説明

音声信号の処理方法、及び、かかる方法を適用する音声処理システム

音声信号の処理の方法において、左(L)及び右(R)の音声信号から(L+R)合成音声信号及び合成音声信号(L−R)を得る。所定の周波数値を超える合成(L−R)音声信号のエネルギー内容を測定し、このエネルギー内容を所定の閾値と比較する。その後、エネルギー内容が閾値を下回るとき、合成(L+R)音声信号から得られ且つ相関を解除された信号を、合成(L−R)信号に追加し、改善した合成(L−R)音声信号を取得するようにし、左(L)及び右(R)の音声信号を、合成(L+R)信号及び改善した合成(L−R)音声信号から再度取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声信号の処理方法、及び、かかる方法を適用する音声処理システムに係る。
【背景技術】
【0002】
音声信号は、例えばインタネット等を通して電子的に伝達されうる。音声信号は、伝達帯域幅の必要性を低減させるよう、例えばMP3、MP3Pro、WMA、又はReal Audioフォーマット等の圧縮形式で伝達されうる。圧縮ファクタは、例えば16kbit/s乃至196kbit/s、及び、サンプル周波数8kHz乃至48kHz等で可変であってよく、音声信号のストリームのビットレートの多様性に繋がる。多くの場合、復号された音声信号は、知覚的には元の素材と同一ではない。広く使用される標準128kbit/s等の低ビットレートに関して、アーチファクトが可聴になるのは、典型的である。64kbit/s等の低ビットレートは、かなりのアーチファクトを示す。アーチファクトは、相関信号(M信号)及び無相関信号(S信号)で起きうる。一般的に相関信号は、例えば10kHzまで低減された帯域幅と高音領域(高周波数領域)での細部の喪失を示す。その一方、無相関信号は、1kHzを超えるとき極めて不規則なドロップアウト(ビット喪失)を示す。かかるドロップアウトは、不安定なステレオ画像、及び、完全な(ステレオ)サウンドステージにおける見掛けのスプリアスの音の原因である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、これらの不利点を防止することと、サウンドステージにおけるドロップアウトの影響の補償が行なわれる、音声信号の処理方法及び音声処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ゆえに、本発明によれば、左(L)及び右(R)の音声信号から(L+R)合成音声信号及び合成音声信号(L−R)が得られ、所定の周波数値を超える合成(L−R)音声信号のエネルギー内容を測定し、このエネルギー内容を所定の閾値と比較し、その後、エネルギー内容が閾値を下回るときは、合成(L+R)音声信号から得られ且つ相関を解除された信号を、合成(L−R)信号に追加し、改善した合成(L−R)音声信号を取得するようにし、左(L)及び右(R)の音声信号を、合成(L+R)信号及び改善した合成(L−R)音声信号から再度取得する、音声信号の処理の方法を提案する。これは、ドロップアウトによって喪失した合成(L−R)信号の一部は、合成(L+R)信号の一部によって補償される、ということを意味する。
【0005】
上述した通り、本発明は、音声処理システムにもかかる。本発明により、この音声処理システムは、左(L)及び右(R)の音声信号から合成(L+R)音声信号及び合成(L−R)音声信号が得られる第1の結合手段と、所定の周波数値を上回る合成(L−R)音声信号のエネルギー内容を測定し、このエネルギー内容を所定の閾値と比較する検出及び比較手段と、エネルギー内容が閾値を下回るとき、夫々合成(L+R)音声信号及び合成(L−R)音声信号から得られ且つ相関を解除された信号から改善した合成(L−R)音声信号を得る第2の結合手段と、合成(L+R)音声信号及び改善した合成(L−R)音声信号から左(L)及び右(R)の音声信号を再び得る第3の結合手段とを設ける。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、以下に詳述する例及び添付の図面を参照して、解説され明らかになるであろう。図面は、本発明による音声処理システムの一実施例を図示する。
【0007】
合成(L−R)音声信号は、所定の周波数値を超える合成(L−R)音声信号のエネルギー内容の測定し、このエネルギー内容を所定の閾値と比較するよう、検出及び比較手段3に供給される。これを実行するため、検出及び比較手段3は、約3kHzのカットオフ周波数を有する、2次のバターワース高域フィルタの形でのフィルタ4と、フィルタをかけられた合成(L−R)音声信号のエネルギー内容を検出するエネルギー測定手段5と、測定したエネルギー内容が所定の閾値を超えているか否かを表示する比較器6とを有する。比較器6は、切換え手段7に制御信号Pを与える。測定したエネルギー内容が閾値を超えるときは、P=0であり、測定したエネルギー内容が閾値を超えるときは、P=1である。
【0008】
合成(L+R)音声信号は、遅延素子9と、約1kHzのカットオフ周波数を有する高域4次のバターワース・フィルタ10及び約6kHzのカットオフ周波数を有する低域の1次のバターワース・フィルタ11によって形成される帯域通過フィルタと、を有する手段8に与えられ、合成(L+R)入力音声信号に対して相関を解除された、高周波信号Lhd+Rhdを取得するようにされる。この高周波信号Lhd+Rhdは、切換え手段7に与えられ、P=1のときは、更に第2の結合手段12と合成(L−R)音声信号に与えられる。第2の結合手段12の出力は、改善した合成(L−R)音声信号を形成する。
【0009】
合成(L+R)音声信号及び第2の結合手段の出力信号は、即ちP=0のときの合成(L−R)信号、又は、P=1のときの改善した合成(L−R)音声信号は、第3の結合手段13及び14に与えられ、左右の信号L’及びR’を再び取得するようにされる。これらの信号L’及びR’は、例えば、スピーカに供給されうる。
【0010】
音声処理システムの動作は以下の通りである。
・ エネルギー測定手段5の出力信号が所定の閾値を超える場合、即ちP=0のとき,L’=2L且つR’=2R
・ エネルギー測定手段5の出力信号が所定の閾値を下回り、本発明による測定は適用されない場合、1kHzを下回る周波数である低周波数に関して、L’及びR’は、以下の式、
【0011】
【数1】

で表されうる。式中の添え字1は、低周波(<1kHz)に関連する。一方、1kHzを超える周波数である低高周波数に関して、L’及びR’は、以下の式、
【0012】
【数2】

で表されうる。式中の添え字hは、高周波に(>1kHz)関連するため、
【0013】
【数3】

となる。
高周波信号は、モノラルで再生されるか、言い換えると、ドロップアウトの結果、ステレオ信号はエンコード化の前より狭くなる。
・ エネルギー測定手段5の出力信号が所定の閾値を下回り、本発明による測定が適用される場合、低周波に関してL’及びR’は以下の式にて表されうる。
【0014】
【数4】

一方、高周波に関してはL’及びR’は以下の通り説明される。
【0015】
【数5】

そのため、
【0016】
【数6】

高周波信号は、ステレオ形式で再生されるか、言い換えると、ドロップアウトの割にはステレオ品質が略保持される。
【0017】
本発明は、上述した実施例に限られるものではない。添付の請求項の範囲内での変更は可能である。特に、フィルタは、異なって選択されてもよく、一方カットオフ周波数におけるなんらかの変動も可能であってよい。遅延素子の代わりに、ローリドセン(Lauridsen)相関解除器又は何らかのくし形フィルタが、切換え手段7に与えられるべき相関解除信号を生成するのに使用されてよい。更に、ステレオ信号L’,R’が、例えば2対5復号器を使用して、より複雑なサラウンド・サウンドの再生用の入力信号として適用されるとき、アーチファクトは、より深刻になるであろう。そこで本発明の適用は、より重要となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】左(L)及び右(R)音声信号から、合成(L+R)音声信号及び合成(L−R)音声信号が得られる、第1の結合手段1及び2を図示する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
左及び右の音声信号から合成音声信号が得られ、所定の周波数値を超える前記合成音声信号のエネルギー内容を測定し、前記エネルギー内容を所定の閾値と比較し、その後、前記エネルギー内容が前記閾値を下回るときは、前記合成音声信号から得られ且つ相関を解除された信号を、前記合成信号に追加し、改善した合成音声信号を取得するようにし、左及び右の音声信号を、前記合成信号及び前記改善した合成音声信号から再度取得する、音声信号の処理の方法。
【請求項2】
前記相関を解除された信号は、前記合成信号を遅延させ、フィルタをかけることによって取得されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
音声処理システムであって、
左及び右の音声信号から合成音声信号を得る第1の結合手段と、
所定の周波数値を上回る前記合成音声信号の前記エネルギー内容を測定し、前記エネルギー内容を所定の閾値と比較する検出及び比較手段と、
前記エネルギー内容が前記閾値を下回ると、前記合成音声信号及び前記合成信号から取得され且つ相関を解除された信号から、改善した合成音声信号を得る第2の結合手段と、
前記合成音声信号及び前記改善した合成音声信号から、左及び右の音声信号を再び取得する第3の結合手段と、を有するシステム。
【請求項4】
前記検出及び比較手段は、高域フィルタと、前記フィルタをかけられた合成音声信号の前記エネルギー内容を検出するエネルギー測定手段と、前記測定したエネルギー内容が、前記所定の閾値を超えているか否かを表示する比較器とを有することを特徴とする、請求項3記載の音声処理システム。
【請求項5】
前記高域フィルタは、約3kHzのカットオフ周波数を有することを特徴とする、請求項4記載の音声処理システム。
【請求項6】
前記改善した合成音声信号を前記合成音声信号から得る、遅延素子及び帯域通過フィルタ手段を有する手段が設けられることを特徴とする、請求項3乃至5のうちいずれか一項記載の音声処理システム。
【請求項7】
前記帯域通過フィルタ手段は、約1kHzのカットオフ周波数を有する高域フィルタ及び約6kHzのカットオフ周波数を有する低域フィルタによって形成されることを特徴とする、請求項6記載の音声処理手段。

【公表番号】特表2006−500626(P2006−500626A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539273(P2004−539273)
【出願日】平成15年8月8日(2003.8.8)
【国際出願番号】PCT/IB2003/003591
【国際公開番号】WO2004/030410
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】