説明

音場可視化システム

【課題】音場をリアルタイムにその場で可視化することができる音場可視化システムを提供すること。
【解決手段】(a)その場における音圧を計測し、その音圧に応じた音圧信号を生成する音圧信号生成手段13、15、(b)前記音圧信号を、トリガー信号に応じてサンプリングするサンプリング手段17、及び(c)前記サンプリング手段17によりサンプリングされた前記音圧信号に基づいて表示を行う表示手段21、23を備えた音圧表示手段9を複数配置して成る音場表示部7と、前記音場表示部7に供給される音声の周期に基づき前記トリガー信号を生成するトリガー信号生成部5と、前記トリガー信号生成部5で生成したトリガー信号を、複数の前記音圧表示手段9それぞれの前記サンプリング手段17に供給する制御手段11と、を備えることを特徴とする音場可視化システム1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音場を可視化することができる音場可視化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、騒音分布の把握、音響機器の設計、開発等に用いるために、音場を可視化することができる音場可視化システムが提案されている。例えば、特許文献1の技術では、音響空間に複数の音光変換器と高速度撮影が可能な撮像装置を配置する。音光変換器は音圧に応じた輝度で発光する。撮像装置により音光変換器の発光を高速度撮影し、撮影した映像は一旦記憶され、その後スロー再生される。そのスロー再生の映像により、音場を可視化する。
【0003】
また、特許文献2の技術では、音場空間に配設された複数のマイクロホンの出力信号に応じて、表示体における対応部位を機械的に変位させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−60676号公報
【特許文献2】特開平9−81066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、高速度撮影した映像を一旦録画し、再生用ディスプレイにおいてスロー再生する必要があるので、音場をリアルタイムにその場で可視化することができない。
【0006】
また、特許文献2の技術は、機械的に動作する表示体を動作させるので、表示体の表示は実際の音場の変化よりも大きく遅れてしまい、音場をリアルタイムに可視化することができない。
【0007】
本発明は以上に点に鑑みなされたものであり、音場をリアルタイムにその場で可視化することができる音場可視化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の音場可視化システムは、(a)その場における音圧を計測し、その音圧に応じた音圧信号を生成する音圧信号生成手段、(b)前記音圧信号を、トリガー信号に応じてサンプリングするサンプリング手段、及び(c)前記サンプリング手段によりサンプリングされた前記音圧信号に基づいて表示を行う表示手段を備えた音圧表示手段を複数配置して成る音場表示部を備える。
【0009】
複数配置された音圧表示手段は、それぞれが、その場所での音圧を計測して音圧信号を生成し、その音圧信号に応じた発光を行う。そのため、音場表示部は、計測する音場における音圧の分布を、複数の音圧表示手段の表示状態により表すことができる。
【0010】
また、音圧表示手段において表示に用いられる音圧信号は、音場表示部に供給される音声の周期に基づき生成されたトリガー信号によりサンプリングされているので、音圧表示手段の表示は、恒常的に、その場での音圧の周期変化における一定の位相を反映した発光となる。すなわち、音圧表示手段の表示は、音圧の周期的な変動にともなって変化するのではなく、周期音の波動現象(反射、回折、干渉等)に応じて変化する。そのため、音場表示部における表示状態は、周期音の波動現象やその変化を、リアルタイムにその場で可視化するものとなる。
【0011】
前記トリガー信号生成部は、例えば、前記音場表示部に供給される音声を計測して音声信号を生成する音声信号生成手段を備え、前記音声信号生成手段で生成した音声信号に基づき前記トリガー信号を生成することができる。こうすることにより、トリガー信号を容易且つ正確に生成することができる。
【0012】
この場合、前記音声信号生成手段は、前記音圧表示手段が備える音圧信号生成手段とすることができる。こうすることで、トリガー信号の生成に用いる音圧表示手段の位相(表示状態)は、例え音源が動いても変化しない。また、その音圧表示手段の周囲で音源が動いた場合、その音圧表示手段における表示を基準として、その周囲の領域における音圧の変化が明確になる。
【0013】
また、前記トリガー信号生成部は、例えば、前記音場表示部に供給される音声の発音に用いられる音声信号を取得する音声信号取得手段を備え、前記音声信号取得手段で取得した音声信号に基づき前記トリガー信号を生成することができる。こうすることにより、トリガー信号を容易且つ正確に生成することができる。また、トリガー信号生成用の音声信号を取得するためのマイクロホン等が不要となる。
【0014】
本発明の音場可視化システムでは、複数の前記音圧表示手段のそれぞれについて、前記音圧信号のゲインを設定するゲイン設定手段を備えることが好ましい。この場合、ゲインの調整が容易になる。
【0015】
本発明の音場可視化システムにおいて、複数の前記音圧表示手段は、所定の間隔で配置され、複数の前記音圧表示手段は、前記音圧信号のうち、波長が前記間隔の2倍未満である成分を減衰させるフィルタ手段を備えることが好ましい。この場合、音場表示部によって音場の音圧分布を正確に表示できる。
【0016】
前記トリガー信号の周波数は、例えば、前記音場表示部に供給される音声の周波数に、所定の係数(1よりわずかに大きい係数、又は1よりわずかに小さい係数)を乗じた値とすることができる。こうすることにより、音圧表示手段で表示される音場の位相を、時間とともに徐々に進ませたり遅らせたりすることができる。その結果、音場表示部に、徐々に進行する波形を表示することができる。
【0017】
前記音圧表示手段は、前記サンプリング手段によりサンプリングされた音圧信号をホールドするホールド手段を備えることが好ましい。この場合、サンプリングされない期間においても、音圧表示手段の表示を行うことができ、表示が見やすくなる。
【0018】
前記制御手段は、複数の前記音圧表示手段を直列に接続した信号線により、前記トリガー信号を、複数の前記音圧表示手段それぞれの前記サンプリング手段に供給することができる。この場合、信号線を単純化することができる。また、この信号線により、ゲイン制御信号や電源を音圧表示手段に供給してもよい。
【0019】
前記トリガー信号生成部は、例えば、ディジタルシグナルプロセッサを用いて、前記トリガー信号を生成することが好ましい。この場合、正弦波だけでなく、倍音を多く含む楽器音や人の声などの音に対してもトリガーをかけることができる。
【0020】
前記表示手段は、視覚的な表示を行うことができるものであれば特に限定されない。例えば、LED等の発光素子等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】音場可視化システム1の構成を表すブロック図である。
【図2】音圧−光変換装置9の構成を表すブロック図である。
【図3】音場可視化システム1の使用例を表す説明図である。
【図4】音圧−光変換装置9の配列周期Aが7.5cmであり、音圧の波長が34cmである例において、音圧の計測値と音圧波形とを表すグラフである。
【図5】音圧−光変換装置9の配列周期Aが7.5cmであり、音圧の波長が12.4cmである例において、音圧の計測値と音圧波形とを表すグラフである。
【図6】音圧−光変換装置9の配列周期Aが7.5cmであり、音圧の波長が7.7cmである例において、音圧の計測値と音圧波形とを表すグラフである。
【図7】音圧−光変換装置9の配列周期Aが7.5cmであり、音圧の波長が27.6cmである例において、音圧分布を測定した結果を表す説明図である。
【図8】音圧−光変換装置9の配列周期Aが7.5cmであり、音圧の波長が9.7cmである例において、音圧分布を測定した結果を表す説明図である。
【図9】音場可視化システム1の構成を表すブロック図である。
【図10】音場可視化システム1の構成を表すブロック図である。
【図11】制御装置11と音圧−光変換装置9との別形態における接続態様を表すブロック図である。
【図12】制御装置11と音圧−光変換装置9との別形態における接続態様を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
1.音場可視化システム1の構成
まず、音場可視化システム1の全体構成を図1に基づいて説明する。図1は音場可視化システム1の構成を表すブロック図である。
【0023】
音場可視化システム1は、トリガー信号生成用集音装置(音声信号生成手段)3、トリガー信号生成装置(トリガー信号生成部)5、及び音場計測表示装置(音場表示部)7を備える。
【0024】
トリガー信号生成用集音装置3は、音源により生じる音から音声信号を生成するマイクロホンとそのアンプ(図示略)から成る。トリガー信号生成用集音装置3は、音場計測表示装置7で表示する音場を発生させている音源を収音できる場所へ設置する。
【0025】
トリガー信号生成装置5は、周知のディジタルシグナルプロセッサ(DSP)を備えている。トリガー信号生成装置5は、トリガー信号生成用集音装置3で生成した音声信号を取り込む。そして、DSPを用いて、その音声信号に基づきトリガー信号を生成する。具体的には、取り込んだ音声信号の周期がTであるとすると、周期がnTであるパルス信号を生成し、これをトリガー信号とする。ここで、nは整数であり、例えば、1、2、3、4、5、6・・・・の中から適宜設定できる。例えば、取り込んだ音声信号の周波数が500Hzである場合、パルス信号の周期を、2msec、又は4msecとすることができる。
【0026】
音場計測表示装置7は、複数の音圧−光変換装置(音圧表示手段)9と、制御装置(制御手段)11とを備える。複数の音圧−光変換装置9は、板状または網目状の基材の上に、一定の間隔で規則正しく碁盤の目状に配列されている。複数の音圧−光変換装置9の配列周期は縦、横ともに、Aセンチメートルである。
【0027】
制御装置11はトリガー信号生成装置5で生成されたトリガー信号を、複数の音圧−光変換装置9のそれぞれに供給するバッファーとして機能する。また、制御装置11は、複数の音圧−光変換装置9のそれぞれについて、後述する信号増幅回路15におけるゲイン、特性、動作等を制御する機能を有する。
【0028】
次に、音圧−光変換装置9の構成を図2に基づいて説明する。図2は音圧−光変換装置9の構成を表すブロック図である。
音圧−光変換装置9は、マイクロホン(音圧信号生成手段)13、信号増幅回路15、サンプリング回路(サンプリング手段)17、発光素子ドライブ回路19、青色発光素子(表示手段)21、及び赤色発光素子(表示手段)23から構成される。
【0029】
マイクロホン13は、周知の構造を有するマイクロホンであり、音場計測表示装置7が設置された空間における音圧を計測し、その音圧に応じた音圧信号を生成する。
信号増幅回路15は、マイクロホン13が生成した音圧信号を、サンプリング回路17に必要な電圧レベルへ増幅させる。この増幅におけるゲインは、制御装置11から送られるゲイン制御信号により制御される。なお、ゲイン制御信号は、制御装置11から全ての音圧−光変換装置9に出力される。そのため、制御装置11は、全ての音圧−光変換装置9について、信号増幅回路15のゲインを一度に調整することができる。なお、ゲインは、ユーザが制御装置11に入力することで設定できる。また、外部から制御装置11にゲイン制御信号を入力するようにしてもよい。
【0030】
また、信号増幅回路15は、マイクロホン13が生成した音圧信号のうち、波長が音圧−光変換装置9の配列周期Aの2倍未満である成分を減衰させるフィルタ機能を備えている。
【0031】
サンプリング回路17は、信号増幅回路15で増幅した音圧信号について、制御装置11から供給されるトリガー信号に合わせてサンプリングする。具体的には、トリガー信号としてのパルス信号が入力したとき(ONのとき)は、所定時間だけ、音圧信号をサンプリングして取り込み、それ以外の時間帯ではサンプリングしない。なお、サンプリング回路17は、サンプリングした音圧信号を、次のパルス信号が入力するまで、ホールドすることもできる。
【0032】
発光素子ドライブ回路19は、サンプリングされた音圧信号を、青色発光素子21、及び赤色発光素子23が動作する電圧・電流まで増幅する。
青色発光素子21は、周知の青色に発光するLEDであり、同一の音圧−光変換装置9に含まれるマイクロホン13の近傍に配置される。青色発光素子21は、発光素子ドライブ回路19で増幅された音圧信号が負の場合に青色に発光し、それ以外の場合は発光しない。
【0033】
赤色発光素子23は、周知の赤色に発光するLEDであり、同一の音圧−光変換装置9に含まれるマイクロホン13の近傍に配置される。赤色発光素子23は、発光素子ドライブ回路19で増幅された音圧信号が正の場合に赤色に発光し、それ以外の場合は発光しない。
【0034】
2.音場可視化システム1の使用方法とその作用効果
(1)音場計測表示装置7を、音場を計測したい場所に設置する。また、トリガー信号生成用集音装置3を、音場計測表示装置7で表示する音場を発生している音源を収音できる場所へ設置する。
【0035】
平面上に配列された複数の音圧−光変換装置9は、それぞれが、その場所での音圧を計測して音圧信号を生成し、その音圧信号に応じた発光を行う。そのため、音場計測表示装置7は、計測する音場における音圧の分布を、複数の音圧−光変換装置9の発光状態により表示することができる。
【0036】
ここで、音圧−光変換装置9において発光に用いられる音圧信号は、計測する音場を発生させる音に対応する周期のトリガー信号によりサンプリングされているので、音圧−光変換装置9の発光は、恒常的に、その場での音圧の周期変化における一定の位相を反映した発光となる。すなわち、音圧−光変換装置9の発光は、音圧の周期的な変動にともなって変化するのではなく、周期音の波動現象(反射、回折、干渉等)に応じて変化する。
【0037】
そのため、音場計測表示装置7における発光状態は、周期音の波動現象やその変化を、リアルタイムにその場で可視化するものとなる。例えば、図3に示すように、音源101、剛板103に対し、音場計測表示装置7を配置し、音源101から正弦波を放射した場合、音場計測表示装置7には、音圧−光変換装置9の青色発光素子21が青く光る部分と、音圧−光変換装置9の赤色発光素子23が赤く光る部分とにより、進行波、回折波、反射波がリアルタイムにその場で可視化される。
(2)音場可視化システム1は、制御装置11により、複数の音圧−光変換装置9のそれぞれについて、信号増幅回路15のゲインを一度に調整できる。そのため、ゲインの調整が容易である。
(3)信号増幅回路15は、マイクロホン13が生成した音圧信号のうち、波長が、音圧−光変換装置9の配列周期Aの2倍未満である成分を減衰させる。そのことにより、音圧分布を正確に可視化できる。このことを、図4〜図8に基づいて説明する。
【0038】
図4〜図6は、横軸が音場計測表示装置7における横方向の位置を表し、縦軸が音圧を表すグラフである。図4〜6において、四角形の印が付されている位置が、音圧−光変換装置9が配置されている位置である。また、丸印が、音圧−光変換装置9で計測した音圧を表す。また、実線の曲線が、実際の音圧の変化を示す。
【0039】
図4は、音圧−光変換装置9の配列周期Aが7.5cmであり、音圧の波長が34cmである(音圧の波長が、音圧−光変換装置9の配列周期Aの2倍以上である)例である。この場合、音圧−光変換装置9による音圧の計測値(丸印)により、実際の音圧波形(実線の曲線)を可視化することができる。
【0040】
一方、図5は、音圧−光変換装置9の配列周期Aが7.5cmであり、音圧の波長が12.4cmである(音圧の波長が、音圧−光変換装置9の配列周期Aの2倍未満である)例である。この場合、音圧−光変換装置9による音圧の計測値(丸印)からは、点線の曲線で表される、本来含まれないはずの音圧波形が見えてしまい、実際の音圧波形(実線の曲線)を可視化することができない。
【0041】
また、図6は、音圧−光変換装置9の配列周期Aが7.5cmであり、音圧の波長が7.7cmである(音圧の波長が、音圧−光変換装置9の配列周期Aの2倍未満である)例である。この場合も、音圧−光変換装置9による音圧の計測値(丸印)からは、点線の曲線で表される、本来含まれないはずの音圧波形が見えてしまい、実際の音圧波形(実線の曲線)を可視化することができない。
【0042】
図7、図8は、横軸が音場計測表示装置7における横方向の位置を表し、縦軸が音場計測表示装置7における縦方向の位置を表し、色の濃淡が音圧を表す図である。図7、図8は、いずれも、中心の点音源から発生した音の音圧分布を、音場計測表示装置7で計測した結果を表す。図7は、音圧−光変換装置9の配列周期Aが7.5cmであり、音圧の波長が27.6cmである(音圧の波長が、音圧−光変換装置9の配列周期Aの2倍以上である)例である。この例では、中心から同心円状に広がる音圧分布が正しく可視化されている。
【0043】
一方、図8は、音圧−光変換装置9の配列周期Aが7.5cmであり、音圧の波長が9.7cmである(音圧の波長が、音圧−光変換装置9の配列周期Aの2倍未満である)例である。この例では、横軸方向と縦軸方向とに、本来含まれないはずの、波長が27.6cmの成分が表示されてしまっている。
【0044】
以上のように、音圧の波長が、音圧−光変換装置9の配列周期Aの2倍未満であると、本来含まれないはずの音圧波形が見えてしまうが、信号増幅回路15が音圧−光変換装置9の配列周期Aの2倍未満である成分を減衰させることにより、そのような問題が生じない。
(4)サンプリング回路17は、サンプリングした音圧信号を、次のトリガー信号が入力するまで、ホールドすることができる。この場合、サンプリングされない期間において、青色発光素子21、又は赤色発光素子23が暗くならず、表示が見やすくなる。なお、次のトリガー信号が入力されると、ホールドは終了し、新たにサンプリングされた音圧信号に基づく表示が行われる。
(5)トリガー信号生成装置5は、DSPを用いて、音声信号の周期に基づきトリガー信号を生成する。そのため、音声信号が正弦波の場合だけでなく、倍音を多く含む楽器音や人の声、パルス列などの音である場合でもトリガー信号を生成することができる。
(第2の実施形態)
1.音場可視化システム1の構成
本実施形態における音場可視化システム1の全体構成を図9に基づいて説明する。図9は音場可視化システム1の構成を表すブロック図である。
【0045】
音場可視化システム1は、トリガー信号生成装置(トリガー信号生成部、音声信号取得手段)5、音場計測表示装置(音場表示部)7、及び信号分岐装置25を備える。
トリガー信号生成装置5、及び音場計測表示装置7の構成は前記第1の実施形態と同様である。信号分岐装置25は、信号発生器105からスピーカ107に供給される音声信号を途中で分岐して取り出し、トリガー信号生成装置5へ出力する装置である。なお、この音声信号は、スピーカ107における音声の発音に用いられ、その音声は、音場計測表示装置7において計測する音場を発生させる。トリガー信号生成装置5は、信号分岐装置25が取り出した音声信号に基づき、前記第1の実施形態と同様にして、トリガー信号を生成し、そのトリガー信号を制御装置11に出力する。
【0046】
2.音場可視化システム1の使用方法とその作用効果
本実施形態の音場可視化システム1は、前記第1の実施形態と同様に使用することができ、略同様の作用効果を奏する。また、信号発生器105から出力される音声信号を用いてトリガー信号を作成するので、トリガー信号生成用の音声信号を取得するためのマイクロホン等が不要となる。
(第3の実施形態)
1.音場可視化システム1の構成
本実施形態における音場可視化システム1の全体構成を図10に基づいて説明する。図10は音場可視化システム1の構成を表すブロック図である。
【0047】
音場可視化システム1は、トリガー信号生成装置(トリガー信号生成部)5、及び音場計測表示装置(音場表示部)7を備える。トリガー信号生成装置5、及び音場計測表示装置7の構成は前記第1の実施形態と同様である。
【0048】
本実施形態では、複数の音圧−光変換装置9のうちの、1つの音圧−光変換装置9から、信号増幅回路15で増幅した音声信号(音圧信号)を取り出し(図2参照)、その音声信号を用いて、トリガー信号生成装置5によりトリガー信号を生成する。トリガー信号生成装置5がトリガー信号を生成する方法は前記第1の実施形態と同様である。生成したトリガー信号は制御装置11に出力される。
【0049】
2.音場可視化システム1の使用方法とその作用効果
本実施形態の音場可視化システム1は、前記第1の実施形態と同様に使用することができ、略同様の作用効果を奏する。
【0050】
さらに、本実施形態の音場可視化システム1は、1つの音圧−光変換装置9から取り出した音声信号を用いてトリガー信号を生成しているので、その音圧−光変換装置9の位相(発光状態)は、例え音源が動いても変化しない。また、その音圧−光変換装置9の周囲で音源が動いた場合、その音圧−光変換装置9における表示を基準として、その周囲の領域における音圧の変化が明確になる。
【0051】
尚、本発明は前記実施形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、図11に示すように、制御装置11及び複数の音圧−光変換装置9を直列に接続した信号線27により、トリガー信号、ゲイン制御信号、電源を各音圧−光変換装置9に供給してもよい。また、例えば、図12に示すように、信号線27は、1本、または1組の線で配線し、これに対して各音圧―光変換装置9をぶら下げる構成としてもよい。この場合、信号線を単純化することができる。ただし、電源の供給については、信号増幅回路15用の電源と、発光素子ドライブ回路19用の電源とは、分けて給電することが好ましい。こうすることにより、信号増幅回路15、発光素子ドライブ回路19間の電源電圧変動等の干渉を防止することができる。
【0052】
また、トリガー信号の生成に用いる音声信号の周期がTである場合、トリガー信号の周期を、nT(nは整数)からわずかにずらすことができる。こうすることにより、音圧−光変換装置9で表示される波面を、時間とともに徐々に進ませたり後退させたりすることができる。トリガー信号の周波数をずらすには、補正前のトリガー信号(周期がnTであるもの)の周波数に、所定の係数を乗じた周波数を、補正後のトリガー信号の周波数とすればよい。補正後のトリガー信号を用いると、音の周波数が変化しても、一定の速さで波面が移動するように表示させることができる。例えば、周波数で0.3%ずらすと、音場計測表示装置7に、あたかも音速が1m/sとなったように音場を表示することができる。
【0053】
前記所定の係数は、音場計測表示装置7に表示される波面の移動が、肉眼で追える程度の速さになるように設定するのが好ましい。例えば、1m四方程度の音場計測装置7においては、周波数で、−0.3〜+0.3%の範囲が好ましい。例えば10m四方程度の音場計測装置7においては周波数で、−3〜+3%の範囲が好ましい。
【0054】
また、トリガー信号生成装置5は、アナログ処理(例えばレベル検出の手法)でトリガー信号を生成してもよい。
また、信号増幅回路15は、人間に聞こえない低い音や高い音を減衰させるA特性のようなフィルタ特性を持っていてもよい。
【0055】
また、複数の音圧−光変換装置9は、2次元平面上で任意の並べ方で並べることができる。また、複数の音圧−光変換装置9は、3次元に配列することができる。この場合、3次元の音場をリアルタイムにその場で可視化することができる。
【符号の説明】
【0056】
1・・・音場可視化システム、3・・・トリガー信号生成用集音装置、
5・・・トリガー信号生成装置、7・・・音場計測表示装置、
9・・・音圧−光変換装置、11・・・制御装置、13・・・マイクロホン、
15・・・信号増幅回路、17・・・サンプリング回路、
19・・・発光素子ドライブ回路、21・・・青色発光素子、
23・・・赤色発光素子、25・・・信号分岐装置、27・・・信号線、
101・・・音源、103・・・剛板、105・・・信号発生器、
107・・・スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)その場における音圧を計測し、その音圧に応じた音圧信号を生成する音圧信号生成手段、(b)前記音圧信号を、トリガー信号に応じてサンプリングするサンプリング手段、及び(c)前記サンプリング手段によりサンプリングされた前記音圧信号に基づいて表示を行う表示手段を備えた音圧表示手段を複数配置して成る音場表示部と、
前記音場表示部に供給される音声の周期に基づき前記トリガー信号を生成するトリガー信号生成部と、
前記トリガー信号生成部で生成したトリガー信号を、複数の前記音圧表示手段それぞれの前記サンプリング手段に供給する制御手段と、
を備えることを特徴とする音場可視化システム。
【請求項2】
前記トリガー信号生成部は、前記音場表示部に供給される音声を計測して音声信号を生成する音声信号生成手段を備え、前記音声信号生成手段で生成した音声信号に基づき前記トリガー信号を生成することを特徴とする請求項1記載の音場可視化システム。
【請求項3】
前記音声信号生成手段は、前記音圧表示手段が備える音圧信号生成手段であることを特徴とする請求項2記載の音場可視化システム。
【請求項4】
前記トリガー信号生成部は、前記音場表示部に供給される音声の発音に用いられる音声信号を取得する音声信号取得手段を備え、前記音声信号取得手段で取得した音声信号に基づき前記トリガー信号を生成することを特徴とする請求項1記載の音場可視化システム。
【請求項5】
複数の前記音圧表示手段のそれぞれについて、前記音圧信号のゲインを設定するゲイン設定手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の音場可視化システム。
【請求項6】
複数の前記音圧表示手段は、所定の間隔で配置され、
複数の前記音圧表示手段は、前記音圧信号のうち、波長が前記間隔の2倍未満である成分を減衰させるフィルタ手段を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の音場可視化システム。
【請求項7】
前記トリガー信号の周波数が、前記音場表示部に供給される音声の周波数に、所定の係数を乗じた値であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の音場可視化システム。
【請求項8】
前記音圧表示手段は、前記サンプリング手段によりサンプリングされた音圧信号をホールドするホールド手段を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の音場可視化システム。
【請求項9】
前記制御手段は、複数の前記音圧表示手段を直列に接続した信号線により、前記トリガー信号を、複数の前記音圧表示手段それぞれの前記サンプリング手段に供給することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の音場可視化システム。
【請求項10】
前記トリガー信号生成部は、ディジタルシグナルプロセッサを用いて、前記トリガー信号を生成することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の音場可視化システム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−118512(P2012−118512A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235106(P2011−235106)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】