説明

音声出力装置

【課題】空気中の湿度によらず、音孔から所望の距離において可聴音の音圧が最大となるようにすることが可能な音声出力装置を提供する。
【解決手段】音声出力装置100は、圧電振動子10を有する発振装置と、発振装置にパラメトリックスピーカ用の変調信号を入力するスピーカ制御部(例えば、制御部50により構成される)と、湿度を示す湿度情報を取得する取得部(例えば、操作部兼表示部40)を有する。音声出力装置100は、更に、取得部が取得した湿度情報に応じて、変調信号の変調方式と変調度との組み合わせと、変調信号の変調度と、圧電振動子10から出力される超音波搬送波の音圧と、のうち少なくとも何れか1つを調節する調節部(例えば、制御部50により構成される)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パラメトリックスピーカは、超音波搬送波を可聴音信号によりAM・FMなどの方式を用いて変調し、空気中に超音波のまま高指向性を保持して放射し、空気中における音波の非線形現象により可聴音を復調するものである。ゆえに、超音波スピーカの音孔からある距離において、復調される可聴音の音圧が最大となるが、その距離は、変調方式・変調度・超音波搬送波音圧などにより制御することが可能である。また、空気中における超音波の非線形現象の挙動は、空気中の湿度により大きく左右される。
【0003】
パラメトリックスピーカについては、例えば、特許文献1、2に記載されている。
なお、特許文献2には、湿度等の変化に伴う圧電振動子(同文献の変換器)の共振周波数の変化に応じてインダクター及びコンデンサーを同調させることにより、圧電振動子の振動効率を最適化し、その消費電力を最小化する技術が記載されている。
また、特許文献3には、熱電対により圧電振動子の温度変化を検出し、その検出した温度に応じて、発振器の周波数特性を補正することにより、圧電振動子の振動効率を最適化する技術が記載されている。
【0004】
特許文献4には、電子機器の表示装置の背面側に、圧電スピーカを配置することが記載されている。特許文献5にも、電子機器の表示装置の背面側にスピーカを配置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−223410号公報
【特許文献2】特表2004−515091号公報
【特許文献3】特開平6−319194号公報
【特許文献4】特開2006−080825号公報
【特許文献5】特開2010−119032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、空気中における超音波の非線形現象の挙動は、空気中の湿度により大きく左右されるため、パラメトリックスピーカから出力された超音波が復調されることにより再生される可聴音が最大となる位置(音孔からの距離とも言える)は、湿度により変化する。
このため、湿度によらず、音孔から所望の距離において可聴音の音圧が最大となるようにすることが可能な技術が求められている。
【0007】
本発明の目的は、空気中の湿度によらず、音孔から所望の距離において可聴音の音圧が最大となるようにすることが可能な音声出力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、圧電振動子を有する発振装置と、
前記発振装置にパラメトリックスピーカ用の変調信号を入力するスピーカ制御部と、
湿度を示す湿度情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記湿度情報に応じて、前記変調信号の変調方式と変調度との組み合わせと、前記変調信号の変調度と、前記圧電振動子から出力される超音波搬送波の音圧と、のうち少なくとも何れか1つを調節する調節部と、
を有することを特徴とする音声出力装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、空気中の湿度によらず、音孔から所望の距離において可聴音の音圧が最大となるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る音声出力装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図2】実施形態に係る音声出力装置のブロック図である。
【図3】空気中の湿度と可聴音の音圧が最大となる距離との関係を示す図である。
【図4】実施形態に係る音声出力装置の操作画面の例を示す図である。
【図5】実施形態に係る音声出力装置の操作画面の例を示す図である。
【図6】実施形態に係る音声出力装置の操作画面の例を示す図である。
【図7】実施形態に係る音声出力装置の模式的な断面図である。
【図8】実施形態に係る音声出力装置の模式的な平面図である。
【図9】複数の圧電振動子の配置の一例を示す平面図である。
【図10】圧電振動子の周辺の構造の一例を示す断面図である。
【図11】圧電振動子の周辺の構造の他の一例を示す断面図である。
【図12】参考例に係る音声出力装置の模式図である。
【図13】温度と圧電振動子の共振周波数との関係を示す図である。
【図14】複数の圧電振動子の配置の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0012】
図1は実施形態に係る音声出力装置100(図2、図10、図11)の動作の流れを示すフローチャートである。図2は音声出力装置100のブロック図である。図3は空気中の湿度と可聴音の音圧が最大となる距離(音孔20(図10)からの距離)との関係を示す図である。図4乃至図6は音声出力装置100の操作画面の例を示す図である。図7は音声出力装置100の模式的な断面図、図8は音声出力装置100の模式的な平面図である。図9は複数の圧電振動子10の配置の一例を示す平面図である。図10は圧電振動子10の周辺の構造の一例を示す断面図、図11は圧電振動子10の周辺の構造の他の一例を示す断面図である。
【0013】
本実施形態に係る音声出力装置100は、圧電振動子10を有する発振装置70と、発振装置70にパラメトリックスピーカ用の変調信号を入力するスピーカ制御部(例えば、制御部50により構成される)と、湿度を示す湿度情報を取得する取得部(例えば、操作部兼表示部40)と、取得部が取得した湿度情報に応じて、変調信号の変調方式と変調度との組み合わせと、変調信号の変調度と、圧電振動子10から出力される超音波搬送波の音圧と、のうち少なくとも何れか1つを調節する調節部(例えば、制御部50により構成される)と、を有する。ここで、パラメトリックスピーカは、スピーカ制御部及び圧電振動子10を含んで構成される。音声出力装置100は、例えば、携帯電話機或いはその他の携帯通信端末装置、携帯電話機或いはその他の携帯情報端末装置、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、或いは小型ゲーム機器などの電子機器であることが挙げられる。以下、詳細に説明する。
【0014】
図7に示すように、音声出力装置100は、例えば、筐体1と、筐体1内に配置された回路基板2と、表示画面41が筐体1の一面から露出するように筐体1に設けられた操作部兼表示部40と、を有している。例えば、回路基板2上には、1つ或いは複数の(例えば2つの)振動子アレイ3が設けられ、各振動子アレイ3は筐体1内に収容されている。より具体的には、各振動子アレイ3の少なくとも一部分は、表示装置としての操作部兼表示部40の背面側に配置されている。
【0015】
図7及び図8に示すように、筐体1において、振動子アレイ3の圧電振動子10と対向する位置には、筐体1の内外を連通させる音孔20が形成されている。すなわち、表示画面41と同一平面上に音孔20が配置されている。音孔20の数は任意であるが、例えば、各振動子アレイ3と対応して、それぞれ複数の音孔20を設けることができる。
【0016】
振動子アレイ3の圧電振動子10から発振される超音波は、操作部兼表示部40の側方近傍の領域、及び音孔20を介して、筐体1の外部へ放射される。このため、表示画面41の近傍から音声が出力されるようにすることができ、映像と音が一体となるような臨場感のあるAV機能を実現することができる。
【0017】
操作部兼表示部40と圧電振動子10との距離(操作部兼表示部40と振動子アレイ3との距離)(図7の距離X)は、圧電振動子10から出力される超音波の波長の1/4未満であることが好ましい。このようにすることにより、音波の干渉を抑制し、より高効率に音波を放射することができる。また、周波数が20kHz以上の、いわゆる超音波帯域の、直進性のある音波を圧電振動子10から発振することにより、指向性制御を効果的に行うことができる。音波の指向性制御は、例えばフェーズドアレイ法により行うことができる。
【0018】
なお、表示画面41の上下寸法X1(図8)は、音孔20の配置領域21(図8)の上下寸法X2の10倍よりも大きいことが好ましい。
【0019】
図9に示すように、振動子アレイ3は、それぞれ圧電振動子10を有する発振装置70をアレイ状の配置で有している。
【0020】
例えば図10に示すように、発振装置70は、シート状の振動部材71と、圧電振動子10と、支持部72と、を備えている。圧電振動子10は、振動部材71の一方の面に取り付けられている。支持部72は、振動部材71の縁を支持している。
【0021】
振動部材71は、圧電振動子10から発生した振動によって振動し、例えば周波数が20kHz以上の音波を発振する。圧電振動子10も、自身が振動することによって、例えば周波数が20kHz以上の音波を発振する。振動部材71は、圧電振動子10の基本共振周波数を調整する。機械振動子の基本共振周波数は、負荷重量と、コンプライアンスに依存する。コンプライアンスは圧電振動子10の機械剛性であるため、振動部材71の剛性を制御することで、圧電振動子10の基本共振周波数を制御できる。なお、振動部材71の厚みは5μm以上500μm以下であることが好ましい。また、振動部材71は、剛性を示す指標である縦弾性係数が1GPa以上500GPa以下であることが好ましい。振動部材71の剛性が低すぎる場合や、高すぎる場合は、機械振動子として特性や信頼性を損なう可能性が出てくる。なお、振動部材71を構成する材料は、金属や樹脂など、脆性材料である圧電振動子10に対して高い弾性率を持つ材料であれば特に限定されないが、加工性やコストの観点からリン青銅やステンレスなどが好ましい。
【0022】
圧電振動子10の平面形状は、例えば円形であるが、圧電振動子10の平面形状は円形に限定されない。圧電振動子10は、例えば、振動部材71に対向する面の全面が接着剤によって振動部材71に固定されている。これにより、圧電振動子10の片面の全面が振動部材71によって拘束される。
【0023】
支持部72は、例えば、金属により構成され、筒状(例えば円筒状)に形成されている。支持部72は、その一端側が接着材、或いは、両面テープなどを介して筐体1に対して接着されている。
【0024】
なお、発振装置70は、例えば、図11に示すように、振動部材71の縁を支持する樹脂膜73を有し、この樹脂膜73の縁が支持部72によって支持されている構造であっても良い。この場合、樹脂膜73の剛性を振動部材71の剛性よりも小さくすることにより、図10の構成よりも圧電振動子10及び振動部材71の振幅を増大させることができる。
【0025】
圧電振動子10に対し、後述する制御部50から発振信号を入力することによって、圧電振動子10を振動させて、圧電振動子10より音波を発振させる。制御部50は、圧電振動子10に入力する変調信号(パラメトリックスピーカ用の変調信号)を生成する。変調信号の輸送波は、例えば、周波数が20kHz以上の超音波であり、具体的には、例えば100kHzの超音波である。制御部50は、外部から入力された情報に応じて、圧電振動子10を制御する。
【0026】
パラメトリックスピーカは、超音波搬送波を可聴音信号によりAM変調やDSB変調、SSB変調、FM変調などの変調方式を用いて変調し、空気中に超音波のまま高指向性を保持して放射し、空気中における音波の非線形現象により可聴音を復調するものである。ゆえに、音孔20からある距離において、復調される可聴音の音圧が最大となる。
【0027】
ここで、変調信号の変調方式、変調信号の変調度、及び、圧電振動子10から出力される超音波搬送波の音圧が一定である場合、空気中の湿度に応じて、復調される可聴音の音圧が最大となる距離(音孔20からの距離)が変動する。具体的には、例えば図3に示すように、空気中の湿度が高くなるほど、可聴音の音圧が最大となる距離(音孔20からの距離)が短くなる傾向がある。
【0028】
図2に示すように、音声出力装置100は、各種の表示動作を行うとともに、ユーザによる入力操作を受け付ける操作部としても機能する操作部兼表示部40を有している。操作部兼表示部40は、例えば、タッチパネル式の液晶表示装置などにより構成することができ、単なる表示動作を行うだけでなく、GUI(Graphical User Interface)としても機能する。
【0029】
音声出力装置100は、更に、圧電振動子10、及び、操作部兼表示部40の動作制御を行う制御部50を有している。制御部50は、制御・演算部と、記憶部と、を有し、この記憶部には、テーブル51が記憶保持されている。
【0030】
制御部50は、湿度によらず、常に最適な位置(音孔20からの距離)で、復調される可聴音の音圧が最大となるように、変調信号の変調方式と、変調信号の変調度と、圧電振動子10から出力される超音波搬送波の音圧と、のうち少なくとも何れか1つを調節する。
【0031】
テーブル51は、湿度と、パラメトリックスピーカの制御用パラメータと、の対応関係を示す情報を含んでおり、制御部50は、テーブル51より、湿度に応じた制御用パラメータを取得する。そして、この取得した制御用パラメータを用いてパラメトリックスピーカを制御することにより、湿度によらず、常に最適な位置で、復調される可聴音の音圧が最大となるように、変調方式と変調度との組み合わせ、変調度、及び、超音波搬送波の音圧のうち少なくとも何れか1つを調節する。
【0032】
操作部兼表示部40に対し、ユーザが現在の湿度を入力操作(例えば、後述するように、湿度を選択する選択操作)すると、すなわち、音声出力装置100が湿度を示す湿度情報を取得すると、制御部50は、この入力された湿度に応じて超音波スピーカを制御する。
【0033】
具体的には、制御部50は、例えば、入力された湿度が高いほど、圧電振動子10から出力される超音波搬送波の音圧を減少させる。例えば、湿度増加に対して、音圧を単調に減少させる。
【0034】
或いは、制御部50は、変調方式を一定とする場合において、入力された湿度が高いほど、変調度(FM変調の場合、変調指数)を減少させる。例えば、湿度増加に対して、変調度を単調に減少させる。
【0035】
或いは、制御部50は、入力された湿度に応じて、変調方式と変調度(FM変調の場合、変調指数)との組み合わせとして最適なものを選択する。
一例として、湿度が50%のときに、変調度60%のSSB変調を行い、湿度75%のときに、変調指数100のFM変調を行い、湿度100%のときに、変調度80%のSSB変調を行うことが挙げられる。
【0036】
このような制御により、湿度によらず、常に最適な位置(音孔20からの距離)で、復調される可聴音の音圧が最大となるようにすることができる。
【0037】
音声出力装置100は、例えば、携帯通信端末装置であることが挙げられ、その場合、通信機能を実現するための通信部(図示略)を有している。また、音声出力装置100は、通信機能として、通話機能を実現するものであっても良い。更に、音声出力装置100は、音声再生機能の一例として、音楽再生機能を有していても良い。
【0038】
次に、図1と図4乃至図6とを参照して一連の動作を説明する。
【0039】
先ず、通常状態(例えば、音楽を再生しつつ、着信待ち受けをしている状態など)では、例えば、図4に示すように、各種の機能選択ボタンを含む機能選択ボタン群42が、操作部兼表示部40の表示画面41に表示されている。機能選択ボタン群42には、湿度選択モードへの移行の要求操作を行うための湿度選択ボタン42aが含まれる。
この状態において、制御部50は、湿度選択ボタン42aに対する操作の有無を監視している(図1のステップS11)。湿度選択ボタン42aへの操作がなされない限り、この監視状態が継続する(ステップS11の判定でNOとなった場合、ステップS11の判定が繰り返し実行される)。
【0040】
その後、機能選択ボタン群42の湿度選択ボタン42aがタッチ操作されたとする。この操作は、タッチパネル式の操作部兼表示部40により検出され、該検出された旨を示す検出信号が操作部兼表示部40から制御部50に入力される。
【0041】
すると、制御部50は、湿度選択モードへの移行を要求する操作がなされたと判定する(ステップS11のYES)。
続いて、制御部50は、音声出力装置100の動作モードを、湿度選択モードへ移行させる。この際、操作部兼表示部40は、制御部50の制御下で、例えば、図5に示すような湿度選択ウィンドウ43を表示画面41に表示する(湿度選択画面を表示する)(ステップS12)。
【0042】
図5に示すように、湿度選択ウィンドウ43には、湿度の選択操作を促すメッセージ(例えば、「超音波スピーカの動作を最適化するために現在の湿度を選択してください。」といった文字列)とともに、湿度範囲の選択候補44が表示される。例えば、10〜20%、20〜30%、30〜40%、・・・、80〜90%、90〜100%、100%以上といったように、100%までは10%刻みで湿度範囲を選択できるように、それら湿度範囲が選択候補44として湿度選択ウィンドウ43に表示される。更に、湿度選択ウィンドウ43には、例えば、湿度範囲の選択に用いられるカーソル45が表示される。
【0043】
この状態において、制御部50は、湿度範囲のいずれかの選択候補44に対する選択操作の有無を監視している(図1のステップS13)。いずれかの選択候補44に対する選択操作がなされない限り、この監視状態が継続する(ステップS13の判定でNOとなった場合、ステップS13の判定が繰り返し実行される)。
【0044】
例えば、ユーザが、表示画面41における30〜40%との表示箇所に対してタッチ操作を行うと、この操作が、タッチパネル式の操作部兼表示部40により検出され、該検出された旨を示す検出信号が操作部兼表示部40から制御部50に入力される。
すると、制御部50は、カーソル45を30〜40%との表示箇所に移動させる表示制御を操作部兼表示部40に対して指令するとともに、湿度範囲として30〜40%が選択された(入力された)と判定する(ステップS13のYES)。
【0045】
続いて、制御部50は、選択された湿度範囲に応じた制御用パラメータをテーブル51より取得し(ステップS14)、例えば図6に示すように、超音波スピーカの設定変更の確認ウィンドウ46を表示画面41に表示する(設定変更の確認画面を表示する)(ステップS15)。
【0046】
図6に示すように、確認ウィンドウ46には、例えば、「現在の湿度は30〜40%の範囲であると選択されました。超音波スピーカの設定を変更してよろしいですか?」というメッセージとともに、「はい」及び「いいえ」の選択ボタン群47と、その何れかの選択ボタンの選択用のカーソル48が表示される。
【0047】
この状態において、制御部50は、「はい」又は「いいえ」の選択ボタンに対する選択操作の有無、すなわち、超音波スピーカの設定変更の要求操作の有無を監視している(図1のステップS16)。「いいえ」が選択された場合(ステップS16のNO)、ステップS12からの処理を繰り返す。「はい」が選択された場合(ステップS16のYES)、制御部50は、超音波スピーカの設定変更の要否を判断する(ステップS17)。すなわち、これまでの設定に用いられていた制御用パラメータと、今回選択された湿度範囲と対応する制御用パラメータとが一致するか否かを判定する。
【0048】
その判定の結果、これまでの設定に用いられていた制御用パラメータと、今回選択された湿度範囲と対応する制御用パラメータとが同一の場合、制御部50は、設定変更が不要である(ステップS18のNO)、すなわちこれまでの設定を継続すれば良いと判定し、図1の処理を終了する。
【0049】
一方、これまでの設定に用いられていた制御用パラメータと、今回選択された湿度範囲と対応する制御用パラメータとが異なる場合、制御部50は、設定変更が必要である(ステップS18のYES)と判定し、先のステップS14にて取得した制御用パラメータに従って、パラメトリックスピーカを制御する。すなわち、湿度に応じて、変調方式、変調度、及び、超音波搬送波の音圧のうち少なくとも何れか1つを調節する(ステップS19)。
これにより、音孔20から放射される超音波が復調されることにより再生される可聴音が、所望の位置(想定されるユーザ視聴位置)にて最大となるように、パラメトリックスピーカを制御することができる。
【0050】
以上のような実施形態によれば、圧電振動子10を有する発振装置70と、発振装置70にパラメトリックスピーカ用の変調信号を入力するスピーカ制御部(例えば、制御部50により構成される)と、湿度を示す湿度情報を取得する取得部(例えば、操作部兼表示部40)と、取得部が取得した湿度情報に応じて、変調信号の変調方式と、変調信号の変調度と、圧電振動子10から出力される超音波搬送波の音圧と、のうち少なくとも何れか1つを調節する調節部(例えば、制御部50により構成される)と、を有するので、空気中の湿度によらず、音孔20から所望の距離において可聴音の音圧が最大となるようにすることができる。
【0051】
〔参考例〕
図12は参考例に係る音声出力装置200の模式図、図13は温度変化に伴う圧電振動子10の共振周波数のずれを示す図、図14は複数の圧電振動子10の配置の一例を示す平面図である。
【0052】
超音波スピーカでは、鳴動時には圧電振動子10や接合部品が発熱するため基本共振周波数の変化が著しく生じてしまう。例えば、図13に示すように、圧電振動子10の共振周波数は、温度が上昇すると高くなる。
また、接合部等に有機材料が用いられるため温度変化による影響を強く受ける。
このため環境温度を検知し駆動電圧や共振周波数を制御するシステムの開発が望まれている。
【0053】
本参考例では、温度変化に伴い圧電振動子10の共振周波数がずれてしまうのに応じて、圧電振動子10の駆動条件(駆動電圧、共振周波数)を調節する。
【0054】
図12に示すように、本実施形態に係る音声出力装置200は、パラメトリックスピーカ210と、圧電温度センサ220と、アンプ230と、温度解析部240と、適正キャリア周波数生成部250と、を有している。
【0055】
図14に示すように、本実施形態の場合、音声出力装置200は、音声出力用の複数の圧電振動子10と、圧電振動子10と同様の圧電振動子により構成されているが温度検出に用いられる圧電温度センサ220と、を有する振動子アレイ260を有している。なお、圧電振動子10を含む個々の発振装置70の構成は、上記の実施形態と同様である。
振動子アレイ260は、例えば、マトリクス状に配置され、それぞれ圧電振動子10を含む発振装置70と、1つの圧電温度センサ220と、を有している。
【0056】
圧電温度センサ220は、焦電効果を利用して温度検出を行う。圧電温度センサ220による検出結果は、アンプ230により増幅された後、温度解析部240に入力され、該温度解析部240により温度が解析される。そして、温度解析部240による解析結果、すなわち、圧電温度センサ220の温度を示す温度情報は、適正キャリア周波数生成部250に入力される。
適正キャリア周波数生成部250は、温度解析部240から入力される温度情報に応じて、適正なキャリア周波数を生成し、このキャリア周波数により圧電振動子10を制御する。
これにより、温度変化に伴い圧電振動子10の共振周波数がずれてしまうのに応じて、最適なキャリア周波数で圧電振動子10を駆動させることができ、圧電振動子10の振動効率を最適化することができる。
なお、キャリア周波数だけでなく、駆動電圧の調整も併せて行うことも好ましく、これにより、一層、圧電振動子10の振動効率を最適化することができる。
【0057】
なお、圧電振動子10を有する振動子アレイ260の一部を構成する圧電温度センサ220により、圧電振動子10の駆動時の温度を検知することができるため、温度変化に伴う圧電振動子10の共振周波数の変化を高精度に検出できるため、信頼性の高いパラメトリックスピーカ210を実現することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 筐体
2 回路基板
3 振動子アレイ
10 圧電振動子
20 音孔
21 配置領域
40 操作部兼表示部
41 表示画面
42 機能選択ボタン群
42a 湿度選択ボタン
43 湿度選択ウィンドウ
45 カーソル
46 確認ウィンドウ
47 選択ボタン群
48 カーソル
50 制御部
51 テーブル
70 発振装置
71 振動部材
72 支持部
73 樹脂膜
100 音声出力装置
200 音声出力装置
210 パラメトリックスピーカ
220 圧電温度センサ
230 アンプ
240 温度解析部
250 適正キャリア周波数生成部
260 振動子アレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子を有する発振装置と、
前記発振装置にパラメトリックスピーカ用の変調信号を入力するスピーカ制御部と、
湿度を示す湿度情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記湿度情報に応じて、前記変調信号の変調方式と変調度との組み合わせと、前記変調信号の変調度と、前記圧電振動子から出力される超音波搬送波の音圧と、のうち少なくとも何れか1つを調節する調節部と、
を有することを特徴とする音声出力装置。
【請求項2】
前記調節部は、前記湿度情報に応じて、前記変調信号の前記変調方式と前記変調度との組み合わせを選択することを特徴とする請求項1に記載の音声出力装置。
【請求項3】
前記調節部は、前記湿度が高いほど、前記変調度を減少させることを特徴とする請求項1又は2に記載の音声出力装置。
【請求項4】
前記調節部は、前記湿度が高いほど、前記超音波搬送波の音圧を減少させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の音声出力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−216900(P2012−216900A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78991(P2011−78991)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】