック41は同方向に屈曲しているので、トランク装置20のキャリア12に対する着脱操作には支障はない。
なお、図示はしないが、前部係止部31および後部係止部41を、いずれも、前方に屈曲させた前部係止フックおよび後部係止フックで構成し、係合フック51を、後方に屈曲していて、操作者による固定操作時に、後方に移動してキャリア12と係合する係合フックで構成した場合にも、同様の作用効果が得られる。
【0019】
図2はトランク装置20の断面図(図3における2−2断面図)、図3はトランク装置20の部分省略底面図である。
これらの図に示すように、前部係止フック31および後部係止フック41は、それぞれ、トランク装置20が備えるトランク60とは別部材30,40で構成されてトランク60に結合されている。なお、部材30を前部係止部材、部材40を後部係止部材とも言う。
係合フック51は、前部係止フック31または後部係止フック41を構成する部材30または40に取り付けることができるが、図示のものは、後部係止部41を構成する後部係止部材40に取り付けてある。
トランク60は、前部係止フック31、後部係止フック41を構成するそれぞれの部材間、すなわち前部係止部材30と後部係止部材40との間において前後方向に延び、トランク60と一体に形成されたリブ60rを有している。リブ60rは、1本以上であれば適宜の本数を設けることができ、図示のものは、左右対称に計5本(図3において3本のみ図示)設けられている。図示のリブ60rは、トランク60の外面(底面)から内方に向かって凹む凹溝状に形成されている(図11参照)。
このように構成すると、係合フック51を取り付ける部材40の剛性を確保することで、トランク60に必要とされる剛性を低くでき、トランク60の薄肉化、軽量化を一層図ることができる。
【0020】
この点についてさらに説明する。
仮に、係合フック51を後部係止部材40に対してではなくトランク60に対して直接取り付ける、あるいは係合フック51および後部係止フック41を直接トランク60に設けたとすると、キャリア12への係合フック51による固定時に、係合フック51と後部係止部41との間に作用する力はトランク60に直接作用することとなる。したがって、トランク60における、少なくとも係合フック51と後部係止部41との間の部位の強度を増大させる必要が生じ、トランク60を構成する上での材質上、構造上の自由度が低下し、結果として、トランク60の厚肉化や、重量増加を招くおそれがある。
【0021】
これに対し、この実施の形態では、係合フック51は、後部係止フック41を構成する後部係止部材40に取り付けられているので、キャリア12への係合フック51による固定時に、係合フック51と後部係止部41との間に作用する力はトランク60には直接作用せず、後部係止部材40に作用することとなる。したがって、後部係止部材40の剛性を確保することで、トランク60を構成する上での材質上、構造上の自由度が向上し、トランク60に必要とされる剛性を低くして、トランクの薄肉化、軽量化を図ることができる。なお、係合フック51を前部係止部材30に取り付ける場合にも、同様の作用効果が得られる。
【0022】
係合フック51は、前部係止フック31と後部係止フック41との間に配置され、後部係止部材40に、係合フック51と、この係合フック51を作動させるための操作レバー52と、この操作レバー52と係合フック51とを連動させる連動部材53とが組み込まれている。
このように構成すると、係合フック51を取り付ける後部係止部材40の剛性を確保することで、トランクに必要とされる剛性を低くでき、トランクの薄肉化、軽量化を図ることができるとともに、係合フック51を作動させる機構(係合操作機構)50をトランク後方に集めて、トランク60の内容量を確保しやすくなる。
【0023】
図1に示すように、キャリア12は車両後部に設けられているとともに、トランク60の後部にはトランク60を吊り下げるための吊り下げハンドル63が設けられている。
前述したように、前部係止フック31および後部係止フック41は、いずれも後方に屈曲しているとともに、係合フック51を作動させるための操作レバー52は、後部係止フック41の後方に設けられ、後述するように、操作レバー52の操作部52cを後方へ移動させることで、係合フック51によるキャリア12への係合が解除される構成となっている。
このように構成すると、車両後方からキャリア12に対してトランク装置20の着脱操作を行いやすくなる(図12参照)。また、操作レバー52による解除操作時、すなわち係合フック51がキャリア12から外れる際には、操作レバー52の後方への移動操作に起因して、前部係止フック31および後部係止フック41に対してキャリア12への係合方向への力が作用するので、解除操作を円滑に行うことができる。
【0024】
後部係止部材40および係合操作機構50についてさらに説明する。
図4〜図10にも示すように、後部係止部材40は一体成型品であり、第1開口42を有する底板43と、この底板43の後部に立設された後板44と、底板43後部から後板44下部に亘って設けられた第2開口45と、第1開口42および第2開口45の左右両側において底板43と後板44とを連結するように立設された側板46,46と、この側板46,46を補強すべく側板46と底板43および後板44との間に設けられた複数枚のリブ46r(図6,図7)と、トランク本体61への複数(図示のものは4個)の取付部47とを有している。
【0025】
係合操作機構50は、後部係止部材40の側板46、46の間に以下のように組み込まれる。
係合フック51は、第1開口42に設けられており、基部51bが、軸51aによって、側板46,46間に回動可能に支持されている。軸51aは側板46、46に固定されている。
操作レバー52は、第2開口45に設けられており、基部52bが、軸52aによって、側板46,46間に回動可能に支持されている。軸52aは側板46、46に固定されている。
連動部材53は、側板46、46間に配置されたリンクで構成され、ピン51pで係合フック51に回動可能に連結され、ピン52pで操作レバー52に回動可能に連結されている。
図8において、操作レバー52の操作部52cを後方へ引くようにして操作レバー52を仮想線で示すように回動させると、連動部材53による連動作用で係合フック51が仮想線で示すように後方へ回動し、フック部51fによるキャリア12(図1)に対する係合が解除される。
【0026】
図9に示すように、係合フック51と連動部材53とを連結するピン51pは、その端部(左端または右端)51bが、側板46の内面46bに当接することによって、係合フック51および連動部材53からの抜けが防止される。
このように構成すると、ピン51pに留め具(サークリップ等)を設ける必要がなくなるとともに、ピン51pへの留め具用の加工も不要となる。
これと同様、図10に示すように、操作レバー52と連動部材53とを連結するピン52pは、その端部(左端または右端)52bが、側板46の内面46bに当接することによって、操作レバー52および連動部材53からの抜けが防止される。
このように構成すると、ピン52pに留め具(サークリップ等)を設ける必要がなくなるとともに、ピン52pへの留め具用の加工も不要となる。
【0027】
以上のような後部係止部材40および係合操作機構50はユニットとして構成され、トランク60に組み付けられる。
図1〜図6に示すように、トランク本体61には、後部係止部材40および係合操作機構50を受け入れる凹部61hが設けられている。
係合操作機構50が組み込まれた後部係止部材40は、トランク本体61の凹部61hに嵌め込まれ、ボルト61bで固定される。図6に示すように、後部係止部材40の取付部47にはナット47nが埋め込まれており、このナット47nにボルト61bを結合させることで、係合操作機構50が組み込まれた後部係止部材40がトランク本体61に固定される。
【0028】
図2に示すように、前部係止部31は、その屈曲部がその屈曲方向へ2段に延びている。すなわち、前部係止部31は第1フック部31f1と、第2フック部31f2とを有している。
このように構成すると、何らかの理由(例えばキャリア12および/またはトランク本体61の瞬間的な変形)により第1段目の屈曲部(31f1)がキャリア12から外れたとしても、第2段目の屈曲部(31f2)で、キャリア12に対する係止を保持することが可能なる。屈曲部を1段で構成して、単純にその長さを長くした場合には、トランク装置のキャリアに対する着脱操作が行いにくくなるおそれがあるが、2段とすることによって、そのような不具合も回避することができる。
【0029】
図11にも示すように、前部係止部材30は左右一対の前部係止フック31が形成された、プレート状の一体成型品であり、リベット33によってトランク本体61に固定されている。
図1および図12に示すように、トランク装置20は、左右の前部係止フック31をキャリア12の前部係止部12fに係止し、後部係止部41をキャリア12の後部係止部12rに係止し、その後、操作レバー52の操作部52cを前方へ回動させて係合フック51をキャリア12の中央係止部12cに係合させることでキャリア12に装着される。
【0030】
図2および図12〜図14に示すように、トランク60は、トランク本体61と、このトランク本体61に対して開閉可能に設けられたリッド62とを備えている。
このトランク60は、金属フレーム64とファスナー65とを備えており、そのいずれかを開閉操作することにより、リッド62を開閉することができる。
すなわち、図13に示すように、留め具60d、60dを外して金属フレーム64を開くことでリッド62を開くことができる。
また、図14に示すように、ファスナー65を開くことでリッド62を広げてトランク容量を増大させることができる。図2および図14において、66は、ファスナー65を開いてリッド62を広げた際の、リッド62の開度を規制するとともに、広げたリッド62で容量が増大されたトランク60の内外を区画するエキスパンダーシートである。
このように構成すると、ハードケースでありながら、ファスナー65およびエキスパンダーシート66による開閉によって、トランク容量の調整を行うことができる。
【0031】
図14に示すように、ファスナー65は、トランク60の3辺に設けられていて、3辺のみが開閉される構造となっている。
これにより、トランクとしての剛性が確保される。
一般に、ファスナーおよびエキスパンダーシートによる開閉構造は、全周にファスナーが設けられていてリッドが平行移動する構造であるが、そのような構造では、リッドが不安定になり、特に二輪車等の鞍乗型車両には不向きである。
これに対し、この実施の形態に構造によれば、ファスナー65がトランク60の3辺に設けられていて、3辺のみが開閉される構造となっているので、トランクとしての剛性が確保される。
【0032】
図2および図13に示すように、金属フレーム64は、トランク本体61の上縁に設けられた本体側フレーム64bと、リッド62の下縁に設けられたリッド側フレーム64cと、これら両フレーム64b、64cを前部にて回動可能に連結するヒンジ64h(図14参照)とを備え、このヒンジ64h回りに、リッド62を開閉することができる。図中、67は、両フレーム64b、64cの回動角を規制すべく、両フレームを連結する回動規制ベルト、69(図13)はインナーバッグである。
図2に示すように、本体側フレーム64bは、その口縁内側に沿ってリッド62側に突出する突条64pを有している一方、リッド側フレーム64cは、その口縁内側に沿って前記突条64pを受け入れる凹溝64gと、この凹溝64g内に収容されたチューブ状シール64sとを有している。リッド62が閉じられると、突条64pの先端部分が凹溝64gに入り込んでチューブ状シール64sに食い込むようにして当接する。このような構成によると、シール性が向上する。
【0033】
ヒンジ64hは、両フレーム64b、64cにリベット64rで固定される。
この実施の形態では、リッド側フレーム64cに対する両端のリベットでそれぞれ脚部材64dを固定するとともに、前部係止部材30にも第1脚部34,34(図3,図11)を設けて、吊り下げハンドル63を上にしてトランク60を床置きした場合にも、トランク60が略水平に保たれるようにしてある。
また、図2および図11に示すように、前部係止部材30の底部に第2脚部35,35を設けるとともに、後部係止部材40にも脚部48,48を設け、リッド62を上にしてトランク60を床置きした場合にも、トランク60が略水平に保たれるようにしてある。第2脚部35,35、脚部48,48の高さは、係合フック51が接地しない高さとしてある。
【0034】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変形実施可能である。
【符号の説明】
【0035】
10:鞍乗型車両、12:キャリア、20:トランク装置、21:取付面、30:部材(前部係止部材)、31:前部係止フック(前部係止部)、40:部材(後部係止部材)、41:後部係止フック(後部係止部)、51:係合フック、52:操作レバー、53:連動部材、60:トランク、60r:リブ、63:吊り下げハンドル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両(10)に設けられたキャリア(12)と、
物品を収納するトランク(60)を有し、前記キャリア(12)に着脱自在に取り付けられるトランク装置(20)と、
車両前後方向に関し、前記トランク装置(20)における前記キャリア(12)に対する取付面(21)の前後においてキャリア(12)側に突出する前部係止部(31)および後部係止部(41)と、
操作者の操作に従って作動し、前記キャリア(12)に係合することにより、前記トランク装置(20)をキャリア(12)に固定する係合フック(51)と、
を備えたトランク装置(20)の取付構造であって、
前記前部係止部(31)および後部係止部(41)は、前方/後方のうち同一方向に屈曲させた前部係止フック(31)および後部係止フック(41)で構成するとともに、
前記係合フック(51)は、前記両係止フック(31,41)の屈曲方向とは反対方向に屈曲し、前記操作者による固定操作時に、前記両係止フック(31,41)の屈曲方向とは反対方向に移動して前記キャリア(12)と係合する係合フック(51)で構成したことを特徴とする鞍乗型車両用トランク装置の取付構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記前部係止フック(31)および後部係止フック(41)は、それぞれ、前記トランク装置(20)が備えるトランク(60)とは別部材(30,40)で構成されて前記トランク(60)に結合され、
前記係合フック(51)は、前記前部係止フック(31)または後部係止フック(41)を構成する部材(30または40)に取り付けられ、
前記トランク(60)は、前記前部係止フック(31)、後部係止フック(41)を構成するそれぞれの部材(30,40)間において前後方向に延び、該トランク(60)と一体に形成された1本以上のリブ(63)を有していることを特徴とする鞍乗型車両用トランク装置の取付構造。
【請求項3】
請求項2において、
前記両係止フック(31,41)を構成する前後の部材(30,40)のうち、前記係合フック(51)が取り付けられている側と反対側の部材で構成される係止フックは、その屈曲部がその屈曲方向へ2段に延びていることを特徴とする鞍乗型車両用トランク装置の取付構造。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項において、
前記前部係止フック(31)および後部係止フック(41)は、いずれも後方に屈曲しているとともに、これら前部係止フック(31)と後部係止フック(41)との間に前記係合フック(51)が配置され、後部係止フック(41)は前記トランク装置(20)が備えるトランク(60)とは別部材(40)で構成されて前記トランク(60)に結合され、該別部材(40)に、前記係合フック(51)と、この係合フック(51)を作動させるための操作レバー(52)と、この操作レバー(52)と前記係合フック(51)とを連動させる連動部材(53)とが組み込まれていることを特徴とする鞍乗型車両用トランク装置の取付構造。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項において、
前記キャリア(12)は車両後部に設けられているとともに、前記トランク(60)の後部にはトランク(60)を吊り下げるための吊り下げハンドル(63)が設けられ、
前記前部係止フック(31)および後部係止フック(41)は、いずれも後方に屈曲しているとともに、前記係合フック(51)を作動させるための操作レバー(52)は、前記後部係止フック(41)の後方に設けられ、かつ操作レバー(52)の操作部(52c)を後方へ移動させることで、前記係合フック(51)による前記キャリア(12)への係合が解除されることを特徴とする鞍乗型車両用トランク装置の取付構造。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の鞍乗型車両用トランク装置の取付構造を備えたことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項7】
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の鞍乗型車両用トランク装置の取付構造を備えたことを特徴とする鞍乗型車両用トランク装置。
【請求項1】
鞍乗型車両(10)に設けられたキャリア(12)と、
物品を収納するトランク(60)を有し、前記キャリア(12)に着脱自在に取り付けられるトランク装置(20)と、
車両前後方向に関し、前記トランク装置(20)における前記キャリア(12)に対する取付面(21)の前後においてキャリア(12)側に突出する前部係止部(31)および後部係止部(41)と、
操作者の操作に従って作動し、前記キャリア(12)に係合することにより、前記トランク装置(20)をキャリア(12)に固定する係合フック(51)と、
を備えたトランク装置(20)の取付構造であって、
前記前部係止部(31)および後部係止部(41)は、前方/後方のうち同一方向に屈曲させた前部係止フック(31)および後部係止フック(41)で構成するとともに、
前記係合フック(51)は、前記両係止フック(31,41)の屈曲方向とは反対方向に屈曲し、前記操作者による固定操作時に、前記両係止フック(31,41)の屈曲方向とは反対方向に移動して前記キャリア(12)と係合する係合フック(51)で構成したことを特徴とする鞍乗型車両用トランク装置の取付構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記前部係止フック(31)および後部係止フック(41)は、それぞれ、前記トランク装置(20)が備えるトランク(60)とは別部材(30,40)で構成されて前記トランク(60)に結合され、
前記係合フック(51)は、前記前部係止フック(31)または後部係止フック(41)を構成する部材(30または40)に取り付けられ、
前記トランク(60)は、前記前部係止フック(31)、後部係止フック(41)を構成するそれぞれの部材(30,40)間において前後方向に延び、該トランク(60)と一体に形成された1本以上のリブ(63)を有していることを特徴とする鞍乗型車両用トランク装置の取付構造。
【請求項3】
請求項2において、
前記両係止フック(31,41)を構成する前後の部材(30,40)のうち、前記係合フック(51)が取り付けられている側と反対側の部材で構成される係止フックは、その屈曲部がその屈曲方向へ2段に延びていることを特徴とする鞍乗型車両用トランク装置の取付構造。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項において、
前記前部係止フック(31)および後部係止フック(41)は、いずれも後方に屈曲しているとともに、これら前部係止フック(31)と後部係止フック(41)との間に前記係合フック(51)が配置され、後部係止フック(41)は前記トランク装置(20)が備えるトランク(60)とは別部材(40)で構成されて前記トランク(60)に結合され、該別部材(40)に、前記係合フック(51)と、この係合フック(51)を作動させるための操作レバー(52)と、この操作レバー(52)と前記係合フック(51)とを連動させる連動部材(53)とが組み込まれていることを特徴とする鞍乗型車両用トランク装置の取付構造。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項において、
前記キャリア(12)は車両後部に設けられているとともに、前記トランク(60)の後部にはトランク(60)を吊り下げるための吊り下げハンドル(63)が設けられ、
前記前部係止フック(31)および後部係止フック(41)は、いずれも後方に屈曲しているとともに、前記係合フック(51)を作動させるための操作レバー(52)は、前記後部係止フック(41)の後方に設けられ、かつ操作レバー(52)の操作部(52c)を後方へ移動させることで、前記係合フック(51)による前記キャリア(12)への係合が解除されることを特徴とする鞍乗型車両用トランク装置の取付構造。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の鞍乗型車両用トランク装置の取付構造を備えたことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項7】
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の鞍乗型車両用トランク装置の取付構造を備えたことを特徴とする鞍乗型車両用トランク装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−95227(P2013−95227A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238442(P2011−238442)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
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