音響インピーダンス測定装置及び音響インピーダンス測定方法
【課題】超音波の集束角による測定誤差を補正して、迅速かつ正確に音響インピーダンスを測定することができる音響インピーダンス測定装置を提供すること。
【解決手段】超音波画像検査装置1において、超音波トランスデューサ13は、樹脂プレート9の上面91に超音波の焦点を合わせた状態で超音波伝達媒体W1及び樹脂プレート9を介して下面92側から生体組織8に対し、有限の集束角を有する超音波の集束ビームを照射するとともに、生体組織8からの反射波を受信して電気信号に変換する。パソコン3のCPUは、樹脂プレート9の音響インピーダンスと生体組織8からの反射波信号とに基づいて生体組織8の音響インピーダンスを求め、超音波の集束角を考慮してその音響インピーダンスを補正する。
【解決手段】超音波画像検査装置1において、超音波トランスデューサ13は、樹脂プレート9の上面91に超音波の焦点を合わせた状態で超音波伝達媒体W1及び樹脂プレート9を介して下面92側から生体組織8に対し、有限の集束角を有する超音波の集束ビームを照射するとともに、生体組織8からの反射波を受信して電気信号に変換する。パソコン3のCPUは、樹脂プレート9の音響インピーダンスと生体組織8からの反射波信号とに基づいて生体組織8の音響インピーダンスを求め、超音波の集束角を考慮してその音響インピーダンスを補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して試料の音響インピーダンスを求める音響インピーダンス測定装置及び音響インピーダンス測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野では、生体組織の診断を行う装置として、超音波顕微鏡を応用した製品の開発が進められており、高解像度で生体組織の観察が可能なものが実用化されている。光学顕微鏡では生体組織における化学的性質の違いを例えば染色によって区別するのに対し、超音波顕微鏡では物理的性質の違いを無染色で区別することができる。つまり、超音波顕微鏡を用いる場合には、染色を行わなくても生体組織診断を行うことができるといった利点がある。
【0003】
具体的には、超音波顕微鏡を用いる場合、生体組織などの試料に超音波を照射しその反射波を検出することにより、音響パラメータ(音響インピーダンス、音速、減衰などのパラメータ)を算出して、その算出値に応じた超音波像(音響インピーダンス像、音速像、減衰像など)を表示する。本発明者らはパルス励起型の超音波顕微鏡を利用して生体組織の音響インピーダンス像を表示する超音波画像検査装置をすでに提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この超音波画像検査装置では、図11に示されるように、樹脂プレート50(透過部材)の上面に生体組織51を密着させて支持し、その生体組織51の周縁となる位置にリファレンス52を設けている。そして、超音波振動子53から樹脂プレート50を介して生体組織51及びリファレンス52に超音波S0を照射する。
【0005】
ここで、リファレンス52においてその表面と直交する角度で照射される超音波(入射波)S0と反射波Srefとは次式(1)の関係が成り立つ。
【数1】
【0006】
ただし、Zsubは樹脂プレート50の音響インピーダンスであり、Zrefはリファレンス52の音響インピーダンスである。
【0007】
また、生体組織51においてその表面と直交する角度で照射される超音波S0と反射波Stgtとは次式(2)の関係が成り立つ。
【数2】
【0008】
ただし、Ztgtは生体組織51の音響インピーダンスである。
【0009】
従って、上記式(1),(2)から生体組織51の音響インピーダンスZtgtは、次式(3)により求められる。
【数3】
【0010】
この超音波画像検査装置において、音響インピーダンスZtgtを測定しながら超音波S0の照射点を二次元走査することにより、二次元の音響インピーダンス像が得られる。音響インピーダンスZtgtは、組織の硬さに関連するパラメータであり、音響インピーダンス像によって生体組織51の性状を観察することができる。
【特許文献1】特開2006−78408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記超音波画像検査装置では、画像分解能を高めるために焦点型超音波振動子53を用い、生体組織51の表面(樹脂プレート50との界面)で焦点を結ぶよう超音波S0が照射されている。ここで、超音波振動子53において、中心軸から出た超音波S0は、生体組織51の表面に対して直交するが、周辺部から出た超音波S0は生体組織51の表面に対して斜めに入射する。また、超音波S0が斜めに入射した場合、樹脂プレート50中には縦波だけではなく横波も発生してしまう。このため、超音波S0の集束角が大きくなるほど、音響インピーダンスZtgtの測定値に誤差が生じてしまう。この測定誤差を回避するため、従来では、生体組織51に音響インピーダンスZtgtが近い物質(例えば、水)をリファレンスとして用いるようにしていた。
【0012】
リファレンスとして水を用いる場合、水は表面張力で生体組織51と接触して移動してしまうため、生体組織51の周辺に水を配置する作業は非常に困難となる。また、リファレンスとして樹脂材料(シリコーン樹脂やアクリル樹脂など)を用いれば、生体組織51の周辺にリファレンスを確実に固定することができるため、水のように配置場所が移動するといった問題は回避することができる。しかしながら、シリコーン樹脂やアクリル樹脂は、生体組織51と音響インピーダンスが異なるため、上述したように超音波S0の集束角による測定誤差が生じてしまう。
【0013】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、超音波の集束角による測定誤差を補正して、迅速かつ正確に音響インピーダンスを測定することができる音響インピーダンス測定装置及び音響インピーダンス測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、試料に超音波を照射し、その超音波の反射波信号に基づいて、前記試料の音響インピーダンスを求める音響インピーダンス測定装置であって、前記試料を密着させるための第1面と、その第1面の反対側に位置しかつ超音波伝達媒体を接触させるための第2面とを有し、超音波を透過しうる透過部材と、前記第1面に接触するようにして存在し、前記透過部材の音響インピーダンスと異なる音響インピーダンスを有するリファレンスと、前記第1面に超音波の焦点を合わせた状態で前記超音波伝達媒体及び前記透過部材を介して前記第2面側から前記試料及び前記リファレンスに対し、有限の集束角を有する超音波の集束ビームを照射するとともに、前記試料及び前記リファレンスからの反射波を受信して電気信号に変換する焦点型超音波振動子と、前記透過部材及び前記リファレンスの音響インピーダンスと、前記リファレンス及び前記試料からの反射波信号とに基づいて前記試料の音響インピーダンスを求める算出手段と、前記焦点型超音波振動子の発する超音波の集束角を考慮して前記音響インピーダンスを補正する補正手段とを備えたことを特徴とする音響インピーダンス測定装置をその要旨とする。
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、透過部材の第1面に試料が密着され、その第1面の反対側に位置する第2面には超音波伝達媒体が接触される。また、透過部材の第1面に接触するようリファレンスが存在している。そして、焦点型超音波振動子により、透過部材の第1面に焦点を合わせた状態で超音波伝達媒体及び透過部材を介して第2面側からリファレンスに対して、有限の集束角を有する超音波の集束ビームが照射され、そのリファレンスからの反射波が受信され電気信号に変換される。さらに、焦点型超音波振動子により、透過部材の第1面に焦点を合わせた状態で超音波伝達媒体及び透過部材を介して第2面側から試料に対して、有限の集束角を有する超音波の集束ビームが照射され、その試料からの反射波が受信され電気信号に変換される。そして、算出手段により、透過部材及びリファレンスの音響インピーダンスと、リファレンス及び試料からの反射波信号とに基づいて試料の音響インピーダンスが求められる。さらに、補正手段により、焦点型超音波振動子の発する超音波の集束角が考慮されて音響インピーダンスが補正される。このようにすれば、試料の音響インピーダンスをより正確に求めることができる。またこの場合、従来技術のように試料の音響インピーダンスに近い水をリファレンスとして用いる必要はなく、例えば、装置周囲に存在する空気を用いることが可能となる。従って、リファレンスとして空気を用いれば、従来技術のように試料の周囲に水や樹脂材料などを配置させる必要がなく、試料の音響インピーダンスを迅速に測定することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記算出手段は、前記透過部材の第1面に対して前記超音波が垂直に入射したものと仮定して前記音響インピーダンスを求めることをその要旨とする。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、透過部材の第1面に対して超音波が垂直に入射したものと仮定して、算出手段により音響インピーダンスが求められる。この場合、算出手段が求めた音響インピーダンスの算出値は、超音波の集束角による誤差を含んだ値となるが、補正手段によって、音響インピーダンスの算出値が補正されることにより、正確な音響インピーダンスを求めることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記超音波の集束角に応じた誤差を含んだ算出値を、誤差のより少ない値に変換するための補正データを記憶する記憶手段を備え、前記補正手段は、前記補正データを用いて、前記算出手段が算出した音響インピーダンスを補正することをその要旨とする。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、記憶手段に補正データが記憶されており、補正手段がその補正データを用いて音響インピーダンスを補正することにより、測定誤差の少ない正確な値を求めることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記補正データは、前記超音波の入射角に依存する、前記第2面における超音波の透過率と、同じく前記超音波の入射角に依存する、前記第1面における超音波の反射率とに基づいて求められることをその要旨とする。
【0021】
本発明のように有限の集束角を有する超音波の集束ビームを用いる場合、その超音波が透過部材を伝搬する際には、透過部材の第2面における超音波の透過率や第1面における超音波の反射率は超音波の入射角に依存する。このため、請求項4に記載の発明のように、補正データは、透過部材の第2面における超音波の透過率と、透過部材の第1面における超音波の反射率とに基づいて求めることが好ましい。具体的には、超音波の集束ビームは、集束角よりも小さな任意の入射角を持つ複数の超音波を集めたビームであるため、それら様々の入射角を持つ超音波に対して積分演算を行うことにより、透過率及び反射率が算出され、その透過率及び反射率に基づいて補正データが算出される。この補正データを用いることによって、超音波の集束角に応じた誤差を確実に補正することができ、試料の音響インピーダンスをより正確に算出することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、試料に超音波を照射し、その超音波の反射波信号に基づいて、前記試料の音響インピーダンスを求める音響インピーダンス測定方法であって、超音波を透過しうる透過部材の第1面に前記試料を密着させるとともに、前記第1面において前記試料の周囲に前記透過部材の音響インピーダンスと異なる音響インピーダンスを有するリファレンスを存在させておくステップと、焦点型超音波振動子により、前記第1面に超音波の焦点を合わせた状態で超音波伝達媒体及び前記透過部材を介してその透過部材の第2面側から前記リファレンスに対し、有限の集束角を有する超音波の集束ビームを照射するステップと、前記リファレンスの表面で反射した超音波の反射波信号を取得するステップと、前記焦点型超音波振動子により、前記第1面に超音波の焦点を合わせた状態で超音波伝達媒体及び前記透過部材を介してその透過部材の第2面側から前記試料に対し、前記超音波の集束ビームを照射するステップと、前記試料の表面で反射した超音波の反射波信号を取得するステップと、前記透過部材及び前記リファレンスの音響インピーダンスと、前記リファレンス及び試料からの前記反射波信号とに基づいて前記試料の音響インピーダンスを求めるステップと、前記焦点型超音波振動子の発する超音波の集束角を考慮して前記音響インピーダンスを補正するステップとを含むことを特徴とする音響インピーダンス測定方法をその要旨とする。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、透過部材の第1面に試料が密着され、その試料の周囲にリファレンスが存在している。このリファレンスは透過部材の音響インピーダンスと異なる音響インピーダンスを有する。そして、焦点型超音波振動子により、透過部材の第1面に焦点を合わせた状態で超音波伝達媒体及び透過部材を介して第2面側からリファレンスに対して、有限の集束角を有する超音波の集束ビームが照射され、そのリファレンスからの反射波が受信され電気信号に変換される。さらに、焦点型超音波振動子により、透過部材の第1面に焦点を合わせた状態で超音波伝達媒体及び透過部材を介して第2面側から試料に対して、有限の集束角を有する超音波の集束ビームが照射され、その試料からの反射波が受信され電気信号に変換される。そして、透過部材及びリファレンスの音響インピーダンスと、リファレンス及び試料からの反射波信号とに基づいて試料の音響インピーダンスが求められる。さらに、焦点型超音波振動子の発する超音波の集束角が考慮されて音響インピーダンスが補正される。このようにすれば、試料の音響インピーダンスをより正確に求めることができる。またこの場合、従来技術のように試料の音響インピーダンスに近い水をリファレンスとして用いる必要はなく、例えば、装置周囲に存在する空気を用いることが可能となる。従って、リファレンスとして空気を用いれば、試料の周囲にリファレンスを配置させるための作業工程が不要となり、試料の音響インピーダンスを迅速に測定することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上詳述したように、請求項1〜5に記載の発明によると、超音波の集束角による測定誤差を補正して、迅速かつ正確に音響インピーダンスを測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は音響パラメータ測定装置としての超音波画像検査装置を示す概略構成図であり、図2は、その超音波画像検査装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【0026】
図1に示されるように、本実施の形態の超音波画像検査装置1は、パルス励起型超音波顕微鏡2と、パーソナルコンピュータ(パソコン)3とを備える。パルス励起型超音波顕微鏡2は、試料ステージ4を有する顕微鏡本体5と、試料ステージ4の下方に設置された超音波プローブ6とを備える。そのパルス励起型超音波顕微鏡2の超音波プローブ6がパソコン3と電気的に接続されている。
【0027】
本実施の形態の試料ステージ4は、ユーザの手動操作により、水平方向(即ちX方向及びY方向)に移動できるように構成されている。この試料ステージ4には、生体組織8を載置した樹脂プレート9(透過部材)が固定されている。なお、生体組織8は、例えば、ラットの小脳から切り出した脳組織であり、300μm〜400μmの厚さを有する。また、樹脂プレート9としては、超音波を透過する材料(例えば、ポリスチレン)からなる厚さ0.8mm程度の樹脂板が用いられている。
【0028】
超音波プローブ6は、水などの超音波伝達媒体W1を貯留可能な貯留部11をその先端部に有するプローブ本体12と、プローブ本体12の略中心部に配置される超音波トランスデューサ13(焦点型超音波振動子)と、プローブ本体12を前記試料ステージ4の面方向に沿って二次元的に走査するためのX−Yステージ14(二次元走査手段)とを備える。プローブ本体12の貯留部11は上部が開口しており、その貯留部11の開口側を上向きにした状態で超音波プローブ6が試料ステージ4の下方に設置されている。
【0029】
超音波トランスデューサ13は、先端部に凹面15が形成された円柱状の真鍮16と、その凹面15上を覆うように設けられたPVDF(ポリフッ化ビニリデン)フィルムからなるフィルムセンサ17とを備える。超音波トランスデューサ13は、パルス励起されることでフィルムセンサ17が振動し、樹脂プレート9の下面92(第2面)側から生体組織8に対して、有限の集束角を有する超音波の集束ビームを照射する。この超音波の集束ビームは、貯留部11の超音波伝達媒体W1を介して円錐状に集束されて樹脂プレート9の上面91(生体組織8の表面)で焦点を結ぶようになっている。なお、超音波トランスデューサ13としては、口径2.4mm、焦点距離3.2mm、集束角22°、超音波の帯域幅10MHz〜100MHzの仕様のものを用いている。
【0030】
図2に示されるように、超音波プローブ6は、超音波トランスデューサ13と、X−Yステージ14と、パルス発生回路21と、受信回路22と、送受波分離回路23と、検波回路24と、A/D変換回路25と、エンコーダ26と、コントローラ27とを備える。
【0031】
X−Yステージ14は、超音波の照射点を二次元的に機械走査させるためのXステージ14X及びYステージ14Yを備えるとともに、それぞれのステージ14X,14Yを駆動するモータ28X,28Yを備えている。これらのモータ28X,28Yとしては、ステッピングモータやリニアモータが使用される。
【0032】
各モータ28X,28Yにはコントローラ27が接続されており、該コントローラ27の駆動信号に応答してモータ28X,28Yが駆動される。これらモータ28X,28Yの駆動により、Xステージ14Xを連続走査(連続送り)するとともに、Yステージ14Yを間欠送りとなるよう制御することで、X−Yステージ14の高速走査が可能となっている。
【0033】
また、本実施の形態においては、Xステージ14Xに対応してエンコーダ26が設けられ、エンコーダ26によりXステージ14Xの走査位置が検出される。具体的に、走査範囲(例えば、縦横3mmの走査範囲)を300×300個の測定点(ピクセル)に分割した場合、1回のX方向(水平方向)の走査が300分割される。そして、各測定点の位置がエンコーダ26によって検出されパソコン3に取り込まれる。パソコン3はそのエンコーダ26の出力に同期して駆動制御信号を生成して、その駆動制御信号をコントローラ27に供給する。コントローラ27は、この駆動制御信号に基づいてモータ28Xを駆動する。また、コントローラ27は、エンコーダ26の出力信号に基づきX方向の1ラインの走査が終了した時点でモータ28Yを駆動して、Yステージ14YをY方向に1ピクセル分移動させる。
【0034】
さらに、コントローラ27は、駆動制御信号に同期してトリガ信号を生成してパルス発生回路21に供給する。これにより、パルス発生回路21において、そのトリガ信号に同期したタイミングで励起パルスが生成される。その励起パルスが送受波分離回路23を介して超音波トランスデューサ13に供給される結果、超音波トランスデューサ13から超音波が照射される。
【0035】
図3には、X−Yステージ14の移動に伴う超音波の走査範囲R1の一例を示している。走査範囲R1は、生体組織8とその生体組織8が載置されていない領域(非載置面)を含むように設定される。この例では、非載置面に接触する空気A1がリファレンスとして用いられる。また、走査範囲R1の右下の隅に非載置面(空気A1)が存在するようになっており、その位置から走査が開始される。そして、矢印で示すように、生体組織8の表面に沿ってX方向及びY方向に二次元的に走査が順次行われる。なお、リファレンスとして空気A1を用いたが、それ以外に例えば、シリコーン樹脂やアクリル樹脂などの樹脂材料からなるリファレンスを用いることもできる。
【0036】
超音波トランスデューサ13のフィルムセンサ17は、送受波兼用の素子であり、生体組織8で反射した超音波(反射波)を電気信号に変換する。そして、その超音波の反射波信号は、送受波分離回路23を介して受信回路22に供給される。受信回路22は、信号増幅回路を含んで構成されていて、反射波信号を増幅して検波回路24に出力する。
【0037】
検波回路24は、生体組織8からの反射波信号を検出するための回路であり、図示しないゲート回路を含む。本実施の形態の検波回路24は、超音波トランスデューサ13で受信した反射波信号のなかから生体組織8やリファレンスA1の反射波信号を抽出する。そして、検波回路24で抽出された反射波信号は、A/D変換回路25に供給されてA/D変換された後、パソコン3に転送される。
【0038】
パソコン3は、CPU31、I/F回路32、メモリ33、記憶装置34、入力装置35、及び表示装置36を備え、それらはバス37を介して相互に接続されている。
【0039】
CPU31は、メモリ33を利用して制御プログラムを実行し、システム全体を統括的に制御する。制御プログラムとしては、X−Yステージ14による二次元走査を制御するためのプログラム、音響インピーダンスを算出するためのプログラム、音響インピーダンス像を表示するためのプログラムなどを含む。
【0040】
I/F回路32は、超音波プローブ6との間で信号の授受を行うためのインターフェース(具体的には、USBインターフェース)である。I/F回路32は、超音波プローブ6に制御信号(コントローラ27への駆動制御信号)を出力したり、超音波プローブ6からの転送データ(A/D変換回路25から転送されるデータなど)を入力したりする。
【0041】
表示装置36は、例えば、LCDやCRTなどのカラーディスプレイであり、生体組織8の画像(音響インピーダンス像)や各種設定の入力画面を表示するために用いられる。入力装置35は、キーボードやマウス装置などであり、ユーザからの要求や指示、パラメータの入力に用いられる。
【0042】
記憶装置34は、磁気ディスク装置や光ディスク装置などであり、制御プログラム及び各種のデータを記憶している。なお、この記憶装置34に記憶されるデータとしては、樹脂プレート9の音響インピーダンスやリファレンスとしての空気A1の音響インピーダンスを含む。具体的には、例えば、樹脂プレート9の音響インピーダンス値は、2.49×106Ns/m3であり、空気A1の音響インピーダンス値は、4.1×102Ns/m3である。
【0043】
CPU31は、入力装置35による指示に従い、プログラムやデータを記憶装置34からメモリ33へ転送し、それを逐次実行する。なお、CPU31が実行するプログラムとしては、メモリカード、フレキシブルディスク、光ディスクなどの記憶媒体に記憶されたプログラムや、通信媒体を介してダウンロードしたプログラムでもよく、その実行時には記憶装置34にインストールして利用する。
【0044】
本実施の形態の超音波画像検査装置1では、超音波トランスデューサ13から照射される超音波の集束角を考慮して、生体組織8の音響インピーダンスを算出している。
【0045】
詳しくは、図4に示されるように、超音波トランスデューサ13から照射される超音波S0は、有限の角度を持つ集束波であり、樹脂プレート9(上面91)の垂線を基準とした最大値θ0_max(例えば、22°の角度)で入射する。超音波S0の入射角が0°でない場合、縦波の一部は入射の際に横波に変換される。ここで、超音波S0が入射角θ0で樹脂プレート9に入射する場合、その樹脂プレート9を透過して伝搬する縦波の角度θsub_lはスネルの法則により次式(4)のように求められる。
【数4】
【0046】
なお、Csub_lは、樹脂プレート9における縦波の音速であり、C0は超音波伝達媒体W1における音速である。
【0047】
図5に示されるように、超音波S0が超音波トランスデューサ13に反響するまでには、3つの横波(図中では点線の矢印で示す)が発生する。横波は反射率に影響を及ぼすが、縦波に比較して十分遅いので、受信時の時間窓の範囲を限定することで除去することができるため、横波の影響を無視できるものとする。またここでは、横波がリファレンスA1や生体組織8で発生しないと仮定する。
【0048】
この場合、樹脂プレート9の上面91(第1面)における超音波の反射率Rsub→tgt(反射縦波と入射縦波との比率)は、次式(5)のように表される。
【数5】
【0049】
ここで、θsub_tは式(6)、Msubは式(7)、Nsub→tgtは式(8)でそれぞれ表される。
【数6】
【数7】
【数8】
【0050】
また、式(8)における角度θtgtは次式(9)により求めることができる。
【数9】
【0051】
なお、上記の式(5)〜式(9)において、Ztgtは生体組織8の音響インピーダンスであり、Zsub_lは樹脂プレート9の縦波の音響インピーダンスである。また、Csub_tは樹脂プレート9における横波の音速であり、Ctgtは生体組織8の音速である。
【0052】
超音波S0は、伝搬時に樹脂プレート9の下面92(第2面)を2回透過し、その透過率T0→sub・Tsub→0は次式(10)で示される。
【数10】
【0053】
ここで、N0→subは次式(11)で表される。
【数11】
【0054】
なお、Z0は超音波伝達媒体W1の音響インピーダンスである。
【0055】
見かけの反射定数(受信波と送信波との比率)は、0°〜θ0_maxのそれぞれの入射角度θ0に応じて積分演算を行うことにより、次式(12)のように表される。ただし、収差は無視してよいものと仮定する。
【数12】
【0056】
ここで、Lは超音波S0の集束距離である。
【0057】
また、リファレンスA1に超音波S0を照射した場合の見かけの反射定数は、Sref(Zref,Cref,θ0_max)として上記式(12)と同様の式から算出される。
【0058】
さらに、上記式(1)を参照すると、垂直入射として仮定した見かけの音響インピーダンスZtgt_appは、次式(13)のように推定される。
【数13】
【0059】
図6には、音響インピーダンスの真値Ztgtと、式(13)を用いて算出した音響インピーダンスの見かけ値Ztgt_appとの関係を示している。なお、図6には、リファレンスとして空気A1を用いる場合の見かけ値Ztgt_appと、リファレンスとして水を用いる場合の見かけ値Ztgt_appとを示している。また、図中の実線は、生体組織8の密度(Ztgt/Ctgt)を1.0とした場合の算出値であり、実線の上側の点線は密度を1.1とした場合、実線の下側の点線は密度を0.9とした場合の算出値である。
【0060】
図6に示されるように、リファレンスとして水を用いる場合、真値Ztgtと見かけ値Ztgt_appとは、生体組織8の音響インピーダンスZtgtが水の音響インピーダンスZrefと等しくなるとき(Ztgt=Zref=1.49×106Ns/m3)に一致し、音響インピーダンスZtgtが水の音響インピーダンスZrefの値から遠くなるにつれて差が大きくなる。また、リファレンスとして空気A1を用いる場合では、真値Ztgtと見かけ値Ztgt_appとの差がより大きくなる。この場合、測定される音響インピーダンスZtgt_appは、実際の生体組織8の音響インピーダンス(例えば、1.4〜1.7×106Ns/m3)から大きく離れた値となってしまうため、集束角による測定誤差は無視することができない。
【0061】
従って、本実施の形態では、図6に示される見かけ値Ztgt_appの実線(曲線)に対応する二次関数の補正データを求め、その補正データを用いて、生体組織8の音響インピーダンスZtgtを補正するよう構成している。この補正データは、式(13)の見かけ値Ztgt_appから求められるデータであって、超音波S0の入射角θ0に依存する式(5)の反射率Rsub→tgtや式(10)の透過率T'0→subに基づいて求められる。より詳しくは、超音波S0の集束ビームは、集束角θ0_maxよりも小さな任意の入射角θ0を持つ超音波S0を集めたビームであるため、それら様々の入射角θ0を持つ超音波S0に対して積分演算を行うことにより、補正データが求められている。なお、この補正データは、制御プログラムとともに記憶装置34に記憶されている。
【0062】
本発明者らは、上記超音波画像検査装置1において、音響インピーダンスZtgtの補正が正しく行われているか確認するため、濃度の異なる食塩水の音響インピーダンスを測定した。その結果を図7に示している。なおここでは、リファレンスとして水を用いた場合(図中では「●」で示す)とリファレンスとして空気を用いた場合(図中では「▲」で示す)とについて、超音波S0が垂直入射したものと仮定して食塩水の音響インピーダンスを測定している。
【0063】
図7に示されるように、垂直入射と仮定した各測定値は、図6の見かけ値Ztgt_appとほぼ一致している。また、補正後の音響インピーダンス(図中では、水を用いた場合を「○」、空気を用いた場合を「△」で示す)は、真値に一致しており、リファレンスに依存しないことが確認できた。
【0064】
次に、生体組織8の音響インピーダンス像を生成するためにCPU31が実行する処理例について、図8のフローチャートを用いて説明する。なお、図8の処理に先立ち、樹脂プレート9の上面91の試料支持領域内(具体的には、超音波S0の走査範囲R1内)において、生体組織8表面を密着させるとともにその周囲にリファレンスとしての空気A1が存在するようにして生体組織8をセットする。その後、パソコン3の入力装置35が操作されることにより図8の処理が開始される。
【0065】
まず、超音波プローブ6の初期動作として、CPU31からの指示に基づいてコントローラ27によりモータ28X,28Yが駆動され、樹脂プレート9の上面91における走査位置が生体組織8の非載置面に位置するようにX−Yステージ14が移動される。またこのとき、励起パルスがトランスデューサ13に供給されると、図9に示されるように、非載置面の空気A1に向けて超音波S0が照射され、その反射波Srefが検波回路24で検出される。そして、CPU31は、A/D変換回路25で変換されたデジタルデータをI/F回路32を介して取得し、そのデータをリファレンスでの反射波のデータとしてメモリ33に記憶する(ステップ100)。
【0066】
その後、CPU31からの指示に基づいてコントローラ27によりモータ28X,28Yが駆動され、X−Yステージ14による二次元走査が開始される。CPU31は、エンコーダ26の出力に基づいて測定点の座標データを取得する(ステップ110)。そして、図9に示されるように、生体組織8に超音波S0が照射され、その反射波Stgtが検波回路24で検出される。CPU31は、A/D変換回路25で変換されたデジタルデータをI/F回路32を介して取得し、そのデータを生体組織8の反射波Stgtのデータとして座標データに関連付けてメモリ33に記憶する(ステップ120)。
【0067】
その後、CPU31は、得られたリファレンスA1及び生体組織8での反射波Sref,Stgtの強度と、リファレンスA1及び樹脂プレート9の音響インピーダンスZref,Zsubの値とを用いて、上記の式(3)に対応した演算処理を行い測定点での音響インピーダンスZtgtを算出する(ステップ130)。さらに、CPU31は、補正データを用いて、音響インピーダンスZtgtを補正し、集束角による測定誤差の少ない正確な値を求める(ステップ140)。そして、CPU31は、補正した音響インピーダンスZtgtを測定点の座標データに関連付けてメモリ33に記憶する。
【0068】
その後、CPU31は、補正後の音響インピーダンスZtgtに基づいて音響インピーダンス像を生成するための画像処理を行う。詳しくは、CPU31は、音響インピーダンスZtgtを用いてカラー変調処理を行い、音響インピーダンスZtgtの大きさに応じた画像データを生成し、該画像データをメモリ33に記憶する(ステップ150)。これの具体例を挙げると、音響インピーダンスZtgtの値が大きくなるほど赤色系の色調を強くし、音響インピーダンスZtgtの値が小さくなるほど青色系の色調を強くするような画像処理を行う。
【0069】
CPU31は、全ての測定点での処理が終了し、1画面分の画像データが取得されたか否かを判断する(ステップ160)。ここで、全データが取得されていない場合、CPU31は、ステップ110に戻って、ステップ110〜160の処理を繰り返し実行する。そして、全データが取得された場合には、該データを表示装置36に転送して、図10に示すような音響インピーダンス像41を表示させた後、図8の処理を終了する。なお、図10の音響インピーダンス像41では、生体組織8における音響インピーダンスZtgtの違いを色の濃淡で示しているが、実際には、音響インピーダンスZtgtの値に応じて色分けされたカラー画像として表示される。
【0070】
また、図10の音響インピーダンス像41において、四角で囲まれた領域R0の音響インピーダンスZtgtの分布を確認した。補正前の音響インピーダンスZtgtは、1.92〜2.04×106Ns/m3で分布していたが、補正された音響インピーダンスZtgtは、1.59〜1.68×106Ns/m3の間に分布していた。さらに、リファレンスとして水を用いて生体組織8の音響インピーダンス像41を取得し、同様に、音響インピーダンスZtgtの分布を確認した。この場合、補正前の音響インピーダンスZtgtは、1.68〜1.85×106Ns/m3で分布していたが、補正された音響インピーダンスZtgtは、1.59〜1.68×106Ns/m3の間に分布していた。このように、本実施の形態の超音波画像検査装置1を用いれば、リファレンスの種類にかかわらず補正後の音響インピーダンスZtgtの分布が一致することが確認された。
【0071】
従って、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0072】
(1)本実施の形態の超音波画像検査装置1では、超音波トランスデューサ13の発する超音波S0の集束角θ0_maxを考慮して音響インピーダンスZtgtが補正されるので、生体組織8の音響インピーダンスZtgtをより正確に求めることができる。またこの場合、リファレンスとして空気A1を用いることができるため、従来技術のように、水やシリコーン樹脂などを生体組織8の周囲に配置する作業が不要となり、生体組織8の音響インピーダンスZtgtを迅速に測定することができる。
【0073】
(2)本実施の形態のパルス励起型超音波顕微鏡2は、生体組織8の下方から超音波S0を照射してその組織下面の画像を可視化するよう構成された倒立型の顕微鏡である。この場合、試料ホルダなどの特別な固定部材を設ける必要がなく、樹脂プレート9の上面91に生体組織8を載せるだけで、その音響インピーダンスZtgtを容易に測定することができる。従って、生体組織8を生かした状態でその組織構造を迅速に確認することができる。言い換えると、生体組織8のありのままの様子を観察することが可能となる。
【0074】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0075】
・上記実施の形態では、二次関数の補正データを用いて音響インピーダンスZtgtを補正するものであったが、これ以外に、例えば、変換テーブルの補正データを用い、測定誤差を含んだ算出値を誤差のない値に補正するよう構成してもよい。
【0076】
・上記実施の形態において、パルス励起型超音波顕微鏡2は、超音波S0の集束角や焦点距離の異なる複数種類の超音波トランスデューサ13を着脱可能に構成されていてもよい。この場合、超音波トランスデューサ13の種類に応じた補正データを記憶装置34に記憶しておき、使用する超音波トランスデューサ13の種類に応じた補正データを用いて音響インピーダンスZtgtの補正を適切に行うように構成する。
【0077】
・上記各実施の形態において、ラットの小脳における生体組織8を観察するものであったが、ラット以外の動物の生体組織を観察してもよい。また、脳以外の神経組織や、神経組織以外の臓器(心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓など)の組織を観察してもよい。
【0078】
・上記実施の形態では、生体組織8の下方から超音波を照射する倒立型の超音波顕微鏡2を用いるものであったが、生体組織8の上方から超音波を照射する超音波顕微鏡を用いてもよい。
【0079】
・上記各実施の形態において、パソコン3を用いて超音波画像検査装置1を構成したが、それ以外にワークステーションなどのコンピュータを用いてもよい。また、音響インピーダンス像を表示するための表示装置36は、パソコン3に一体的に設けられるものであったが、パソコン3と別体で設けてもよい。
【0080】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0081】
(1)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記リファレンスは装置周囲に存在する空気であることを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【0082】
(2)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記リファレンスは前記第1面上に設けられた樹脂材料であることを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【0083】
(3)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記超音波の照射点を前記第1面に沿って二次元的に走査させる二次元走査手段を備え、前記リファレンス及び前記試料は、前記二次元走査手段により超音波が走査される範囲内に配置されることを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【0084】
(4)請求項1乃至4のいずれか1項において、超音波の集束角が異なる複数種類の超音波振動子が着脱可能に構成され、前記超音波振動子の種類に応じた補正データを前記記憶手段に記憶することを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【0085】
(5)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記リファレンスの種類に応じた補正データを前記記憶手段に記憶することを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【0086】
(6)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記補正した音響インピーダンスに基づいて、試料表面の超音波像を生成するための処理を行う画像生成手段を備えたことを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【0087】
(7)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記超音波の周波数は10MHz以上であることを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【0088】
(8)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記超音波の集束ビームの集束角は15度以上であることを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【0089】
(9)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記試料は生体組織であることを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【0090】
(10)請求項3において、前記補正データは、前記透過部材において第1面で反射する超音波の縦波と前記第2面を透過する超音波の縦波に基づいて算出されることを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【0091】
(11)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記焦点型超音波振動子と前記超音波の照射点を前記第1面に沿って二次元的に走査させる二次元走査手段とを備えた超音波顕微鏡を含んで構成されることを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明を具体化した一実施の形態の超音波画像検査装置を示す概略構成図。
【図2】超音波画像検査装置の電気的な構成を示すブロック図。
【図3】超音波の走査範囲を示す説明図。
【図4】超音波の集束ビームを示す説明図。
【図5】入射角θ0での超音波の伝搬を示す説明図。
【図6】音響インピーダンスの真値と見かけ値との関係を示すグラフ。
【図7】音響インピーダンスの測定値を示すグラフ。
【図8】音響インピーダンス像の生成処理を示すフローチャート。
【図9】生体組織及びリファレンスでの反射波を示す説明図。
【図10】生体組織の音響インピーダンス像を示す説明図。
【図11】従来の音響インピーダンスの測定方法を示す説明図。
【符号の説明】
【0093】
1…音響パラメータ測定装置としての超音波画像検査装置
8…試料としての生体組織
9…透過部材としての樹脂プレート
13…焦点型超音波振動子としての超音波トランスデューサ
14…二次元走査手段としてのX−Yステージ
31…演算手段及び補正手段としてのCPU
91…透過部材の第1面としての上面
92…透過部材の第2面としての下面
A1…リファレンスとしての空気
S0…超音波
Stgt…試料からの反射波
Sref…リファレンスとしとの空気からの反射波
Ztgt…音響パラメータとしての音響インピーダンス
W1…音波伝達媒体
θ0…入射角
θ0_max…集束角
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して試料の音響インピーダンスを求める音響インピーダンス測定装置及び音響インピーダンス測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野では、生体組織の診断を行う装置として、超音波顕微鏡を応用した製品の開発が進められており、高解像度で生体組織の観察が可能なものが実用化されている。光学顕微鏡では生体組織における化学的性質の違いを例えば染色によって区別するのに対し、超音波顕微鏡では物理的性質の違いを無染色で区別することができる。つまり、超音波顕微鏡を用いる場合には、染色を行わなくても生体組織診断を行うことができるといった利点がある。
【0003】
具体的には、超音波顕微鏡を用いる場合、生体組織などの試料に超音波を照射しその反射波を検出することにより、音響パラメータ(音響インピーダンス、音速、減衰などのパラメータ)を算出して、その算出値に応じた超音波像(音響インピーダンス像、音速像、減衰像など)を表示する。本発明者らはパルス励起型の超音波顕微鏡を利用して生体組織の音響インピーダンス像を表示する超音波画像検査装置をすでに提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この超音波画像検査装置では、図11に示されるように、樹脂プレート50(透過部材)の上面に生体組織51を密着させて支持し、その生体組織51の周縁となる位置にリファレンス52を設けている。そして、超音波振動子53から樹脂プレート50を介して生体組織51及びリファレンス52に超音波S0を照射する。
【0005】
ここで、リファレンス52においてその表面と直交する角度で照射される超音波(入射波)S0と反射波Srefとは次式(1)の関係が成り立つ。
【数1】
【0006】
ただし、Zsubは樹脂プレート50の音響インピーダンスであり、Zrefはリファレンス52の音響インピーダンスである。
【0007】
また、生体組織51においてその表面と直交する角度で照射される超音波S0と反射波Stgtとは次式(2)の関係が成り立つ。
【数2】
【0008】
ただし、Ztgtは生体組織51の音響インピーダンスである。
【0009】
従って、上記式(1),(2)から生体組織51の音響インピーダンスZtgtは、次式(3)により求められる。
【数3】
【0010】
この超音波画像検査装置において、音響インピーダンスZtgtを測定しながら超音波S0の照射点を二次元走査することにより、二次元の音響インピーダンス像が得られる。音響インピーダンスZtgtは、組織の硬さに関連するパラメータであり、音響インピーダンス像によって生体組織51の性状を観察することができる。
【特許文献1】特開2006−78408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記超音波画像検査装置では、画像分解能を高めるために焦点型超音波振動子53を用い、生体組織51の表面(樹脂プレート50との界面)で焦点を結ぶよう超音波S0が照射されている。ここで、超音波振動子53において、中心軸から出た超音波S0は、生体組織51の表面に対して直交するが、周辺部から出た超音波S0は生体組織51の表面に対して斜めに入射する。また、超音波S0が斜めに入射した場合、樹脂プレート50中には縦波だけではなく横波も発生してしまう。このため、超音波S0の集束角が大きくなるほど、音響インピーダンスZtgtの測定値に誤差が生じてしまう。この測定誤差を回避するため、従来では、生体組織51に音響インピーダンスZtgtが近い物質(例えば、水)をリファレンスとして用いるようにしていた。
【0012】
リファレンスとして水を用いる場合、水は表面張力で生体組織51と接触して移動してしまうため、生体組織51の周辺に水を配置する作業は非常に困難となる。また、リファレンスとして樹脂材料(シリコーン樹脂やアクリル樹脂など)を用いれば、生体組織51の周辺にリファレンスを確実に固定することができるため、水のように配置場所が移動するといった問題は回避することができる。しかしながら、シリコーン樹脂やアクリル樹脂は、生体組織51と音響インピーダンスが異なるため、上述したように超音波S0の集束角による測定誤差が生じてしまう。
【0013】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、超音波の集束角による測定誤差を補正して、迅速かつ正確に音響インピーダンスを測定することができる音響インピーダンス測定装置及び音響インピーダンス測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、試料に超音波を照射し、その超音波の反射波信号に基づいて、前記試料の音響インピーダンスを求める音響インピーダンス測定装置であって、前記試料を密着させるための第1面と、その第1面の反対側に位置しかつ超音波伝達媒体を接触させるための第2面とを有し、超音波を透過しうる透過部材と、前記第1面に接触するようにして存在し、前記透過部材の音響インピーダンスと異なる音響インピーダンスを有するリファレンスと、前記第1面に超音波の焦点を合わせた状態で前記超音波伝達媒体及び前記透過部材を介して前記第2面側から前記試料及び前記リファレンスに対し、有限の集束角を有する超音波の集束ビームを照射するとともに、前記試料及び前記リファレンスからの反射波を受信して電気信号に変換する焦点型超音波振動子と、前記透過部材及び前記リファレンスの音響インピーダンスと、前記リファレンス及び前記試料からの反射波信号とに基づいて前記試料の音響インピーダンスを求める算出手段と、前記焦点型超音波振動子の発する超音波の集束角を考慮して前記音響インピーダンスを補正する補正手段とを備えたことを特徴とする音響インピーダンス測定装置をその要旨とする。
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、透過部材の第1面に試料が密着され、その第1面の反対側に位置する第2面には超音波伝達媒体が接触される。また、透過部材の第1面に接触するようリファレンスが存在している。そして、焦点型超音波振動子により、透過部材の第1面に焦点を合わせた状態で超音波伝達媒体及び透過部材を介して第2面側からリファレンスに対して、有限の集束角を有する超音波の集束ビームが照射され、そのリファレンスからの反射波が受信され電気信号に変換される。さらに、焦点型超音波振動子により、透過部材の第1面に焦点を合わせた状態で超音波伝達媒体及び透過部材を介して第2面側から試料に対して、有限の集束角を有する超音波の集束ビームが照射され、その試料からの反射波が受信され電気信号に変換される。そして、算出手段により、透過部材及びリファレンスの音響インピーダンスと、リファレンス及び試料からの反射波信号とに基づいて試料の音響インピーダンスが求められる。さらに、補正手段により、焦点型超音波振動子の発する超音波の集束角が考慮されて音響インピーダンスが補正される。このようにすれば、試料の音響インピーダンスをより正確に求めることができる。またこの場合、従来技術のように試料の音響インピーダンスに近い水をリファレンスとして用いる必要はなく、例えば、装置周囲に存在する空気を用いることが可能となる。従って、リファレンスとして空気を用いれば、従来技術のように試料の周囲に水や樹脂材料などを配置させる必要がなく、試料の音響インピーダンスを迅速に測定することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記算出手段は、前記透過部材の第1面に対して前記超音波が垂直に入射したものと仮定して前記音響インピーダンスを求めることをその要旨とする。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、透過部材の第1面に対して超音波が垂直に入射したものと仮定して、算出手段により音響インピーダンスが求められる。この場合、算出手段が求めた音響インピーダンスの算出値は、超音波の集束角による誤差を含んだ値となるが、補正手段によって、音響インピーダンスの算出値が補正されることにより、正確な音響インピーダンスを求めることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記超音波の集束角に応じた誤差を含んだ算出値を、誤差のより少ない値に変換するための補正データを記憶する記憶手段を備え、前記補正手段は、前記補正データを用いて、前記算出手段が算出した音響インピーダンスを補正することをその要旨とする。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、記憶手段に補正データが記憶されており、補正手段がその補正データを用いて音響インピーダンスを補正することにより、測定誤差の少ない正確な値を求めることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記補正データは、前記超音波の入射角に依存する、前記第2面における超音波の透過率と、同じく前記超音波の入射角に依存する、前記第1面における超音波の反射率とに基づいて求められることをその要旨とする。
【0021】
本発明のように有限の集束角を有する超音波の集束ビームを用いる場合、その超音波が透過部材を伝搬する際には、透過部材の第2面における超音波の透過率や第1面における超音波の反射率は超音波の入射角に依存する。このため、請求項4に記載の発明のように、補正データは、透過部材の第2面における超音波の透過率と、透過部材の第1面における超音波の反射率とに基づいて求めることが好ましい。具体的には、超音波の集束ビームは、集束角よりも小さな任意の入射角を持つ複数の超音波を集めたビームであるため、それら様々の入射角を持つ超音波に対して積分演算を行うことにより、透過率及び反射率が算出され、その透過率及び反射率に基づいて補正データが算出される。この補正データを用いることによって、超音波の集束角に応じた誤差を確実に補正することができ、試料の音響インピーダンスをより正確に算出することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、試料に超音波を照射し、その超音波の反射波信号に基づいて、前記試料の音響インピーダンスを求める音響インピーダンス測定方法であって、超音波を透過しうる透過部材の第1面に前記試料を密着させるとともに、前記第1面において前記試料の周囲に前記透過部材の音響インピーダンスと異なる音響インピーダンスを有するリファレンスを存在させておくステップと、焦点型超音波振動子により、前記第1面に超音波の焦点を合わせた状態で超音波伝達媒体及び前記透過部材を介してその透過部材の第2面側から前記リファレンスに対し、有限の集束角を有する超音波の集束ビームを照射するステップと、前記リファレンスの表面で反射した超音波の反射波信号を取得するステップと、前記焦点型超音波振動子により、前記第1面に超音波の焦点を合わせた状態で超音波伝達媒体及び前記透過部材を介してその透過部材の第2面側から前記試料に対し、前記超音波の集束ビームを照射するステップと、前記試料の表面で反射した超音波の反射波信号を取得するステップと、前記透過部材及び前記リファレンスの音響インピーダンスと、前記リファレンス及び試料からの前記反射波信号とに基づいて前記試料の音響インピーダンスを求めるステップと、前記焦点型超音波振動子の発する超音波の集束角を考慮して前記音響インピーダンスを補正するステップとを含むことを特徴とする音響インピーダンス測定方法をその要旨とする。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、透過部材の第1面に試料が密着され、その試料の周囲にリファレンスが存在している。このリファレンスは透過部材の音響インピーダンスと異なる音響インピーダンスを有する。そして、焦点型超音波振動子により、透過部材の第1面に焦点を合わせた状態で超音波伝達媒体及び透過部材を介して第2面側からリファレンスに対して、有限の集束角を有する超音波の集束ビームが照射され、そのリファレンスからの反射波が受信され電気信号に変換される。さらに、焦点型超音波振動子により、透過部材の第1面に焦点を合わせた状態で超音波伝達媒体及び透過部材を介して第2面側から試料に対して、有限の集束角を有する超音波の集束ビームが照射され、その試料からの反射波が受信され電気信号に変換される。そして、透過部材及びリファレンスの音響インピーダンスと、リファレンス及び試料からの反射波信号とに基づいて試料の音響インピーダンスが求められる。さらに、焦点型超音波振動子の発する超音波の集束角が考慮されて音響インピーダンスが補正される。このようにすれば、試料の音響インピーダンスをより正確に求めることができる。またこの場合、従来技術のように試料の音響インピーダンスに近い水をリファレンスとして用いる必要はなく、例えば、装置周囲に存在する空気を用いることが可能となる。従って、リファレンスとして空気を用いれば、試料の周囲にリファレンスを配置させるための作業工程が不要となり、試料の音響インピーダンスを迅速に測定することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上詳述したように、請求項1〜5に記載の発明によると、超音波の集束角による測定誤差を補正して、迅速かつ正確に音響インピーダンスを測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は音響パラメータ測定装置としての超音波画像検査装置を示す概略構成図であり、図2は、その超音波画像検査装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【0026】
図1に示されるように、本実施の形態の超音波画像検査装置1は、パルス励起型超音波顕微鏡2と、パーソナルコンピュータ(パソコン)3とを備える。パルス励起型超音波顕微鏡2は、試料ステージ4を有する顕微鏡本体5と、試料ステージ4の下方に設置された超音波プローブ6とを備える。そのパルス励起型超音波顕微鏡2の超音波プローブ6がパソコン3と電気的に接続されている。
【0027】
本実施の形態の試料ステージ4は、ユーザの手動操作により、水平方向(即ちX方向及びY方向)に移動できるように構成されている。この試料ステージ4には、生体組織8を載置した樹脂プレート9(透過部材)が固定されている。なお、生体組織8は、例えば、ラットの小脳から切り出した脳組織であり、300μm〜400μmの厚さを有する。また、樹脂プレート9としては、超音波を透過する材料(例えば、ポリスチレン)からなる厚さ0.8mm程度の樹脂板が用いられている。
【0028】
超音波プローブ6は、水などの超音波伝達媒体W1を貯留可能な貯留部11をその先端部に有するプローブ本体12と、プローブ本体12の略中心部に配置される超音波トランスデューサ13(焦点型超音波振動子)と、プローブ本体12を前記試料ステージ4の面方向に沿って二次元的に走査するためのX−Yステージ14(二次元走査手段)とを備える。プローブ本体12の貯留部11は上部が開口しており、その貯留部11の開口側を上向きにした状態で超音波プローブ6が試料ステージ4の下方に設置されている。
【0029】
超音波トランスデューサ13は、先端部に凹面15が形成された円柱状の真鍮16と、その凹面15上を覆うように設けられたPVDF(ポリフッ化ビニリデン)フィルムからなるフィルムセンサ17とを備える。超音波トランスデューサ13は、パルス励起されることでフィルムセンサ17が振動し、樹脂プレート9の下面92(第2面)側から生体組織8に対して、有限の集束角を有する超音波の集束ビームを照射する。この超音波の集束ビームは、貯留部11の超音波伝達媒体W1を介して円錐状に集束されて樹脂プレート9の上面91(生体組織8の表面)で焦点を結ぶようになっている。なお、超音波トランスデューサ13としては、口径2.4mm、焦点距離3.2mm、集束角22°、超音波の帯域幅10MHz〜100MHzの仕様のものを用いている。
【0030】
図2に示されるように、超音波プローブ6は、超音波トランスデューサ13と、X−Yステージ14と、パルス発生回路21と、受信回路22と、送受波分離回路23と、検波回路24と、A/D変換回路25と、エンコーダ26と、コントローラ27とを備える。
【0031】
X−Yステージ14は、超音波の照射点を二次元的に機械走査させるためのXステージ14X及びYステージ14Yを備えるとともに、それぞれのステージ14X,14Yを駆動するモータ28X,28Yを備えている。これらのモータ28X,28Yとしては、ステッピングモータやリニアモータが使用される。
【0032】
各モータ28X,28Yにはコントローラ27が接続されており、該コントローラ27の駆動信号に応答してモータ28X,28Yが駆動される。これらモータ28X,28Yの駆動により、Xステージ14Xを連続走査(連続送り)するとともに、Yステージ14Yを間欠送りとなるよう制御することで、X−Yステージ14の高速走査が可能となっている。
【0033】
また、本実施の形態においては、Xステージ14Xに対応してエンコーダ26が設けられ、エンコーダ26によりXステージ14Xの走査位置が検出される。具体的に、走査範囲(例えば、縦横3mmの走査範囲)を300×300個の測定点(ピクセル)に分割した場合、1回のX方向(水平方向)の走査が300分割される。そして、各測定点の位置がエンコーダ26によって検出されパソコン3に取り込まれる。パソコン3はそのエンコーダ26の出力に同期して駆動制御信号を生成して、その駆動制御信号をコントローラ27に供給する。コントローラ27は、この駆動制御信号に基づいてモータ28Xを駆動する。また、コントローラ27は、エンコーダ26の出力信号に基づきX方向の1ラインの走査が終了した時点でモータ28Yを駆動して、Yステージ14YをY方向に1ピクセル分移動させる。
【0034】
さらに、コントローラ27は、駆動制御信号に同期してトリガ信号を生成してパルス発生回路21に供給する。これにより、パルス発生回路21において、そのトリガ信号に同期したタイミングで励起パルスが生成される。その励起パルスが送受波分離回路23を介して超音波トランスデューサ13に供給される結果、超音波トランスデューサ13から超音波が照射される。
【0035】
図3には、X−Yステージ14の移動に伴う超音波の走査範囲R1の一例を示している。走査範囲R1は、生体組織8とその生体組織8が載置されていない領域(非載置面)を含むように設定される。この例では、非載置面に接触する空気A1がリファレンスとして用いられる。また、走査範囲R1の右下の隅に非載置面(空気A1)が存在するようになっており、その位置から走査が開始される。そして、矢印で示すように、生体組織8の表面に沿ってX方向及びY方向に二次元的に走査が順次行われる。なお、リファレンスとして空気A1を用いたが、それ以外に例えば、シリコーン樹脂やアクリル樹脂などの樹脂材料からなるリファレンスを用いることもできる。
【0036】
超音波トランスデューサ13のフィルムセンサ17は、送受波兼用の素子であり、生体組織8で反射した超音波(反射波)を電気信号に変換する。そして、その超音波の反射波信号は、送受波分離回路23を介して受信回路22に供給される。受信回路22は、信号増幅回路を含んで構成されていて、反射波信号を増幅して検波回路24に出力する。
【0037】
検波回路24は、生体組織8からの反射波信号を検出するための回路であり、図示しないゲート回路を含む。本実施の形態の検波回路24は、超音波トランスデューサ13で受信した反射波信号のなかから生体組織8やリファレンスA1の反射波信号を抽出する。そして、検波回路24で抽出された反射波信号は、A/D変換回路25に供給されてA/D変換された後、パソコン3に転送される。
【0038】
パソコン3は、CPU31、I/F回路32、メモリ33、記憶装置34、入力装置35、及び表示装置36を備え、それらはバス37を介して相互に接続されている。
【0039】
CPU31は、メモリ33を利用して制御プログラムを実行し、システム全体を統括的に制御する。制御プログラムとしては、X−Yステージ14による二次元走査を制御するためのプログラム、音響インピーダンスを算出するためのプログラム、音響インピーダンス像を表示するためのプログラムなどを含む。
【0040】
I/F回路32は、超音波プローブ6との間で信号の授受を行うためのインターフェース(具体的には、USBインターフェース)である。I/F回路32は、超音波プローブ6に制御信号(コントローラ27への駆動制御信号)を出力したり、超音波プローブ6からの転送データ(A/D変換回路25から転送されるデータなど)を入力したりする。
【0041】
表示装置36は、例えば、LCDやCRTなどのカラーディスプレイであり、生体組織8の画像(音響インピーダンス像)や各種設定の入力画面を表示するために用いられる。入力装置35は、キーボードやマウス装置などであり、ユーザからの要求や指示、パラメータの入力に用いられる。
【0042】
記憶装置34は、磁気ディスク装置や光ディスク装置などであり、制御プログラム及び各種のデータを記憶している。なお、この記憶装置34に記憶されるデータとしては、樹脂プレート9の音響インピーダンスやリファレンスとしての空気A1の音響インピーダンスを含む。具体的には、例えば、樹脂プレート9の音響インピーダンス値は、2.49×106Ns/m3であり、空気A1の音響インピーダンス値は、4.1×102Ns/m3である。
【0043】
CPU31は、入力装置35による指示に従い、プログラムやデータを記憶装置34からメモリ33へ転送し、それを逐次実行する。なお、CPU31が実行するプログラムとしては、メモリカード、フレキシブルディスク、光ディスクなどの記憶媒体に記憶されたプログラムや、通信媒体を介してダウンロードしたプログラムでもよく、その実行時には記憶装置34にインストールして利用する。
【0044】
本実施の形態の超音波画像検査装置1では、超音波トランスデューサ13から照射される超音波の集束角を考慮して、生体組織8の音響インピーダンスを算出している。
【0045】
詳しくは、図4に示されるように、超音波トランスデューサ13から照射される超音波S0は、有限の角度を持つ集束波であり、樹脂プレート9(上面91)の垂線を基準とした最大値θ0_max(例えば、22°の角度)で入射する。超音波S0の入射角が0°でない場合、縦波の一部は入射の際に横波に変換される。ここで、超音波S0が入射角θ0で樹脂プレート9に入射する場合、その樹脂プレート9を透過して伝搬する縦波の角度θsub_lはスネルの法則により次式(4)のように求められる。
【数4】
【0046】
なお、Csub_lは、樹脂プレート9における縦波の音速であり、C0は超音波伝達媒体W1における音速である。
【0047】
図5に示されるように、超音波S0が超音波トランスデューサ13に反響するまでには、3つの横波(図中では点線の矢印で示す)が発生する。横波は反射率に影響を及ぼすが、縦波に比較して十分遅いので、受信時の時間窓の範囲を限定することで除去することができるため、横波の影響を無視できるものとする。またここでは、横波がリファレンスA1や生体組織8で発生しないと仮定する。
【0048】
この場合、樹脂プレート9の上面91(第1面)における超音波の反射率Rsub→tgt(反射縦波と入射縦波との比率)は、次式(5)のように表される。
【数5】
【0049】
ここで、θsub_tは式(6)、Msubは式(7)、Nsub→tgtは式(8)でそれぞれ表される。
【数6】
【数7】
【数8】
【0050】
また、式(8)における角度θtgtは次式(9)により求めることができる。
【数9】
【0051】
なお、上記の式(5)〜式(9)において、Ztgtは生体組織8の音響インピーダンスであり、Zsub_lは樹脂プレート9の縦波の音響インピーダンスである。また、Csub_tは樹脂プレート9における横波の音速であり、Ctgtは生体組織8の音速である。
【0052】
超音波S0は、伝搬時に樹脂プレート9の下面92(第2面)を2回透過し、その透過率T0→sub・Tsub→0は次式(10)で示される。
【数10】
【0053】
ここで、N0→subは次式(11)で表される。
【数11】
【0054】
なお、Z0は超音波伝達媒体W1の音響インピーダンスである。
【0055】
見かけの反射定数(受信波と送信波との比率)は、0°〜θ0_maxのそれぞれの入射角度θ0に応じて積分演算を行うことにより、次式(12)のように表される。ただし、収差は無視してよいものと仮定する。
【数12】
【0056】
ここで、Lは超音波S0の集束距離である。
【0057】
また、リファレンスA1に超音波S0を照射した場合の見かけの反射定数は、Sref(Zref,Cref,θ0_max)として上記式(12)と同様の式から算出される。
【0058】
さらに、上記式(1)を参照すると、垂直入射として仮定した見かけの音響インピーダンスZtgt_appは、次式(13)のように推定される。
【数13】
【0059】
図6には、音響インピーダンスの真値Ztgtと、式(13)を用いて算出した音響インピーダンスの見かけ値Ztgt_appとの関係を示している。なお、図6には、リファレンスとして空気A1を用いる場合の見かけ値Ztgt_appと、リファレンスとして水を用いる場合の見かけ値Ztgt_appとを示している。また、図中の実線は、生体組織8の密度(Ztgt/Ctgt)を1.0とした場合の算出値であり、実線の上側の点線は密度を1.1とした場合、実線の下側の点線は密度を0.9とした場合の算出値である。
【0060】
図6に示されるように、リファレンスとして水を用いる場合、真値Ztgtと見かけ値Ztgt_appとは、生体組織8の音響インピーダンスZtgtが水の音響インピーダンスZrefと等しくなるとき(Ztgt=Zref=1.49×106Ns/m3)に一致し、音響インピーダンスZtgtが水の音響インピーダンスZrefの値から遠くなるにつれて差が大きくなる。また、リファレンスとして空気A1を用いる場合では、真値Ztgtと見かけ値Ztgt_appとの差がより大きくなる。この場合、測定される音響インピーダンスZtgt_appは、実際の生体組織8の音響インピーダンス(例えば、1.4〜1.7×106Ns/m3)から大きく離れた値となってしまうため、集束角による測定誤差は無視することができない。
【0061】
従って、本実施の形態では、図6に示される見かけ値Ztgt_appの実線(曲線)に対応する二次関数の補正データを求め、その補正データを用いて、生体組織8の音響インピーダンスZtgtを補正するよう構成している。この補正データは、式(13)の見かけ値Ztgt_appから求められるデータであって、超音波S0の入射角θ0に依存する式(5)の反射率Rsub→tgtや式(10)の透過率T'0→subに基づいて求められる。より詳しくは、超音波S0の集束ビームは、集束角θ0_maxよりも小さな任意の入射角θ0を持つ超音波S0を集めたビームであるため、それら様々の入射角θ0を持つ超音波S0に対して積分演算を行うことにより、補正データが求められている。なお、この補正データは、制御プログラムとともに記憶装置34に記憶されている。
【0062】
本発明者らは、上記超音波画像検査装置1において、音響インピーダンスZtgtの補正が正しく行われているか確認するため、濃度の異なる食塩水の音響インピーダンスを測定した。その結果を図7に示している。なおここでは、リファレンスとして水を用いた場合(図中では「●」で示す)とリファレンスとして空気を用いた場合(図中では「▲」で示す)とについて、超音波S0が垂直入射したものと仮定して食塩水の音響インピーダンスを測定している。
【0063】
図7に示されるように、垂直入射と仮定した各測定値は、図6の見かけ値Ztgt_appとほぼ一致している。また、補正後の音響インピーダンス(図中では、水を用いた場合を「○」、空気を用いた場合を「△」で示す)は、真値に一致しており、リファレンスに依存しないことが確認できた。
【0064】
次に、生体組織8の音響インピーダンス像を生成するためにCPU31が実行する処理例について、図8のフローチャートを用いて説明する。なお、図8の処理に先立ち、樹脂プレート9の上面91の試料支持領域内(具体的には、超音波S0の走査範囲R1内)において、生体組織8表面を密着させるとともにその周囲にリファレンスとしての空気A1が存在するようにして生体組織8をセットする。その後、パソコン3の入力装置35が操作されることにより図8の処理が開始される。
【0065】
まず、超音波プローブ6の初期動作として、CPU31からの指示に基づいてコントローラ27によりモータ28X,28Yが駆動され、樹脂プレート9の上面91における走査位置が生体組織8の非載置面に位置するようにX−Yステージ14が移動される。またこのとき、励起パルスがトランスデューサ13に供給されると、図9に示されるように、非載置面の空気A1に向けて超音波S0が照射され、その反射波Srefが検波回路24で検出される。そして、CPU31は、A/D変換回路25で変換されたデジタルデータをI/F回路32を介して取得し、そのデータをリファレンスでの反射波のデータとしてメモリ33に記憶する(ステップ100)。
【0066】
その後、CPU31からの指示に基づいてコントローラ27によりモータ28X,28Yが駆動され、X−Yステージ14による二次元走査が開始される。CPU31は、エンコーダ26の出力に基づいて測定点の座標データを取得する(ステップ110)。そして、図9に示されるように、生体組織8に超音波S0が照射され、その反射波Stgtが検波回路24で検出される。CPU31は、A/D変換回路25で変換されたデジタルデータをI/F回路32を介して取得し、そのデータを生体組織8の反射波Stgtのデータとして座標データに関連付けてメモリ33に記憶する(ステップ120)。
【0067】
その後、CPU31は、得られたリファレンスA1及び生体組織8での反射波Sref,Stgtの強度と、リファレンスA1及び樹脂プレート9の音響インピーダンスZref,Zsubの値とを用いて、上記の式(3)に対応した演算処理を行い測定点での音響インピーダンスZtgtを算出する(ステップ130)。さらに、CPU31は、補正データを用いて、音響インピーダンスZtgtを補正し、集束角による測定誤差の少ない正確な値を求める(ステップ140)。そして、CPU31は、補正した音響インピーダンスZtgtを測定点の座標データに関連付けてメモリ33に記憶する。
【0068】
その後、CPU31は、補正後の音響インピーダンスZtgtに基づいて音響インピーダンス像を生成するための画像処理を行う。詳しくは、CPU31は、音響インピーダンスZtgtを用いてカラー変調処理を行い、音響インピーダンスZtgtの大きさに応じた画像データを生成し、該画像データをメモリ33に記憶する(ステップ150)。これの具体例を挙げると、音響インピーダンスZtgtの値が大きくなるほど赤色系の色調を強くし、音響インピーダンスZtgtの値が小さくなるほど青色系の色調を強くするような画像処理を行う。
【0069】
CPU31は、全ての測定点での処理が終了し、1画面分の画像データが取得されたか否かを判断する(ステップ160)。ここで、全データが取得されていない場合、CPU31は、ステップ110に戻って、ステップ110〜160の処理を繰り返し実行する。そして、全データが取得された場合には、該データを表示装置36に転送して、図10に示すような音響インピーダンス像41を表示させた後、図8の処理を終了する。なお、図10の音響インピーダンス像41では、生体組織8における音響インピーダンスZtgtの違いを色の濃淡で示しているが、実際には、音響インピーダンスZtgtの値に応じて色分けされたカラー画像として表示される。
【0070】
また、図10の音響インピーダンス像41において、四角で囲まれた領域R0の音響インピーダンスZtgtの分布を確認した。補正前の音響インピーダンスZtgtは、1.92〜2.04×106Ns/m3で分布していたが、補正された音響インピーダンスZtgtは、1.59〜1.68×106Ns/m3の間に分布していた。さらに、リファレンスとして水を用いて生体組織8の音響インピーダンス像41を取得し、同様に、音響インピーダンスZtgtの分布を確認した。この場合、補正前の音響インピーダンスZtgtは、1.68〜1.85×106Ns/m3で分布していたが、補正された音響インピーダンスZtgtは、1.59〜1.68×106Ns/m3の間に分布していた。このように、本実施の形態の超音波画像検査装置1を用いれば、リファレンスの種類にかかわらず補正後の音響インピーダンスZtgtの分布が一致することが確認された。
【0071】
従って、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0072】
(1)本実施の形態の超音波画像検査装置1では、超音波トランスデューサ13の発する超音波S0の集束角θ0_maxを考慮して音響インピーダンスZtgtが補正されるので、生体組織8の音響インピーダンスZtgtをより正確に求めることができる。またこの場合、リファレンスとして空気A1を用いることができるため、従来技術のように、水やシリコーン樹脂などを生体組織8の周囲に配置する作業が不要となり、生体組織8の音響インピーダンスZtgtを迅速に測定することができる。
【0073】
(2)本実施の形態のパルス励起型超音波顕微鏡2は、生体組織8の下方から超音波S0を照射してその組織下面の画像を可視化するよう構成された倒立型の顕微鏡である。この場合、試料ホルダなどの特別な固定部材を設ける必要がなく、樹脂プレート9の上面91に生体組織8を載せるだけで、その音響インピーダンスZtgtを容易に測定することができる。従って、生体組織8を生かした状態でその組織構造を迅速に確認することができる。言い換えると、生体組織8のありのままの様子を観察することが可能となる。
【0074】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0075】
・上記実施の形態では、二次関数の補正データを用いて音響インピーダンスZtgtを補正するものであったが、これ以外に、例えば、変換テーブルの補正データを用い、測定誤差を含んだ算出値を誤差のない値に補正するよう構成してもよい。
【0076】
・上記実施の形態において、パルス励起型超音波顕微鏡2は、超音波S0の集束角や焦点距離の異なる複数種類の超音波トランスデューサ13を着脱可能に構成されていてもよい。この場合、超音波トランスデューサ13の種類に応じた補正データを記憶装置34に記憶しておき、使用する超音波トランスデューサ13の種類に応じた補正データを用いて音響インピーダンスZtgtの補正を適切に行うように構成する。
【0077】
・上記各実施の形態において、ラットの小脳における生体組織8を観察するものであったが、ラット以外の動物の生体組織を観察してもよい。また、脳以外の神経組織や、神経組織以外の臓器(心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓など)の組織を観察してもよい。
【0078】
・上記実施の形態では、生体組織8の下方から超音波を照射する倒立型の超音波顕微鏡2を用いるものであったが、生体組織8の上方から超音波を照射する超音波顕微鏡を用いてもよい。
【0079】
・上記各実施の形態において、パソコン3を用いて超音波画像検査装置1を構成したが、それ以外にワークステーションなどのコンピュータを用いてもよい。また、音響インピーダンス像を表示するための表示装置36は、パソコン3に一体的に設けられるものであったが、パソコン3と別体で設けてもよい。
【0080】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0081】
(1)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記リファレンスは装置周囲に存在する空気であることを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【0082】
(2)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記リファレンスは前記第1面上に設けられた樹脂材料であることを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【0083】
(3)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記超音波の照射点を前記第1面に沿って二次元的に走査させる二次元走査手段を備え、前記リファレンス及び前記試料は、前記二次元走査手段により超音波が走査される範囲内に配置されることを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【0084】
(4)請求項1乃至4のいずれか1項において、超音波の集束角が異なる複数種類の超音波振動子が着脱可能に構成され、前記超音波振動子の種類に応じた補正データを前記記憶手段に記憶することを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【0085】
(5)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記リファレンスの種類に応じた補正データを前記記憶手段に記憶することを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【0086】
(6)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記補正した音響インピーダンスに基づいて、試料表面の超音波像を生成するための処理を行う画像生成手段を備えたことを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【0087】
(7)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記超音波の周波数は10MHz以上であることを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【0088】
(8)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記超音波の集束ビームの集束角は15度以上であることを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【0089】
(9)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記試料は生体組織であることを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【0090】
(10)請求項3において、前記補正データは、前記透過部材において第1面で反射する超音波の縦波と前記第2面を透過する超音波の縦波に基づいて算出されることを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【0091】
(11)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記焦点型超音波振動子と前記超音波の照射点を前記第1面に沿って二次元的に走査させる二次元走査手段とを備えた超音波顕微鏡を含んで構成されることを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明を具体化した一実施の形態の超音波画像検査装置を示す概略構成図。
【図2】超音波画像検査装置の電気的な構成を示すブロック図。
【図3】超音波の走査範囲を示す説明図。
【図4】超音波の集束ビームを示す説明図。
【図5】入射角θ0での超音波の伝搬を示す説明図。
【図6】音響インピーダンスの真値と見かけ値との関係を示すグラフ。
【図7】音響インピーダンスの測定値を示すグラフ。
【図8】音響インピーダンス像の生成処理を示すフローチャート。
【図9】生体組織及びリファレンスでの反射波を示す説明図。
【図10】生体組織の音響インピーダンス像を示す説明図。
【図11】従来の音響インピーダンスの測定方法を示す説明図。
【符号の説明】
【0093】
1…音響パラメータ測定装置としての超音波画像検査装置
8…試料としての生体組織
9…透過部材としての樹脂プレート
13…焦点型超音波振動子としての超音波トランスデューサ
14…二次元走査手段としてのX−Yステージ
31…演算手段及び補正手段としてのCPU
91…透過部材の第1面としての上面
92…透過部材の第2面としての下面
A1…リファレンスとしての空気
S0…超音波
Stgt…試料からの反射波
Sref…リファレンスとしとの空気からの反射波
Ztgt…音響パラメータとしての音響インピーダンス
W1…音波伝達媒体
θ0…入射角
θ0_max…集束角
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に超音波を照射し、その超音波の反射波信号に基づいて、前記試料の音響インピーダンスを求める音響インピーダンス測定装置であって、
前記試料を密着させるための第1面と、その第1面の反対側に位置しかつ超音波伝達媒体を接触させるための第2面とを有し、超音波を透過しうる透過部材と、
前記第1面に接触するようにして存在し、前記透過部材の音響インピーダンスと異なる音響インピーダンスを有するリファレンスと、
前記第1面に超音波の焦点を合わせた状態で前記超音波伝達媒体及び前記透過部材を介して前記第2面側から前記試料及び前記リファレンスに対し、有限の集束角を有する超音波の集束ビームを照射するとともに、前記試料及び前記リファレンスからの反射波を受信して電気信号に変換する焦点型超音波振動子と、
前記透過部材及び前記リファレンスの音響インピーダンスと、前記リファレンス及び前記試料からの反射波信号とに基づいて前記試料の音響インピーダンスを求める算出手段と、
前記焦点型超音波振動子の発する超音波の集束角を考慮して前記音響インピーダンスを補正する補正手段と
を備えたことを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【請求項2】
前記算出手段は、前記透過部材の第1面に対して前記超音波が垂直に入射したものと仮定して前記音響インピーダンスを求めることを特徴とする請求項1に記載の音響インピーダンス測定装置。
【請求項3】
前記超音波の集束角に応じた誤差を含んだ算出値を、誤差のより少ない値に変換するための補正データを記憶する記憶手段を備え、
前記補正手段は、前記補正データを用いて、前記算出手段が算出した音響インピーダンスを補正することを特徴とする請求項2に記載の音響インピーダンス測定装置。
【請求項4】
前記補正データは、前記超音波の入射角に依存する、前記第2面における超音波の透過率と、同じく前記超音波の入射角に依存する、前記第1面における超音波の反射率とに基づいて求められることを特徴とする請求項3に記載の音響インピーダンス測定装置。
【請求項5】
試料に超音波を照射し、その超音波の反射波信号に基づいて、前記試料の音響インピーダンスを求める音響インピーダンス測定方法であって、
超音波を透過しうる透過部材の第1面に前記試料を密着させるとともに、前記第1面において前記試料の周囲に前記透過部材の音響インピーダンスと異なる音響インピーダンスを有するリファレンスを存在させておくステップと、
焦点型超音波振動子により、前記第1面に超音波の焦点を合わせた状態で超音波伝達媒体及び前記透過部材を介してその透過部材の第2面側から前記リファレンスに対し、有限の集束角を有する超音波の集束ビームを照射するステップと、
前記リファレンスの表面で反射した超音波の反射波信号を取得するステップと、
前記焦点型超音波振動子により、前記第1面に超音波の焦点を合わせた状態で超音波伝達媒体及び前記透過部材を介してその透過部材の第2面側から前記試料に対し、前記超音波の集束ビームを照射するステップと、
前記試料の表面で反射した超音波の反射波信号を取得するステップと、
前記透過部材及び前記リファレンスの音響インピーダンスと、前記リファレンス及び試料からの前記反射波信号とに基づいて前記試料の音響インピーダンスを求めるステップと、
前記焦点型超音波振動子の発する超音波の集束角を考慮して前記音響インピーダンスを補正するステップと
を含むことを特徴とする音響インピーダンス測定方法。
【請求項1】
試料に超音波を照射し、その超音波の反射波信号に基づいて、前記試料の音響インピーダンスを求める音響インピーダンス測定装置であって、
前記試料を密着させるための第1面と、その第1面の反対側に位置しかつ超音波伝達媒体を接触させるための第2面とを有し、超音波を透過しうる透過部材と、
前記第1面に接触するようにして存在し、前記透過部材の音響インピーダンスと異なる音響インピーダンスを有するリファレンスと、
前記第1面に超音波の焦点を合わせた状態で前記超音波伝達媒体及び前記透過部材を介して前記第2面側から前記試料及び前記リファレンスに対し、有限の集束角を有する超音波の集束ビームを照射するとともに、前記試料及び前記リファレンスからの反射波を受信して電気信号に変換する焦点型超音波振動子と、
前記透過部材及び前記リファレンスの音響インピーダンスと、前記リファレンス及び前記試料からの反射波信号とに基づいて前記試料の音響インピーダンスを求める算出手段と、
前記焦点型超音波振動子の発する超音波の集束角を考慮して前記音響インピーダンスを補正する補正手段と
を備えたことを特徴とする音響インピーダンス測定装置。
【請求項2】
前記算出手段は、前記透過部材の第1面に対して前記超音波が垂直に入射したものと仮定して前記音響インピーダンスを求めることを特徴とする請求項1に記載の音響インピーダンス測定装置。
【請求項3】
前記超音波の集束角に応じた誤差を含んだ算出値を、誤差のより少ない値に変換するための補正データを記憶する記憶手段を備え、
前記補正手段は、前記補正データを用いて、前記算出手段が算出した音響インピーダンスを補正することを特徴とする請求項2に記載の音響インピーダンス測定装置。
【請求項4】
前記補正データは、前記超音波の入射角に依存する、前記第2面における超音波の透過率と、同じく前記超音波の入射角に依存する、前記第1面における超音波の反射率とに基づいて求められることを特徴とする請求項3に記載の音響インピーダンス測定装置。
【請求項5】
試料に超音波を照射し、その超音波の反射波信号に基づいて、前記試料の音響インピーダンスを求める音響インピーダンス測定方法であって、
超音波を透過しうる透過部材の第1面に前記試料を密着させるとともに、前記第1面において前記試料の周囲に前記透過部材の音響インピーダンスと異なる音響インピーダンスを有するリファレンスを存在させておくステップと、
焦点型超音波振動子により、前記第1面に超音波の焦点を合わせた状態で超音波伝達媒体及び前記透過部材を介してその透過部材の第2面側から前記リファレンスに対し、有限の集束角を有する超音波の集束ビームを照射するステップと、
前記リファレンスの表面で反射した超音波の反射波信号を取得するステップと、
前記焦点型超音波振動子により、前記第1面に超音波の焦点を合わせた状態で超音波伝達媒体及び前記透過部材を介してその透過部材の第2面側から前記試料に対し、前記超音波の集束ビームを照射するステップと、
前記試料の表面で反射した超音波の反射波信号を取得するステップと、
前記透過部材及び前記リファレンスの音響インピーダンスと、前記リファレンス及び試料からの前記反射波信号とに基づいて前記試料の音響インピーダンスを求めるステップと、
前記焦点型超音波振動子の発する超音波の集束角を考慮して前記音響インピーダンスを補正するステップと
を含むことを特徴とする音響インピーダンス測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図4】
【図10】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図4】
【図10】
【公開番号】特開2009−216522(P2009−216522A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60318(P2008−60318)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000243364)本多電子株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000243364)本多電子株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
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