説明

音声伝達装置

【課題】利用者に与える違和感や不快感を低減でき、駆動電力も少なく、小型であって、音漏れが少なく、騒音環境下であっても聞き取りやすい音声伝達装置を提供する。
【解決手段】音声伝達装置100は、音声に対応して伝えられる信号により振動する振動子111と、振動子111の振動が伝えられて振動して、人体に直接又は間接的に接触させられることにより人体に振動を伝え、耳介を振動させることにより鼓膜に振動を伝えるとともに、振動により外耳道内に気導音を生成して鼓膜に伝える振動部112と、振動部112を耳介に当接するように保持する保持部120とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に振動を伝え、耳介を振動させることにより鼓膜に振動を伝えるとともに、振動により外耳道内に気導音を生成して鼓膜に伝える音声伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドホン等では、空気の振動により音声が伝達する気導音を発生する通常のスピーカを用いたものが多い。この従来のヘッドホン等では、外耳道にイヤホンを挿入又は覆う形での形状が必要であり、外部の音が聞こえにくく、装着に違和感がある上、音漏れが多いという問題があった。また、従来のヘッドホン等では、騒音の大きな環境下では聞き取りにくいという問題があった。
【0003】
これに対して、音漏れを解消でき、また、騒音環境下であっても聞き取りやすい音声伝達方法である骨伝導を用いるヘッドホン等が知られている(例えば、特許文献1)。骨伝導とは、人体の頭蓋骨に音声に対応した振動を伝え、その振動が骨を介して聴覚器官である蝸牛に伝わり、音声として認識させる音声伝達方法である。したがって、骨伝導では、空気が振動して音声伝達する気導音は発生せず、鼓膜を用いることなく、音声を伝達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−114512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、骨伝導では、骨を振動させるために、振動発生源を人体に対して所定以上の力で押し付ける必要があり、利用者に違和感や不快感を与えるおそれがあった。
【0006】
また、骨を振動させるためには、所定以上の振幅が必要であり、振動発生源を駆動するために大きな電力が必要であったり、振動発生源が大型化したりするおそれがあった。
【0007】
本発明の課題は、利用者に与える違和感や不快感を低減でき、駆動電力も少なく、小型であって、音漏れが少なく、騒音環境下であっても聞き取りやすい音声伝達装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の事項を提案している。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0009】
(1)本発明は、音声に対応して伝えられる信号により振動する振動子(111,211,311,411,511)と、前記振動子の振動が伝えられて振動して、耳、及び/又は、耳周辺の人体に直接又は間接的に接触させられることにより前記人体に振動を伝え、耳、及び/又は、耳周辺の人体を振動させることにより鼓膜に振動を伝えるとともに、振動により外耳道内に気導音を生成して鼓膜に伝える振動部(112,212,312,412,512)と、前記振動部を耳、及び/又は、耳周辺の人体に当接するように保持する保持部(120,220,320,420,520)と、を備える音声伝達装置(100,200,300,400,500)を提案している。
【0010】
この発明によれば、振動子は、音声に対応して伝えられる信号により振動する。振動部は、振動子の振動が伝えられて振動して、耳、及び/又は、耳周辺の人体に直接又は間接的に接触させられることにより人体に振動を伝え、耳、及び/又は、耳周辺の人体を振動させることにより鼓膜に振動を伝えるとともに、振動により外耳道内に気導音を生成して鼓膜に伝える。保持部は、振動部を耳、及び/又は、耳周辺の人体に当接するように保持する。したがって、音声伝達装置は、利用者に違和感を与えることなく、確実に耳、及び/又は、耳周辺の人体に振動を伝えることができる。また、音声伝達装置は、耳、及び/又は、耳周辺の人体に含まれる軟骨等の組織を介した振動伝導を利用するので、駆動電力も少なく、小型であって、音漏れが少なく、騒音環境下であっても聞き取りやすくできる。
【0011】
(2)本発明は、(1)に記載の音声伝達装置において、前記保持部(120)は、耳珠及び対耳珠の内側に挿入されて装着できるように形成され、前記振動部(112)を人体が直立した状態における耳垂上方の耳介に直接又は間接的に当接させて保持するように前記振動部の上方に接続して形成されていること、を特徴とする音声伝達装置(100)を提案している。
【0012】
この発明によれば、保持部は、耳珠及び対耳珠の内側に挿入されて装着できるように形成され、振動部を人体が直立した状態における耳垂上方の耳介に直接又は間接的に当接させて保持するように振動部の上方に接続して形成されている。したがって、音声伝達装置は、構成が簡単であり、小型かつ軽量な装置とすることができる。
【0013】
(3)本発明は、(1)に記載の音声伝達装置において、前記保持部(520)は、人体が直立した状態における耳輪の背後及び耳垂の背後に回り込み、かつ、耳珠に到るまで環状に繋がった形態で耳輪を囲んで装着できるように形成されており、前記振動部(512)を、耳輪背後又は耳珠の少なくとも一方の耳介に直接又は間接的に当接させて保持するように形成されていること、を特徴とする音声伝達装置(500)を提案している。
【0014】
この発明によれば、保持部は、人体が直立した状態における耳輪の背後及び耳垂の背後に回り込み、かつ、耳珠に到るまで環状に繋がった形態で耳輪を囲んで装着できるように形成されており、振動部を、耳輪背後又は耳珠の少なくとも一方の耳介に直接又は間接的に当接させて保持するように形成されている。したがって、音声伝達装置は、人体への装着が確実となり、運動による脱落することを防止できる。
【0015】
(4)本発明は、(1)に記載の音声伝達装置において、前記保持部(220)は、人体が直立した状態における耳輪の上方及び背後に回り込む形態で装着できるように形成され、前記振動部(212)を耳輪背後の耳介に直接又は間接的に当接させて保持するように形成されていること、を特徴とする音声伝達装置(200)を提案している。
【0016】
この発明によれば、保持部は、人体が直立した状態における耳輪の上方及び背後に回り込む形態で装着できるように形成され、振動部を耳輪背後の耳介に直接又は間接的に当接させて保持するように形成されている。したがって、音声伝達装置は、より確実に人体に装着されることができる。
【0017】
(5)本発明は、(1)に記載の音声伝達装置において、前記保持部は、眼鏡(1000)のつる端部が挿入される貫通又は非貫通の孔部(322)を有し、前記孔部に眼鏡のつる端部が挿入された状態で眼鏡が人体に装着されたときに、前記振動部(312)を耳輪背後の耳介に直接又は間接的に当接させて保持するように形成されていること、を特徴とする音声伝達装置(300)を提案している。
【0018】
この発明によれば、保持部は、眼鏡のつる端部が挿入される貫通又は非貫通の孔部を有し、孔部に眼鏡のつる端部が挿入された状態で眼鏡が人体に装着されたときに、振動部を耳輪背後の耳介に当接して保持するように形成されている。したがって、音声伝達装置は、眼鏡に接続するだけで、その眼鏡を装着した利用者に音声を耳介に含まれる軟骨を介した振動伝導により伝えることができる。
【0019】
(6)本発明は、(3)から(5)までのいずれか1項に記載の音声伝達装置において、前記振動部(212,312)は、前記保持部(220,320)により周りを覆われていること、を特徴とする音声伝達装置(200,300)を提案している。
【0020】
この発明によれば、振動部は、保持部により周りを覆われている。したがって、保持部の素材を適宜選択することにより、肌触りをよくすることができる。
【0021】
(7)本発明は、(3)から(6)までのいずれか1項に記載の音声伝達装置において、前記保持部(220,320)は、弾性変形が可能な金属線(221,321)を有すること、を特徴とする音声伝達装置(200,300)を提案している。
【0022】
この発明によれば、保持部は、弾性変形が可能な金属線を有する。したがって、音声伝達装置は、利用者の耳の形状に合わせて、保持部の形状を適宜調節することができ、より良好な状態で装着可能である。
【0023】
(8)本発明は、(7)に記載の音声伝達装置において、前記金属線(221,321)は、前記振動子(211,311)の振動が伝えられて振動すること、を特徴とする音声伝達装置(200,300)を提案している。
【0024】
この発明によれば、金属線は、振動子の振動が伝えられて振動する。したがって、音声伝達装置は、振動部から耳介に伝わる振動に加えて、金属線からも振動を耳介に伝えることができる。これにより、音声伝達装置は、より確実に振動を耳介に伝えることができる。
【0025】
(9)本発明は、(3)から(6)までのいずれか1項に記載の音声伝達装置において、前記保持部は、弾性変形が可能であって、前記振動子の振動が伝えられて振動する振動伝達線を有すること、を特徴とする音声伝達装置を提案している。
【0026】
この発明によれば、保持部は、弾性変形が可能であって、振動子の振動が伝えられて振動する振動伝達線を有する。したがって、音声伝達装置は、利用者の耳の形状に合わせて、保持部の形状を適宜調節することができ、より良好な状態で装着可能である。また、音声伝達装置は、振動部から耳介に伝わる振動に加えて、振動伝達線からも振動を耳介に伝えることができる。これにより、音声伝達装置は、より確実に振動を耳介に伝えることができる。
【0027】
(10)本発明は、(3)から(6)までのいずれか1項に記載の音声伝達装置において、前記保持部は、弾性変形が可能であって、前記振動子の振動が伝えられて振動する素材により形成されていること、を特徴とする音声伝達装置を提案している。
【0028】
この発明によれば、保持部は、弾性変形が可能であって、前記振動子の振動が伝えられて振動する素材により形成されている。したがって、音声伝達装置は、利用者の耳の形状に合わせて、保持部の形状を適宜調節することができ、より良好な状態で装着可能である。また、音声伝達装置は、振動部から耳介に伝わる振動に加えて、保持部の全体からも振動を耳介に伝えることができる。これにより、音声伝達装置は、より確実に振動を耳介に伝えることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、利用者に与える違和感や不快感を低減でき、駆動電力も少なく、小型であって、音漏れが少なく、騒音環境下であっても聞き取りやすい音声伝達装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1実施形態の音声伝達装置100を示す図である。
【図2】音声伝達装置100を耳に装着した状態を示す図である。
【図3】振動発生部110を振動部112の平面の法線方向から透視して示した図である。
【図4】図3中に矢印で示したD−D断面を示す図である。
【図5】音声伝達装置100の使用状態を説明するブロック図である。
【図6】第2実施形態の音声伝達装置200を示す透視図である。
【図7】音声伝達装置200を耳に装着した状態を示す図である。
【図8】第3実施形態の音声伝達装置300を示す透視図である。
【図9】音声伝達装置300を眼鏡1000に接続した状態を示す図である。
【図10】音声伝達装置300と眼鏡1000とを利用者が装着した状態を示す図である。
【図11】第4実施形態の音声伝達装置500を示す透視図である。
【図12】音声伝達装置500を耳に装着した状態を示す図である。
【図13】振動発生部510の配置例を示す透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、本実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組み合わせを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、本実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0032】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の音声伝達装置100を示す図である。
図2は、音声伝達装置100を耳に装着した状態を示す図である。
図3は、振動発生部110を振動部112の平面の法線方向から透視して示した図である。
図4は、図3中に矢印で示したD−D断面を示す図である。
図5は、音声伝達装置100の使用状態を説明するブロック図である。
【0033】
音声伝達装置100は、振動発生部110と、保持部120と、配線130とを備えている。
【0034】
振動発生部110は、振動子111と、振動部112と、両面テープ113と、枠部材114と、基材115とを備えている。
【0035】
振動子111は、増幅回路151等により増幅された可聴周波数帯域の音声信号に基づいて、駆動回路140が生成した駆動信号により駆動されて、音声信号に応じた振動を行う。また、振動子111は、両面テープ113を用いて振動部112に対して全面が貼り付けられており、振動子111の振動は、そのまま振動部112へ伝わる。
【0036】
本実施形態の振動子111は、圧電セラミックのバイモルフ素子であり、ベンディングモード(撓み振動)で駆動する。振動子111に使用する圧電材料は、高変位な圧電材料を積層した素子であり、アンプから音声信号に忠実な電圧を圧電素子へ印加することにより、振動子111は、(結果として)音声信号を再現するように振動する。
【0037】
振動部112は、薄板状の部材であり、周縁部分が基材115に対して接着又は両面テープを用いて固定されている。また、振動部112の中心付近には、上述したように振動子111が両面テープ113により貼り付けられている。したがって、振動部112は、振動子111が振動すると、振動子111の撓み振動とともに撓み振動を行う。
本実施形態の振動部112としては、アクリル、PET等の樹脂素材が望ましいが、ガラス素材でもよい。また、振動部112の外側に、さらにシリコンゴムにより被覆して、肌触りを良好にしてもよい。
【0038】
両面テープ113は、振動子111と振動部112とを接合するための接着部材である。
【0039】
枠部材114は、振動発生部110の振動部112とは反対側、及び、外周領域を形成する部材である。枠部材114と振動子111との間には、隙間Sが設けられている。この隙間Sを設けることにより、振動子111及び振動部112の振動を阻害することを防止できる。なお、隙間Sの部分には、振動を阻害しないような柔軟な素材、例えば、スポンジ状の部材等を設けてもよい。
【0040】
基材115は、振動部112と枠部材114とを接続する部材であり、枠部材114の内側であって、外周壁部分に沿って振動子111を囲むように配置されている。ただし、基材115は、振動子111には、接触しないように設けられている。
【0041】
本実施形態の振動発生部110が発生する振動は、利用者の耳介に伝えられ、耳介に含まれる軟骨を介した振動伝導により、鼓膜に振動を伝えるとともに、振動により外耳道内で音波を生成し鼓膜に伝え、最終的な音として認識させられる。従来の骨伝導は、頭蓋骨を振動させ、直接内耳(蝸牛、三半規管等)に振動を送ることにより音を認識させるため、鼓膜を使わない。これに対して、本方式は一旦外耳道を震わせ空気による音波振動(気導音)を生成し、鼓膜を通じ通常の音と同様の認識をする点で、骨伝導とは大きく異なっている。また、骨を振動させる必要がないので、骨伝導と比較して微弱な振動であっても音声を伝えることができる。
【0042】
保持部120は、耳珠2b及び対耳珠2cの内側に挿入されて装着できるように形成されている。保持部120は、振動部112を耳垂2dの上方の耳介に当接して保持するように振動発生部110の上方に接続している。
【0043】
配線130は、駆動回路140を介して再生機器150から送られる音声信号に応じた駆動信号を振動子111に伝えるケーブルである。配線130の一端は振動子111に接続されている。また、配線130の他端は、不図示のコネクタ等を用いて再生機器150等へ接続される。
【0044】
駆動回路140は、再生機器150から送られた音声信号を、振動子111の駆動に適した形態の信号に変換する回路である。なお、駆動回路140の機能は、再生機器150内に内蔵されていてもよいし、音声伝達装置100の一部として設けられていてもよい。
【0045】
再生機器150は、増幅回路151と出力部152とを備えている。再生機器150は、例えば、携帯音楽再生機、携帯電話装置、テレビジョン受像機等、音声を出力する機器であれば、その形態は、どのようなものであってもよい。
増幅回路151は、再生する音楽等の音声信号を増幅するアンプである。
出力部152は、再生機器150から音声を出力する端子である。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の音声伝達装置100は、保持部120が振動部112を耳垂上方の耳介に当接して保持するように振動発生部110の上方に接続しているので、利用者に違和感や不快感を与えることなく、確実に耳介に振動を伝えることができる。また、音声伝達装置100は、簡単な構成により保持部120を構成したので、小型かつ軽量な装置とすることができる。また、音声伝達装置100は、圧電セラミックの振動子をエキサイタとして使うことにより、外耳道を開放したまま音楽が楽しめ、長時間の使用や暑い夏でも耳が暑くならず、開放感溢れたリスニングが楽しめる。また、音声伝達装置100は、音漏れが少なく秘密性を保つことができる。さらに、音声伝達装置100は、開放されている耳穴を手でふさげば生成された音波が鼓膜側に集中するため音圧が自然上昇するとともに、外界の騒音を遮断して、騒音環境下であっても明瞭に音声を聞き取ることを可能とする。さらに、音声伝達装置100は、骨を振動させる必要が無いので、骨伝導と比較して微弱な振動であっても音声を伝えることができ、したがって、振動発生部110を小型に形成できる。また、音声伝達装置100は、振動部112を人体に対して強く押し付ける必要がないので、利用者に違和感を与えにくい。さらに、接続される再生機器150が必要とする消費電力を低く抑えることもできる。
【0047】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態の音声伝達装置200を示す透視図である。
図7は、音声伝達装置200を耳に装着した状態を示す図である。
なお、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分については、重複する説明を適宜省略する。
【0048】
音声伝達装置200は、振動発生部210と、保持部220と、配線230とを備えている。
【0049】
振動発生部210は、第1実施形態の振動発生部110と同様なユニットであり、振動子211と、振動部212とを備えている。ただし、第2実施形態の振動発生部210は、全体が保持部220内に包含されており、外周を保持部220により被覆されている。
【0050】
保持部220は、人体が直立した状態における耳輪の上方及び背後に回り込む形態で装着できるように形成されている。第2実施形態の保持部220は、軟質の樹脂により形成されている。保持部220内には、振動発生部210と金属線221とが設けられている。
金属線221は、弾性変形可能なばね材により形成されており、保持部220の形状に沿って内蔵されている。よって、保持部220は、利用者の耳の形になじむ形に形状を変形させることができる。
また、金属線221は、振動発生部210の振動部212に接触しており、振動部212の振動が伝えられて振動する。よって、金属線221は、利用者の耳輪2aの背後の耳介の略全体に振動を伝えることができる。
【0051】
金属線としては、例えば、ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、炭素鋼、コバルト合金、リン青銅、金合金、純チタン、βチタン、マグネシウム、アルミニウム、サンプラチナ(登録商標)等を用いることができる。また、上記の他、金属線として、例えば、チタン−ニッケル合金、ゴムメタル(登録商標)等の超弾性の性質を持つ合金を用いてもよい。
【0052】
さらに、保持部220は、振動部212を耳輪2a背後の耳介に当接して保持するように形成されている。したがって、振動発生部210は、保持部220の下方であって、音声伝達装置200を利用者の耳に装着したときに、耳輪2aの背後となる位置に配置されている。
【0053】
配線230は、第1実施形態の配線130と同様である。
【0054】
以上説明したように、第2実施形態の音声伝達装置200は、保持部220内に振動発生部210を内蔵している。したがって、人体に対する肌触りの感触を良好にできるとともに、振動発生部を保護できる。また、音声伝達装置200は、保持部220内に金属線221を内蔵している。したがって、振動部212により耳介に振動を伝えるだけではなく、金属線221からも耳介に振動を伝える。よって、音声伝達装置200は、利用者毎に異なる耳の形状に柔軟に対応して、より聞き取りやすい状態で使用されることが可能となる。
【0055】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態の音声伝達装置300を示す透視図である。
図9は、音声伝達装置300を眼鏡1000に接続した状態を示す図である。
図10は、音声伝達装置300と眼鏡1000とを利用者が装着した状態を示す図である。
なお、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分については、重複する説明を適宜省略する。
【0056】
音声伝達装置300は、振動発生部310と、保持部320と、配線330とを備えている。
【0057】
振動発生部310は、第1実施形態の振動発生部110と同様なユニットであり、振動子311と、振動部312とを備えている。ただし、第3実施形態の振動発生部310は、全体が保持部320内に包含されており、外周を保持部320により被覆されている。
【0058】
保持部320内には、振動発生部310と金属線321とが設けられており、保持部320には、孔部322が形成されている。
金属線321は、第2実施形態の金属線221と同様である。
孔部322は、保持部320の一端部に開口しており、眼鏡1000のつる端部が挿入される。なお、本実施形態の孔部322は、非貫通であるが、貫通していてもよい。
保持部320は、孔部322に挿入された眼鏡1000が人体に装着されたときに、振動部312を耳輪2aの背後の耳介に当接して保持するように形成されている。
【0059】
配線330は、第1実施形態の配線130と同様である。
【0060】
以上説明したように、第3実施形態の音声伝達装置300は、保持部320内に振動発生部310を内蔵している。したがって、人体に対する肌触りの感触を良好にできるとともに、振動発生部を保護できる。
また、音声伝達装置300は、保持部320内に金属線321を内蔵している。したがって、振動部312により耳介に振動を伝えるだけではなく、金属線321からも耳介に振動を伝える。よって、音声伝達装置300は、利用者毎に異なる耳の形状に柔軟に対応して、より聞き取りやすい状態で使用されることが可能となる。
さらに、音声伝達装置300は、眼鏡1000のつる端部が挿入可能な孔部322を有しており、保持部320は、孔部322に挿入された眼鏡1000が人体に装着されたときに、振動部312を耳輪2aの背後の耳介に当接して保持するように形成されている。したがって、音声伝達装置300は、眼鏡1000に接続して、その眼鏡1000を装着するだけで、音声を耳介に含まれる軟骨を介した振動伝導により伝えることができる。
【0061】
(第4実施形態)
図11は、第4実施形態の音声伝達装置500を示す透視図である。
図12は、音声伝達装置500を耳に装着した状態を示す図である。
なお、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分については、重複する説明を適宜省略する。
【0062】
音声伝達装置500は、振動発生部510と、保持部520と、配線530とを備えている。
【0063】
振動発生部510は、第1実施形態の振動発生部110と同様なユニットであり、振動子511と、振動部512とを備えている。ただし、第4実施形態の振動発生部510は、全体が保持部520内に包含されており、外周を保持部520により被覆されている。
【0064】
保持部520は、人体が直立した状態における耳輪2aの背後及び耳垂2dの背後に回り込み、かつ、耳珠2bに到るまで環状に繋がった形態で耳輪2aを囲んで装着できるように形成されている。保持部520は、振動発生部510(振動部512)を、耳珠2bに保持部520の素材を挟んで間接的に当接させる。
【0065】
配線530は、第1実施形態の配線130と同様である。
【0066】
上述した例では、振動発生部510(振動部512)は、耳珠2bに当接することができる位置に配置されている例を挙げて説明した。本実施形態の保持部520は、耳輪2aを囲む形態に形成されているので、振動発生部510を他の位置に配置することも可能である。
図13は、振動発生部510の配置例を示す透視図である。
振動発生部510は、上記例で示した位置Aの他、例えば、位置Bや位置Cに配置してもよい。位置Bは、耳輪2aの背後の上方に振動発生部510が当接可能な位置である。位置Cは、耳輪2aの背後の下方に振動発生部510が当接可能な位置である。この他、図示しないが、耳輪2aの中央の背後に当接可能な位置に配置してもよい。すなわち、振動発生部510は、耳介に当接することができる位置であれば、どの位置に設けられていてもよい。
また、振動発生部510は、上記位置A,B,Cのいずれか1つにのみ配置されることに限らず、これらのうちの複数の位置に配置されていてもよい。
【0067】
以上説明したように、第4実施形態の音声伝達装置500は、耳輪2aを囲む形態で装着できるように形成されている。よって、人体への装着が確実となり、運動等により脱落することを防止できる。また、音声伝達装置500は、保持部520内に振動発生部510を内蔵している。したがって、人体に対する肌触りの感触を良好にできるとともに、振動発生部を保護できる。
【0068】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0069】
(変形形態)
例えば、各実施形態において、音声伝達装置は、配線を再生機器にコネクタ等を用いて接続する例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、コネクタ等を介さずに再生機器等に直接接続されていてもよいし、配線を設けずに、無線で音声信号を受信して振動子を振動させるような形態としてもよい。
【0070】
また、各実施形態において、振動発生部は、振動部と枠部材とを有している例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、振動子を樹脂で包み込む形で一体成型として振動発生部を形成してもよいし、保持部を形成する樹脂で振動子を直接包み込む形で一体成型としてもよい。
【0071】
さらに、第2実施形態から第4実施形態において、振動発生部(振動部)は、保持部に周りを覆われている形態を挙げて説明した。これに限らず、例えば、第2実施形態から第4実施形態においても、第1実施形態と同様に振動発生部(振動部)を露出させて直接耳介に接触可能としてもよい。
【0072】
さらにまた、第2実施形態及び第3実施形態において、金属線を有する例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、金属線と同様な作用を有する振動伝達線を設けてもよい。振動伝達線は、弾性変形が可能であって、振動子の振動が伝えられて振動することができるものであればよい。振動伝達線としては、例えば、CA(セルロースアセテート)樹脂、CP(セルロースプロピオネート)樹脂、ナイロンといったポリアミド樹脂、オプチルといったエポキシ樹脂、セルロイド、ポリカーボネート、カーボン樹脂等の繊維強化プラスチックの他、超弾性の性質をもつポリフェニルサルフォン等を用いることができる。
【0073】
また、各実施形態において、保持部自体を、弾性変形が可能であって、振動子の振動が伝えられて振動する素材により形成してもよい。このようにすると、保持部の全体からも振動を耳介に伝えることができ、音声伝達装置は、より確実に振動を耳介に伝えることができる。
【0074】
なお、第1実施形態から第4実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0075】
2a 耳輪
2b 耳珠
2c 対耳珠
2d 耳垂
100,200,300,500 音声伝達装置
110,210,310,510 振動発生部
111,211,311,511 振動子
112,212,312,512 振動部
113 両面テープ
114 枠部材
115 基材
120,220,320,520 保持部
130,230,330,530 配線
140 駆動回路
150 再生機器
151 増幅回路
152 出力部
221,321 金属線
322 孔部
1000 眼鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声に対応して伝えられる信号により振動する振動子と、
前記振動子の振動が伝えられて振動して、耳、及び/又は、耳周辺の人体に直接又は間接的に接触させられることにより前記人体に振動を伝え、耳、及び/又は、耳周辺の人体を振動させることにより鼓膜に振動を伝えるとともに、振動により外耳道内に気導音を生成して鼓膜に伝える振動部と、
前記振動部を耳、及び/又は、耳周辺の人体に当接するように保持する保持部と、
を備える音声伝達装置。
【請求項2】
請求項1に記載の音声伝達装置において、
前記保持部は、耳珠及び対耳珠の内側に挿入されて装着できるように形成され、前記振動部を人体が直立した状態における耳垂上方の耳介に直接又は間接的に当接させて保持するように前記振動部の上方に接続して形成されていること、
を特徴とする音声伝達装置。
【請求項3】
請求項1に記載の音声伝達装置において、
前記保持部は、人体が直立した状態における耳輪の背後及び耳垂の背後に回り込み、かつ、耳珠に到るまで環状に繋がった形態で耳輪を囲んで装着できるように形成されており、前記振動部を、耳輪背後又は耳珠の少なくとも一方の耳介に直接又は間接的に当接させて保持するように形成されていること、
を特徴とする音声伝達装置。
【請求項4】
請求項1に記載の音声伝達装置において、
前記保持部は、人体が直立した状態における耳輪の上方及び背後に回り込む形態で装着できるように形成され、前記振動部を耳輪背後の耳介に直接又は間接的に当接させて保持するように形成されていること、
を特徴とする音声伝達装置。
【請求項5】
請求項1に記載の音声伝達装置において、
前記保持部は、眼鏡のつる端部が挿入される貫通又は非貫通の孔部を有し、
前記孔部に眼鏡のつる端部が挿入された状態で眼鏡が人体に装着されたときに、前記振動部を耳輪背後の耳介に直接又は間接的に当接させて保持するように形成されていること、
を特徴とする音声伝達装置。
【請求項6】
請求項3から請求項5までのいずれか1項に記載の音声伝達装置において、
前記振動部は、前記保持部により周りを覆われていること、
を特徴とする音声伝達装置。
【請求項7】
請求項3から請求項6までのいずれか1項に記載の音声伝達装置において、
前記保持部は、弾性変形が可能な金属線を有すること、
を特徴とする音声伝達装置。
【請求項8】
請求項7に記載の音声伝達装置において、
前記金属線は、前記振動子の振動が伝えられて振動すること、
を特徴とする音声伝達装置。
【請求項9】
請求項3から請求項6までのいずれか1項に記載の音声伝達装置において、
前記保持部は、弾性変形が可能であって、前記振動子の振動が伝えられて振動する振動伝達線を有すること、
を特徴とする音声伝達装置。
【請求項10】
請求項3から請求項6までのいずれか1項に記載の音声伝達装置において、
前記保持部は、弾性変形が可能であって、前記振動子の振動が伝えられて振動する素材により形成されていること、
を特徴とする音声伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−78116(P2013−78116A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−193826(P2012−193826)
【出願日】平成24年9月4日(2012.9.4)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】