説明

音通過部構造、及び電子機器

【課題】音通過孔に残った水分を容易に外部に排出できるようにする。
【解決手段】発音または集音する音処理部3の上に、音を通過させる音通過孔5を有するカバー4を設けた音通過部構造であって、音通過孔5の内周面に界面活性剤を塗布した。具体的には、カバー4を、撥水性を有する樹脂により形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音処理部の上に音通過孔を有するカバーを設けた音通過部構造と、その音通過部構造を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話において、スピーカの上部に、孔を有するスピーカカバーを設けている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−313138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、スピーカの上部にスピーカカバーを設けたものにおいて、防水を図る場合は、スピーカカバーの下面に防水膜を設けているが、スピーカカバーの孔から水が入った場合にスピーカカバーの孔には表面張力が働いてしまうため、スピーカカバーの孔に水が溜まってしまう場合があり音の出力に障害が出てしまう。
このような問題はマイクの場合も同様である。
【0005】
本発明の課題は、音通過孔に残った水分を容易に外部に排出できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、発音または集音する音処理部の上に、音を通過させる音通過孔を有するカバーを設けた音通過部構造であって、前記音通過孔の内周面に界面活性剤を塗布したことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の音通過部構造であって、前記カバーを、撥水性を有する樹脂により形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の音通過部構造であって、前記音処理部とカバーの間に膜を設け、前記膜とカバーの間に隙間を形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の音通過部構造を筐体に備える電子機器を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、音通過孔内に残った水分を容易に外部に排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用した電子機器の一実施形態の構成を示すもので、音通過部を断面で示した携帯電話の側面図である。
【図2】図1の携帯電話の分解斜視図である。
【図3】図1の音通過部断面の拡大図である。
【図4】図3の音通過孔の拡大図である。
【図5】実施形態2を示すもので、音通過孔の拡大断面図である。
【図6】実施形態3を示すもので、音通過孔の拡大断面図である。
【図7】実施形態4を示すもので、音通過孔の拡大断面図である。
【図8】実施形態5を示すもので、音通過孔の拡大断面図である。
【図9】実施形態6を示すもので、音通過孔の拡大断面図である。
【図10】実施形態7を示すもので、音通過孔の拡大断面図である。
【図11】実施形態8を示すもので、音通過部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る実施の形態を、図面を参照して以下に説明する。
(実施形態1)
図1は本発明を適用した電子機器の一実施形態の構成として携帯電話を示すもので、図2はその携帯電話の分解状態、図3は図1の音通過部断面を拡大して示したものであり、1は第1の筐体、2は第2の筐体、3は音処理部であるスピーカ、4はスピーカカバー、5は音通過孔、6は防塵膜、7は両面接着テープである。
【0013】
第1の筐体1と第2の筐体2はヒンジ部を介して図示のように折り畳み可能に結合され、図示例では、第2の筐体2に音処理部である発音するスピーカ3が内蔵されている。このスピーカ3は、例えば表面に振動防水膜を有する防水タイプのもので、そのスピーカ3の上に位置する第2の筐体2と一体のスピーカカバー4には多数の音通過孔5が形成されている。また、スピーカカバー4の内面には、音通過孔5の下端に位置する防塵膜6が接着剤により接着して設けられるとともに、スピーカ3が周囲で両面接着テープ7を介して接着されている。
【0014】
図4は音通過孔5を拡大して示したもので、図示のように、音通過孔5の中間部よりも上端側が曲面による大径部51に形成されている。
【0015】
以上、実施形態の携帯電話によれば、スピーカカバー4の音通過孔5に外部から水が浸入した場合、その音通過孔5の中間部よりも外部側が曲面の大径部51によって水の表面張力を発生し難くしていることから、筐体1・2を持って振ることで、音通過孔5内に浸入して残った水分を容易に外部に排出することができる。
【0016】
従って、音通過孔5の機能を確保して、スピーカ3の外部への音圧を確保することができる。
【0017】
(実施形態2)
図5は実施形態2を示すもので、前述した実施形態1と同様、4はスピーカカバー、5は音通過孔であって、52は傾斜面による大径部である。
【0018】
すなわち、実施形態2では、図示のように、音通過孔5の中間部よりも上端側が傾斜面による大径部52に形成されている。
【0019】
以上、実施形態2の音通過部構造によれば、スピーカカバー4の音通過孔5に外部から水が浸入した場合、その音通過孔5の中間部よりも外部側が傾斜面の大径部52によって水の表面張力を発生し難くしていることから、前記筐体1・2を持って振ることで、音通過孔5内に浸入して残った水分を容易に外部に排出することができる。
【0020】
(実施形態3)
図6は実施形態3を示すもので、前述した実施形態1と同様、4はスピーカカバー、5は音通過孔、51は曲面による大径部である。
【0021】
すなわち、実施形態3では、図示のように、音通過孔5の中間部よりも上端側及び下端側ともに曲面による大径部51に形成されている。
【0022】
以上、実施形態3の携帯電話によれば、スピーカカバー4の音通過孔5に外部から水が浸入した場合、その音通過孔5の外部側及び内部側ともに曲面の大径部51によって水の表面張力を発生し難くしていることから、前記筐体1・2を持って振ることで、音通過孔5内に浸入して残った水分を容易に外部に排出することができる。
【0023】
(実施形態4)
図7は実施形態4を示すもので、前述した実施形態1と同様、4はスピーカカバー、5は音通過孔、51は曲面による大径部である。
【0024】
すなわち、実施形態4では、図示のように、音通過孔5の中間部よりも上半部及び下半部ともに曲面による大径部51に形成されていて、音通過孔5の全体が上下対称の凸状曲面で上半部及び下半部ともに大径部51となっている。
【0025】
以上、実施形態4の携帯電話によれば、スピーカカバー4の音通過孔5に外部から水が浸入した場合、その音通過孔5の中間部よりも外部側半部及び内部側半部ともに曲面の大径部51によって水の表面張力を発生し難くしていることから、前記筐体1・2を持って振ることで、音通過孔5内に浸入して残った水分を容易に外部に排出することができる。
【0026】
(実施形態5)
図8は実施形態5を示すもので、前述した実施形態2と同様、4はスピーカカバー、5は音通過孔、52は傾斜面による大径部である。
【0027】
すなわち、実施形態5では、図示のように、音通過孔5の中間部よりも上端側及び下端側ともに傾斜面による大径部52に形成されている。
【0028】
以上、実施形態5の音通過部構造によれば、スピーカカバー4の音通過孔5に外部から水が浸入した場合、その音通過孔5の中間部よりも外部側及び内部側ともに傾斜面の大径部52によって水の表面張力を発生し難くしていることから、前記筐体1・2を持って振ることで、音通過孔5内に浸入して残った水分を容易に外部に排出することができる。
【0029】
(実施形態6)
図9は実施形態6を示すもので、前述した実施形態2と同様、4はスピーカカバー、5は音通過孔、52は傾斜面による大径部である。
【0030】
すなわち、実施形態6では、図示のように、音通過孔5の中間部よりも上半部及び下半部ともに傾斜面による大径部52に形成されていて、音通過孔5の全体が上下対称の凸状傾斜面で上半部及び下半部ともに大径部51となっている。
【0031】
以上、実施形態6の音通過部構造によれば、スピーカカバー4の音通過孔5に外部から水が浸入した場合、その音通過孔5の中間部よりも外部側半部及び内部側半部ともに傾斜面の大径部52によって水の表面張力を発生し難くしていることから、前記筐体1・2を持って振ることで、音通過孔5内に浸入して残った水分を容易に外部に排出することができる。
【0032】
(実施形態7)
図10は実施形態7を示すもので、前述した実施形態2と同様、4はスピーカカバー、5は音通過孔、52は傾斜面による大径部であって、53は界面活性剤塗布層である。
【0033】
すなわち、実施形態7では、図示例において、音通過孔5の中間部よりも上端側が傾斜面による大径部52に形成されていて、その大径部52を含んで音通過孔5の全体に界面活性剤を塗布することにより界面活性剤塗布層53が形成されている。
【0034】
以上、実施形態7の音通過部構造によれば、スピーカカバー4の音通過孔5に外部から水が浸入した場合、その音通過孔5の全体が界面活性剤塗布層53によって水の表面張力を抑える(弱める)ことから、前記筐体1・2を持って振ることで、音通過孔5内に浸入して残った水分を容易に外部に排出することができる。
【0035】
さらに、実施形態7では、音通過孔5の中間部よりも外部側が傾斜面の大径部52となっていることから、水の排出機能が高められる。
【0036】
なお、図示例では、音通過孔5の上端側を傾斜面による大径部52としたが、そのような大径部を持たない音通過孔5の全体に界面活性剤塗布層53を形成してもよい。また、前述した実施形態1、3〜6のような大径部51・52を有する音通過孔5の全体に界面活性剤塗布層53を形成してもよく、そうすれば水の排出機能が高められる。
【0037】
(実施形態8)
図11は実施形態8を示すもので、前述した実施形態1、4と同様、4はスピーカカバー、5は音通過孔、51は曲面による大径部、6は防塵膜であって、8はスペーサ、9は隙間である。
【0038】
すなわち、実施形態8では、図示のように、スピーカカバー4の内面には、音通過孔5の下方に位置する防塵膜6が周囲のスペーサ8を介して接着剤により接着して設けられていて、スピーカカバー4の音通過孔5を有する部分と防塵膜6との間に隙間9が形成されている。
【0039】
以上、実施形態8の音通過部構造によれば、スピーカカバー4の音通過孔5に外部から水が浸入した場合、その音通過孔5の下方の防塵膜6との間の隙間9にも水が浸入することから、前記筐体1・2を持って振ることで、隙間9に浸入して残った水と一緒に音通過孔5内に浸入して残った水分を押し流して容易に外部に排出することができる。
【0040】
さらに、実施形態8では、音通過孔5の中間部よりも外部側半部及び内部側半部ともに曲面の大径部51となっていることから、水の排出機能が高められる。
【0041】
なお、図示例では、音通過孔5の上半部及び下半部ともに曲面による大径部51としたが、そのような大径部を持たない音通過孔5としてもよい。また、前述した実施形態1、3〜6のような大径部51・52を有する音通過孔5としてもよく、そうすれば水の排出機能が高められる。
【0042】
(実施形態9)
実施形態9は、前記スピーカカバー4を、撥水性を有する樹脂材料により形成したものである。
【0043】
以上、実施形態9の音通過部構造によれば、スピーカカバー4の音通過孔5に外部から水が浸入した場合、その音通過孔5を含むスピーカカバー4自体が有する表面の撥水性によって水をはじくことから、前記筐体1・2を持って振ることで、音通過孔5内に浸入して残った水分を容易に外部に排出することができる。
【0044】
なお、このように、撥水性を有する樹脂材料によりスピーカカバー4を形成する場合、音通過孔5には、前述した実施形態1〜6のような大径部51・52を形成しなくてもよいが、大径部51・52を形成してもよく、そうすれば水の排出機能が更に高められる。
【0045】
(変形例)
なお、以上の実施形態においては、筐体と一体のスピーカカバーとしたが、筐体とは別体のスピーカカバーであってもよい。
また、実施形態において、音処理部として発音するスピーカとしたが、音処理部は集音するマイクであってもよい。
さらに、実施形態では、携帯電話としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、カメラ、PDA、ノートパソコン、ウェアラブルパソコン、電卓、電子辞書などのスピーカ、マイクを有する機器全てに用いることができる。
【0046】
また、撥水性を有する樹脂材料により形成したカバーの音通過孔の一部、例えば上端部等に界面活性剤を塗布して界面活性剤塗布層を形成してもよい。
さらに、防塵膜に代えて防水膜を設けてもよく、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【0047】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0048】
(付記1)
発音または集音する音処理部の上に、音を通過させる音通過孔を有するカバーを設けた音通過部構造であって、
前記音通過孔の中間部の径より上端側を大径部に形成したことを特徴とする音通過部構造。
【0049】
(付記2)
前記大径部を曲面により形成したことを特徴とする付記1に記載の音通過部構造。
【0050】
(付記3)
前記大径部を傾斜面により形成したことを特徴とする付記1に記載の音通過部構造。
【0051】
(付記4)
前記音通過孔の下端側も大径部に形成したことを特徴とする付記1から3のいずれか一つに記載の音通過部構造。
【0052】
(付記5)
発音または集音する音処理部の上に、音を通過させる音通過孔を有するカバーを設けた音通過部構造であって、
前記音通過孔の内周面に界面活性剤を塗布したことを特徴とする音通過部構造。
【0053】
(付記6)
発音または集音する音処理部の上に、音を通過させる音通過孔を有するカバーを設けた音通過部構造であって、
前記カバーを、撥水性を有する樹脂により形成したことを特徴とする音通過部構造。
【0054】
(付記7)
前記音処理部とカバーの間に膜を設け、
前記膜とカバーの間に隙間を形成したことを特徴とする付記1から6のいずれか一つに記載の音通過部構造。
【0055】
(付記8)
付記1から7のいずれか一つに記載の音通過部構造を筐体に備えることを特徴とする電子機器。
【符号の説明】
【0056】
2 筐体
3 音処理部
4 カバー
5 音通過孔
51 曲面による大径部
52 傾斜面による大径部
53 界面活性剤塗布層
6 膜
7 両面接着テープ
8 スペーサ
9 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発音または集音する音処理部の上に、音を通過させる音通過孔を有するカバーを設けた音通過部構造であって、
前記音通過孔の内周面に界面活性剤を塗布したことを特徴とする音通過部構造。
【請求項2】
前記カバーを、撥水性を有する樹脂により形成したことを特徴とする請求項1に記載の音通過部構造。
【請求項3】
前記音処理部とカバーの間に膜を設け、
前記膜とカバーの間に隙間を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の音通過部構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の音通過部構造を筐体に備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−9445(P2013−9445A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−227274(P2012−227274)
【出願日】平成24年10月12日(2012.10.12)
【分割の表示】特願2008−289701(P2008−289701)の分割
【原出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】