説明

音階早見盤

【課題】簡易な構造、かつ、単純な操作により長音階及び短音階の各主音ごとの音階を容易に知ることができる音階早見盤を提供する。
【解決手段】音階早見盤Xを、音階を構成する12音を表す記号を、円周上に等間隔に配置して表示した表面及び裏面を有する表示盤10と、円周上に貫通孔又は切り欠きからなる窓が所定の半径に対して前記一の方向に沿って0度、60度、120度、150度、210度、270度、330度回転した位置に設けられ、0度の位置に設けられる窓が他の窓に対して識別可能に形成される表示盤10の表面に回転可能に固定される第一回転盤20と、第一回転盤20と同じ位置に貫通孔及び窓が設けられ、270度の位置に設けられる窓が他の窓に対して識別可能に形成される表示盤10の裏面に当該中心周りに回転可能に固定される第二回転盤30とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長音階及び短音階の各主音ごとの音階を容易に知ることができる器具に関する。
【背景技術】
【0002】
西洋音楽における音階は、音階を構成する12の音のそれぞれを主音とする長音階および短音階があり、合計24通りの音階が存在する。楽器奏者にとってこの音階の種類を把握することは基本であるが、初心者にとって楽譜だけから把握することは容易ではない。
このような問題に対して、下記特許文献には、音階を容易に把握するための器具が提案されている。特許文献1〜4に記載の発明は、大円盤の外周縁に音階を構成する12の音を表す記号を等間隔で配置して表示するとともに、大円盤と中心を共通にして当該中心周りに回転可能に固定される小円盤の外周縁にも音階を構成する12の音を表す記号を等間隔で配置して表示する構造を有する。このような構造により、一方の円盤に記載されている12音を例えばC(ド)を主音とする音階とし、これを基準にして、他方の円盤を回転させて、別の音を一方の円盤のC(ド)の位置に一致させるようにすると、当該一致させた別の音を主音とする音階が、一方の円盤のC(ド)を主音とする音階との対応関係から容易に把握することができる。
【0003】
しかし、初心者にとって基準となる円盤に単純に配置された12音から長音階、短音階を区別して把握することは難しく特に短音階を識別することは困難である。これに対して、下記特許文献5には、オクターヴを構成する7音に対応する位置に窓を設けた長尺の上板(ガイドケース)の板に、12音を並べて表示した下板(スケール)を移動させることで、主音の異なる音階におけるオクターヴを構成する音を表示するものが示されている。また、窓の位置を変えるためのスリットが設けられた諧調変換板が上板に重ねられており、諧調変換板の位置をずらすことで、長音階を短音階に変換することができる。この発明によれば、長音階、短音階のそれぞれの主音に対するオクターヴを構成する7音を表示でき、初心者にもわかりやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭59−189667号公報
【特許文献2】実開昭59−41399
【特許文献3】特開2009−205120号公報
【特許文献4】特開2010−91996号公報
【特許文献5】特開昭57−10179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献5に記載の発明は、構造的に12音のすべてに関する音階を表すためには上板と下板を大きな幅でずらす必要があり、どうしても横に幅を取ってしまうという問題がある。また、諧調変換板により長調と短調とに切り替えるものであるので、構造がやや煩雑になるとともに、階調の設定に2段階の操作が必要になる。また、この特許文献5に記載の発明を、上記特許文献1から4の記載の発明と組み合わせて、円板で表現するという方法が考えられ、これにより横幅を取るという問題は解決できるが、諧調変換板を設けることによる問題は解決できない。
本発明は、このような問題に鑑み、簡易な構造、かつ、単純な操作により長音階及び短音階の各主音ごとの音階を容易に知ることができる音階早見盤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は次のような構成を有する。
請求項1に記載の発明は、表示盤と第一回転盤と第二回転盤とから構成される音階早見盤であり、表示盤は、音階を構成する12音を表す記号を、円周上に一の方向に沿って等間隔に配置して表示した表面及び裏面を有する。第一回転盤は、表示盤の前記円周と同じ大きさの円周上に貫通孔又は切り欠きからなる窓が配置される板体であって、当該窓は当該円周を構成する円の所定の半径に対して前記一の方向に沿って0度、60度、120度、150度、210度、270度、330度回転した位置に設けられるとともに、0度の位置に設けられる窓が他の窓に対して識別可能に形成され、窓が配置される円周の中心が、前記表示盤における記号が配置される円周の中心と合致するように、前記表示盤の表面に当該中心周りに回転可能に固定される。第二回転盤は、表示盤の前記円周と同じ大きさの円周上に貫通孔又は切り欠きからなる窓が配置される板体であって、当該窓は当該円周を構成する円の所定の半径に対して前記一の方向に沿って0度、60度、120度、150度、210度、270度、330度回転した位置に設けられるとともに、270度の位置に設けられる窓が他の窓に対して識別可能に形成され、窓が配置される円周の中心が、前記表示盤における記号が配置される円周の中心と合致するように、前記表示盤の裏面に当該中心周りに回転可能に固定される。
このような構成により、第一回転盤側において、0度の位置に設けられる窓に、表示盤に表示される一の音を表す記号を表示させるように第一回転盤を回転させると、当該音を主音とする長音階のオクターヴを構成する音を表す記号が第一回転盤の各窓に表示される。また、第二回転盤側において、270度の位置に設けられる窓に、表示盤に表示される一の音を表す記号を表示させるように第二回転盤を回転させると、当該音を主音とする短音階のオクターヴを構成する音を表す記号が第一回転盤の各窓に表示される。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記音階早見盤において、前記第一回転盤には、長音階を表す表記がなされるとともに、前記第二回転盤には、短音階を表す表記がなされるものである。
請求項3に記載の発明は、前記音階早見盤において、前記表示盤は、前記第一回転盤及び前記第二回転盤を一周回転させたときに、前記第一回転盤及び第二回転盤のいずれもが重ならない張り出し部分が設けられるものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のような構成により、本発明は次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明は、回転盤により構成することで横幅を取ることが無く、第一回転盤側で長音階を、第二回転盤側で短音階を表すことで各面に関して1回の操作で音階を設定できるので、操作が直感的でわかりやすく、また、構造も簡易に構成することができる。
請求項2に記載の発明は、第一回転盤に長音階を表す表記をするとともに、第二回転盤に短音階を表す表記をすることで、使用者が操作及び使用時に、長音階と短音階のいずれが窓に表示されているのかを容易に認識することができる。
請求項3に記載の発明は、第一回転盤及び第二回転盤のいずれの回転位置にも重ならない張り出し部分を表示盤が有することで、操作の際に、張り出し部分を持てば、第一回転盤及び第二回転盤の回転の邪魔になることがなく、無理なく操作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は実施形態に係る音階早見盤の正面図であり、(b)は実施形態に係る音階早見盤の背面図である。
【図2】実施形態に係る音階早見盤の分解斜視図である。
【図3】(a)は表示盤の正面図であり、(b)は第一回転盤の正面図であり、(c)は第二回転盤の正面図である。
【図4】(a)は音階早見盤をDを主音とする長音階に設定した状態を示す図であり、(b)は音階早見盤をFを主音とする短音階に設定した状態を示す図である。
【図5】表示盤の変更例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図を用いて説明する。
図1(a)に本実施形態に係る音階早見盤Xの正面図を示し、図1(b)に音階早見盤Xの背面図を示す。また、図3に音階早見盤Xの分解斜視図を示す。分解早見盤Xは、表示盤10、第一回転盤20、第二回転盤30、固定軸40を有する。
表示盤10は中央に貫通孔11が設けられた円盤により構成され、表面及び裏面に音階を構成する12音が表示される。図3(a)に表示盤10の正面図を示す。なお、表示盤10は表面裏面ともに全く同じ表記がなされる。図3(a)に示すように、表示盤の表面及び裏面の外縁近傍には、音階を構成する12音を表す記号12として、「C」「D♭・C♯」「D」「D♭・E♯」「E」「F」「G♭・F♯」「G」「A♭・G♯」「A」「B♭・A♯」「B」の12の文字が、等間隔に円周上に配置される。
【0011】
第一回転盤20は、中央に表示盤10の貫通孔11と同じ大きさの貫通孔21が設けられた、表示盤10よりもやや直径の小さい円盤により構成され、外縁に複数の切欠きからなる窓22が設けられる。図3(b)に第一回転盤20の正面図を示す。窓22は、図における12時の方向を0度として、0度の位置及び、時計回りに60度、120度、150度、210度、270度、330度回転した位置に設けられる。また、窓22は第一回転盤20を表示盤10に貫通孔同士が一致するように重ねたときに、表示盤10に表示される記号12が窓22から表示し得る程度の位置及び大きさに設定される。これらの窓22のうち、0度の位置に設けられる窓22には、主音を示すために矢印23が向けられており、他の窓22と区別できるようになっている。また、第一回転盤20には長音階であることを示す表記24である「Major」の文字が表されている。
【0012】
第二回転盤30は、第一回転盤20と同じ形状をした円盤から構成され、第一回転盤20と同じ位置に、貫通孔21と七つの窓32が設けられる。図3(c)に第二回転盤30の正面図を示す。なお、この第二回転盤30の正面図で表れる面は、音階早見盤Xの背面側に表れるものである。第二回転盤30は、第一回転盤20における上述した270度の位置に設けられる窓32に、主音を示すための矢印33が向けられており、他の窓32と区別できるようになっている。また、第二回転盤30には短音階であることを示す表記34である「Minor」の文字が表されている。
【0013】
固定軸40は、表示盤10、第一回転盤20、第二回転盤30を回転自在に連結するものであり、軸部41、押さえ部42から構成される。軸部41は、貫通孔11、21、31が嵌る外径を有するパイプ体41aと、パイプ体41aの一端側に設けられるフランジ41bとからなる。押さえ部42は、パイプ体41aの穴に係合して固定される突起が先端に設けられたピン42aと、ピン42aの他端に設けられるフランジ42bとからなる。第一回転盤20、第二回転盤30で表示盤10を挟むように重ねて、軸部41のパイプ体41aを貫通孔11、21、31に通し、押さえ部42を軸部41に係合させることで、第一回転盤20、表示盤10、第二回転盤30は、フランジ41b、42bに挟まれて固定されることになる。このフランジ41b、42bの間隔は、第一回転盤20、表示盤10、第二回転盤30を重ねた厚さと略同じ程度であり、第一回転盤20及び第二回転盤30は、表示盤10に接触して、回動できるが、摩擦力により任意の位置で固定できるように設定される。
【0014】
以上のような構成により、表示盤10の表面には時計回りに30度ごとに半音上がった音を示す記号12が表示される一方、第一回転盤20に主音となる窓22からは時計回りに60度、120度、150度、210度、270度、330度の位置に窓22が設けられるので、主音を示す窓22に表示盤10の一つの音を表す記号を表示させると、当該音から1音、1音、半音、1音、1音、1音の間隔分ずつ離れた音を表す記号、即ち、当該音を主音とする長音階のオクターヴを構成する音が窓22から表れることになる。
同様に、表示盤10の裏面にも時計回りに30度ごとに半音上がった音を示す記号12が表示される一方、第二回転盤30に主音となる窓32からは時計回りに60度、90度、150度、210度、240度、300度の位置に窓32が設けられるので、主音を示す窓32に表示盤10の一つの音を表す記号を表示させると、当該音から1音、半音、1音、1音、半音、1音の間隔分ずつ離れた音を表す記号、即ち、当該音を主音とする短音階のオクターヴを構成する音が窓32から表れることになる。
【0015】
具体的な使用方法を説明すると、例えば、使用者がDを主音とする長音階のオクターヴを構成する音を知りたい場合は、長音階なので音階早見盤Xの表面を向けて第一回転盤20を回転させ、図4(a)に示すように、主音を示す矢印23が指す窓22に表示盤10に表示されている記号12の中の「D」を表示させる。これにより、「D」を主音とする長音階のオクターヴを構成する音である「D」「E」「F♯・G♭」「G」「A」「B」「C♯・D♭」が各窓22に表示されることとなる。さらに、例えば、例えば、使用者がFを主音とする短音階のオクターヴを構成する音を知りたい場合は、短音階なので音階早見盤Xの裏面を向けて第二回転盤30を回転させ、図4(b)に示すように、主音を示す矢印33が指す窓32に表示盤10に表示されている記号12の中の「F」を表示させる。これにより、「F」を主音とする短音階のオクターヴを構成する音である「F」「G」「A♭・G♯」「B♭・A♯」「C」「D♭・C♯」「D♯・E♭」が各窓22に表示されることとなる。
本実施形態に係る音階早見盤Xは、一方の面を向けて回転盤を回転させるだけで目的とする音階のオクターヴを構成する音を知ることができるので、操作が直感的でわかりやすく、また、構造も簡易に構成することができる。さらに、表示盤10の外径が第一回転盤20、第二回転盤30の外径よりも大きいので、表示盤10の外周縁を持つことで、第一回転盤10及び第二回転盤20を無理なく回転させることができる。
【0016】
なお、上記実施形態では、表示盤に表示される音名として、アメリカ・イギリス式にCDEFGABを用いているが、初心者にわかりやすいように、フランス・イタリア式の音名をカタカナで表したドレミファソラシドを用いてもよい。図5に12音を表す記号12としてドレミファソラシドによる表記に置き換えた表示盤10Aの例を示す。
また、表示盤10、第一回転盤20、第二回転盤30を構成する素材は、プラスチック、木、金属等どのような素材で形成してもよいことはいうまでもない。
そして、上記実施形態では、第一回転盤20、第二回転盤30の窓22、32を切り欠きにより構成しているが、外縁側を閉じ、貫通孔として構成してもよい。
さらに、第一回転盤20、第二回転盤30において主音が表示される窓を示すために矢印23、33を用いているが、主音を表す窓が他の窓と識別できればよいので、矢印である必要はなく、矢印以外の記号を用いたり、窓の回りに枠を設けたり、窓近傍の色を変えたり等種々の変更が可能である。
また、第一回転盤20に表示される長音階であることを示す表記24、第一回転盤30に表示される短音階であることを示す表記34は、それぞれ、長音階、短音階であることが認識できればよいので、それぞれ「長音階」と「短音階」、「長」と「短」、「M」と「m」等適宜変更してもよいことはいうまでもない。
それから、上記実施形態では、固定軸40を軸部41、押さえ部42から構成されるものを例示したが、表示盤10、第一回転盤20、第二回転盤30を回動可能に連結できるものであれば、どのようなものでもよく、はと目や、リベット、両端に目ネジが切られたスペーサーの両端をネジで固定する等、種々のものを採用することができる。
【符号の説明】
【0017】
X 音階早見盤
10 表示盤
11 貫通孔
12 音を表す記号
20 第一回転盤
21 貫通孔
22 窓
23 主音を示す矢印
24 長音階を表す表記
30 第二回転盤
31 貫通孔
32 窓
33 主音を示す矢印
34 短音階を表す表記
40 固定軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音階を構成する12音を表す記号を、円周上に一の方向に沿って等間隔に配置して表示した表面及び裏面を有する表示盤と、
前記円周と同じ大きさの円周上に貫通孔又は切り欠きからなる窓が配置される板体であって、当該窓は当該円周を構成する円の所定の半径に対して前記一の方向に沿って0度、60度、120度、150度、210度、270度、330度回転した位置に設けられるとともに、0度の位置に設けられる窓が他の窓に対して識別可能に形成され、窓が配置される円周の中心が、前記表示盤における記号が配置される円周の中心と合致するように、前記表示盤の表面に当該中心周りに回転可能に固定される第一回転盤と、
前記円周と同じ大きさの円周上に貫通孔又は切り欠きからなる窓が配置される板体であって、当該窓は当該円周を構成する円の所定の半径に対して前記一の方向に沿って0度、60度、120度、150度、210度、270度、330度回転した位置に設けられるとともに、270度の位置に設けられる窓が他の窓に対して識別可能に形成され、窓が配置される円周の中心が、前記表示盤における記号が配置される円周の中心と合致するように、前記表示盤の裏面に当該中心周りに回転可能に固定される第二回転盤と
を有する音階早見盤。
【請求項2】
前記第一回転盤には、長音階を表す表記がなされるとともに、前記第二回転盤には、短音階を表す表記がなされる請求項1に記載の音階早見盤。
【請求項3】
前記表示盤は、前記第一回転盤及び前記第二回転盤をそれぞれ一周回転させたときに、前記第一回転盤及び第二回転盤のいずれもが重ならない張り出し部分が設けられる請求項1又は2に記載の音階早見盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−3207(P2013−3207A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131379(P2011−131379)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(511143612)
【Fターム(参考)】