説明

音楽聴取支援装置

【課題】両耳にヘッドホンを装着して音楽を聴いている利用者が周囲からの話しかけに応じられる状態なのかを周囲に居る者が判断できるようにする。
【解決手段】制御本体部11内の表示制御部57は、当該制御本体部11が音楽再生装置20Lまたは20Wから受信した音信号AMLおよびAMRをアナログ/デジタル変換した音信号DMLおよびDMRを制御部55から受け取る。表示制御部57は、この音信号DMLおよびDMRから音楽再生装置20L及び20Wによる音楽の再生の態様を求め、この態様に応じて表示器14L及び14RのLEDの点滅を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヤホンやヘッドホンによる音楽の聴取を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型デジタル音楽プレーヤなどと称される小型化・軽量化された音楽再生装置が広く普及している。この種の音楽再生装置はイヤホンとともに使用される。この種の音楽再生装置の利用者は、イヤホンを自身の両耳に装着するとともにイヤホンのケーブルの先端のジャックを音楽再生装置に接続した状態で音楽再生装置に音楽を再生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−117395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の音楽再生装置では、利用者の耳に装着されたイヤホンから耳の中の空間に向けて曲の再生音が放音されるため、利用者の周囲に居る者は利用者がどのような曲を聴いているのかが分からない。利用者がどのような曲を聴いているのかを周囲の者が一見して分かるようにできれば、周囲の者は、利用者による音楽の聴取を邪魔しないようなタイミングを見計らって自らの用件を伝えたり、利用者に対して再生中の曲を一緒に聴くことを依頼する、といった行動を取り易くなるものの、このようなニーズに応える技術的手段はこれまでに提案されていなかった。
本発明は、このような背景の下に案出されたものであり、両耳にヘッドホンを装着して音楽を聴いている利用者の周囲の者に利用者がどのような曲を聴いているのかを知らせることができる技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、音楽再生装置の出力信号に応じた音響振動を耳内に向けて発生する電気/音響変換部と、発光体と、前記音楽再生装置の出力信号から前記音楽再生装置による音楽の再生の態様を求め、この態様に応じて前記発光体の発光を制御する表示制御部とを具備する音楽聴取支援装置を提供する。この発明では、表示制御部は、音楽再生装置の出力信号から音楽再生装置による音楽の再生の態様を求め、この態様に応じて発光体の発光を制御する。よって、利用者の周囲の者に利用者がどのような曲を聴いているのかを知らせることができる。
【0006】
なお、イヤホンやヘッドホンに発光体を備え付けて発光させる技術を開示した文献として、特許文献1がある。しかし、この文献1の技術は、夜間などの見通しが悪い状況下においてヘッドホンを装着した人を周囲の人に認識させるための技術であり、本発明のように、音楽再生装置による音楽の再生の態様に応じて発光体の発光を制御するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態である音楽聴取支援装置10を用いた音楽再生システムの全体構成を示す図である。
【図2】同装置10の構成を示すブロック図である。
【図3】同装置10の表示器の外観を示す図である。
【図4】同装置10の本体制御部の外観を示す図である。
【図5】同装置10と受信機90との間の赤外線信号の送受信の様子を示す図である。
【図6】同装置10における表示パターンの切り替わりの様子を示す図である。
【図7】同装置10におけるLEDの点滅回数の切り替わりの様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
図1は、この発明の一実施形態である音楽聴取支援装置10を用いた音楽再生システムの全体構成を示す図である。図2は同装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、音楽再生システムは音楽聴取支援装置10と音楽再生装置20L及び20Wとを含む。音楽再生装置20Lは、当該音楽再生装置20Lの記憶媒体内のオーディオファイルをデコードして得られるアナログ形式のL,R2チャネルの音信号AMLおよびAMRを出力する。音楽再生装置20Wは、当該音楽再生装置20Wの記憶媒体内のオーディオファイルをデコードしてアナログ形式のL,R2チャネルの音信号AMLおよびAMRを生成し、搬送波CWをこの音信号AMLおよびAMRにより変調した無線信号CW’を送信する。
【0009】
音楽聴取支援装置10は、利用者の耳に装着されるイヤホン12L及び12Rと、イヤホン12L及び12Rから引き出されたケーブル13L及び13Rに接続される制御本体部11と、ケーブル13L及び13Rの途中に各々介挿された表示器14L及び14Rとを有する。イヤホン12L及び12Rは、カナル型イヤホンである。イヤホン12Lは、中空な筐体31L内に電気/音響変換部であるドライバ32Lを埋め込み、筐体31Lにおける音道の先端にイヤピース33Lを設けたものである。また、イヤホン12Rは、中空な筐体31R内に電気/音響変換部であるドライバ32Rを埋め込み、筐体31Rにおける音道の先端にイヤピース33Rを設けたものである。イヤホン12Lは、イヤピース33Lを利用者の左耳内に挿入することによって利用者の左耳に装着される。イヤホン12Rは、イヤピース33Rを利用者の右耳内に挿入することによって利用者の右耳に装着される。イヤホン12L及び12Rが装着された状態において、イヤホン12L内のドライバ32Lは、当該ドライバ32Lに供給される電気信号に応じた音響振動を左耳内に向けて発生する。また、イヤホン12R内のドライバ32Rは、当該ドライバ32Rに供給される電気信号に応じた音響振動を右耳内に向けて発生する。
【0010】
制御本体部11は、当該制御本体部11が音楽再生装置20Lとケーブル15により接続されている場合には、音楽再生装置20LからLチャネルの音信号AMLおよびRチャネルの音信号AMRを受け取って、イヤホン12L内のドライバ32LにLチャネルの音信号AMLを、イヤホン12R内のドライバ32RにRチャネルの音信号AMRを各々供給する。また、当該制御本体部11が音楽再生装置20Wと無線区間により接続されている場合には、音楽再生装置20Wから無線信号CW’を受信し、この無線信号CW’からLチャネルの音信号AMLおよびRチャネルの音信号AMRを復調し、イヤホン12L内のドライバ32Lとイヤホン12R内のドライバ32Rに各々供給する。また、制御本体部11は、音楽再生装置20Lから再生中の曲のタイトル等を示す曲情報やその曲の音信号AMLおよびAMRを受け取り、曲情報や音信号AMLおよびAMRを示す赤外線信号を送信する。さらに、制御本体部11は、音楽再生装置20Lまたは20Wから供給される音信号AMLおよびAMRに基づいて、音楽再生装置20Lまたは20Wにおける音楽の再生の態様を求め、この態様に応じて表示器14L及び14Rの発光を制御する。制御本体部11の構成の詳細については、後述する。
【0011】
表示器14L及び14Rの各々は、RGB3色のLED(Light Emitting Diode)1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)の集合体である。より具体的に説明すると、図3に示すように、表示器14L及び14Rの各々の表面32の中心には、赤のLED1R−k(k=1〜7)が縦方向に等間隔に並んでいる。表示器14L及び14Rの各々の表面32におけるLED1R−k(k=1〜7)の左側には、緑のLED1G−k(k=1〜7)が縦方向に等間隔に並んでいる。表示器14L及び14Rの各々の表面32におけるLED1R−k(k=1〜7)の右側には、青のLED1B−k(k=1〜7)が縦方向に等間隔に並んでいる。これらのLED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)の電流供給線は、ケーブル13L及び13R内を通って制御本体部11に接続されている。
【0012】
次に、制御本体部11の構成について詳細に説明する。図4に示すように、制御本体部11の外殻をなす筐体40は直方体状をなしている。この筺体40の上下に対向する側面41及び42のうち上側の側面41からはケーブル13L及び13Rが引き出されており、下側の側面42からはケーブル15が引き出されている。また、この筐体40の左側の側面43と表面44には、操作子群59である再生/一時停止切替スイッチ45、音量調整ボリューム46、表示パターン切替スイッチ47、点滅スピード切替スイッチ48、及びシェアリングスイッチ49が設けられている。また、筺体40の表面44の右上隅には光透過口50が設けられている。筐体40内における光透過口50の裏側には、赤外線発光部58(図2)がその発光方向を光透過口50に向けて固定されている。
【0013】
図2において、電源自動切替部51は、ケーブル15を介して音楽再生装置20Lから電源電圧が供給される場合にはその電源電圧を制御本体部11内の各部に供給し、ケーブル15を介して電源電圧が供給されない場合には制御本体部11に内蔵されたバッテリ52からの電源電圧を制御本体部11内の各部に供給する回路である。音声アナログ入力部53は、ケーブル15を介して音楽再生装置20Lから入力された音信号AMLおよびAMRを制御部55に供給する。音声無線入力部54は、無線区間を介して音楽再生装置20Wから受信した無線信号CW’を復調して音信号AMLおよびAMRを生成し、この音信号AMLおよびAMRを制御部55に供給する。
【0014】
制御部55は、制御本体部11の制御中枢である。この制御部55は、再生/一時停止切替スイッチ45、音量調整ボリューム46、表示パターン切替スイッチ47、点滅スピード切替スイッチ48、及びシェアリングスイッチ49による各種操作に従って次の4種類の処理を行う。
A.再生制御処理
この処理は、音楽再生装置20Lまたは20Wに音楽を再生させてその再生音をイヤホン12L,12Rから放音させる処理である。この処理では、制御部55は、再生/一時停止切替スイッチ45が押されると、当該制御本体部11とケーブル15または無線区間を介して接続されている音楽再生装置20Lまたは20W(例えば、音楽再生装置20Lとする)に再生の指令CA1を送り、再生/一時停止切替スイッチ45が再び押されると、音楽再生装置20Lに一時停止の指令CA2を送る。音楽再生装置20Lは、指令CA1を受け取ると、自らの記憶装置内のオーディオファイルをデコードしてデコード結果である音信号AMLおよびAMRを制御本体部11に供給する処理を開始し、指令CA2を受け取るとその処理を停止する。制御部55は、音楽再生装置20Lから供給された音信号AMLおよびAMRを音声アナログ入力部53を介して受け取り、受け取った音信号AMLおよびAMRをデジタル形式の音信号DMLおよびDMRに変換し、変換した音信号DMLおよびDMRをバッファ71と光通信エンコーダ56及び表示制御部57に出力する。バッファ71に書き込まれた音信号DMLおよびDMRはD/A変換部72によってアナログ形式の電気信号に変換され、イヤホン12L内のドライバ32Lとイヤホン12R内のドライバ32Rに各々供給される。ドライバ32L及び32Rはこの電気信号に応じた音響振動をイヤホン12L及び12Rが装着されている耳内に向けて発生する。光通信エンコーダ56及び表示制御部57の両部が行う処理については、後述する。
【0015】
B.音量調整処理
この処理は、利用者の耳内に放音される再生音の音量を調整する処理である。この処理では、制御部55は、音量調整ボリューム46を筐体40における上方向(図4の矢印A方向)に移動させる操作が行われると、その移動量を振幅変化量ΔLEVに変換し、以降に当該制御部55が出力する音信号DMLおよびDMRの振幅LEVをLEV+ΔLEVにする。これにより、利用者の耳内に放音される再生音の音量が大きくなる。また、制御部55は、音量調整ボリューム46を筐体40における下方向(図4の矢印B方向)に移動させる操作が行われると、その移動量を振幅変化量ΔLEVに変換し、以降に当該制御部55が出力する音信号DMLおよびDMRの振幅LEVをLEV−ΔLEVにする。これにより、利用者の耳内に放音される再生音の音量が小さくなる。
【0016】
C.赤外線通信制御処理
この処理は、光通信エンコーダ56の動作を制御する処理である。この処理では、制御部55は、シェアリングスイッチ49が押されると、光通信エンコーダ56に処理の開始の指令CC1を送り、 シェアリングスイッチ49が再び押されると、同エンコーダ56に処理の停止の指令CC2を送る。指令CC1及びCC2の供給先である光通信エンコーダ56は、制御部55から指令CC1が与えられてから指令CC2が与えられるまでの間、制御部55の出力信号DMLおよびDMRをIrDA(Infrared Data Association)のアルゴリズムに従ってエンコードし、このエンコード結果を示す赤外線信号INFを赤外線発光部58から送信させる処理を行う。ここで、図5に示すように、制御本体部11を赤外線通信機能を有する受信機90と対向させた状態で制御部55が赤外線通信制御処理を実行すると、制御本体部11の光透過口50から受信機90に向けて赤外線信号INFが送信される。そして、受信機90は、この赤外線信号INFを受信し、受信した信号INFをIrDAのアルゴリズムに従ってデコードして信号DML及びDMRを生成し、この信号DML及びDMRを当該受信機90のスピーカ91から音として放音する。
【0017】
D.点滅制御処理
この処理は、表示制御部57の動作を制御する処理である。図6に示すように、この処理では、制御部55は、表示パターン切替スイッチ47が押される度に、表示パターン1による動作の指令CD1→表示パターン2による動作の指令CD2→表示パターン3による動作の指令CD3→表示パターン4による動作の指令CD4→表示パターン1による動作の指令CD1というように指令の種類を巡回的に切り換えつつ、各指令CD1,CD2,CD3,及びCD4を表示制御部57に供給する。指令CD1,CD2,CD3,及びCD4の供給先である表示制御部57は、制御部55の出力信号DMLおよびDMRから音楽再生装置20Lによる音楽の再生の態様を求め、この態様に応じて表示器14L及び14RのLED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)の発光を制御する処理を行う。この処理では、表示制御部57は、表示パターンの指令を受け取った場合に、その表示パターンとして決められた手順に従って各LED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)における発光色の要素(明度、色彩、色相)や表示場所を制御する。表示制御部57による制御の具体的な内容は次の通りである。
【0018】
d1.表示パターン1に従った動作の指令CD1が与えられた場合
この場合、表示制御部57は、制御部55の出力信号DMLおよびDMRをミキシングしたモノラル1チャネルの音信号を音信号DMとし、この音信号DMから音楽再生装置20Lが再生する音楽のテンポを求め、音楽のテンポを表示器14L及び14RのLED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)を発光を通じて周囲に知らせる処理を行う。この処理では、表示制御部57は、音信号DMをBPM(Beats Per Minute)検出アルゴリズムにより解析して強拍を検出する。表示制御部57は、強拍を検出する度に、その検出時刻から時間長T(Tは、相前後する強拍の時間間隔よりも短い時間とする)に亘って表示器14L及び14RのLED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)を点滅させる。また、表示制御部57は、点滅スピード切替スイッチ48が長く押される度に、LED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)の時間長T当たりの点滅の回数NumをN回ずつ増やし、点滅スピード切替スイッチ48が短く押される度に、この回数Numをn(n=N/5)回ずつ増やす。例えば、N=5、n=N/5=1である場合、図7に示すように、表示制御部57は、点滅スピード切替スイッチ48が長く押される度に、5回(超低速点灯)→10回(低速点灯)→15回(中速点灯)→20回(高速点灯)→5回(超低速点灯)と回数Numを巡回的に変化させ、点滅スピード切替スイッチ48が短く押される度にこの回数Numを1回ずつ増やしていく。この表示パターン1では、音楽再生装置20Lが再生している音楽の強拍に合わせて表示器14Lおよび14RのLED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)が点灯し、その点滅速度V(V=T/Num)が点滅スピード切替スイッチ48の操作に応じて変化する。よって、利用者は、音楽の聴取に集中しているので話しかけて欲しくないのか、音楽の聴取にそれほど集中していないので話しかけても構わないのかをLED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)の点滅によって周囲の者に知らせることができる。
【0019】
d2.表示パターン2に従った動作の指令CD2が与えられた場合
この場合、表示制御部57は、制御部55の出力信号DMLおよびDMRをミキシングしたモノラル1チャネルの音信号を音信号DMとし、この音信号DMから音楽再生装置20Lが再生する音楽の音量を求め、音楽の音量を表示器14L及び14RのLED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)の発光を通じて周囲に知らせる処理を行う。この処理では、表示制御部57は、音信号DMの振幅LEVを音楽再生装置20Lが再生する音楽の音量とする。表示制御部57は、利用者が周囲からの声に注意を払っていない状況(話しかけてもらいたくない状況)とみなせる音量範囲を音量範囲Waとし、利用者が周囲からの声に注意を傾ける状況か否かが個人差に左右される音量範囲を音量範囲Wbとし、利用者が周囲からの声に注意を払っている状況(話しかけても構わない状況)とみなせる音量範囲を音量範囲Wcとする。そして、表示制御部57は、音量範囲Waと音量範囲Wbの境界にあたる閾値TH1および音量範囲Wbと音量範囲Wcの境界にあたる閾値TH2と、音信号DMの振幅LEVとを比較する。表示制御部57は、LEV<TH2である場合には、青のLED1B−k(k=1〜7)を発光させ、TH2≦LEV≦TH1である場合には、黄色の色相が現れるように各々の輝度の調整してLED1R−k(k=1〜7)及びLED1G−k(k=1〜7)を発光させ、LEV>TH1である場合には、赤のLED1R−k(k=1〜7)を発光させる。この表示パターン2では、音楽再生装置20Lが再生している音楽の音量に応じて発光色が変化する。よって、利用者は、話しかけても構わない状況で音楽を聴いているのかそれとも話しかけてもらいたくない状況で音楽を聴いているのかをLED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)の発光によって周囲の者に知らせることができる。
【0020】
d3.表示パターン3に従った動作の指令CD3が与えられた場合
この場合、表示制御部57は、制御部55の出力信号DMLおよびDMRをミキシングしたモノラル1チャネルの音信号を音信号DMとし、この音信号DMから音楽再生装置20Lによる音楽の再生の有無を求め、音楽が再生されている場合にそのことを表示器14L及び14RのLED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)の発光を通じて周囲に知らせる処理を行う。この処理では、表示制御部57は、音信号DMの振幅LEVが閾値TH3以上である間は、音楽再生装置20Lにより音楽が再生されているとみなす。そして、この間は、表示器14L及び14Rの正面から見た発光色の色相が紫→藍→青→緑→黄→橙→赤となるようにLED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)の各々の輝度を連続的に変化させる処理を繰り返す。この表示パターン3では、音楽再生装置20Lが音楽を再生している間だけ、表示器14L及び14Rの発光色がグラデーションの如く変化する。よって、利用者は、音楽を聴いている最中であることをLED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)の発光によって周囲の者に知らせることができる。
【0021】
d4.表示パターン4に従った動作の指令CD4が与えられた場合
この場合、表示制御部57は、制御部55の出力信号DMLおよびDMRをミキシングしたモノラル1チャネルの音信号を音信号DMとし、この音信号DMから音楽再生装置20Lによる音楽の再生の有無を求め、音楽の再生が停止されている場合にそのことを表示器14L及び14RのLED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)の発光を通じて周囲に知らせる処理を行う。この処理では、表示制御部57は、音信号DMの振幅LEVが閾値TH3以下である間は、音楽再生装置20Lによる音楽の再生が停止されているとみなす。そして、この間は、表示器14L及び14Rの表面32における3色のLED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)のうち1色(例えば、赤とする)のLED1R−k(k=1〜7)を、LED1R−1→LED1R−2→LED1R−3→LED1R−4→LED1R−5→LED1R−6→LED1R−7→LED1R−1と巡回的に発光させる処理を繰り返す。この表示パターン4では、音楽再生装置20Lが音楽の再生を停止している間、発光するLED1R−kがスクロールしているかのように上下方向に移動する。よって、利用者は、音楽の再生を停止させていることをLED1R−k(k=1〜7)の発光によって周囲の者に知らせることができる。
【0022】
以上説明したように、本実施形態では、表示制御部57は、制御部55の出力信号DMLおよびDMRから音楽再生装置20Lおよび20Wによる音楽の再生の態様を求め、この態様に応じて表示器14L及び14RのLED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)の発光を制御する。よって、利用者の周囲の者に利用者がどのような曲を聴いているのかを知らせることができる。
【0023】
また、本実施形態では、表示器14L及び14Rの各々の表面32に、赤、緑、青の色ごとの複数個ずつのLED1R−k、1G−k、1B−kが並列に並べられている。よって、音楽再生装置20Lおよび20Wによる音楽の再生の態様をイルミネーションのような様々な色彩の発光色によって表すことができる。
【0024】
また、本実施形態では、光通信エンコーダ56は、制御部55の出力信号DMをIrDAのアルゴリズムに従ってエンコードして得られた赤外線信号INFを、制御本体部11と対面する他の装置に向けて送信する。よって、音楽聴取支援装置10の周囲に居る者は、音楽聴取支援装置10の発光状態からどんな曲を聴いているのについての手ががりを得てその曲に興味を持った場合には、利用者の肩を叩くなどして自身の方に振り向かせ、シェアリングスイッチ49を押す操作を依頼することにより、利用者が聴いている曲を一緒に聴くことができる。従って、本実施形態によると、利用者とその周囲に居る者との間の曲の共有の諾否についてのやりとりを円満且つ円滑に行わせることができる。
【0025】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態があり得る。例えば、以下の通りである。
(1)上記実施形態において、表示器14L及び14Rの表面32と対向する位置に光拡散フィルムを設けてもよい。この実施形態によると、表示器14L及び14Rの表面32のLED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)から放出された光が光拡散フィルムの表面屈折によって拡散する。よって、より興趣性の高い発光表現を実現することができる。また、この場合において、表示器14Lおよび14Rの表面32を黒色に塗り潰してもよい。表面32を黒色に塗りつぶすことにより、光拡散フィルムの表面屈折によって拡散した光の彩度を増すことができる。
【0026】
(2)上記実施形態において、イヤホン12L及び12Rをヘッドホンにより置き換えてもよい。
(3)上記実施形態において、LED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)のうちの何れを発光させるかの判断に用いる閾値TH1及びTH2や音楽の再生の有無の判断に用いる閾値TH3を利用者が所定の操作によって変更できるようにしてもよい。
【0027】
(4)上記実施形態では、表示制御部57は、4つの表示パターン1〜4のいずれかに従って表示器14L及び14RのLED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)を点滅させた。しかし、表示パターンの種類はこれら4つに限らない。
【0028】
たとえば、表示パターン1では、音信号DMから周期的な拍を検出できた場合には、再生されているのが音楽であるとしてある色(例えば、赤とする)のLED1R−k(k=1〜7)を発光させ、周期的な拍を検出できない場合には、再生されているのが音楽でないもの(例えば英会話スピーチ)であるとして別の色(例えば、青とする)のLED1B−k(k=1〜7)を発光させてもよい。
【0029】
また、表示パターン1では、強拍と弱拍を検出し、強拍の検出時刻に合わせて赤のLED1R−kを、弱拍の検出時刻に合わせて青のLED1B−kを発光させるようにしてもよい。
【0030】
また、表示パターン1では、LED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)の発光の時間間隔は強拍の時間間隔(即ち、テンポ)と同じにし、強拍を刻んだ各時点における音信号Mの振幅の大きさに応じて、LED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)の発光色の光量(明るさ)、彩度、または色相を変化させてもよい。このようにすると、利用者が聴いている曲がノリのよい曲(アクセントの強い曲)であることを周囲の者に知らせることができる。
【0031】
また、表示パターン2では、音信号DMをBPM検出アルゴリズムにより解析してBPMを検出し、このBPMに応じて閾値TH1及びTH2を変化させてもよい。一般に、BPMが低いとき(ゆっくりしたテンポの曲を聴いているとき)は、音楽の再生音量が大きくても周囲からの声に注意を傾け易く、BPMが高いとき(速いテンポの曲を聴いているとき)は、音楽の再生音量が小さくても周囲のからの声に注意を傾け難い。よって、この態様では、BPMが低くなると閾値TH1及びTH2を高くし、BPMが高くなると閾値TH1及びTH2を低くするとよい。
【0032】
また、表示パターン2では、操作子群59の最新の操作時刻からの経過時間に応じて閾値TH1及びTH2を変化させてもよい。一般に、利用者が操作子群59を操作してからしばらくの間は、音楽の聴取にそれほど集中していないので周囲からの声に注意を傾け易い。よって、この態様では、操作子群59の最新の操作時刻からの経過時間が長くなるほど閾値TH1及びTH2を低くするとよい。
【0033】
また、表示パターン2では、左右2チャネルの音信号DMLおよびDMRをモノラル1チャネルの音信号DMにミキシングせずに、音信号DMLの振幅LEVに応じた輝度で表示器14LのLED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)を発光させ、音信号DMRの振幅LEVに応じた輝度で表示器14RのLED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)を発光させてもよい。
【0034】
また、表示パターン2では、LED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)の明度、色相、点滅速度などを音信号DMの振幅LEVと閾値TH1,TH2との大小関係に応じて変化させるようにしてもよい。
【0035】
また、表示パターン3では、音楽再生装置20Lにより音楽が再生されている間、表示器14L及び14Rの正面から見た発光色の色相が淡い緑系の色となるようにLED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)の輝度の比を調整し、輝度の比を維持しつつLED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)の輝度を徐々に大きくした後にそれらの全てを消灯させてもよい。
【0036】
また、表示パターン3では、音楽再生装置20Lにより音楽が再生されている間、表示器14L,14Rの正面から見た発光色の色相が淡い緑系の色となるようにLED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)の輝度の比を調整し、輝度の比を維持しつつ点灯と消灯を脈動的に切り換えてもよい。
【0037】
(5)上記実施形態において、表示器14LのLED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)を表示パターン1に従って点滅させ、表示器14RのLED1R−k(k=1〜7)、1G−k(k=1〜7)、1B−k(k=1〜7)を表示パターン2に従って点滅させる、というように、左右の発光体を異なる表示パターンに従って点灯させてもよい。
【0038】
(6)上記実施形態において、表示器14L及び14Rの発光体装置は、それ自体が光を放つLED1R−k、1G−k、1B−kである必要はない。このLED1R−k、1G−k、1B−kを、他の発光体の光を指定された輝度の反射光として反射させる装置により置き換えてもよい。
【0039】
(7)上記実施形態において、光通信エンコーダ56を無線信号の変復調機能を有する無線通信エンコーダにより置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…LED、10…音楽聴取支援装置、11…制御本体部、12…イヤホン、13,15…ケーブル、14…表示器、45…再生/一時停止切替スイッチ、46…音量調整ボリューム、47…表示パターン切替スイッチ、48…点滅スピード切替スイッチ、49…シェアリングスイッチ、51…電源自動切替部、52…バッテリ、53…音声アナログ入力部、54…音声無線入力部、55…制御部、556…光通信エンコーダ、57…表示制御部、58…赤外線発光部、71…バッファ、72…D/A変換部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音楽再生装置の出力信号に応じた音響振動を耳内に向けて発生する電気/音響変換部と、
発光体と、
前記音楽再生装置の出力信号から前記音楽再生装置による音楽の再生の態様を求め、この態様に応じて前記発光体の発光を制御する表示制御部と
を具備することを特徴とする音楽聴取支援装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記電気/音響変換部の出力信号から音楽のテンポを求め、このテンポに応じて前記発光体の発光を制御することを特徴とする請求項1に記載の音楽聴取支援装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記電気/音響変換部の出力信号から音楽の再生音量を求め、この再生音量に応じて前記発光体の発光を制御することを特徴とする請求項1に記載の音楽聴取支援装置。
【請求項4】
与えられた信号を所定のアルゴリズムに従ってエンコードし、このエンコード結果を示す信号を送信させる通信エンコーダを具備し、
前記表示制御部は、操作子によって所定の操作が行われた以降、前記音楽再生装置の出力信号を前記通信エンコーダに供給する処理を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1の請求項に記載の音楽聴取支援装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−249020(P2012−249020A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118303(P2011−118303)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】